JP2004255862A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、インクジェットプリンタに係り、特に、記録ヘッドへ供給するインク中から気泡を分離した気泡を効率良く除去することができるインクジェットプリンタの構造に関するものである。
従来から、インクジェットプリンタ本体内に固定されたインクタンクから可撓性を有するチューブを介して、移動するキャリッジに搭載された記録ヘッドにインクを供給するチューブ供給形式のインクジェットプリンタが特許文献1等にて知られている。一方、インクジェットプリンタでは、記録ヘッド内のインクに気泡(空気)が含まれると、インクの吐出不良や記録品質の低下を招来する。
チューブ供給形式のインクジェットプリンタでは、チューブを構成する材料の特性から空気がチューブを透過してインク中に溶解することが避けられず、記録ヘッドの上流側にエアバッファ室を設け、気泡を除去する作業が必要であった。
特許文献1の構成では、記録ヘッドの上部にマニホールド(エアバッファ室に相当)を備えるとともに、静止位置側にインクタンクと循環ポンプとを設け、循環ポンプを駆動させて気泡を除去する構成が記載されている。詳細には、インクをインクタンクから第1インク流路、マニホールド、第2インク流路、インクタンクの順に循環させて、その循環路内の気泡をインクタンクに戻して除去している。また、メンテナンス位置にて、吸引パージ手段により記録ヘッドのノズル(インク吐出)側からインクを吸引するように構成している。
特開2000−103084号公報(図1等参照)
しかしながら、前記特許文献1の構成によれば、前記インクタンクは大気に開放しており、インクを循環させるときにインク中に空気(気泡)が紛れ込み易い。また、循環のために循環ポンプからインクタンクへの戻りのチューブが必要となり、装置が大型化、複雑化するという問題があった。
さらに、インクジェットプリンタのカラー化に応じて、インクタンクが複数設けられている場合には、インクタンク毎に対応させてエアバッファ室が複数設けられる。そして、メンテナンス時には、各エアバッファ室から気泡を除去する作業が同時に実行される。そのため、この気泡の除去に要する時間を、全エアバッファ室でほぼ同時に終了し作業の効率化を図りたいという要望もあった。
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、キャリッジに記録ヘッドと共に搭載したエアバッファ室内に貯留された気泡を効率良く除去することができるコンパクトなインクジェットプリンタを提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明におけるインクジェットプリンタは、
被記録媒体に対して移動するキャリッジにインクジェット式の記録ヘッドを搭載し、プリンタの本体に搭載されたインクタンクからインク供給管を介して、前記キャリッジに搭載されたバッファタンクを経て前記記録ヘッドにインクを供給するように構成されたインクジェットプリンタにおいて、前記記録ヘッドは複数のインク供給チャンネルを有し、前記バッファタンクには、インクとそのインクから分離した気泡とを貯留するエアバッファ室が各インク供給チャンネルに対応して複数形成され、前記キャリッジには、前記各エアバッファ室に一端を接続し他端を外部に開放可能とする気泡排出通路が前記各エアバッファ室ごとに形成され、前記各気泡排出通路は、前記気泡排出のための流路抵抗値が相互にほぼ等しく形成されていることを特徴とするものである。
被記録媒体に対して移動するキャリッジにインクジェット式の記録ヘッドを搭載し、プリンタの本体に搭載されたインクタンクからインク供給管を介して、前記キャリッジに搭載されたバッファタンクを経て前記記録ヘッドにインクを供給するように構成されたインクジェットプリンタにおいて、前記記録ヘッドは複数のインク供給チャンネルを有し、前記バッファタンクには、インクとそのインクから分離した気泡とを貯留するエアバッファ室が各インク供給チャンネルに対応して複数形成され、前記キャリッジには、前記各エアバッファ室に一端を接続し他端を外部に開放可能とする気泡排出通路が前記各エアバッファ室ごとに形成され、前記各気泡排出通路は、前記気泡排出のための流路抵抗値が相互にほぼ等しく形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記各気泡排出通路の他端側には、該気泡排出通路を開閉する排気弁手段がそれぞれ設けられ、前記記録ヘッドからインクを吐出するときには、前記排気弁手段が閉じられ、前記排気時には、前記排気弁手段が開放されることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記各気泡排出通路は、前記バッファタンクの上壁に沿って形成され、その気泡排出通路の前記他端側に接続した前記複数の排気弁手段は、前記バッファタンクの一側に並んで配置されていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットプリンタにおいて、前記各気泡排出通路の一端は、前記バッファタンクの上壁に形成された各通気孔を介して前記各バッファ室に接続され、前記各気泡排出通路は、前記バッファタンクの上壁に沿って形成された凹溝と、その凹溝を覆って接着した膜体との間に形成されていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタにおいて、前記複数のエアバッファ室の少なくとも各一部は前記キャリッジの移動方向にほぼ沿って配列され、前記複数の気泡排出通路の各他端は前記キャリッジの移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されており、前記複数の気泡排出通路は、その一端と他端とをそれぞれほぼ同じ長さで結んで形成されていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタにおいて、前記複数のエアバッファ室の少なくとも各一部は前記キャリッジの移動方向にほぼ沿って配列され、前記複数の気泡排出通路の各他端は前記キャリッジの移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されており、前記各気泡排出通路の断面積は、その一端と他端とを結ぶ通路長が長いほど大きく、前記通路長が短いほど小さく形成されていることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インクタンク側から前記各バッファ室内のインクに共通に正圧を印加し前記各バッファ室内のインク液面を上昇させるエアポンプをさらに備えることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記キャリッジ外の位置には、該キャリッジが所定位置に移動したとき、前記前記各排気弁手段を開放させる弁操作部材を有する気泡除去手段を備えることを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記気泡除去手段は、前記前記各排気弁手段を介して前記各気泡排出通路に共通に接続される吸引ポンプに接続されていることを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によれば、各気泡排出通路の流路抵抗値が相互にほぼ等しくなるように形成することにより、複数のエアバッファ室にそれぞれ貯留された気泡を排出するに際し、単位時間当たりの排気量(以下、単に排気量という)を相互に等しくすることができる。その結果、全エアバッファ室からの排気作業を同時に開始して、ほぼ同時に終了することができるため、排気作業を効率化することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記各気泡排出通路の他端側には、該気泡排出通路を開閉するそれぞれ排気弁手段が設けられ、排気弁手段を閉じた状態で前記記録ヘッドからインクが吐出され、前記排気時には、各気泡排出通路の各排気弁手段を開放して、各気泡排出通路から前述のようにそれぞれ同様に排気動作を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、前記各気泡排出通路が、前記バッファタンクの上壁に沿って形成され、その気泡排出通路の前記他端側に接続した複数の排気弁手段が、前記バッファタンクの一側に並んで配置されていることによって、気泡排出通路、排気弁手段の配置を省スペース化することができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記各気泡排出通路の一端が、前記バッファタンクの上壁に形成された各通気孔を介して前記各バッファ室に接続され、前記各気泡排出通路が、前記バッファタンクの上壁に沿って形成された凹溝と、その凹溝を覆って接着した膜体との間に形成されていることによって、気泡排出通路の配置を省スペース化することができる。
請求項5に記載の発明によれば、前記複数のエアバッファ室の少なくとも各一部が前記キャリッジの移動方向にほぼ沿って配列され、前記複数の気泡排出通路の各他端が前記キャリッジの移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されていることによって、気泡排出通路のエアバッファ室側の一端と、他端とを結ぶ直線距離が、気泡排出通路によって相違するが、前記複数の気泡排出通路が、その一端と他端とをそれぞれほぼ同じ長さで結んで形成されることで、各気泡排出通路における流路抵抗値をほぼ等しくし、各エアバッファ室からの気泡の排出量を等しくすることができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記複数のエアバッファ室の少なくとも各一部は前記キャリッジの移動方向にほぼ沿って配列され、前記複数の気泡排出通路の各他端は前記キャリッジの移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されていることによって、気泡排出通路のエアバッファ室側の一端と、他端とを結ぶ直線距離が、気泡排出通路によって相違するが、前記各気泡排出通路の断面積が、その一端と他端とを結ぶ通路長が長いほど大きく、前記通路長が短いほど小さく形成されていることで、各気泡排出通路における流路抵抗値をほぼ等しくし、各エアバッファ室からの気泡の排出量を等しくすることができる。
請求項7に記載の発明によれば、前記インクタンク側から前記各バッファ室内のインクに共通に正圧を印加し前記各バッファ室内のインク液面を上昇させるエアポンプをさらに備えることで、各バッファ室内の気泡を共通の圧力で同時に排出することができる。
請求項8に記載の発明によれば、キャリッジが所定位置に移動したとき、キャリッジ外の位置に設けた弁操作部材で前記各排気弁手段を開放させることができる。
請求項9に記載の発明によれば、前記気泡除去手段が、前記各排気弁手段を介して前記各気泡排出通路に共通に吸引ポンプに接続されていることで、各バッファ室内の気泡を共通の圧力で同時に排出することができる。
次に、本発明を具体化した実施形態について説明する。まず、第1実施形態は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFC)1に本発明を適用したものであり、図1に示すように、装置の本体ケース2の後端側に給紙装置3が設けられ、該給紙装置3の前方の上側には、コピー機能とファクシミリ機能のための原稿読取り装置4が設けられている。原稿読取り装置4の下側全体にプリンタ機能を実現するためのインクジェットプリンタ5(後述する)が設けられ、その前側には記録されて排紙されてくる用紙P等の被記録媒体を受けるための排紙用トレイ6が設けられている。
原稿読取り装置4は、図示しないが、後端部において水平軸により上下揺動可能に構成されており、カバー体4aを上側に開けると、原稿を載置する載置用ガラス板が設けられ、その下側に原稿読取り用のイメージスキャナ装置が設けられている。
原稿読取り装置4全体を上側に開けると、フルカラー記録のためのインクジェットプリンタ5に使用するべく、インクタンク7(個別の色、即ち、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用のインクタンクに対しては符号7a〜7dを付する、図2参照)を交換することができる。
次に、図2〜図5を参照しながら、インクジェットプリンタ5の概略構成について説明する。インクジェットプリンタ5は、本体フレーム14に内包されて被記録媒体である用紙Pにインクを吐出させて記録する記録機構部9と、記録機構部9における記録ヘッドユニット10のメンテナンス処理を行うメンテナンスユニット11と、記録ヘッドユニット10にインクタンク7a〜7dからのインクを供給するためのインク供給部12と、これらインクタンク7a〜7dに加圧(正圧)エアを供給するエア供給部13等から構成されている。
記録機構部9及びメンテナンスユニット11は、図2、図3及び図5に示すように、上部を略楕円状に開放した箱状の本体フレーム14内に収納される。本体フレーム14内に平行状に設けられた左右長手の後ガイド軸15と、前ガイド軸16とにキャリッジ17が摺動自在に載置され、該キャリッジ17に記録ヘッドユニット10が一体的に取付けられている。
本体フレーム14の右後側に配置されたキャリッジ駆動モータ18と、無端帯であるタイミングベルト19とにより前記キャリッジ17は前記前後ガイド軸16、15に沿って左右方向に往復移動可能に構成されている(図2参照)。他方、本体フレーム14の左後側に配置された給紙モータ20と、本体フレーム14の左側に配置されたベルト、歯車等の伝動機構21を介して、前記後ガイド軸15の下方のメイン搬送ローラ22と、前ガイド軸16の下方に位置する搬送ローラ(図示せず)とにより、用紙Pを前記記録ヘッドユニット10の下面側で水平状に搬送し、記録済の用紙Pは排紙用トレイ6の方向に搬送排出される。
搬送される用紙Pの幅より外側には、その一端側(実施形態では図2及び図3で左端部)に、インク受け部8が設けられており、他端側には、メンテナンスユニット11が配置されている。これにより、記録動作中に定期的に記録ヘッドユニット10は前記インク受け部8が設けられたフラッシング位置にてノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部8にてインクを受ける。他端側のヘッド待機位置では、前記メンテナンスユニット11が配置されてノズル面29のクリーニングを行い、また、色毎にインクを選択的に吸引するための回復処理及び後述するバッファタンク36内の気泡(空気)を除去する除去処理を行う。
次に、インク供給部12の構成について説明する。図2、図4及び図5に示すように、用紙Pの搬送経路よりも下方であって、本体ケース2の下仕切り板2aの上面前側には、前記記録ヘッドユニット10の下面のノズル面29より下方位置に、個別の色毎のインクタンク7をそれぞれ前方から挿入して装着できるインクタンク装着部23が設けられており、図2において、左側から順に、ブラック(BK)用のインクタンク7a,シアン(C)用のインクタンク7b、マゼンタ(M)用のインクタンク7c、イエロー(Y)用のインクタンク7dが水平且つ並列状に配置される。
各インクタンク7内には、その略全域に可撓性を有する膜材24a(これが変形可能な壁面に相当する)が貼り付けられ、この膜材24aにより下側のインク収容室24bと上側の空気室24cとに区画されている。
各インクタンク7の後側壁面には、前記空気室24cと大気とに連通する空気孔(図示せず)が穿設されている一方、前記インク収容室24bと外とを区切るシリコーン製等のシール部材25が装着されている。
前記インクタンク装着部23の後側には、各色のインクタンク7の挿入方向(後側壁面)に対向するようにインク供給用中空針26を水平状に突設している。各色のインクに対応する中空針26の基端部は、対応する可撓性を有するインク供給チューブ(請求項のインク供給管に相当)27a〜27dを介して記録ヘッドユニット10に接続されている。この場合、ブラック用とシアン用のインク供給チューブ27a,27bの中途部同士、マゼンタ用及びイエロー用のインク供給チューブ27c,27dの中途部同士を上下に重ねて結束している。
エア供給部13は、前記各中空針26と平行状にて前向きに突出させた4箇所の圧着パッド31と、駆動モータ30にて駆動されるダイヤフラム型等のエアポンプ28と、それらを接続するエアチューブ32とから構成され、前記インクタンク装着部23に挿入固定された各インクタンク7後面の空気孔に前記各圧着パッド31を付勢バネの付勢力で密着させるように構成されている。そしてエアポンプ28を駆動することで、各インクタンク7a〜7dの空気室24cに加圧(正圧)エアを供給し、各インク収容室24b内のインクに正圧を付与することができる。
ここで、図5に示すように、記録ヘッドユニット10におけるノズル33を開口させたノズル面29は、中空針26の箇所よりも水頭H1だけ高い位置に配置されており、記録動作時には、記録ヘッドユニット10のノズル33に、この水頭H1に相当する負圧(背圧)が作用している。インクの初期導入時において、公知のように、後述する吸引キャップ部材をノズルに密着させて吸引ポンプにより吸引することにより各インクタンク7a〜7dから記録ヘッド34に導入するが、この時エアポンプ28を駆動して、各インクタンク7a〜7dインクに正圧を付与するようにしてもよい。
次に、図3、図6〜図11を参照しながら、キャリッジ17に搭載された記録ヘッドユニット10及び排気弁手段41等の構成について説明する。第1実施形態ではフルカラー記録のために記録ヘッドユニット10は、図6(b)及び図10に示すように、各色毎のノズル33の列を有する記録ヘッド34と、その記録ヘッド34の上面に接合された平板状の圧電素子等のアクチュエータ35と、エアバッファ室40等を備えたバッファタンク36と、該バッファタンク36の側面に隣接する排気弁手段41を有するケース37等から構成されている。
記録ヘッド34の下面には、図3において左側からブラック(BK)用のノズル33aの列と、シアン(C)用のノズル33bの列と、マゼンタ(M)用のノズル33cの列と、イエロー用のノズル33dの列とが、キャリッジ17の移動方向と直交する方向に長く形成されている。そして、用紙Pの上面に対向するように各ノズル33が下向きにて露出している。記録ヘッド34は、バッファタンク36から供給されるインクを公知のものと同様に、ノズル毎の圧力室に分配し、この圧力室に対応する圧電素子などのアクチュエータ35によりノズルからインクを吐出させるものである。
各色のインク毎にエアバッファ室40(個別には符号40a,40b,40c,40dで示す、図10等を参照)が区画されたバッファタンク36は、合成樹脂材にて平面視略矩形状に形成され、バッファタンク36の一側面には、前記各色のインク供給チューブ27a〜27dの先端が連結されたジョイント部材38(詳細は省略する)と接続するためのインク流入口39(実施形態では4箇所)が横向きに突設されている。各インクタンク7から供給されたそれぞれのインクは、各エアバッファ室40に溜められ、インク中の気泡が分離された後、バッファタンク36の底面側のインク流室42から下向きの流出部43を介して前記記録ヘッド34に供給される。エアバッファ室40の下面側とインク流室42との大部分を略水平状に仕切るフィルタ44はステンレス鋼の金属ワイヤを網目状に編んだメッシュにて構成されている。記録動作時の遅い速度のインク流に対しては、エアバッファ室40からインク流室42へのインクの流れを許容する一方、そのインクの流れに乗ってインク中に含まれる気泡やゴミがフィルタ44を通って記録ヘッド34側へ流れるのを阻止する。フィルタ44は、インク流入口39から遠い端部に、流路抵抗がフィルタ44のメッシュよりも十分小さい開口44aを有し、後述する回復パージ処理動作時の速い速度のインクに対しては、開口44aを通してインク流室42へのインクの十分な流れを確保する。
図6(a),図6(b)及び図7に示すように、各エアバッファ室40の天井壁45には、気泡排出通路47の一端としての筒状の通気孔46が、エア(空気)を吸引するために下向きに突設され、気泡排出通路47(個別のものを符号47a〜47dで示す)が天井壁45の上面側に形成される。気泡排出通路47の他端としての出口部54は、後述するケース37の入口部に連通するように設けられている。
従来のように、回復パージ動作時に、ノズル側からインクを吸引し、且つエアバッファ室40内に溜まっているエア(気泡)を吸引しようとすると、吸引力を大きくしないと、記録ヘッド34の細いインク流路内で気泡を詰まらせるという問題があり、また、バッファタンク36内のインクのほぼ全てに対応する量を排出した後でないと、その上側の気泡(空気)を吸引できないから、多量のインクを無駄に捨てることになり、インクジェットプリンタのランニングコストが高くなるという問題があった。
第1実施形態の構成によれば、バッファタンク36の上部のエアバッファ室40内に溜まった空気を当該バッファタンク36の上部、特に天井壁45の箇所から抜くので、気泡が下位置にある記録ヘッド34へ流れ込まず、従って、この記録ヘッド34内のインク流路に気泡が詰まるという不良が発生しない。また、バッファタンク36から気泡(空気)を除去する作業に伴って、当該バッファタンク36内に貯留されているインクを多く排出する必要がないからランニングコストも低減でき、経済的であるという効果を奏する。
第1実施形態では、気泡排出通路47a〜47dは天井壁45の上面(上壁)に凹み形成した溝部とその溝を覆って接着した合成樹脂製フィルム48等の膜体との間に形成される。なお、図7に示す符号45aは、前記各気泡排出通路47a〜47dを隔絶する隔壁で、その上面にフイルム48が接着される。
図6(a)及び図7に示す各気泡排出通路47a〜47dは、その断面積(通路の長手方向と直交する方向の断面積)がいずれも同じに形成されているが、バッファタンク36のインク流入口39またはそれに接続するインク供給チューブ27の通路断面積と同等かそれよりも小さく形成されている。
また、前記通気孔46を内部に有する筒状部が天井壁45の下面から下向きに突出する高さH2を適宜に設定することにより、通気孔46から排出できない適宜体積のエア溜まり部を各エアバッファ室40の上部に形成し、キャリッジ17の左右への移動に伴う各エアバッファ室40内のインクの圧力変動を、前記エア溜まり部にて吸収するものである。
さらに、この第1実施形態では、各気泡排出通路47a〜47dの一端としての通気孔46(46a〜46d)は、前記キャリッジ9の移動方向にほぼ沿って配列され、他端としての出口部54(54a〜54d)は、前記キャリッジ9の移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されている。その結果、通気孔46と出口部54とを結ぶ直線距離はそれぞれの気泡排出通路47によって異なることになるが、通気孔46から出口部54までの各気泡排出通路47の経路をバッファタンク36の上壁に沿って屈曲して形成してその長さを相互に等しく設定している。すなわち、通気孔46aから出口部54aまでの気泡排出通路47aの通路長と、通気孔46bから出口部54bまでの気泡排出通路47bの通路長と、通気孔46cから出口部54cまでの気泡排出通路47cの通路長と、通気孔46dから出口部54dまでの気泡排出通路47dの通路長とを等しくしている。これにより、各気泡排出通路47a〜47dにおける流路抵抗値を相互に等しくしている。
また、排気弁手段41により各エアバッファ室40内の空気を排出するに際しては、インク流路における各通気孔46a〜46dの上流側の流路抵抗値も影響する。インク流路における各通気孔46a〜46dの上流側には、図26の模式図に示すように、インクタンク7a〜7dから、インク供給チューブ27a〜27d、インク流入口39a〜39d及び各エアバッファ室40a〜40dを介して各通気孔46a〜46dに至る経路が形成されており、この経路における流路抵抗値(R0)を、インク供給チューブ27の長さを各色同じにするなどして、あらかじめ相互に等しく設定している。
これにより、各インクタンク5a〜5dから排気弁手段41に繋がる各経路で、その流路抵抗値が相互に等しくなる。その結果、排気弁手段41により各エアバッファ室40内の空気を排気するに際しての排気量が等しくなり、複数(4色)のエアバッファ室40内に貯留されている空気に対して、排気弁手段41で同時に排気動作を開始すると、ほぼ同時に排気動作を終了できることになる。従って、早く排気が終了したエアバッファ室40から空気に引き続きインクが多く排出されるという現象が発生しないのである。
また、前記各気泡排出通路47a〜47dの断面積と通路長さのために、各気泡排出通路のインクに対する流路抵抗が、空気(気泡)のそれよりも大きくなる。そして、複数(4色)のエアバッファ室40内に貯留される空気の量がまちまちである場合には、全てのエアバッファ室40に対して排気動作を同時に実行しても、1つの通気孔46にインクの液面が到達すると、前記インク流の抵抗が大きい。従って、他のエアバッファ室40での空気の排出が優先的に実行されることになり、エアバッファ室40内の空気量が異なっていても、その空気量が少ない(逆にいうとインク量が多い)箇所のバッファタンク36からのインクの排出量だけが多くなるという現象も発生しないのである。
排気弁手段41におけるケース37は、前記バッファタンク36の一側(図6(a)、図7及び図10において右側)に隣接して設けられているものである。図9、図11(a)及び図11(b)に示すように、合成樹脂製のケース37には、上下方向に長く且つ上下に開口する通路孔51を有する同じく合成樹脂製のシリンダブロック50が気密を有するように取付けられている。前記通路孔51は、前記各気泡排出通路47a〜47d毎に対応するように、実施形態では4つ並設されている。前記各通路孔51の上端に連通する4つの通路筒52が前記ケース37の上端から上向き突出しており、軟質ゴム製等のキャップ体53を介して前記各通路筒52と前記各気泡排出通路47a〜47dの他端である横向きの出口部54とを接続している。なお、バッファタンク36の上部から横向きに突出するひさし部60にてキャップ体53が容易に外れないよう規制している。
前記各通路孔51は上半の大径部51aと下半の小径通路51bとからなる。大径の弁体55の下端には小径のバルブロッド56が一体的に形成されている。バルブロッド56に被嵌され、且つ弁体55の下端面側にシール用のオーリング等のパッキン57が配置されている。前記大径部51aにパッキン57及び弁体55が昇降可能に挿入され、バルブロッド56は小径通路51bに挿入されている。このバルブロッド56の下端は小径通路51bの下端開口部近傍まで延びている。大径部51a内に設けたコイルバネ等のばね手段58にて弁体55を常時下向きに押圧している。この状態で、パッキン57が通路孔51の大径部51aの底面に押圧されて、弁閉止となる(図11(a)参照)。他方、後述する気泡除去手段61における弁操作手段としてのリリースロッド62が上昇して、前記バルブロッド56を前記ばね手段58の付勢力に抗して上向き押圧すると、前記パッキン57が大径部51aの底面から離れ、弁開放状態、つまり大気と連通するように構成されている(図11(b)参照)。
次に、メンテナンスユニット11の構成について、図8〜図21等を参照しながら説明する。このメンテナンスユニット11では、キャリッジ17を待機位置(実施形態では図2、図3において右端側)で休止させている間に、当該キャリッジ17に搭載されている記録ヘッドユニット10のノズル面29をキャップ部材64にて覆った状態で、ノズルからインクを吸引して、固化したインクによる目詰まりや、微細なゴミ、記録ヘッド34内の気泡を吸い出すための回復手段63と、前記各エアバッファ室40に溜まった空気を前記気泡排出通路47及び排気弁手段41を介して排出除去し、そのとき漏れ出すインクを吸引除去するための気泡除去手段61とを備えている。前記回復手段63は気泡除去手段61と隣接配置され、該気泡除去手段61はキャリッジ17の移動方向の最外端側に配置されている。ノズル面29を払拭クリーニングするワイパー65は、平面視において回復手段63のキャップ部材64を挟んで気泡除去手段61における前記リリースロッド62を備えた昇降体66と反対側に配置されている(図12及び図13参照)。
図12はメンテナンスユニット11の平面図、図13は斜視図、図14は昇降機構部70の平面図、図8は図12の VIII −VIII線矢視で示す、キャリッジ17及びメンテナンスユニット11の一部の側面図である。
メンテナンスユニット11は、1つの動作変換手段としての機構部67を備えており、この機構部67は、前記回復手段63及び気泡除去手段61を選択的に昇降させる昇降機構部70を作動すること、インクの吸引のための吸引手段としての吸引ポンプ68を選択的に作動させること、並びにこの吸引ポンプ68の吸引力を選択的に前記回復手段63及び気泡除去手段61に接続させる切換弁ユニット69の切換操作を実行する。この実施形態では、前記吸引ポンプ68が請求項の排出手段として使用されており、前記機構部67により、前記気泡排出通路47の他端側に着脱自在に接続されるのである。
前記機構部67には、ユニット台73に枢着されたギヤ列を有し、ユニット台73の一端部に配置された1つの正逆回転可能なモータ71が前記ギヤ列に動力伝達する。前記モータ71が逆回転(図12で反時計回り)するとき、その駆動力を複数のギヤ72a〜72i列を介して吸引ポンプ68を時計回りに回転させて切換弁ユニット69側に負圧を与えて後述するようにインクを吸引できるようにする。この場合、前記ギヤ72a〜72i列のうち、ギヤ72e及び太陽歯車72fは反時計回りに回転する。これにつれてギヤ太陽歯車72fに噛合う遊星歯車72gは、太陽歯車72fの軸を中心にして反時計回り公転しながら時計回りに自転し、中間ギヤ72hに噛み合い、これを介してチューブ式の吸引ポンプ68のギヤ72iに動力伝達する。
モータ71が正回転(図12で時計回り)するとき、その駆動力はギヤ72a〜72dを介して前記ギヤ72e及び太陽歯車72fを時計回りに回転させる。これにつれて太陽歯車72fに噛合う遊星歯車72gは、太陽歯車72fの軸を中心にして時計回り公転しながら反時計回りに自転し、後段のギヤ72jに噛み合い、これから歯車72k〜72oを介して回動カム体74を反時計方向に回動させる一方、歯車72p,72qを介して切換弁ユニット69内の切換部材110の角度を変えるようにギヤ72rに動力伝達する。
次に、前記回復手段63及び気泡除去手段61と、これらを選択的に昇降させる昇降機構部70及びこれを駆動するための回動カム体74について、図10、図12〜図20を参照しながら説明する。
回復手段63は、前記キャリッジ17の下面側に露出する4列のノズル33を2列ずつ覆うためノズル面29に当接する2列のキャップ部材64a,64bと、これらのキャップ部材64a,64bが上面に並列状に配列された平面視略矩形状の支持ブロック75とを有する。キャップ部材64a,64bに分離したのはインク色の混色を避けるためである。各キャップ部材64a,64bにはインクの吸引孔(図示せず)が設けられており、これらの吸引孔は支持ブロック75の内部の通路(図示せず)を介して、側面の2つの排出口からチューブ76a、76bに連通している。この場合、ブラックインクとシアンインク用のキャップ部材64aはチューブ76aを介して切換弁ユニット69のポートAに連結されている。他方、マゼンタインク用とイエローインク用キャップ部材64bはチューブ76bを介して切換弁ユニット69のポートBに連結されている(図21、図22等参照)。
合成樹脂製等の支持ブロック75の下面には、図10と図15に示すように、中央部にガイド筒77を設け、このガイド筒77の外側面にはカムフォロアとしての一対の摺接ピン78、78(図で一方のみ示す)が水平状に突設されている。また、前記ガイド筒77を囲むように、4つのバネ座79が下向きに突設されている。一方、合成樹脂製等のユニット台73の上面に形成されたガイド溝80内の略中央には、前記ガイド筒77及び摺接ピン78、78を上下方向に案内し、且つ支持ブロック75が昇降する方向と直交する平面の回りに回動しないように規制するための一対の断面円弧状のガイド片81、81が突設されている(図14、図15参照)。さらに、前記ガイド溝80より外側には、前記各バネ座79との間に上向き付勢バネ82の下端の位置決めをする突起83が突設されている。
気泡除去手段61における昇降体66の上面には、図14〜図17に示すように、前記シリンダブロック50の各通路孔51に密着し得る4つの皿状の吸引部90が形成されている。各吸引部90には、シリンダブロック50の下面に開口する各小径通路51bと連通し得る吸い口91と、バルブロッド56と当接し得る上向き突出のリリースロッド62とを有し、これら全ての吸い口91は昇降体66内の通路92を介して側面の排出筒93に連通されている(図17(a)参照)。また、前記昇降体66の上面には位置決め用の一対の角体94a,94bが上向きに突設されており(図15〜図17(c)参照)、昇降体66が上昇して前記シリンダブロック50に接近するとき、当該シリンダブロック50に設けられた一対の位置決めガイド溝95a,95bに摺接して、昇降体66の水平2方向の位置決めができて、各リリースロッド62が各小径通路51bに円滑に嵌まり得るように構成されている(図8参照)。
前記昇降体66には、後述する平行移動カム体96における一対の縦ガイド片97、97の間に嵌まり得る脚体98が下向きに突設されている。この脚体98の下端部には、カムフォロアとしての一対の摺接ピン99、99が水平方向にて昇降体66の長手方向に沿って外向きに突設されている。また前記昇降体66の下面には、ユニット台73との間に配設される上向きに付勢する付勢ばね100(図15で一方のみ示す)の上端を支持するための2つのバネ座66a,66aが設けられている(図15〜図17(c)参照)。
回復手段におけるキャップ部材64a,64bが前記ノズル面29に接離動する動作と、前記リリースロッド62による弁開閉のための気泡除去手段の昇降移動動作とを選択的に実行させる、1つの動作変換手段は、平行移動カム体96と回動カム体74とから構成されている。
平行移動カム体96は、図10、図14、図15、図19及び図20等に示すように、ユニット台73におけるガイド溝80に沿って水平に案内される二股状の水平ガイド片101と、該水平ガイド片101から立設する一対の縦ガイド片97、97等からなる。そして、水平ガイド片101に上向きに突設したピン104が、回動カム体74におけるエンドレスのカム溝74a(図18参照)に嵌まっており、後述するように、回動カム体74の一定方向への回動につれて前記平行移動カム体は、前記シリンダブロック50の下面に昇降体66が接離する方向と直交する方向(図10、図15、図19及び図20で示すX1−X2方向)に往復移動される。
前記各縦ガイド片97には、前記回復手段63及び前記気泡除去手段61からそれぞれ横向きに突出するカムフォロアである摺接ピン78,78及び99,99が前記各付勢ばね82,100による付勢方向(上方向)に当接し、且つ当該平行移動カム体96の往復移動につれて前記回復手段63及び前記気泡除去手段61の昇降動作を規制するための一対のカム面102,103を有するカム部を備えている。
より詳しくは、前記一対のカム面102,103は、前記回復手段63及び前記気泡除去手段61の昇降動作方向を互いに逆方向にするように形成されている。即ち、カム面102,103は、それぞれ水平状の最下カム面102a,103aと、中間カム面102b,103bと、最上カム面102c,103cとの間を傾斜面にて連設してあり、最下カム面102a,103a同士が互いに接近する位置に形成され、最上カム面102c,103c同士が最も離れた位置に形成されている(図10、図15等参照)。そして、記録ヘッド34が用紙に対して記録を行う状態では、図10に示すように、中間カム面102b,103bに、キャップ部材64a、64b及び昇降体66における各摺接ピン78,99の上面が当接している。
図19に示す回復処理動作時及び保存状態では、回動カム体74のカム溝74aにて平行移動カム体96はX2方向に移動する。これにより、摺接ピン78が中間カム面102bから外れて最上カム面102c側に移動して、当該摺接ピン78の上向き移動の規制が外れて付勢ばね82にて支持ブロック7が上昇する。その結果、キャップ部材64a,64bの上面が記録ヘッド34のノズル面29に押圧するように密着する。他方、最下カム面103aに摺接ピン99の上面が当接し、昇降体66は最も低い位置まで下降し、昇降体66におけるリリースロッド62の上端と気泡除去手段61におけるシリンダブロック51の下面との間にも適宜隙間を有する程度の高さに昇降体66が位置保持される。
図20に示す前記全てのエアバッファ室40a〜40dからの気泡除去(抜気)処理動作時には、回動カム体74のカム溝74aにて平行移動カム体96はX1方向に移動する。これにより、最下カム面102aに摺接ピン78の上面が当接してキャップ部材64a,64bの上面が記録ヘッド34のノズル面29から最も離れる最下位置に支持ブロック75が保持される。このとき、摺接ピン99は中間カム面103bから外れて最上カム面103c側に移動して、当該摺接ピン99の上向き移動の規制が外れて付勢ばね100にて昇降体66が上昇する。その結果、昇降体66の各吸引部90が各小径通路51bの下端開口部と密着するとともにリリースロッド62がバルブロッド56を押し上げる。
このように、一方のカム面102により支持ブロック75が最下降に位置されたときの付勢ばね82の最も付勢力が大きい状態に対して、他方のカム面103により昇降体66が最上昇してそのときの付勢ばね100の付勢力が弱い。その逆の状態もあるというように、前記一対のカム面102,103は、前記回復手段63及び前記気泡除去手段61の昇降動作方向を互いに逆方向にするように形成したので、両カム面102、103に同時に最も大きい付勢力が作用せず、カム部の強度を必要以上に大きくする必要がなく、平行移動カム体96をコンパクトに形成できる効果を有する。
次に、前記気泡除去手段61と、前記回復手段63とに並列的に接続してインクを吸引する吸引手段について説明する。吸引手段は吸引ポンプ68と吸引切換弁としての切換弁ユニット69とを備える。吸引手段は、前記エアバッファ室40a〜40d内から気泡と共に漏出したインクを吸引する動作と、回復手段63を介してノズルからインクを吸引する動作とを選択的に実行するものである。
吸引ポンプ68は可撓性チューブ105内の体積変化を利用して負圧を発生させるチューブ式のポンプである。可撓性チューブ105の一端(吐出側)は後述する廃液フォーム111を収納した廃棄インク貯留部に連結され、可撓性チューブ105の他端(吸引側)はコネクタ106及びチューブ107を介して切換弁ユニット69の吐出口108に接続されている。
切換弁ユニット69は、図21(a)、図21(b)及び図22に示すように、円筒状の本体部109と、本体部109に回転可能に嵌め入れられた切換部材110とユニット台73に立設された回転軸を中心に回転し、前記切換部材110を本体部109に対して回転させるギヤ72rとからなる。合成樹脂製の本体部109には、前記吐出口108が上面に設けられ、ポートA,B,W,Fが本体部側面にて所定位相角度にて設けられている。ポートAはチューブ76aを介してキャップ部材64aに連結され、ポートBはチューブ76bを介してキャップ部材64bに連結されている。また、ポートWはチューブ76cを介して前記気泡除去手段61における排出筒93に接続されている。ポートFは大気に開放されるチューブ76dに接続されている。その場合、図12、図13に示すように、このチューブ76dはその内部に常にインクを貯留させているように、十分に長くかつ中途部を180度以上屈曲させて配置されている。チューブ76dの開口端(先端開口部)は、本体ケース2内の厚さの厚い廃液フォーム111に上に突き刺されており、多機能装置1全体が傾斜して落下される等してインクタンク7内のインクに衝撃が加わって、その際のインクの圧力によりチューブ76dの開口端からインクが漏れることがあっても、廃液フォーム111に捕捉される。なお、図4、図5に示すように、廃液フォーム111は、本体ケース2の底板2c上であって、インク供給部12の本体ケース2の左右方向に並列配置されたインクタンク7a〜7dの並列方向に長く配置されており、その長手方向の略中央部、換言すると、本体ケースを左右いずれの方向に傾けた場合にも、水頭差が最小となる部分に廃棄インクチューブ76dの開口端が配置され、上記のインクの漏れ量を少なくしている。
円柱状の切換部材110はゴム等の弾性体にて形成され、その円形の天面に半径外方向の4方向に延びる天面溝112a〜112dが形成されている。その中心部に吐出口108が繋がり、また、その4端が切換部材110の外周溝113a〜113dに繋がる。外周溝113cは下向きに長く、ポートWに対応する。外周溝113a,113b,113dは下向きに短く、ポートA,B,Fに対応する。尚、外周溝113cはポートA,B,Fにも対応する。さらに、切換部材110の外周面には、円周方向に沿って3本のリブ114が、外周溝113a〜113dを囲むように形成されている。このリブ114を形成することで、負圧を溜める際及び負圧を印加するために、切換部材110を回転させる時に、当該切換部材110と本体部109との間に隙間ができる変形により負圧が漏れるのを防止できる。
図10、図19、図20に示すように、前記回動カム体74の底面には、前述したように、平行移動カム体96におけるピン104が嵌まるカム溝74aがエンドレスに形成されている。なお、図18は回動カム体74を上から見た図である。そして、回動カム体74の外周には、前記ワイパー65を上下動させるためのカム(図示せず)と、当該回動カム体74の回転位置(位相)を検知するためのリーフスイッチ116に接触する突条カム117a〜117eを有する。メンテナンス用モータ71、エアポンプ28、キャリッジ及び駆動モータ18等は、CPU、後述する各動作のプログラムを格納したROM等からなる制御装置により制御される。
次に、図23〜図25を参照しながら、メンテナンスユニットの動作説明をする。図12において、メンテナンス用モータ71を逆回転(反時計回り)させるときには、吸引ポンプ68を図12において時計方向に回転させて、切換弁ユニット69の天面の中央部の吐出口108に負圧を付与してインクが吸引可能となる。このときには、切換弁ユニット69の切換部材110及び回動カム体74は非回転で静止している。
メンテナンス用モータ71を正回転(時計回り)させるときには、前記吸引ポンプ68は非回転であり、その代わりに、切換弁ユニット69の切換部材110が正回転(時計回り)し、回動カム体74は反時計回りに回動する。なお、以下の説明では回動カム体74の回転に伴って動作可能な動作について順に説明するがかならずしも回動カム体74の回転に伴って全て動作が連続的に行われる必要はなく、メンテナンスが必要とされる都度、所定の動作のみが選択的に実行される。
図23は各動作時における切換部材110の回動位相位置とポートA,B,W,Fに対する連通、非連通状態を示す説明図である。図24は、回動カム体74の回転に伴うエア抜き動作(弁操作手段である昇降体66の昇降動作)と、キャップ動作(回復手段におけるキャップ部材64a,64bの支持ブロック75の昇降動作)と、ワイパー65の昇降動作を示すタイミングチャートである。図24において、カム番号1の高(ON)位置をON1、それに続く低(OFF)位置をOFF1とし、他のカム番号についても同様に標記して説明する。
記録ヘッド34に対して記録指令がなく、またメンテナンスユニット11に対しても動作指令がないとき、制御装置は、キャリッジ17を図2の右端の待機位置まで移動させる。この前に、リーフスイッチ116が突条カム117e(カム番号5)から降りて、突条カム117a(カム番号1)に載った直後の位置に回動カム体74を回動させ(図24、ON1)、平行移動カム体96を移動させて図10に示す位置にセットし、摺接ピン78、99の上面を中間カム面102b、103bに当接させる。この状態でキャリッジ17を図2の右端の待機位置まで移動させ、記録ヘッド34のノズル面29とキャップ部材64a,64bとを対向させる。これにより、キャップ部材64a,64bの上面と記録ヘッド34のノズル面29との間に適度の隙間が保持され、また、昇降体66におけるリリースロッド62及び吸引部90と気泡除去手段61におけるシリンダブロック51の下面との間にも適宜狭い隙間が保持される。この状態では、切換弁ユニット69の切換部材110の回動位置は図23のキャップ可能位置の位相であり、ポートA,B,Fと吐出口108とが連通状態にある。
上記状態から、記録ヘッド34のノズル面29にキャップ部材64a,64bを密接させ、記録ヘッド34を保存状態とする。このためには、回動カム体74を正回転させ、リーフスイッチ116が突条カム117a(カム番号1)に載った位置(ON1)からさらに回転カム体74を60°回転した位置まで移動させる。この状態では、平行移動カム体96がX2方向に移動し図19に示す位置にセットされ、摺接ピン78が中間カム面102bから外れて最上カム面102c側に移動して、付勢ばね82にて支持ブロック75が上昇する。その結果、キャップ部材64a,64bの上面が記録ヘッド34のノズル面29に密着する。他方、最下カム面103aに摺接ピン99の上面が当接し、昇降体66は最も低い位置まで下降している(図19参照)。
この保存状態では、キャップ部材64a,64bがポートA,Bを介して吐出口108に連通しており(図23の待機位置、ON1状態参照)、切換弁ユニット69のポートFに接続したチューブ76d、及び吸引ポンプ68の排出側のチューブ105内には多少のインクが常に残存していることから、キャップ部材64a,64bでノズル面29を密封し、ノズルの乾燥を防止することができる。また、ポートFは大気圧に連通していることから、キャップ部材64a,64b内もほぼ大気圧状態にある。
なお、(ON1)から60°回転した位置は、例えば、ステッピングモータからなるメンテナンス用モータ71を(ON1)から所定ステップ数(887ステップ)回転させることによって配置可能である。
制御装置は、記録ヘッド34に対し記録動作の指令をすると、メンテナンス用モータ71を連続的に正回転させて、回動カム体74を図24のON4の位置へ回転させ(後述する吸引動作は省略する)、再びキャップ部材64a,64bとノズル面29との間、及び昇降体66とシリンダブロック51との間に隙間が形成される状態から、キャリッジを待機位置から図2の左方向へ、すなわち記録位置に移動させる。
制御装置は、記録ヘッド34に対し回復処理の指令を出力すると、記録ヘッド34が上記待機位置にないとき、まず、上述のようにメンテナンス用モータ71を正回転させて回動カム体74をスイッチ116が上記ON1に載った直後の位置に回転させ、さらに記録ヘッド34を上記待機位置に移動させる。その状態からメンテナンス用モータ71を正回転させて、上記保存状態と同様に記録ヘッド34にキャップ部材64a、64bを密着させる。さらに、回動カム体74を、リーフスイッチ116が突条カム117a(カム番号1)から降りた位置(OFF1)に移動させる。同時に、切替弁ユニット69の切換部材110を、何れのポートA,B,W,Fも大気(外部)に連通していない位置(図23のBC負圧貯め、OFF1参照)に回転させる。この状態で、メンテナンス用モータ71を逆回転させて、吸引ポンプ68を作動させることにより(図25参照)、ブラックインク及びシアンインクのノズルからインクを吸引するためにチューブ107内に一旦負圧を貯める。次いでメンテナンス用モータ71を正回転させ、リーフスイッチ116が突条カム117b(カム番号2)に載った位置(ON2)に達すると、ポートAと溝112aとが連通し、上記の貯めた負圧によりキャップ部材64aを通してブラックインク及びシアンインクのノズルからインクを吸引する(図23のBC吸引、ON2参照)。吸引ポンプ68の作動開始から若干遅れてエアポンプ(正圧ポンプ)28を作動させて、インクタンク7を通してバッファタンク36内のインクに正圧を加える。
次に、リーフスイッチ116が突条カム117b(カム番号2)から降りた位置(OFF2)に、回動カム体74が回転すると、切換弁ユニット69の切換部材110は、何れのポートA,B,W,Fも大気(外部)に連通しない位置に回転する(図24、図23のOFF2参照)。そして前述と同様にモータ71を逆回転させて吸引ポンプ68を作動させることにより、マゼンタインク及びイエローインクを吸引するための負圧貯めを行う。次いでメンテナンス用モータ71を正回転させ、リーフスイッチ116が突条カム117c(カム番号3)に載った位置(ON3)に達すると(図24参照)、ポートBと溝112bとが連通し、貯めた負圧によりキャップ部材64bを通してマゼンタインク及びイエローインクのノズルからインクを吸引する(図23のYM吸引、ON3参照)。このとき、上述と同様にエアポンプ28を作動させてバッファタンク36内のインクに正圧を加える。
なお、ブラックインク及びシアンインクの組、またはマゼンタインク及びイエローインクの組の一方の組のみに対して吸引回復動作を行う場合には、他方の組に対応するカム番号の位置でモータ71を逆回転させることなくそのまま正回転させることで、吸引ポンプ68の駆動を省略する。
これらのインク吸引動作終了の後、回動カム体74の反時計回りの回動にて、平行移動カム体96をX1方向に移動させて図10の位置に向けて戻し、キャップ部材64a,64bをノズル面29から離すように支持ブロック75を下降させる。
前述のエアポンプ28の動作は、キャップ部材64a,64bがノズル面29から離れるまで継続される。これは、インク吸引動作終了時、キャップ部材内のインクが泡立っており、ノズル33内のインクに作用している背圧により、この泡がノズル内に侵入してしまうことがあるために、エアポンプ28の動作によりノズル33内のインクに正圧を加えて泡の侵入を防止するものである。なお、エアポンプ28と吸引ポンプ68の動作は並行して行われる必要はなく、エアポンプ28の動作は吸引ポンプ68の停止後キャップ部材64a,64bがノズル面29から離れる直前から離れた直後まで行われるようにしてもよい。エアポンプ28によりノズル33内のインクに加える正圧は、ノズルからインクが漏れ出さない程度の大きさである。
この次のワイパーによる払拭動作のために、キャリッジ17が移動を開始する時点では、図10に示すように、キャップ部材64a,64b及び昇降体66における各摺接ピン78,99が中間カム面102b,103bに当接する位置まで、回動カム体74は回転している。
リーフスイッチ116が突条カム117b(カム番号3)から降りる位置から回動カム体74が35度回転する(OFF3)と、切替弁ユニット69の切換部材110は、何れのポートA,B,W,Fも大気(外部)に連通しない位置に回転する(図23のワイプ位置)。一方、ワイパー65は、前記OFF1の位置からすでに上昇しており、ノズル面29の移動軌跡内に突出している。この状態で、キャリッジ7を図2の左方向に移動させることで、ノズル面29をワイパー65に摺接させて、当該ノズル面29に付着しているインクを払拭する。
この後、記録ヘッドがキャップ部材64aと対向しない位置、例えば、左端のインク受け部8に対向する位置に、キャリッジ17を移動させる一方、メンテナンス用モータ71を連続的に正回転させて、回動カム体74を反時計回りに連続回転させ、再び前記ON2の位置に停止させ、その状態で、モータ71を逆回転させ吸引ポンプ68を作動させる。これにより、いわゆるキャップ空吸引(図25のキャップ空吸引部分参照)を行い、キャップ部材64a内に残っているインクを除去することができる。続いて前記ON3に停止させて同様にキャップ部材64bに対しても空吸引を行う。
さらにそのキャップ空吸引のあとに、回動カム体74をOFF4の位置に停止させ、且つ切換弁ユニット69の溝113cをポートFに連通させる(図23の大気連通吸引)。すなわち、大気に開放しているチューブ76dを吸引ポンプ68に連通させた状態で、モータ71を逆回転させ吸引ポンプ68を回転させることにより、切換弁ユニット69等に残存しているインクを吸引する。
そして、図2において左端位置にあるキャリッジ17を記録動作に向かわせる。
制御装置は、エアバッファ室40a〜40dから気泡(空気)除去する処理の指令を出力すると、キャリッジ17が右端の待機位置にないとき、まず、前述のとおり回動カム体74をON1に載った直後の位置に回転させておいて、キャリッジ17を右端の待機位置に移動させる。そして、モータ71を連続的に正回転させて回動カム体74をON5の位置まで連続回転させる。その位置に達するまでに、前記ON4からOFF4の位置において平行移動カム体96をX1方向に移動させ、摺接ピン78を中間カム面102bから最下カム面102a側に移動させて、支持ブロック7を最下位置まで下降させる一方、摺接ピン99を中間カム面103bから最上カム面103c側に移動させて、付勢ばね100にて昇降体66を上昇させる。これにより、当該昇降体66上の全てのリリースロッド62が排気弁手段41における全てのバルブロッド56及び弁体55、パッキン57を押し上げて弁開放状態にする。また、各小径通路51bの下端開口部に各吸引部90が密着し、全てのエアバッファ室40a〜40dは気泡排出通路47a〜47d、出口部54、通路筒52、通路孔51、吸引部90、通路92,排出筒93、チューブ76cを介して切換弁ユニット69のポートWと連通する(図20、図9参照)。エアポンプ28は、昇降体66が上昇を開始したON4の位置から作動を開始し、インクタンク7a〜7d内のインクに正圧を作用させ、中空針26、インク供給チューブ27a〜27dを介して各エアバッファ室40a〜40d内の圧力を上げるが、切換弁ユニット69のポートWが閉じている(図24のOFF4)ので、気泡を排出することはない。
そして、回動カム体74のON5の位置において切換弁ユニット69の切換部材110をポートWと溝112cとが連通する(図23のバッファ吸引)と、上記のエアポンプ28の動作による圧力によって各エアバッファ室40a〜40d内のインク液面を押し上げ、その上方に溜まっている空気(気泡)を、上記の連通した気泡排出通路47を介して排出する。なお、その場合、前述の吸引動作の際にエアポンプ28を作動する場合よりも、駆動モータ30の回転速度を高くして、エアポンプ28による正圧を高くする。ただし、この場合も正圧は、ノズルからインクが漏れ出さない程度の大きさである。
なお、この気泡排出時に気泡(空気)と共に少量のインクは漏出するので、このインクを吸引するために、メンテナンス用モータ71を逆回転でかつ間欠的に複数回回転させ、吸引ポンプ68を間欠的に複数回作動させる(図25の排気空吸引部分参照)。これにより、気泡(空気)と共に漏出した少量のインクは、皿状の吸引部90から、リリースロッド62の基端部周囲の吸い口91、通路92、排出筒93、チューブ76c、ポートW、吸引ポンプ68を介して廃液フォーム111に排出される。間欠的に駆動するのは、キャップの空吸引と異なり、気泡(空気)と共に漏出するインク量は少ないので、連続的に吸引する必要がないからである。この場合、環境温度によってエアポンプ28の作動時間(t4)を変化させ、さらにそれに応じて吸引ポンプ68の間欠作動回数を変化させるようにしても良いし、それらを一定に設定しても良い。
この後、前述の吸引による回復動作と同様に、回動カム体74をOFF1からON3の位置に回転して吸引による回復動作を継続して行い、キャリッジを移動してワイパによる払拭動作、さらにその後、回動カム体74をON2の位置まで回転してキャップ空吸引、切換弁ユニット68内の残留インクの吸引を行う。なお、気泡(空気)除去動作後の吸引回復動作は、省略してもよい。
次に、本発明の第2実施形態について図27〜図36を用いて説明する。
前述した第1実施形態では、エアバッファ室内の空気を排出するときの気泡排出通路毎の流路抵抗値をほぼ等しくするために、気泡排出通路の長さ及び断面積を等しく設定していたが、これに替えて、第2実施形態では、前記流路抵抗値をほぼ等しくするために、気泡排出通路の長さの違いに応じて、気泡排出通路の断面積を変化させるように構成したものである。
図27に示すように、インクジェットプリンタ200は、本体フレーム201に内包されて被記録媒体である用紙Pにインクを吐出させて記録する記録機構部202と、記録機構部202における記録ヘッドユニット203のメンテナンス処理を行うメンテナンスユニット204と、前記本体フレーム201内に固定して配置される記録ヘッドユニット203に供給するインクを貯留するインクタンク205等から構成されている。
フルカラー記録のための複数のインクタンク205(個別の色、即ち、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用のインクタンクに対しては符号205a〜205dを付する、図27参照)は、インクの消耗に応じて交換することができる。
記録機構部202において、本体フレーム201内に平行状に設けられた左右長手の後ガイド軸206と、前ガイド軸207とにキャリッジ209が摺動自在に載置され、該キャリッジ209に記録ヘッドユニット203が一体的に取付けられている。
本体フレーム201の右後側に配置されたキャリッジ駆動モータ210と、無端帯であるタイミングベルト211とにより前記キャリッジ209は前記前後ガイド軸206、207に沿って左右方向に往復移動可能に構成されている。他方、図示しないが、公知の用紙搬送機構により、用紙Pは前記記録ヘッドユニット203の下面側で前記キャリッジ209の移動方向と直交する方向に水平状(図27の矢印A方向)に搬送される。
搬送される用紙Pの幅より外側には、その一端側(第2実施形態では図27の左端部)に、インク受け部212が設けられており、他端側には、メンテナンスユニット204が配置されている。これにより、記録動作中に定期的に記録ヘッドユニット203は前記インク受け部212が設けられたフラッシング位置にてノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部212にてインクを受ける。他端側のヘッド待機位置では、前記メンテナンスユニット204が配置されてノズル面のクリーニングを行い、また、色毎にインクを選択的に吸引するための回復処理及び後述するバッファタンク213内の気泡(空気)を除去する除去処理を行う。
図27に示すように、前記記録ヘッドユニット203の下面のノズル面より下方位置に、個別の色毎のインクタンク205をそれぞれ前方から挿入して装着できるように構成されている。図27において、左側から順に、ブラックインク(BK)用のインクタンク205a,シアンインク(C)用のインクタンク205b、マゼンタインク(M)用のインクタンク205c、イエローインク(Y)用のインクタンク205dは、水平且つ並列状に配置される。
前記各インクタンク装着部の後側には、各色のインクタンク205の挿入方向(後側壁面)に対向するようにインク供給用中空針(図示せず)を水平状に突設している。各色のインクに対応する中空針の基端部は、対応する可撓性を有するインク供給チューブ(請求項のインク供給管に相当)214a〜214dを介して記録ヘッドユニット203に接続されている。この場合、ブラック用とシアン用のインク供給チューブ214a,214bの中途部同士、マゼンタ用及びイエロー用のインク供給チューブ214c,214dの中途部同士を上下に重ねて結束している。
次に、キャリッジ209に搭載された記録ヘッドユニット203を、図28及び図29を参照しながら説明する。第2実施形態ではフルカラー記録のために記録ヘッドユニット203は、箱状に形成されたヘッドホルダ220と、そのヘッドホルダ220の底板220aの下面側に固定されたインクジェット式の記録ヘッド221と、前記底板220aの上側に固定されたバッファタンク213及び排気弁手段226とを備える。
記録ヘッド221の下面には、図28(記録ヘッド221を下面からみた図)において左側からブラックインク(BK)用のノズル222aの列と、シアンインク(C)用のノズル222bの列と、イエローインク(Y)用のノズル222cの列と、マゼンタインク(M)用のノズル222dの列とが、キャリッジ209の移動方向(主走査方向)と直交する方向に長く形成されている。そして、用紙Pの上面に対向するように各ノズル222が下向きにて露出している。
前記記録ヘッド221は、特開2002−67312号公報、特開2001−219560号公報などで公知のものと同様に、上面の一側に各インク色(例えば4色)毎のインク供給口を有し、その供給口から延びる各インク供給チャンネルを介してそれぞれ多数の圧力室にインクが分配され、各圧力室に対応する圧電素子などのアクチュエータ223の駆動によりノズル222からインクを吐出させるものである。アクチュエータ223の上面には、そのアクチュエータ223に電圧を印加するフレキシブルフラットケーブル224が固定されている。各インク供給口には各インクタンク205からバッファタンク213を介してインクが供給される。
次に、図29〜図34に基づいて、バッファタンク213及び排気弁手段226の構成について詳述する。バッファタンク213は、インク色毎に独立した複数のエアバッファ室227を、主仕切り壁235を挟んで、かつ主仕切り壁と交差する副仕切り壁235a、230によって区画して備えている。実施形態では、主仕切り壁235の下にブラックインク(BK)用のエアバッファ室227aの一部が配置され、主仕切り壁235の上にシアンインク(C)用のエアバッファ室227b、イエローインク(Y)用のエアバッファ室227c及びマゼンタインク(M)用のエアバッファ室227dが副仕切り壁235a、230によって区画されて配置され、全体として上下に2層状に構成されている。
具体的には、バッファタンク213における本体ケース225は、矩形筒状の側壁を外周として有し、上下面を開放した箱状の下ケース232と、その下ケース232の上面を覆って固定された上ケース231とから構成される。上ケース231及び下ケース232は共に合成樹脂材料にて射出成形されたものであり、超音波溶着等にて液密的に結合されている。
下ケース232には、その下面にその下面の面積の大部分を開放した開口部が設けられ、その開口部及び上方の開放面からそれぞれ平行に間隔を置いた位置に主仕切り壁235が形成されている。そして、その開口部はダンパー用の可撓性膜(合成樹脂製で空気及び液体非透過性のフィルム)236で封止されている。具体的には、開口部の外周を画定する外周壁237の下端面に、可撓性膜236の外周縁を接着もしくは超音波溶着等により接合する。その可撓性膜236と主仕切り壁235との間にブラックインク(BK)用のエアバッファ室の第1室227a−1が形成されている。可撓性膜236とヘッドホルダ220の底板220aとの間には、可撓性膜236の変形のための間隙が確保されて、バッファタンク213がヘッドホルダ220に固着されている。
前記主仕切り壁235の上面には、その主仕切り壁235と交差して一体的に立ち上がった副仕切り壁235aが形成され、下ケース232内の主仕切り壁235よりも上方の部分が、後述する上ケース231と共同して複数のエアバッファ室として形成されている。実施形態では、2個の副仕切り壁235aが相互に間隔を置いて配置され、下ケース232の側壁と共同してシアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の3個のエアバッファ室227b〜227d(詳細にはそのエアバッファ室の第2室239b〜239d)が形成されている。各副仕切り壁235aは、図32に示すように下ケース232内を全長にわたって延びて形成され、主仕切り壁235の上面から外れた位置においてエアバッファ室227b〜227d(詳細には第2室239b〜239d)を各インク色毎のインク流出口241b〜241dに連通させている。
さらに追加の副仕切り壁235bが、インク流出口241b〜241d近傍の主仕切り壁235の上面から外れた位置へ延びて形成され、その副仕切り壁235bと下ケース232の側壁との間に、ブラックインク(BK)用のエアバッファ室の第2室239aが形成されている。その第2室239aの下端は、インク流出口241aに連通している(図29、図32参照)。
ブラックインク(BK)用のエアバッファ室の第1室227a−1は、第2室239aに、副仕切り壁235bに沿って形成した円筒部内を上下方向に貫通する絞り部としての通路242を介して連通している(図32参照)。通路242は、第1室227a−1よりも断面積を小さく形成され、その第1室227a−1内よりも流路抵抗が大きく設定されている。
上ケース231は、上面に複数の凹部を備えた偏平形状に形成されている。上ケース231には、ブラックインク(BK)用のエアバッファ室の第1室227a−1とほぼ対応する上方位置に、2個の副仕切り壁230で仕切られたシアンインク(C)、イエローインク(Y)及びマゼンタインク(M)用の3個のエアバッファ室227b〜227dの第1室227b−1〜227d−1が、上方に開放して形成されている(図30参照)。副仕切り壁230は、下ケース232の副仕切り壁235aの延長面上に位置し、第1室227b−1〜227d−1の底壁229には、絞り部としての多数個の通路孔244が上下に貫通形成され、各第1室227b−1〜227d−1は、その下の室(下ケース232に副仕切り壁235aによって区画された室)すなわち第2室239b〜239dとそれぞれ個別に連通している。
通路孔244は、各第1室227b−1〜227d−1よりも断面積を小さく形成され、その各第1室227b−1〜227d−1よりも流路抵抗が大きく設定されている。
第1室227b−1〜227d−1の上方開放面は、1枚のダンパー用の可撓性膜(合成樹脂製で空気及び液体非透過性のフィルム)243で共通に封止されている。具体的には、各第1室の外周を画定する外周壁及び副仕切り壁230の上端面に、可撓性膜243を接着もしくは超音波溶着等により接合している。
前記各インク流出口241a〜241dは、図31に示すように下ケース232の下面に並んで位置し、可撓性膜236よりも下方に延長した位置で、下向きに開口している。一方、記録ヘッド221は、上面に各インク色毎のインク供給チャンネル(マニホールド)の端部と連通した複数のインク供給口(図示しない)を、各インク流出口241a〜241dと対向した位置に備えている。各インク流出口241a〜241dは、ヘッドホルダ220の底板220aに設けた開口を貫通し、記録ヘッド221の各インク供給口と、ゴムパッキン等のシール材を介して連通している。
インク流出口241a〜241dと反対側の下ケース232の側面からフランジ状に突出した部分232aには、図29及び図30に示すように各インク色毎のインク流入口247(実施形態では4個、ブラックインク(BK)用、シアンインク(C)用、イエローインク(Y)用及びマゼンタインク(M)用の各インク流入口をそれぞれ247a、247b、247c、247dで示す)が上向きに開口されている。
これらのインク流入口に、各インク色毎のインク流路を有するジョイント部材245が、各インク流路の下端を対応させパッキン等のシール246を介して接続されている。ジョイント部材245の各インク流路上端には、各インク色のインク供給チューブ214a〜214dの先端が接続されている。
そして、前記ブラックインク(BK)用のインク流入口247aは、前記下ケース232の下面に下向き開放状に水平に形成された凹通路248を介して対応するエアバッファ室227aの第1室に接続されている。他のインク流入口247b〜247dは前記下ケース232の下面に下向き開放状に水平に形成された凹通路248及び下ケース232の一側壁内に沿って上下方向(主仕切り壁235のなす面とほぼ直交する方向)に延びるように形成された連通路249と、上ケース231に上下に貫通する連通路250とを介して対応するエアバッファ室227b〜227dの第1室に接続されている(図30、図31、図33(a)、図33(b)及び図34(b)参照)。その場合、前記連通路250の開口面が可撓性膜243の下面に近接した高さ位置にあるので、エアバッファ室227b〜227d内に流入されたインクが連通路250の開口面と対峙して接近する可撓性膜243に直接的に衝突できるから、インク供給チューブ214b〜214d内のインクの動圧変動を効率的に吸収緩和(ダンピング)させることができるのである。
各インク流入口247a〜247dおよび凹通路248の開放下面は、前記可撓性膜236を延長した部分で封止されている。
ブラックインク用のエアバッファ室の第1室227a−1の天井面すなわち主仕切り壁235の下面に、凹通路248側の側壁に両端を接続した平面視U字形のリブ235cが、可撓性膜236まで達しない高さに形成されている。このため、U字形のリブ235cに囲まれる部分には、インクが侵入しない空間が確保され、この中の空気と可撓性膜236との共同で後述するインクの圧力変動を吸収するようにしている。
また、上ケース231の上面には、前記インク流出口241a〜241d近傍の各第2室239a〜239dとそれぞれ対応する位置に、各エアバッファ室の第3室255a〜255dが互いに独立して凹み形成されている。各第3室255a〜255dは、上ケース231に貫通形成された空気孔254により、対応する第2室239a〜239dとそれぞれ連通している。つまり、各インク色毎のエアバッファ室227a〜227dは、それぞれ第1室から第3室までの3個の室から構成されている。
さらに、上ケース231の上面に互いに独立して複数の気泡排出通路251が凹み形成され、その気泡排出通路251は、本体ケースの長手方向(インク流入口247a〜247dとインク流出口241a〜241dを結ぶ方向)と直交する方向に延びている。上ケース231には、それぞれ前記第1室と第3室との間において各第2室239a〜239dの上部に連通する通気孔253が貫通形成され、この通気孔253が気泡排出通路251の一端となっている。また、気泡排出通路251の他端は、後述する排気弁手段226と接続されている。
各通気孔253は、上ケース231から各第2室239a〜239d内に垂下する筒状壁内に形成され、上ケース231から所定距離置いた位置で各第2室239a〜239d内に開口している。つまり、後述するように通気孔253から第2室239a〜239d内の気泡を排出した状態でも、第2室239a〜239dの上部に筒状壁の垂下高さだけの空気を確保するようにしている。
前記各エアバッファ室の第3室255a〜255d及び気泡排出通路251は、その開放上面を前記可撓性膜243を延長した部分で覆われ、その各室及び通路が画定されている。
バッファタンク213は、主仕切り壁235及び可撓性膜236,243が、キャリッジ209の移動方向すなわち記録ヘッド221のノズルの開口面と平行に延在するように、キャリッジ209上に固定されている。
次に、排気弁手段226について説明すると、下ケース232の一側(図30及び図34(a)の右端)に一体的に設けられた収納部234には、インク色毎(4つ)に上下方向に長く且つ上下に開口する通路孔256が形成されている。前記各通路孔256は上半の大径部256aと下半の小径通路256bとからなる。大径の弁体257の下端には小径のバルブロッド258が一体的に形成されている。バルブロッド258に被嵌され、且つ弁体257の下端面側にシール用のオーリング等のパッキン259が配置されている。前記大径部256aにパッキン259及び弁体257が昇降可能に挿入され、バルブロッド258は小径通路256bに挿入されている。このバルブロッド258の下端は小径通路256bの下端開口部近傍まで延びている。大径部256a内に設けたコイルバネ等のばね手段260にて弁体257を常時下向きに押圧している。この状態で、パッキン259が通路孔256の大径部256aの底面に押圧されて、弁閉止となる(図34(a)参照)。
前記上ケース231の側縁は、前記収納部234の上端を覆う位置まで延長され、図33(b)に示すように、前記各気泡排出通路251の他端が各通路孔256の上端である接続口252とそれぞれ個別に連通されている。すなわち、前記排気弁手段226と前記エアバッファ室227の各第3室255とは、気泡排出通路251で繋がれており、この実施形態では、4つのインク色に対応して、気泡排出通路251が4本形成されている。そして、前述したように、気泡排出通路251(個別には符号251a〜251dを付す)の一端である通気孔253(253a〜253d)により、気泡排出通路251とエアバッファ室227とが繋がれ、気泡排出通路251の他端である接続口252(252a〜252d)により、気泡排出通路251と前記排気弁手段226とが繋がれている。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に各通気孔253がキャリッジ209の移動方向にほぼ沿って配置されているのに対し、接続口252a〜252dは、キャリッジ209の移動方向と直交する方向にほぼ沿って配置されている。その結果、4本の気泡排出通路251においては、図35に示すように、通路孔253と接続口252とを結ぶ直線距離Wは、ブラック用の通路孔253aから接続口252aまでの直線距離をWa、シアン用の通路孔253bから接続口252bまでの直線距離をWb、イエロー用の通路孔253cから接続口252cまでの直線距離をWc、マゼンタ用の通路孔253dから接続口252dまでの直線距離をWdとすると、これらがWa<Wb<Wc<Wdの関係となっている。
しかしながら、この第2実施形態では第1実施形態とは異なり、前記4本の気泡排出通路251は、通気孔253から接続口252に至る経路の通路長Lが、直線距離Wの長さの順序に従って、それぞれに異なる長さに形成されており、ブラック用の通気孔253aから接続口252aまでの通路長をLa、シアン用の通気孔253bから接続口252bまでの通路長をLb、イエロー用の通気孔253cから接続口252cまでの通路長をLc、マゼンタ用の通気孔253dから接続口252dまでの通路長をLdとすると、これらは、La<Lb<Lc<Ldとなるように形成されている。
図36の模式図に示すように、これら各気泡排出通路251a〜251dは、それぞれに対応するインクタンク205a〜205dから接続口252a〜252dに至る経路の一部であり、排気弁手段226によって各エアバッファ室227の気泡を排出するに際しては、インクタンク205a〜205dから接続口252a〜252dに至るまでの流路抵抗値が影響する。
ハーゲン・ポアズイユ式に基づくと、インクタンク205から接続口252に至る経路における気泡排出のための流路抵抗値Rは、(数1)で表される。
なお、μ:インクの粘度、L:気泡排出通路251の通路長、r:気泡排出通路251の等価半径(気泡排出通路251の断面積と等しい面積を有する円の半径)、R0:インクタンク205から通気孔253までの流路抵抗値である。なお、この第2実施形態では、インク流路において通気孔253の上流側となる、インクタンク205a〜205dから、インク供給チューブ214a〜214d、インク流入口247a〜247d及び各エアバッファ室227a〜227dを介して各通気孔253a〜253dに至るまでの経路の流路抵抗値(R0)は、インク供給チューブ214の長さを各色同じにするなどして、あらかじめ相互に等しく設定されている。
そして、(数1)に基づいて、各気泡排出通路251を含むインクタンク205から接続口252までの各経路の流路抵抗値Rを相互に全て等しく設定するために(数2)とおくことにより、各気泡排出通路251の等価半径ra〜rdを求めることができる。
ra、rb、rc、rd:各気泡排出通路251a、251b、251c、251dの等価半径である。
換言すれば、気泡排出通路251a〜251dの通路長La〜Ldは前述したようにそれぞれで異なるため、各気泡排出通路251a〜251dの等価半径ra〜rdを変えることで、各流路抵抗値を相互に等しくすることができる。そして、等価半径ra〜rdから気泡排出通路251a〜251dのそれぞれの断面積を決定することができる。
従って、第2実施形態では、各気泡排出通路における流路抵抗値を相互に等しくするために、通路長Lが長い気泡排出通路251ほど、その流路抵抗値が小さくなるように断面積(通路の長手方向と直交する方向の断面積)を大きくし、通路長Lが短い気泡排出通路251ほど、その流路抵抗値が大きくなるように断面積を小さくしている。そして、第2実施形態では、各気泡排出通路251の通路の幅寸法を等しくする(図33(b)参照)一方、通路の深さ寸法を変える(図示せず)ことにより、断面積を変化させている。
次に、前記排気弁手段226による排気が実行されるメンテナンスユニット204について説明する。
メンテナンスユニット204は、記録ヘッド221のノズル222の開口面を開閉可能に覆うキャップ部材271と、排気弁手段226の下端面すなわち各小径部256bの開口面を個別に開閉可能に覆う複数の小キャップ部材272とを備える。両キャップ部材271,272は、公知のメンテナンスユニットと同様の上下移動機構273により、キャリッジ209が待機位置(図27において右端位置)に移動したときに、ノズル222の開口面及び排気弁手段226の下端面に密着するように上昇し、他の位置ではそれらの面から離隔するように下降する。また、キャップ部材271は、排出手段としての吸引ポンプ274に着脱自在(第1実施形態のメンテナンスユニットと同様)に接続され、吸引ポンプ274の駆動によりノズル222から増粘したインクや異物が吸引除去される。
各小キャップ部材272は、そのキャップ部材よりも突出した突起部272a(第1実施形態のリリースロッド62に相当)をそれぞれ有し、排気弁手段226の下端面に密着したとき、突起部272aにより、前記バブルロッド258をばね手段260の付勢力に抗して押し上げ、パッキン259を大径部256aの内底部から離し、弁開放状態にする。また、各小キャップ部材272は共通の流路を介して前記吸引ポンプ274に接続され、吸引ポンプ274の駆動により各エアバッファ室の第2室239a〜239d内に蓄積した気泡が一括して吸引排出される。これは、インクタンク205からインク供給チューブ214を通して供給されるインクを第2室239a〜239d内に一旦貯留することで、インク中から気泡を分離浮上させ、第2室239a〜239dの上部に蓄積した気泡を、上記のように、吸引ポンプ274により排出させるのである。
キャップ部材271と小キャップ部材272は、切替弁275により択一的に吸引ポンプ274に接続される。キャップ部材271と小キャップ部材272は、上下移動機構273により、同時にノズル222の開口面及び排気弁手段226の下端面に密着するが、好適には、まず小キャップ部材272をとおして第2室239a〜239dの上部に蓄積した気泡を排出し、その後、キャップ部材271をとおしてノズル222からインクを排出する。仮にキャップ部材271のみで第2室239a〜239dの気泡を排出しようとすると、多量のインクを排出しなければならないが、上記のようにすることで、少ないインク排出量で、気泡の排出及び記録ヘッドの回復処理を行うことができる。
また、ノズル222からのインク吸引のみ、または第2室239a〜239dの気泡の排出のみを、それぞれ単独に行うこともできる。
なお、上記のように吸引ポンプ274の吸引動作に代えて、インクタンク205側から、インクに正圧を加えて、ノズル222から増粘したインクや異物を吸引除去したり、第2室239a〜239dの気泡を排出することもできる。あるいは、吸引動作とインクへの正圧印加を併用することもできる。
次に、本発明の第3実施形態について図37〜図46を用いて説明する。この第3実施形態は、第2実施形態と同様に、エアバッファ室内の空気を排出するときの流路抵抗値をほぼ等しくするために、気泡排出通路の長さの違いに応じて、気泡排出通路の断面積を変化させるように構成したものである。
第3実施形態では、インクの色はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色であり、第2実施形態と同様の各色毎のノズル222の列を有する2つの記録ヘッド221を主走査方向に並列状に配置し、ヘッドホルダ220に固定したものである。
そして、第3実施形態のバッファタンク213は、前記2つの記録ヘッド221に対して対応する色のインクを供給することになる。すなわち、インク流入口247は各色毎に1個であるが、インク流出口241は2個ずつ形成されている。第3実施形態は第2実施形態の変形例であるため、以下、第2実施形態と同じ部品、構成については同じ符号を付して説明する。
この実施形態では、インクの色はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色であるが、図37(記録ヘッド221を下面からみた図)において左側から、シアンインク(C)用のノズル222a、222bの2列、イエローインク(Y)用のノズル222cの列、ブラックインク(Bk)用のノズル222d、222e、222f、222gの4列、イエローインク(Y)用のノズル222hの列、マゼンタインク(M)用のノズル222i、222jの2列とが、キャリッジ209の移動方向(主走査方向)と直交する方向に長く形成されている。そして、用紙Pの上面に対向するように各ノズル222が下向きにて露出している。
前記記録ヘッド221は、特開2002−67312号公報、特開2001−219560号公報などで公知のものと同様に、上面の一側に各インク色毎のインク供給口を有し、その供給口から延びる各インク供給チャンネル260(図37)を介してそれぞれ多数の圧力室261にインクが分配され、各圧力室261に対応する圧電素子などのアクチュエータ(図示せず)の駆動によりノズル222からインクを吐出させるものである。アクチュエータの上面には、そのアクチュエータに電圧を印加するフレキシブルフラットケーブル(図示せず)が固定されている。各インク供給口には各インクタンク205からバッファタンク213を介してインクが供給される。
第3実施形態のバッファタンク313における本体ケース225は、上ケース231と、下ケース232とからなり、下ケース232の上端に上ケース231を超音波溶着等にて液密的に固定されている。
下ケース232には、第2実施形態とほぼ同様に、主仕切り壁235の下にブラックインク(BK)用のエアバッファ室の第1室227a−1が形成され、その第1室227a−1が下ケース232の下面の面積の大部分において下方に開放され、その開放面を覆って可撓性膜236が接合されている。また、下ケース232の下面には、第1室227a−1の開放面に隣接して複数のインク流出口241a〜241dが配置されている。この実施形態においてインク流出口は、中央の2個をブラックインク(BK)用のインク流出口241a、その両側の2個をイエローインク(Y)用のインク流出口241c、そして一方の端の2個をシアンインク(C)用のインク流出口241b、他方の端の2個をマゼンタインク(M)用のインク流出口241dとしている。
ブラックインク(BK)用のエアバッファ室の第2室239aは、平面視において中央の2個のインク流出口241aを囲むように形成された仕切り壁235bによって画定され、主仕切り壁235に貫通形成された通路242によって第1室227a−1と連通している。また、上ケース231の上面に、仕切り壁235bの延長面上に位置する壁230bによって囲まれて形成された第3室255aは、上ケース231に貫通形成された空気孔254によって第2室239aと連通している。
シアンインク(C)、イエローインク(C)及びマゼンタインク(M)用の各エアバッファ室227b〜227dは、第2実施形態とほぼ同様に、主仕切り壁235の上面に形成された副仕切り壁235a、及びそれの延長面上において上ケース231の上面に形成された副仕切り壁230によって画定されている。各エアバッファ室227b〜227dは、上ケース231の底壁229の上側を第1室227b−1〜227d−1、下側を第2室239b〜239dとして形成されている。第2室239b〜239dは、下ケース232の長手方向全長にわたって延びインク流出口241b〜241dとそれぞれ連通している。この実施形態においては、イエローインク(C)用の第2室239cが平面視でY字状に形成され、その第2室239cを挟んでシアンインク(C)用の第2室239b、マゼンタインク(M)用の第2室239dが形成されている。
上ケース231上面の各第1室227b−1〜227d−1は対応する第2室の上方に位置しているが、この第3実施形態においては、第2実施形態のシアンインク(C)、イエローインク(C)及びマゼンタインク(M)用の第3室がない。各第1室の底壁229において、後述する連通路250に近い側には複数の通路孔244が、インク流出口241b〜241dに近い側にも通路孔244がそれぞれ貫通形成され、各第1室と第2室とを連通している。
複数の気泡排出通路251は、上ケース231上面に凹み形成され、その一端としての通気孔253を通して各第2室239a〜239dに連通し、その他端を第2実施形態と同じ構造の排気弁手段226に接続している。シアンインク(C)、イエローインク(C)及びマゼンタインク(M)用の通気孔253は、第2実施形態と同様に、第2室239b〜239dの天井面よりも下方に開口し、その第2室の上部に空気を貯めるための空間を確保している。
各第1室227b−1〜227d−1、ブラックインク用の第3室255a及び気泡排出通路251の上方開放面は、1枚の可撓性膜243によって覆われている。
下ケース232には、第2実施形態とほぼ同様にインク流入口247a〜247dが形成され、ブラックインク用のインク流入口247aは、凹通路248を介してブラックインク用のエアバッファ室227aに接続され、シアンインク(C)、イエローインク(C)及びマゼンタインク(M)用の各インク流入口247b〜247dは、連通路249,250を介して対応するエアバッファ室227b〜227dにぞれぞれ接続されている。各インク流入口247a〜247dおよび凹通路248の開放下面は、前記可撓性膜236を延長して封止されている。
第3実施形態でも第2実施形態と同様に、気泡排出通路251(251a〜251d)の一端としての各通気孔253(253a〜253d)が、キャリッジ209の移動方向にほぼ沿って配置されているのに対し、気泡排出通路251(251a〜251d)の他端としての接続口252(252a〜252d)が、キャリッジ209の移動方向と直交する方向にほぼ沿って配置されている。そのため、各気泡排出通路251における通気孔251と接続口252とを結ぶ直線距離Wは、図46に示すように、ブラック用の通路孔253aから接続口252aまでの直線距離をWa、シアン用の通路孔253bから接続口252bまでの直線距離をWb、イエロー用の通路孔253cから接続口252cまでの直線距離をWc、マゼンタ用の通路孔253dから接続口252dまでの直線距離をWdとすると、Wb<Wc<Wa<Wdの関係となっている。
そして、ブラック用の通気孔253aから接続口252aまでの通路長をLa、シアン用の通気孔253bから接続口252bまでの通路長をLb、イエロー用の通気孔253cから接続口252cまでの通路長をLc、マゼンタ用の通気孔253dから接続口252dまでの通路長をLdとすると、これらは、直線距離Wの長さの順序に従って、Lb<Lc<La<Ldとなるように形成されている。
そのため、第3実施形態の各気泡排出通路251においても、第2実施形態と同様に、対応する各インクタンク205から接続口252に至るまでの流路抵抗値Rを同じにするために、前記した(数1)及び(数2)に基づいて、各気泡排出通路251の等価半径を決定し、この等価半径から各気泡排出通路251の断面積を決定している。第3実施形態では、通路の深さ寸法を変える(図示せず)ことに加えて通路の幅寸法も変えて(図44(a)参照)、断面積を変化させている。
第1〜第3の実施形態に示したように、本発明では、エアバッファ室(40、227)から気泡を排出するに際しての流路抵抗値Rが相互に等しくなるように設定することで、各エアバッファ室からの排気量がほぼ等しくなるようにしている。その結果、各エアバッファ室からの気泡の除去作業に要する時間がほぼ等しくなり、前記除去作業を全エアバッファ室で同時に終了することができ、作業の効率が向上する。気泡排出通路によって排気量が異なっていると、早く気泡の排出が終了したエアバッファ室からは、気泡に引き続きインクが排出されてインクを浪費することになるが、本発明では、気泡排出通路から排出されるインクの量を極力減らすことができるため、エアバッファ室内のインクを有効に利用することができる。
また、第1実施形態では、各気泡排出通路が通路長を等しくなるようにすることで、各気泡排出通路の流路抵抗値を等しくしていたのに対し、第2及び第3実施形態では、各気泡排出通路の通路長の違いに応じて通路の断面積を変えることで、各気泡排出通路の流路抵抗値を等しくしている。そのため、特に第2及び第3実施形態では、通路長の短い気泡排出通路251をあえて遠回りさせて配置することなく、全気泡排出通路251の流路抵抗値を相互に等しくできるので、気泡排出通路の配置を容易に行うことができるとともに、他の構成の配置に応じて自由に気泡排出通路を配置することができる。従って、装置全体としても、小型化を容易に図ることができる。
なお、本発明は、種々の種類のインクジェットプリンタに適用できることはいうまでもない。
17、209 キャリッジ
34、221 記録ヘッド
36、213、313 バッファタンク
40、227 エアバッファ室
41、226 排気弁手段
47、251 気泡排出通路
34、221 記録ヘッド
36、213、313 バッファタンク
40、227 エアバッファ室
41、226 排気弁手段
47、251 気泡排出通路
Claims (9)
- 被記録媒体に対して移動するキャリッジにインクジェット式の記録ヘッドを搭載し、プリンタの本体に搭載されたインクタンクからインク供給管を介して、前記キャリッジに搭載されたバッファタンクを経て前記記録ヘッドにインクを供給するように構成されたインクジェットプリンタにおいて、
前記記録ヘッドは複数のインク供給チャンネルを有し、
前記バッファタンクには、インクとそのインクから分離した気泡とを貯留するエアバッファ室が各インク供給チャンネルに対応して複数形成され、
前記キャリッジには、前記各エアバッファ室に一端を接続し他端を外部に開放可能とする気泡排出通路が前記各エアバッファ室ごとに形成され、
前記各気泡排出通路は、前記気泡排出のための流路抵抗値が相互にほぼ等しく形成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記各気泡排出通路の他端側には、該気泡排出通路を開閉する排気弁手段がそれぞれ設けられ、前記記録ヘッドからインクを吐出するときには、前記排気弁手段が閉じられ、前記排気時には、前記排気弁手段が開放されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記各気泡排出通路は、前記バッファタンクの上壁に沿って形成され、その気泡排出通路の前記他端側に接続した前記複数の排気弁手段は、前記バッファタンクの一側に並んで配置されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記各気泡排出通路の一端は、前記バッファタンクの上壁に形成された各通気孔を介して前記各バッファ室に接続され、前記各気泡排出通路は、前記バッファタンクの上壁に沿って形成された凹溝と、その凹溝を覆って接着した膜体との間に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
- 前記複数のエアバッファ室の少なくとも各一部は前記キャリッジの移動方向にほぼ沿って配列され、前記複数の気泡排出通路の各他端は前記キャリッジの移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されており、
前記複数の気泡排出通路は、その一端と他端とをそれぞれほぼ同じ長さで結んで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。 - 前記複数のエアバッファ室の少なくとも各一部は前記キャリッジの移動方向にほぼ沿って配列され、前記複数の気泡排出通路の各他端は前記キャリッジの移動方向と直交する方向にほぼ沿って配列されており、
前記各気泡排出通路の断面積は、その一端と他端とを結ぶ通路長が長いほど大きく、前記通路長が短いほど小さく形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。 - 前記インクタンク側から前記各バッファ室内のインクに共通に正圧を印加し前記各バッファ室内のインク液面を上昇させるエアポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
- 前記キャリッジ外の位置には、該キャリッジが所定位置に移動したとき、前記各排気弁手段を開放させる弁操作部材を有する気泡除去手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
- 前記気泡除去手段は、前記各排気弁手段を介して前記各気泡排出通路に共通に接続される吸引ポンプに接続されていることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
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