次に、本発明を具体化した実施形態について説明する。本実施の形態は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFC)1に本発明を適用したものであり、図1に示すように、装置の本体ケース2の後端側に給紙装置3が設けられ、該給紙装置3の前方の上側には、コピー機能とファクシミリ機能のための原稿読取り装置4が設けられている。原稿読取り装置4の下側全体にプリンタ機能を実現するためのインクジェットプリンタ5(後述する)が設けられ、その前側には記録(印字)されて排紙されてくる用紙P等の被記録媒体を受けるための排紙用トレイ6が設けられている。
原稿読取り装置4は、図示しないが、後端部において水平軸により上下揺動可能に構成されており、カバー体4aを上側に開けると、原稿を載置する載置用ガラス板が設けられ、その下側に原稿読取り用のイメージスキャナ装置が設けられている。
原稿読取り装置4全体を上側に開けると、フルカラー記録のためのインクジェットプリンタ5に使用するべく、インクタンクとしてのインクカートリッジ7(個別の色、即ち、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用のカートリッジに対しては符号7a〜7dを付する、図2参照)を交換することができる。
次に、図2〜図5を参照しながら、インクジェットプリンタ5の概略構成について説明する。インクジェットプリンタ5は、本体フレーム14に内包されて被記録媒体である用紙Pにインクを噴射させて記録する印字機構部9と、印字機構部9における記録ヘッドユニット10のメンテナンス処理を行うメンテナンスユニット11と、記録ヘッドユニット10にインクカートリッジ7a〜7dからのインクを供給するためのインク供給部12と、これらインクカートリッジ7a〜7dに加圧(正圧)エアを供給するエア供給部13等から構成されている。
印字機構部9及びメンテナンスユニット11は、図2、図3及び図5に示すように、上部を略楕円状に開放した箱状の本体フレーム14内に収納される。本体フレーム14内に平行状に設けられた左右長手の後ガイド軸15と、前ガイド軸16とにキャリッジ17が摺動自在に載置され、該キャリッジ17に記録ヘッドユニット10が一体的に取付けられている。
本体フレーム14の右後側に配置されたキャリッジ駆動モータ18と、無端帯であるタイミングベルト19とにより前記キャリッジ17を前記前後ガイド軸16、15に沿って左右方向に往復移動可能に構成されている(図2参照)。他方、本体フレーム14の左後側に配置された給紙モータ20と、本体フレーム14の左側に配置されたベルト、歯車等の伝動機構21を介して、前記後ガイド軸15の下方のメイン搬送ローラ22と、前ガイド軸16の下方に位置する搬送ローラ(図示せず)とにより、用紙Pを前記記録ヘッドユニット10の下面側で水平状に搬送し、記録済の用紙Pは排紙用トレイ6の方向に搬送排出される。
搬送される用紙Pの幅より外側には、その一端側(実施形態では図2及び図3で左端部)に、インク受け部8が設けられており、他端側には、メンテナンスユニット11が配置されている。これにより、記録動作中に定期的に記録ヘッドユニット10は前記インク受け部8が設けられたフラッシング位置にてノズルの目詰まり防止のためのインク噴射を行い、インク受け部8にてインクを受ける。他端側のヘッド待機位置では、前記メンテナンスユニット11が配置されてノズル面29のクリーニングを行い、また、色毎にインクを選択的に吸引するための回復処理及び後述するバッファタンク36内の気泡(空気)を除去する除去処理を行う。
次に、インク供給部12の構成について説明する。図2、図4及び図5に示すように、用紙Pの搬送経路よりも下方であって、本体ケース2の下仕切り板2aの上面前側には、前記記録ヘッドユニット10の下面のノズル面29より下方位置に、個別の色毎のインクカートリッジ7をそれぞれ前方から挿入して装着できるカートリッジ装着部23が設けられており、図2において、左側から順に、ブラック(BK)用のインクカートリッジ7a,シアン(C)用のカートリッジ7b、マゼンタ(M)用のカートリッジ7c、イエロー(Y)用のカートリッジ7dが水平且つ並列状に配置される。
各インクカートリッジ7内には、その略全域に可撓性を有する膜材24a(これが変形可能な壁面に相当する)が貼り付けられ、この膜材24aにより下側のインク収容室24bと上側の空気室24cとに区画されている。
各インクカートリッジ7の後側壁面には、前記空気室24cと大気とに連通する空気孔(図示せず)が穿設されている一方、前記インク収容室24bと外とを区切るシリコーン製等のシール部材25が装着されている。
前記カートリッジ装着部23の後側には、各色のインクカートリッジ7の挿入方向(後側壁面)に対向するようにインク針26を水平状に突設している。各色のインクに対応するインク針26の基端部は、対応する可撓性を有するインク供給チューブ27a〜27dを介して記録ヘッドユニット10に接続されている。この場合、ブラック用とシアン用のインク供給チューブ27a,27bの中途部同士、マゼンタ用及びイエロー用のインク供給チューブ27c,27dの中途部同士を上下に重ねて結束している。
エア供給部13は、前記各インク針26と平行状にて前向きに突出させた4箇所の圧着パッド31と、駆動モータ30にて駆動されるダイヤフラム型等のエアポンプ28と、それらを接続するエアチューブ32とから構成され、前記カートリッジ装着部23に挿入固定された各インクカートリッジ7後面の空気孔に前記各圧着パッド31を付勢バネの付勢力で密着させるように構成されている。そしてエアポンプ28を駆動することで、各インクカートリッジ7a〜7dの空気室24cに加圧(正圧)エアを供給し、各インク収容室24b内のインクに正圧を付与することができる。
ここで、図5に示すように、記録ヘッドユニット10におけるノズル33を開口させたノズル面29は、インク針26の箇所よりも水頭Hだけ高い位置に配置されており、印字動作時には、記録ヘッドユニット10のノズル33に、この水頭Hに相当する負圧(背圧)が作用している。ることになる。インクの初期導入時において、公知のように、後述する吸引キャップ部材をノズルに密着させて吸引ポンプにより吸引することにより各インクカートリッジ7a〜7dから記録ヘッド34に導入するが、この時エアポンプ28を駆動して、各インクカートリッジ7a〜7dインクに正圧を付与するようにしてもよい。
次に、図3、図6〜図11を参照しながら、キャリッジ17に搭載された記録ヘッドユニット10及び開閉弁手段41等の構成について説明する。本実施形態ではフルカラー記録のために記録ヘッドユニット10は、図6(a)及び図10に示すように、各色毎のノズル33の列を有する記録ヘッド34と、その記録ヘッド34の上面に接合された平板状の圧電素子等のアクチュエータ35と、気泡貯留室40等を備えたバッファタンク36と、該バッファタンク36の側面に隣接する開閉弁手段41を有するケース37等から構成されている。
記録ヘッド34の下面には、図3において左側からブラック(BK)用のノズル33aの列と、シアン(C)用のノズル33bの列と、マゼンタ(M)用のノズル33cの列と、イエロー用のノズル33dの列とが、キャリッジ17の移動方向と直交する方向に長く形成されている。そして、用紙Pの上面に対向するように各ノズル33が下向きにて露出している。記録ヘッド34は、バッファタンク36から供給されるインクを公知ものと同様に、ノズル毎の圧力室に分配し、この圧力室に対応する圧電素子などのアクチュエータ35によりノズルからインクを噴射させるものである。
各色のインク毎に気泡貯留室40(個別には符号40a,40b,40c,40dで示す、図10等を参照)が区画されたバッファタンク36は、合成樹脂材にて平面視略矩形状に形成され、バッファタンク36の一側面には、前記各色のインク供給チューブ27a〜27dの先端が連結されたジョイント部材38(詳細は省略する)と接続するためのインク流入口39(実施形態では4箇所)が横向きに突設されている。各インクカートリッジ7から供給されたそれぞれのインクは、各気泡貯留室40に溜められ、インク中の気泡が分離された後、バッファタンク36の底面側のインク流室42から下向きの流出部43を介して前記記録ヘッド34に供給される。気泡貯留室40の下面側とインク流室42との大部分を略水平状に仕切るフィルタ44はステンレス鋼の金属ワイヤを網目状に編んだメッシュにて構成されている。記録動作時の遅い速度のインク流に対しては、気泡貯留室40からインク流室42へのインクの流れを許容する一方、そのインクの流れに乗ってインク中に含まれる気泡やゴミがフィルタ44を通って記録ヘッド34側へ流れるのを阻止する。フィルタ44は、インク流入口39から遠い端部に、流路抵抗がフィルタ44のメッシュよりも十分小さい開口44aを有し、後述する回復パージ処理動作時の速い速度のインクに対しては、開口44aを通してインク流室42へのインクの十分な流れを確保する。
図6(a),図6(b)及び図7に示すように、各気泡貯留室40の天井壁45には、エア(空気)と共にインクを吸引するための筒状の吸引口46を下向きに突設し、この各吸引口46に一端が連通し、且つ他端が後述するケース37の入口部に連通する気泡排出通路としての吸引路47(個別のものを符号47a〜47dで示す)を天井壁45の上面側に形成する。
従来のように、回復パージ動作時に、ノズル側からインクを吸引し、且つ気泡貯留室40内に溜まっているエア(気泡)を吸引しようとすると、吸引力を大きくしないと、記録ヘッド34の細いインク流路内で気泡を詰まらせるという問題があり、また、バッファタンク36内のインクのほぼ全てに対応する量を排出した後でないと、その上側の気泡(空気)を吸引できないから、多量のインクを無駄に捨てることになり、インクジェットプリンタのランニングコストが高くなるという問題があった。
本実施形態の構成によれば、バッファタンク36の上部の気泡貯留室40内に溜まった空気を当該バッファタンク36の上部特に天井壁45の箇所から抜くので、気泡が下位置にある記録ヘッド34へ流れ込まず、従って、この記録ヘッド34内のインク流路に気泡が詰まるという不良が発生しない。また、バッファタンク36から気泡(空気)を除去する作業に伴って、当該バッファタンク36内に貯留されているインクを多く排出する必要がないからランニングコストも低減でき、経済的であるという効果を奏する。
本実施形態では、吸引路47a〜47dは天井壁45の上面に凹み形成した溝部とその溝を覆って接着した合成樹脂製フィルム48等の膜体との間に形成される。なお、図7に示す符号45aは、前記各吸引路47a〜47dを隔絶する隔壁で、その上面にフイルム48が接着される。
図6(b)及び図7に示すように、各吸引路47a〜47dの断面積は、バッファタンク36のインク流入口39またはそれに接続するチューブ(図示せず)の通路断面積と同等かそれよりも小さく形成されている。また、各吸引路47a〜47dの長さを等しく設定することにより、前記ケース37を介して各気泡貯留室40内の空気を排出するときのエア流路抵抗を略等しくでき、複数の気泡貯留室40内の排気作用を略同時に終了させることができるという効果を有する。
さらに、前記吸引口46を内部に有する筒状部が天井壁45の下面から下向きに突出する高さH2を適宜に設定することにより、吸引口46から排出できない適宜体積のエア溜まり部を各気泡貯留室40の上部に形成し、キャリッジ17の左右への移動に伴う各気泡貯留室40内のインクの圧力変動を、前記エア溜まり部にて吸収するものである。
前記各吸引路47a〜47dの断面積と通路長さのために、各吸引路のインクに対する流路抵抗が、エア(気泡)のそれよりも大きくなる。そして、複数(4色)のバッファタンク36の各気泡貯留室40内に貯留される空気の量はまちまちであるところ、全ての気泡貯留室40に対して後述する空気排出動作を同時に実行しても、1つの吸引口46にインクの液面が到達すると、前記インク流の抵抗が大きいから、他の気泡貯留室40での空気の排出が優先的に実行されることになり、気泡貯留室40内の空気量が異なっていても、その空気量が少ない(逆にいうとインク量が多い)箇所のバッファタンク36からのインクの排出量だけが多くなるという現象も発生しないのである。
開閉弁手段41におけるケース37は、前記バッファタンク36の一側(図6(a)、図7及び図10において右側)に隣接して設けられているものである。図10、図11(a)及び図11(b)に示すように、合成樹脂製のケース37には、上下方向に長つ且つ上下に開口する通路孔51を有する同じく合成樹脂製のシリンダブロック50が気密を有するように取付けられている。前記通路孔51は、前記各吸引路47a〜47d毎に対応するように、実施形態では4つ並設されている。前記各通路孔51の上端に連通する4つの通路筒52が前記ケース37の上端から上向き突出しており、軟質ゴム製等のキャップ体53を介して前記各通路筒52と前記各吸引路47a〜47dの横向きの出口部54とを接続している。なお、バッファタンク36の上部から横向きに突出するひさし部60にてキャップ体53が容易に外れないよう規制している。
前記各通路孔51は上半の大径部51aと下半の小径通路51bとからなる。大径の弁体55の下端には小径のバルブロッド56が一体的に形成されている。バルブロッド56に被嵌され、且つ弁体55の下端面側にシール用のオーリング等のパッキン57が配置されている。前記大径部51aにパッキン57及び弁体55が昇降可能に挿入され、バルブロッド56は小径通路51bに挿入されている。このバルブロッド56の下端は小径通路51bの下端開口部近傍まで延びている。大径部51a内に設けたコイルバネ等のばね手段58にて弁体55を常時下向きに押圧している。この状態で、パッキン57が通路孔51の大径部51aの底面に押圧されて、弁閉止となる(図11(a)参照)。他方、後述する気泡除去手段61における弁操作手段としてのリリースロッド62が上昇して、前記バルブロッド56を前記ばね手段58の付勢力に抗して上向き押圧すると、前記パッキン57が大径部51aの底面から離れ、弁開放状態、つまり大気と連通するように構成されている(図11(b)参照)。
次に、メンテナンスユニット11の構成について、図8〜図21等を参照しながら説明する。このメンテナンスユニット11では、キャリッジ17を待機位置(実施形態では図2、図3において右端側)で休止させている間に、当該キャリッジ17に搭載されている記録ヘッドユニット10のノズル面29をキャップ部材64にて覆った状態で、ノズルからインクを吸引して、固化したインクによる目詰まりや、微細なゴミ、記録ヘッド34内の気泡を吸い出すための回復手段63と、前記各気泡貯留室40に溜まった空気を前記気泡排出路としての吸引路47及び開閉弁手段41を介して排出除去し、そのとき漏れ出すインクを吸引除去するための気泡除去手段61とを備えている。前記回復手段63は気泡除去手段61と隣接配置され、該気泡除去手段61はキャリッジ17の移動方向の最外端側に配置されている。ノズル面29を払拭クリーニングするワイパー65は、平面視において回復手段63のキャップ部材64を挟んで気泡除去手段61における前記リリースロッド62を備えた昇降体66と反対側に配置されている(図12及び図13参照)。
図12はメンテナンスユニット11の平面図、図13は斜視図、図14は昇降機構部70の平面図、図8は図12の VIII −VIII線矢視で示す、キャリッジ17及びメンテナンスユニット11の一部の側面図である。
メンテナンスユニット11には、1つの動作変換手段としての機構部67を備えており、この機構部67は、前記回復手段63及び気泡除去手段61を選択的に昇降させる昇降機構部70を作動すること、インクの吸引のための吸引手段としての吸引ポンプ68を選択的に作動させること、並びにこの吸引ポンプ68の吸引力を選択的に前記回復手段63及び気泡除去手段61に接続させる切換弁ユニット69の切換操作を実行する。
前記機構部67には、ユニット台73に枢着されたギヤ列を有し、ユニット台73の一端部に配置された1つの正逆回転可能なモータ71が前記ギヤ列に動力伝達する。前記モータ71が逆回転(図12で反時計回り)するとき、その駆動力を複数のギヤ72a〜72i列を介して吸引ポンプ68を時計回りに回転させて切換弁ユニット69側に負圧を与えて後述するようにインクを吸引できるようにする。この場合、前記ギヤ72a〜72i列のうち、ギヤ72e及び太陽歯車72fは反時計回りに回転する。これにつれてギヤ太陽歯車72fに噛合う遊星歯車72gは、太陽歯車72fの軸を中心にして反時計回り公転しながら時計回りに自転し、中間ギヤ72hに噛み合い、これを介してチューブ式の吸引ポンプ68のギヤ72iに動力伝達する。
モータ71が正回転(図12で時計回り)するとき、その駆動力はギヤ72a〜72dを介して前記ギヤ72e及び太陽歯車72fを時計回りに回転させる。これにつれて太陽歯車72fに噛合う遊星歯車72gは、太陽歯車72fの軸を中心にして時計回り公転しながら反時計回りに自転し、後段のギヤ72jに噛み合い、これから歯車72k〜72oを介して回動カム体74を反時計方向に回動させる一方、歯車72p,72qを介して切換弁ユニット69内の切換部材110の角度を変えるようにギヤ72rに動力伝達する。
次に、前記回復手段63及び気泡除去手段61と、これらを選択的に昇降させる昇降機構部70及びこれを駆動するための回動カム体74について、図10、図12〜図20を参照しながら説明する。
回復手段63は、前記キャリッジ17の下面側に露出する4列のノズル33を2列ずつ覆うためノズル面29に当接する2列のキャップ部材64a,64bと、これらのキャップ部材64a,64bが上面に並列状に配列された平面視略矩形状の支持ブロック75とを有する。キャップ部材64a,64bに分離したのはインク色の混色を避けるためである。各キャップ部材64a,64bにはインクの吸引孔(図示せず)が設けられており、これらの吸引孔は支持ブロック75の内部の通路(図示せず)を介して、側面の2つの排出口からチューブ76a、76bに連通している。この場合、ブラックBKインクとシアンインク用のキャップ部材64aはチューブ76aを介して切換弁ユニット69のポートAに連結されている。他方、マゼンタインク用とイエローインク用キャップ部材64bはチューブ76bを介して切換弁ユニット69のポートBに連結されている(図21、図22等参照)。
合成樹脂製等の支持ブロック75の下面には、図10と図15に示すように、中央部にガイド筒77を設け、このガイド筒77の外側面にはカムフォロアとしての一対の摺接ピン78、78(図で一方のみ示す)が水平状に突設されている。また、前記ガイド筒77を囲むように、4つのバネ座79が下向きに突設されている。一方、合成樹脂製等のユニット台73の上面に形成されたガイド溝80内の略中央には、前記ガイド筒77及び摺接ピン78、78を上下方向に案内し、且つ支持ブロック75が昇降する方向と直交する平面の回りに回動しないように規制するための一対の断面円弧状のガイド片81、81が突設されている(図14、図15参照)。さらに、前記ガイド溝80より外側には、前記各バネ座79との間に上向き付勢バネ82の下端の位置決めをする突起83が突設されている。
気泡除去手段61における昇降体66の上面には、図14〜図17に示すように、前記シリンダブロック50の各通路孔51に密着し得る4つの皿状の吸引部90が形成されている。各吸引部90には、シリンダブロック50の下面に開口する各小径通路51bと連通し得る吸い口91と、バルブロッド56と当接し得る上向き突出のリリースロッド62とを有し、これら全ての吸い口91は昇降体66内の通路92を介して側面の排出筒93に連通されている(図17(a)参照)。また、前記昇降体66の上面には位置決め用の一対の角体94a,94bが上向きに突設されており(図15〜図17(c)参照)、昇降体66が上昇して前記シリンダブロック50に接近するとき、当該シリンダブロック50に設けられた一対の位置決めガイド溝95a,95bに摺接して、昇降体66の水平2方向の位置決めができて、各リリースロッド62が各小径通路51bに円滑に嵌まり得るように構成されている(図8参照)。
前記昇降体66には、後述する平行移動カム体96における一対の縦ガイド片97、97の間に嵌まり得る脚体98が下向きに突設されている。この脚体98の下端部には、カムフォロアとしての一対の摺接ピン99、99が水平方向にて昇降体66の長手方向に沿って外向きに突設されている。また前記昇降体66の下面には、ユニット台73との間に配設される上向きに付勢する付勢ばね100(図15で一方のみ示す)の上端を支持するための2つのバネ座66a,66aが設けられている(図15〜図17(c)参照)。
回復手段におけるキャップ部材64a,64bが前記ノズル面29に接離動する動作と、前記リリースロッド62による弁開閉のための気泡除去手段の昇降移動動作とを選択的に実行させる、1つの動作変換手段は、平行移動カム体96と回動カム体74とから構成されている。
平行移動カム体96は、図10、図14、図15、図19及び図20等に示すように、ユニット台73におけるガイド溝80に沿って水平に案内される二股状の水平ガイド片101と、該水平ガイド片101から立設する一対の縦ガイド片97、97等からなる。そして、水平ガイド片101に上向きに突設したピン104が、回動カム体74におけるエンドレスのカム溝74a(図18参照)に嵌まっており、後述するように、回動カム体74の一定方向への回動につれて前記平行移動カム体は、前記シリンダブロック50の下面に昇降体66が接離する方向と直交する方向(図10、図15、図19及び図20で示すX1−X2方向)に往復移動される。
前記各縦ガイド片97には、前記回復手段63及び前記気泡除去手段61からそれぞれ横向きに突出するカムフォロアである摺接ピン78,78及び99,99が前記各付勢ばね82,100による付勢方向(上方向)に当接し、且つ当該平行移動カム体96の往復移動につれて前記回復手段63及び前記気泡除去手段61の昇降動作を規制するための一対のカム面102,103を有するカム部を備えている。
より詳しくは、前記一対のカム面102,103は、前記回復手段63及び前記気泡除去手段61の昇降動作方向を互いに逆方向にするように形成されている。即ち、カム面102,103は、それぞれ水平状の最下カム面102a,103aと、中間カム面102b,103bと、最上カム面102c,103cとの間を傾斜面にて連設してあり、最下カム面102a,103a同士が互いに接近する位置に形成され、最上カム面102c,103c同士が最も離れた位置に形成されている(図10、図15等参照)。そして、記録ヘッド34が用紙に対して印字を行う状態では、図10に示すように、中間カム面102b,103bに、キャップ部材64a、64b及び昇降体66における各摺接ピン78,99の上面が当接している。
図19に示す回復処理動作時及び保存状態では、回動カム体74のカム溝74aにて平行移動カム体96はX2方向に移動する。これにより、摺接ピン78が中間カム面102bから外れて最上カム面102c側に移動して、当該摺接ピン78の上向き移動の規制が外れて付勢ばね82にて支持ブロック7が上昇する。その結果、キャップ部材64a,64bの上面が記録ヘッド34のノズル面29に押圧するように密着する。他方、最下カム面103aに摺接ピン99の上面が当接し、昇降体66は最も低い位置まで下降し、昇降体66におけるリリースロッド62の上端と気泡除去手段61におけるシリンダブロック51の下面との間にも適宜隙間を有する程度の高さに昇降体66が位置保持される。
図20に示す前記全ての気泡貯留室40a〜40dからの気泡除去(抜気)処理動作時には、回動カム体74のカム溝74aにて平行移動カム体96はX1方向に移動する。これにより、最下カム面102aに摺接ピン78の上面が当接してキャップ部材64a,64bの上面が記録ヘッド34のノズル面29から最も離れる最下位置に支持ブロック75が保持される。このとき、摺接ピン99は中間カム面103bから外れて最上カム面103c側に移動して、当該摺接ピン99の上向き移動の規制が外れて付勢ばね100にて昇降体66が上昇する。その結果、昇降体66の各吸引部90が各小径通路51bの下端開口部と密着するとともにリリースロッド62がバルブロッド56を押し上げる。
このように、一方のカム面012により支持ブロック75が最下降に位置されたときの付勢ばね82の最も付勢力が大きい状態に対して、他方のカム面103により昇降体66が最上昇してそのときの付勢ばね100の付勢力が弱い。その逆の状態もあるというように、前記一対のカム面102,103は、前記回復手段63及び前記気泡除去手段61の昇降動作方向を互いに逆方向にするように形成したので、両カム面102、103に同時に最も大きい付勢力が作用せず、カム部の強度を必要以上に大きくする必要がなく、平行移動カム体96をコンパクトに形成できる効果を有する。
次に、前記気泡除去手段61と、前記回復手段63とに並列的に接続してインクを吸引する吸引手段について説明する。吸引手段は吸引ポンプ68と吸引切換弁としての切換弁ユニット69とを備える。吸引手段は、前記気泡貯留室40a〜40d内から気泡と共に漏出したインクを吸引する動作と、回復手段63を介してノズルからインクを吸引する動作とを選択的に実行するものである。
吸引ポンプ68は可撓性チューブ105内の体積変化を利用して負圧を発生させるチューブ式のポンプである。可撓性チューブ105の一端(吐出側)は後述する廃液フォーム111を収納した廃棄インク貯留部に連結され、可撓性チューブ105の他端(吸引側)はコネクタ106及びチューブ107を介して切換弁ユニット69の吐出口108に接続されている。
切換弁ユニット69は、図21(a)、図21(b)及び図22に示すように、円筒状の本体部109と、本体部109に回転可能に嵌め入れられた切換部材110とユニット台73に立設された回転軸を中心に回転し、前記切換部部材110を本体部109に対して回転させるギヤ72rとからなる。合成樹脂製の本体部109には、前記吐出口108が上面に設けられ、ポートA,B,W,Fが本体部側面にて所定位相角度にて設けられている。ポートAはチューブ76aを介してキャップ部材64aに連結され、ポートBはチューブ76bを介してキャップ部材64bに連結されている。また、ポートWはチューブ76cを介して前記気泡除去手段61における排出筒93に接続されている。ポートFは大気に開放されるチューブ76dに接続されている。その場合、図12、図13に示すように、このチューブ76dはその内部に常にインクを貯留させているように、十分に長くかつ中途部を180度以上屈曲させて配置されている。チューブ76dの開口端(先端開口部)は、本体ケース2内の厚さの厚い廃液フォーム111に上に突き刺されており、多機能装置1全体が傾斜して落下される等してインクカートリッジ7内のインクに衝撃が加わって、その際のインクの圧力によりチューブ76dの開口端からインクが漏れることがあっても、廃液フォーム111に捕捉される。なお、図4、図5に示すように、廃液フォーム111は、本体ケース2の底板2c上であって、インク供給部12の本体ケース2の左右方向に並列配置されたインクカートリッジ7a〜7dの並列方向に長く配置されており、その長手方向の略中央部、換言すると、本体ケースを左右いずれの方向に傾けた場合にも、水頭差が最小となる部分に廃棄インクチューブ76dの開口端が配置され、上記のインクの漏れ量を少なくしている。
円柱状の切換部材110はゴム等の弾性体にて形成され、その円形の天面に半径外方向の4方向に延びる天面溝112a〜112dが形成されている。その中心部に吐出口108が繋がり、また、その4端が切換部材110の外周溝113a〜113dに繋がる。外周溝113cは下向きに長く、ポートWに対応する。外周溝113a,113b,113dは下向きに短く、ポートA,B,Fに対応する。尚、外周溝113cはポートA,B,Fにも対応する。さらに、切換部材110の外周面には、円周方向に沿って3本のリブ114が、外周溝113a〜113dを囲むように形成されている。このリブ114を形成することで、負圧を溜める際及び負圧を印加するために、切換部材110を回転させる時に、当該切換部材110と本体部109との間に隙間ができる変形により負圧が漏れるのを防止できる。
図10、図19、図20に示すように、前記回動カム体74の底面には、前述したように、平行移動カム体96におけるピン104が嵌まるカム溝74aがエンドレスに形成されている。なお、図18は回動カム体74を上から見た図である。そして、回動カム体74の外周には、前記ワイパー65を上下動させるためのカム(図示せず)と、当該回動カム体74の回転位置(位相)を検知するためのリーフスイッチ116に接触する突条カム117a〜117eを有する。メンテナンス用モータ71、エアポンプ28、キャリッジ及び駆動モータ18等は、CPU、後述する各動作のプログラムを格納したROM等からなる制御装置により制御される。
次に、図23〜図25を参照しながら、メンテナンスユニットの動作説明をする。図12において、メンテナンス用モータ71を逆回転(反時計回り)させるときには、吸引ポンプ68を図12において時計方向に回転させて、切換弁ユニット69の天面の中央部の吐出口108に負圧を付与してインクが吸引可能となる。このときには、切換弁ユニット69の切換部材110及び回動カム体74は非回転で静止している。
メンテナンス用モータ71を正回転(時計回り)させるときには、前記吸引ポンプ68は非回転であり、その代わりに、切換弁ユニット69の切換部材110が正回転(時計回り)し、回動カム体74は反時計回りに回動する。なお、以下の説明では回動カム体74の回転に伴って動作可能な動作について順に説明するがかならずしも回動カム体74の回転に伴って全て動作が連続的に行われる必要はなく、メンテナンスが必要とされる都度、所定の動作のみが選択的に実行される。
図23は各動作時における切換部材110の回動位相位置とポートA,B,W,Fに対する連通、非連通状態を示す説明図である。図24は、回動カム体74の回転に伴うエア抜き動作(弁操作手段である昇降体66の昇降動作)と、キャップ動作(回復手段におけるキャップ部材64a,64bの支持ブロック75の昇降動作)と、ワイパー65の昇降動作を示すタイミングチャートである。図24において、カム番号1の高(ON)位置をON1、それに続く低(OFF)位置をOFF1とし、他のカム番号についても同様に標記して説明する。
記録ヘッド34に対して印字指令がなく、またメンテナンスユニット11に対しても動作指令がないとき、制御装置は、キャリッジ17を図2の右端の待機位置まで移動させる。この前に、リーフスイッチ116が突条カム117e(カム番号5)から降りて、突条カム117a(カム番号1)に載った直後の位置に回動カム体74を回動させ(図24、ON1)、平行移動カム体96を移動させて図10に示す位置にセットし、摺接ピン78、99の上面を中間カム面102b、103bに当接させる。この状態でキャリッジ17を図2の右端の待機位置まで移動させ、記録ヘッド34のノズル面29とキャップ部材64a,64bとを対向させる。これにより、キャップ部材64a,64bの上面と記録ヘッド34のノズル面29との間に適度の隙間が保持され、また、昇降体66におけるリリースロッド62及び吸引部90と気泡除去手段61におけるシリンダブロック51の下面との間にも適宜狭い隙間が保持される。この状態では、切換弁ユニット69の切換部材110の回動位置は図23のキャップ可能位置の位相であり、ポートA,B,Fと吐出口108とが連通状態にある。
上記状態から、記録ヘッド34のノズル面29にキャップ部材64a,64bを密接させ、記録ヘッド34を保存状態とする。このためには、回動カム体74を正回転させ、リーフスイッチ116が突条カム117a(カム番号1)に載った位置(ON1)からさらに回転カム体74を60°回転した位置まで移動させる。この状態では、平行移動カム体96がX2方向に移動し図19に示す位置にセットされ、摺接ピン78が中間カム面102bから外れて最上カム面102c側に移動して、付勢ばね82にて支持ブロック75が上昇する。その結果、キャップ部材64a,64bの上面が記録ヘッド34のノズル面29に密着する。他方、最下カム面103aに摺接ピン99の上面が当接し、昇降体66は最も低い位置まで下降している(図19参照)。
この保存状態では、キャップ部材64a,64bがポートA,Bを介して吐出口108に連通しており(図23の待機位置、ON1状態参照)、切換弁ユニット69のポートFに接続したチューブ76d、及び吸引ポンプ68の排出側のチューブ105内には多少のインクが常に残存していることから、キャップ部材64a,64bでノズル面29を密封し、ノズルの乾燥を防止することができる。また、ポートFは大気圧に連通していることから、キャップ部材64a,64b内もほぼ大気圧状態にある。
なお、(ON1)から60°回転した位置は、例えば、ステッピングモータからなるメンテナンス用モータ71を(ON1)から所定ステップ数(887ステップ)回転させることによって配置可能である。
制御装置は、記録ヘッド34に対し印字動作の指令をすると、メンテナンス用モータ71を連続的に正回転させて、回動カム体74を図24のON4の位置へ回転させ(後述する吸引動作は省略する)、再びキャップ部材64a,64bとノズル面29との間、及び昇降体66とシリンダブロック51との間に隙間が形成される状態から、キャリッジを待機位置から図2の左方向へ、すなわち印字位置に移動させる。
制御装置は、記録ヘッド34に対し回復処理の指令を出力すると、記録ヘッド34が上記待機位置にないとき、まず、上述のようにメンテナンス用モータ71を正回転させて回動カム体74をスイッチ116が上記ON1に載った直後の位置に回転させ、さらに記録ヘッド34を上記待機位置に移動させる。その状態からメンテナンス用モータ71を正回転させて、上記保存状態と同様に記録ヘッド34にキャップ部材64a、64bを密着させる。さらに、回動カム体74を、リーフスイッチ116が突条カム117a(カム番号1)から降りた位置(OFF1)に移動させる。同時に、切替弁ユニット69の切換部材110を、何れのポートA,B,W,Fも大気(外部)に連通していない位置(図23のBC負圧貯め、OFF1参照)に回転させる。この状態で、メンテナンス用モータ71を逆回転させて、吸引ポンプ68を作動させることにより(図25参照)、ブラックインク及びシアンインクのノズルからインクを吸引するためにチューブ107内に一旦負圧を貯める。次いでメンテナンス用モータ71を正回転させ、リーフスイッチ116が突条カム117b(カム番号2)に載った位置(ON2)に達すると、ポートAと溝112aとが連通し、上記の貯めた負圧によりキャップ部材64aを通してブラックインク及びシアンインクのノズルからインクを吸引する(図23のBC吸引、ON2参照)。吸引ポンプ68の作動開始から若干遅れてエアポンプ(正圧ポンプ)28を作動させて、インクカートリッジ7を通してバッファタンク36内のインクに正圧を加える。
次に、リーフスイッチ116が突条カム117b(カム番号2)から降りた位置(OFF2)に、回動カム体74が回転すると、切換弁ユニット69の切換部材110は、何れのポートA,B,W,Fも大気(外部)に連通しない位置に回転する(図24、図23のOFF2参照)する。そして前述と同様にモータ71を逆回転させて吸引ポンプ68を作動させることにより、マゼンタインク及びイエローインクを吸引するための負圧貯めを行う。次いでメンテナンス用モータ71を正回転させ、リーフスイッチ116が突条カム117c(カム番号3)に載った位置(ON3)に達すると(図24参照)、ポートBと溝112bとが連通し、貯めた負圧によりキャップ部材64bを通してマゼンタインク及びイエローインクのノズルからインクを吸引する(図23のYM吸引、ON3参照)。このとき、上述と同様にエアポンプ28を作動させてバッファタンク36内のインクに正圧を加える。
なお、ブラックインク及びシアンインクの組、またはマゼンタインク及びイエローインクの組の一方の組のみに対して吸引回復動作を行う場合には、他方の組に対応するカム番号の位置でモータ71を逆回転させることなくそのまま正回転させることで、吸引ポンプ68の駆動を省略する。
これらのインク吸引動作終了の後、回動カム体74の反時計回りの回動にて、平行移動カム体96をX1方向に移動させて図10の位置に向けて戻し、キャップ部材64a,64bをノズル面29から離すように支持ブロック75を下降させる。
前述のエアポンプ28の動作は、キャップ部材64a,64bがノズル面29から離れるまで継続される。これは、インク吸引動作終了時、キャップ部材内のインクが泡立っており、ノズル33内のインクに作用している背圧により、この泡がノズル内に侵入してしまうことがあるために、エアポンプ28の動作によりノズル33内のインクに正圧を加えて泡の侵入を防止するものである。なお、エアポンプ28と吸引ポンプ68の動作は並行して行われる必要はなく、エアポンプ28の動作は吸引ポンプ68の停止後キャップ部材64a,64bがノズル面29から離れる直前から離れた直後まで行われるようにしてもよい。エアポンプ28によりノズル33内のインクに加える正圧は、ノズルからインクが漏れ出さない程度の大きさである。
この次のワイパーによる払拭動作のために、キャリッジ17が移動を開始する時点では、図10に示すように、キャップ部材64a,64b及び昇降体66における各摺接ピン78,99が中間カム面102b,103bに当接する位置まで、回動カム体74は回転している。
リーフスイッチ116が突条カム117b(カム番号3)から降りる位置から回動カム体74が35度回転する(OFF3)と、切替弁ユニット69の切換部材110は、何れのポートA,B,W,Fも大気(外部)に連通しない位置に回転する(図23のワイプ位置)。一方、ワイパー65は、前記OFF1の位置からすでに上昇しており、ノズル面29の移動軌跡内に突出している。この状態で、キャリッジ7を図2の左方向に移動させることで、ノズル面29をワイパー65に摺接させて、当該ノズル面29に付着しているインクを払拭する。
この後、記録ヘッドがキャップ部材64aと対向しない位置、例えば、左端のインク受け部8に対向する位置に、キャリッジ17を移動させる一方、メンテナンス用モータ71を連続的に正回転させて、回動カム体74を反時計回りに連続回転させ、再び前記ON2の位置に停止させ、その状態で、モータ71を逆回転させ吸引ポンプ68を作動させる。これにより、いわゆるキャップ空吸引(図25のキャップ空吸引部分参照)を行い、キャップ部材64a内に残っているインクを除去することができる。続いて前記ON3に停止させて同様にキャップ部材64bに対しても空吸引を行う。
さらにそのキャップ空吸引のあとに、回動カム体74をOFF4の位置に停止させ、且つ切換弁ユニット69の溝113cをポートFに連通させる(図23の大気連通吸引)。すなわち、大気に開放しているチューブ76dを吸引ポンプ68に連通させた状態で、モータ71を逆回転させ吸引ポンプ68を回転させることにより、切換弁ユニット69等に残存しているインクを吸引する。
そして、図2において左端位置にあるキャリッジ17を印字動作に向かわせる。
制御装置は、気泡貯留室40a〜40dから気泡(空気)除去する処理の指令を出力すると、キャリッジ17が右端の待機位置にないとき、まず、前述のとおり回動カム体74をON1に載った直後の位置に回転させておいて、キャリッジ17を右端の待機位置に移動させる。そして、モータ71を連続的に正回転させて回動カム体74をON5の位置まで連続回転させる。その位置に達するまでに、前記ON4からOFF4の位置において平行移動カム体96をX1方向に移動させ、摺接ピン78を中間カム面102bから最下カム面102a側に移動させて、支持ブロック7を最下位置まで下降させる一方、摺接ピン99を中間カム面103bから最上カム面103c側に移動させて、付勢ばね100にて昇降体66を上昇させる。これにより、当該昇降体66上の全てのリリースロッド62が開閉弁手段41における全てのバルブロッド56及び弁体55、パッキン57を押し上げて弁開放状態にする。また、各小径通路51bの下端開口部に各吸引部90が密着し、全ての気泡貯留室40a〜40dは吸引路47a〜47d、出口部54、通路筒52、通路孔51、吸引部90、通路92,排出筒93、チューブ76cを介して切換弁ユニット69のポートWと連通する(図20、図9参照)。エアポンプ28は、昇降体66が上昇を開始したON4の位置から作動を開始し、インクカートリッジ7a〜7d内のインクに正圧を作用させ、インク針26、インク供給チューブ27a〜27dを介して各気泡貯留室40a〜40d内の圧力を上げるが、切換弁ユニット69のポートWが閉じている(図24のOFF4)ので、気泡を排出することはない。
そして、回動カム体74のON5の位置において切換弁ユニット69の切換部材110をポートWと溝112cとが連通する(図23のバッファ吸引)と、上記のエアポンプ28の動作による圧力によって各気泡貯留室40a〜40d内のインク液面を押し上げ、その上方に溜まっている空気(気泡)を、上記の連通した通路を介して排出する。なお、その場合、前述の吸引動作の際にエアポンプ28を作動する場合よりも、駆動モータ30の回転速度を高くして、エアポンプ28による正圧を高くする。ただし、この場合も正圧は、ノズルからインクが漏れ出さない程度の大きさである。
なお、この気泡排出時に気泡(空気)と共に少量のインクも漏出するので、このインクを吸引するために、メンテナンス用モータ71を逆回転でかつ間欠的に複数回回転させ、吸引ポンプ68を間欠的に複数回作動させる(図25の排気空吸引部分参照)。これにより、気泡(空気)と共に漏出した少量のインクは、皿状の吸引部90から、リリースロッド62の基端部周囲の吸い口91、通路92、排出筒93、チューブ76c、ポートW、吸引ポンプ68を介して廃液フォーム111に排出される。間欠的に駆動するのは、キャップの空吸引と異なり、気泡(空気)と共に漏出するインク量は少ないので、連続的に吸引する必要がないからである。この場合、環境温度によってエアポンプ28の作動時間(t4)を変化させ、さらにそれに応じて吸引ポンプ68の間欠作動回数を変化させるようにしても良いし、それらを一定に設定しても良い。
この後、前述の吸引による回復動作と同様に、回動カム体74をOFF1からON3の位置に回転して吸引による回復動作を継続して行い、キャリッジを移動してワイパによる払拭動作、さらにその後、回動カム体74をON2の位置まで回転してキャップ空吸引、切換弁ユニット68内の残留インクの吸引を行う。なお、気泡(空気)除去動作後の吸引回復動作は、省略してもよい、
本発明は、種々の種類のインクジェットプリンタに適用できることはいうまでもない。