JP3632201B2 - インクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録用紙の幅方向に移動するキャリッジに搭載され、記録用紙に対してインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを備えた記録装置に関し、特に、複数のノズル開口列を備えた記録ヘッドと、この記録ヘッドからインクを吸引するインクの吸引方法、並びにこれに適したキャッピング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。このようなインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、記録ヘッドをキャリッジ上で記録用紙の幅方向に移動させながら記録用紙に対してインク滴を吐出させることで記録が行われる。
【0003】
そしてキャリッジ上に、ブラックインクおよびイエロー、シアン、マゼンタの各カラーインクが吐出が可能な記録ヘッドを搭載し、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0004】
前記インクジェット式記録ヘッドは、印字信号に対応させて圧力発生室で加圧したインクを記録用紙に吐出させて、極めて微小なドットを形成することができるため、高い印字品質で印刷することが可能であるものの、圧力発生室はインクを加圧できる程度のサイズが必要なため、例えば図12に示したように主走査方向に複数の圧力発生ユニットA,A,Aを流路形成基板Bに固定した構成とし、各圧力発生ユニットAに対応するノズル開口列間のノズル開口の位置を副走査方向にずらして配置することで、全体として装填密度を向上する方法が採られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、各圧力発生ユニットAには共通のインクカートリッジからインクを供給する関係上、インク流路に形成された分岐部を介して各インク導入口C,C,Cへインクを供給する構成とせざるを得ない。
【0006】
このために、前記分岐部を構成する断面積が比較的大きくなり、この部分におけるインクの流速が低下するために、記録ヘッドをキャッピング装置によって封止してインクを吸引するクリーニング動作を実行しても、前記分岐部の近傍に残留する気泡の排除特性が低下するとい問題を抱えている。
【0007】
一方、例えば積層構造のインクジェット式記録ヘッドにおいては、その構造上記録ヘッド内に形成される段差部に気泡が滞留し易く、いったん前記段差部に気泡が引っ掛かった状態となると、これを排除し難いという技術的課題がある。このような現象は、昨今の記録ヘッドの多ノズル化により、一流路当たりのインクの流速が低下するに伴い顕著に出現する。
【0008】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであって、前記したインク流路の分岐部近傍に残留する気泡および記録ヘッド内に滞留する気泡を確実に外部に排出することができるインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法を提供しようとするものである。また本発明は、インクジェット式記録ヘッド内に残留する気泡および記録ヘッド内に滞留する気泡を確実に外部に排出することができるインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法を提供しようとするものである。さらに本発明は、前記吸引方法を実施するのに適したキャッピング装置、およびインクジェット式記録ヘッドの構成を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するためになされた発明にかかるインクジェット式記録ヘッド用キャッピング装置は、圧力発生手段により加圧されインクを吐出する複数のノズル開口を列状に複数配置して形成された各ノズル開口列に対し、インク供給部から分岐部を介して形成された複数のインク供給路によってそれぞれインクを供給するように構成されたインクジェット式記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャッピング装置であって、前記インク供給路に連通するノズル開口列をそれぞれ独立に封止する複数の部屋を形成するとともに、各部屋に独立して負圧を供給する吸引口を設けた構成とされる。
【0010】
この場合、前記インク供給部は好ましくはインク供給針により構成され、インクを封入したインクカートリッジに接続され、インクカートリッジよりインクを導出する機能を果たすように構成される。さらに前記各吸引口から吸引装置に接続される複数の配管には、開閉可能な止弁が配置され、選択的に開閉されるように構成されることが望ましい。
【0011】
また、本発明にかかるインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法は、圧力発生手段により加圧されインクを吐出する複数のノズル開口を列状に複数配置して形成された各ノズル開口列に対し、インク供給部から分岐部を介して形成された複数のインク供給路によってそれぞれインクを供給するように構成されたインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法であって、前記各インク供給路からインクの供給を受けるノズル開口列をそれぞれ独立に封止する部屋を備えたキャップ部材により封止し、前記任意の部屋に対して負圧を供給するようになされる。
【0012】
また、前記インク吸引方法は、前記各インク供給路からインクの供給を受けるノズル開口列をそれぞれ独立に封止する部屋を備えたキャップ部材により封止し、前記各部屋に対して順次負圧を供給するようになされる場合もある。
【0013】
さらに本発明にかかるインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法は、前記各インク供給路からインクの供給を受けるノズル開口列をそれぞれ独立に封止する部屋を備えたキャップ部材により封止し、前記各部屋にそれぞれ負圧を供給し、各部屋の負圧が一定値に到達後、任意の部屋のみに独立に負圧を供給するようになされる。またさらに前記各インク供給路からインクの供給を受けるノズル開口列をそれぞれ独立に封止する部屋を備えたキャップ部材により封止し、前記各部屋にそれぞれ負圧を供給し、各部屋がインクで充填された後、任意の部屋のみに独立に負圧を供給するようになされる場合もある。
【0014】
また、本発明にかかるインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生手段により加圧されインクを吐出する複数のノズル開口を列状に複数配置して形成された各ノズル開口列に対し、インク供給部から分岐部を介して形成された複数のインク供給路によってそれぞれインクを供給するように構成されたインクジェット式記録ヘッドであって、前記各インク供給路に開閉可能な止弁を配置した構成とされる。
【0015】
また本発明にかかるインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法は、圧力発生手段により加圧されインクを吐出する複数のノズル開口を列状に複数配置して形成された各ノズル開口列に対し、インク供給部から分岐部を介して形成された複数のインク供給路によってそれぞれインクを供給するように構成されたインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法であって、前記インク供給路の少なくとも1つを開弁した状態で、キャップ部材により前記各インク供給路に対して負圧を供給するようになされる。加えて前記インク供給路を順番に開弁しつつ、キャップ部材により前記各インク供給路に対して負圧を供給するようになされる場合もある。
【0016】
前記したインクジェット式記録ヘッド用キャッピング装置によると、各ノズル開口列をそれぞれ独立に封止する複数の部屋が形成され、各部屋に独立して負圧を供給する吸引口を設けてあるため、インクジェット式記録ヘッドの各ノズル列にインクを供給するインク供給路に対して任意にまたは順番に強いインク流を生じさせることができる。したがって、各インク供給路の上流側における分岐部、および各インク流路の段差部において残留する各気泡を前記インク流に乗せて確実に排出させることができる。
【0017】
また、前記したインクジェット式記録ヘッドの構成によると、インクジェット式記録ヘッドの各ノズル列にインクを供給するインク供給路に、それぞれ止弁が配置されているので、キャッピング装置によって負圧を供給した状態で前記止弁を任意にまたは順番に開弁させることにより、当該インク供給路に対して強いインク流を生じさせることができる。したがって、同様に各インク供給路の上流側における分岐部、および各インク流路の段差部において残留する各気泡を前記インク流に乗せて確実に排出させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明が適用された記録装置本体の全体構成を斜視図によって示したものである。図1において符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1には、その上面にインクカートリッジ2が着脱可能に搭載され、また記録用紙Pに対向する面には、印字信号に対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッド3が固定されている。前記キャリッジ1はタイミングベルト4を介したキャリッジモータ5からの駆動力により、ガイド部材6に案内されてプラテン7の軸方向に往復動するように構成されている。
【0019】
前記キャリッジ1の移動経路における図中右端部に形成された非印字領域(ホームポジション)には、キャッピング装置15が配置されており、このキャッピング装置15は、前記記録ヘッド2が直上に移動した時に、記録ヘッド2のノズル形成面を封止できるように構成されている。そしてキャッピング装置15の下方には、キャッピング装置15の内部空間に負圧を供給するための吸引装置としてのポンプ16が配置されている。
【0020】
前記キャッピング装置15は、記録装置の休止期間中における記録ヘッド3のノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する他、記録ヘッド3に印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を空吐出させるフラッシング動作時のインク受けとして機能し、さらに前記吸引ポンプ16からの負圧を記録ヘッド3に作用させて、インクを吸引するクリーニング動作時のインク吸引手段としての機能も兼ね備えている。
【0021】
そして、キャッピング装置15の近傍には、ゴムなどの弾性板からなるワイピング部材25が配置されていて、キャリッジ1がキャッピング装置15側に往復移動する際に、記録ヘッド3のノズル形成面を払拭するワイピング動作がなされるように構成されている。
【0022】
図2は、前記キャリッジ1に搭載された記録ヘッドおよび記録ヘッドの上部に着脱可能に装填されるインクカートリッジの取付け構造を断面状態で示したものである。キャリッジ1に固定されたホルダ8には、その下面に前記記録ヘッド3が取り付けられ、また上面にはインク供給部としてのインク供給針9が固定されている。そして、前記インク供給針9と記録ヘッド3との間には、両者を接続するインク供給流路10が形成されている。
【0023】
また、インク供給針9とインク供給流路10との間には、後述する分配部を兼ねるフィルタ室11が形成されていて、このフィルタ室11には網目状のフィルタ部材Fが配置され、これにより塵埃等の異物が記録ヘッド3側に侵入するのを阻止できるように構成されている。
【0024】
前記インク供給針9は中空状になされ、その上部は先鋭状に形成されて後述するようにインク導出穴が形成され、ホルダ8に形成されたカートリッジ収容室12に前記インクカートリッジ2が装填された場合に、カートリッジ2のインク供給口13に挿通して、カートリッジ2のインク室14からインク供給流路10に対してインクを供給することができるように構成されている。
【0025】
図3は、前記記録ヘッドに形成されたノズル開口の配置形態を示したものであり、図3(イ)はノズル形成面に4列のノズル開口列N1〜N4が形成され、2列ずつを1組とする2組のノズル開口列からインク滴を吐出させるように構成した例を示す。また図3(ロ)はノズル形成面に8列のノズル開口列N1〜N8が形成され、その隣接する2列、すなわちN1とN2、N3とN4、N5とN6、およびN7とN8を組とする4組のノズル開口列N1〜N8からインク滴を吐出させるように構成した例を示す。
【0026】
図4は、前記図3(イ)に示したノズル開口列を有する記録ヘッドにおける内部構成、およびこの記録ヘッドに適したキャッピング装置15の実施の形態を示すものである。インク導出穴9aを備えたインク供給針9における中空状のインク流路は、フィルタ室11を分岐部としてホルダ8内において2本のインク供給路10a,10bに別れ、それぞれの組のノズル開口列の圧力発生室にインクの供給がなされるように構成されている。
【0027】
一方、記録ヘッド3のノズル形成面を封止するキャッピング装置15は、例えばゴム材料などの可撓性物質により形成され、各インク供給路10a,10bに対応するノズル開口列N1,N2、およびN3,N4をそれぞれ独立して封止できるように中央に仕切板15aを形成することで2つの部屋17,18に分離されている。そして、それぞれの部屋に吸引口17a,18aが設けられており、2つの各部屋17,18の下底部には、多孔質材からなるインク吸収シート23が収納されている。
【0028】
また図5は、前記図3(ロ)に示したノズル開口列を有する記録ヘッドにおける内部構成、およびこの記録ヘッドに適したキャッピング装置15の実施の形態を示すものである。なお図5において前記した図4に相当する部分には同一符号をもって示しており、その詳細な説明は割愛する。
【0029】
図5に示したキャッピング装置15においては、インク供給針9内の中空状のインク流路は、フィルタ室11を分岐部としてホルダ8内において4本のインク供給路10a〜10dに別れ、それぞれの組のノズル開口列の圧力発生室にインクの供給がなされるように構成されている。
【0030】
そして、キャッピング装置15は、各インク供給路10a〜10dに対応するノズル開口列をそれぞれ独立して封止できるように仕切板15a,15b,15cを形成することで4つの部屋19〜22に分離され、それぞれの部屋に吸引口19a〜22aが設けられている。
【0031】
次に、前記のように構成された記録ヘッドと、そのキャッピング装置の作用について、図5に示した8列のノズル開口列を備えた記録ヘッドの場合に基づいて説明する。インクカートリッジ2を新しく装着したり、また交換した場合には、インク供給口13とインク供給針9との間のシリンダ−ピストン効果により、インク供給針9内に空気が押し込められた状態となる。そこで、キャッピング装置15により記録ヘッド3のノズル形成面を封止し、前記吸引ポンプ16を駆動することで、キャッピング装置15の内部空間に負圧を供給することができる。
【0032】
この場合、図6に示すように吸引ポンプ16による負圧を吸引口19aのみ供給することで、図中左端部の第1の部屋19に対して負圧を与えることができる。これによりフィルタ室11内のインクは、左端部の部屋19に連通するインク供給流路10aに流れ込むこととなり、インク供給路10aの近傍に位置する気泡B1が記録ヘッド3側に吸引される。そして記録ヘッド3に流れ込んだ気泡は、ノズル開口N1,N2からインクと共にキャッピング装置15内に排出される。
【0033】
所定時間の吸引が終了した段階で、第1の部屋19への負圧の供給を停止し、図7に示すように隣の第2の部屋20に同様に負圧を供給すると、今度はフィルタ室11のインクがインク供給路10bに向けて流れ込むこととなり、インク供給路10bの近傍に停滞していた気泡B2がインク供給路10bに流れ込み、記録ヘッド3に流れ込んだ気泡は、ノズル開口N3,N4からインクと共にキャッピング装置15内に排出される。
【0034】
同様にして、さらに隣の第3の部屋21に対する吸引動作を実行した後、最後に図8に示すように右端部の第4の部屋22のみに負圧を供給すると、同様にフィルタ室11内のインクがインク供給路10dに向けて流れ込むこととなり、インク供給路10dの近傍に停滞していた気泡B3がインク供給路10dに流れ込み、記録ヘッド3に流れ込んだ気泡は、ノズル開口N7,N8からインクと共にキャッピング装置15内に排出される。
【0035】
このように、キャッピング装置15に形成されている複数の部屋のうち、一端から他端に向けて1つずつの部屋に対して負圧を順番に供給することにより、それぞれに対応したインク供給路の近傍に、速いインクの流れを生じさせることができる。これにより、当該インク供給路の領域に停滞している気泡を個別的に排出させるという動作が行なわれ、結果としてフィルタ室11内の全体の気泡を排除することができる。
【0036】
なお以上の説明においては、キャッピング装置15に形成されている複数の部屋のうち、一端から他端に向けて順次負圧を供給するような制御シーケンスを実行しているが、その順番は前記した例に拘泥されることはない。また、構造上において気泡が停滞し易い位置が特定される場合においては、当該位置に対応するキャッピング装置15内の任意の部屋に対して負圧を供給することで、当該インク供給路の領域に停滞している気泡を排出させることができ、これによって所期の目的を達成することができる。
【0037】
また、前記した記録ヘッドのインク吸引方法によると、負圧を供給していないキャッピング装置内の部屋から、気泡が逆流する場合も有り得る。これを防止するためには、前記各部屋にそれぞれ同時に負圧を供給し、各部屋の負圧が一定値に到達後、任意の部屋のみに独立に負圧を供給するように吸引シーケンスを設定することで、他の部屋においては前記任意の部屋に供給する負圧に耐えることができ、他の部屋から気泡が逆流する問題を回避することができる。
【0038】
また、前記各部屋にそれぞれ同時に負圧を供給し、各部屋がインクで充填された後、任意の部屋のみに独立に負圧を供給するように吸引シーケンスを設定することで、同様に他の部屋においては前記任意の部屋に供給する負圧に耐えることができ、他の部屋から気泡が逆流する問題を回避することができる。
【0039】
次に、図9は本発明にかかるキャッピング装置の他の実施の形態を示したものである。なお図9に示すキャッピング装置15の基本構成は、すでに説明した図4に示す構成とほぼ同一であり、したがって相当する部分には同一符号をもって示し、その詳細な説明は割愛する。
【0040】
図9に示す実施の形態においては、前記各吸引口17a,18aから吸引ポンプ16に接続されるそれぞれの配管26に、それぞれ開閉可能な止弁(バルブ)27を配置した構成とされている。すなわち前記止弁27を閉塞した状態で吸引ポンプ16を駆動し、吸引ポンプ16が駆動されている状態で、図9に示すように止弁27を開放すると、その瞬間にキャッピング装置15に形成された1つの部屋17に対して、大きな負圧を印加することができる。これにより、大きな負圧が加えられた記録ヘッドの流路内におけるインクの流速が高められ、当該流路内に滞留している気泡を効果的に排出することができる。
【0041】
この図9に示す構成によると、特に積層構造の記録ヘッドのように、構造上その内部に段差部が形成されるような場合において、当該段差部に引っ掛かるようにして滞留する気泡を排除するのに有効に作用する。
【0042】
図10および図11は、本発明にかかる記録ヘッドの実施の形態を示したものである。なお、この図10および図11に示す記録ヘッドの基本構成は、すでに説明した図5に示す構成とほぼ同一であり、したがって相当する部分には同一符号をもって示し、その詳細な説明は割愛する。この図10および図11に示す実施の形態においては、各インク供給流路10a〜10dの中間部位にそれぞれ開閉可能な止弁30a〜30dを配置した点に特徴を有する。そして、前記記録ヘッドに形成された全部のノズル開口を共通のキャップ部材で封止するキャピング装置31が備えられる。
【0043】
以上の構成において、例えば、インクカートリッジ2が交換された場合には、図10に示すようにインク供給流路10a〜10dに配置された各止弁のうち、1つの止弁30aを開弁し、他の止弁30b〜30dを閉弁した状態とする。これと同時にキャピング装置31により記録ヘッドに対して負圧を作用させると、インク供給流路10aに接続するノズル開口からだけインクが排出され、この流路10a近傍の気泡B4がノズル開口からインクとともに排出される。
【0044】
前記1つのインク供給流路10aに連通するノズル開口からの吸引が終了した段階で、図11に示すように前記止弁30aを閉弁し、次の止弁30bを開弁して同様に吸引を実行することにより、今度は止弁30bに連通するインク供給流路10bの近傍の気泡B5がインクとともに排出される。
【0045】
以下、同様に開弁する止弁を順次切替えながら吸引を実行することにより、ノズル開口の数が比較的多い記録ヘッドあっても、吸引能力の小さな吸引ポンプで、しかもインクの消費を抑制しながらフィルタ室11の残留気泡を確実に排出することができる。
【0046】
この図10および図11に示す構成によると、例えば図5に示したようにキャッピング装置15内に複数の仕切板15a〜15cを形成して複数の部屋19〜22を構成させる必要はなく、また当然ながら各部屋にそれぞれ吸引口19a〜22aを設けて格別に配管を介して吸引ポンプに連通させる構成も不要となる。
【0047】
なお、図10および図11における前記説明においては、一端から他端に向けて順次1つの止弁のみを開弁させる制御シーケンスを実行しているが、その順番は前記した例に拘泥されることはない。また、構造上において気泡が停滞し易い位置が特定される場合においては、当該位置に対応する止弁を開弁させることで、当該インク供給路の領域に停滞している気泡を排出させることができ、これによって所期の目的を達成することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明にかかるキャッピング装置には、記録ヘッドの各ノズル開口列をそれぞれ独立に封止する複数の部屋が形成され、各部屋に独立して負圧を供給する吸引口を設けてあるため、インクジェット式記録ヘッドの各ノズル列にインクを供給するインク供給路に対して任意にまたは順番に強いインク流を生じさせることができる。したがって、各インク供給路の上流側における分岐部、および各インク流路の段差部において残留する各気泡を前記インク流に乗せて確実に排出させることができる。
【0049】
また、本発明にかかるインクジェット式記録ヘッドの構成によると、記録ヘッドの各ノズル列にインクを供給するインク供給路に、それぞれ止弁が配置されているので、キャッピング装置によって負圧を供給した状態で前記止弁を任意にまたは順番に開弁させることにより、当該インク供給路に対して個別に強いインク流を生じさせることができる。したがって、各インク供給路の上流側における分岐部、および各インク流路の段差部において残留する各気泡を前記インク流に乗せて確実に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された記録装置本体の全体構成を示した斜視図である。
【図2】キャリッジに搭載された記録ヘッドおよび記録ヘッドの上部に着脱可能に装填されるインクカートリッジの取付け構造を示した断面図である。
【図3】記録ヘッドのノズル形成面に形成されたノズル開口の配置形態を示した斜視図である。
【図4】記録ヘッドに対するインク供給路の配列形態と、この記録ヘッドに適したキャッピング装置の第1の実施の形態を示した断面図である。
【図5】記録ヘッドに対するインク供給路の配列形態と、この記録ヘッドに適したキャッピング装置の第2の実施の形態を示した断面図である。
【図6】図5に示す形態においてキャッピング装置に形成された第1の部屋に負圧を供給した状態を示す断面図である。
【図7】図5に示す形態においてキャッピング装置に形成された第2の部屋に負圧を供給した状態を示す断面図である。
【図8】図5に示す形態においてキャッピング装置に形成された第4の部屋に負圧を供給した状態を示す断面図である。
【図9】本発明にかかるキャッピング装置の他の実施の形態を示した断面図である。
【図10】本発明にかかる記録ヘッドにおいて、第1の止弁を開弁した状態を示す断面図である。
【図11】本発明にかかる記録ヘッドにおいて、第2の止弁を開弁した状態を示す断面図である。
【図12】複数の圧力発生ユニットにより構成される記録ヘッドの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
2 インクカートリッジ
3 記録ヘッド
8 ホルダ
9 インク供給針(インク供給部)
10a〜10d インク供給流路
11 フィルタ室(分岐部)
13 インク供給口
15 キャピング装置
16 吸引ポンプ(吸引装置)
17〜22 部屋
17a〜22a 吸引口
26 配管
27 止弁
30a〜30d 止弁
31 キャピング装置
B1〜B5 気泡
F フィルタ部材
P 記録用紙
Claims (2)
- 圧力発生手段により加圧されインクを吐出する複数のノズル開口を列状に複数配置して形成された各ノズル開口列に対し、インク供給部から分岐部を介して形成された複数のインク供給路によってそれぞれインクを供給するように構成されたインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法であって、
前記各インク供給路からインクの供給を受けるノズル開口列をそれぞれ独立に封止する部屋を備えたキャップ部材により封止し、前記各部屋にそれぞれ負圧を供給し、各部屋の負圧が一定値に到達後、任意の部屋のみに独立に負圧を供給するようにしたインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法。 - 圧力発生手段により加圧されインクを吐出する複数のノズル開口を列状に複数配置して形成された各ノズル開口列に対し、インク供給部から分岐部を介して形成された複数のインク供給路によってそれぞれインクを供給するように構成されたインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法であって、
前記各インク供給路からインクの供給を受けるノズル開口列をそれぞれ独立に封止する部屋を備えたキャップ部材により封止し、前記各部屋にそれぞれ負圧を供給し、各部屋がインクで充填された後、任意の部屋のみに独立に負圧を供給するようにしたインクジェット式記録ヘッドのインク吸引方法。
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