JP2004254656A - 酵素活性測定方法、その方法に用いる固相及びその製造方法、酵素阻害剤の阻害能評価方法、並びに酵素活性測定用キット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固相担体にリンカーを介してアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有する第1のペプチドが連結した第1の固相に、アンジオテンシン変換酵素を所定時間接触させ、前記固相担体に前記リンカーを介してアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有する第2のペプチドが連結した第2の固相と、前記第1のペプチドに由来するペプチド断片とを得る酵素反応工程と、前記第2の固相に存在する前記ペプチド断片を除去する洗浄工程と、前記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列に標識物質を結合させる標識工程と、前記標識物質を検出する検出工程と、を備えるアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法、その方法に用いる固相及びその製造方法、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能評価方法、並びに酵素活性測定用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
レニン−アンジオテンシン系は生体内における昇圧(血圧上昇)系の一つであり、血圧−体液電解質の重要な調節系である。血中には肝臓で生合成された糖タンパク質のアンジオテンシノーゲンがあり、この物質にレニンが作用してアンジオテンシン−Iを産生する。また、アンジオテンシン−Iは主に肺血管内皮細胞に存在するアンジオテンシン変換酵素によりアンジオテンシン−IIとなる。アンジオテンシン−IIは、末梢血管の平滑筋を直接収縮させ強い昇圧活性を発現すると共に、副腎皮質球状層に作用しアルドステロンの分泌を促進し血圧を上昇させる。
【0003】
高血圧症、糖尿病、肥満は生活習慣病と呼ばれ、これらの疾患の予防や治療に対する関心がますます高まっているが、ヒトの本態性高血圧症にはレニン−アンジオテンシン系の亢進は認められない場合が多い。しかし、レニン−アンジオテンシン系が異常に亢進する高血圧として、ヒトでは腎血管性高血圧や悪性高血圧があり、また、希にレニン産生腫瘍による高血圧がある。
【0004】
このようなレニン−アンジオテンシン系における酵素の作用を明らかにするためには、酵素活性測定方法が用いられる。また、これら高血圧の予防や治療に対してアンジオテンシン変換酵素阻害剤が広く用いられ効果を挙げており、創薬の大きなターゲットとなっている。
【0005】
創薬における最初のステップとして酵素阻害剤の探索がある。目的の酵素に対して阻害剤の有効性を確かめる場合、その酵素に固有の活性測定方法を用い阻害剤の有無の条件で活性測定を行う。そして、その結果を比較検討することで阻害剤の有効性を判断できる。
【0006】
従来、アンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法として、アンジオテンシンの昇圧作用や平滑筋収縮作用を利用するバイオアッセイ、血漿中のアンジオテンシン−IIを測定するラジオイムノアッセイがあった(非特許文献1)。また、最も一般的な方法として、合成基質のhippuryl−L−histidyl−L−leucineにアンジオテンシン変換酵素を作用させ、合成基質のC末端からジペプチド(L−histidyl−L−leucine)を遊離させ生じた馬尿酸により酵素活性を測定する方法があった(非特許文献1、2及び3)。
【0007】
【非特許文献1】
日和田邦夫、他2名「レニン・アンジオテンシン系と高血圧」先端医学社発行、p.138−143,404−408
【非特許文献2】
丸尾文治、田宮信夫監修「酵素ハンドブック」朝倉書店発行、p.540
【非特許文献3】
Biochemical Pharmacology, Vol. 20, pp. 1637−1648
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バイオアッセイで測定する方法は、アンジオテンシン−IIの昇圧作用や平滑筋収縮作用を利用するものであることから活性測定を高精度に行うことが困難であった。また、ラジオイムノアッセイで測定する方法は、測定に際し血中の各種アンジオテンシナーゼによるアンジオテンシン−IIの分解を防止するために各種アンジオテンシナーゼ阻害薬を添加する必要があり、この阻害薬がアンジオテンシン変換酵素に対しても作用を及ぼすため真のアンジオテンシン変換酵素の活性測定を行うことができず、酵素活性の測定を高精度に行うことが困難であった。
【0009】
さらに、合成基質を用いる方法は、アンジオテンシン変換酵素の合成基質に対する基質特異性が低いという問題がある。すなわち酵素の基質特異性を表すKm値がアンジオテンシン−Iは0.07mM、合成基質は2.6mMである(非特許文献2)ことからもわかるように、血中のアンジオテンシン−Iに対するアンジオテンシン変換酵素の作用とは異なることから、この方法においても、酵素活性の測定を高精度に行うことが困難であった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、アンジオテンシン変換酵素本来のアンジオテンシン−Iに対する活性を高精度に測定でき、高感度で簡便に測定可能な、アンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有するペプチドを固相担体に固定し、そのペプチドにアンジオテンシン変換酵素を作用させることにより血中のアンジオテンシン−Iに対する基質特異性と同等の基質特異性を発現させ、上記問題点を解決して、アンジオテンシン変換酵素の活性を高精度に測定できることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、(1)固相担体にリンカーを介してアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有する第1のペプチドが連結した第1の固相に、アンジオテンシン変換酵素を所定時間接触させ、上記第1のペプチドを切断することにより、上記固相担体に前記リンカーを介してアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有する第2のペプチドが連結した第2の固相と、上記第1のペプチドに由来するペプチド断片とを得る酵素反応工程と、(2)上記第2の固相に存在する上記ペプチド断片を除去する洗浄工程と、(3)上記ペプチド断片が除去された上記第2の固相における、上記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列に、標識物質を結合させる標識工程と、(4)上記標識物質を検出する検出工程と、を備えることを特徴とする酵素活性測定方法を提供するものである。
【0013】
本発明の方法では、hippuryl−L−histidyl−L−leucine等の合成基質と異なって、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有するペプチドを酵素基質として用いることから、アンジオテンシン変換酵素本来のアンジオテンシン−Iに対する活性を高精度に測定できる。また、固相担体に上記ペプチドが固定化されていることから、標識物質を結合させる対象物であるアンジオテンシン−IIを固相担体に固定させることができ、標識物質の結合対象とはならない酵素反応により生じた上記ペプチドの断片は洗浄により除去できるため、アンジオテンシン−IIを高感度に測定することが可能である。さらに、従来の酵素活性測定方法では血中のアンジオテンシン−IIを定量していたため採血後に血漿分離を迅速に行い、各種アンジオテンシナーゼ阻害薬を添加する必要があったが、本発明ではそのような必要がなく簡便に測定することが可能である。
【0014】
上記標識物質としては、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する一次抗体であって標識された一次抗体や、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する一次抗体と該抗体を抗原として認識し免疫複合体を形成する標識された二次抗体とからなる複合体を用いることができる。この場合において、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する上記一次抗体は、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列におけるPro−Pheで表されるアミノ酸配列を抗原決定基として認識する一次抗体であることが好ましい。
【0015】
上記第1のペプチドは、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列及びリンカー結合性アミノ酸残基(好ましくは、システイン残基)を有しており、該リンカー結合性アミノ酸残基において、上記固相担体と上記第1のペプチドとが連結していることが好適であり、リンカー結合性アミノ酸残基は、上記第1のペプチドのN末端に存在し、上記リンカー結合性アミノ酸残基のアミノ基がアセチル化されていることが特に好ましい。リンカー結合性アミノ酸残基のアミノ基がアセチル化されていることにより、第1の固相における第1のペプチドの環化を効果的に防止できるため、アンジオテンシン変換酵素の活性測定をより高精度に行うことができるようになる。
【0016】
上記酵素反応工程においては、前記アンジオテンシン変換酵素の阻害剤を添加することにより、上記第1のペプチドの切断を所定時間で停止させて、酵素反応の時間を任意に調節することが可能となる。この場合において、阻害剤はキレート試薬が好適である。
【0017】
本発明はまた、固相担体と、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列及びリンカー結合性アミノ酸残基(好ましくは、システイン残基)を有するペプチドと、上記固相担体と上記リンカー結合性アミノ酸残基とを連結するリンカーとを備え、上記本発明の酵素活性測定方法に好適に適用可能な固相を提供する。かかる固相において上記リンカー結合性アミノ酸残基は、上記ペプチドのN末端に存在し、上記リンカー結合性アミノ酸残基のアミノ基がアセチル化されていることが好ましい。なお、上記固相は、固相担体とリンカーとを結合させるリンカー結合工程と、N末端にリンカー結合性アミノ酸残基(アミノ基がアセチル化されたリンカー結合性アミノ酸残基が好ましく、当該残基はシステイン残基が好ましい。)を有しアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を含むペプチドの、上記リンカー結合性アミノ酸残基を上記リンカーと結合させるペプチド結合工程と、を備える固相の製造方法により得ることができる。
【0018】
本発明はさらに、(1)固相担体にリンカーを介してアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有する第1のペプチドが連結した第1の固相に、アンジオテンシン変換酵素阻害剤により酵素活性が阻害されたアンジオテンシン変換酵素を所定時間接触させ、上記第1のペプチドを切断することにより、上記固相担体に上記リンカーを介してアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有する第2のペプチドが連結した第2の固相と、上記第1のペプチドに由来するペプチド断片とを得る酵素反応工程と、(2)上記第2の固相に存在する上記ペプチド断片を除去する洗浄工程と、(3)上記ペプチド断片が除去された上記第2の固相における、上記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列に、標識物質を結合させる標識工程と、(4)上記標識物質を検出する検出工程と、を備えることを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能評価方法を提供する。かかる方法により、アンジオテンシン変換酵素に対して阻害能の高い阻害剤を容易にスクリーニングすることが可能となる。
【0019】
本発明はまた、上記固相とアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する抗体とを少なくとも備える、本発明の酵素活性測定方法並びに酵素阻害剤の阻害能評価方法を簡便に実施することが可能な、酵素活性測定用キットを提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明のアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法、その方法に用いる固相及びその製造方法、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能評価方法、並びに酵素活性測定用キットの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
(固相及び固相の製造方法)
先ず、図1を参照して本発明に係る固相について説明する。図1は、本発明に係る固相の一実施形態を示す模式図である。同図に示す固相1は、固相担体10とリンカー12と第1のペプチド30とを備えており、固相担体10はリンカー12を介して第1のペプチド30と連結している。固相1において、第1のペプチド30は、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20と当該配列のN末端側に結合したリンカー結合性アミノ酸残基26とを備えており、リンカー結合性アミノ酸残基26においてリンカー12と結合している。そして、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20は、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22と当該配列のC末端側に隣接するジペプチド24とから構成される。本実施形態において、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20の配列、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22及びジペプチド24の配列は、それぞれ、N末端側から記載して、Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu(配列表の配列番号1に記載の配列)、Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe(配列表の配列番号2に記載の配列)及びHis−Leuで表される。なお、本発明におけるペプチドは、オリゴペプチド及びポリペプチドを包含する。
【0022】
固相担体10としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属酸化物等の無機物質、天然高分子、合成高分子等からなり、粒状、ブロック状、フィルム状、シート状等の形状のものが挙げられる。かかる固相担体10は、表面がアミノ基(−NH2)、カルボキシル基(−COOH)等の官能基で修飾されていることが好ましく、特に、表面にアミノ基を有するマイクロプレートやビーズが好ましい。
【0023】
第1のペプチド30のN末端に存在するリンカー結合性アミノ酸残基26は、システイン残基が好ましく、第1のペプチド30の環化を防止するため、システイン残基におけるアミノ基はアセチル化されていることが好ましい。そして、システイン残基におけるメルカプト基(−SH)がリンカー12と化学結合することで固相担体10と第1のペプチド30とが連結することが好ましい。好適な第1のペプチド30の配列としては、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20(配列表の配列番号1に記載の配列)のN末端側にシステイン残基が結合した、配列表の配列番号3に記載の配列が挙げられる。
【0024】
リンカー12は、固相担体10表面上の官能基に反応性の官能基とリンカー結合性アミノ酸残基26の官能基に反応性の官能基とを有するものが好ましく、固相担体10表面上のアミノ基(−NH2)に反応性の官能基(例えば、カルボキシル基)とシステイン残基(リンカー結合性アミノ酸残基26)におけるメルカプト基(−SH)に反応性の官能基(例えば、ヨウ素基)とを有するものが特に好ましい。かかるリンカーとしては、モノヨード酢酸N−オキシコハク酸イミドエステルが挙げられる。
【0025】
なお、リンカー結合性アミノ酸残基26とアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20との間には複数個(1〜3個が好ましい)のアミノ酸残基が存在していてもよく、リンカー結合性アミノ酸残基26のN末端には更に複数個(1〜3個が好ましい)のアミノ酸残基が存在していてもよい。また、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20におけるアミノ酸残基の一つをリンカー結合性アミノ酸残基26として用いてもよい。しかしながら、アンジオテンシン変換酵素の活性測定をより高精度に行う観点からは、本実施形態のように、第1のペプチド30は、N末端側やC末端側、リンカー結合性アミノ酸残基26とアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20との間には、アミノ酸残基を有しないことが好ましく、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列20のN末端側にはリンカー結合性アミノ酸残基26であるシステイン残基を設けて、当該残基においてリンカー12と結合させることが好ましい。
【0026】
図1に示す固相1は、固相担体10とリンカー12とを結合させた後に、液相法や固相法等の一般的な合成方法(例えば、「ペプチド合成の基礎と実験(泉谷信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇道典著、丸善1985年)」に記載の方法)により合成した、N末端にリンカー結合性アミノ酸残基26を有し且つアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列30を含む第1のペプチド30を結合することにより製造可能である。この場合において、リンカー結合性アミノ酸残基26とリンカー12との間で結合を生じさせる。
【0027】
(アンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法)
次に、図2を参照して本発明に係るアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法について説明する。図2(a)〜(d)は、本発明に係るアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法の一実施形態を示す工程図であり、図2(a)及び(b)が酵素反応工程に相当し、図2(c)及び(d)が、それぞれ、洗浄工程及び標識工程に相当する。
【0028】
本実施形態においては、先ず、固相担体10がリンカー12を介して第1のペプチド30と連結した、上述の固相1を準備する(図2(a))。この第1の固相1に、アンジオテンシン変換酵素を所定時間接触させると、第1のペプチド30が切断され、固相担体10にリンカー12を介してアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22を有する第2のペプチド32が連結した第2の固相2と、第1のペプチド30に由来するペプチド断片40,42が得られる(図2(b))。なお、ジペプチド24もペプチド断片として得られる。ここで、第2の固相2における第2のペプチド32は、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22と当該配列のN末端側に結合したリンカー結合性アミノ酸残基26とを備えており、リンカー結合性アミノ酸残基26においてリンカー12と結合している。図2(b)においては、第1のペプチド30から、ペプチド断片であるジペプチド24の他に、種々のペプチド断片(ペプチド断片40,42)が生じているが、これは、アンジオテンシン変換酵素の活性を測定するため被検者や被検動物から血漿を採取すると、各種アンジオテンシナーゼが混在するからである。
【0029】
上記に引き続いて、第2の固相2に存在するペプチド断片40,42やペプチド断片であるジペプチド24の除去を行う(図2(c))。これらの除去は、上記断片が混在した第2の固相2を、界面活性剤(Tween20等)を含有するリン酸バッファー(Phosophate−Buffered Salines, PBS)で洗浄することにより実施することが好ましい。ペプチド断片の除去により、標識物質を結合させる対象物(アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22)以外の断片が第2の固相2から除かれるため、検出工程において、精度よく酵素活性を測定できるようになる。
【0030】
ペプチド断片を除去した後に、第2の固相2におけるアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22に、標識物質60を結合させる(図2(d))。本実施形態では、標識物質60は、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22を認識する一次抗体50に標識52を付加させたものである。また、標識物質60は、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22におけるPro−Pheで表されるアミノ酸配列を認識する。測定感度の観点から一次抗体50は、モノクローナル抗体であることが好ましい。標識52としては、放射性同位体、蛍光物質、酵素(HRP(horseradish peroxidase)、ALP(alkaline phosphatase)等)を用いることができ、これらの標識52を公知の方法にしたがって一次抗体50に付加させることができる。
【0031】
以上のようにして、酵素反応工程、洗浄工程及び標識工程を実施した後に、標識物質60を検出する検出工程を実施する。標識物質60が標識52として放射性同位体を備える場合はラジオイムノアッセイ法に準じて標識物質60が検出可能であり、標識52として蛍光物質を備える場合は、公知の蛍光検出法を適用して標識物質60が検出可能である。また、標識物質60が標識52として酵素であるHRPを備える場合は、例えば、o−フェニレンジアミンを更に反応させて490nmの吸光度を測定することにより標識物質60を検出可能である。
【0032】
本発明に係る酵素活性測定方法を適用するに当たり、酵素反応工程において、アンジオテンシン変換酵素の阻害剤(EDTA等のキレート剤が好ましい。)を添加することにより、第1のペプチドの切断を所定時間で停止させることができる。この場合において、第1のペプチドの切断を停止させるまでの時間は、アンジオテンシン変換酵素の阻害剤の量を変化させること等により容易に制御可能であることから、所定の時間でどの程度の酵素活性が発揮されるかを測定することができる。また、種々の時間で酵素活性を測定することにより、酵素反応の進行を経時的に調べることも可能になる。また、上記結果に基づいて検量線を作製しておけば、1回の測定により酵素活性の度合いを評価することができる。
【0033】
本実施形態においては、標識工程において、標識物質60として、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22を認識する一次抗体50に標識52を付加させたものを用いたが、図3に示すように、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列22を認識する一次抗体50と標識52で標識された二次抗体54とからなる複合体を標識物質60として用いてもよい。なお、二次抗体54は一次抗体50を抗原として認識し免疫複合体を形成する抗体である。
【0034】
(アンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能評価方法)
本発明に係るアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能評価方法としても適用可能である。かかる評価方法を実施する場合は、酵素反応工程において、アンジオテンシン変換酵素にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を加えることにより得られる、酵素活性が阻害されたアンジオテンシン変換酵素を用いればよい。アンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能が高ければ、酵素反応工程で第1のペプチドが切断され難いため、検出工程で検出される標識物質の量が減少する。したがって、検出量の減少でアンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能の高さが評価できる。また、同一構成の第1の固相に対して種類の異なる阻害剤を添加し、標識物質の検出量を比較することにより、アンジオテンシン変換酵素に対する活性の高い阻害剤をスクリーニングすることも可能である。
【0035】
(酵素活性測定用キット)
本発明に係る酵素活性測定用キットは、上述した本発明に係る固相とアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する抗体を少なくとも備えるものである。アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する上記抗体は、標識されていない一次抗体であっても、標識された一次抗体であってもよい。また、一次抗体と、これを抗原として認識し免疫複合体を形成する二次抗体と、からなる複合体(当該二次抗体は標識されていてもよい。)も適用できる。なお、酵素活性測定用キットには、洗浄液、酵素反応停止溶液、検体希釈液、緩衝液、標識物質に対する基質(基質錠等)、標識二次抗体等を更に備えていてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
以下の実施例では、先ず、アンジオテンシン−IIアミノ酸配列におけるPro−Pheで表されるアミノ酸配列を認識する一次抗体(以下、単に「一次抗体」という。)を調製し、この一次抗体を、固相担体に連結させた(以下、「固相化した」という。)アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有するペプチド(当該ペプチドを以下「酵素基質」という。)並びに固相化したアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有するペプチド(当該ペプチドを以下「酵素産物」という。)に反応させた。これにより、酵素産物に対してのみ一次抗体が基質特異性を発現することを確認した。次に、固相化した酵素基質にアンジオテンシン変換酵素を反応させ、酵素活性を測定した(実施例1)。更に、酵素阻害剤としてEDTAを用い、その酵素阻害能を評価した(実施例2)。
【0038】
[一次抗体の調製]
60μg/0.3mlに調製したアンジオテンシン−II抗原液(キャリアタンパク質(ウシサイログロブリン)結合アンジオテンシン−II、SynPep社製)にアジュバントを1:1で加え、2本のガラス製注射器を用いて十分乳化した。この乳液を注射針27Gを用いてBalb/cマウスへ皮下・皮内注射を行い、7日毎に4回免疫を行った。4回免疫後、尾静脈より少量採血し、その抗体力価を測定した。なお、抗体力価の測定は、マイクロタイタープレート(Nunc社製、イムノプレート)へアンジオテンシン−II(上記抗原と同様のもの)を50ng/well固相化した酵素免疫測定法(EIA)にて行った。
【0039】
抗体力価の上昇したBalb/cマウスの脾臓細胞を常法に従い培養マウス骨髄細胞X−63 Age8((株)免疫生物研究所製)と細胞融合させ、スクリーニングを行った。各クローンについては1次クローニング後、更に2次クローニングを行い、最終的に3種類のクローンを得た。得られたクローンのうち1種類のクローン(54B1)を大量培養し、培養上清からプロティンAカラム(ファルマシアバイオテク社製)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによりIgG画分を精製し、一次抗体を得た。
【0040】
[酵素基質及び酵素産物の調製]
アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列(配列表の配列番号1に記載の配列)を有するペプチドのN末端にシステイン(Cys)を付加したペプチド(配列表の配列番号3に記載の配列)を合成し、N−末端アミノ酸残基(Cys)のα−アミノ基をアセチル化し酵素基質(配列表の配列番号5に記載の配列)とした。同様に、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列(配列表の配列番号2に記載の配列)を有するペプチドのN末端にシステインを付加したペプチド(配列表の配列番号4に記載の配列)を合成し、N−末端アミノ酸残基(Cys)のα−アミノ基をアセチル化し酵素産物(配列表の配列番号6に記載の配列)とした。
【0041】
なお、上記ペプチドは、ペプチド合成装置(Applied Biosystem社製)を用いBoc法(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質VI、日本生化学会編、1992年を参照)に基づいて合成し、得られたペプチドは高速液体クロマトグラフィーにより精製することにより得た。高速液体クロマトグラフィーはYMC−Pack ODS−AM(ワイエムシー社製、30mm内径×250mm全長)を用い、流速20mL/分、検出波長220nm、移動相アセトニトリル勾配−0.1%トリフルオロ酢酸で、10〜60%の条件で行った。
【0042】
[酵素基質及び酵素産物の固相化]
表面にアミノ基を有するマイクロプレートであるNunc社製CovaLink Moduleプレートの各ウエルに0.1M炭酸緩衝液(pH9.5)を45μL添加した。これに20mMモノヨード酢酸N−オキシコハク酸イミドエステルのジメチルホルムアミド溶液5μlを添加し、4℃、一昼夜反応させた。1M Tris−HCl(pH8.0) を各ウエルに150μl加え、室温にて約2時間半攪拌しながら反応させた。反応後、5mM EDTA・2Na含有0.1Mリン酸・Na 緩衝液(pH7.5)にて洗浄し、同緩衝液に177ng/50μLとなるよう溶解した酵素基質あるいは産物を各ウエル50μlとなるよう加え、4℃にて一昼夜反応させた。反応後、同緩衝液に溶解した100mM L−システイン溶液を各ウエル50μLとなるよう加え、室温にて約3時間攪拌しながら反応させた。その後、ダルベッコリン酸緩衝液(以下D−PBS(−))にて2回洗浄し、0.1%ウシ血清アルブミン含有D−PBS(−)を各ウエル200μlずつ添加し、4℃、一昼夜反応させた。その後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄し、実験に供するまで乾燥状態で−80℃にて保存した。以上により、固相担体(表面にアミノ基を有する上記マイクロプレート)にリンカー(モノヨード酢酸N−オキシコハク酸イミドエステル)を介して上記酵素基質(配列表の配列番号5に記載の配列)が結合した固相と、固相担体(表面にアミノ基を有する上記マイクロプレート)にリンカー(モノヨード酢酸N−オキシコハク酸イミドエステル)を介して上記酵素産物(配列表の配列番号6に記載の配列)が結合した固相とが得られた。なお、リンカーであるモノヨード酢酸N−オキシコハク酸イミドエステルは、上記酵素基質又は酵素産物のN末端システインのメルカプト基、並びに、上記固相担体のアミノ基、において結合を生じた。
【0043】
[固相化した酵素基質及び酵素産物に対する抗体の反応性]
酵素基質又は酵素産物を固相化したマイクロプレートの各ウエルへ、31.25ng/50μLとなるように0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%Tween20含有D−PBS(−)に溶解した抗体溶液を各ウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄した。HRP標識抗マウスIgG(H+L)ヤギIgG Fab’抗体((株)免疫生物研究所製)を25ng/50μLとなるように0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%Tween20含有D−PBS(−)に溶解し、各ウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄した。0−フェニレンジアミン(SIGMA社製)を0.1%過酸化水素含有リン酸水素カリウム−クエン酸緩衝液(pH5.1)に40μL/100μLとなるよう溶解し、各ウエルへ100μLずつ添加し、遮光下、室温にて15分間反応させた。反応後、1N 硫酸を各ウエルへ100μLずつ添加し、プレートリーダー(モレキュラーデバイス社製、SPECTRAMAX250)を用いて490nmの吸光度を測定した。酵素基質固相化プレート及び酵素産物固相化プレートのそれぞれについて、以上の測定を4回行い、各回の測定で得られた吸光度の値からそれぞれ平均値及び標準偏差値を求めた。表1にこのようにして求めた平均値及び標準偏差値を「平均値±標準偏差値」として示す。表1の結果から、抗体は酵素基質とは結合せず、酵素産物とのみ結合することが証明された。
【0044】
【表1】
【0045】
[酵素活性の測定]
(実施例1)
アンジオテンシン変換酵素はSIGMA社製ウサギ肺由来のものを用いた。300mM NaCl含有0.1Mりん酸・Na 緩衝液(pH8.3)に溶解後、実験に供するまで−80℃にて保存した。9.5ng/50μLとなるよう調製したアンジオテンシン変換酵素溶液を、酵素基質を固相化したマイクロプレートのウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながらそれぞれ10分間、20分間、30分間反応させた。反応は、0.5M EDTA溶液(pH8.0)を各ウエルへ100μLずつ添加することにより停止させた。0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄し、31.25ng/50μLとなるように0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%Tween20含有D−PBS(−)に溶解した抗体溶液を各ウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄した。 HRP標識抗マウスIgG(H+L)ヤギIgG Fab’抗体((株)免疫生物研究所製)を25ng/50μLとなるように0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%Tween20含有D−PBS(−)に溶解し、各ウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄した。
【0046】
0−フェニレンジアミン(SIGMA社製)を0.1%過酸化水素含有リン酸水素カリウム−クエン酸緩衝液(pH5.1)に40μl/100μlとなるよう溶解し、各ウエルへ100μLずつ添加し、遮光下、室温にて15分間反応させた。反応後、1N 硫酸を各ウエルへ100μLずつ添加し、プレートリーダー(モレキュラーデバイス社製、SPECTRAMAX250)を用いて490nmの吸光度を測定した。
【0047】
(比較例1)
実施例1における、アンジオテンシン変換酵素溶液の代わりに、300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na 緩衝液(pH8.3)を実施例1と同じ条件の3個のウエルへ50μLずつ添加し、37℃で攪拌しながらそれぞれ10分間、20分間、30分間反応させたこと以外は、実施例1と同様にして490nmの吸光度を測定した。
【0048】
実施例1及び比較例1の結果を図4に示す。図4よりアンジオテンシン変換酵素を添加した実施例1は、時間の変化と共に酵素産物の生成量が増加しており、酵素活性を測定できた。他方、アンジオテンシン変換酵素を添加しなかった比較例1は、酵素産物は生成していないことが確認された。このように本発明の酵素活性測定方法によれば、アンジオテンシン変換酵素の酵素活性を測定でき、酵素基質として一部にアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有するペプチドを用いることから、酵素の高い基質特異性が発現し酵素活性を高精度に測定することが可能になる。
【0049】
[酵素阻害剤の阻害能の評価]
先ず、300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na緩衝液(pH8.3)に50μg/5μLとなるようアンジオテンシン変換酵素(SIGMA社製、ウサギ肺由来)を溶解した。次に、阻害剤である0.5M EDTAを含有し、300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na緩衝液(pH8.3)を用いて9.5ng/50μLとなるよう調製した(a)阻害剤含有アンジオテンシン変換酵素溶液と、300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na緩衝液(pH8.3)を用い9.5ng/50μLとなるよう調製した(b)アンジオテンシン変換酵素溶液(酵素阻害剤非存在)を用いて、上記酵素活性の測定と同様の方法にて酵素反応を行った。
【0050】
(実施例2)
300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na 緩衝液(pH8.3)に50μg/5μLとなるようアンジオテンシン変換酵素(SIGMA社製、ウサギ肺由来)を溶解した。0.5M EDTAを含有する300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na 緩衝液(pH8.3)にて9.5ng/50μLとなるように調製したアンジオテンシン変換酵素溶液(酵素阻害剤存在)を用いて、実施例1と同様の方法にて酵素反応を行った
【0051】
酵素基質を固相化したマイクロプレートのウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.5M EDTA溶液(pH8.0)を各ウエルへ100μLずつ添加した。0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄し、31.25ng/50μLとなるように0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%Tween20含有D−PBS(−)に溶解した抗体溶液を各ウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄した。 HRP標識抗マウスIgG(H+L)ヤギIgG Fab’抗体((株)免疫生物研究所製)を25ng/50μlとなるように0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%Tween20含有D−PBS(−)に溶解し、各ウエルへ50μLずつ添加し、37℃にて攪拌しながら30分間反応させた。反応後、0.05%Tween20含有D−PBS(−)にて5回洗浄した。0−フェニレンジアミン(SIGMA社製)を0.1%過酸化水素含有リン酸水素カリウム−クエン酸緩衝液(pH5.1)に40μl/100μLとなるよう溶解し、各ウエルへ100μLずつ添加し、遮光下、室温にて15分間反応させた。反応後、1N 硫酸を各ウエルへ100μLずつ添加し、プレートリーダー(モレキュラーデバイス社製、SPECTRAMAX250)を用いて490nmの吸光度を測定した。
【0052】
(実施例3)
0.5M EDTAを含有する300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na 緩衝液(pH8.3)にて9.5ng/50μLとなるように調製したアンジオテンシン変換酵素溶液(酵素阻害剤存在)に代えて、300mM NaCl含有0.1Mリン酸・Na 緩衝液(pH8.3)にて9.5ng/50μLとなるように調製したアンジオテンシン変換酵素溶液(酵素阻害剤非存在)を用いた以外は、実施例2と同様にして490nmの吸光度を測定した。
【0053】
実施例2及び3のそれぞれについて測定を4回行い、各回の測定で得られた吸光度の値からそれぞれ平均値及び標準偏差値を求めた。表2にこのようにして求めた平均値及び標準偏差値を「平均値±標準偏差値」として示す。表2の結果から、阻害剤である0.5M EDTAを含有している実施例2では酵素の活性が阻害されたことが確認され、他方、阻害剤の存在しない実施例3では酵素は活性であることが確認され、アンジオテンシン変換酵素の阻害剤の作用を評価することができることが証明された。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
以上示したとおり、本発明のアンジオテンシン変換酵素の活性測定方法によれば、アンジオテンシン変換酵素の活性を高精度に測定でき、更に高感度で簡便に測定することが可能となる。また、本発明の固相を用いることにより酵素活性を高精度に測定でき、本発明の酵素阻害剤の阻害能評価方法によりアンジオテンシン変換酵素阻害剤のスクリーニングを容易に行うことができる。さらに、本発明の酵素活性測定用キットによれば、アンジオテンシン変換酵素の活性測定を容易に行うことができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る固相の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係るアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法の一実施形態を示す工程図である。
【図3】一次抗体と標識された二次抗体とからなる複合体を用いて標識工程を実施したときの模式図である。
【図4】実施例1及び比較例1で得られた吸光度を示す図である。
【符号の説明】
1・・・第1の固相、2・・・第2の固相、10・・・固相担体、12・・・リンカー、20・・・アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列、22・・・アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列、24・・・ジペプチド、26・・・リンカー結合性アミノ酸残基、30・・・第1のペプチド、32・・・第2のペプチド、40,42・・・ペプチド断片、50・・・一次抗体、52・・・標識、54・・・二次抗体、60・・・標識物質。
Claims (17)
- 固相担体にリンカーを介してアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有する第1のペプチドが連結した第1の固相に、アンジオテンシン変換酵素を所定時間接触させ、前記第1のペプチドを切断することにより、前記固相担体に前記リンカーを介してアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有する第2のペプチドが連結した第2の固相と、前記第1のペプチドに由来するペプチド断片とを得る酵素反応工程と、
前記第2の固相に存在する前記ペプチド断片を除去する洗浄工程と、
前記ペプチド断片が除去された前記第2の固相における、前記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列に、標識物質を結合させる標識工程と、
前記標識物質を検出する検出工程と、を備えることを特徴とするアンジオテンシン変換酵素の酵素活性測定方法。 - 前記標識物質は、前記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する一次抗体であって標識された一次抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記標識物質は、前記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する一次抗体と該抗体を抗原として認識し免疫複合体を形成する標識された二次抗体とからなる複合体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する一次抗体は、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列におけるPro−Pheで表されるアミノ酸配列を認識する一次抗体であることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
- 前記第1のペプチドは、アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列及びリンカー結合性アミノ酸残基を有しており、該リンカー結合性アミノ酸残基において、前記固相担体と前記第1のペプチドとが連結していることを特徴とする請求項1〜4記載のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リンカー結合性アミノ酸残基が前記第1のペプチドのN末端に存在し、前記リンカー結合性アミノ酸残基のアミノ基がアセチル化されていることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 前記リンカー結合性アミノ酸残基は、システイン残基であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
- 前記酵素反応工程において、前記アンジオテンシン変換酵素の阻害剤を添加することにより、前記第1のペプチドの切断を所定時間で停止させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記阻害剤がキレート試薬であることを特徴とする請求項8記載の方法。
- 固相担体と、
アンジオテンシン−Iのアミノ酸配列及びリンカー結合性アミノ酸残基を有するペプチドと、
前記固相担体と前記リンカー結合性アミノ酸残基とを連結するリンカーと、
を備えることを特徴とする固相。 - 前記リンカー結合性アミノ酸残基が前記ペプチドのN末端に存在し、前記リンカー結合性アミノ酸残基のアミノ基がアセチル化されていることを特徴とする請求項10記載の固相。
- 前記リンカー結合性アミノ酸残基は、システイン残基であることを特徴とする請求項10又は11記載の固相。
- 固相担体とリンカーとを結合させるリンカー結合工程と、
N末端にリンカー結合性アミノ酸残基を有しアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を含むペプチドの、前記リンカー結合性アミノ酸残基を前記リンカーと結合させるペプチド結合工程と、を備えることを特徴とする固相の製造方法。 - 前記リンカー結合性アミノ酸残基がアセチル化されたリンカー結合性アミノ酸残基であることを特徴とする請求項13記載の方法。
- 前記リンカー結合性アミノ酸残基は、システイン残基であることを特徴とする請求項13又は14記載の方法。
- 固相担体にリンカーを介してアンジオテンシン−Iのアミノ酸配列を有する第1のペプチドが連結した第1の固相に、アンジオテンシン変換酵素阻害剤により酵素活性が阻害されたアンジオテンシン変換酵素を所定時間接触させ、前記第1のペプチドを切断することにより、前記固相担体に前記リンカーを介してアンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を有する第2のペプチドが連結した第2の固相と、前記第1のペプチドに由来するペプチド断片とを得る酵素反応工程と、
前記第2の固相に存在する前記ペプチド断片を除去する洗浄工程と、
前記ペプチド断片が除去された前記第2の固相における、前記アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列に、標識物質を結合させる標識工程と、
前記標識物質を検出する検出工程と、を備えることを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤の阻害能評価方法。 - 請求項10〜12のいずれか一項に記載の固相と、アンジオテンシン−IIのアミノ酸配列を認識する抗体とを少なくとも備えることを特徴とする酵素活性測定用キット。
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