JP2004254549A - 2級アルコール脱水素酵素及びその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バークホルデリア属に属する微生物に由来し、NADを補酵素として2−ブタノールの(R)体を選択的に酸化する安定性に優れた新規な2級アルコール脱水素酵素。及び、バークホルデリア属に属する微生物培養し、培養物から上記酵素を採取する2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な2級アルコール脱水素酵素およびその製造方法に関するものである。より詳細には、2−ブタノールを基質とする酸化反応における立体選択性が(R)体選択的である2級アルコール脱水素酵素およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物が産生する2級アルコール脱水素酵素のうち、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADと略す)を要求する2級アルコール脱水素酵素については数多くの報告がある。このうち、2級アルコール脱水素酵素の基質として最もよく研究されている2−ブタノールに対して、(R)−2−ブタノールを立体選択的に酸化して、2−ブタノンを生成する活性を有するものとしては、シュードモナス・エスピー ATCC21439(Pseudomonas sp.ATCC21439:非特許文献1参照)、シュードモナス・エスピー SPD6(Pseudomonas sp.SPD6:非特許文献2参照)、コマモナス・テリゲーナ(Comamonas terrigena:非特許文献3参照)、キャンディダ・ボイディニィ SAHM(Candida boidinii SAHM:非特許文献4参照)、及び、ピキア・エスピー NRRL−Y−11328(Picia sp.NRRL−Y−11328:非特許文献5参照)由来の酵素が知られている。
【0003】
上記の酵素のうち、シュードモナス・エスピー ATCC21439およびピキア・エスピー NRRL−Y−11328由来の酵素は分子量約48,000の同一サブユニットからなる二量体であり、のこりの微生物由来の酵素は、いずれも四量体であることが報告されている。
【0004】
シュードモナス・エスピー SBD6、コマモナス・テリゲーナおよびキャンディダ・ボイディニィ SAHM由来の酵素は分子量約33,500から41,000の同一サブユニットからなる四量体と推定されている。シュードモナス・エスピー SBD6の酵素は、分子量162,000、サブユニット分子量41,000の四量体で、等電点は4.7である。コマモナス・テリゲーナの酵素は、分子量125,000から150,000、サブユニット分子量33,500の四量体である。キャンディダ・ボイディニィ SAHMの酵素は、分子量150,000、サブユニット分子量38,000の四量体で、等電点は4.9である。
【0005】
2級アルコール脱水素酵素のなかでも、上記の四量体タンパク質酵素はいずれも短鎖の脂肪族アルコールによく作用し、1級アルコールよりも2級アルコールにより作用する性質を有し、ケトン化合物の立体選択的還元反応による光学活性2級アルコール化合物の合成や、ラセミ体の2級アルコール化合物を立体選択的に酸化させ光学活性2級アルコール化合物を合成する上で有用な酵素である。
【0006】
【非特許文献1】
Eur.J.Biochem.,119巻,359−364頁,1981年
【0007】
【非特許文献2】
Bioorg.Chem.,19巻,398−417頁,1991年
【0008】
【非特許文献3】
Biochim.Biophys.Acta.,661巻,74−86頁,1981年
【0009】
【非特許文献4】
Biochim.Biophys.Acta.,716巻,298−307頁,1982年
【0010】
【非特許文献5】
Eur.J.Biochem.,101巻,401−406頁,1979年
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の酵素はいずれも工業的に使用するためには、その安定性は必ずしも十分ではない。例えば、シュードモナス・エスピー SBD6の酵素は、エチレンジアミン四酢酸によっては阻害されないが、55℃、13分間または65℃、3分間の熱処理により、活性は50%となる。コマモナス・テリゲーナの酵素は、0.1mMのエチレンジアミン四酢酸と30分間存在させることにより活性の16%が失われる。キャンディダ・ボイディニィ SAHMの酵素は、1mMのエチレンジアミン四酢酸により阻害されないが、50℃、60分間熱処理後の残存活性75%となる。従って、より安定な2級アルコール脱水素酵素が求められていた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意に研究を行なった結果、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物が、安定性のよい新規な2級アルコール脱水素酵素を生産することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の理化学的性質を有する2級アルコール脱水素酵素である:
(a)作用:NADを補酵素として、2−ブタノールの(R)体を優先的に酸化して2−ブタノンを生成する、
(b)分子量:ゲル濾過法により150,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により37,000、
(c)等電点:5.35、
(d)薬剤耐性:1mMのエチレンジアミン四酢酸の存在下で、反応が阻害されない、
(e)熱安定性:pH7.0、60℃で60分加熱後の残存活性が85%以上。
【0014】
また本発明は、バークホルデリア属に属する微生物を培養して、培養物から上記2級アルコール脱水素酵素を取得することを特徴とする、2級アルコール脱水素酵素の製造方法である。
【0015】
本発明の2級アルコール脱水素酵素は安定性に優れ、各種の光学活性アルコール、特に光学活性2級アルコールの製造に有用である。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の2級アルコール脱水素酵素について説明する。本発明の2級アルコール脱水素酵素は、NADを補酵素として、脂肪族アルコールを酸化し、対応するケトンまたはアルデヒドを生成する。
反応は立体選択的であり、ラセミ体の2−ブタノールを基質とした場合には、(R)体を選択的に酸化して2−ブタノンを生成する。1級アルコールよりも2級アルコールに対する活性が高い。
【0017】
また、本発明の2級アルコール脱水素酵素は、NADHを補酵素として、脂肪族ケトンまたは脂肪族アルデヒドを還元してアルコールを生成することもできる。
【0018】
分子量は、ゲル濾過法による測定で約150,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により約37,000であり、同一サブユニットからなる四量体と考えられる。また、等電点は約5.35である。
【0019】
反応の至適pHは、2−プロパノールの酸化反応においてpHは8.5以上、2−ブタノンの還元反応において約pHは6.0である。また、酵素のN末端のアミノ酸配列は、MKALVFNGPGQKALEDKPEPQである。
【0020】
本発明の2級アルコール脱水素酵素は、安定性に優れる。pH6.5から9.0の範囲で本酵素は極めて安定であり、当該pH範囲ではpH7.0、60℃で60分加熱後においても85%の活性が残存する。
【0021】
また、各種の酵素阻害剤の影響については、α,α′−ジピリジル、8−ハイドロキシキノリン、o−フェナンスロリン、4−(クロロ水銀)ベンゼンスルホン酸、硫酸マンガン、塩化亜鉛により阻害される一方、1mMのセミカルバジド、エチレンジアミン四酢酸、アジ化ナトリウムの存在下においても、反応は阻害剤されない。
【0022】
本発明の2級アルコール脱水素酵素は、例えば、バークホルデリア属に属する微生物、好ましくはバークホルデリア・エスピー AIU652株から得ることができる。
【0023】
上記バークホルデリア・エスピー AIU652株は、本発明者が土壌から分離、採取し、平成15年1月31日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターへ寄託したものであり、寄託番号はFERM P−19198である。上記菌株の菌学的性質を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
以上の菌学的性質から、Bergey‘s Manual of Systematic Bacteriology,Vol.1(Williams and Wilkins,Baltimore)、Int.,J.,Syst.Bacteriol.,45巻,274頁,1995年、およびInt.,J.,Syst.Bacteriol.,48巻,549頁,1998年に基づき、検索を行なった結果、AIU652株は、バークホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)に属することが判明した。
【0026】
本発明の2級アルコール脱水素酵素は、例えば、上記の微生物を栄養培地にて培養し、該培養物から採取することにより製造することができる。
【0027】
培養に使用する培地としては、使用菌株が資化できる炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要な栄養源を適量含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれもが使用できる。例えば、炭素源としてはグルコース、ラクトース、マルトース、メタノール等を用いることができる。なお、培地にコレステロール、または2−プロパノールを添加すると本発明の2級アルコール脱水素酵素活性の高い培養物を得ることができる。上記コレステロール、2−プロパノールは唯一炭素源として用いてもよいし、前記の炭素源と併用してもよい。
窒素源としてはポリペプトン、コーンスティープリカー等の窒素含有天然物やアンモニウム塩類、尿素等の無機窒素化合物が使用できる。また、無機物としてはカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、銅、りん酸等が使用される。
【0028】
生産菌の培養は、振とう培養または通気攪拌培養により行なわれる。この時の培養温度は20〜45℃の範囲で、好ましくは25〜40℃であり、培地のpHは3〜9の範囲で,好ましくは4〜8に制御するのがよい。しかし、これら以外の条件下であっても使用する菌株が生育しさえすれば実施は可能である。菌株の培養期間は通常10〜96時間であり、好ましくは24〜72時間である。菌株は、増殖の過程で2級アルコール脱水素酵素を産生し、菌体内に蓄積する。
【0029】
本発明の2級アルコール脱水素酵素の精製には、一般に使用されている蛋白質の精製法を用いることができる。菌体からの酵素の抽出法としては、超音波、ガラスビーズ、フレンチプレス等を用いる物理的な破砕法のほか、界面活性剤を用いる化学的な方法、リゾチウムを用いる生化学的な方法等があげられる。
【0030】
上記の方法によって得られた抽出液は、一般に使用される酵素精製法を組合せて、処理することにより、目的の酵素を高純度に精製することができる。例えば、硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過による分子量分画、アフィニティークロマトグラフィー等の方法があげられる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお。%は特に断らないかぎり重量%を表す。
【0032】
(実施例1)酵素の生産
バークホルデリア・エスピー AIU652(Burkholderia sp. AIU652)を、リン酸ニ水素カリウム0.1%、リン酸水素ニカリウム0.2%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、硝酸アンモニウム0.3%、酵母エキス0.1%、グルコース0.2%(pH4.0)からなるGlucose培地、リン酸ニ水素カリウム0.1%、リン酸水素ニカリウム0.2%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、硝酸アンモニウム0.3%、酵母エキス0.1%、2−プロパノール0.2%(pH4.0)からなる2−Propanol培地、リン酸ニ水素カリウム0.1%、リン酸水素ニカリウム0.2%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、硝酸アンモニウム0.3%、酵母エキス0.1%、コレステロール0.2%(pH4.0)からなるCholesterol培地の3つの培地を入れて殺菌した100mlフラスコに接種し、表2に示す時間、30℃で振とう培養した。培養後、菌体を遠心分離により集めマルチビーズショッカーを用いてガラスビーズにより破砕し、破砕物を遠心分離して上清を得た。この無細胞抽出液中の2級アルコール脱水素酵素の活性とタンパク濃度を測定した結果を表2にまとめた。なお、酵素活性の測定は、11mMの2−プロパノール、0.6mMのNAD+および酵素液を含む200mMリン酸緩衝液(pH8.5)1mlの反応液を30℃で3分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定することにより行なった。1分間に1μモルのNADをNADHに還元する酵素活性を1unitと定義した。
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例2)酵素の精製
以下の手順により2級アルコール脱水素酵素をバークホルデリア・エスピー AIU652(Burkholderia sp. AIU652)から精製した。すべての操作は4〜10℃で実施した。本菌を、実施例1に記したCholesterol培地で培養した培養液約6lを遠心分離により菌体を集め、石油エーテルで洗浄した。これを50mlの10mMリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、マルチビーズショッカーを用いてガラスビーズにより3分間破砕した。遠心分離により不溶物を除いた上清の無細胞抽出液とした。100mlの無細胞抽出液に30%となるように硫酸アンモニウムを加えて、1Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化したフェニルトヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。活性は、0.5M硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)により溶出された。活性画分を限外濾過膜により脱塩、濃縮し、10mMリン酸緩衝液(pH6.8)により平衡化したブルーセファロースカラムクロマトグラフィーに供した。カラムを100mMリン酸緩衝液(pH6.8)で洗浄ののち、活性は20mMNADを含む100mMリン酸緩衝液(pH6.8)で溶出した。活性画分を限外濾過膜により脱塩、濃縮し、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)により平衡化したハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーに供した。カラムを10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で洗浄ののち、活性は、リン酸緩衝液(pH6.8)の10mMから100mMまでのリニアグラジエントにより溶出した。活性画分を限外濾過膜により脱塩、濃縮し、20mMリン酸緩衝液(pH6.8)により平衡化したDEAE−セファロースカラムクロマトグラフィーに供した。カラムを20mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄ののち、活性は、20mMリン酸緩衝液(pH6.8)中の塩化ナトリウム濃度が0mMから300mMまでになるようにしたリニアグラジエントにより溶出した。活性画分を限外濾過膜により脱塩、濃縮し、トヨパールHW55カラムクロマトグラフィーによるゲル濾過にかけ、溶出活性画分を精製酵素とした。本カラムにより、分子量標準タンパク質を用いて精製酵素の分子量を測定したところ、約150,000であった。また、精製酵素をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、単一のバンドが認められた。また、分子量標準タンパク質との移動度の差から、その分子量は約37,000と算出された。したがって、本菌の生産する2級アルコール脱水素酵素は同一サブユニットからなる四量体であると考えられた。精製の各ステップでの収率等を表3にまとめた。以後本酵素をS−ALDHと呼ぶ。
【0035】
【表3】
【0036】
(実施例3)酸化反応の際の基質特異性
1%の各種化合物、0.75mMのNADおよび酵素液を含む200mMリン酸緩衝液(pH8.5)1mlの反応液を30℃で3分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定して酵素活性を求めた。表4に示した化合物について、2−プロパノールでの活性を100としたときの相対活性およびKm値を調べた。結果を表4に示した。
【0037】
【表4】
【0038】
(実施例4)還元反応の際の基質特異性
0.05%の各種化合物、0.3mMのNADHおよび酵素液を含む200mMリン酸緩衝液(pH6.0)3mlの反応液を30℃で3分間反応させ、その間の340nmの吸光度の減少を測定して酵素活性を求めた。表5に示した化合物について、アセトンでの活性を100としたときの相対活性およびKm値を調べた。結果を表5に示した。なお、ジヒドロキシアセトン、アセト酢酸、ピルビン酸については、表の脚注に示した基質濃度で反応させた。
【0039】
【表5】
【0040】
(実施例5)光学活性化合物に対する基質特異性
1%の各種化合物、0.75mMのNADおよび酵素液を含む200mMリン酸緩衝液(pH8.5)3mlの反応液を30℃で3分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定して酵素活性を求めた。表6に示した化合物について、2−プロパノールでの活性を100としたときの相対活性およびKm値を調べた。結果を表6に示した。
【0041】
【表6】
【0042】
(実施例6)要求する補酵素
実施例1記載の酵素活性測定条件で、NADをNADPに変えて酸化活性を測定し、NADを用いた場合を100とした相対値を求めた。また、実施例4記載の酵素活性測定条件で、NADHをNADPHに変えて酸化活性を測定し、NADHを用いた場合を100とした相対値を求めた。これらの結果と、NADおよびNADHの対するKm値を表7にまとめた。
【0043】
【表7】
【0044】
(実施例7)各種化合物の影響
表8に示した各種の化合物を1mMとなるように反応液に加え、実施例1記載の方法により酵素活性を測定し、なにも加えない場合の活性を100とした相対値を求めた。結果を表7にまとめた。8−ハイドロキシキノリンやo−フェナンスロリンにより強く阻害されたが、カルボニル試薬により阻害されなかった。
【0045】
【表8】
【0046】
(実施例8)金属の影響
実施例7の各種化合物の代わりに、表9に記した化合物を用いて同様の実験を行なった、結果を表9にまとめた。1mMの塩化銅を添加した場合、30%程度活性が向上した。1mMの塩化亜鉛や硫酸マンガンを添加した場合、60〜70%程度活性が低下したが、同一濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加しても活性は完全には回復しなかった。
【0047】
【表9】
【0048】
(実施例9)pHの影響
実施例1に記載の酵素活性測定条件において、緩衝液のpHを変化させることにより酸化反応の至適pHを求めた。また、実施例4記載の酵素反応活性測定条件において、基質を2−ブタノンとし緩衝液のpHを変化させることにより、還元反応の至適pHを求めた。さらに、酵素液を各種pHで50℃で60分間加熱したのち、残存する酵素活性を測定した。これらの結果を図1にまとめた。50℃で60分間加熱してもpH6〜9では、75%の活性が残存しており、特にpH7〜8では95%以上の活性が残存していた。
【0049】
(実施例10)温度の影響
実施例1記載の酵素活性測定条件において、反応温度を変化させることにより、酸化反応の至適温度を求めた。また、酵素液をpH7.0とし各温度で60分間加熱したのち、残存する酵素活性を測定した。これらの結果を図2に示した。反応の最適温度は70℃以上であり、pH7.0で60℃、60分間加熱した場合には、約85%の活性が残存していた。
【0050】
(実施例11)N末端アミノ酸配列の解析
実施例2で得た精製酵素標品のN末端アミノ酸配列を、フェニルチオヒダントインを用いるアミノ酸分析装置を装着したプロテインシークエンサーを用いて決定したところ、MKALVFNGPGQKALEDKPEPQであった。
【0051】
【発明の効果】
安定性に優れ、(R)−2−ブタノールに特異的に作用する新規な2級アルコール脱水素酵素が提供された。本酵素を用いることにより、ケトン化合物の還元反応またはアルコール化合物の酸化反応により、光学活性アルコール化合物の合成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】S−ALDH酵素活性及び安定性に対するpHの影響
【図2】S−ALDH酵素活性及び安定性に対する温度の影響
Claims (7)
- 次の理化学的性質を有する2級アルコール脱水素酵素:
(a)作用:NADを補酵素として、2−ブタノールの(R)体を優先的に酸化して2−ブタノンを生成する、
(b)分子量:ゲル濾過法により150,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により37,000、
(c)等電点:5.35、
(d)薬剤耐性:1mMのエチレンジアミン四酢酸の存在下で、反応が阻害されない、
(e)熱安定性:pH7.0、60℃で60分加熱後の残存活性が85%以上、 - さらに以下の理化学的性質を有する請求項1記載の2級アルコール脱水素酵素:
(f)至適pH:2−ブタノールの酸化反応時pH8.5以上、2−ブタノンの還元反応時pH6.0、
(g)pH安定性:pH6.5〜pH9.0、
(h)基質特異性:1−ブタノールに対する活性よりも2−ブタノールに対する活性が高い。
(i)N末端アミノ酸配列:MKALVFNGPGQKALEDKPEPQ。 - バークホルデリア属に属する微生物由来である請求項1又は2記載の2級アルコール脱水素酵素。
- バークホルデリア属に属し、請求項1記載の酵素を産生する微生物を培養し、培養物から該酵素を取得することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
- バークホルデリア属に属する微生物が、バークホルデリア・エスピー AIU652(Burkholderia sp. AIU652)(FERM P−19198)である請求項4記載の製造方法。
- 微生物を培養する際に、2−プロパノールを含有する培地を用いることを特徴とする請求項4又は5記載の製造方法。
- 微生物を培養する際に、コレステロールを含有する培地を用いることを特徴とする請求項4又は5記載の製造方法。
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