JP2004254412A - 電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法並びに駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、省電力化可能な電気機械変換素子(圧電素子)の駆動回路及び駆動方法並びに電気機械変換素子を用いた駆動装置に関する。
【解決手段】本発明の駆動回路は、駆動電圧が印加されることにより伸縮する圧電素子10aに駆動電圧を印加する第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122から成る駆動電圧印加部と、圧電素子10aに接続された場合に並列に接続されるコンデンサ100と圧電素子10aとの間で電荷を充放電させる第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142からなる充放電部と、圧電素子10aに印加される駆動電圧の極性を反転する間に、圧電素子10aに充電されている電荷をコンデンサ100に充電した後に、コンデンサ100に充電した電荷を圧電素子10aに極性を反転して再充電するように、駆動電圧印加部及び充放電部を制御する制御回路60aとを備える。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明の駆動回路は、駆動電圧が印加されることにより伸縮する圧電素子10aに駆動電圧を印加する第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122から成る駆動電圧印加部と、圧電素子10aに接続された場合に並列に接続されるコンデンサ100と圧電素子10aとの間で電荷を充放電させる第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142からなる充放電部と、圧電素子10aに印加される駆動電圧の極性を反転する間に、圧電素子10aに充電されている電荷をコンデンサ100に充電した後に、コンデンサ100に充電した電荷を圧電素子10aに極性を反転して再充電するように、駆動電圧印加部及び充放電部を制御する制御回路60aとを備える。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機械変換素子の駆動回路に関し、特に、省電力化を図ることができる電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法並びに電気機械変換素子を用いた駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、光学機器に内蔵されるレンズ等は、圧電アクチュエータを備える駆動装置によって駆動されている。圧電アクチュエータは、電気機械変換素子(圧電素子)によってトルクを生じさせており、この圧電素子を駆動する駆動回路が知られている。圧電アクチュエータとしては、例えば、トラス型圧電アクチュエータやインパクト型圧電アクチュエータ等がある。
【0003】
図13は、従来の圧電素子の駆動回路の構成及び駆動中における駆動回路の状態を示す図である。図13(A)は、圧電素子の駆動回路の構成を示す図であると共に駆動回路の初期状態を示す図であり、図13(B)は、駆動電圧の半周期後における駆動回路の状態を示す図であり、図13(C)は、駆動電圧の1周期後における駆動回路の状態を示す図であり、図13(D)は、駆動電圧の1周期半後における駆動回路の状態を示す図であり、図13(E)は、駆動電圧の2周期後における駆動回路の状態を示す図である。
【0004】
図13(A)において、駆動回路500は、4個のスイッチ回路511、512、521、522からなるHブリッジ回路と、各スイッチ回路511、512、521、522のスイッチング動作を制御する制御回路(不図示)とで構成され、圧電素子に交流電圧を印加する。即ち、駆動回路500は、電圧値Vccの電源と接地GNDとの間に、直列接続されたスイッチ回路511及びスイッチ回路521と、直列接続されたスイッチ回路512及びスイッチ回路522とが並列に接続されてなり、圧電素子510がスイッチ回路511とスイッチ回路521との接続点aと、スイッチ回路512とスイッチ回路522との接続点bとの間に接続される。
【0005】
スイッチ回路511及びスイッチ回路512は、例えば、PチャネルパワーMOS−FETから構成され、スイッチ回路521及びスイッチ回路522は、例えば、NチャネルパワーMOS−FETから構成される。
【0006】
次に、従来の駆動回路500で圧電アクチュエータ110を駆動する動作について説明する。なお、トラス型圧電アクチュエータの場合には、図13(A)に示す駆動回路500が1組(即ち、2個)必要であるが、一方の圧電素子(駆動側圧電素子)を駆動している間は、他方の圧電素子(従動側圧電素子)の端子間は、短絡(ショート)されているので、1個の駆動回路500の動作を説明することで、1個の圧電素子を備えて構成されるインパクト型圧電アクチュエータにおける駆動回路の動作を説明したことになるだけでなく、2個の圧電素子を備えて構成されるトラス型圧電アクチュエータにおける駆動回路の動作も説明したことになる。
【0007】
図13(A)において、初期状態では、圧電素子510に電荷は、充電(蓄積)されておらず、駆動回路500の各スイッチ回路511、512、521、522は、オフ(OFF)状態(開状態)にある。または、図示しないがスイッチ回路511及びスイッチ回路512がオン(ON)状態(閉状態)にあり、スイッチ回路521及びスイッチ回路522がオフ状態にあって圧電素子110の端子間が短絡状態にある場合でもよい。あるいは、図示しないがスイッチ回路511及びスイッチ回路512がオフ状態にあり、スイッチ回路521及びスイッチ回路522がオン状態にあって圧電素子110の端子間が短絡状態にある場合でもよい。
【0008】
この初期状態から圧電素子510の駆動は、図13(B)に示すように、まず、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオン状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオフ状態となって、圧電素子110に電源から電流が流れる。そして、駆動電圧の半周期後には、圧電素子110に電荷Qが充電され、圧電素子110の接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。
【0009】
次の半周期において、図13(C)に示すように、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオフ状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオン状態となって、圧電素子510には図13(B)と反対の電界がかかり、圧電素子510に電源から電流が流れる。そして、駆動電圧の1周期後には、圧電素子510に図13(B)とは逆向きに電荷Qが充電され、圧電素子510の接続点a側が−Qとなり、接続点b側が+Qとなる。したがって、電源からは+2Qの電荷が供給される。
【0010】
次の半周期において、図13(D)に示すように、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオン状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオフ状態となって、圧電素子510には図13(C)と反対の電界がかかり、圧電素子510に電源から電流が流れる。即ち、図13(B)と同様の状態になる。そして、駆動電圧の1周期半後には、圧電素子510に図13(C)とは逆向きに電荷Qが充電され、圧電素子110の接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、電源からは+2Qの電荷が供給される。
【0011】
次の半周期において、図13(E)に示すように、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオフ状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオン状態となって、圧電素子510には図13(D)と反対の電界がかかり、圧電素子510に電源から電流が流れる。即ち、図13(C)と同様の状態になる。そして、駆動電圧の2周期後には、圧電素子510に図13(D)とは逆向きに電荷Qが充電され、圧電素子510の接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、電源からは+2Qの電荷が供給される。
【0012】
以後、各スイッチ回路511、512、521、522は、図13(D)の状態と図13(E)の状態とを交互に繰り返し、圧電素子510には交流の電圧が印加されることとなって伸縮を繰り返す。そして、上述のように半周期ごとに(各スイッチ回路の511、512、521、522のオン・オフの切替時に)電源から+2Q電荷が供給される。
【0013】
なお、圧電素子を駆動する駆動回路は、例えば、特許文献1又は特許文献2に示されている。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−211669号公報
【特許文献2】
特開2001−054291号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧電アクチュエータは、小型、軽量、静粛、滑らかな駆動、正確な位置制御、及び、大きさに比して大トルク等の特長から様々な電気・電子機器、特に、XY移動ステージ、カメラの撮影レンズ、プロジェクタの投影レンズ等の駆動に適用可能であるが、これら電気・電子機器に対して省電力化が要請されている結果、圧電アクチュエータの省電力化も要請されている。特に、カメラ付携帯電話やカメラ等の電池を電源とする機器に圧電アクチュエータを用いる場合には、省電力化の要請が強い。
【0016】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、従来より省電力化を測ることができる電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法を提供することを目的とする。そして、本発明は、このような電気機械変換素子を用いた駆動装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る電気機械変換素子の駆動回路は、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子に前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、前記電気機械変換素子に接続された場合に並列に接続されるコンデンサと前記電気機械変換素子との間で電荷を充放電させる充放電部と、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加部及び前記充放電部を制御する制御部とを備える。そして、本発明に係る、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子を駆動する電気機械変換素子の駆動方法は、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子と並列に接続されるコンデンサに前記電気機械変換素子から電荷を充電する第1ステップと、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電する第2ステップとを備える。
【0018】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法は、駆動電圧の極性を反転させる間に、電気機械変換素子に充電(蓄積)されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、電気機械変換素子に充電されている電荷を有効に活用することができ、このように有効に活用しない従来の駆動回路に較べて省電力化を図ることができる。
【0019】
そして、コンデンサに充電した電荷をより有効に活用する観点から、上述の電気機械変換素子の駆動回路において、前記制御部が、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記電気機械変換素子に残存している電荷を放電してから、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加回路及び前記充放電回路を制御するように構成することが好ましい。このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサに充電した電荷をより有効に活用することができるので、さらに省電力化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る、ベース部材と、前記ベース部材に支持され駆動電圧が印加されることにより伸縮する第1電気機械変換素子と、前記ベース部材に支持され変位可能な第2電気機械変換素子と、前記第1電気機械変換素子と前記第2電気機械変換素子のそれぞれに結合された変位合成部材と、前記変位合成部材が楕円運動を行うように少なくとも前記第1電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備える駆動装置は、前記駆動回路が上述の構成の駆動回路である。さらに、本発明に係る、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固定された支持部材と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に摩擦力を有して係合された係合部材と、前記電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備え、前記電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで前記支持部材と前記係合部材とを相対移動させる駆動装置は、前記駆動回路が上述の構成の駆動回路である。
【0021】
このような電気機械変換素子を用いた駆動装置は、この電気機械変換素子を駆動する駆動回路に上述の駆動回路を用いるので、省電力化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。まず、第1の実施形態の構成について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動装置の構成を示す図である。図1において、駆動装置1は、トラス型圧電アクチュエータ30、駆動回路50a及び制御回路60aを備えて構成される。トラス型圧電アクチュエータ30は、第1圧電素子(第1電気機械変換素子)10a、第2圧電素子(第2電気機械変換素子)10a’、チップ部材(変位合成部)20、ベース部材(固定部)21及びロータ(移動部)22を備えて構成される。
【0024】
図1に示すように、駆動装置1のトラス型圧電アクチュエータは、2つの第1圧電素子10a及び第2圧電素子10a’を略直角に交差させて配置し、それらの交差側端部にチップ部材20を接着剤により接合している。一方、第1圧電素子10a及び第2圧電素子10a’の他端部をベース部材21に接着剤により接合している。
【0025】
チップ部材20の材料は、安定して高い摩擦係数が得られ、かつ耐摩耗性に優れたタングステン等が好ましい。ベース部材21の材料は、製造が容易で、かつ強度に優れたステンレス鋼等が好ましい。また、接着剤は、接着力及び強度に優れたエポキシ系樹脂等が好ましい。
【0026】
なお、第1圧電素子10aと第2圧電素子10a’とは、実質的に同一の構成であるので、第2圧電素子10a’の各構成要素は、第1圧電素子10aの符号にそれぞれ(’)をつけて区別する。
【0027】
第1圧電素子10aの電極12、13及び第2圧電素子10a’の電極12’,13’はそれぞれ駆動回路50aに接続されている。駆動回路50aの構成及び動作については後述する。制御回路60aは、駆動回路50aに接続されており、駆動回路50aを含む駆動装置1の全体を制御する回路である。制御回路60aは、例えば、マイクロコンピュータ等であり、制御プログラムやデータ等を格納するROM(Read−Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、及び、制御プログラムの実行やデータの処理を行う中央処理装置(Central Processing Unit)等を備えて構成される。
【0028】
ここで、本実施形態において電気機械変換素子として用いる積層型の圧電素子について説明する。
【0029】
図2は、積層型圧電素子の構造を示す図である。図2において、圧電素子10aは、PZT等の圧電特性を示す複数のセラミック薄板11と電極12、13を交互に積層したものであり、各セラミック薄板11と電極12、13とは接着剤等により固定されている。1つおきに配置された各電極群12、13は、それぞれ信号線14,15を介して駆動電源16に接続されている。信号線14と信号線15との間に所定の電圧を印加すると、電極12と電極13とに挟まれた各セラミック薄板11には、その積層方向に電界が発生し、その電界は、1つおきに同じ方向である。従って、各セラミック薄板11は、1つおきに分極の方向が同じになる(隣り合う2つのセラミック薄板11の分極方向は逆となる)ように積層されている。なお、圧電素子10aの両端部には、保護層17が設けられている。
【0030】
駆動電源16により直流の駆動電圧を各電極12と電極13との間にそれぞれ印加すると、全てのセラミック薄板11が同方向に伸び又は縮み、圧電素子10a全体として伸長又は収縮する。電界が小さく、かつ変位の履歴が無視できる領域では、各電極12と電極13との間にそれぞれ発生する電界と圧電素子10aの変位は、ほぼ直線的な関係と見なすことができる。
【0031】
ここで、駆動電源16により交流の駆動電圧(交流信号)を各電極12と電極13との間にそれぞれ印加すると、その電界に応じて各セラミック薄板11は、同方向に伸縮を繰り返し、圧電素子10a全体として伸縮を繰り返す。圧電素子10aには、その構造や電気的特性により決定される固有の共振周波数が存在する。交流の駆動電圧の周波数が圧電素子10aの共振周波数と一致すると、インピーダンスが低下し、圧電素子10aの変位が増大する。圧電素子10aは、その外形寸法に対して変位が小さいため、低い電圧で駆動するためには、この共振現象を利用することが望ましい。
【0032】
本実施形態では、第1圧電素子10aと第2圧電素子10a’のいずれか一方、例えば第1圧電素子10aのみを駆動し、その振動をベース部材21を介して第2圧電素子10a’に伝達し、第2圧電素子10a’を所定の位相差を持って共振させる。即ち、第1圧電素子10aは、駆動側となり、第2圧電素子10a’は、従動側となる。そうすると、第1圧電素子10aと第2圧電素子10a’の交点に設けられたチップ部材20は、楕円(円を含む)を描くように駆動される。なお、このトラス型圧電アクチュエータにおいて、互いに直交する独立した2つの運動を合成すると、その交点は、楕円振動の式(Lissajousの式)に従った軌跡を描く。
【0033】
このチップ部材20を、例えば所定の軸の周りに回転可能なロータ22の円筒外面に押しつけると、チップ部材20の楕円運動(円運動を含む)をロータ22の回転運動に変換することができる。なお、チップ部材20を、例えば所定の軸の周りに回転可能なロータの円筒内面に押しつけてもよい。あるいは、チップ部材20を、例えば棒状部材(図示せず)の平面部に押しつけることにより、チップ部材20の楕円運動を棒状部材の直線運動に変換することも可能である。
【0034】
次に、第1実施形態の駆動装置1におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動回路50aについて説明する。ここで、トラス型圧電アクチュエータは、上述のように第1圧電素子10a及び第2圧電素子10a’の2個の圧電素子から構成されているので、各圧電素子10a、10a’を駆動する回路が必要であるが、各回路は、同一の構成であり、一方の圧電素子(駆動側圧電素子)を駆動している間は、他方の圧電素子(従動側圧電素子)の端子間が短絡(ショート)されるので、1個の圧電素子を駆動する回路の構成及び動作を説明することで、トラス型圧電アクチュエータにおける駆動回路50aの構成及び動作の説明に代える。
【0035】
図3は、第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動回路の一部分を示す回路図である。図3に示す回路は、1個の圧電素子を駆動するための部分駆動回路51aであり、実際には、第1の実施形態ではトラス型圧電アクチュエータであるから、図3に示す部分駆動回路51aが2個必要である。
【0036】
図3において、部分駆動回路51aは、電圧値Vccの電源と接地GNDとの間に、直列に接続された第1スイッチング素子111及び第3スイッチング素子121と、直列に接続された第2スイッチング素子112及び第4スイッチング素子122とが並列に接続され、そして、第1スイッチング素子111と第3スイッチング素子121との接続点aと、第2スイッチング素子112と第4スイッチング素子122との接続点bとの間に、直列に接続された第5スイッチング素子131及び第7スイッチング素子141と、直列に接続された第6スイッチング素子132及び第8スイッチング素子142とが並列に接続され、さらに、第5スイッチング素子131と第7スイッチング素子141との接続点cと、第6スイッチング素子132と第8スイッチング素子142との接続点dとの間にコンデンサ100が接続されてなり、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)は、接続点aと接続点bとの間に接続され、駆動電圧が印加される。
【0037】
なお、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122が駆動電圧印加部に相当し、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142が充放電部に相当する。
【0038】
第1、第2、第5及び第7スイッチング素子111、112、131、141は、例えば、PチャネルパワーMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)で構成され、第3、第4、第6及び第8スイッチング素子121、122、132、142は、例えば、NチャネルパワーMOS−FETで構成される。
【0039】
そして、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142のスイッチング制御(オン・オフ制御)は、制御プログラムに基づき制御部60aによって次のように行われる。
【0040】
図4は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その1)である。図5は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その2)である。図6は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その3)である。図7は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その4)である。図4(A)は、部分駆動回路の初期状態を示し、図4(B)は、部分駆動回路における1回目のスイッチング動作後の状態を示し、図4(C)は、部分駆動回路における2回目のスイッチング動作後の状態を示す。図5(A)は、部分駆動回路における3回目のスイッチング動作後の状態を示し、図5(B)は、部分駆動回路における4回目のスイッチング動作後の状態を示す。図6(A)は、部分駆動回路における5回目のスイッチング動作後の状態を示し、図6(B)は、部分駆動回路における6回目のスイッチング動作後の状態を示し、図6(C)は、部分駆動回路における7回目のスイッチング動作後の状態を示す。そして、図7(A)は、部分駆動回路における8回目のスイッチング動作後の状態を示し、図7(B)は、部分駆動回路における9回目のスイッチング動作後の状態を示す。
【0041】
なお、図4乃至図7は、部分駆動回路51aの動作を明瞭に示すために、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142は、オン・オフが明瞭に分かるように記号化されている。
【0042】
また、部分駆動回路51aにおける動作の説明を簡単にするために、本実施形態では、コンデンサ100の静電容量は、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)の静電容量と同一としているが、任意の静電容量でよい。そして、後述するように、高い省電力効果を得るためには、コンデンサ100の静電容量は、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)の静電容量よりも大きいほどよい.。
【0043】
図4乃至図7において、図4(A)に示す初期状態では、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)には電荷が充電(蓄積)されておらず、部分駆動回路51aの第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122は、オフ(OFF)状態(開状態)にある。さらに、コンデンサ100にも電荷が充電されておらず、部分駆動回路51aの第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、オフ状態にある。
【0044】
なお、第1圧電素子10aについて、図示しないが第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオン(ON)状態(閉状態)にあり、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオフ状態にあって第1圧電素子10aの端子間が短絡状態にある場合でもよい。あるいは、図示しないが第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態にあり、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態にあって第1圧電素子10aの端子間が短絡状態にある場合でもよい。同様に、コンデンサ100について、図示しないが第5スイッチング素子131及び第6スイッチング素子132がオン状態にあり、第7スイッチング素子141及び第8スイッチング素子142がオフ状態にあってコンデンサ100の端子間が短絡状態にある場合でもよい。あるいは、図示しないが第5スイッチング素子131及び第6スイッチング素子132がオフ状態にあり、第7スイッチング素子141及び第8スイッチング素子142がオン状態にあってコンデンサ100の端子間が短絡状態にある場合でもよい。
【0045】
この初期状態から1回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図4(B)に示すように、まず、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオン状態になると共に、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオフ状態になって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れる。第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、それぞれオフ状態である。そして、1回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、第1圧電素子10aに電荷Qが充電され、第1圧電素子10aの接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、この場合では電源から電荷Qが供給される。ここで、第1圧電素子10aは、駆動電圧を印加されることによって伸長又は収縮する。
【0046】
2回目のスイッチング動作では、図4(C)に示すように、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオン状態になり、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオフ状態になって、コンデンサ100に第1圧電素子10aから電流が流れる。なお、コンデンサ100が第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142のスイッチング動作によって第1圧電素子10aに接続されると、本実施形態では、コンデンサ100と第1圧電素子10aとは、並列に接続される。後述のスイッチング動作においても同様である。そして、2回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるからコンデンサ100に電荷Q/2が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共にQ/2となる。そして、コンデンサ100の接続点c側が接続点a側と接続されているので+Q/2となり、接続点d側が接続点b側と接続されているので−Q/2となる。
【0047】
3回目のスイッチング動作では、図5(A)に示すように、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態になり、第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態になって、コンデンサ100に電荷Q/2が閉じ込められると共に、第1圧電素子10aから電流がグランドに流れて第1圧電素子10aの電荷Q/2が放電される。そして、3回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷Q/2が維持され、第1圧電素子10aの電荷は、0となる。
【0048】
ここで、第1圧電素子10aの電荷を放電するのは、放電せずに次の図5(B)に示す4回目のスイッチング動作を行うと、コンデンサ100から第1圧電素子10aに電荷が供給されたとしても、相殺されて、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の静電容量が等しい場合には第1圧電素子10aの電荷が0となってしまい、コンデンサ100に蓄積した電荷が有効に使用されないためである。なお、コンデンサ100の静電容量が第1圧電素子10aの静電容量より大きい場合には、2回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後において、第1圧電素子10aに残る電荷よりコンデンサ100に充電される電荷の方が多くなるので、3回目のスイッチング動作を省略することが可能である。コンデンサ100の静電容量が第1圧電素子10aの静電容量より大きければ大きいほど、第1圧電素子10aに残る電荷よりコンデンサ100に充電される電荷の方が多く省電力効果を大きくすることができるが、静電容量の大きいコンデンサは、一般に大型なので、小型化の観点から3回目のスイッチング動作を行うことが好ましい。後述の7回目のスイッチング動作も同様である。
【0049】
この図4(A)の状態から図5(A)の状態までが第1圧電素子を駆動する駆動電圧における周期の半周期である。
【0050】
4回目のスイッチング動作では、図5(B)に示すように、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオン状態になり、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオフ状態になって、第1圧電素子10aにコンデンサ100から電流が流れる。そして、4回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるから第1圧電素子10aに電荷Q/4が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共にQ/4となる。そして、第1圧電素子10aの接続点a側に接続点d側が接続されるので−Q/4となり、接続点b側に接続点c側が接続されるので+Q/4となる。
【0051】
ここで、圧電アクチュエータは、上述したように駆動電圧の極性を交互に反転させることによって圧電素子を伸縮させてチップ部材20に楕円運動を生じさせ、ロータ22を駆動するものである。そのため、図4(A)から図5(A)までの半周期に続く次の半周期では、極性を反転させた電圧を第1圧電素子10aに印加する必要がある。即ち、図5(B)に示す第1圧電素子10aの接続点a側が+Qで接続点b側が−Qの状態から接続点a側が−Qで接続点b側が+Qの状態にする必要がある。4回目のスイッチング動作は、電源から第1圧電素子10aに電荷が供給される前に、コンデンサ100の電荷を使用して予備的に第1圧電素子10aに電荷を与えるものである(プレ充電、再充電)。このため、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、第1圧電素子10aに印加される電圧の極性が前の半周期と逆極性となるようにスイッチング動作する必要がある。そのため、4回目のスイッチング動作では、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、上述のように動作することになる。
【0052】
そして、5回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図6(A)に示すように、コンデンサ100の電荷Q/4を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、図4(B)に示す状態とは逆極性の電圧を第1圧電素子10aに印加すべく、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオフ状態になり、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオン状態となって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れる。そして、5回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷Q/4が維持されると共に、第1圧電素子10aに電荷Qが充電され、第1圧電素子10aの接続点a側が−Qとなり、接続点b側が+Qとなる。したがって、この場合では電源から電荷3Q/4が供給される。ここで、印加電圧の極性が図4(B)に示す場合に第1圧電素子10aが伸長している場合には、印加電圧の極性が反転したこの図6(A)に示す場合では第1圧電素子10aは、収縮することになる。もちろん、図4(B)に示す場合に第1圧電素子10aが収縮している場合には、この図6(A)に示す場合では第1圧電素子10aは、伸長収することになる。
【0053】
6回目のスイッチング動作では、図6(B)に示すように、第1圧電素子10aの電荷の一部をコンデンサ100に充電すべく、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオフ状態になり、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオン状態になって、コンデンサ100に第1圧電素子10aから電流が流れる。そして、6回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるのでコンデンサ100に電荷5Q/8が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共に5Q/8となる。そして、コンデンサ100の接続点d側が接続点a側と接続されているので−5Q/8となり、接続点c側が接続点b側と接続されているので+5Q/8となる。
【0054】
なお、6回目のスイッチング動作において、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122をオフ状態にすると共に、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142をオン状態とし、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141をオフ状態とすることも考えられる。この場合では、コンデンサ100の接続点c側が接続点a側と接続され、接続点d側が接続点b側と接続されているので、コンデンサ100に蓄積されている電荷の極性と第1圧電素子10aに蓄積されている電荷の極性とが逆極性で接続されることになる。このため、或る所定時間の経過後におけるコンデンサ100の電荷は、3Q/8となり、上述の場合に較べてコンデンサ100に充電される電荷が少なくなる。従って、このようなスイッチング動作を行っても省電力化が見込めるものの、省電力効果を高める観点から、図6(B)に示すスイッチング動作が好ましい。
【0055】
7回目のスイッチング動作では、図6(C)に示すように、コンデンサ100の電荷を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、第1圧電素子10aの電荷を放電すべく、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態になり、第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態になって、コンデンサ100に電荷5Q/8が閉じ込められると共に、第1圧電素子10aから電流がグランドに流れて第1圧電素子10aの電荷5Q/8が放電される。そして、7回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷5Q/8が維持され、第1圧電素子10aの電荷は、0となる。ここで、第1圧電素子10aの電荷を放電するのは、放電せずに次の図8(A)に示す8回目のスイッチング動作を行うと、コンデンサ100から第1圧電素子10aに電荷が供給されたとしても、相殺されて、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の静電容量が等しい場合には第1圧電素子10aの電荷は、0となり、コンデンサ100に蓄積した電荷が有効に使用されないためである。
【0056】
この図5(B)の状態から図6(C)の状態までが第1圧電素子を駆動する駆動電圧における周期の次の半周期である。そして、図4(A)の状態から図6(C)の状態までが駆動電圧における初期状態からの1周期である。
【0057】
8回目のスイッチング動作では、図7(A)に示すように、プレ充電すべく、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオフ状態になり、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオン状態になって、第1圧電素子10aにコンデンサ100から電流が流れる。そして、8回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるから第1圧電素子10aに電荷5Q/16が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共に5Q/16となる。第1圧電素子10aの接続点a側に接続点c側が接続されるので+5Q/16となり、接続点b側に接続点d側が接続されるので−5Q/16となる。
【0058】
9回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図7(B)に示すように、コンデンサ100の電荷5Q/16を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、図6(A)に示す状態とは逆極性の電圧(即ち、図4(B)に示す状態と同一極性の電圧)を第1圧電素子10aに印加すべく、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオン状態になり、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオフ状態になって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れる。そして、9回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷5Q/16が維持されると共に、第1圧電素子10aに電荷Qが充電され、第1圧電素子10aの接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、この場合では電源から電荷11Q/16が供給される。
【0059】
こうして、コンデンサ100に蓄積されている電荷量は、異なるものの図4(B)のスイッチング状態に戻る。以後、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142は、図4(C)の状態→図5(A)の状態→図5(B)の状態→図6(A)の状態→図6(B)の状態→図6(C)の状態→図7(A)の状態→図7(B)の状態→図4(C)の状態→図5(A)の状態→図5(B)の状態→図6(A)の状態→図6(B)の状態→図6(C)の状態→図7(A)の状態→図7(B)の状態のようにスイッチング動作を繰り返す。部分駆動回路51aは、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142がこのようにスイッチング動作することによって、第1圧電素子10aを伸縮すると共にコンデンサ100の電荷を充放電する。そして、コンデンサ100は、充放電を繰り返していくと、やがて、電荷が一定値に収束する。
【0060】
なお、各或る所定時間は、第1圧電素子10aの静電容量とその時に蓄積されている電荷、コンデンサ100の静電容量とその時に蓄積されている電荷、及び、第1圧電素子10aとコンデンサ100と第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142とから構成される回路中に生じる抵抗値等によって決まる時定数である。
【0061】
ここで、コンデンサ100の電荷が一定値に収束した後において、コンデンサ100に最終的に残る電荷、即ち、図5(B)や図7(A)に示すようにコンデンサ100が第1圧電素子10aをプレ充電した後にコンデンサ100に残存している電荷について次に説明する。
【0062】
図8は、コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その1)である。図9は、コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その2)である。図8(A)は、コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における、駆動電圧の周期における図6(B)に示すスイッチング状態に相当する状態を示し、図8(B)は、図8(A)に示す状態から1回目のスイッチング動作後の状態を示し、図9(A)は、図8(A)に示す状態から2回目のスイッチング動作後の状態を示し、図9(B)は、図8(A)に示す状態から3回目のスイッチング動作後の状態を示す。
【0063】
図8(A)において、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122は、オフ状態であると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141は、オン状態であり、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142は、オフ状態である。このスイッチング動作では、第1圧電素子10aからコンデンサ100に電流が流れて充電される。
【0064】
この図8(A)に示す状態から1回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図8(B)に示すように、コンデンサ100の電荷を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態とされると共に、第1圧電素子10aの電荷を放電すべく、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態とされ、第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態とされる。このスイッチング動作では、コンデンサ100の電荷が閉じ込められると共に、第1圧電素子10aから電流がグランドに流れて第1圧電素子10aの電荷が放電され、0になる。
【0065】
図8(A)に示す状態から2回目のスイッチング動作では、図9(A)に示すように、プレ充電すべく、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態とされると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオフ状態とされ、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオン状態とされる。このスイッチング動作では、第1圧電素子10aにコンデンサ100から電流が流れ、プレ充電される。
【0066】
図8(A)に示す状態から3回目のスイッチング動作では、図9(B)に示すように、コンデンサ100の電荷を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態とされると共に、逆極性の電圧を第1圧電素子10aに印加すべく、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオン状態とされると共に、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオフ状態とされる。このスイッチング動作によって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れ、伸長又は収縮される。
【0067】
この図8(A)の状態が図9(B)の状態になった場合において、コンデンサ100に蓄積されている電荷の一般解を求める。
【0068】
ここで、C1を圧電素子(本実施形態では第1圧電素子10a)の静電容量、C2を圧電素子に並列に接続されたコンデンサ(本実施形態ではコンデンサ100)の静電容量、Qを電源によって圧電素子が充電された場合における圧電素子に蓄積される電荷、及び、anをコンデンサが圧電素子に電荷を供給した後にコンデンサに残存する電荷とすると、圧電素子とコンデンサとが並列接続され、上述の図8及び図9の説明から分かるように式1が成立する。
【0069】
【数1】
【0070】
この等比数列を初期値a1=0の条件の下に解くと式2に収束することが分かる。
【0071】
【数2】
【0072】
なお、圧電アクチュエータの駆動周波数fは、一般に80kHzから140kHz程度であるから、瞬時に収束することになる。
【0073】
また、本実施形態では、C1=C2であるから図9(A)の場合におけるコンデンサ100に蓄積されている電荷は、図9(A)に示すように1/3Qとなる。
【0074】
一方、図8(A)の場合における、圧電素子によってコンデンサが充電された場合におけるコンデンサの電荷QCAは、式3より式4となる。
【0075】
【数3】
【0076】
【数4】
【0077】
本実施形態では、C1=C2であるなるから図8(A)の場合におけるコンデンサ100に蓄積されている電荷は、図8(A)に示すように、2/3Qとなる。
【0078】
また、図8(A)の場合における、圧電素子によってコンデンサが充電された場合における圧電素子の電荷QPAは、式5より式6となる。
【0079】
【数5】
【0080】
【数6】
【0081】
本実施形態では、C1=C2であるから図8(A)の場合における第1圧電素子10aに蓄積されている電荷は、図8(A)に示すように、2/3Qとなる。
【0082】
そして、図9(A)の場合における、コンデンサによって圧電素子が充電された場合における圧電素子の電荷QPCは、式7より式8となる。
【0083】
【数7】
【0084】
【数8】
【0085】
本実施形態では、C1=C2であるから図9(A)の場合における第1圧電素子10aに蓄積されている電荷は、図9(A)に示すように、1/3Qとなる。
【0086】
式8から分かるように、コンデンサの静電容量が大きければ大きいほど、電荷QPC、即ち、プレ充電される電荷が多くなる。このため、図9(B)で電源から圧電素子に供給される電荷が少なくて済むから、省電力化の効果が高くなる。計算の上では、例えば、C2=C1の場合では、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、2Q/3であるから、従来の2Qに較べて1/3の電荷供給で済み約66.7%の省電力化が可能となる。また例えば、C2=10C1の場合では、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、11Q/21であるから、従来の2Qに較べて11/42の供給電荷で済み約73.8%の省電力化が可能となる。さらに例えば、C2=100C1の場合では、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、101Q/201であるから、従来の2Qに較べて101/402の供給電荷で済み約74.9%の省電力化が可能となる。コンデンサの静電容量C2を無限大と考えると、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、Q/2であるから、従来の2Qに較べて1/4の供給電荷で済み75%の省電力化が可能となる。従って、C2/C1≧100とすれば、実質的に理論限界の省電力化が可能となる。
【0087】
そして、上記の解析に基づき、第1圧電素子10aを駆動する駆動電圧の1周期における第1圧電素子10aの端子間電圧の時間的変化を図10に示す。図10の横軸は、時間tであり、縦軸は電圧Vである。
【0088】
図10において、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142は、周期の始めから時間t1までは、電源から電荷を供給することによって第1圧電素子10aを伸長(又は収縮)するステップであって、図4(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電源の電圧+Vccが印加される。
【0089】
時間t1からt2までは、第1圧電素子10aの電荷でコンデンサ100を充電するステップであって、図4(C)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧Vcc/(1+α)が印加される。
【0090】
時間t2からt3までは、コンデンサ100の電荷を維持しつつ第1圧電素子10aの電荷を放電するステップであって、図5(A)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aの電圧は0となる。
【0091】
時間t3からt4までは、コンデンサ100の電荷で第1圧電素子10aをプレ充電するステップであって、図5(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧αVcc/(1+α)が印加される。
【0092】
時間t4からt5までは、電源から逆極性で電荷を供給することによって第1圧電素子10aを収縮(又は伸長)するステップであって、図6(A)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧−Vccが印加される。
【0093】
時間t5からt6までは、第1圧電素子10aの電荷でコンデンサ100を充電するステップであって、図6(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧Vcc/(1+α)が印加される。
【0094】
時間t6からt7までは、コンデンサ100の電荷を維持しつつ第1圧電素子10aの電荷を放電するステップであって、図6(C)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aの電圧は0となる。
【0095】
時間t7からt8までは、コンデンサ100の電荷で第1圧電素子10aをプレ充電するステップであって、図7(A)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧αVcc/(1+α)が印加される。
【0096】
時間t8から次の周期の始めまでは、電源から逆極性で電荷を供給することによって第1圧電素子10aを伸長(又は収縮)するステップであって、図7(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧+Vccが印加される。即ち、図4(B)に示すスイッチング動作の状態に戻る。
【0097】
このように駆動電圧は、階段状となり、擬似的な正弦波駆動を行うことができ、スイッチング時にHブリッジ回路を構成する第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142に流れるいわゆる突入電流を小さくすることができる。このため、比較的安価なスイッチング素子を用いることができ、圧電アクチュエータを用いた駆動装置の低コスト化を図ることができる。同様の理由により、小型のスイッチング素子を用いることができるので、圧電アクチュエータを用いた駆動装置の小型化を図ることもできる。
【0098】
次に、別の実施形態について説明する。
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、トラス型圧電アクチュエータを駆動する駆動回路及びこの駆動回路を用いたトラス型圧電アクチュエータの駆動装置について説明したが、第2の実施形態は、インパクト型圧電アクチュエータを駆動する駆動回路及びこの駆動回路を用いたインパクト型圧電アクチュエータについて説明する。
【0099】
図11は、第2の実施形態におけるインパクト型圧電アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【0100】
図11において、インパクト型圧電アクチュエータ40は、圧電素子(電気機械変換素子)10b、支持部材41、駆動部材42及び移動部材43を備えて構成される。
【0101】
支持部材41は、圧電素子10bと駆動部材42とを保持する部品であり、円柱体の軸方向両端部411、412と略中央に位置する仕切壁413とを残して内部を刳り貫くことにより形成された第1収容空間414及び第2収容空間415を有している。この第1収容空間414には、圧電素子10bがその分極方向である伸縮方向を支持部材41の軸方向と一致させた状態で収容されている。第2収容空間415には、移動部材43の一部と駆動部材42とが収容されている。
【0102】
圧電素子10bは、図2に示す圧電素子10aと同一の構成であり、説明を省略する。圧電素子10bは、その伸縮方向である長手方向の一方端面が第1収容空間414の一方端面(端部411側端面)に固着されている。支持部材41の他方端部412及び仕切壁413には、中心位置に駆動部材42の断面形状に合わせた形状の孔が穿設されると共に、この両孔を貫通して棒状の駆動部材42が第2収容空間415に軸方向に沿って移動可能に収容されている。圧電素子10bの他方端面は、駆動部材42の第1収容空間414内に突出した端部が固着される。
【0103】
第2収容空間415の外部に突出した駆動部材42の端部は、板ばね47により所定のばね圧で圧電素子10b側に付勢されている。この板ばね47の付勢は、圧電素子10bの伸縮動作に基づく駆動部材42の軸方向変位を安定化させるためである。
【0104】
駆動部材42は、圧電素子10bの伸縮を移動部材43の移動に変換すると共に、移動部材43を支えるガイドである。駆動部材42の断面形状は、円形、楕円及び矩形などの形状を適用することができるが、移動部材43を安定的に支えスムーズに移動させることができるようにする観点から本実施の形態では、円形である。
【0105】
移動部材43は、駆動部材42の軸方向の両側に取付部431を有する基部432と、両取付部431の間に着装される挟込み部材433とを備える。基部432は、駆動部材42に遊嵌される。挟込み部材433は、両取付部431に取り付けられた板ばね434によって駆動部材42の方向に押圧され、駆動部材42に接触する。この接触によって、移動部材43は、所定の摩擦力で駆動部材42と結合される。また、駆動対象物は、この移動部材43の取付部431を用いて取り付けられる。
【0106】
このようなインパクト型圧電アクチュエータ40は、図3に示す部分駆動回路51aと同様の構成である駆動回路を、図4乃至図7を用いて説明したように制御回路によってスイッチング動作を制御することで、高い省電力化を実現することができる。なお、インパクト型圧電アクチュエータ40は、上述の構成の説明から分かるように圧電素子10bは、1個であるから図3に示す部分駆動回路51aは、そのまま第2の実施形態におけるインパクト型圧電アクチュエータ40の駆動回路となる。
【0107】
そして、インパクト型圧電アクチュエータ40と、このような駆動回路及び制御回路とを備えて構成することで、高い省電力化を実現した、インパクト型圧電アクチュエータの駆動装置を得ることができる。
【0108】
最後に、インパクト型圧電アクチュエータの動作原理について簡単に説明する。図12は、インパクト型圧電アクチュエータの動作原理を説明するための図である。図12(A)は、移動部材43を正方向に移動させる場合において、駆動回路50bから圧電素子10bに出力される駆動電圧の電圧波形を示す図であり、図12(B)は、これに対応する圧電素子10bの伸縮による変位を示す図である。また、図12(C)は、移動部材43を逆方向に移動させる場合において、駆動回路50bから圧電素子10bに出力される駆動電圧の電圧波形を示す図であり、図12(D)は、これに対応する圧電素子10bの伸縮による変位を示す図である。ここで、正方向とは、移動部材43が圧電素子10bから駆動部材42の先端部(板ばね47によって付勢される端部)に向う方向であり、逆方向とは、移動部材43が駆動部材42のこの先端部から圧電素子10bに向う方向である。
【0109】
図12(A)に示すようなデューティ比D3:7の矩形波状の駆動電圧が圧電素子10bに印加された場合には、圧電素子10bの変位は、図12(B)に示すように緩慢な立ち上がり部Taと急峻な立下り部Tbとを有する鋸歯形状となることが確認されている。また、図12(C)に示すようなデューティ比D7:3の矩形波状の駆動電圧が圧電素子10bに印加された場合には、圧電素子10bの変位は、図12(D)に示すように急峻な立ち上がり部Tcと緩慢な立下り部Tdとを有する鋸歯形状となることが確認されている。
【0110】
圧電素子10bの変位が図12(B)に示すような緩慢な立ち上がり部Taでは、圧電素子10bが緩やかに伸長し、移動部材43が駆動部材42と共に正方向に移動する。そして、圧電素子10bの変位が図12(B)に示すような急峻な立ち下がり部Tbでは、圧電素子10bが急激に縮小し、駆動部材42が逆方向に移動しても移動部材43は、駆動部材42上をスリップして略同位置に留まることになる。その結果、移動部材43は、正方向に移動したことになる。したがって、図12(A)に示す矩形波の駆動電圧が圧電素子10bに繰り返し印加されることで、移動部材43は、正方向に間欠的に移動することになる。逆方向の移動原理も同様である。なお、デューティー比Dは、矩形波のハイレベルの時間をT1、ローレベルの時間をT2とすると、T1:T2である。
【0111】
ここで、本発明では、矩形波の立下り及び立上りの部分で、コンデンサ100の充電、圧電素子10bの放電及び圧電素子10bのプレ充電を行うので、実際には、図10に示すように階段状の立下り及び立上りとなる。
【0112】
以上、本明細書に開示された主な発明を以下にまとめる。
(付記1) 駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子に前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、前記電気機械変換素子に接続された場合に並列に接続されるコンデンサと前記電気機械変換素子との間で電荷を充放電させる充放電部と、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加部及び前記充放電部を制御する制御部とを備えることを特徴とする電気機械変換素子の駆動回路。
【0113】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、駆動電圧の極性を反転させる間に、電気機械変換素子に充電(蓄積)されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、電気機械変換素子に充電されている電荷を有効に活用することができ、このように有効に活用しない従来の駆動回路に較べて省電力化を図ることができる。
【0114】
(付記2) 前記制御部は、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記電気機械変換素子に残存している電荷を放電してから、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加回路及び前記充放電回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0115】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサで電気機械変換素子を再充電する前に、電気機械変換素子の電荷を放電するので、コンデンサに充電した電荷をさらに有効に活用することができ、その結果、より省電力化を測ることができ、より小型のコンデンサを用いることができる。
【0116】
(付記3) 前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量以上であることを特徴とする付記1又は付記2に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0117】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサの静電容量が電気機械変換素子の静電容量以上であるので、コンデンサに充電される電荷の方が電気機械変換素子に残る残存電荷よりも多くすることができるので、より省電力化を図ることができる。
【0118】
(付記4) 前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であることを特徴とする付記1乃至付記3の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0119】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサの静電容量が電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であるので、計算上、従来に較べて約73.8%の省電力化を図ることができ、理論限界に近い省電力化となる。
【0120】
(付記5) 前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の100倍以上であることを特徴とする付記1乃至付記4の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0121】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサの静電容量が電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であるので、計算上、従来に較べて約74.9%の省電力化を図ることができ、実質的に理論限界の省電力化となる。
【0122】
(付記6)駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子を駆動する電気機械変換素子の駆動方法において、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子と並列に接続されるコンデンサに前記電気機械変換素子から電荷を充電する第1ステップと、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電する第2ステップとを備えることを特徴とする電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記1に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0123】
(付記7)前記第1ステップと前記第2ステップとの間に、前記電気機械変換素子に残存する電荷を放電するステップを行うことを特徴とする付記6に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記2に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0124】
(付記8)前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量以上であることを特徴とする付記6又は付記7に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記3に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0125】
(付記9)前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であることを特徴とする付記6乃至付記8の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記4に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0126】
(付記10)前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の100倍以上であることを特徴とする付記6乃至付記9の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記1に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0127】
(付記11)ベース部材と、前記ベース部材に支持され駆動電圧が印加されることにより伸縮する第1電気機械変換素子と、前記ベース部材に支持され変位可能な第2電気機械変換素子と、前記第1電気機械変換素子と前記第2電気機械変換素子のそれぞれに結合された変位合成部材と、前記変位合成部材が楕円運動を行うように少なくとも前記第1電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備える駆動装置において、前記駆動回路は、付記1乃至付記5の何れかの付記に記載の駆動回路であることを特徴とする駆動装置。
【0128】
(付記12)駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固定された支持部材と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に摩擦力を有して係合された係合部材と、前記電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備え、前記電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで前記支持部材と前記係合部材とを相対移動させる駆動装置において、前記駆動回路は、付記1乃至付記5の何れかの付記に記載の駆動回路であることを特徴とする駆動装置。
【0129】
このような電気機械変換素子を用いた駆動装置は、電気機械変換素子の駆動回路に付記1乃至付記5の何れかの付記に記載の駆動回路を用いるので、省電力化を図ることができる。
【0130】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法並びに駆動装置は、駆動電圧の極性を反転させる間に、電気機械変換素子に充電されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、電気機械変換素子に充電されている電荷を有効に活用することができ、このように有効に活用しない従来の駆動回路に較べて省電力化を図ることができる。
【0131】
そして、駆動電圧の極性を反転する間に、電気機械変換素子に充電されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、擬似的な正弦波駆動となり、駆動回路に用いるスイッチング素子に流れる突入電流が小さくなる。そのため、比較的安価なスイッチング素子を駆動回路に用いることができ、駆動回路及び駆動装置のコストダウンを図ることができる。さらに、このように突入電流が小さくなるので、小型のスイッチング素子を駆動回路に用いることができ、駆動回路及び駆動装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動装置の構成を示す図である。
【図2】積層型圧電素子の構造を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動回路の一部分を示す回路図である。
【図4】部分駆動回路の動作を説明するための図(その1)である。
【図5】部分駆動回路の動作を説明するための図(その2)である。
【図6】部分駆動回路の動作を説明するための図(その3)である。
【図7】部分駆動回路の動作を説明するための図(その4)である。
【図8】コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その1)である。
【図9】コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その2)である。
【図10】駆動電圧の1周期における第1圧電素子の端子間電圧の時間的変化を示す図である。
【図11】第2の実施形態におけるインパクト型圧電アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図12】インパクト型圧電アクチュエータの動作原理を説明するための図である。
【図13】従来の圧電素子の駆動回路の構成及び駆動中における駆動回路の状態を示す図である。
【符号の説明】
10a 第1圧電素子(第1電気機械変換素子)
10a’ 第2圧電素子(第2電気機械変換素子)
10b 圧電素子(電気機械変換素子)
50a 駆動回路
60a 制御回路
100 コンデンサ
111 第1スイッチング素子
112 第2スイッチング素子
121 第3スイッチング素子
122 第4スイッチング素子
131 第5スイッチング素子
132 第6スイッチング素子
141 第7スイッチング素子
142 第8スイッチング素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機械変換素子の駆動回路に関し、特に、省電力化を図ることができる電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法並びに電気機械変換素子を用いた駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、光学機器に内蔵されるレンズ等は、圧電アクチュエータを備える駆動装置によって駆動されている。圧電アクチュエータは、電気機械変換素子(圧電素子)によってトルクを生じさせており、この圧電素子を駆動する駆動回路が知られている。圧電アクチュエータとしては、例えば、トラス型圧電アクチュエータやインパクト型圧電アクチュエータ等がある。
【0003】
図13は、従来の圧電素子の駆動回路の構成及び駆動中における駆動回路の状態を示す図である。図13(A)は、圧電素子の駆動回路の構成を示す図であると共に駆動回路の初期状態を示す図であり、図13(B)は、駆動電圧の半周期後における駆動回路の状態を示す図であり、図13(C)は、駆動電圧の1周期後における駆動回路の状態を示す図であり、図13(D)は、駆動電圧の1周期半後における駆動回路の状態を示す図であり、図13(E)は、駆動電圧の2周期後における駆動回路の状態を示す図である。
【0004】
図13(A)において、駆動回路500は、4個のスイッチ回路511、512、521、522からなるHブリッジ回路と、各スイッチ回路511、512、521、522のスイッチング動作を制御する制御回路(不図示)とで構成され、圧電素子に交流電圧を印加する。即ち、駆動回路500は、電圧値Vccの電源と接地GNDとの間に、直列接続されたスイッチ回路511及びスイッチ回路521と、直列接続されたスイッチ回路512及びスイッチ回路522とが並列に接続されてなり、圧電素子510がスイッチ回路511とスイッチ回路521との接続点aと、スイッチ回路512とスイッチ回路522との接続点bとの間に接続される。
【0005】
スイッチ回路511及びスイッチ回路512は、例えば、PチャネルパワーMOS−FETから構成され、スイッチ回路521及びスイッチ回路522は、例えば、NチャネルパワーMOS−FETから構成される。
【0006】
次に、従来の駆動回路500で圧電アクチュエータ110を駆動する動作について説明する。なお、トラス型圧電アクチュエータの場合には、図13(A)に示す駆動回路500が1組(即ち、2個)必要であるが、一方の圧電素子(駆動側圧電素子)を駆動している間は、他方の圧電素子(従動側圧電素子)の端子間は、短絡(ショート)されているので、1個の駆動回路500の動作を説明することで、1個の圧電素子を備えて構成されるインパクト型圧電アクチュエータにおける駆動回路の動作を説明したことになるだけでなく、2個の圧電素子を備えて構成されるトラス型圧電アクチュエータにおける駆動回路の動作も説明したことになる。
【0007】
図13(A)において、初期状態では、圧電素子510に電荷は、充電(蓄積)されておらず、駆動回路500の各スイッチ回路511、512、521、522は、オフ(OFF)状態(開状態)にある。または、図示しないがスイッチ回路511及びスイッチ回路512がオン(ON)状態(閉状態)にあり、スイッチ回路521及びスイッチ回路522がオフ状態にあって圧電素子110の端子間が短絡状態にある場合でもよい。あるいは、図示しないがスイッチ回路511及びスイッチ回路512がオフ状態にあり、スイッチ回路521及びスイッチ回路522がオン状態にあって圧電素子110の端子間が短絡状態にある場合でもよい。
【0008】
この初期状態から圧電素子510の駆動は、図13(B)に示すように、まず、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオン状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオフ状態となって、圧電素子110に電源から電流が流れる。そして、駆動電圧の半周期後には、圧電素子110に電荷Qが充電され、圧電素子110の接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。
【0009】
次の半周期において、図13(C)に示すように、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオフ状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオン状態となって、圧電素子510には図13(B)と反対の電界がかかり、圧電素子510に電源から電流が流れる。そして、駆動電圧の1周期後には、圧電素子510に図13(B)とは逆向きに電荷Qが充電され、圧電素子510の接続点a側が−Qとなり、接続点b側が+Qとなる。したがって、電源からは+2Qの電荷が供給される。
【0010】
次の半周期において、図13(D)に示すように、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオン状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオフ状態となって、圧電素子510には図13(C)と反対の電界がかかり、圧電素子510に電源から電流が流れる。即ち、図13(B)と同様の状態になる。そして、駆動電圧の1周期半後には、圧電素子510に図13(C)とは逆向きに電荷Qが充電され、圧電素子110の接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、電源からは+2Qの電荷が供給される。
【0011】
次の半周期において、図13(E)に示すように、スイッチ回路511及びスイッチ回路522がオフ状態となると共に、スイッチ回路512及びスイッチ回路521がオン状態となって、圧電素子510には図13(D)と反対の電界がかかり、圧電素子510に電源から電流が流れる。即ち、図13(C)と同様の状態になる。そして、駆動電圧の2周期後には、圧電素子510に図13(D)とは逆向きに電荷Qが充電され、圧電素子510の接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、電源からは+2Qの電荷が供給される。
【0012】
以後、各スイッチ回路511、512、521、522は、図13(D)の状態と図13(E)の状態とを交互に繰り返し、圧電素子510には交流の電圧が印加されることとなって伸縮を繰り返す。そして、上述のように半周期ごとに(各スイッチ回路の511、512、521、522のオン・オフの切替時に)電源から+2Q電荷が供給される。
【0013】
なお、圧電素子を駆動する駆動回路は、例えば、特許文献1又は特許文献2に示されている。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−211669号公報
【特許文献2】
特開2001−054291号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧電アクチュエータは、小型、軽量、静粛、滑らかな駆動、正確な位置制御、及び、大きさに比して大トルク等の特長から様々な電気・電子機器、特に、XY移動ステージ、カメラの撮影レンズ、プロジェクタの投影レンズ等の駆動に適用可能であるが、これら電気・電子機器に対して省電力化が要請されている結果、圧電アクチュエータの省電力化も要請されている。特に、カメラ付携帯電話やカメラ等の電池を電源とする機器に圧電アクチュエータを用いる場合には、省電力化の要請が強い。
【0016】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、従来より省電力化を測ることができる電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法を提供することを目的とする。そして、本発明は、このような電気機械変換素子を用いた駆動装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る電気機械変換素子の駆動回路は、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子に前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、前記電気機械変換素子に接続された場合に並列に接続されるコンデンサと前記電気機械変換素子との間で電荷を充放電させる充放電部と、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加部及び前記充放電部を制御する制御部とを備える。そして、本発明に係る、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子を駆動する電気機械変換素子の駆動方法は、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子と並列に接続されるコンデンサに前記電気機械変換素子から電荷を充電する第1ステップと、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電する第2ステップとを備える。
【0018】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法は、駆動電圧の極性を反転させる間に、電気機械変換素子に充電(蓄積)されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、電気機械変換素子に充電されている電荷を有効に活用することができ、このように有効に活用しない従来の駆動回路に較べて省電力化を図ることができる。
【0019】
そして、コンデンサに充電した電荷をより有効に活用する観点から、上述の電気機械変換素子の駆動回路において、前記制御部が、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記電気機械変換素子に残存している電荷を放電してから、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加回路及び前記充放電回路を制御するように構成することが好ましい。このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサに充電した電荷をより有効に活用することができるので、さらに省電力化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る、ベース部材と、前記ベース部材に支持され駆動電圧が印加されることにより伸縮する第1電気機械変換素子と、前記ベース部材に支持され変位可能な第2電気機械変換素子と、前記第1電気機械変換素子と前記第2電気機械変換素子のそれぞれに結合された変位合成部材と、前記変位合成部材が楕円運動を行うように少なくとも前記第1電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備える駆動装置は、前記駆動回路が上述の構成の駆動回路である。さらに、本発明に係る、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固定された支持部材と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に摩擦力を有して係合された係合部材と、前記電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備え、前記電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで前記支持部材と前記係合部材とを相対移動させる駆動装置は、前記駆動回路が上述の構成の駆動回路である。
【0021】
このような電気機械変換素子を用いた駆動装置は、この電気機械変換素子を駆動する駆動回路に上述の駆動回路を用いるので、省電力化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。まず、第1の実施形態の構成について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動装置の構成を示す図である。図1において、駆動装置1は、トラス型圧電アクチュエータ30、駆動回路50a及び制御回路60aを備えて構成される。トラス型圧電アクチュエータ30は、第1圧電素子(第1電気機械変換素子)10a、第2圧電素子(第2電気機械変換素子)10a’、チップ部材(変位合成部)20、ベース部材(固定部)21及びロータ(移動部)22を備えて構成される。
【0024】
図1に示すように、駆動装置1のトラス型圧電アクチュエータは、2つの第1圧電素子10a及び第2圧電素子10a’を略直角に交差させて配置し、それらの交差側端部にチップ部材20を接着剤により接合している。一方、第1圧電素子10a及び第2圧電素子10a’の他端部をベース部材21に接着剤により接合している。
【0025】
チップ部材20の材料は、安定して高い摩擦係数が得られ、かつ耐摩耗性に優れたタングステン等が好ましい。ベース部材21の材料は、製造が容易で、かつ強度に優れたステンレス鋼等が好ましい。また、接着剤は、接着力及び強度に優れたエポキシ系樹脂等が好ましい。
【0026】
なお、第1圧電素子10aと第2圧電素子10a’とは、実質的に同一の構成であるので、第2圧電素子10a’の各構成要素は、第1圧電素子10aの符号にそれぞれ(’)をつけて区別する。
【0027】
第1圧電素子10aの電極12、13及び第2圧電素子10a’の電極12’,13’はそれぞれ駆動回路50aに接続されている。駆動回路50aの構成及び動作については後述する。制御回路60aは、駆動回路50aに接続されており、駆動回路50aを含む駆動装置1の全体を制御する回路である。制御回路60aは、例えば、マイクロコンピュータ等であり、制御プログラムやデータ等を格納するROM(Read−Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、及び、制御プログラムの実行やデータの処理を行う中央処理装置(Central Processing Unit)等を備えて構成される。
【0028】
ここで、本実施形態において電気機械変換素子として用いる積層型の圧電素子について説明する。
【0029】
図2は、積層型圧電素子の構造を示す図である。図2において、圧電素子10aは、PZT等の圧電特性を示す複数のセラミック薄板11と電極12、13を交互に積層したものであり、各セラミック薄板11と電極12、13とは接着剤等により固定されている。1つおきに配置された各電極群12、13は、それぞれ信号線14,15を介して駆動電源16に接続されている。信号線14と信号線15との間に所定の電圧を印加すると、電極12と電極13とに挟まれた各セラミック薄板11には、その積層方向に電界が発生し、その電界は、1つおきに同じ方向である。従って、各セラミック薄板11は、1つおきに分極の方向が同じになる(隣り合う2つのセラミック薄板11の分極方向は逆となる)ように積層されている。なお、圧電素子10aの両端部には、保護層17が設けられている。
【0030】
駆動電源16により直流の駆動電圧を各電極12と電極13との間にそれぞれ印加すると、全てのセラミック薄板11が同方向に伸び又は縮み、圧電素子10a全体として伸長又は収縮する。電界が小さく、かつ変位の履歴が無視できる領域では、各電極12と電極13との間にそれぞれ発生する電界と圧電素子10aの変位は、ほぼ直線的な関係と見なすことができる。
【0031】
ここで、駆動電源16により交流の駆動電圧(交流信号)を各電極12と電極13との間にそれぞれ印加すると、その電界に応じて各セラミック薄板11は、同方向に伸縮を繰り返し、圧電素子10a全体として伸縮を繰り返す。圧電素子10aには、その構造や電気的特性により決定される固有の共振周波数が存在する。交流の駆動電圧の周波数が圧電素子10aの共振周波数と一致すると、インピーダンスが低下し、圧電素子10aの変位が増大する。圧電素子10aは、その外形寸法に対して変位が小さいため、低い電圧で駆動するためには、この共振現象を利用することが望ましい。
【0032】
本実施形態では、第1圧電素子10aと第2圧電素子10a’のいずれか一方、例えば第1圧電素子10aのみを駆動し、その振動をベース部材21を介して第2圧電素子10a’に伝達し、第2圧電素子10a’を所定の位相差を持って共振させる。即ち、第1圧電素子10aは、駆動側となり、第2圧電素子10a’は、従動側となる。そうすると、第1圧電素子10aと第2圧電素子10a’の交点に設けられたチップ部材20は、楕円(円を含む)を描くように駆動される。なお、このトラス型圧電アクチュエータにおいて、互いに直交する独立した2つの運動を合成すると、その交点は、楕円振動の式(Lissajousの式)に従った軌跡を描く。
【0033】
このチップ部材20を、例えば所定の軸の周りに回転可能なロータ22の円筒外面に押しつけると、チップ部材20の楕円運動(円運動を含む)をロータ22の回転運動に変換することができる。なお、チップ部材20を、例えば所定の軸の周りに回転可能なロータの円筒内面に押しつけてもよい。あるいは、チップ部材20を、例えば棒状部材(図示せず)の平面部に押しつけることにより、チップ部材20の楕円運動を棒状部材の直線運動に変換することも可能である。
【0034】
次に、第1実施形態の駆動装置1におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動回路50aについて説明する。ここで、トラス型圧電アクチュエータは、上述のように第1圧電素子10a及び第2圧電素子10a’の2個の圧電素子から構成されているので、各圧電素子10a、10a’を駆動する回路が必要であるが、各回路は、同一の構成であり、一方の圧電素子(駆動側圧電素子)を駆動している間は、他方の圧電素子(従動側圧電素子)の端子間が短絡(ショート)されるので、1個の圧電素子を駆動する回路の構成及び動作を説明することで、トラス型圧電アクチュエータにおける駆動回路50aの構成及び動作の説明に代える。
【0035】
図3は、第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動回路の一部分を示す回路図である。図3に示す回路は、1個の圧電素子を駆動するための部分駆動回路51aであり、実際には、第1の実施形態ではトラス型圧電アクチュエータであるから、図3に示す部分駆動回路51aが2個必要である。
【0036】
図3において、部分駆動回路51aは、電圧値Vccの電源と接地GNDとの間に、直列に接続された第1スイッチング素子111及び第3スイッチング素子121と、直列に接続された第2スイッチング素子112及び第4スイッチング素子122とが並列に接続され、そして、第1スイッチング素子111と第3スイッチング素子121との接続点aと、第2スイッチング素子112と第4スイッチング素子122との接続点bとの間に、直列に接続された第5スイッチング素子131及び第7スイッチング素子141と、直列に接続された第6スイッチング素子132及び第8スイッチング素子142とが並列に接続され、さらに、第5スイッチング素子131と第7スイッチング素子141との接続点cと、第6スイッチング素子132と第8スイッチング素子142との接続点dとの間にコンデンサ100が接続されてなり、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)は、接続点aと接続点bとの間に接続され、駆動電圧が印加される。
【0037】
なお、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122が駆動電圧印加部に相当し、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142が充放電部に相当する。
【0038】
第1、第2、第5及び第7スイッチング素子111、112、131、141は、例えば、PチャネルパワーMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)で構成され、第3、第4、第6及び第8スイッチング素子121、122、132、142は、例えば、NチャネルパワーMOS−FETで構成される。
【0039】
そして、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142のスイッチング制御(オン・オフ制御)は、制御プログラムに基づき制御部60aによって次のように行われる。
【0040】
図4は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その1)である。図5は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その2)である。図6は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その3)である。図7は、部分駆動回路の動作を説明するための図(その4)である。図4(A)は、部分駆動回路の初期状態を示し、図4(B)は、部分駆動回路における1回目のスイッチング動作後の状態を示し、図4(C)は、部分駆動回路における2回目のスイッチング動作後の状態を示す。図5(A)は、部分駆動回路における3回目のスイッチング動作後の状態を示し、図5(B)は、部分駆動回路における4回目のスイッチング動作後の状態を示す。図6(A)は、部分駆動回路における5回目のスイッチング動作後の状態を示し、図6(B)は、部分駆動回路における6回目のスイッチング動作後の状態を示し、図6(C)は、部分駆動回路における7回目のスイッチング動作後の状態を示す。そして、図7(A)は、部分駆動回路における8回目のスイッチング動作後の状態を示し、図7(B)は、部分駆動回路における9回目のスイッチング動作後の状態を示す。
【0041】
なお、図4乃至図7は、部分駆動回路51aの動作を明瞭に示すために、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142は、オン・オフが明瞭に分かるように記号化されている。
【0042】
また、部分駆動回路51aにおける動作の説明を簡単にするために、本実施形態では、コンデンサ100の静電容量は、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)の静電容量と同一としているが、任意の静電容量でよい。そして、後述するように、高い省電力効果を得るためには、コンデンサ100の静電容量は、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)の静電容量よりも大きいほどよい.。
【0043】
図4乃至図7において、図4(A)に示す初期状態では、第1圧電素子10a(又は第2圧電素子10a’)には電荷が充電(蓄積)されておらず、部分駆動回路51aの第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122は、オフ(OFF)状態(開状態)にある。さらに、コンデンサ100にも電荷が充電されておらず、部分駆動回路51aの第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、オフ状態にある。
【0044】
なお、第1圧電素子10aについて、図示しないが第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオン(ON)状態(閉状態)にあり、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオフ状態にあって第1圧電素子10aの端子間が短絡状態にある場合でもよい。あるいは、図示しないが第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態にあり、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態にあって第1圧電素子10aの端子間が短絡状態にある場合でもよい。同様に、コンデンサ100について、図示しないが第5スイッチング素子131及び第6スイッチング素子132がオン状態にあり、第7スイッチング素子141及び第8スイッチング素子142がオフ状態にあってコンデンサ100の端子間が短絡状態にある場合でもよい。あるいは、図示しないが第5スイッチング素子131及び第6スイッチング素子132がオフ状態にあり、第7スイッチング素子141及び第8スイッチング素子142がオン状態にあってコンデンサ100の端子間が短絡状態にある場合でもよい。
【0045】
この初期状態から1回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図4(B)に示すように、まず、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオン状態になると共に、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオフ状態になって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れる。第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、それぞれオフ状態である。そして、1回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、第1圧電素子10aに電荷Qが充電され、第1圧電素子10aの接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、この場合では電源から電荷Qが供給される。ここで、第1圧電素子10aは、駆動電圧を印加されることによって伸長又は収縮する。
【0046】
2回目のスイッチング動作では、図4(C)に示すように、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオン状態になり、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオフ状態になって、コンデンサ100に第1圧電素子10aから電流が流れる。なお、コンデンサ100が第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142のスイッチング動作によって第1圧電素子10aに接続されると、本実施形態では、コンデンサ100と第1圧電素子10aとは、並列に接続される。後述のスイッチング動作においても同様である。そして、2回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるからコンデンサ100に電荷Q/2が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共にQ/2となる。そして、コンデンサ100の接続点c側が接続点a側と接続されているので+Q/2となり、接続点d側が接続点b側と接続されているので−Q/2となる。
【0047】
3回目のスイッチング動作では、図5(A)に示すように、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態になり、第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態になって、コンデンサ100に電荷Q/2が閉じ込められると共に、第1圧電素子10aから電流がグランドに流れて第1圧電素子10aの電荷Q/2が放電される。そして、3回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷Q/2が維持され、第1圧電素子10aの電荷は、0となる。
【0048】
ここで、第1圧電素子10aの電荷を放電するのは、放電せずに次の図5(B)に示す4回目のスイッチング動作を行うと、コンデンサ100から第1圧電素子10aに電荷が供給されたとしても、相殺されて、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の静電容量が等しい場合には第1圧電素子10aの電荷が0となってしまい、コンデンサ100に蓄積した電荷が有効に使用されないためである。なお、コンデンサ100の静電容量が第1圧電素子10aの静電容量より大きい場合には、2回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後において、第1圧電素子10aに残る電荷よりコンデンサ100に充電される電荷の方が多くなるので、3回目のスイッチング動作を省略することが可能である。コンデンサ100の静電容量が第1圧電素子10aの静電容量より大きければ大きいほど、第1圧電素子10aに残る電荷よりコンデンサ100に充電される電荷の方が多く省電力効果を大きくすることができるが、静電容量の大きいコンデンサは、一般に大型なので、小型化の観点から3回目のスイッチング動作を行うことが好ましい。後述の7回目のスイッチング動作も同様である。
【0049】
この図4(A)の状態から図5(A)の状態までが第1圧電素子を駆動する駆動電圧における周期の半周期である。
【0050】
4回目のスイッチング動作では、図5(B)に示すように、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオン状態になり、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオフ状態になって、第1圧電素子10aにコンデンサ100から電流が流れる。そして、4回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるから第1圧電素子10aに電荷Q/4が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共にQ/4となる。そして、第1圧電素子10aの接続点a側に接続点d側が接続されるので−Q/4となり、接続点b側に接続点c側が接続されるので+Q/4となる。
【0051】
ここで、圧電アクチュエータは、上述したように駆動電圧の極性を交互に反転させることによって圧電素子を伸縮させてチップ部材20に楕円運動を生じさせ、ロータ22を駆動するものである。そのため、図4(A)から図5(A)までの半周期に続く次の半周期では、極性を反転させた電圧を第1圧電素子10aに印加する必要がある。即ち、図5(B)に示す第1圧電素子10aの接続点a側が+Qで接続点b側が−Qの状態から接続点a側が−Qで接続点b側が+Qの状態にする必要がある。4回目のスイッチング動作は、電源から第1圧電素子10aに電荷が供給される前に、コンデンサ100の電荷を使用して予備的に第1圧電素子10aに電荷を与えるものである(プレ充電、再充電)。このため、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、第1圧電素子10aに印加される電圧の極性が前の半周期と逆極性となるようにスイッチング動作する必要がある。そのため、4回目のスイッチング動作では、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142は、上述のように動作することになる。
【0052】
そして、5回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図6(A)に示すように、コンデンサ100の電荷Q/4を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、図4(B)に示す状態とは逆極性の電圧を第1圧電素子10aに印加すべく、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオフ状態になり、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオン状態となって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れる。そして、5回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷Q/4が維持されると共に、第1圧電素子10aに電荷Qが充電され、第1圧電素子10aの接続点a側が−Qとなり、接続点b側が+Qとなる。したがって、この場合では電源から電荷3Q/4が供給される。ここで、印加電圧の極性が図4(B)に示す場合に第1圧電素子10aが伸長している場合には、印加電圧の極性が反転したこの図6(A)に示す場合では第1圧電素子10aは、収縮することになる。もちろん、図4(B)に示す場合に第1圧電素子10aが収縮している場合には、この図6(A)に示す場合では第1圧電素子10aは、伸長収することになる。
【0053】
6回目のスイッチング動作では、図6(B)に示すように、第1圧電素子10aの電荷の一部をコンデンサ100に充電すべく、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオフ状態になり、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオン状態になって、コンデンサ100に第1圧電素子10aから電流が流れる。そして、6回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるのでコンデンサ100に電荷5Q/8が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共に5Q/8となる。そして、コンデンサ100の接続点d側が接続点a側と接続されているので−5Q/8となり、接続点c側が接続点b側と接続されているので+5Q/8となる。
【0054】
なお、6回目のスイッチング動作において、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122をオフ状態にすると共に、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142をオン状態とし、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141をオフ状態とすることも考えられる。この場合では、コンデンサ100の接続点c側が接続点a側と接続され、接続点d側が接続点b側と接続されているので、コンデンサ100に蓄積されている電荷の極性と第1圧電素子10aに蓄積されている電荷の極性とが逆極性で接続されることになる。このため、或る所定時間の経過後におけるコンデンサ100の電荷は、3Q/8となり、上述の場合に較べてコンデンサ100に充電される電荷が少なくなる。従って、このようなスイッチング動作を行っても省電力化が見込めるものの、省電力効果を高める観点から、図6(B)に示すスイッチング動作が好ましい。
【0055】
7回目のスイッチング動作では、図6(C)に示すように、コンデンサ100の電荷を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、第1圧電素子10aの電荷を放電すべく、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態になり、第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態になって、コンデンサ100に電荷5Q/8が閉じ込められると共に、第1圧電素子10aから電流がグランドに流れて第1圧電素子10aの電荷5Q/8が放電される。そして、7回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷5Q/8が維持され、第1圧電素子10aの電荷は、0となる。ここで、第1圧電素子10aの電荷を放電するのは、放電せずに次の図8(A)に示す8回目のスイッチング動作を行うと、コンデンサ100から第1圧電素子10aに電荷が供給されたとしても、相殺されて、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の静電容量が等しい場合には第1圧電素子10aの電荷は、0となり、コンデンサ100に蓄積した電荷が有効に使用されないためである。
【0056】
この図5(B)の状態から図6(C)の状態までが第1圧電素子を駆動する駆動電圧における周期の次の半周期である。そして、図4(A)の状態から図6(C)の状態までが駆動電圧における初期状態からの1周期である。
【0057】
8回目のスイッチング動作では、図7(A)に示すように、プレ充電すべく、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態になると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオフ状態になり、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオン状態になって、第1圧電素子10aにコンデンサ100から電流が流れる。そして、8回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100の静電容量と第1圧電素子10aの静電容量とが同一であるから第1圧電素子10aに電荷5Q/16が充電され、第1圧電素子10a及びコンデンサ100の電荷は、共に5Q/16となる。第1圧電素子10aの接続点a側に接続点c側が接続されるので+5Q/16となり、接続点b側に接続点d側が接続されるので−5Q/16となる。
【0058】
9回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図7(B)に示すように、コンデンサ100の電荷5Q/16を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態になると共に、図6(A)に示す状態とは逆極性の電圧(即ち、図4(B)に示す状態と同一極性の電圧)を第1圧電素子10aに印加すべく、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオン状態になり、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオフ状態になって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れる。そして、9回目のスイッチング動作終了後から或る所定時間の経過後には、コンデンサ100では電荷5Q/16が維持されると共に、第1圧電素子10aに電荷Qが充電され、第1圧電素子10aの接続点a側が+Qとなり、接続点b側が−Qとなる。したがって、この場合では電源から電荷11Q/16が供給される。
【0059】
こうして、コンデンサ100に蓄積されている電荷量は、異なるものの図4(B)のスイッチング状態に戻る。以後、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142は、図4(C)の状態→図5(A)の状態→図5(B)の状態→図6(A)の状態→図6(B)の状態→図6(C)の状態→図7(A)の状態→図7(B)の状態→図4(C)の状態→図5(A)の状態→図5(B)の状態→図6(A)の状態→図6(B)の状態→図6(C)の状態→図7(A)の状態→図7(B)の状態のようにスイッチング動作を繰り返す。部分駆動回路51aは、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142がこのようにスイッチング動作することによって、第1圧電素子10aを伸縮すると共にコンデンサ100の電荷を充放電する。そして、コンデンサ100は、充放電を繰り返していくと、やがて、電荷が一定値に収束する。
【0060】
なお、各或る所定時間は、第1圧電素子10aの静電容量とその時に蓄積されている電荷、コンデンサ100の静電容量とその時に蓄積されている電荷、及び、第1圧電素子10aとコンデンサ100と第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142とから構成される回路中に生じる抵抗値等によって決まる時定数である。
【0061】
ここで、コンデンサ100の電荷が一定値に収束した後において、コンデンサ100に最終的に残る電荷、即ち、図5(B)や図7(A)に示すようにコンデンサ100が第1圧電素子10aをプレ充電した後にコンデンサ100に残存している電荷について次に説明する。
【0062】
図8は、コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その1)である。図9は、コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その2)である。図8(A)は、コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における、駆動電圧の周期における図6(B)に示すスイッチング状態に相当する状態を示し、図8(B)は、図8(A)に示す状態から1回目のスイッチング動作後の状態を示し、図9(A)は、図8(A)に示す状態から2回目のスイッチング動作後の状態を示し、図9(B)は、図8(A)に示す状態から3回目のスイッチング動作後の状態を示す。
【0063】
図8(A)において、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122は、オフ状態であると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141は、オン状態であり、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142は、オフ状態である。このスイッチング動作では、第1圧電素子10aからコンデンサ100に電流が流れて充電される。
【0064】
この図8(A)に示す状態から1回目のスイッチング動作では、部分駆動回路51aは、図8(B)に示すように、コンデンサ100の電荷を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態とされると共に、第1圧電素子10aの電荷を放電すべく、第3スイッチング素子121及び第4スイッチング素子122がオン状態とされ、第1スイッチング素子111及び第2スイッチング素子112がオフ状態とされる。このスイッチング動作では、コンデンサ100の電荷が閉じ込められると共に、第1圧電素子10aから電流がグランドに流れて第1圧電素子10aの電荷が放電され、0になる。
【0065】
図8(A)に示す状態から2回目のスイッチング動作では、図9(A)に示すように、プレ充電すべく、第1乃至第4スイッチング素子111、112、121、122がオフ状態とされると共に、第6スイッチング素子132及び第7スイッチング素子141がオフ状態とされ、第5スイッチング素子131及び第8スイッチング素子142がオン状態とされる。このスイッチング動作では、第1圧電素子10aにコンデンサ100から電流が流れ、プレ充電される。
【0066】
図8(A)に示す状態から3回目のスイッチング動作では、図9(B)に示すように、コンデンサ100の電荷を閉じ込めるべく、第5乃至第8スイッチング素子131、132、141、142がオフ状態とされると共に、逆極性の電圧を第1圧電素子10aに印加すべく、第1スイッチング素子111及び第4スイッチング素子122がオン状態とされると共に、第2スイッチング素子112及び第3スイッチング素子121がオフ状態とされる。このスイッチング動作によって、第1圧電素子10aに電源から電流が流れ、伸長又は収縮される。
【0067】
この図8(A)の状態が図9(B)の状態になった場合において、コンデンサ100に蓄積されている電荷の一般解を求める。
【0068】
ここで、C1を圧電素子(本実施形態では第1圧電素子10a)の静電容量、C2を圧電素子に並列に接続されたコンデンサ(本実施形態ではコンデンサ100)の静電容量、Qを電源によって圧電素子が充電された場合における圧電素子に蓄積される電荷、及び、anをコンデンサが圧電素子に電荷を供給した後にコンデンサに残存する電荷とすると、圧電素子とコンデンサとが並列接続され、上述の図8及び図9の説明から分かるように式1が成立する。
【0069】
【数1】
【0070】
この等比数列を初期値a1=0の条件の下に解くと式2に収束することが分かる。
【0071】
【数2】
【0072】
なお、圧電アクチュエータの駆動周波数fは、一般に80kHzから140kHz程度であるから、瞬時に収束することになる。
【0073】
また、本実施形態では、C1=C2であるから図9(A)の場合におけるコンデンサ100に蓄積されている電荷は、図9(A)に示すように1/3Qとなる。
【0074】
一方、図8(A)の場合における、圧電素子によってコンデンサが充電された場合におけるコンデンサの電荷QCAは、式3より式4となる。
【0075】
【数3】
【0076】
【数4】
【0077】
本実施形態では、C1=C2であるなるから図8(A)の場合におけるコンデンサ100に蓄積されている電荷は、図8(A)に示すように、2/3Qとなる。
【0078】
また、図8(A)の場合における、圧電素子によってコンデンサが充電された場合における圧電素子の電荷QPAは、式5より式6となる。
【0079】
【数5】
【0080】
【数6】
【0081】
本実施形態では、C1=C2であるから図8(A)の場合における第1圧電素子10aに蓄積されている電荷は、図8(A)に示すように、2/3Qとなる。
【0082】
そして、図9(A)の場合における、コンデンサによって圧電素子が充電された場合における圧電素子の電荷QPCは、式7より式8となる。
【0083】
【数7】
【0084】
【数8】
【0085】
本実施形態では、C1=C2であるから図9(A)の場合における第1圧電素子10aに蓄積されている電荷は、図9(A)に示すように、1/3Qとなる。
【0086】
式8から分かるように、コンデンサの静電容量が大きければ大きいほど、電荷QPC、即ち、プレ充電される電荷が多くなる。このため、図9(B)で電源から圧電素子に供給される電荷が少なくて済むから、省電力化の効果が高くなる。計算の上では、例えば、C2=C1の場合では、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、2Q/3であるから、従来の2Qに較べて1/3の電荷供給で済み約66.7%の省電力化が可能となる。また例えば、C2=10C1の場合では、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、11Q/21であるから、従来の2Qに較べて11/42の供給電荷で済み約73.8%の省電力化が可能となる。さらに例えば、C2=100C1の場合では、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、101Q/201であるから、従来の2Qに較べて101/402の供給電荷で済み約74.9%の省電力化が可能となる。コンデンサの静電容量C2を無限大と考えると、駆動電圧の半周期に電源から第1圧電素子に供給する電荷は、Q/2であるから、従来の2Qに較べて1/4の供給電荷で済み75%の省電力化が可能となる。従って、C2/C1≧100とすれば、実質的に理論限界の省電力化が可能となる。
【0087】
そして、上記の解析に基づき、第1圧電素子10aを駆動する駆動電圧の1周期における第1圧電素子10aの端子間電圧の時間的変化を図10に示す。図10の横軸は、時間tであり、縦軸は電圧Vである。
【0088】
図10において、第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142は、周期の始めから時間t1までは、電源から電荷を供給することによって第1圧電素子10aを伸長(又は収縮)するステップであって、図4(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電源の電圧+Vccが印加される。
【0089】
時間t1からt2までは、第1圧電素子10aの電荷でコンデンサ100を充電するステップであって、図4(C)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧Vcc/(1+α)が印加される。
【0090】
時間t2からt3までは、コンデンサ100の電荷を維持しつつ第1圧電素子10aの電荷を放電するステップであって、図5(A)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aの電圧は0となる。
【0091】
時間t3からt4までは、コンデンサ100の電荷で第1圧電素子10aをプレ充電するステップであって、図5(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧αVcc/(1+α)が印加される。
【0092】
時間t4からt5までは、電源から逆極性で電荷を供給することによって第1圧電素子10aを収縮(又は伸長)するステップであって、図6(A)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧−Vccが印加される。
【0093】
時間t5からt6までは、第1圧電素子10aの電荷でコンデンサ100を充電するステップであって、図6(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧Vcc/(1+α)が印加される。
【0094】
時間t6からt7までは、コンデンサ100の電荷を維持しつつ第1圧電素子10aの電荷を放電するステップであって、図6(C)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aの電圧は0となる。
【0095】
時間t7からt8までは、コンデンサ100の電荷で第1圧電素子10aをプレ充電するステップであって、図7(A)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧αVcc/(1+α)が印加される。
【0096】
時間t8から次の周期の始めまでは、電源から逆極性で電荷を供給することによって第1圧電素子10aを伸長(又は収縮)するステップであって、図7(B)に示すスイッチング動作の状態にあり、第1圧電素子10aには電圧+Vccが印加される。即ち、図4(B)に示すスイッチング動作の状態に戻る。
【0097】
このように駆動電圧は、階段状となり、擬似的な正弦波駆動を行うことができ、スイッチング時にHブリッジ回路を構成する第1乃至第8スイッチング素子111、112、121、122、131、132、141、142に流れるいわゆる突入電流を小さくすることができる。このため、比較的安価なスイッチング素子を用いることができ、圧電アクチュエータを用いた駆動装置の低コスト化を図ることができる。同様の理由により、小型のスイッチング素子を用いることができるので、圧電アクチュエータを用いた駆動装置の小型化を図ることもできる。
【0098】
次に、別の実施形態について説明する。
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、トラス型圧電アクチュエータを駆動する駆動回路及びこの駆動回路を用いたトラス型圧電アクチュエータの駆動装置について説明したが、第2の実施形態は、インパクト型圧電アクチュエータを駆動する駆動回路及びこの駆動回路を用いたインパクト型圧電アクチュエータについて説明する。
【0099】
図11は、第2の実施形態におけるインパクト型圧電アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【0100】
図11において、インパクト型圧電アクチュエータ40は、圧電素子(電気機械変換素子)10b、支持部材41、駆動部材42及び移動部材43を備えて構成される。
【0101】
支持部材41は、圧電素子10bと駆動部材42とを保持する部品であり、円柱体の軸方向両端部411、412と略中央に位置する仕切壁413とを残して内部を刳り貫くことにより形成された第1収容空間414及び第2収容空間415を有している。この第1収容空間414には、圧電素子10bがその分極方向である伸縮方向を支持部材41の軸方向と一致させた状態で収容されている。第2収容空間415には、移動部材43の一部と駆動部材42とが収容されている。
【0102】
圧電素子10bは、図2に示す圧電素子10aと同一の構成であり、説明を省略する。圧電素子10bは、その伸縮方向である長手方向の一方端面が第1収容空間414の一方端面(端部411側端面)に固着されている。支持部材41の他方端部412及び仕切壁413には、中心位置に駆動部材42の断面形状に合わせた形状の孔が穿設されると共に、この両孔を貫通して棒状の駆動部材42が第2収容空間415に軸方向に沿って移動可能に収容されている。圧電素子10bの他方端面は、駆動部材42の第1収容空間414内に突出した端部が固着される。
【0103】
第2収容空間415の外部に突出した駆動部材42の端部は、板ばね47により所定のばね圧で圧電素子10b側に付勢されている。この板ばね47の付勢は、圧電素子10bの伸縮動作に基づく駆動部材42の軸方向変位を安定化させるためである。
【0104】
駆動部材42は、圧電素子10bの伸縮を移動部材43の移動に変換すると共に、移動部材43を支えるガイドである。駆動部材42の断面形状は、円形、楕円及び矩形などの形状を適用することができるが、移動部材43を安定的に支えスムーズに移動させることができるようにする観点から本実施の形態では、円形である。
【0105】
移動部材43は、駆動部材42の軸方向の両側に取付部431を有する基部432と、両取付部431の間に着装される挟込み部材433とを備える。基部432は、駆動部材42に遊嵌される。挟込み部材433は、両取付部431に取り付けられた板ばね434によって駆動部材42の方向に押圧され、駆動部材42に接触する。この接触によって、移動部材43は、所定の摩擦力で駆動部材42と結合される。また、駆動対象物は、この移動部材43の取付部431を用いて取り付けられる。
【0106】
このようなインパクト型圧電アクチュエータ40は、図3に示す部分駆動回路51aと同様の構成である駆動回路を、図4乃至図7を用いて説明したように制御回路によってスイッチング動作を制御することで、高い省電力化を実現することができる。なお、インパクト型圧電アクチュエータ40は、上述の構成の説明から分かるように圧電素子10bは、1個であるから図3に示す部分駆動回路51aは、そのまま第2の実施形態におけるインパクト型圧電アクチュエータ40の駆動回路となる。
【0107】
そして、インパクト型圧電アクチュエータ40と、このような駆動回路及び制御回路とを備えて構成することで、高い省電力化を実現した、インパクト型圧電アクチュエータの駆動装置を得ることができる。
【0108】
最後に、インパクト型圧電アクチュエータの動作原理について簡単に説明する。図12は、インパクト型圧電アクチュエータの動作原理を説明するための図である。図12(A)は、移動部材43を正方向に移動させる場合において、駆動回路50bから圧電素子10bに出力される駆動電圧の電圧波形を示す図であり、図12(B)は、これに対応する圧電素子10bの伸縮による変位を示す図である。また、図12(C)は、移動部材43を逆方向に移動させる場合において、駆動回路50bから圧電素子10bに出力される駆動電圧の電圧波形を示す図であり、図12(D)は、これに対応する圧電素子10bの伸縮による変位を示す図である。ここで、正方向とは、移動部材43が圧電素子10bから駆動部材42の先端部(板ばね47によって付勢される端部)に向う方向であり、逆方向とは、移動部材43が駆動部材42のこの先端部から圧電素子10bに向う方向である。
【0109】
図12(A)に示すようなデューティ比D3:7の矩形波状の駆動電圧が圧電素子10bに印加された場合には、圧電素子10bの変位は、図12(B)に示すように緩慢な立ち上がり部Taと急峻な立下り部Tbとを有する鋸歯形状となることが確認されている。また、図12(C)に示すようなデューティ比D7:3の矩形波状の駆動電圧が圧電素子10bに印加された場合には、圧電素子10bの変位は、図12(D)に示すように急峻な立ち上がり部Tcと緩慢な立下り部Tdとを有する鋸歯形状となることが確認されている。
【0110】
圧電素子10bの変位が図12(B)に示すような緩慢な立ち上がり部Taでは、圧電素子10bが緩やかに伸長し、移動部材43が駆動部材42と共に正方向に移動する。そして、圧電素子10bの変位が図12(B)に示すような急峻な立ち下がり部Tbでは、圧電素子10bが急激に縮小し、駆動部材42が逆方向に移動しても移動部材43は、駆動部材42上をスリップして略同位置に留まることになる。その結果、移動部材43は、正方向に移動したことになる。したがって、図12(A)に示す矩形波の駆動電圧が圧電素子10bに繰り返し印加されることで、移動部材43は、正方向に間欠的に移動することになる。逆方向の移動原理も同様である。なお、デューティー比Dは、矩形波のハイレベルの時間をT1、ローレベルの時間をT2とすると、T1:T2である。
【0111】
ここで、本発明では、矩形波の立下り及び立上りの部分で、コンデンサ100の充電、圧電素子10bの放電及び圧電素子10bのプレ充電を行うので、実際には、図10に示すように階段状の立下り及び立上りとなる。
【0112】
以上、本明細書に開示された主な発明を以下にまとめる。
(付記1) 駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子に前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、前記電気機械変換素子に接続された場合に並列に接続されるコンデンサと前記電気機械変換素子との間で電荷を充放電させる充放電部と、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加部及び前記充放電部を制御する制御部とを備えることを特徴とする電気機械変換素子の駆動回路。
【0113】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、駆動電圧の極性を反転させる間に、電気機械変換素子に充電(蓄積)されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、電気機械変換素子に充電されている電荷を有効に活用することができ、このように有効に活用しない従来の駆動回路に較べて省電力化を図ることができる。
【0114】
(付記2) 前記制御部は、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記電気機械変換素子に残存している電荷を放電してから、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加回路及び前記充放電回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0115】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサで電気機械変換素子を再充電する前に、電気機械変換素子の電荷を放電するので、コンデンサに充電した電荷をさらに有効に活用することができ、その結果、より省電力化を測ることができ、より小型のコンデンサを用いることができる。
【0116】
(付記3) 前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量以上であることを特徴とする付記1又は付記2に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0117】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサの静電容量が電気機械変換素子の静電容量以上であるので、コンデンサに充電される電荷の方が電気機械変換素子に残る残存電荷よりも多くすることができるので、より省電力化を図ることができる。
【0118】
(付記4) 前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であることを特徴とする付記1乃至付記3の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0119】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサの静電容量が電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であるので、計算上、従来に較べて約73.8%の省電力化を図ることができ、理論限界に近い省電力化となる。
【0120】
(付記5) 前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の100倍以上であることを特徴とする付記1乃至付記4の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動回路。
【0121】
このような構成の電気機械変換素子の駆動回路は、コンデンサの静電容量が電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であるので、計算上、従来に較べて約74.9%の省電力化を図ることができ、実質的に理論限界の省電力化となる。
【0122】
(付記6)駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子を駆動する電気機械変換素子の駆動方法において、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子と並列に接続されるコンデンサに前記電気機械変換素子から電荷を充電する第1ステップと、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電する第2ステップとを備えることを特徴とする電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記1に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0123】
(付記7)前記第1ステップと前記第2ステップとの間に、前記電気機械変換素子に残存する電荷を放電するステップを行うことを特徴とする付記6に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記2に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0124】
(付記8)前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量以上であることを特徴とする付記6又は付記7に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記3に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0125】
(付記9)前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の10倍以上であることを特徴とする付記6乃至付記8の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記4に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0126】
(付記10)前記コンデンサの静電容量は、前記電気機械変換素子の静電容量の100倍以上であることを特徴とする付記6乃至付記9の何れかの付記に記載の電気機械変換素子の駆動方法。このような電気機械変換素子の駆動方法は、付記1に記載の電気機械変換素子の駆動回路と同様の作用効果を有する。
【0127】
(付記11)ベース部材と、前記ベース部材に支持され駆動電圧が印加されることにより伸縮する第1電気機械変換素子と、前記ベース部材に支持され変位可能な第2電気機械変換素子と、前記第1電気機械変換素子と前記第2電気機械変換素子のそれぞれに結合された変位合成部材と、前記変位合成部材が楕円運動を行うように少なくとも前記第1電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備える駆動装置において、前記駆動回路は、付記1乃至付記5の何れかの付記に記載の駆動回路であることを特徴とする駆動装置。
【0128】
(付記12)駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固定された支持部材と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に摩擦力を有して係合された係合部材と、前記電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備え、前記電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで前記支持部材と前記係合部材とを相対移動させる駆動装置において、前記駆動回路は、付記1乃至付記5の何れかの付記に記載の駆動回路であることを特徴とする駆動装置。
【0129】
このような電気機械変換素子を用いた駆動装置は、電気機械変換素子の駆動回路に付記1乃至付記5の何れかの付記に記載の駆動回路を用いるので、省電力化を図ることができる。
【0130】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法並びに駆動装置は、駆動電圧の極性を反転させる間に、電気機械変換素子に充電されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、電気機械変換素子に充電されている電荷を有効に活用することができ、このように有効に活用しない従来の駆動回路に較べて省電力化を図ることができる。
【0131】
そして、駆動電圧の極性を反転する間に、電気機械変換素子に充電されている電荷を一旦コンデンサに充電させ、この電荷を電気機械変換素子に極性を反転して再充電するので、擬似的な正弦波駆動となり、駆動回路に用いるスイッチング素子に流れる突入電流が小さくなる。そのため、比較的安価なスイッチング素子を駆動回路に用いることができ、駆動回路及び駆動装置のコストダウンを図ることができる。さらに、このように突入電流が小さくなるので、小型のスイッチング素子を駆動回路に用いることができ、駆動回路及び駆動装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動装置の構成を示す図である。
【図2】積層型圧電素子の構造を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるトラス型圧電アクチュエータの駆動回路の一部分を示す回路図である。
【図4】部分駆動回路の動作を説明するための図(その1)である。
【図5】部分駆動回路の動作を説明するための図(その2)である。
【図6】部分駆動回路の動作を説明するための図(その3)である。
【図7】部分駆動回路の動作を説明するための図(その4)である。
【図8】コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その1)である。
【図9】コンデンサの電荷が一定値に収束した場合における部分駆動回路の動作及びコンデンサの電荷の変化を説明するための図(その2)である。
【図10】駆動電圧の1周期における第1圧電素子の端子間電圧の時間的変化を示す図である。
【図11】第2の実施形態におけるインパクト型圧電アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図12】インパクト型圧電アクチュエータの動作原理を説明するための図である。
【図13】従来の圧電素子の駆動回路の構成及び駆動中における駆動回路の状態を示す図である。
【符号の説明】
10a 第1圧電素子(第1電気機械変換素子)
10a’ 第2圧電素子(第2電気機械変換素子)
10b 圧電素子(電気機械変換素子)
50a 駆動回路
60a 制御回路
100 コンデンサ
111 第1スイッチング素子
112 第2スイッチング素子
121 第3スイッチング素子
122 第4スイッチング素子
131 第5スイッチング素子
132 第6スイッチング素子
141 第7スイッチング素子
142 第8スイッチング素子
Claims (5)
- 駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子に前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加部と、
前記電気機械変換素子に接続された場合に並列に接続されるコンデンサと前記電気機械変換素子との間で電荷を充放電させる充放電部と、
前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加部及び前記充放電部を制御する制御部とを備えること
を特徴とする電気機械変換素子の駆動回路。 - 前記制御部は、前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、前記電気機械変換素子に充電されている電荷を前記コンデンサに充電した後に、前記電気機械変換素子に残存している電荷を放電してから、前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電するように、前記駆動電圧印加回路及び前記充放電回路を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電気機械変換素子の駆動回路。 - 駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子を駆動する電気機械変換素子の駆動方法において、
前記電気機械変換素子に印加される駆動電圧の極性を反転する間に、
前記電気機械変換素子と並列に接続されるコンデンサに前記電気機械変換素子から電荷を充電する第1ステップと、
前記コンデンサに充電した電荷を前記電気機械変換素子に極性を反転して再充電する第2ステップとを備えること
を特徴とする電気機械変換素子の駆動方法。 - ベース部材と、前記ベース部材に支持され駆動電圧が印加されることにより伸縮する第1電気機械変換素子と、前記ベース部材に支持され変位可能な第2電気機械変換素子と、前記第1電気機械変換素子と前記第2電気機械変換素子のそれぞれに結合された変位合成部材と、前記変位合成部材が楕円運動を行うように少なくとも前記第1電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備える駆動装置において、
前記駆動回路は、請求項1又は請求項2に記載の駆動回路であること
を特徴とする駆動装置。 - 駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固定された支持部材と、前記電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固定された駆動部材と、前記駆動部材に摩擦力を有して係合された係合部材と、前記電気機械変換素子を駆動する駆動回路とを備え、前記電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで前記支持部材と前記係合部材とを相対移動させる駆動装置において、
前記駆動回路は、請求項1又は請求項2に記載の駆動回路であること
を特徴とする駆動装置。
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JP2003041661A JP2004254412A (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | 電気機械変換素子の駆動回路及び駆動方法並びに駆動装置 |
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