JP2004253588A - 複合材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】密着性が良好で経済的な複合材、特に高い電磁波シールド効果と光透過性能を有すると共に、密着性に優れ、PDPに適用した場合にも画質の劣化や視認性を低下させることのない透明電磁波シールド用複合材及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることを特徴とする複合材。
【選択図】 図1
【解決手段】樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることを特徴とする複合材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は密着性が良好で経済的な複合材、特に透明電磁波シールド用複合材に関し、より詳細には、高い電磁波シールド効果と光透過性能を有し、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)等に適用可能な透明電磁波シールド用複合材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気機器の発達に伴い、氾濫する外部電磁波から電子機器が影響を受け、誤動作等を引き起こす問題が生じており、電子機器を外部電磁波から保護したり、或いは電子機器から発生する電磁波を遮断するための電磁波シールドが種々提案されている。
【0003】
電子機器の中でも各種ディスプレイやメーター、光学センサー等に適用される電磁波シールドにおいては、電磁波シールド効果のみならず、透明性が不可欠である。
特にPDPでは、ディスプレイ上の画素電極から比較的大きな電流が流れるため、強度の高い電磁雑音が放射されるという特性を有しており、この電磁雑音を抑制するために電磁波シールドの使用が不可欠である。しかもこの電磁波シールドには当然のことながら画質を劣化させずに、優れた視認性を有することも要求される。
【0004】
透明電磁波シールド用材料としては、透明基板、導電性メッシュ織物を重ね合わせたものや(例えば、特許文献1)、導電性インキにより格子状パターンを構成するものや(例えば、特許文献2)、無電解めっき層により銅層を設け、この銅層をエッチングして得た格子状パターンから成るもの(例えば、特許文献3)等、種々のものが既に提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−302098号公報
【特許文献2】
実開平5−15492号公報
【特許文献3】
特開平5−283889号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、導電性メッシュ織物を重ね合わせたものは、繊維を芯材とするためメッシュパターンが太く、厚いため透明性に限界があり、特に斜め方向から見た場合の透明性が悪く、PDPへの適用は困難である。また、導電性インキによるものは、得られる導電性に限界があり、電磁波を十分にシールドし得る性能を得ることが困難である。更に、銅層をエッチング処理することによりパターンを形成するものは、銅層が透明基体との密着性に劣り、密着性を向上するための下地層を設ける必要があり、エッチング処理後かかる下地層の失透により透明性が得られないという問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、密着性が良好で経済的な複合材、特に高い電磁波シールド効果と光透過性能を有すると共に、密着性に優れ、PDPに適用した場合にも画質の劣化や視認性を低下させることのない透明電磁波シールド用複合材及びその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることを特徴とする複合材が提供される。
本発明の複合材においては、
1.前記導電処理層が100乃至2000Åの厚みの銅からなり、金属薄膜層が1乃至20μmの厚みの銅からなること、
2.前記導電処理層が真空蒸着により形成されていること、
3.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであること、
4.前記樹脂フィルムが導電処理層と接触する部分にプライマー樹脂層を有する複層フィルムであること、
5.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層とプライマー樹脂層の二層フィルムであること、
6.前記樹脂フィルムの金属層をメッシュ化して透明電磁波シールド材を得るために行うエッチング処理後の全光線透過率が80%以上であること、
7.前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの二軸配向残存率が90%以上であること、
8.前記薄膜層上に黒化処理層が形成されていること
9.前記黒化処理層上に防錆処理層が形成されていること、
もできる。
【0009】
本発明によればまた、樹脂フィルム上に金属を蒸着させて厚さ2000Å以下の厚みの金属層を形成して導電処理層とし、該導電処理層上に電解めっき処理により厚さ20μm以下の金属薄膜層を形成し、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂層の融解開始温度以上に上げて該樹脂層の導電処理層への濡れを果たしてあることを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
本発明の複合材の製造方法においては、
1.前記導電処理層が100乃至2000Åの厚みの銅からなり、金属薄膜層が1乃至20μmの厚みの銅からなること、
2.前記導電処理層を真空蒸着により形成していること、
3.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのみであること、
4.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層とプライマー樹脂層の複層フィルムであり、該プライマー樹脂層は導電処理層と直接接触する面にあること、
5.前記複合材とした後、樹脂フィルムの金属層をメッシュ化して透明電磁波シールド材を得るために行うエッチング試験後の全光線透過率が80%以上となるよう、樹脂フィルムを選択したこと、
6.前記電解めっき処理後、樹脂フィルムの二軸配向残存率が90%以上となるよう、一対の温度制御された温度調整ロールを通すこと、
7.前記電解めっき処理後、黒化処理を施すこと、
8.前記黒化処理後、防錆処理を施すこと、
9.前記樹脂層を融解開始温度以上に上げる処理を、導電処理、電解めっき処理、黒化処理或いは防錆処理の何れかの処理の後に行うこと、
もできる。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明は、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることによって、樹脂フィルムの導電処理層への濡れを果たし、優れた密着性を得ることが可能になる。
また本発明の主目的である透明電磁波シールド用複合材は、透明性の高い樹脂フィルムに、導電性及び均一電着性が極めて高い、電解めっき処理による銅薄膜層を組み合わせて成るものであり、特に樹脂フィルムと電解めっき処理による銅薄膜層との密着性に優れており、高い電磁波シールド効果を有すると共に高い透明性を有することを特徴とするものである。
本発明においては、透明樹脂フィルムに電解めっき処理による銅薄膜層を形成するために、その前処理として導電処理層を銅の蒸着により形成することにより、所望の電磁波シールド効果を発現できる一定厚さの銅薄膜層の形成を可能にする。
【0011】
特に樹脂フィルムと導電処理層の間にプライマー層を設けなくても十分な密着性を得ることができるため、エッチング処理によりプライマーが白化して透明性を損なうというような問題がなく、エッチング処理後においても全光線透過率が80%以上と優れた透明性を有している。
【0012】
図1乃至図3は、本発明の主目的である電磁波シールド用としての複合材の好適実施態様について、その層構成を示す断面図である。
図1において、全体を1で表す本発明の複合材は、樹脂フィルム10と樹脂フィルム10の片面に形成された導電処理層11、導電処理層11上に形成された銅薄膜層12から成り、導電処理層11及び銅薄膜層12は、エッチング処理による凹部13を有し、メッシュ状にパターン化されている。
図2に示す本発明の複合材では、図1に示す複合材の銅薄膜層12上に黒化処理層14、黒化処理層14上に防錆処理層15が形成されている。
また図3に示す本発明の複合材では、図2に示す複合材の樹脂フィルム10と導電処理層11の間にプライマー層16が形成されている。
【0013】
(樹脂フィルム)
本発明に用いる樹脂フィルムとしては、少なくとも透明電磁波シールド用途には、エッチング処理後の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、具体的には、オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができるが、特に透明性、耐エッチング性、経済性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを好適に用いることができる。
樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、5乃至200μmの範囲あることが好ましい。
【0014】
二軸延伸樹脂フィルム、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、樹脂フィルムの二軸配向が、導電処理、電解めっき処理、エッチング処理等に付され、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂層の融解開始温度以上に上げた後にも尚、90%以上残存しているものであることが望ましい。すなわち、二軸配向残存率(BO残存率)が、90%未満になり、無配向部分が増加すると、フィルムの支持性が低下するばかりでなく、透明性低下や歪が生じやすくなり好ましくないからである。
尚、二軸配向残存率(BO残存率)は下記式(1)
BO残存率(%)=Ia/Ib×100 …(1)
式中、Iaは、複合材(製造後)の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度であり、Ibは、複合材製造前の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度である。
で表される。
【0015】
(導電処理層)
本発明の複合材においては、上述した樹脂フィルム上に電解めっき処理により金属薄膜層を形成することから、樹脂フィルムに電解めっき処理のための前処理として導電処理層を形成する。
すなわち、本発明においては、樹脂フィルムに金属を蒸着させて金属の蒸着層を形成しておくことにより、電解めっきによる一定厚みの金属薄膜層を樹脂フィルムに密着性よく設けることが可能となる。
蒸着の方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法など従来公知の物理的蒸着法や、導電剤をビヒクルに混合した塗布液を調製しこの塗布液を樹脂フィルムに薄くコーティングして塗膜を形成すること等により行うことができるが、経済性の観点からは真空蒸着法であることが好ましい。
導電処理層は、経済性の観点から2000Å以下が好ましい。特に導電処理層が銅の場合は、100乃至2000Åであることが好ましい。上記範囲よりも導電処理層の厚みが薄いと、その後に行う電解めっきが困難となり、逆に上記範囲よりも厚い場合、処理時間が長くなり不経済である。
【0016】
本発明においては、樹脂フィルム上に導電処理層を形成した後、導電処理層と樹脂フィルムの接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂フィルムの融解開始温度以上の温度に上げて、樹脂フィルムと導電処理層を密着させる。すなわち、融解開始温度以上に樹脂フィルムを保持することにより、樹脂フィルム層の導電処理層との接触界面部分を溶融させることにより、樹脂の導電処理層への濡れを果たし、顕著に密着性を向上させることが可能となる。これによりプライマーを用いなくとも密着性の向上を図ることができ、プライマーを用いることによる失透等の各種問題を解消することができると共に、プライマーを用いないことによって経済性を向上することも可能となる。
尚、融解開始温度とは、結晶が融解し始める温度であり、本明細書では、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製DSC7)を用いて、窒素雰囲気で5℃/分の昇温速度で結晶の融解に基づく吸熱反応を測定し、吸熱反応が開始した温度を示している。ポリエチレンテレフタレートの場合は、一般的にはフィルムのヒートセットが行われた温度に近い温度が融解開始温度として検出される場合が多い。
【0017】
樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を融解開始温度以上に上げる方法としては、複合材を一対の温度調整ロール間を通過させることにより行うことができる。融解開始温度以上の温度に保持する時間は適宜定めることができるが、あまり長い時間融解開始温度以上に保持すると、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム用いた場合などには、かかるフィルムのBO残存率を低下させるおそれがあり、その一方あまり短いと十分な密着性を得ることができないおそれがある。また、一対、すなわち二本のロールの温度は同じである必要はなく、一般的には、導電処理層側の温度を樹脂フィルム側の温度よりも高くすることが好ましい。
尚、上記融解温度以上の温度に保持する工程は、導電処理後、電解めっき処理後、黒化処理後或いは防錆処理後の何れかに行うことが好ましい。
また一般的なオーブン加熱でも条件を選べば可能である。
【0018】
(プライマー層)
前述した通り、本発明の複合材においては、特にプライマー層を形成しなくても密着性に優れたものであるが、プライマー層を形成することを除外するものでなく、耐エッチング性に優れたプライマーを選択し、これを用いることにより、透明性を損なうことなく更に密着性の向上を図ることも可能となる。
プライマーは、エッチング処理に付されても樹脂フィルムの透明性を損なわないものであることが重要であり、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料、或いはレゾール型フェノールアルデヒド樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料、ユリア系塗料、アミド系塗料、アクリル系塗料、ウレタン系塗料等を用いることができる。
【0019】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、透明性が失われない範囲であればよく、例えば0.1乃至2μmの範囲の厚みとなるように形成すべきである。
プライマー層は、上述した樹脂フィルムの導電処理層が形成される面に形成されるべきであり、特に樹脂フィルムとして、プライマー層を有する複層フィルムの形態で用いることが望ましい。
またこの複層フィルムにおいても、樹脂フィルムとプライマー層の接触界面を、樹脂フィルムの融解開始温度以上に上げて、樹脂フィルムとプライマー層の密着性を向上させることができる。この場合においても上述した樹脂フィルムと導電処理層の場合と同様に行うことができる。
このプライマー層において重要な条件はエッチング処理後の銅層の無い部分、すなわち樹脂フィルム部分の全光線透過率が80%以上を維持できる様、プライマーの種類、厚みなどを選択することである。
【0020】
(電解めっき処理による金属薄膜層)
本発明においては、上述した樹脂フィルム上に形成された導電処理層上に電解めっき処理により高導電性の金属薄膜層を形成することにより、電磁波シールドなどの各種特性が付与される。
本発明において透明電磁波シールド目的に用いる場合は、電解めっきにより形成される金属薄膜層は、1乃至20μmの範囲の厚みの銅層とすることが好ましい。上記範囲よりも銅薄膜層の厚みが薄い場合には充分な導電性を得ることができず、電磁波シールド効果に劣るようになり、また上記範囲よりも金属薄膜層の厚みが厚くても更なる電磁波シールド効果の向上は見られず、むしろ電解めっき処理後に行うエッチング処理に長時間を有する等の問題を生じることになるので好ましくない。
電解めっき処理は、従来公知の方法により行うことができ、硫酸銅と硫酸を主成分として調整された硫酸銅めっき浴、シアン化第一銅とシアン化ナトリウムを主成分として調整されためっき浴、ピロリン酸銅とピロリン酸カリウムを主成分として調整されためっき浴等を用いて銅めっきを行うことができる。
【0021】
(エッチング処理)
本発明においては、前記同様に、透明電磁波シールド目的に用いる場合は、電解めっき処理により導電処理層上に銅薄膜層を形成した後、透明性を得るべくエッチング処理を行って、導電処理層及び銅薄膜層を部分的に侵食して、メッシュ状等のパターンを形成する。
エッチング処理としては、従来公知のフォトエッチング処理により行うことができる。すなわち、銅薄膜層上にフォトレジストを塗布し、該フォトレジスト上にマスク用ポジフィルムを密着して露光し、露光部分を現像液にて溶解除去し、洗浄乾燥した後、エッチング液をスプレーなどして銅薄膜層及び導電処理層をエッチング除去することにより行う。フォトレジストは有機溶剤により除去することが好ましい。
エッチング液としては一般に、塩化第二鉄を主成分とするエッチング液を用いることができるが、他に過酸化水素−硫酸、塩化第二銅、過硫酸アンモニウム−燐酸を主成分とするもの等を挙げることができる。
フォトレジストとしては、水溶性カゼインなどを用いることができる。
【0022】
(黒化処理)
本発明においては、同様に透明電磁波シールド目的に用いる場合は、上記エッチング処理後、黒化処理を行い、黒化処理層を形成することが特に好ましい。これにより、透明電磁波シールド複合材の視認性を向上させることが可能となる。
黒化処理としては、これに限定されないが、ニッケルめっきを行った後、空中酸化させて、活性な銅表面を遮蔽する方法や、有機酸を含有する水溶液でエッチングして表面を粗面化させる方法等従来公知の方法により行うことができる。
【0023】
(防錆処理)
また同様に、透明電磁波シールド目的に用いる場合は、上記黒化処理層上に防錆処理層を形成してもよい。これにより、長期にわたって耐食性を維持することが可能となる。
防錆処理としては、公知の方法が適用でき、クロメート処理、ベンゾトリアゾール浸漬処理が適用できる。
【0024】
【実施例】
(評価方法)
(1)全光線透過率
JIS K 6714に準拠し、光透過率(%)を求めた。
(2)電磁波シールド効果(SE)
KEC法により500MHzでの電磁波減衰率(dB)を求めた。
(3)BO残存率
電磁波シールド複合材(製造後)の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度をIaとし、製造前の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度をIbとした場合、BO残存率(%)=Ia/Ib×100で表す。
(4)視認性
作成したシールド材を貼り付けたPDP画面の画像の状態を目視にて評価した。
(5)密着性
シールド材の表面をスコッチテープ(810−1−18D)を用いて180°セロテープ剥離試験を行い、剥離のないものを良好とした。
【0025】
(実施例1)
樹脂フィルムとして、100μm厚みの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(全光線透過率90%)を用いた。
この樹脂フィルムの片面に銅を真空蒸着法により蒸着させ、300Åの厚みの導電処理層を形成した。導電処理層形成後、250℃に温度調節されたロール間を、4m/minの速度で通過させた。更に導電処理層上に、硫酸銅浴(浴温度55℃)で陰極電流密度1A/dm2の条件で銅の電解めっきを行った。得られた銅めっき層の厚みは3μmであった。
銅めっき層を塩化第二鉄液をエッチング剤にして常法のフォトエッチング法でエッチングし、線径が10μmで、線間隔が200μmの金属メッシュをPET上に形成した。
その後Ni系黒化処理液で黒化処理を行った。また黒化処理層上に防錆剤としてクロメート処理を行いクロムとして2mg/m2の量で塗布し、防錆被膜を形成した。その後、銅側が250℃、PET側が120℃に温度調節された一対のロールを通過させた。
この様にして得られた透明電磁波シールド用複合材の全光線透過率、電磁波シールド効果、BO残存率、視認性、密着性を表1に示す。
【0026】
(実施例2)
実施例1において、銅側が220℃、PET側が100℃に温度調節された一対のロール間を通過させる工程を、電解めっき処理後に行う以外は実施例1と同様にして透明電磁波シールド用複合材を作成した。
【0027】
(実施例3)
実施例1において、温度調節されたロール間を通過させる工程を、黒化処理後に行う以外は実施例1と同様にして透明電磁波シールド用複合材を作成した。
【0028】
(実施例4)
樹脂フィルムとして、エポキシ樹脂から成るプライマー層(厚み1μm)を更に有する複層フィルム(全光線透過率88%)を用いる以外は実施例1と同様にして透明電磁波シールド用複合材を作成した。
【0029】
(実施例5)
Cuめっき層の厚みが1μmである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0030】
(実施例6)
Cuめっき層の厚みが12μmで、樹脂フィルムがアクリルである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0031】
(実施例7)
導電処理層の厚みが900Åである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0033】
(実施例8)
導電処理層の厚みが2000Åである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の透明電磁波シールド用複合材によれば、樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された200乃至2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された1乃至20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより、該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることにより、密着性を向上させ、電磁波シールド効果に優れていると共に、透明性及び視認性に顕著に優れ、各種ディスプレイ等の電子機器に用いることができ、特にPDPに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明電磁波シールド用複合材の好適実施態様の一例の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の透明電磁波シールド用複合材の好適実施態様の他の一例の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の透明電磁波シールド用複合材の好適実施態様の他の一例の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10 樹脂フィルム、11 導電処理層、12 銅薄膜層、
14 黒化処理層、15 防錆処理層、16 プライマー層
【発明の属する技術分野】
本発明は密着性が良好で経済的な複合材、特に透明電磁波シールド用複合材に関し、より詳細には、高い電磁波シールド効果と光透過性能を有し、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)等に適用可能な透明電磁波シールド用複合材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気機器の発達に伴い、氾濫する外部電磁波から電子機器が影響を受け、誤動作等を引き起こす問題が生じており、電子機器を外部電磁波から保護したり、或いは電子機器から発生する電磁波を遮断するための電磁波シールドが種々提案されている。
【0003】
電子機器の中でも各種ディスプレイやメーター、光学センサー等に適用される電磁波シールドにおいては、電磁波シールド効果のみならず、透明性が不可欠である。
特にPDPでは、ディスプレイ上の画素電極から比較的大きな電流が流れるため、強度の高い電磁雑音が放射されるという特性を有しており、この電磁雑音を抑制するために電磁波シールドの使用が不可欠である。しかもこの電磁波シールドには当然のことながら画質を劣化させずに、優れた視認性を有することも要求される。
【0004】
透明電磁波シールド用材料としては、透明基板、導電性メッシュ織物を重ね合わせたものや(例えば、特許文献1)、導電性インキにより格子状パターンを構成するものや(例えば、特許文献2)、無電解めっき層により銅層を設け、この銅層をエッチングして得た格子状パターンから成るもの(例えば、特許文献3)等、種々のものが既に提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−302098号公報
【特許文献2】
実開平5−15492号公報
【特許文献3】
特開平5−283889号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、導電性メッシュ織物を重ね合わせたものは、繊維を芯材とするためメッシュパターンが太く、厚いため透明性に限界があり、特に斜め方向から見た場合の透明性が悪く、PDPへの適用は困難である。また、導電性インキによるものは、得られる導電性に限界があり、電磁波を十分にシールドし得る性能を得ることが困難である。更に、銅層をエッチング処理することによりパターンを形成するものは、銅層が透明基体との密着性に劣り、密着性を向上するための下地層を設ける必要があり、エッチング処理後かかる下地層の失透により透明性が得られないという問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、密着性が良好で経済的な複合材、特に高い電磁波シールド効果と光透過性能を有すると共に、密着性に優れ、PDPに適用した場合にも画質の劣化や視認性を低下させることのない透明電磁波シールド用複合材及びその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることを特徴とする複合材が提供される。
本発明の複合材においては、
1.前記導電処理層が100乃至2000Åの厚みの銅からなり、金属薄膜層が1乃至20μmの厚みの銅からなること、
2.前記導電処理層が真空蒸着により形成されていること、
3.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであること、
4.前記樹脂フィルムが導電処理層と接触する部分にプライマー樹脂層を有する複層フィルムであること、
5.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層とプライマー樹脂層の二層フィルムであること、
6.前記樹脂フィルムの金属層をメッシュ化して透明電磁波シールド材を得るために行うエッチング処理後の全光線透過率が80%以上であること、
7.前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの二軸配向残存率が90%以上であること、
8.前記薄膜層上に黒化処理層が形成されていること
9.前記黒化処理層上に防錆処理層が形成されていること、
もできる。
【0009】
本発明によればまた、樹脂フィルム上に金属を蒸着させて厚さ2000Å以下の厚みの金属層を形成して導電処理層とし、該導電処理層上に電解めっき処理により厚さ20μm以下の金属薄膜層を形成し、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂層の融解開始温度以上に上げて該樹脂層の導電処理層への濡れを果たしてあることを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
本発明の複合材の製造方法においては、
1.前記導電処理層が100乃至2000Åの厚みの銅からなり、金属薄膜層が1乃至20μmの厚みの銅からなること、
2.前記導電処理層を真空蒸着により形成していること、
3.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのみであること、
4.前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層とプライマー樹脂層の複層フィルムであり、該プライマー樹脂層は導電処理層と直接接触する面にあること、
5.前記複合材とした後、樹脂フィルムの金属層をメッシュ化して透明電磁波シールド材を得るために行うエッチング試験後の全光線透過率が80%以上となるよう、樹脂フィルムを選択したこと、
6.前記電解めっき処理後、樹脂フィルムの二軸配向残存率が90%以上となるよう、一対の温度制御された温度調整ロールを通すこと、
7.前記電解めっき処理後、黒化処理を施すこと、
8.前記黒化処理後、防錆処理を施すこと、
9.前記樹脂層を融解開始温度以上に上げる処理を、導電処理、電解めっき処理、黒化処理或いは防錆処理の何れかの処理の後に行うこと、
もできる。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明は、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることによって、樹脂フィルムの導電処理層への濡れを果たし、優れた密着性を得ることが可能になる。
また本発明の主目的である透明電磁波シールド用複合材は、透明性の高い樹脂フィルムに、導電性及び均一電着性が極めて高い、電解めっき処理による銅薄膜層を組み合わせて成るものであり、特に樹脂フィルムと電解めっき処理による銅薄膜層との密着性に優れており、高い電磁波シールド効果を有すると共に高い透明性を有することを特徴とするものである。
本発明においては、透明樹脂フィルムに電解めっき処理による銅薄膜層を形成するために、その前処理として導電処理層を銅の蒸着により形成することにより、所望の電磁波シールド効果を発現できる一定厚さの銅薄膜層の形成を可能にする。
【0011】
特に樹脂フィルムと導電処理層の間にプライマー層を設けなくても十分な密着性を得ることができるため、エッチング処理によりプライマーが白化して透明性を損なうというような問題がなく、エッチング処理後においても全光線透過率が80%以上と優れた透明性を有している。
【0012】
図1乃至図3は、本発明の主目的である電磁波シールド用としての複合材の好適実施態様について、その層構成を示す断面図である。
図1において、全体を1で表す本発明の複合材は、樹脂フィルム10と樹脂フィルム10の片面に形成された導電処理層11、導電処理層11上に形成された銅薄膜層12から成り、導電処理層11及び銅薄膜層12は、エッチング処理による凹部13を有し、メッシュ状にパターン化されている。
図2に示す本発明の複合材では、図1に示す複合材の銅薄膜層12上に黒化処理層14、黒化処理層14上に防錆処理層15が形成されている。
また図3に示す本発明の複合材では、図2に示す複合材の樹脂フィルム10と導電処理層11の間にプライマー層16が形成されている。
【0013】
(樹脂フィルム)
本発明に用いる樹脂フィルムとしては、少なくとも透明電磁波シールド用途には、エッチング処理後の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、具体的には、オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができるが、特に透明性、耐エッチング性、経済性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを好適に用いることができる。
樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、5乃至200μmの範囲あることが好ましい。
【0014】
二軸延伸樹脂フィルム、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、樹脂フィルムの二軸配向が、導電処理、電解めっき処理、エッチング処理等に付され、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂層の融解開始温度以上に上げた後にも尚、90%以上残存しているものであることが望ましい。すなわち、二軸配向残存率(BO残存率)が、90%未満になり、無配向部分が増加すると、フィルムの支持性が低下するばかりでなく、透明性低下や歪が生じやすくなり好ましくないからである。
尚、二軸配向残存率(BO残存率)は下記式(1)
BO残存率(%)=Ia/Ib×100 …(1)
式中、Iaは、複合材(製造後)の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度であり、Ibは、複合材製造前の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度である。
で表される。
【0015】
(導電処理層)
本発明の複合材においては、上述した樹脂フィルム上に電解めっき処理により金属薄膜層を形成することから、樹脂フィルムに電解めっき処理のための前処理として導電処理層を形成する。
すなわち、本発明においては、樹脂フィルムに金属を蒸着させて金属の蒸着層を形成しておくことにより、電解めっきによる一定厚みの金属薄膜層を樹脂フィルムに密着性よく設けることが可能となる。
蒸着の方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法など従来公知の物理的蒸着法や、導電剤をビヒクルに混合した塗布液を調製しこの塗布液を樹脂フィルムに薄くコーティングして塗膜を形成すること等により行うことができるが、経済性の観点からは真空蒸着法であることが好ましい。
導電処理層は、経済性の観点から2000Å以下が好ましい。特に導電処理層が銅の場合は、100乃至2000Åであることが好ましい。上記範囲よりも導電処理層の厚みが薄いと、その後に行う電解めっきが困難となり、逆に上記範囲よりも厚い場合、処理時間が長くなり不経済である。
【0016】
本発明においては、樹脂フィルム上に導電処理層を形成した後、導電処理層と樹脂フィルムの接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂フィルムの融解開始温度以上の温度に上げて、樹脂フィルムと導電処理層を密着させる。すなわち、融解開始温度以上に樹脂フィルムを保持することにより、樹脂フィルム層の導電処理層との接触界面部分を溶融させることにより、樹脂の導電処理層への濡れを果たし、顕著に密着性を向上させることが可能となる。これによりプライマーを用いなくとも密着性の向上を図ることができ、プライマーを用いることによる失透等の各種問題を解消することができると共に、プライマーを用いないことによって経済性を向上することも可能となる。
尚、融解開始温度とは、結晶が融解し始める温度であり、本明細書では、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製DSC7)を用いて、窒素雰囲気で5℃/分の昇温速度で結晶の融解に基づく吸熱反応を測定し、吸熱反応が開始した温度を示している。ポリエチレンテレフタレートの場合は、一般的にはフィルムのヒートセットが行われた温度に近い温度が融解開始温度として検出される場合が多い。
【0017】
樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を融解開始温度以上に上げる方法としては、複合材を一対の温度調整ロール間を通過させることにより行うことができる。融解開始温度以上の温度に保持する時間は適宜定めることができるが、あまり長い時間融解開始温度以上に保持すると、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム用いた場合などには、かかるフィルムのBO残存率を低下させるおそれがあり、その一方あまり短いと十分な密着性を得ることができないおそれがある。また、一対、すなわち二本のロールの温度は同じである必要はなく、一般的には、導電処理層側の温度を樹脂フィルム側の温度よりも高くすることが好ましい。
尚、上記融解温度以上の温度に保持する工程は、導電処理後、電解めっき処理後、黒化処理後或いは防錆処理後の何れかに行うことが好ましい。
また一般的なオーブン加熱でも条件を選べば可能である。
【0018】
(プライマー層)
前述した通り、本発明の複合材においては、特にプライマー層を形成しなくても密着性に優れたものであるが、プライマー層を形成することを除外するものでなく、耐エッチング性に優れたプライマーを選択し、これを用いることにより、透明性を損なうことなく更に密着性の向上を図ることも可能となる。
プライマーは、エッチング処理に付されても樹脂フィルムの透明性を損なわないものであることが重要であり、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料、或いはレゾール型フェノールアルデヒド樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料、ユリア系塗料、アミド系塗料、アクリル系塗料、ウレタン系塗料等を用いることができる。
【0019】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、透明性が失われない範囲であればよく、例えば0.1乃至2μmの範囲の厚みとなるように形成すべきである。
プライマー層は、上述した樹脂フィルムの導電処理層が形成される面に形成されるべきであり、特に樹脂フィルムとして、プライマー層を有する複層フィルムの形態で用いることが望ましい。
またこの複層フィルムにおいても、樹脂フィルムとプライマー層の接触界面を、樹脂フィルムの融解開始温度以上に上げて、樹脂フィルムとプライマー層の密着性を向上させることができる。この場合においても上述した樹脂フィルムと導電処理層の場合と同様に行うことができる。
このプライマー層において重要な条件はエッチング処理後の銅層の無い部分、すなわち樹脂フィルム部分の全光線透過率が80%以上を維持できる様、プライマーの種類、厚みなどを選択することである。
【0020】
(電解めっき処理による金属薄膜層)
本発明においては、上述した樹脂フィルム上に形成された導電処理層上に電解めっき処理により高導電性の金属薄膜層を形成することにより、電磁波シールドなどの各種特性が付与される。
本発明において透明電磁波シールド目的に用いる場合は、電解めっきにより形成される金属薄膜層は、1乃至20μmの範囲の厚みの銅層とすることが好ましい。上記範囲よりも銅薄膜層の厚みが薄い場合には充分な導電性を得ることができず、電磁波シールド効果に劣るようになり、また上記範囲よりも金属薄膜層の厚みが厚くても更なる電磁波シールド効果の向上は見られず、むしろ電解めっき処理後に行うエッチング処理に長時間を有する等の問題を生じることになるので好ましくない。
電解めっき処理は、従来公知の方法により行うことができ、硫酸銅と硫酸を主成分として調整された硫酸銅めっき浴、シアン化第一銅とシアン化ナトリウムを主成分として調整されためっき浴、ピロリン酸銅とピロリン酸カリウムを主成分として調整されためっき浴等を用いて銅めっきを行うことができる。
【0021】
(エッチング処理)
本発明においては、前記同様に、透明電磁波シールド目的に用いる場合は、電解めっき処理により導電処理層上に銅薄膜層を形成した後、透明性を得るべくエッチング処理を行って、導電処理層及び銅薄膜層を部分的に侵食して、メッシュ状等のパターンを形成する。
エッチング処理としては、従来公知のフォトエッチング処理により行うことができる。すなわち、銅薄膜層上にフォトレジストを塗布し、該フォトレジスト上にマスク用ポジフィルムを密着して露光し、露光部分を現像液にて溶解除去し、洗浄乾燥した後、エッチング液をスプレーなどして銅薄膜層及び導電処理層をエッチング除去することにより行う。フォトレジストは有機溶剤により除去することが好ましい。
エッチング液としては一般に、塩化第二鉄を主成分とするエッチング液を用いることができるが、他に過酸化水素−硫酸、塩化第二銅、過硫酸アンモニウム−燐酸を主成分とするもの等を挙げることができる。
フォトレジストとしては、水溶性カゼインなどを用いることができる。
【0022】
(黒化処理)
本発明においては、同様に透明電磁波シールド目的に用いる場合は、上記エッチング処理後、黒化処理を行い、黒化処理層を形成することが特に好ましい。これにより、透明電磁波シールド複合材の視認性を向上させることが可能となる。
黒化処理としては、これに限定されないが、ニッケルめっきを行った後、空中酸化させて、活性な銅表面を遮蔽する方法や、有機酸を含有する水溶液でエッチングして表面を粗面化させる方法等従来公知の方法により行うことができる。
【0023】
(防錆処理)
また同様に、透明電磁波シールド目的に用いる場合は、上記黒化処理層上に防錆処理層を形成してもよい。これにより、長期にわたって耐食性を維持することが可能となる。
防錆処理としては、公知の方法が適用でき、クロメート処理、ベンゾトリアゾール浸漬処理が適用できる。
【0024】
【実施例】
(評価方法)
(1)全光線透過率
JIS K 6714に準拠し、光透過率(%)を求めた。
(2)電磁波シールド効果(SE)
KEC法により500MHzでの電磁波減衰率(dB)を求めた。
(3)BO残存率
電磁波シールド複合材(製造後)の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度をIaとし、製造前の樹脂フィルムのX線回折による2θ=26.2°付近での回折強度をIbとした場合、BO残存率(%)=Ia/Ib×100で表す。
(4)視認性
作成したシールド材を貼り付けたPDP画面の画像の状態を目視にて評価した。
(5)密着性
シールド材の表面をスコッチテープ(810−1−18D)を用いて180°セロテープ剥離試験を行い、剥離のないものを良好とした。
【0025】
(実施例1)
樹脂フィルムとして、100μm厚みの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(全光線透過率90%)を用いた。
この樹脂フィルムの片面に銅を真空蒸着法により蒸着させ、300Åの厚みの導電処理層を形成した。導電処理層形成後、250℃に温度調節されたロール間を、4m/minの速度で通過させた。更に導電処理層上に、硫酸銅浴(浴温度55℃)で陰極電流密度1A/dm2の条件で銅の電解めっきを行った。得られた銅めっき層の厚みは3μmであった。
銅めっき層を塩化第二鉄液をエッチング剤にして常法のフォトエッチング法でエッチングし、線径が10μmで、線間隔が200μmの金属メッシュをPET上に形成した。
その後Ni系黒化処理液で黒化処理を行った。また黒化処理層上に防錆剤としてクロメート処理を行いクロムとして2mg/m2の量で塗布し、防錆被膜を形成した。その後、銅側が250℃、PET側が120℃に温度調節された一対のロールを通過させた。
この様にして得られた透明電磁波シールド用複合材の全光線透過率、電磁波シールド効果、BO残存率、視認性、密着性を表1に示す。
【0026】
(実施例2)
実施例1において、銅側が220℃、PET側が100℃に温度調節された一対のロール間を通過させる工程を、電解めっき処理後に行う以外は実施例1と同様にして透明電磁波シールド用複合材を作成した。
【0027】
(実施例3)
実施例1において、温度調節されたロール間を通過させる工程を、黒化処理後に行う以外は実施例1と同様にして透明電磁波シールド用複合材を作成した。
【0028】
(実施例4)
樹脂フィルムとして、エポキシ樹脂から成るプライマー層(厚み1μm)を更に有する複層フィルム(全光線透過率88%)を用いる以外は実施例1と同様にして透明電磁波シールド用複合材を作成した。
【0029】
(実施例5)
Cuめっき層の厚みが1μmである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0030】
(実施例6)
Cuめっき層の厚みが12μmで、樹脂フィルムがアクリルである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0031】
(実施例7)
導電処理層の厚みが900Åである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0033】
(実施例8)
導電処理層の厚みが2000Åである以外は実施例1と同様にして電磁波シールド用複合材を作成した。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の透明電磁波シールド用複合材によれば、樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された200乃至2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された1乃至20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより、該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることにより、密着性を向上させ、電磁波シールド効果に優れていると共に、透明性及び視認性に顕著に優れ、各種ディスプレイ等の電子機器に用いることができ、特にPDPに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明電磁波シールド用複合材の好適実施態様の一例の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の透明電磁波シールド用複合材の好適実施態様の他の一例の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の透明電磁波シールド用複合材の好適実施態様の他の一例の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10 樹脂フィルム、11 導電処理層、12 銅薄膜層、
14 黒化処理層、15 防錆処理層、16 プライマー層
Claims (20)
- 樹脂フィルム、該樹脂フィルム上に形成された2000Å以下の厚みの金属から成る導電処理層、該導電処理層上に形成された20μm以下の厚みの電解めっき処理による金属薄膜層から成り、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂の融解開始温度以上の温度に上げることにより該樹脂層の導電処理層との濡れを果たしていることを特徴とする複合材。
- 前記導電処理層が100乃至2000Åの厚みの銅からなり、金属薄膜層が1乃至20μmの厚みの銅からなることを特徴とする請求項1記載の複合材。
- 前記導電処理層が真空蒸着により形成されている請求項1又は2記載の複合材。
- 前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1乃至3の何れかに記載の複合材。
- 前記樹脂フィルムが導電処理層と接触する部分にプライマー樹脂層を有する複層フィルムであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の複合材。
- 前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層とプライマー樹脂層の二層フィルムであることを特徴とする請求項5記載の複合材。
- 前記樹脂フィルムの金属層をメッシュ化して透明電磁波シールド材を得るために行うエッチング処理後の全光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の複合材。
- 前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの二軸配向残存率が90%以上であることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の複合材。
- 前記薄膜層上に黒化処理層が形成されていることを特徴とする請求項7記載の複合材。
- 前記黒化処理層上に防錆処理層が形成されていることを特徴とする請求項9記載の透明電磁波シールド用複合材。
- 樹脂フィルム上に金属を蒸着させて厚さ2000Å以下の厚みの金属層を形成して導電処理層とし、該導電処理層上に電解めっき処理により厚さ20μm以下の金属薄膜層を形成し、樹脂フィルムと導電処理層の接触界面を、少なくとも導電処理層と直に接触している樹脂層の融解開始温度以上に上げて該樹脂層の導電処理層への濡れを果たしてあることを特徴とする複合材の製造方法。
- 前記導電処理層が100乃至2000Åの厚みの銅からなり、金属薄膜層が1乃至20μmの厚みの銅からなることを特徴とする請求項11記載の複合材の製造方法。
- 前記導電処理層を真空蒸着により形成していることを特徴とする請求項11又は12記載の複合材の製造方法。
- 前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのみであることを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の複合材の製造方法。
- 前記樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層とプライマー樹脂層の複層フィルムであり、該プライマー樹脂層は導電処理層と直接接触する面にあることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の複合材の製造方法。
- 前記複合材とした後、樹脂フィルムの金属層をメッシュ化して透明電磁波シールド材を得るために行うエッチング試験後の全光線透過率が80%以上となるよう、樹脂フィルムを選択したことを特徴とする請求項11乃至15の何れかに記載の複合材の製造方法。
- 前記電解めっき処理後、樹脂フィルムの二軸配向残存率が90%以上となるよう、一対の温度制御された温度調整ロールを通すことを特徴とする請求項11記載の複合材の製造方法。
- 前記電解めっき処理後、黒化処理を施すことを特徴とする請求項17に記載の複合材の製造方法。
- 前記黒化処理後、防錆処理を施すことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法。
- 前記樹脂層を融解開始温度以上に上げる処理を、導電処理、電解めっき処理、黒化処理或いは防錆処理の何れかの処理の後に行うことを特徴とする請求項19記載の複合材の製造方法。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081209 |