JP2004252224A - 光ファイバコード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光ファイバコード50は、被覆光ファイバ心線10の外周面に、さらに、緩衝層52とジャケット層51とを被覆光ファイバ心線10から離れる方向で順に設けてなる。ジャケット層51は、ハロゲンを有さない結晶性ポリマー及びハロゲンを有さない非晶性ポリマーからなる群から選択されたベースポリマー100重量部に対して、金属水酸化物を150〜250重量部、難燃助剤を20〜40重量部で添加してなる融点が75℃以上の被覆材から構成される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバコードに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信機器等の配線に用いられる光ファイバコードは、通常、伝送線を保護するためのジャケット層を最外層に有しており、ジャケット層は、しばしば樹脂組成物から構成されている。
【0003】
樹脂組成物としては、酢酸ビニル含有量25〜70重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA),アクリルゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されたハロゲンを含まない低結晶性または非晶性ポリマーをベース樹脂とし、このベース樹脂100重量部に対して、金属水酸化物(より具体的には脂肪酸処理及び/又はシランカップリング処理が施された水酸化マグネシウム)を40〜300重量部、ベースポリマーに対して結晶性ポリマーを30重量部以下で添加してなるものが知られている(従来例1,特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−12771公報
【0005】
従来例1によれば、樹脂組成物は、ハロゲンを含まないので焼却処分が可能であるとともに、高難燃性を有するとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、光ファイバコードは、使用環境によっては85℃付近の高温下にさらされることがある。しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来例1の樹脂組成物をジャケット層とした光ファイバコードは、ベース樹脂の融点が低いせいか、このような高温下で使用されると、光ファイバコード同士が融着しやすいという問題がある(以下、この融着が起こりにくい特性を“ブロッキング特性に優れる”ともいう)。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、燃焼時に有毒ガスを発生しない特性、及び、高い難燃性を有するとともに、ブロッキング特性に優れる光ファイバコードを提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光ファイバコードは、ハロゲンを有さない結晶性ポリマー及びハロゲンを有さない非晶性ポリマーからなる群から選択されたベースポリマー100重量部に対して、金属水酸化物を150〜250重量部、難燃助剤を20〜40重量部で添加してなる融点が75℃以上の被覆層を最外層に有する。
【0009】
より好ましくは、ハロゲンを有さない非晶性ポリマーが、1種以上のαオレフィン共重合体、またはαオレフィン共重合体とαオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂との混合物から構成され、αオレフィン共重合体の少なくとも1種は、その側鎖に、エステル結合部及びアクリレート部からなる群から選択される特性基を有し、前記特性基を有する繰り返し単位構造の総量が、ベースポリマー100重量部に対して、13〜19重量部である。
【0010】
より好ましくは、ハロゲンを有さない結晶性ポリマーが、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)である。
【0011】
より好ましくは、以下に定義される温度変化ロス(dB/km)が0.1dB/km以下となるように構成される。
温度変化ロス(dB/km):「−40℃(6時間保持)〜85℃(6時間保持)を繰り返すヒートサイクル曝露試験中の伝送損失量(波長:1.55μm,単位:dB/km,試験開始直後の伝送損失量を含む)の最大伝送損失量と最小伝送損失量との差分
【0012】
より好ましくは、100℃,24時間の加熱処理を施した場合に、加熱後における最外層の被覆層の加熱収縮率が1%未満となるように構成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係る光ファイバコードは、ハロゲンを有さない結晶性ポリマー及びハロゲンを有さない非晶性ポリマーからなる群から選択されたベースポリマー100重量部に対して、金属水酸化物を150〜250重量部、難燃助剤を20〜40重量部で添加してなる融点が75℃以上の被覆層を最外層に有している。
【0014】
このような構成によれば、最外層の被覆材の融点が75℃以上であるので、高温下にさらされても、コードとコードが放置される基盤部との融着、およびコード同士での融着が起こりにくく、ブロッキング特性に優れる光ファイバコードとすることができる。
また、燃焼時に吸熱性を発現する金属水酸化物(後に詳述する)がベースポリマー100重量部に対して150重量部以上で、燃焼抑制効果を有する難燃助剤(後に詳述する)が20重量部以上で添加されているので、高い難燃性を発現できる。
なお、金属水酸化物は、ベースポリマー100重量部に対して250重量部以下、難燃助剤を40重量部以下で添加されてなるので、この被覆材は押出加工性に優れており、容易に溶融加工できるので、所望の光ファイバコードを確実に得ることができる。この被覆が光ファイバコードのジャケット層(最外層)となると、当該ジャケット層は長さ方向に外径が安定しており、表面のざらつき等もない。
【0015】
前記ハロゲンを有さない非晶性ポリマーが、1種以上のαオレフィン共重合体、またはαオレフィン共重合体とαオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂との混合物から構成され、前記αオレフィン共重合体の少なくとも1種は、その側鎖に、エステル結合部及びアクリレート部からなる群から選択される特性基を有している形態を好適に例示できる。
前記非晶性ポリマーが1種のαオレフィン共重合体から構成される場合は、このαオレフィン共重合体は、前記特性基を有するαオレフィン共重合体とされるのが好ましく、具体的には、エステル結合部を側鎖に有するものとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、アクリレート部を側鎖に有するものとしてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)及びエチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等を好適に挙げることができる。
【0016】
前記非晶性ポリマーが2種以上のαオレフィン共重合体から構成される場合は、少なくとも1種は、前記特性基を有するαオレフィン共重合体とされるのが好ましい。尚、αオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂等が含まれる。
【0017】
ポリスチレン系熱可塑性樹脂としてはポリスチレン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンをハードセグメントとし、ポリブタジエン,水添ポリブタジエン,ポリイソプレン等のジエンポリマーやエチレンプロピレンゴムをソフトセグメントとするブロック共重合体であり、ソフトセグメントがポリブタジエンとされたスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、ソフトセグメントがイソプレンとされたスチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、SBSを水素添加したスチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、ソフトセグメントがエチレンプロピレンゴムとされたスチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)を例示できる。また、ポリスチレンと結晶性ポリオレフィンのブロック共重合体である、スチレンエチレンブチレンオレフィン結晶 共重合体(SEBC)を例示できる。これ以外にポリウレタン系熱可塑性エラストマーやポリエステル系エラストマーも例示できる。
【0018】
エステル結合部及びアクリレート部からなる群から選択される特性基を有するαオレフィン共重合体を採用すれば、被覆が燃焼された場合に、この特性基によって炭化層の形成が促される。これにより、金属水酸化物(後に詳述する)の燃焼時における吸熱性と、難燃助剤(後に詳述する)の燃焼抑制効果とによってもたらされる難燃性に対して、さらに、前記炭化層の燃焼の進行を抑制する効果が確実に付与されることにより、より難燃性に優れた光ファイバコードを得ることができる。
【0019】
ベースポリマーの別の構成成分であるハロゲンを有さない結晶性ポリマーとしては、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)を好適に挙げることができる。
結晶性ポリマーと非晶性ポリマーと混同して得られる被覆の物性に関し、結晶性ポリマーが分岐の多いLDPEでは、被覆が柔らかくなり過ぎ(ヤング率が小さくなりすぎる)、分岐の少ないHDPEでは、被覆が固くなりすぎる(ヤング率が大きくなりすぎる)のに対して、結晶性ポリマーがLLDPEであることによって、被覆の物性を所望なものとしやすい(所望のヤング率を得ることができる)。
【0020】
最外層の被覆材の融点は、結晶性ポリマーと非晶性ポリマーとの混合比,それぞれのポリマーの種類等を選択することにより、75℃以上とすることが可能である。
【0021】
また、前記非晶性ポリマーに関し、前記特性基の総量は、ベースポリマー100重量部に対して、13〜19重量部とされるのが好ましい。
19重量部超過となると、被覆材の融点の低下が顕在化し、被覆材の融点を75℃以上にしにくくなる。
13重量部未満となると、前記した炭化層が充分に形成されにくくなる。
【0022】
また、以上に説明した結晶性ポリマー及び非晶性ポリマーは、ハロゲンを有さないことから、本発明の実施形態に係る光ファイバコードの被覆層は、燃焼時に有毒ガスを発生しない。
【0023】
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムを好適に挙げることができる。
難燃助剤としては、ヒドロキシ錫酸亜鉛等の金属系難燃剤や、炭酸カルシウム、シリコーン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属ホウ酸塩等を好適に挙げることができる。特に、難燃助剤としてヒドロキシ錫酸亜鉛を採用する場合には、ベースポリマー100重量部に対して30重量部以上添加するのが好ましい。
【0024】
なお、本発明の実施形態に係る光ファイバコードの最外層の被覆材は、必要に応じて、シリコーン系滑剤等の添加物を含有しても良い。
【0025】
光ファイバコード50は、以上のように、前記被覆層を最外層に有するので、燃焼時に有毒ガスを発生しない特性、及び、高い難燃性を有するとともに、ブロッキング特性に優れる。
【0026】
本発明の実施形態に係る光ファイバコード50は、前記被覆材を被覆してなる被覆層を最外層に有しており、より具体的には、図1の模式断面図に示すように、被覆光ファイバ心線10の外周面に、さらに、緩衝層52とジャケット層51(最外層)とを被覆光ファイバ心線10から離れる方向で順に設けてなる。
光ファイバコード50としては、ジャケット層51の内径が1.2mm以上2.0mm以下、ジャケット層51の外径が1.7mm以上3.0mm以下とされた形態を好適に例示できる。
【0027】
緩衝層52は、アラミドヤーン等の高抗張力繊維から構成されるのが好ましい。
被覆光ファイバ心線10は、図2の模式断面図に示すように、光ファイバ心線13の外周面に、さらに、第一被覆層14と第二被覆層15とを光ファイバ心線13から離れる方向で順に設けてなる。
第一被覆層の25℃でのヤング率(以下、単に、ヤング率ともいう)は、好ましくは、1MPa〜50MPaである。第二被覆層の25℃でのヤング率は、好ましくは、200MPa〜1000MPaである。
ここで、ヤング率は、JIS K 7113に準じ、2号型試験片を使用して得られる値である。
【0028】
このように、第一被覆層14を、外層である第二被覆層15よりも柔軟な層とすることによって、被覆光ファイバ心線10の外周面から受ける外界からの圧力が第二被覆層15で完全に吸収できない程に大きな力であっても、内層である第一被覆層14によって該圧力を緩衝させることができる。よって、ガラスファイバ11が圧力を受けることによる光伝送損失を抑えることができる。
【0029】
第一被覆層14及び第二被覆層15は、樹脂組成物によって構成されている。そして、第一被覆層及び第二被覆層のヤング率は、樹脂組成物を構成する樹脂の種類及びその含有量、添加剤の種類及びその含有量を調整することにより、好適に前記範囲内とされる。
【0030】
第一被覆層14を構成する樹脂組成物(以下、第一樹脂組成物という)の樹脂(以下、第一樹脂という)及び第二被覆層15を構成する樹脂組成物(以下、第二樹脂組成物という)の樹脂(以下、第二樹脂という)は、共に、ハロゲンを有さない樹脂(以下、ノンハロゲン樹脂という)であるのが好ましく、これにより、燃焼時に有毒ガスを発生しない特性を付与できる。
【0031】
第一樹脂は、ポリオレフィン熱可塑性樹脂から構成されるのが好ましく、より具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー等の1種もしくは2種以上の混合物を好適に挙げることができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、前掲のものを好適に例示できる。第一樹脂に使用されるポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、SBS,SEBS等の軟質グレードのポリスチレンが好ましい。
【0032】
第二樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性樹脂からなる群から選択される一種の樹脂または二種以上の樹脂の混合物を好適に例示できる。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、前掲のものを好適に例示できる。
ポリスチレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、スチレンのホモポリマー、一般用ポリスチレン(GPPS)、ポリスチレン中にスチレンブタジエンゴム等のゴム成分をドメインすることによって微分散してなる耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等を例示できる。
第二樹脂としては、複数のポリスチレン系熱可塑性樹脂成分からなるものが好ましい。少なくとも一つの成分がポリスチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。硬質グレードのGPPS,HIPS等が含まれている樹脂が特に好ましい。
【0033】
また、第一樹脂組成物、及び、第二樹脂組成物は、それぞれ必要に応じて、光安定剤(HALS)、酸化防止剤(硫黄系酸化防止剤など)、滑剤、老化防止剤等の添加物を含有しても良い。光安定剤としては、LA−52(テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート:旭電化(株)製)などを、硫黄系酸化防止剤としては、シーノックス412S(ペンタエリスリトール・テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート))などを例示できる。光安定剤、硫黄系酸化防止剤を使用することにより、耐光性、耐湿熱性が増すので、好ましい。
また、添加物として、既知の可塑剤、軟化剤、ゴム軟化剤、プロセス油、エクステンダ油、架橋剤等の配合剤を添加する方法によって、第一被覆層14のヤング率及び第二被覆層15のヤング率を前記した範囲内に調整してもよい。ゴム軟化剤としては、パラフィン系オイル、非芳香族系ゴム軟化剤等を挙げることができる。
【0034】
第一樹脂組成物、及び、第二樹脂組成物は、それぞれ、各樹脂組成物を構成する成分が混合されてなるのが好ましく、バンバリーミキサー、加圧型ニーダー、二軸混合機等の既知の溶融混合装置を用いて混合できる。
【0035】
被覆光ファイバ心線10に使用される光ファイバ心線13は、図2に示すように、ガラスファイバ11の外周面に紫外線硬化型樹脂層12を設けてなる。具体的には、外径0.125mmのガラスファイバ11を紫外線硬化型樹脂層12で被覆した外径(Di)0.250mm〜0.260mmの公知の光ファイバ心線を好適に例示できる。ガラスファイバ11は、石英ガラスを主成分としたもの、また、紫外線硬化型樹脂層12の樹脂としては、ウレタンアクリレート樹脂等が広く知られており、これらを制限なく使用できる。また、紫外線硬化型樹脂層12としては、物性値が異なる内層(第一紫外線硬化型樹脂層)と外層(第二紫外線硬化型樹脂層)とから構成されたもの(2層構造)や、最外層に着色層を有するもの(3層構造)なども知られており、これらも制限なく使用できる。
【0036】
第一紫外線硬化型樹脂層のヤング率は0.5MPa〜2MPa、第二紫外線硬化型樹脂層のヤング率は10MPa〜1500MPa、着色層のヤング率は500MPa〜1500MPaとされるのが好ましい。
このようなヤング率を発現させるために、第一紫外線硬化型樹脂層の樹脂の製造においては、ポリエーテルジオールとイソホロンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてN−ビニルカプロラクタム,イソボニルアクリレート,ノナンジオールアクリレート,ノニルフェノールアクリレート、光重合性開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)、及び、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランや2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコールを混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
【0037】
第二紫外線硬化型樹脂層の樹脂の製造においては、ポリプロピレンオキシドグリコールとトルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてN−ビニルカプロラクタム,トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、光重合性開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)及びイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、並びに、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタンを混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
【0038】
さらに、着色層も、通常、紫外線硬化型樹脂層の形態とされており、着色層の樹脂の製造においては、ビスフェノールAと2ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるエポキシアクリレートおよび/またはポリプロピレンオキシドグリコールとトルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてビスフェノールAエチレンオキサイド変性アクリレート,トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート,シリコンアクリレート、光重合性開始剤としてベンゾフェノン,ベンゾインエーテル、及び、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタンを混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
【0039】
このように、第一紫外線硬化型樹脂層を柔軟な層とし、第二紫外線硬化型樹脂層を堅固な層とすることによって、光ファイバ心線13が受ける側圧(光ファイバ心線13の外周面から受ける外界からの圧力であって、特に、光ファイバ心線13に高抗張力繊維層52とジャケット層51とが設けられる前に受ける圧力)に対して、第二紫外線硬化型樹脂層で該圧力を吸収させ、また、該圧力が、第二紫外線硬化型樹脂層で完全に吸収できない程に大きな力であっても第一紫外線硬化型樹脂層で該圧力を緩衝させることにより、ガラスファイバ11が圧力を受けることによる光伝送損失を低減できる。
【0040】
光ファイバ心線13を構成する各層の好ましい寸法を以下に示す。
ガラスファイバ11の外径:125μm
第一紫外線硬化型樹脂層までの外径:200μm
第二紫外線硬化型樹脂層までの外径:245μm
着色層までの外径:255μm
【0041】
本発明の実施形態に係る被覆光ファイバ心線10においては、第一被覆層14までの直径(Dp)が350μm〜600μm、第二被覆層15までの直径(Ds)が850μm〜950μmとされた形態を好適に例示できる。
【0042】
光ファイバコード50は、より好ましくは、以下に定義される温度変化ロス(dB/km)が0.1dB/km以下となるように構成される。
温度変化ロス(dB/km):「−40℃(6時間保持)〜85℃(6時間保持)を繰り返すヒートサイクル曝露試験中の伝送損失量(波長:1.55μm,単位:dB/km,試験開始直後の伝送損失量を含む)の最大伝送損失量と最小伝送損失量との差分
【0043】
前記規定は、ベースポリマーとして比較的、線膨張係数の小さい樹脂(望ましくは3.0×10−4(1/K)以下)を採用することにより達成し得る。これにより、特に、環境適応特性(温度の変動によっても、光伝送特性を高次元で維持する特性)に優れた光ファイバコードとすることができる。
【0044】
また、光ファイバコード50は、100℃,24時間の加熱処理を施した場合に、加熱後における最外層の被覆層の加熱収縮率が1%未満となるように構成されるのが好ましい。ここで、最外層の被覆層の加熱収縮率の測定においては、光ファイバコード50より、光ファイバ心線13と高抗張力繊維層52とを除去してなるチューブ形状の被覆層(ジャケット層)を使用する。加熱収縮率は、以下の式で規定される。
被覆層の加熱収縮率(%)=[加熱処理後の被覆層の長さ]/[加熱処理前の被覆層の長さ]×100
前記条件は、ベースポリマーとして比較的、線膨張係数の小さい樹脂(望ましくは3.0×10−4(1/K)以下)を採用することにより達成し得る。加熱収縮率が前記条件を満たすことにより、前記被覆層の意図しない収縮によって、ガラスファイバ11が所定の位置からずれたり、ガラスファイバ11に対して応力が印加されたりして光伝送特性が低下する虞れを確実に低減できる。よって、特に、高い耐熱性(光ファイバコードが熱を受けても、光伝送特性を高次元で維持する特性)を有する光ファイバコードとすることができる。
【0045】
【実施例】
[被覆材の製造]
ベースポリマー100重量部に対して金属水酸化物と難燃助剤と、添加剤としてシリコーン系滑剤とを表1に示す組成で添加し、実施例1〜9,比較例1〜3の被覆材をそれぞれ製造する。被覆材は、二軸式混合機(スクリュー外径:45mmφ,L/D=32)を用い、吐出ストランドを切断して、樹脂組成物をペレット化する方法により得る。
【0046】
各被覆材の融点及びヤング率を表1に示す。測定方法は以下の通りである。
【0047】
(融点)
被覆材を硬化して作成したサンプル(フィルム)をJIS K 7100に規定される標準状態下に放置し、JIS K 7121に記載されるプラスチック転移温度測定方法によりDSC(示差走査熱量測定器)を使用してDSC曲線を測定し、この曲線のピーク温度(複数のピークが重なる場合には、最低温のピークに該当)を読み取り、これを被覆材の融点と定義する。
【0048】
(ヤング率)
JIS K 7127に規定される方法に準拠して、被覆材を硬化して作成した試験片(フィルム)について引張り試験を行い、2.5%割線方式を採用して算出される割線弾性率を被覆材のヤング率とする。なお、この割線弾性率は、以下の式で定義される。
割線弾性率(MPa)=[「2.5%伸び時の応力(kg/mm2)」/「サンプル断面積(mm2)」/0.025)]×9.8
【0049】
【表1】
【0050】
[光ファイバコードの作製]
前記光ファイバコード50の構成に準じる実施例1〜9,比較例1〜3の光ファイバコード(緩衝層52:アラミドヤーン,ジャケット層51の内径:1.4mm,ジャケット層51の外径:2.0mm)を作製する。すなわち、ガラスファイバ11に紫外線硬化型樹脂層12を設けた光ファイバ心線13を作製する。光ファイバ心線13に第一被覆層14及び第二被覆層15を設けて被覆光ファイバ心線10を作製する。その周囲にアラミドヤーンを添わせ、さらにその周囲にジャケット層(最外層)として被覆を押出し加工により形成して光ファイバコード50とする。実施例1〜9,比較例1〜3の光ファイバコードのジャケット層の素材には、それぞれ、前記実施例1〜9,比較例1〜3の被覆材が使用される。以下、光ファイバコード50に共通して使用される被覆光ファイバ心線10について説明する。
【0051】
被覆光ファイバ心線10を構成する光ファイバ心線13は、石英ガラスを主成分とするガラスファイバ(外径125μm)の外周に紫外線硬化型樹脂層(ウレタンアクリレート樹脂層)を設けてなる光ファイバ心線(外径250μm)を使用する。紫外線硬化型樹脂層は、第一紫外線硬化型樹脂層と第二紫外線硬化型樹脂層と着色層とからなる三層構造であり、第一紫外線硬化型樹脂層までの外径は200μm、第二紫外線硬化型樹脂層までの外径は245μm、着色層までの外径は255μm、第一紫外線硬化型樹脂層のヤング率は1MPa(25℃)、第二紫外線硬化型樹脂層のヤング率は400MPa(25℃)、着色層のヤング率は1100MPa(25℃)である。被覆光ファイバ心線10を構成する第一被覆層14はポリスチレン(SEBS)とPPEとを65:35で混合した樹脂をベースポリマーとし、そのヤング率は20MPa(25℃)、第二被覆層15はポリスチレン(GPPS)とPPEとを65:35で混合した樹脂をベースポリマーとし、そのヤング率は800MPa(25℃)である。また、第一被覆層14までの直径Dpは600μm、第二被覆層15までの直径Dsは900μmである。ヤング率の測定(25℃)は、JIS K 7113に準じる。
【0052】
光ファイバコードに対する各種試験の方法は、以下のようにして行う。
【0053】
[難燃性]
実施例及び比較例の光ファイバコードに対して、JIS 3005(60℃傾斜試験)に準拠した試験を実施する(光コード1条試験)。ブンゼンバーナー着火時間30秒で消火後60秒以内に消火する場合を合格、60秒以内に消火しない場合を不合格とする。
【0054】
[ブロッキング特性]
実施例及び比較例の光ファイバコード100mを巻回し、光ファイバコードが積層するように束ね(束の直径:30cm)、85℃の温度下に168時間放置する。放置後、ブロッキング(光ファイバコード同士が互いに張り付き合うこと)が無いものを“○”とし、ブロッキングの領域がある場合を“×”として評価する。
【0055】
[光伝送特性]
実施例及び比較例の光ファイバコード100mを巻回し(束の直径:30cm)、OTDR測定器(波長:1.55μm)にて伝送損失量(dB)を測定し(23℃)、単位長あたりの伝送損失を「初期ロス(dB/km)」として表2に示す。初期ロスの値が低いほど、光伝送特性に優れる。
【0056】
[環境適応特性]
被覆光ファイバ心線に対して、−40℃(6時間保持)〜85℃(6時間保持)を繰り返すヒートサイクル曝露試験を実施し、その試験中、連続モニター(波長:1.55μm)にて伝送損失量(dB)を測定し、最大伝送損失量と最小伝送損失量との差分を「温度変化ロス(dB/km)]として表2に示す。温度変化ロスの値が低いほど、環境適応特性に優れる。
【0057】
[被覆層の加熱収縮率]
実施例及び比較例の光ファイバコードから取り出した最外層の被覆に対して、100℃,24時間の加熱処理を施し、加熱収縮率を測定する。測定結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1〜9の光ファイバコードは、難燃性、ブロッキング特性、光伝送特性及び環境適応特性の全てに優れる。
【0060】
比較例1及び比較例3の被覆光ファイバ心線は、最外層の被覆層の融点が75℃未満であり、ブロッキング特性に劣る。
比較例2の被覆光ファイバ心線は、最外層の被覆層中の難燃助剤の量が少なく、難燃性に劣る。
【0061】
なお、実施例及び比較例の光ファイバコードの最外層の被覆層のベースポリマーは、ハロゲンを有さないことから、燃焼時に有毒ガスを発生しない。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、燃焼時に有毒ガスを発生しない特性、及び、高い難燃性を有するとともに、ブロッキング特性に優れる光ファイバコードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバコードの模式断面図である。
【図2】被覆光ファイバ心線の模式断面図である。
【符号の説明】
50 光ファイバコード
51 ジャケット層(最外層)
Claims (5)
- ハロゲンを有さない結晶性ポリマー及びハロゲンを有さない非晶性ポリマーからなる群から選択されたベースポリマー100重量部に対して、金属水酸化物を150〜250重量部、難燃助剤を20〜40重量部で添加してなる融点が75℃以上の被覆層を最外層に有する光ファイバコード。
- 前記ハロゲンを有さない非晶性ポリマーが、1種以上のαオレフィン共重合体、またはαオレフィン共重合体とαオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂との混合物から構成され、前記αオレフィン共重合体の少なくとも1種は、その側鎖に、エステル結合部及びアクリレート部からなる群から選択される特性基を有し、前記特性基を有する繰り返し単位構造の総量が、前記ベースポリマー100重量部に対して、13〜19重量部である請求項1に記載の光ファイバコード。
- 前記ハロゲンを有さない結晶性ポリマーが、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)である請求項1または2に記載の光ファイバコード。
- 以下に定義される温度変化ロス(dB/km)が0.1dB/km以下となるように構成された請求項4に記載の光ファイバコード。
温度変化ロス(dB/km):「−40℃(6時間保持)〜85℃(6時間保持)を繰り返すヒートサイクル曝露試験中の伝送損失量(波長:1.55μm,単位:dB/km,試験開始直後の伝送損失量を含む)の最大伝送損失量と最小伝送損失量との差分 - 100℃,24時間の加熱処理を施した場合に、加熱後における最外層の被覆層の加熱収縮率が1%未満となるように構成された請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバコード。
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