JP4525387B2 - 光ファイバコード - Google Patents
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Description
ノンハロゲン難燃性樹脂組成物としては、酢酸ビニル含有量25〜70質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリルゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されたハロゲンを含まない低結晶性または非晶性ポリマーをベース樹脂とし、このベース樹脂100重量部に対して、難燃剤として、金属水酸化物(より具体的には脂肪酸処理及び/又はシランカップリング処理が施された水酸化マグネシウム)を40〜300重量部、ベースポリマーに対して結晶性ポリマーを30重量部以下で添加してなるものが知られている(従来例1、特許文献1参照)。
該難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂とし、金属水酸化物と酸化防止剤を含有し、
該酸化防止剤は、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであることを特徴とする。
より好ましくは、前記酸化防止剤が、アクリレート基を有することを特徴とする。
本発明の実施形態に係る光ファイバコードは、難燃樹脂組成物をシース層に使用し、該難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂とし、金属水酸化物と酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤は、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであることを特徴とする。
ここで本発明でいう「低結晶性又は非結晶性ポリマー」とは、結晶状態をとりえないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いポリマーを意味する。例えば、X線結晶化度が20%以下のものをいう。
また、低結晶性又は非結晶性ポリマーを構成しうるαオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等が含まれる。
上記MFR値とは、JIS K7210−1995に記載された「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に従い、試験温度190℃、試験荷重21.18Nの条件で測定された値を意味する。
また、上記のようにMFR値を小さくすると、耐白化性に優れる。なお、「白化」とは、光ファイバコードに局所的な歪みを与えた時に、ベースポリマーを構成する分子鎖が引き伸ばされるように変形されるため、ベースポリマーと金属酸化物との間にマイクロクラックが入り、その結果光が散乱されるために起こると考えられることであって、光ファイバコードが白っぽく見えることである。この耐白化性が向上する理由としては、ベースポリマーの分子鎖同士の絡み合いが強くなり、分子鎖が変形しにくくなるためと推定される。
また、MFR値の下限を0.1(g/min)以上とすることにより、押出成形性が良好となる。
ここでいう融点とは、いわゆるDSC法に従って求める。すなわち、JIS K7122−1987(「プラスチックの転移熱測定方法」)に従い、所定のDSC装置を用いて、加熱速度毎分10℃で試料を加熱し、DSC曲線を描く。このDSC曲線の転移ピーク頂点における温度を融点とする。
前記結晶性を有するポリマーとしては、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)等を好適に挙げることができる。これらのポリマーを使用すれば、難燃性、ブロッキング特性および耐白化性をバランス良く向上させることができる。
また、融点が85℃以上のポリマーとして熱可塑性エラストマーを用いると、光ファイバコードに局所的な応力が付与された場合、応力が熱可塑性エラストマーのゴム部分に集中し、その結果樹脂マトリクス中への応力伝播を防ぐことができるので、前記した白化を抑制することができる。
TPOとしては、EPR、EPDM、NBR等のブロック共重合体、或いはポリプロピレンとのポリマーブレンド或いはアロイさせた樹脂を挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、PBT、PET等を挙げることができる。
このブロッキング温度(後に詳述する)が75℃以上であると、高温下にさらされても、コードとコードが放置される基盤部との融着、およびコード同士での融着が起こりにくく、優れたブロッキング特性を有する光ファイバコードとすることができる。
また該ブロッキング温度は85℃以上がより好ましい。
該ブロッキング温度は、例えばベースポリマーに含まれる低結晶性又は非結晶性ポリマーや融点が85℃以上のポリマーの種類を変更したり、使用割合を変更することによって調整できる。
本発明に使用される酸化防止剤は、フェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであることにより、該酸化防止剤がキノン構造を有する赤色発色団をもつ構造に変化しない。故に、当該樹脂組成物は変色しない。
これに対し、酸化防止剤のOH基のP位に結合する原子が3級以下の炭素であれば、時間の経過とともに(或いはエージングの付与により)、酸化防止剤が分解および再結合され、キノン構造を有する赤色発色団が形成され、変色する。
また、本発明に使用される酸化防止剤は、フェノール分子団を含んでいれば、主鎖または側鎖に硫黄、リン等を含んでいても構わない。
アクリレート基を分子構造中に有することにより、直径10mm以下の局所的な曲げを付与してもシース層が白化せず、また90℃のような高耐熱環境でもシース同士のブロッキングも発生せずに、良好な伝送特性を得ることができる。その作用機構は、酸化防止剤のアクリレート基がベース樹脂中のコモノマー成分と一部架橋反応を起こし、耐熱性向上(85℃でもシース同士がブロッキングし難くなる)に寄与すると推定される。
その他の添加材としては、難燃助剤、滑剤等が挙げられる。
滑剤としては、シリコーンガム、タルク等を好適に挙げることができる。
上記の配合割合によって、暗所・明所でも色相が変化せず、UL1666に記載されるライザーケーブル燃焼試験に相当する高難燃性と、IEC601034試験を満足する低発煙性を有するものとなる。
また、滑剤、難燃助剤等のその他の添加材が1〜50重量部の割合で配合させることにより、所望の機械物性を発現させることができる。
本発明の実施形態に係る光ファイバコード50は、前記難燃樹脂組成物を被覆してなるシース層を最外層に有しており、より具体的には、被覆光ファイバ心線10の外周面に、さらに、緩衝層52とシース層51(最外層)とを被覆光ファイバ心線10から離れる方向で順に設けてなる(ルース構造)。被覆光ファイバ心線10の上にシース層51(最外層)を密着させる構造(タイトバッファ構造)も可能である。
シース層外面の荒れは外観不良となる。シース層内面の荒れは光コードの伝送損失悪化に繋がる。荒れたシース層の内面に抗張力繊維が局所的に引っかかりルースな状態を保つことができない状況が生じるからである。こうなると抗張力繊維内部に存在している光ファイバ心線に局所的に微小な歪が生じ、その結果光ファイバコードの伝送損失が悪化する。
そこで、これらを回避するために材料選定を進めた結果、ベース樹脂にポリオレフインを使用し、それに金属水酸化物を適当量配合した系、特にEVAとPE(LLDPEやHDPE)を用いることによって、シース層内外面の荒れを抑制することに至った。この構造により、外観不良を防ぎ、また、光コードならではの事情である伝送損失の改善をなすことができた。
緩衝層52は、アラミドヤーン等の高抗張力繊維から構成されるのが好ましい。
第一外部被覆層14の25℃でのヤング率(以下、単に、ヤング率ともいう)は、好ましくは、1MPa〜50MPaである。第二外部被覆層15の25℃でのヤング率は、好ましくは、200MPa〜1000MPaである。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、前掲のものを好適に例示できる。第一樹脂に使用されるポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、SBS,SEBS等の軟質グレードのポリスチレンが好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、前掲のものを好適に例示できる。
ポリスチレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、スチレンのホモポリマー、一般用ポリスチレン(GPPS)、ポリスチレン中にスチレンブタジエンゴム等のゴム成分をドメインすることによって微分散してなる耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等を例示できる。
第二樹脂としては、複数のポリスチレン系熱可塑性樹脂成分からなるものが好ましい。少なくとも一つの成分がポリスチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。硬質グレードのGPPS,HIPS等が含まれている樹脂が特に好ましい。
また、添加物として、既知の可塑剤、軟化剤、ゴム軟化剤、プロセス油、エクステンダ油、架橋剤等の配合剤を添加する方法によって、第一外部被覆層14のヤング率及び第二外部被覆層15のヤング率を前記した範囲内に調整してもよい。ゴム軟化剤としては、パラフィン系オイル、非芳香族系ゴム軟化剤等を挙げることができる。
このようなヤング率を発現させるために、第一紫外線硬化型樹脂層の樹脂の製造においては、ポリエーテルジオールとイソホロンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてN−ビニルカプロラクタム,イソボニルアクリレート,ノナンジオールアクリレート,ノニルフェノールアクリレート、光重合性開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)、及び、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランや2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコール等を適宜混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
ガラスファイバ11の外径:125μm
第一紫外線硬化型樹脂層までの外径:200μm
第二紫外線硬化型樹脂層までの外径:245μm
着色層までの外径:255μm
温度変化ロス(dB/km):「−40℃(6時間保持)〜85℃(6時間保持)」を繰り返すヒートサイクル曝露試験中の伝送損失量(波長:1.55μm,単位:dB/km,試験開始直後の伝送損失量を含む)の最大伝送損失量と最小伝送損失量との差分
被覆層の加熱収縮率(%)=[加熱処理後の被覆層の長さ]/[加熱処理前の被覆層の長さ]×100
前記条件は、ベースポリマーとして比較的、結晶性が小さく加工温度の低い樹脂を採用することにより達成し得る。加熱収縮率が前記条件を満たすことにより、前記被覆層の意図しない収縮によって、ガラスファイバ11が所定の位置からずれたり、ガラスファイバ11に対して応力が印加されたりして光伝送特性が低下する虞れを確実に低減できる。
EVAとLLDPEとを7:3の比率で混合してなるベースポリマー100重量部に対して酸化防止剤(全て1重量部)と金属水酸化物(難燃剤)とを表1に示す組成で添加し、実施例1〜3,比較例1〜2のシース層に使用する被覆材をそれぞれ製造する。被覆材は、二軸式混合機(スクリュー外径:45mmφ,L/D=32)を用い、吐出ストランドを切断して、樹脂組成物をペレット化する方法により得る。
前記光ファイバコード50の構成に準じる実施例1〜3、比較例1〜2の光ファイバコード(緩衝層52:アラミドヤーン,シース層51の内径:1.4mm,シース層51の外径:2.0mm)を作製する。すなわち、ガラスファイバ11に被覆層12を設けた光ファイバ心線13を作製する。光ファイバ心線13に第一外部被覆層14及び第二外部被覆層15を設けて被覆光ファイバ心線10を作製する。その周囲にアラミドヤーンを添わせ、さらにその周囲にシース層(最外層)として被覆を押出し加工により形成して光ファイバコード50とする。実施例1〜3、比較例1〜2の光ファイバコードのシース層の素材には、それぞれ、前記実施例1〜3,比較例1〜2の被覆材が使用される。以下、光ファイバコード50に共通して使用される被覆光ファイバ心線10について説明する。
実施例及び比較例の光ファイバコードを60℃で14日間保存した後の色変化を観察する。
[湿熱試験]
実施例及び比較例の光ファイバコードを60℃・85%RHで14日間保存した後の色変化を観察する。
[難燃剤の水溶液のpH]
金属水酸化物1gを水溶液中100mlに溶かし込み(殆どが溶けないが上澄部分を分採)、その上澄水溶液をpHメーターで測定する。
実施例及び比較例の光ファイバコードに対して、UL1666に規定される試験装置を用いた1条ケーブル燃焼試験(VW−1燃焼試験)を実施する。試験条件は以下のとおりである。
試料:457mm×1条
バーナーガス種:メタン
バーナー炎:内炎40mm、外炎125mm
着火方法:15秒接炎→15秒離炎(5回繰り返す)
合格基準:前記着火方法を5回繰り返した後、試料が60秒以内に消火されるとともに、内炎の上方254mmに設置された旗(クラフト紙)および試験装置の下部に設置された脱脂綿が燃焼しなければ合格とする。
IEC−601034−2に準拠し、発煙試験を行った。発煙試験中の最小透過率が60%以上である時を「合格=○」とし、60%未満を「不合格=×」とした。
比較例1〜2の光ファイバコードは、高温試験、湿熱試験において変色があり不満足なものであった。
なお、実施例及び比較例の光ファイバコードの最外層の被覆層(シース)のベースポリマーは、ハロゲンを有さないことから、燃焼時に有毒ガスを発生しない。
この難燃剤(水酸化マグネシウム等)が、酸化防止剤がとの相互作用により分解、再結合して、変色の原因となる赤く発色する発色団を形成するものと考えられた。
なお、樹脂組成物がハロゲンを含む場合は、難燃剤(水酸化マグネシウム等)を入れないので酸化防止剤の変色の問題はなかった。
また、屋外で使用するケーブルは遮光のためシースを黒く着色(カーボンブラックなどを混入)するが、その場合、赤く変色しても目立たず、問題がない。
51 シース層(最外層)
Claims (2)
- 難燃樹脂組成物をシース層に使用した光ファイバコードであって、
該難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂とし、金属水酸化物と酸化防止剤を含有し、
前記ベース樹脂は、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを8:2〜4:6(重量比)で配合したものであり、
該酸化防止剤は、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が4級炭素であるとともに、構造中にアクリレート基を有することを特徴とする光ファイバコード。 - 前記難燃樹脂組成物が、前記ベース樹脂を100重量部、金属水酸化物を50〜300重量部、酸化防止剤を0.5〜3重量部含むことを特徴とする、請求項1の光ファイバコード。
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