JP4525387B2 - 光ファイバコード - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバコードに関する。より詳しくは、難燃樹脂組成物からなるシース層を有し、高い難燃性を有するとともに表面が経時的に赤く変色しない特性を有する光ファイバコードに関する。
光通信機器等の配線に用いられる光ファイバコードは、通常、伝送路を保護するためのシース層(被覆層)を有しており、シース層は、しばしば樹脂組成物から構成されている。
ノンハロゲン難燃性樹脂組成物としては、酢酸ビニル含有量25〜70質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリルゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されたハロゲンを含まない低結晶性または非晶性ポリマーをベース樹脂とし、このベース樹脂100重量部に対して、難燃剤として、金属水酸化物(より具体的には脂肪酸処理及び/又はシランカップリング処理が施された水酸化マグネシウム)を40〜300重量部、ベースポリマーに対して結晶性ポリマーを30重量部以下で添加してなるものが知られている(従来例1、特許文献1参照)。
また、(a)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂を含有してなる熱可塑性樹脂100重量部に対して、(c)有機パーオキサイド0.01〜0.6重量部、(d)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.03〜1.8重量部、並びに金属水和物および架橋性シランカップリング剤で前処理された金属水和物の混合物(B)50〜300重量部の組成であって、前記(a)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂を含有してなる熱可塑性樹脂の溶融温度以上で加熱・混練してなる難燃性樹脂組成物も開示されている(従来例2、特許文献2参照)。
従来例1および2によれば、前記樹脂組成物は、ハロゲンを含まないので燃焼時に腐食性ガスの発生がなく、高難燃性を有し、優れた絶縁電線、光ファイバケーブル、成形部品を提供するとされている。
特開2002−12771公報 特開2002−302573公報
ところで、本発明者らの検討によれば、従来例1および2の樹脂組成物をシース層とした光ファイバコードは、時間の経過とともに光ファイバコードの表面が赤く変色することが判明した。特に、白や黄色などの淡色のコードの場合変色外観不良の原因ともなる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、燃焼時に有毒ガスを発生しない特性を有し、高い難燃性を有するともに、表面が経時的に赤く変色しない特性を有する光ファイバコード、特に赤く変色することを防止した淡色の光ファイバコードを提供することである。
本発明に係る光ファイバコードは、難燃樹脂組成物をシース層に使用したものであって、
該難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂とし、金属水酸化物と酸化防止剤を含有し、
該酸化防止剤は、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであることを特徴とする。
より好ましくは、前記難燃樹脂組成物が、ポリオレフィンを100重量部、金属水酸化物を50〜300重量部、酸化防止剤を0.5〜3重量部、その他の添加材を1〜50重量部の割合で配合されたことを特徴とする。
より好ましくは、前記酸化防止剤が、アクリレート基を有することを特徴とする。
本発明によれば、燃焼時に有毒ガスを発生せず、環境に与える負荷が少なく、高い難燃性を有するとともに、表面が経時的に赤く変色しない特性を有する光ファイバコード、特に変色を防止した淡色の光ファイバコードを提供できる。
以下、本発明の光ファイバコードについて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る光ファイバコードは、難燃樹脂組成物をシース層に使用し、該難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂とし、金属水酸化物と酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤は、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであることを特徴とする。
本発明者らは、シース層の樹脂組成物中のハロゲンを含有しないベース樹脂に添加する酸化防止剤として赤色の発色団を作らない耐変色性に優れるものを用い、更に強い塩基性を示さない(弱塩基性の)難燃剤を用いることにより、本発明を完成するに至った。
本発明の光ファイバコードにおいて、シース層に使用する難燃樹脂組成物である、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エステル基、アクリル基、及びメタクリル基からなる群から選択される特性基を有する低結晶性又は非結晶性ポリマーと、融点が85℃以上のポリマー(コポリマーでも構わない、また架橋型でなくてもよい)とを含有するものが挙げられる。
また、このようなベースポリマーは、前記特性基を有する低結晶性又は非結晶性ポリマーを含有するので、光ファイバコードのシース層が燃焼された場合に、前記特性基によって炭化層の形成が促される。炭化層が形成されると光ファイバコードが一気に燃焼することが抑制されるので、炭化層の形成は燃焼試験をパスするのに有利に作用する。本発明の光ファイバコードは、金属水酸化物(後に詳述する)の燃焼時における吸熱性と、必要に応じて使用する難燃助剤(後に詳述する)の燃焼抑制効果とによってもたらされる難燃性に加えて、さらに、前記炭化層が燃焼の進行を抑制する効果が確実に付与されることにより、より難燃性に優れた光ファイバコードである。
また、低結晶性又は非結晶性ポリマー及び融点が85℃以上のポリマーは、ハロゲンを有さないことから、この実施形態に係る光ファイバコードの被覆層(シース層)は、燃焼時に有毒ガスを発生しない。
前記ベースポリマーを構成する前記特性基を有しかつハロゲンを有さない低結晶性又は非結晶性ポリマーとしては、1種以上のαオレフィン共重合体の混合物、またはαオレフィン共重合体とαオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂との混合物から構成され、前記αオレフィン共重合体の少なくとも1種の側鎖に、前記特性基を有している形態を好適に例示できる。
ここで本発明でいう「低結晶性又は非結晶性ポリマー」とは、結晶状態をとりえないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いポリマーを意味する。例えば、X線結晶化度が20%以下のものをいう。
前記低結晶性又は非結晶性ポリマーが1種のαオレフィン共重合体から構成される場合は、このようなαオレフィン共重合体としては、具体的には、エステル基を側鎖に有するものとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、アクリル基又はメタクリル基を側鎖に有するものとしてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)及びエチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等を好適に挙げることができる。
前記低結晶性又は非晶性ポリマーが2種以上のαオレフィン共重合体から構成される場合は、少なくとも1種は、前記特性基を有するαオレフィン共重合体となる。
また、低結晶性又は非結晶性ポリマーを構成しうるαオレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等が含まれる。
このようなベースポリマー中の、前記特性基を有する繰り返し単位構造の総量は、13〜27質量%であることが好ましい。13質量%未満であると、金属水酸化物との相溶性が低下し、炭化層が充分形成されないため難燃性が悪化したり、耐白化性が悪化する。また、27質量%を超えるとブロッキング特性が悪化する。
このような低結晶性又は非晶性ポリマーは、そのMFR値が小さいことが好ましい。具体的には、0.1〜30(g/min)が好ましく、0.1〜10(g/min)がより好ましい。
上記MFR値とは、JIS K7210−1995に記載された「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に従い、試験温度190℃、試験荷重21.18Nの条件で測定された値を意味する。
MFR値を30(g/min)以下とすることにより、光ファイバコードの押出加工性が良好(高速押出性・メルトフラクチャー等に由来する外観不良が発生し難くなる)になると同時に、光ファイバコードのブロッキング特性が優れたものとなる。ブロッキング特性に優れる理由としては、MFR値を小さくすることにより、前記特性基を有する低結晶性又は非晶性ポリマーの分子鎖の運動性が低下するためと推定される。
また、上記のようにMFR値を小さくすると、耐白化性に優れる。なお、「白化」とは、光ファイバコードに局所的な歪みを与えた時に、ベースポリマーを構成する分子鎖が引き伸ばされるように変形されるため、ベースポリマーと金属酸化物との間にマイクロクラックが入り、その結果光が散乱されるために起こると考えられることであって、光ファイバコードが白っぽく見えることである。この耐白化性が向上する理由としては、ベースポリマーの分子鎖同士の絡み合いが強くなり、分子鎖が変形しにくくなるためと推定される。
また、MFR値の下限を0.1(g/min)以上とすることにより、押出成形性が良好となる。
低結晶性又は非晶性ポリマーのMFR値は、例えば、構成するポリマーの平均分子量を変更することにより調整でき、ポリマーの分子量を大きくするとMFR値は小さくなる。具体的には、低結晶性又は非晶性ポリマーの平均分子量は、5万以上が好ましく、より好ましくは10万以上である。
上記ベースポリマーの別の成分として、ハロゲンを有さない融点が85℃以上のポリマーを含有する。
ここでいう融点とは、いわゆるDSC法に従って求める。すなわち、JIS K7122−1987(「プラスチックの転移熱測定方法」)に従い、所定のDSC装置を用いて、加熱速度毎分10℃で試料を加熱し、DSC曲線を描く。このDSC曲線の転移ピーク頂点における温度を融点とする。
前記融点が85℃以上のポリマーとしては、ハロゲンを有さない結晶性を有するポリマー又はハロゲンを有さない熱可塑性エラストマーが好適である。
前記結晶性を有するポリマーとしては、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)等を好適に挙げることができる。これらのポリマーを使用すれば、難燃性、ブロッキング特性および耐白化性をバランス良く向上させることができる。
また、融点が85℃以上のポリマーとして熱可塑性エラストマーを用いると、光ファイバコードに局所的な応力が付与された場合、応力が熱可塑性エラストマーのゴム部分に集中し、その結果樹脂マトリクス中への応力伝播を防ぐことができるので、前記した白化を抑制することができる。
なお、融点が85℃以上のポリマーとしてHDPE又はLLDPEを使用した場合は、前記特性基を有する繰り返し単位構造の総量を13〜27質量%とし、熱可塑性エラストマーを使用した場合は、16〜27質量%とすることが好ましい。これにより、一層優れたブロッキング特性および耐白化性を提供することができる。
融点が85℃以上のポリマーとして用いる熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)等が挙げられる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンをハードセグメントとし、ポリブタジエン,水添ポリブタジエン,ポリイソプレン等のジエンポリマーやエチレンプロピレンゴムをソフトセグメントとするブロック共重合体であり、ソフトセグメントがポリブタジエンとされたスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、ソフトセグメントがイソプレンとされたスチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、SBSを水素添加したスチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、ソフトセグメントがエチレンプロピレンゴムとされたスチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)を例示できる。また、ポリスチレンと結晶性ポリオレフィンのブロック共重合体である、スチレンエチレンブチレンオレフィン結晶共重合体(SEBC)を例示できる。これ以外に熱可塑ポリウレタンやポリエステル系エラストマーも例示できる。
TPOとしては、EPR、EPDM、NBR等のブロック共重合体、或いはポリプロピレンとのポリマーブレンド或いはアロイさせた樹脂を挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、PBT、PET等を挙げることができる。
該ベースポリマーにおいて、前記低結晶性又は非結晶性ポリマーと、融点が85℃以上のポリマーとの使用割合は、前者:後者(重量比)として、8:2〜4:6が好ましい。
また、該ベースポリマーは、ブロッキング温度が75℃以上であることが好ましい。
このブロッキング温度(後に詳述する)が75℃以上であると、高温下にさらされても、コードとコードが放置される基盤部との融着、およびコード同士での融着が起こりにくく、優れたブロッキング特性を有する光ファイバコードとすることができる。
また該ブロッキング温度は85℃以上がより好ましい。
ここで、「ブロッキング温度」は、以下の方法によって測定される温度と定義したものである。すなわち、光ファイバコード50mをコイル状に束ね巻回し(外径300mmφ程度)、例えば70〜100℃に72時間放置する。放置後、常温下に戻し、コードの被覆層同士のくっつきの有無を観察し、くっつきが見られない最高温度を2℃きざみに測定する。この最高温度をブロッキング温度と定義する。なお、「被覆層どうしのくっつき」は、接触させた被覆層同士を引き離した時に、被覆層表面に帯状の跡等が目視できるか否かによって判断されるのが望ましい。
該ブロッキング温度は、例えばベースポリマーに含まれる低結晶性又は非結晶性ポリマーや融点が85℃以上のポリマーの種類を変更したり、使用割合を変更することによって調整できる。
本発明に使用される難燃剤である金属水酸化物としては、弱塩基性を示すものが好ましく、脂肪酸処理、アミノシラン処理した水酸化マグネシウム・水酸化アルミニウムを好適に挙げることができる。
本発明に使用される酸化防止剤としては、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであるものである。
本発明に使用される酸化防止剤は、フェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が、4級炭素、硫黄またはリンであることにより、該酸化防止剤がキノン構造を有する赤色発色団をもつ構造に変化しない。故に、当該樹脂組成物は変色しない。
これに対し、酸化防止剤のOH基のP位に結合する原子が3級以下の炭素であれば、時間の経過とともに(或いはエージングの付与により)、酸化防止剤が分解および再結合され、キノン構造を有する赤色発色団が形成され、変色する。
また、本発明に使用される酸化防止剤は、フェノール分子団を含んでいれば、主鎖または側鎖に硫黄、リン等を含んでいても構わない。
また、本発明に使用される酸化防止剤はアクリレート基を有するものが好ましい。
アクリレート基を分子構造中に有することにより、直径10mm以下の局所的な曲げを付与してもシース層が白化せず、また90℃のような高耐熱環境でもシース同士のブロッキングも発生せずに、良好な伝送特性を得ることができる。その作用機構は、酸化防止剤のアクリレート基がベース樹脂中のコモノマー成分と一部架橋反応を起こし、耐熱性向上(85℃でもシース同士がブロッキングし難くなる)に寄与すると推定される。
本発明の光ファイバコードのシース層に使用される難燃樹脂組成物は、前述のベース樹脂、金属水酸化物および酸化防止剤以外の、その他の添加材を含有していてもよい。
その他の添加材としては、難燃助剤、滑剤等が挙げられる。
難燃助剤としては、ヒドロキシ錫酸亜鉛等の金属系難燃剤や、炭酸カルシウム、シリコーン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属ホウ酸塩等を好適に挙げることができる。特に、難燃助剤としてヒドロキシ錫酸亜鉛を採用する場合には、ベースポリマー100量部に対して30重量部以上添加するのが好ましい。
滑剤としては、シリコーンガム、タルク等を好適に挙げることができる。
また、本発明の光ファイバコードのシース層に使用される難燃樹脂組成物は、ポリオレフィンを100重量部、金属水酸化物を50〜300重量部、酸化防止剤を0.5〜3重量部、その他の添加材(滑剤、難燃助剤等)を1〜50重量部の割合で配合されたものであることが好ましい。
上記の配合割合によって、暗所・明所でも色相が変化せず、UL1666に記載されるライザーケーブル燃焼試験に相当する高難燃性と、IEC601034試験を満足する低発煙性を有するものとなる。
また、滑剤、難燃助剤等のその他の添加材が1〜50重量部の割合で配合させることにより、所望の機械物性を発現させることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバコードの模式断面図である。
本発明の実施形態に係る光ファイバコード50は、前記難燃樹脂組成物を被覆してなるシース層を最外層に有しており、より具体的には、被覆光ファイバ心線10の外周面に、さらに、緩衝層52とシース層51(最外層)とを被覆光ファイバ心線10から離れる方向で順に設けてなる(ルース構造)。被覆光ファイバ心線10の上にシース層51(最外層)を密着させる構造(タイトバッファ構造)も可能である。
ルース構造の光ファイバコードを安価に製造させるには、製造線速の高速化が必要である。但し、製造線速をアップさせる場合には、溶融した熱可塑性樹脂に高いせん断速度を付与させる必要がある。このせん断速度が高すぎる場合メルトフラクチャーの発生や、或いはメルトフラクチャーに似た表面荒れ(或いはシース層内面)が発生する。
シース層外面の荒れは外観不良となる。シース層内面の荒れは光コードの伝送損失悪化に繋がる。荒れたシース層の内面に抗張力繊維が局所的に引っかかりルースな状態を保つことができない状況が生じるからである。こうなると抗張力繊維内部に存在している光ファイバ心線に局所的に微小な歪が生じ、その結果光ファイバコードの伝送損失が悪化する。
そこで、これらを回避するために材料選定を進めた結果、ベース樹脂にポリオレフインを使用し、それに金属水酸化物を適当量配合した系、特にEVAとPE(LLDPEやHDPE)を用いることによって、シース層内外面の荒れを抑制することに至った。この構造により、外観不良を防ぎ、また、光コードならではの事情である伝送損失の改善をなすことができた。
光ファイバコード50としては、シース層51の内径が1.2mm以上2.4mm以下、シース層51の外径が1.7mm以上3.0mm以下とされた形態を好適に例示できる。
緩衝層52は、アラミドヤーン等の高抗張力繊維から構成されるのが好ましい。
被覆光ファイバ心線10は、図2の模式断面図に示すように、ガラスファイバ11の周囲に被覆層12が形成された光ファイバ心線13の外周面に、さらに、第一外部被覆層14と第二外部被覆層15とを光ファイバ心線13から離れる方向で順に設けてなる(外部被覆層を符号16で表す)。
第一外部被覆層14の25℃でのヤング率(以下、単に、ヤング率ともいう)は、好ましくは、1MPa〜50MPaである。第二外部被覆層15の25℃でのヤング率は、好ましくは、200MPa〜1000MPaである。
このように、第一外部被覆層14を、その外層である第二外部被覆層15よりも柔軟な層とすることによって、被覆光ファイバ心線10の外周面から受ける外界からの圧力が第二外部被覆層15で完全に吸収できない程に大きな力であっても、内層である第一外部被覆層14によって該圧力を緩衝させることができる。よって、ガラスファイバ11が圧力を受けることによる光伝送損失を抑えることができる。
第一外部被覆層14及び第二外部被覆層15は、樹脂組成物によって構成されている。そして、第一外部被覆層及び第二外部被覆層のヤング率は、樹脂組成物を構成する樹脂の種類及びその含有量、添加剤の種類及びその含有量を調整することにより、好適に前記範囲内とされる。
第一被外部覆層14を構成する樹脂組成物(以下、第一樹脂組成物という)の樹脂(以下、第一樹脂という)及び第二外部被覆層15を構成する樹脂組成物(以下、第二樹脂組成物という)の樹脂(以下、第二樹脂という)は、共に、ハロゲンを有さない樹脂(以下、ノンハロゲン樹脂という)であることが好ましく、これにより、燃焼時に有毒ガスを発生しない特性を付与できる。
第一樹脂は、ポリオレフィン熱可塑性樹脂から構成されるのが好ましく、より具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー等の1種もしくは2種以上の混合物を好適に挙げることができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、前掲のものを好適に例示できる。第一樹脂に使用されるポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、SBS,SEBS等の軟質グレードのポリスチレンが好ましい。
第二樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリフェニレンエーテルからなる群から選択される一種の樹脂または二種以上の樹脂の混合物を好適に例示できる。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、前掲のものを好適に例示できる。
ポリスチレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、スチレンのホモポリマー、一般用ポリスチレン(GPPS)、ポリスチレン中にスチレンブタジエンゴム等のゴム成分をドメインすることによって微分散してなる耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等を例示できる。
第二樹脂としては、複数のポリスチレン系熱可塑性樹脂成分からなるものが好ましい。少なくとも一つの成分がポリスチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。硬質グレードのGPPS,HIPS等が含まれている樹脂が特に好ましい。
また、第一樹脂組成物、及び、第二樹脂組成物は、それぞれ必要に応じて、光安定剤(HALS)、酸化防止剤(硫黄系酸化防止剤など)、滑剤、老化防止剤等の添加物を含有しても良い。光安定剤としては、LA−52(テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート:旭電化(株)製)などを、硫黄系酸化防止剤としては、シーノックス412S(ペンタエリスリトール・テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート))などを例示できる。光安定剤、硫黄系酸化防止剤を使用することにより、耐光性、耐湿熱性が増すので、好ましい。
また、添加物として、既知の可塑剤、軟化剤、ゴム軟化剤、プロセス油、エクステンダ油、架橋剤等の配合剤を添加する方法によって、第一外部被覆層14のヤング率及び第二外部被覆層15のヤング率を前記した範囲内に調整してもよい。ゴム軟化剤としては、パラフィン系オイル、非芳香族系ゴム軟化剤等を挙げることができる。
第一樹脂組成物、及び、第二樹脂組成物は、それぞれ、各樹脂組成物を構成する成分が混合されてなるのが好ましく、バンバリーミキサー、加圧型ニーダー、二軸混合機等の既知の溶融混合装置を用いて混合できる。
被覆光ファイバ心線10に使用される光ファイバ心線13は、図2に示すように、ガラスファイバ11の外周面に紫外線硬化型樹脂層12を設けてなる。具体的には、外径0.125mmのガラスファイバ11を紫外線硬化型樹脂からなる被覆層12で被覆した外径(Di)0.250mm〜0.260mmの公知の光ファイバ心線を好適に例示できる。ガラスファイバ11は、石英ガラスを主成分としたもの、また、被覆層12の樹脂としては、ウレタンアクリレート樹脂等が広く知られており、これらを制限なく使用できる。また、紫外線硬化型樹脂層12としては、物性値が異なる内層(第一紫外線硬化型樹脂層)と外層(第二紫外線硬化型樹脂層)とから構成されたもの(2層構造)や、最外層に着色層を有するもの(3層構造)なども知られており、これらも制限なく使用できる。
第一紫外線硬化型樹脂層のヤング率は0.5MPa〜2MPa、第二紫外線硬化型樹脂層のヤング率は10MPa〜1500MPa、着色層のヤング率は500MPa〜1500MPaとされるのが好ましい。
このようなヤング率を発現させるために、第一紫外線硬化型樹脂層の樹脂の製造においては、ポリエーテルジオールとイソホロンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてN−ビニルカプロラクタム,イソボニルアクリレート,ノナンジオールアクリレート,ノニルフェノールアクリレート、光重合性開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)、及び、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタン,γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランや2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコール等を適宜混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
第二紫外線硬化型樹脂層の樹脂の製造においては、ポリプロピレンオキシドグリコールとトルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてN−ビニルカプロラクタム,トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、光重合性開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)及びイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、並びに、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタン等を適宜混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
さらに、着色層も、通常、紫外線硬化型樹脂層の形態とされており、着色層の樹脂の製造においては、ビスフェノールAと2ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるエポキシアクリレートおよび/またはポリプロピレンオキシドグリコールとトルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、重合性不飽和モノマーとしてビスフェノールAエチレンオキサイド変性アクリレート,トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート,シリコンアクリレート、光重合性開始剤としてベンゾフェノン,ベンゾインエーテル、及び、その他の添加剤としてテトラキス{メチレン−3−(3−5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシキフェニル)プロピオネート}メタンを混合し、これに紫外線を照射して製造する形態が好ましい。
このように、第一紫外線硬化型樹脂層を柔軟な層とし、第二紫外線硬化型樹脂層を堅固な層とすることによって、光ファイバ心線13が受ける側圧(光ファイバ心線13の外周面から受ける外界からの圧力であって、特に、光ファイバ心線13に高抗張力繊維層52とシース層51とが設けられる前に受ける圧力)に対して、第二紫外線硬化型樹脂層で該圧力を吸収させ、また、該圧力が、第二紫外線硬化型樹脂層で完全に吸収できない程に大きな力であっても第一紫外線硬化型樹脂層で該圧力を緩衝させることにより、ガラスファイバ11が圧力を受けることによる光伝送損失を低減できる。
光ファイバ心線13を構成する各層の好ましい寸法を以下に示す。
ガラスファイバ11の外径:125μm
第一紫外線硬化型樹脂層までの外径:200μm
第二紫外線硬化型樹脂層までの外径:245μm
着色層までの外径:255μm
本発明の実施形態に係る被覆光ファイバ心線10においては、第一被覆層14までの直径(Dp)が350μm〜600μm、第二被覆層15までの直径(Ds)が850μm〜950μmとされた形態を好適に例示できる。
光ファイバコード50は、最外層の降伏点伸び(JISK7113で規定される引張試験において)は5〜40%であることが望ましい。降伏点伸びをこのように設定することにより、難燃性と耐白化性を高いバランスで付与することができ、なおかつ光ファイバコードを細径に曲げた時の曲げ癖を付き難くすることができる。またヤング率(23℃)は、50〜400MPaが好ましい。ここで、ヤング率は、JIS K 7113に準じ、2号型試験片を使用して2.5%割線方式を採用して得られる値である。
光ファイバコード50は、以下に定義される温度変化ロス(dB/km)が0.1dB/km以下となるように構成されることが好ましい。
温度変化ロス(dB/km):「−40℃(6時間保持)〜85℃(6時間保持)」を繰り返すヒートサイクル曝露試験中の伝送損失量(波長:1.55μm,単位:dB/km,試験開始直後の伝送損失量を含む)の最大伝送損失量と最小伝送損失量との差分
前記規定は、ベースポリマーとして比較的、線膨張係数の小さい樹脂(望ましくは3.0×10−4(1/K)以下)を採用することにより達成し得る。これにより、特に、環境適応特性(温度の変動によっても、光伝送特性を高次元で維持する特性)に優れた光ファイバコードとすることができる。
また、光ファイバコード50は、100℃,24時間の加熱処理を施した場合に、加熱後における最外層の被覆層(シース層)の加熱収縮率が1%未満となるように構成されるのが好ましい。ここで、最外層の被覆層の加熱収縮率の測定においては、光ファイバコード50より、光ファイバ心線13と高抗張力繊維層52とを除去してなるチューブ形状の被覆層(シース層)を使用する。加熱収縮率は、以下の式で規定される。
被覆層の加熱収縮率(%)=[加熱処理後の被覆層の長さ]/[加熱処理前の被覆層の長さ]×100
前記条件は、ベースポリマーとして比較的、結晶性が小さく加工温度の低い樹脂を採用することにより達成し得る。加熱収縮率が前記条件を満たすことにより、前記被覆層の意図しない収縮によって、ガラスファイバ11が所定の位置からずれたり、ガラスファイバ11に対して応力が印加されたりして光伝送特性が低下する虞れを確実に低減できる。
[被覆材の製造]
EVAとLLDPEとを7:3の比率で混合してなるベースポリマー100重量部に対して酸化防止剤(全て1重量部)と金属水酸化物(難燃剤)とを表1に示す組成で添加し、実施例1〜3,比較例1〜2のシース層に使用する被覆材をそれぞれ製造する。被覆材は、二軸式混合機(スクリュー外径:45mmφ,L/D=32)を用い、吐出ストランドを切断して、樹脂組成物をペレット化する方法により得る。
Figure 0004525387
[光ファイバコードの作製]
前記光ファイバコード50の構成に準じる実施例1〜3、比較例1〜2の光ファイバコード(緩衝層52:アラミドヤーン,シース層51の内径:1.4mm,シース層51の外径:2.0mm)を作製する。すなわち、ガラスファイバ11に被覆層12を設けた光ファイバ心線13を作製する。光ファイバ心線13に第一外部被覆層14及び第二外部被覆層15を設けて被覆光ファイバ心線10を作製する。その周囲にアラミドヤーンを添わせ、さらにその周囲にシース層(最外層)として被覆を押出し加工により形成して光ファイバコード50とする。実施例1〜3、比較例1〜2の光ファイバコードのシース層の素材には、それぞれ、前記実施例1〜3,比較例1〜2の被覆材が使用される。以下、光ファイバコード50に共通して使用される被覆光ファイバ心線10について説明する。
被覆光ファイバ心線10を構成する光ファイバ心線13は、石英ガラスを主成分とするガラスファイバ(外径125μm)の外周に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層(ウレタンアクリレート樹脂層)を設けてなる光ファイバ心線(外径250μm)を使用する。被覆層は、第一紫外線硬化型樹脂層と第二紫外線硬化型樹脂層と着色層とからなる三層構造であり、第一紫外線硬化型樹脂層までの外径は200μm、第二紫外線硬化型樹脂層までの外径は245μm、着色層までの外径は255μm、第一紫外線硬化型樹脂層のヤング率は1MPa(25℃)、第二紫外線硬化型樹脂層のヤング率は400MPa(25℃)、着色層のヤング率は1100MPa(25℃)である。被覆光ファイバ心線10を構成する第一被覆層14はポリスチレン(SEBS)とPPEとを65:35で混合した樹脂をベースポリマーとし、そのヤング率は20MPa(25℃)、第二被覆層15はポリスチレン(GPPS)とPPEとを65:35で混合した樹脂をベースポリマーとし、そのヤング率は800MPa(25℃)である。また、第一被覆層14までの直径Dpは600μm、第二被覆層15までの直径Dsは900μmである。ヤング率(2.5%割線方式)の測定(25℃)は、JIS K 7113に準じる。
各光ファイバコードの高温試験、湿熱試験、難燃剤の水溶液のpH、難燃性及び発煙性試験を下記の試験方法により測定した。結果を表1に示す。
[高温試験]
実施例及び比較例の光ファイバコードを60℃で14日間保存した後の色変化を観察する。
[湿熱試験]
実施例及び比較例の光ファイバコードを60℃・85%RHで14日間保存した後の色変化を観察する。
[難燃剤の水溶液のpH]
金属水酸化物1gを水溶液中100mlに溶かし込み(殆どが溶けないが上澄部分を分採)、その上澄水溶液をpHメーターで測定する。
[難燃性]
実施例及び比較例の光ファイバコードに対して、UL1666に規定される試験装置を用いた1条ケーブル燃焼試験(VW−1燃焼試験)を実施する。試験条件は以下のとおりである。
試料:457mm×1条
バーナーガス種:メタン
バーナー炎:内炎40mm、外炎125mm
着火方法:15秒接炎→15秒離炎(5回繰り返す)
合格基準:前記着火方法を5回繰り返した後、試料が60秒以内に消火されるとともに、内炎の上方254mmに設置された旗(クラフト紙)および試験装置の下部に設置された脱脂綿が燃焼しなければ合格とする。
[発煙性試験]
IEC−601034−2に準拠し、発煙試験を行った。発煙試験中の最小透過率が60%以上である時を「合格=○」とし、60%未満を「不合格=×」とした。
表1の結果から明らかなように、実施例1〜3の光ファイバコードは、変色がなく、高温試験、湿熱試験、難燃剤の水溶液のpH、難燃性及び発煙性試験の全てに優れる。
比較例1〜2の光ファイバコードは、高温試験、湿熱試験において変色があり不満足なものであった。
なお、実施例及び比較例の光ファイバコードの最外層の被覆層(シース)のベースポリマーは、ハロゲンを有さないことから、燃焼時に有毒ガスを発生しない。
ところで、従来の技術において、ノンハロゲン難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないベース樹脂に、ハロゲンを含有しない難燃剤を配合することで難燃性を発現させており、難燃剤として水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を多量に配合した材料が使用されている。
この難燃剤(水酸化マグネシウム等)が、酸化防止剤がとの相互作用により分解、再結合して、変色の原因となる赤く発色する発色団を形成するものと考えられた。
なお、樹脂組成物がハロゲンを含む場合は、難燃剤(水酸化マグネシウム等)を入れないので酸化防止剤の変色の問題はなかった。
また、屋外で使用するケーブルは遮光のためシースを黒く着色(カーボンブラックなどを混入)するが、その場合、赤く変色しても目立たず、問題がない。
本発明の実施形態に係る光ファイバコードの模式断面図である。 被覆光ファイバ心線の模式断面図である。
符号の説明
50 光ファイバコード
51 シース層(最外層)

Claims (2)

  1. 難燃樹脂組成物をシース層に使用した光ファイバコードであって、
    該難燃樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリオレフィンをベース樹脂とし、金属水酸化物と酸化防止剤を含有し、
    前記ベース樹脂は、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを8:2〜4:6(重量比)で配合したものであり、
    該酸化防止剤は、フェノール分子団を含み、このフェノール分子団内のOH基のパラ位にある炭素原子と結合する原子が4級炭素であるとともに、構造中にアクリレート基を有することを特徴とする光ファイバコード。
  2. 前記難燃樹脂組成物が、前記ベース樹脂を100重量部、金属水酸化物を50〜300重量部、酸化防止剤を0.5〜3重量部含むことを特徴とする、請求項1の光ファイバコード。
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