JP2004251673A - 生体物質および化学物質の光学的測定装置および光学的測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】近赤外領域および赤外領域において、血液または生体組織中に含有される生体物質および体内に侵入・付着した化学物質を非侵襲的に迅速かつ正確な検出、定性および定量の可能な光学的測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】血液中または生体組織内に含有される生体物質の定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)音響光学可変振動フィルターにより出力された波長800〜4 000nmの近赤外領域および赤外領域の光を被測定対象物に照射する照射手段と、
2)前記照射工程により照射され前記被測定対象物を透過または反射した光を波長2000nm以下に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光材料からなる受光素子により受光し、吸光度スペクトルを得るためにその出力を光電交換する光電交換手段を少なくとも含むことを特徴とする生体物質等の非侵襲性光学的測定装置。
【選択図】 図2
【解決手段】血液中または生体組織内に含有される生体物質の定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)音響光学可変振動フィルターにより出力された波長800〜4 000nmの近赤外領域および赤外領域の光を被測定対象物に照射する照射手段と、
2)前記照射工程により照射され前記被測定対象物を透過または反射した光を波長2000nm以下に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光材料からなる受光素子により受光し、吸光度スペクトルを得るためにその出力を光電交換する光電交換手段を少なくとも含むことを特徴とする生体物質等の非侵襲性光学的測定装置。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の非侵襲性または侵襲性光学的測定装置および光学的測定方法に関するものであり、さらに詳しくは、血液、血清、細胞外液、細胞内液、細胞透過液、唾液、間質液、涙、汗、尿、その他の体液、細胞、血球、リンパ球、その他の生体組織内に含有され、近赤外領域および赤外領域のいずれかの領域に光吸収帯を有する生体物質および化学物質(本明細書において、これらの物質を総称して「生体物質等」ということがある。)を対象とし、音響光学可変振動フィルターからの光を利用して迅速な検出、定性および定量分析を行なう非侵襲性または侵襲性光学的測定装置および光学的測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体物質の光学的測定装置として、開発されている非侵襲的な検出および診断に用いられる定性および定量装置は、血液中のヘモグロビンを対象とした光学的測定装置が実用化されているにすぎない(例えば、特開2002−107291号公報参照。)。
【0003】
また、血液等を試料とする血液成分の侵襲的な検出および診断に頻度高く一般に用いられる測定方法であっても、
(1)診断に要する時間が長いという難点がある。短かくても数10分または数10分以上を要するものが多く、長いものは一昼夜を要する診断もある。
(2)近年、診断の多項目化が進んでおり、そのため多量(例えば、通常の診断で5ml採血用真空ガラス管が2〜3本必要となる。)の採血が行なわれているが、採血には痛みを伴なうばかりでなく、感染のおそれが生じるため、その防止の対策が必要となる。また、採血器具および診断後のキットの廃棄等の医療廃棄物も大量産生するという問題も生ずる。
【0004】
さらに、
(3)生体組織内の生体物質等を対象とする診断の操作が多段階となり、かつ操作が複雑であるため、熟練を要する方法が多く、その結果、測定精度に難点を包蔵するものが多い。
(4)前記の如き状況から従来採用されている生体組織内に含有される生体物質等の測定方法は、通常、長時間を要し、しかも高コストとなることが避けられない。
【0005】
しかしながら、かかる問題点を背景に、例えば、特許文献1(特開平11−64218号公報)には、生体組織中の体液成分の濃度、または血液、細胞液、唾液等の体液中のコレステロール、中性脂肪、アルブミン等の成分の濃度の定量方法として、1480〜1880nmの波長領域にわたる近赤外領域におけるCH基、OH基およびNH基由来の光の吸収を利用した方法が提案されており、被測定物質の吸光スペクトルを利用するものであるが、やはり長時間を要し、また操作が煩雑のものであり、迅速な検出、定性および定量が実用可能な段階には達していない。
【0006】
また、特許文献2(特開平5−176917号公報)によれば、波長380〜1320nmの近赤外光を用いて人体内のグルコース濃度を非侵襲的に測定する光学的測定方法が提案されている。
しかしながら、前記の特許文献1に記載の方法と同様に迅速な診断を行なう点については解決されていない。また、測定装置が大型になることが避けられない。
【0007】
また、前記の如き提案は、体液その他生体組織中に含有される生体物質を含めた広範囲の生体物質等の検出、定性および定量分析については開示がなく、もちろん示唆するものもない。
前記の如き開発状況下において、体液または生体組織内の前記の如き各種の生体物質の迅速かつ簡便で正確な光学的測定装置であって、特に、非侵襲的測定が可能な測定装置の開発が切望されてきた。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−64218号公報
【特許文献2】
特開平5−176917号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、前記の如き事情に鑑み、前記問題点を解消させるねらいから、近赤外領域および赤外領域のいずれかの領域に光吸収帯をもつ生体物質等の定性分析および定量分析を迅速かつ簡便に行なうことができ、現場において前記生体物質等の測定が可能な光学的測定装置および測定方法を提供することにあり、また、特に人体内の末梢血管および生体組織等を対象とする生体物質等の可能な光学的測定装置であって、外科的な侵襲的方法でしか検出および診断ができなかった生体の異常細胞、成分、血液中の異常の判別を可能とした非侵襲性光学的測定装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、前記の課題を解決するため、鋭意検討を重ねたところ、体液および生体組織内の微量な生体物質等が有する吸光による信号をとらえ、増幅することにより多変量解析を可能とし、さらに、所望の生体物質等以外の生体物質の信号を排除し、適正化すれば定量的に可能であることに着目し、被測定物質の光吸収波長領域に適合させた波長の光を音響光学振動フィルターを用いることによりかかる課題を容易に達成できることを見出し、これらの知見に基いて本発明の完成に到達した。
【0011】
すなわち、本発明によれば、
体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含むいずれかの波長領域において、前記生体物質または化学物質が有する少なくとも一つの光吸収帯に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力する出力手段と、
2)前記出力手段により出力された光を前記生体組織からなる被測定対象物上に照射する照射手段と、
3)前記照射手段により照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を受光する800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子からなる受光手段と、
4)前記受光手段の出力信号を光電変換する信号処理手段と、
5)前記信号処理手段により光電変換された検出信号に基づいて、吸光スペクトルを解析・演算することにより前記生体物質および化学物質を検出、定性または定量する生体物質等濃度算出手段と、該算出結果の表示手段とを少なくとも備えることを特徴とする体液、細胞その他生体組織内に含有される生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置
が提供される。
【0012】
本発明によれば、体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含むいずれかの波長領域において、前記生体物質または化学物質が有する少なくとも一つの光吸収帯に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力する出力手段と、
2)前記出力手段により出力された光を前記生体組織から採取した試料からなる被測定対象物上に照射する照射手段と、
3)前記照射手段により照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を受光する800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子からなる受光手段と、
4)前記受光手段の出力信号を光電変換する信号処理手段と、
5)前記信号処理手段により光電変換された検出信号に基づいて、交差検証法および部分最小二乗法により吸光スペクトルを解析・演算することにより前記生体物質および化学物質を検出、定性または定量する生体物質等濃度算出手段と、該算出結果の表示手段とを少なくとも備えることを特徴とする体液、細胞その他生体組織内に含有される生体物質および化学物質の侵襲性光学的測定装置
も提供される。
【0013】
また、本発明によれば、体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定方法であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含む波長領域に少なくとも一つの光吸収帯を有する前記生体物質および化学物質を含有する被測定対象物を採取する工程と、
2)前記工程により採取された被測定対象物に対し、前記生体物質または化学物質の光吸収帯が属する波長領域に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターを用いることにより出力し、照射する照射工程と、
3)前記照射工程において照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子により受光し、電気信号に変換する受光工程とを、少なくとも含むことを特徴とする生体物質および化学物質の光学的測定方法
が提供される。
【0014】
本発明は、前記の如く、体液、細胞その他の生体組織中に含有される生体物質等の非侵襲性光学的測定装置および光学的測定方法に関するものであるが、さらに好ましい実施の態様として次の1)〜7)に掲げるものを包含する。
1)▲1▼高周波発生装置にて発生した高周波がピエゾ素子に印加される該ピエゾ素子から音響光学可変振動フィルターに音響振動が加えられ、該音響光学可変振動フィルターに光が入射され波長800〜4000nmの近赤外光および赤外光が分光される分光手段と、
▲2▼前記近赤外光および赤外光を被測定対象物に照射する照射手段と、
▲3▼前記近赤外光および赤外光が照射され、該被測定対象物を透過または拡散反射した光を波長800〜4000nmの範囲にそれぞれ異なる極大の分光感度特性を有する二種以上の伝導材料からなる受光素子に受光し光電変換する光電変換手段と、
▲4▼前記光電変換手段により光電変換された検出信号に基づいて得られた吸光度スペクトルを解析、演算することにより生体物質濃度を定量する生体物質濃度算出手段
からなる生体物質の非侵襲性光学的測定装置。
【0015】
2)前記光電交換手段の受光素子が、PbS、InAs、GaAs、InSb、Ge:AuおよびInGaSから選択される2種以上の組合せからなる前記生体物質等の非侵襲性光学的測定装置。
3)前記照射手段における被測定対象物が指、腕、耳朶、唇その他の体表組織の皮下の血管または組織であり、総コレステロールおよび遊離コレステロール等のコレステロール類、中性脂肪、ビリルビン、尿素、尿酸、エチルアルコールその他のアルコール類を測定の対象とする生体物質等の前記非侵襲性光学的測定装置。
4)前記被測定対象物が、人体から採取された血液、尿、間質液、唾液、涙または汗である前記生体物質等の光学的測定方法。
【0016】
5)前記被測定対象物が、人体から採取した細胞、組織、血球またはリンパ球である前記生体物質等の光学的測定方法。
6)前記被測定対象物が、ビスフェノール類、ダイオキシン、ポリ塩化ビニール類、フタル酸類、コカイン、モルヒネおよび麻薬類を含有または付着した人体外表部である前記化学物質の光学的測定方法。
7)前記中性脂肪の含有量の測定基準が、波長1720nm、1755nm、2170nmおよび2340nmにおける吸光スペクトルである前記非侵襲性光学的測定装置。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る光学的測定装置を用いる測定方法の対象とする生体物質および化学物質は、体液、細胞その他生体組織中に本来含有される成分、または外部から付着または侵入した化学物質等である。
【0018】
体液は、生体組織内に含まれる種々の機能的に異なった液体を総称したものであり、細胞外液および細胞内液に区分されるが、本明細書においては、具体的には、血液、血清、細胞液、間質液、唾液、涙、汗、尿等を包含したものを意味している。
また、前記生体組織は、正常細胞のほか、ガン細胞、アミロイド組織、リウマチ組織等の異常細胞または組織をも含むものとして使用される。
【0019】
本発明に係る光学的測定装置および測定方法において、体液、細胞その他の生体組織は、被測定対象物として用いられ、該被測定対象物中に含有される生体物質および化学物質が検出、定性および定量の対象とされる。
かかる生体物質等の光学的測定装置は、皮膚の上から行なう非侵襲的測定に供されるものであり、直接測定が可能な生体物質として次のものを表1に例示することができる。下表に示すように各生体物質は、それぞれの測定に利用可能な波長を採用することにより測定することができる。
【0020】
【表1】
【0021】
前記コレステロール類には総コレステロール、HDL−またはLDL−コレステロール、遊離コレステロールが含まれる。また、表1に示す生体物質のほか、尿素、ビリルビン、リポ蛋白質、リン脂質、エチルアルコール等も非侵襲的に測定することができる。
【0022】
また、生体物質等の非侵襲的測定装置においては、被測定対象物として皮下の末梢血管を静脈および動脈を問わず対象とすることができ、指、腕、耳朶、唇、その他の体表組織等を用いることができる。
また、体液、細胞その他の生体組織内に侵入し含有するか、または外部に付着する化学物質であって、非侵襲的測定が可能なものとして次のものを例示することができる。
【0023】
【表2】
等を挙げることができる。
【0024】
本発明に係る非侵襲性光学的測定によれば、前記生体物質等は、微量でも測定が可能であり、nmol〜μmol程度まで定量することができる。
前記生体物質等の侵襲的測定は、採血または生体組織の試料採取を必要とするが、高精度の測定結果を迅速に得ることができる。例えば、TNT化薬、ダイオキシン等のガスクロストグラフィーなどで長時間を要する検出も本発明によれば、1秒以下の短時間で可能である。
【0025】
本発明の生体物質の光学的測定装置に係る照射手段は、音響光学可変振動フィルターにより出力された波長範囲800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域の光を被測定対象物に照射する手段からなる。
すなわち、前記照射に用いられる近赤外光および赤外光は、音響光学可変振動フィルターにより出力されたものが好適であり、音響光学可変振動フィルターの使用を構成要素とする近赤外光および赤外光分光手段を備えたものが好ましい。
【0026】
音響光学可変振動フィルターの使用を構成要素とする近赤外光および赤外光分光手段を有する照射手段は、(i) 一または二以上の光源と、(ii)該光源から光が入射される音響光学可変振動フィルターと、(iii) 該音響光学可変振動フィルターに音響振動を加える高周波振動子と、(iv)該高周波振動子に高周波を印加する高周波発生装置とから構成される。具体的には図1に例示されるように高周波電源1、高周波振動子2、音響光学可変振動フィルター3および光源4とから構成されるものが好ましい。
【0027】
図1で示すように、高周波発生装置1は、任意に制御できる高周波の発生能力を有するものである。また、高周波振動子2は音響光学可変振動フィルター3に音響振動を与えるものであり、ピエゾ素子が用いられる。ピエゾ素子に印加する高周波としては、音響光学可変振動フィルターの媒質の種類および性能等にも依存するが、波長範囲800〜2400nmの近赤外光および2400〜4000nmの赤外光が分光されるように制御すればよく、30〜100MHz、特に30〜80MHzが好ましい。光源4としては、タングステン−ハロゲンランプ等が用いられるが、これに限定されるものではなく、発光ダイオード、レーザーダイオード等の半導体ダイオードも用いることができる。
【0028】
すなわち、前記照射手段は、
(i) 高周波振動子に高周波を印加する手段と、
(ii)前記工程(i)にて高周波を印加された高周波振動子が音響光学可変振動フィルターに音響振動を加える手段と、
(iii)前記工程(ii)にて音響振動を加えられた音響光学可変振動フィルターに光源から光を入射し、波長800〜4000nmの範囲の近赤外光および赤外光を出力させる手段と
からなる手段の組合せからなる生体物質の光学的測定装置が提供される。
【0029】
音響光学可変振動フィルター3の媒質は、複屈折結晶分光材料からなるものである。音響光学可変振動フィルターにおいては、音響振動が該複屈折結晶に加えられると周期的な密度の変化が生じ、密度の変化による屈折率の変化が音響振動の方向に波状的に伝搬する。従って、そこへ光が入射されると各波面の屈折率に基づく一部の光線が反射する。各々の光路長の差が生じ、近赤外光および赤外光が出力されるように設計される。
【0030】
複屈折結晶分光材料としては、前記生体物質等の測定には波長範囲800〜4000nmの連続的に微細分割された照射光の出力可能な複屈折結晶分光材料を選択すればよい。例えば、a−シリカ(a−SiO2 )、二酸化テルル(TeO2 )、ニオビウム酸リチウム(LiNbO3 )、タリウム酸リチウム(LiTaO3 )、リン化ガリウム(GaP)、モリブデン酸鉛(PbMoO4 )、ゲルマニウム(Ge)、リン化インジウム(InP)、セレン化ヒ素タリウム(Ti3 AsSe3 )、石英ガラス(SiO2 )、方解石(CaCO3 )、水(H2 O)等を挙げることができるが、近赤外光および赤外光の波長を微細分割した光が得られるように材料の種類、組成等を制御したものが好ましく、特に、α−シリカ、二酸化テルル等が好ましい。
【0031】
かかる複屈折結晶分光材料を用いることにより得られる近赤外光および赤外光の人体への照射により生体物質等の濃度算出に有効な吸光度スペクトルを形成させることができる。本発明の光学的測定装置において用いられる光学的測定装置に採用される好適な音響光学可変波長フィルターとしては、例えば、米国特許第5,120,961号明細書および特公表10−512678号公報等に記載されている米国IFS社製超音波光学チューナブルフィルター(AOTF)および米国Brimrose社製AOTFを挙げることができる。
【0032】
照射光の波長は、表1および表2に掲げるように生体物質等が有する吸収帯がカバーされるように近赤外および赤外領域の800〜4000nmの範囲から選定される。具体的には、照射光の波長は、生体物質の少なくとも2ヶ以上の吸収ピークを示すスペクトルをカバーするよに設定される。例えば、中性脂肪の非侵襲的測定によれば、AOTFにより出力された波長1472〜2200nmの範囲の照射光が用いられ、該照射光を指の皮下末梢血管に対して、照射し得られた波長1720nm、1755nmおよび2170nmの少なくとも3ヶの吸収スペクトルに関するデータを採用し、演算手段に供給される。
【0033】
図4に中性脂肪の吸収スペクトルを示す。
中性脂肪は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールであり、いずれもグリセロールと脂肪酸のエステルであるが、ヒトの脂肪細胞に含まれる中性脂肪はトリアシルグリセロールが多い。本発明によれば、血中のかかるトリアシルグリセロールを非侵襲的に精度よくかつ迅速に測定することができる。
【0034】
また、照射手段において、被測定対象物に照射される波長範囲の近赤外光および赤外光の波長を連続的に微細分割した光は、分解能が0.8nm以下の微細な分光であり、波長分解としては1nm以下のものが好ましい。このように微細に分割した光を照射光とすることにより多点計測が可能であり、スペクトルの2次微分等により、部分最少二乗法等の処理を経て、目的とする物質の特異的な吸収変化を捉えることができる。この多点計測により、各種生体物質の吸光現象を詳細に捉えることに成功した結果、総合的な解析ができるので生体物質濃度の正確な算出が可能となる。計測点数としては、例えば、最低200点、通常、数百点を選択することができる。
【0035】
次に、照射手段において採用される照射光の照射方式について説明する。
照射方式として次の三種の方式を挙げることができる。すなわち、
▲1▼第1の方式:前記照射光が、被測定対象物に照射され、該被測定対象物を透過した光を直接受光素子に集光する透過方式、
▲2▼第2の方式:前記照射光が、被測定対象物に照射されたのち、該被測定対象物の拡散反射した反射光のみを集光する方式と、該被測定対象物を透過した光を該被測定対象物の背面側に設置された反射板で反射させ、前記被測定対象物を再度透過させた光を受光素子に集光する透過反射方式 および
▲3▼第3の方式:前記照射光が、被測定対象物に照射され、被測定対象物を透過した光を該被測定対象物の背面側に設置された反射板で拡散反射させ受光素子に集光する拡散反射方式
の方式があり、いずれの方式も採用することができるが、第2の透過反射方式が装置面および操作上簡便である。
【0036】
本発明に係る光学的測定装置における受光手段は、前記照射手段により被測定対象物に照射され、該被測定対象物を透過または反射した光を受光素子で受光し、電気信号を発信し、次の信号処理工程に供給するものである。受光素子は、分光感度特性の異なる2種以上の半導体からなる受光材料が好ましく、通常、CdS、Si、GaAsS、InS、PbS,InSb、PbSe、Ge等を挙げることができるが、照射波長900nm領域ではSi、GaAs、1000〜2000nm領域ではGaInAs、2000から3000nmではPbSe、PbS等が選択される。また、受光手段にダイオードアレイを用い、各波長を同時に測定する場合に、アレイ上で複数の波長を測定することが可能であり、かつ同波長におけるノイズ除去に用いて比較することも可能である。
【0037】
しかし、受光材料としては、前記透過光を効率よく集光することができる材質のものを採用することが好ましい。近赤外光および赤外光を効率よく分光し、受光するためには、波長2000nm以下、特に1000nm以下に極大の分光感度特性(波長に対する比検出度 (cm(Hg)1/2W−1) (H. Melchiev. Laser Hand book I, P726 参照。) を有する光伝導材料を選択することが好ましい。具体的には、硫化カドミウム(CdS)、ヒ化インジウム(InAs)または硫化インジウムガリウム(InGaS)等が使用される。かかる受光材料を選択使用することにより、AOTFによる照射手段による迅速性と相伴って高精度な測定結果を得ることができる。受光素子は、具体的には、分光感度特性が、互いに異なるものであって、ピーク波長がそれぞれ、800nmおよび2100nmのものを2種以上組合わせることにより構成されるものが好適である。
【0038】
本発明に係る前記生体物質の非侵襲的な光学的測定装置は、以上説明したようにAOTFの出力範囲と特定の受光性能を有する受光材料からなる受光素子との特定の組合せを一つの要因とし、これにより達成できたものである。
前記生体物質濃度算出手段は、前記吸光度スペクトルを解析演算して生体物質濃度に換算するものであり、演算電子回路および解析電子回路から構成される手段を用いることができる。図1で示すように、受光素子10にて光電変換された検出信号eがスペクトル波形解析・演算手段11に入力され、演算電子回路および解析電子回路にて次に述べる解析・演算が行なわれる。
【0039】
以上述べたように本発明の光学的測定装置および測定方法においては、前記音響光学可変振動フィルターを組み入れた点および受光材料を特定のものに選定した点が構成上の特異点であり、生体組織中の生体物質等の迅速かつ高精度な計測を可能としたものであって、これにより、具体的には5000点/秒程度の計測速度を達成することができる。計測は各波長において数回〜数10回の繰り返し計測を行なって平均値を採取し、また、設定波長範囲を数回〜数10回走査して平均値を採取することにより計測データの確度を高めることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。もっとも本発明は実施例等により限定されるものではない。
本発明に係る光学的測定装置は、高周波電源(高周波50MHz)、ピエゾ素子、音響光学可変振動フィルター(IFS社(米国メリーランド州)製AOTF)、受光素子(光伝導材料;InAsおよびInGaSの2種の組合せ)、吸光度スペクトル波形解析回路および演算回路を用いて図1の機器構成に従い作製した。
【0041】
実施例1(血中コレステロール類の測定)
15名の被検者を対象として前記光学的測定装置の指挿入部に人差し指を挿入し固定した。
波長を1200〜2400の範囲に設定し、照射光を指先の皮下の末梢血管に照射し、血液全体のスペクトルを測定した。吸収スペクトル上に現れた極大ピーク1720nm、1755nmおよび2170nmの3波長をコレステロール類の測定用波長とした。
前記光学的測定後、直ちに被検者から、それぞれ約1mlの血液を採取し、化学的*)に定量し、実測値とした。
*)化学的測定方法:和光純薬工業(株)の総コレステロール測定用「コレステロールEテスト」(コレステロールオキシダーゼ・ADOS法)を採用した。
【0042】
前記光学的測定において、吸光度スペクトルから得られた受光素子からの信号をデータとして、多変量解析による演算を行うに際し、より誤差の少ない演算とするため、血中に存在する水分および血清アルブミンの吸収極大付近において寄与する光学濃度を演算する処理をした。その後、2次微分による吸収極大付近の信号を拾うことにより、交差検証法、部分最小二乗法による多変量解析アルゴリズムから血中コレステロールの定量的予測を行ったところ相関関数80%〜96%の精度を得た。
図2に前記化学的測定による実測値と光学的測定による定量的予測値を示す。
同図から本発明に係る光学的測定による測定結果は、「コレステロールEテスト」による実測値と高度の相関関数を有することが判明した。
【0043】
実施例2(中性脂肪の測定)
15人の被検者の血中中性脂肪を本発明による光学的装置を用い非侵襲的に測定した。この中性脂肪の測定では、オレイン酸の近赤外領域で示す、吸収極大1720nm、1755nmおよび2170nmを用い、リノレイン酸では、オレイン酸と同じ三つの吸収極大とした。このため、中性脂肪量として、オレイン酸およびリノール酸の合計量として算出して、定量予測することができた(図4にスペクトルを示す。)。両者で血中中性脂肪量の80%を占めるものと仮定した。
【0044】
測定方法は、実施例1と同様であるが、15人の被検者から光学的測定と同時にそれぞれ1.0mlを採血し、中性脂肪であるオレイン酸およびリノレイン酸の実測値として、日立高速液体クロマトグラフィー(L7000)により血清中の両者の含量を加算し算出したものを用いた。図−3に中性脂肪量としてのオレイン酸およびリノレイン酸の定量的な予測例を示した。
【0045】
図3から、本発明に係る光学的測定は、HPLCによる実測値と高度の相関関数を示すことが判明した。
図4の中性脂肪の吸光スペクトルは、次の方法*)により中性脂肪粉末に照射して得られたものである。波長1200〜2400nmの領域内に1720nmを中心に1755nm、2170nmおよび2340nmの4ヶの吸光ピークが表われることが判明した。
*)中性脂肪粉末(米国シグマ社製)1gをセラミック板上におき、これに前記4種の吸光ピークがカバーできるように前記AOTFを用いて1200〜2400nmの近赤外光を照射し、その反射光を集光することにより吸光度を測定した。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、体液、細胞その他の生体組織中に含有される生体物質および化学物質の迅速、簡便であり、かつ高精度の測定値が得られる非侵襲性光学的測定装置および測定方法を提供するものである。本発明によれば、生体物質等の測定において多点計測が可能であり、生体物質等の吸光現像を詳細に捉えることができる。また、(1)測定時間が1秒以下と短縮することができ、(2)最小検体量でよく、(3)検出反応が単純化され、(4)極めて効果的に低コスト化を図ることができるなどの効果を奏するものである。さらに、(5)簡便性を有する携帯型の測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学的測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】血中コレステロールについて本発明に係る測定装置による定量予測結果と和光純薬工業(株)「コレステロールEテスト」を用いた測定結果との関係図である。
【図3】血中中性脂肪量について本発明に係る測定装置による定量予測結果とHPLCによる測定結果との関係図である。
【図4】中性脂肪の波長1200〜2400nmの近赤外および赤外領域の吸光スペクトルである。
【符号の説明】
1 高周波発生装置
2 ピエゾ素子(高周波振動子)
3 音響光学可変振動フィルター
4 光源
5 レンズ
6 光ファイバー
7 被測定対象物
8 光ファイバー
9 レンズ
10 受光素子
11 スペクトル波形 解析・演算部
12 数値・表示部
13 数値・電信部
a 高周波
b 光
c 照射光(投光)
d 受光
e 検出信号
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の非侵襲性または侵襲性光学的測定装置および光学的測定方法に関するものであり、さらに詳しくは、血液、血清、細胞外液、細胞内液、細胞透過液、唾液、間質液、涙、汗、尿、その他の体液、細胞、血球、リンパ球、その他の生体組織内に含有され、近赤外領域および赤外領域のいずれかの領域に光吸収帯を有する生体物質および化学物質(本明細書において、これらの物質を総称して「生体物質等」ということがある。)を対象とし、音響光学可変振動フィルターからの光を利用して迅速な検出、定性および定量分析を行なう非侵襲性または侵襲性光学的測定装置および光学的測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体物質の光学的測定装置として、開発されている非侵襲的な検出および診断に用いられる定性および定量装置は、血液中のヘモグロビンを対象とした光学的測定装置が実用化されているにすぎない(例えば、特開2002−107291号公報参照。)。
【0003】
また、血液等を試料とする血液成分の侵襲的な検出および診断に頻度高く一般に用いられる測定方法であっても、
(1)診断に要する時間が長いという難点がある。短かくても数10分または数10分以上を要するものが多く、長いものは一昼夜を要する診断もある。
(2)近年、診断の多項目化が進んでおり、そのため多量(例えば、通常の診断で5ml採血用真空ガラス管が2〜3本必要となる。)の採血が行なわれているが、採血には痛みを伴なうばかりでなく、感染のおそれが生じるため、その防止の対策が必要となる。また、採血器具および診断後のキットの廃棄等の医療廃棄物も大量産生するという問題も生ずる。
【0004】
さらに、
(3)生体組織内の生体物質等を対象とする診断の操作が多段階となり、かつ操作が複雑であるため、熟練を要する方法が多く、その結果、測定精度に難点を包蔵するものが多い。
(4)前記の如き状況から従来採用されている生体組織内に含有される生体物質等の測定方法は、通常、長時間を要し、しかも高コストとなることが避けられない。
【0005】
しかしながら、かかる問題点を背景に、例えば、特許文献1(特開平11−64218号公報)には、生体組織中の体液成分の濃度、または血液、細胞液、唾液等の体液中のコレステロール、中性脂肪、アルブミン等の成分の濃度の定量方法として、1480〜1880nmの波長領域にわたる近赤外領域におけるCH基、OH基およびNH基由来の光の吸収を利用した方法が提案されており、被測定物質の吸光スペクトルを利用するものであるが、やはり長時間を要し、また操作が煩雑のものであり、迅速な検出、定性および定量が実用可能な段階には達していない。
【0006】
また、特許文献2(特開平5−176917号公報)によれば、波長380〜1320nmの近赤外光を用いて人体内のグルコース濃度を非侵襲的に測定する光学的測定方法が提案されている。
しかしながら、前記の特許文献1に記載の方法と同様に迅速な診断を行なう点については解決されていない。また、測定装置が大型になることが避けられない。
【0007】
また、前記の如き提案は、体液その他生体組織中に含有される生体物質を含めた広範囲の生体物質等の検出、定性および定量分析については開示がなく、もちろん示唆するものもない。
前記の如き開発状況下において、体液または生体組織内の前記の如き各種の生体物質の迅速かつ簡便で正確な光学的測定装置であって、特に、非侵襲的測定が可能な測定装置の開発が切望されてきた。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−64218号公報
【特許文献2】
特開平5−176917号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、前記の如き事情に鑑み、前記問題点を解消させるねらいから、近赤外領域および赤外領域のいずれかの領域に光吸収帯をもつ生体物質等の定性分析および定量分析を迅速かつ簡便に行なうことができ、現場において前記生体物質等の測定が可能な光学的測定装置および測定方法を提供することにあり、また、特に人体内の末梢血管および生体組織等を対象とする生体物質等の可能な光学的測定装置であって、外科的な侵襲的方法でしか検出および診断ができなかった生体の異常細胞、成分、血液中の異常の判別を可能とした非侵襲性光学的測定装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、前記の課題を解決するため、鋭意検討を重ねたところ、体液および生体組織内の微量な生体物質等が有する吸光による信号をとらえ、増幅することにより多変量解析を可能とし、さらに、所望の生体物質等以外の生体物質の信号を排除し、適正化すれば定量的に可能であることに着目し、被測定物質の光吸収波長領域に適合させた波長の光を音響光学振動フィルターを用いることによりかかる課題を容易に達成できることを見出し、これらの知見に基いて本発明の完成に到達した。
【0011】
すなわち、本発明によれば、
体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含むいずれかの波長領域において、前記生体物質または化学物質が有する少なくとも一つの光吸収帯に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力する出力手段と、
2)前記出力手段により出力された光を前記生体組織からなる被測定対象物上に照射する照射手段と、
3)前記照射手段により照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を受光する800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子からなる受光手段と、
4)前記受光手段の出力信号を光電変換する信号処理手段と、
5)前記信号処理手段により光電変換された検出信号に基づいて、吸光スペクトルを解析・演算することにより前記生体物質および化学物質を検出、定性または定量する生体物質等濃度算出手段と、該算出結果の表示手段とを少なくとも備えることを特徴とする体液、細胞その他生体組織内に含有される生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置
が提供される。
【0012】
本発明によれば、体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含むいずれかの波長領域において、前記生体物質または化学物質が有する少なくとも一つの光吸収帯に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力する出力手段と、
2)前記出力手段により出力された光を前記生体組織から採取した試料からなる被測定対象物上に照射する照射手段と、
3)前記照射手段により照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を受光する800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子からなる受光手段と、
4)前記受光手段の出力信号を光電変換する信号処理手段と、
5)前記信号処理手段により光電変換された検出信号に基づいて、交差検証法および部分最小二乗法により吸光スペクトルを解析・演算することにより前記生体物質および化学物質を検出、定性または定量する生体物質等濃度算出手段と、該算出結果の表示手段とを少なくとも備えることを特徴とする体液、細胞その他生体組織内に含有される生体物質および化学物質の侵襲性光学的測定装置
も提供される。
【0013】
また、本発明によれば、体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定方法であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含む波長領域に少なくとも一つの光吸収帯を有する前記生体物質および化学物質を含有する被測定対象物を採取する工程と、
2)前記工程により採取された被測定対象物に対し、前記生体物質または化学物質の光吸収帯が属する波長領域に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターを用いることにより出力し、照射する照射工程と、
3)前記照射工程において照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子により受光し、電気信号に変換する受光工程とを、少なくとも含むことを特徴とする生体物質および化学物質の光学的測定方法
が提供される。
【0014】
本発明は、前記の如く、体液、細胞その他の生体組織中に含有される生体物質等の非侵襲性光学的測定装置および光学的測定方法に関するものであるが、さらに好ましい実施の態様として次の1)〜7)に掲げるものを包含する。
1)▲1▼高周波発生装置にて発生した高周波がピエゾ素子に印加される該ピエゾ素子から音響光学可変振動フィルターに音響振動が加えられ、該音響光学可変振動フィルターに光が入射され波長800〜4000nmの近赤外光および赤外光が分光される分光手段と、
▲2▼前記近赤外光および赤外光を被測定対象物に照射する照射手段と、
▲3▼前記近赤外光および赤外光が照射され、該被測定対象物を透過または拡散反射した光を波長800〜4000nmの範囲にそれぞれ異なる極大の分光感度特性を有する二種以上の伝導材料からなる受光素子に受光し光電変換する光電変換手段と、
▲4▼前記光電変換手段により光電変換された検出信号に基づいて得られた吸光度スペクトルを解析、演算することにより生体物質濃度を定量する生体物質濃度算出手段
からなる生体物質の非侵襲性光学的測定装置。
【0015】
2)前記光電交換手段の受光素子が、PbS、InAs、GaAs、InSb、Ge:AuおよびInGaSから選択される2種以上の組合せからなる前記生体物質等の非侵襲性光学的測定装置。
3)前記照射手段における被測定対象物が指、腕、耳朶、唇その他の体表組織の皮下の血管または組織であり、総コレステロールおよび遊離コレステロール等のコレステロール類、中性脂肪、ビリルビン、尿素、尿酸、エチルアルコールその他のアルコール類を測定の対象とする生体物質等の前記非侵襲性光学的測定装置。
4)前記被測定対象物が、人体から採取された血液、尿、間質液、唾液、涙または汗である前記生体物質等の光学的測定方法。
【0016】
5)前記被測定対象物が、人体から採取した細胞、組織、血球またはリンパ球である前記生体物質等の光学的測定方法。
6)前記被測定対象物が、ビスフェノール類、ダイオキシン、ポリ塩化ビニール類、フタル酸類、コカイン、モルヒネおよび麻薬類を含有または付着した人体外表部である前記化学物質の光学的測定方法。
7)前記中性脂肪の含有量の測定基準が、波長1720nm、1755nm、2170nmおよび2340nmにおける吸光スペクトルである前記非侵襲性光学的測定装置。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る光学的測定装置を用いる測定方法の対象とする生体物質および化学物質は、体液、細胞その他生体組織中に本来含有される成分、または外部から付着または侵入した化学物質等である。
【0018】
体液は、生体組織内に含まれる種々の機能的に異なった液体を総称したものであり、細胞外液および細胞内液に区分されるが、本明細書においては、具体的には、血液、血清、細胞液、間質液、唾液、涙、汗、尿等を包含したものを意味している。
また、前記生体組織は、正常細胞のほか、ガン細胞、アミロイド組織、リウマチ組織等の異常細胞または組織をも含むものとして使用される。
【0019】
本発明に係る光学的測定装置および測定方法において、体液、細胞その他の生体組織は、被測定対象物として用いられ、該被測定対象物中に含有される生体物質および化学物質が検出、定性および定量の対象とされる。
かかる生体物質等の光学的測定装置は、皮膚の上から行なう非侵襲的測定に供されるものであり、直接測定が可能な生体物質として次のものを表1に例示することができる。下表に示すように各生体物質は、それぞれの測定に利用可能な波長を採用することにより測定することができる。
【0020】
【表1】
【0021】
前記コレステロール類には総コレステロール、HDL−またはLDL−コレステロール、遊離コレステロールが含まれる。また、表1に示す生体物質のほか、尿素、ビリルビン、リポ蛋白質、リン脂質、エチルアルコール等も非侵襲的に測定することができる。
【0022】
また、生体物質等の非侵襲的測定装置においては、被測定対象物として皮下の末梢血管を静脈および動脈を問わず対象とすることができ、指、腕、耳朶、唇、その他の体表組織等を用いることができる。
また、体液、細胞その他の生体組織内に侵入し含有するか、または外部に付着する化学物質であって、非侵襲的測定が可能なものとして次のものを例示することができる。
【0023】
【表2】
等を挙げることができる。
【0024】
本発明に係る非侵襲性光学的測定によれば、前記生体物質等は、微量でも測定が可能であり、nmol〜μmol程度まで定量することができる。
前記生体物質等の侵襲的測定は、採血または生体組織の試料採取を必要とするが、高精度の測定結果を迅速に得ることができる。例えば、TNT化薬、ダイオキシン等のガスクロストグラフィーなどで長時間を要する検出も本発明によれば、1秒以下の短時間で可能である。
【0025】
本発明の生体物質の光学的測定装置に係る照射手段は、音響光学可変振動フィルターにより出力された波長範囲800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域の光を被測定対象物に照射する手段からなる。
すなわち、前記照射に用いられる近赤外光および赤外光は、音響光学可変振動フィルターにより出力されたものが好適であり、音響光学可変振動フィルターの使用を構成要素とする近赤外光および赤外光分光手段を備えたものが好ましい。
【0026】
音響光学可変振動フィルターの使用を構成要素とする近赤外光および赤外光分光手段を有する照射手段は、(i) 一または二以上の光源と、(ii)該光源から光が入射される音響光学可変振動フィルターと、(iii) 該音響光学可変振動フィルターに音響振動を加える高周波振動子と、(iv)該高周波振動子に高周波を印加する高周波発生装置とから構成される。具体的には図1に例示されるように高周波電源1、高周波振動子2、音響光学可変振動フィルター3および光源4とから構成されるものが好ましい。
【0027】
図1で示すように、高周波発生装置1は、任意に制御できる高周波の発生能力を有するものである。また、高周波振動子2は音響光学可変振動フィルター3に音響振動を与えるものであり、ピエゾ素子が用いられる。ピエゾ素子に印加する高周波としては、音響光学可変振動フィルターの媒質の種類および性能等にも依存するが、波長範囲800〜2400nmの近赤外光および2400〜4000nmの赤外光が分光されるように制御すればよく、30〜100MHz、特に30〜80MHzが好ましい。光源4としては、タングステン−ハロゲンランプ等が用いられるが、これに限定されるものではなく、発光ダイオード、レーザーダイオード等の半導体ダイオードも用いることができる。
【0028】
すなわち、前記照射手段は、
(i) 高周波振動子に高周波を印加する手段と、
(ii)前記工程(i)にて高周波を印加された高周波振動子が音響光学可変振動フィルターに音響振動を加える手段と、
(iii)前記工程(ii)にて音響振動を加えられた音響光学可変振動フィルターに光源から光を入射し、波長800〜4000nmの範囲の近赤外光および赤外光を出力させる手段と
からなる手段の組合せからなる生体物質の光学的測定装置が提供される。
【0029】
音響光学可変振動フィルター3の媒質は、複屈折結晶分光材料からなるものである。音響光学可変振動フィルターにおいては、音響振動が該複屈折結晶に加えられると周期的な密度の変化が生じ、密度の変化による屈折率の変化が音響振動の方向に波状的に伝搬する。従って、そこへ光が入射されると各波面の屈折率に基づく一部の光線が反射する。各々の光路長の差が生じ、近赤外光および赤外光が出力されるように設計される。
【0030】
複屈折結晶分光材料としては、前記生体物質等の測定には波長範囲800〜4000nmの連続的に微細分割された照射光の出力可能な複屈折結晶分光材料を選択すればよい。例えば、a−シリカ(a−SiO2 )、二酸化テルル(TeO2 )、ニオビウム酸リチウム(LiNbO3 )、タリウム酸リチウム(LiTaO3 )、リン化ガリウム(GaP)、モリブデン酸鉛(PbMoO4 )、ゲルマニウム(Ge)、リン化インジウム(InP)、セレン化ヒ素タリウム(Ti3 AsSe3 )、石英ガラス(SiO2 )、方解石(CaCO3 )、水(H2 O)等を挙げることができるが、近赤外光および赤外光の波長を微細分割した光が得られるように材料の種類、組成等を制御したものが好ましく、特に、α−シリカ、二酸化テルル等が好ましい。
【0031】
かかる複屈折結晶分光材料を用いることにより得られる近赤外光および赤外光の人体への照射により生体物質等の濃度算出に有効な吸光度スペクトルを形成させることができる。本発明の光学的測定装置において用いられる光学的測定装置に採用される好適な音響光学可変波長フィルターとしては、例えば、米国特許第5,120,961号明細書および特公表10−512678号公報等に記載されている米国IFS社製超音波光学チューナブルフィルター(AOTF)および米国Brimrose社製AOTFを挙げることができる。
【0032】
照射光の波長は、表1および表2に掲げるように生体物質等が有する吸収帯がカバーされるように近赤外および赤外領域の800〜4000nmの範囲から選定される。具体的には、照射光の波長は、生体物質の少なくとも2ヶ以上の吸収ピークを示すスペクトルをカバーするよに設定される。例えば、中性脂肪の非侵襲的測定によれば、AOTFにより出力された波長1472〜2200nmの範囲の照射光が用いられ、該照射光を指の皮下末梢血管に対して、照射し得られた波長1720nm、1755nmおよび2170nmの少なくとも3ヶの吸収スペクトルに関するデータを採用し、演算手段に供給される。
【0033】
図4に中性脂肪の吸収スペクトルを示す。
中性脂肪は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールであり、いずれもグリセロールと脂肪酸のエステルであるが、ヒトの脂肪細胞に含まれる中性脂肪はトリアシルグリセロールが多い。本発明によれば、血中のかかるトリアシルグリセロールを非侵襲的に精度よくかつ迅速に測定することができる。
【0034】
また、照射手段において、被測定対象物に照射される波長範囲の近赤外光および赤外光の波長を連続的に微細分割した光は、分解能が0.8nm以下の微細な分光であり、波長分解としては1nm以下のものが好ましい。このように微細に分割した光を照射光とすることにより多点計測が可能であり、スペクトルの2次微分等により、部分最少二乗法等の処理を経て、目的とする物質の特異的な吸収変化を捉えることができる。この多点計測により、各種生体物質の吸光現象を詳細に捉えることに成功した結果、総合的な解析ができるので生体物質濃度の正確な算出が可能となる。計測点数としては、例えば、最低200点、通常、数百点を選択することができる。
【0035】
次に、照射手段において採用される照射光の照射方式について説明する。
照射方式として次の三種の方式を挙げることができる。すなわち、
▲1▼第1の方式:前記照射光が、被測定対象物に照射され、該被測定対象物を透過した光を直接受光素子に集光する透過方式、
▲2▼第2の方式:前記照射光が、被測定対象物に照射されたのち、該被測定対象物の拡散反射した反射光のみを集光する方式と、該被測定対象物を透過した光を該被測定対象物の背面側に設置された反射板で反射させ、前記被測定対象物を再度透過させた光を受光素子に集光する透過反射方式 および
▲3▼第3の方式:前記照射光が、被測定対象物に照射され、被測定対象物を透過した光を該被測定対象物の背面側に設置された反射板で拡散反射させ受光素子に集光する拡散反射方式
の方式があり、いずれの方式も採用することができるが、第2の透過反射方式が装置面および操作上簡便である。
【0036】
本発明に係る光学的測定装置における受光手段は、前記照射手段により被測定対象物に照射され、該被測定対象物を透過または反射した光を受光素子で受光し、電気信号を発信し、次の信号処理工程に供給するものである。受光素子は、分光感度特性の異なる2種以上の半導体からなる受光材料が好ましく、通常、CdS、Si、GaAsS、InS、PbS,InSb、PbSe、Ge等を挙げることができるが、照射波長900nm領域ではSi、GaAs、1000〜2000nm領域ではGaInAs、2000から3000nmではPbSe、PbS等が選択される。また、受光手段にダイオードアレイを用い、各波長を同時に測定する場合に、アレイ上で複数の波長を測定することが可能であり、かつ同波長におけるノイズ除去に用いて比較することも可能である。
【0037】
しかし、受光材料としては、前記透過光を効率よく集光することができる材質のものを採用することが好ましい。近赤外光および赤外光を効率よく分光し、受光するためには、波長2000nm以下、特に1000nm以下に極大の分光感度特性(波長に対する比検出度 (cm(Hg)1/2W−1) (H. Melchiev. Laser Hand book I, P726 参照。) を有する光伝導材料を選択することが好ましい。具体的には、硫化カドミウム(CdS)、ヒ化インジウム(InAs)または硫化インジウムガリウム(InGaS)等が使用される。かかる受光材料を選択使用することにより、AOTFによる照射手段による迅速性と相伴って高精度な測定結果を得ることができる。受光素子は、具体的には、分光感度特性が、互いに異なるものであって、ピーク波長がそれぞれ、800nmおよび2100nmのものを2種以上組合わせることにより構成されるものが好適である。
【0038】
本発明に係る前記生体物質の非侵襲的な光学的測定装置は、以上説明したようにAOTFの出力範囲と特定の受光性能を有する受光材料からなる受光素子との特定の組合せを一つの要因とし、これにより達成できたものである。
前記生体物質濃度算出手段は、前記吸光度スペクトルを解析演算して生体物質濃度に換算するものであり、演算電子回路および解析電子回路から構成される手段を用いることができる。図1で示すように、受光素子10にて光電変換された検出信号eがスペクトル波形解析・演算手段11に入力され、演算電子回路および解析電子回路にて次に述べる解析・演算が行なわれる。
【0039】
以上述べたように本発明の光学的測定装置および測定方法においては、前記音響光学可変振動フィルターを組み入れた点および受光材料を特定のものに選定した点が構成上の特異点であり、生体組織中の生体物質等の迅速かつ高精度な計測を可能としたものであって、これにより、具体的には5000点/秒程度の計測速度を達成することができる。計測は各波長において数回〜数10回の繰り返し計測を行なって平均値を採取し、また、設定波長範囲を数回〜数10回走査して平均値を採取することにより計測データの確度を高めることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。もっとも本発明は実施例等により限定されるものではない。
本発明に係る光学的測定装置は、高周波電源(高周波50MHz)、ピエゾ素子、音響光学可変振動フィルター(IFS社(米国メリーランド州)製AOTF)、受光素子(光伝導材料;InAsおよびInGaSの2種の組合せ)、吸光度スペクトル波形解析回路および演算回路を用いて図1の機器構成に従い作製した。
【0041】
実施例1(血中コレステロール類の測定)
15名の被検者を対象として前記光学的測定装置の指挿入部に人差し指を挿入し固定した。
波長を1200〜2400の範囲に設定し、照射光を指先の皮下の末梢血管に照射し、血液全体のスペクトルを測定した。吸収スペクトル上に現れた極大ピーク1720nm、1755nmおよび2170nmの3波長をコレステロール類の測定用波長とした。
前記光学的測定後、直ちに被検者から、それぞれ約1mlの血液を採取し、化学的*)に定量し、実測値とした。
*)化学的測定方法:和光純薬工業(株)の総コレステロール測定用「コレステロールEテスト」(コレステロールオキシダーゼ・ADOS法)を採用した。
【0042】
前記光学的測定において、吸光度スペクトルから得られた受光素子からの信号をデータとして、多変量解析による演算を行うに際し、より誤差の少ない演算とするため、血中に存在する水分および血清アルブミンの吸収極大付近において寄与する光学濃度を演算する処理をした。その後、2次微分による吸収極大付近の信号を拾うことにより、交差検証法、部分最小二乗法による多変量解析アルゴリズムから血中コレステロールの定量的予測を行ったところ相関関数80%〜96%の精度を得た。
図2に前記化学的測定による実測値と光学的測定による定量的予測値を示す。
同図から本発明に係る光学的測定による測定結果は、「コレステロールEテスト」による実測値と高度の相関関数を有することが判明した。
【0043】
実施例2(中性脂肪の測定)
15人の被検者の血中中性脂肪を本発明による光学的装置を用い非侵襲的に測定した。この中性脂肪の測定では、オレイン酸の近赤外領域で示す、吸収極大1720nm、1755nmおよび2170nmを用い、リノレイン酸では、オレイン酸と同じ三つの吸収極大とした。このため、中性脂肪量として、オレイン酸およびリノール酸の合計量として算出して、定量予測することができた(図4にスペクトルを示す。)。両者で血中中性脂肪量の80%を占めるものと仮定した。
【0044】
測定方法は、実施例1と同様であるが、15人の被検者から光学的測定と同時にそれぞれ1.0mlを採血し、中性脂肪であるオレイン酸およびリノレイン酸の実測値として、日立高速液体クロマトグラフィー(L7000)により血清中の両者の含量を加算し算出したものを用いた。図−3に中性脂肪量としてのオレイン酸およびリノレイン酸の定量的な予測例を示した。
【0045】
図3から、本発明に係る光学的測定は、HPLCによる実測値と高度の相関関数を示すことが判明した。
図4の中性脂肪の吸光スペクトルは、次の方法*)により中性脂肪粉末に照射して得られたものである。波長1200〜2400nmの領域内に1720nmを中心に1755nm、2170nmおよび2340nmの4ヶの吸光ピークが表われることが判明した。
*)中性脂肪粉末(米国シグマ社製)1gをセラミック板上におき、これに前記4種の吸光ピークがカバーできるように前記AOTFを用いて1200〜2400nmの近赤外光を照射し、その反射光を集光することにより吸光度を測定した。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、体液、細胞その他の生体組織中に含有される生体物質および化学物質の迅速、簡便であり、かつ高精度の測定値が得られる非侵襲性光学的測定装置および測定方法を提供するものである。本発明によれば、生体物質等の測定において多点計測が可能であり、生体物質等の吸光現像を詳細に捉えることができる。また、(1)測定時間が1秒以下と短縮することができ、(2)最小検体量でよく、(3)検出反応が単純化され、(4)極めて効果的に低コスト化を図ることができるなどの効果を奏するものである。さらに、(5)簡便性を有する携帯型の測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学的測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】血中コレステロールについて本発明に係る測定装置による定量予測結果と和光純薬工業(株)「コレステロールEテスト」を用いた測定結果との関係図である。
【図3】血中中性脂肪量について本発明に係る測定装置による定量予測結果とHPLCによる測定結果との関係図である。
【図4】中性脂肪の波長1200〜2400nmの近赤外および赤外領域の吸光スペクトルである。
【符号の説明】
1 高周波発生装置
2 ピエゾ素子(高周波振動子)
3 音響光学可変振動フィルター
4 光源
5 レンズ
6 光ファイバー
7 被測定対象物
8 光ファイバー
9 レンズ
10 受光素子
11 スペクトル波形 解析・演算部
12 数値・表示部
13 数値・電信部
a 高周波
b 光
c 照射光(投光)
d 受光
e 検出信号
Claims (9)
- 体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含むいずれかの波長領域において、前記生体物質または化学物質が有する少なくとも一つの光吸収帯に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力する出力手段と、
2)前記出力手段により出力された光を前記生体組織からなる被測定対象物上に照射する照射手段と、
3)前記照射手段により照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を受光する800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子からなる受光手段と、
4)前記受光手段の出力信号を光電変換する信号処理手段と、
5)前記信号処理手段により光電変換された検出信号に基づいて、交差検証法および部分最小二乗法により吸光スペクトルを解析・演算することにより前記生体物質および化学物質を検出、定性または定量する生体物質等濃度算出手段と、該算出結果の表示手段とを少なくとも備えることを特徴とする体液、細胞その他生体組織内に含有される生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置。 - 前記音響光学可変振動フィルターが、TeO2、石英(SiO2)、GaP、LiNbO3およびLiTaO3からなる群より選択される複屈折結晶材料である請求項1に記載の生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置。
- 前記受光手段が、それぞれ異なる分光感度特性を有する2種以上の受光素子を配置して構成されたダイオードアレイであることを特徴とする請求項1に記載の生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置。
- 前記生体物質が、総コレステロールおよび遊離コレステロール等のコレステロール類、中性脂肪、ビリルビン、尿酸、尿素、血清アルブミン、ヘモグロビン類、チトクローム類またはクレアチニンである請求項1に記載の生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置。
- 前記化学物質が、ビスフェノール類、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニール類、フタール酸類、エチルアルコールおよびその他のアルコール類、コカインまたはモルヒネもしくはその他の薬物またはTNT火薬である請求項1に記載の生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置。
- 前記受光素子の成分が、PbS、InAs、GaAs、InSb、Ge:AuまたはInGaSである請求項1に記載の生体物質の非侵襲性光学的測定装置。
- 前記被測定対象物が、指、腕、耳朶、唇その他の体表組織の皮下の血管または組織である請求項1に記載の生体物質および化学物質の非侵襲性光学的測定装置。
- 体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定装置であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含むいずれかの波長領域において、前記生体物質または化学物質が有する少なくとも一つの光吸収帯に適合するように選択された波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力する出力手段と、
2)前記出力手段により出力された光を前記生体組織から採取した試料からなる被測定対象物上に照射する照射手段と、
3)前記照射手段により照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を受光する800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する1種以上の受光素子からなる受光手段と、
4)前記受光手段の出力信号を光電変換する信号処理手段と、
5)前記信号処理手段により光電変換された検出信号に基づいて、交差検証法および部分最小二乗法により吸光スペクトルを解析・演算することにより前記生体物質および化学物質を検出、定性または定量する生体物質等濃度算出手段と、該算出結果の表示手段とを少なくとも備えることを特徴とする体液、細胞その他生体組織内に含有される生体物質および化学物質の侵襲性光学的測定装置。 - 体液、細胞その他の生体組織内に含有される生体物質および化学物質の検出、定性および定量が可能な光学的測定方法であって、
1)波長800〜4000nmの近赤外領域および赤外領域を含む波長領域に少なくとも一つの光吸収帯を有する前記生体物質および化学物質を含有する被測定対象物を採取する工程と、
2)前記工程により採取された被測定対象物に対し、前記生体物質または化学物質の光吸収帯が属する波長領域に適合するように選択された範囲の波長の光を音響光学可変振動フィルターを用いることにより出力し、照射する照射工程と、
3)前記照射工程において照射され、前記被測定対象物を透過または反射した光を800〜4000nmの範囲に極大の分光感度特性を有する2種以上の受光素子により受光し、電気信号に変換する受光工程とを、少なくとも含むことを特徴とする生体組織内の生体物質および化学物質の光学的測定方法。
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