JP2004251299A - シール装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】芯金2の寸法のばらつきに拘わらず、シール装置1とこのシール装置1を嵌合する部材との嵌合部の嵌合強度及び密封性を、長期に亙って確保する。
【解決手段】上記シール装置1を上記部材に嵌合する以前の状態での、上記芯金2を構成する円筒部5を、基端部から先端部に向かう程径方向外方に向かう方向に傾斜した円すい筒状とする。そして、上記シール装置1を上記部材に嵌合した状態では、上記円筒部5の外周面をこの部材の嵌合面に、全周に亙り弾性的に当接させる。この構成により、上記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明に係るシール装置は、例えば、自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する転がり軸受ユニット等の各種回転支持装置の開口端部を塞いで、この回転支持装置内に異物が侵入する事を防ぐ為に使用する。
【0002】
【従来の技術】
各種回転支持装置に組み込まれるシール装置は、1個若しくは複数個組み合わせて使用され、回転支持装置の開口端部を塞ぐ。この様なシール装置として、ゴム等により形成した弾性材を金属製の芯金により補強した構造が、従来から知られている。この従来から知られているシール装置の基本的構造に就いて、後述する本発明の実施の形態の1例を示す、図2により説明する。シール装置1は、芯金2と、この芯金2に全周に亙って添着され、シールリップ3a〜3cを有する弾性材4とから構成される。このうちの芯金2は、一般的に、断面略L字形に形成され、円筒部5と、この円筒部5の基端部(図2の左端部)から径方向に折れ曲がった円輪部6とから成る。そして、この円輪部6の片側面(図2の右側面)及び上記円筒部5の周面に、全周に亙って上記弾性材4を添着する。
【0003】
上述の様に構成されるシール装置1を、請求項に記載した一方の部材に相当するハウジング7の内径側に、請求項に記載した他方の部材に相当する回転軸(図示省略)を支持して成る、回転支持装置に組み込む際には、上記円筒部5をこのハウジング7の内周面に内嵌固定する。そして、上記弾性材4を構成するシールリップ3a〜3cの先端縁を、上記回転軸の外周面、若しくは、この回転軸の外周面に外嵌したスリンガの側面に摺接させる。この結果、この回転軸の外周面と上記ハウジング7の内周面との間に存在する空間の開口端部を塞いで、この空間への異物の侵入を防止できる。
【0004】
ところで、上記ハウジング7の内周面と上記芯金2を構成する円筒部5の外周面との嵌合部は、高い嵌合強度及び密封性を有する事が要求される。即ち、上記シール装置1が使用時に上記回転支持装置から外れる事がない様に、上記嵌合部の嵌合強度を確保すると共に、この嵌合部から異物が侵入する事がない様に、この嵌合部の密封性を確保する事も要求される。この様に、嵌合強度及び密封性を確保する為には、上記芯金2の円筒部5を上記ハウジング7の内周面に締り嵌めで嵌合する。しかし、上記芯金2は、通常、プレス加工により形成される為、高精度に加工する事は難しい。言い換えれば、寸法のばらつき(本明細書で寸法のばらつきとは、寸法公差内での寸法のばらつきを言う。本明細書全体で同じ。)が大きい。従って、常に、上記嵌合部の締め代を確保する為には、上記芯金2が寸法公差の下限値(最小許容寸法)の時、この嵌合部の締め代(必要最小締め代)を確保できる様に、このハウジング7の内周面の内径を設定する必要がある。即ち、上記芯金2を構成する円筒部5の、寸法公差の下限値の時の(ハウジング7の内周面に嵌合する前の)外径をDmin 、上記ハウジング7の内径をD 、上記必要最小締め代をδとした場合、上記ハウジング7の内径D は、上記円筒部5の外径Dmin (寸法公差の下限値)からこの上記必要最小締め代δを差し引いた値以下(D ≦Dmin −δ)でなければならない。但し、上記円筒部5を上記ハウジング7に内嵌固定可能とする必要上、上記ハウジング7の内径D を過度に小さくはできない。
【0005】
上述の様に、上記ハウジング7の内径D を、上記円筒部5の外径の寸法公差の下限値(Dmin )を基準として設定すれば、この円筒部5の外径寸法が寸法公差内でばらついても、このハウジング7の内周面と上記円筒部5の外周面との嵌合部の締め代を常に確保できる。しかし、上述の様に上記ハウジング7の内径D を規制した場合、芯金2の寸法のばらつきにより上記円筒部5の外径が大きくなった場合に問題がある。例えば、この円筒部5の外径寸法が寸法公差の上限値Dmax (最大許容寸法)である場合の締め代δ′は、上記必要最小締め代δに、寸法公差α(=Dmax −Dmin )を加えた値(δ′=δ+α)となる。即ち、上記締め代δ′が上記必要最小締め代δに対して寸法公差α分大きくなる。この様に、上記芯金2を上記ハウジング7に嵌合する為の締め代が必要以上に大きくなると、この芯金2をこのハウジング7の内周面に嵌合する時に必要な力が過度に大きくなる。この結果、シール装置1をハウジング7の内周面に嵌合する作業の効率が低下するばかりでなく、嵌合時に上記芯金2が変形する可能性がある。そして、この芯金2が変形した場合、上記シール装置1の性能が低下する原因となる。
【0006】
これに対して、上述の様にハウジングの内径を芯金との嵌合部の必要最小締め代に基づいて規制する事なく、又、シール装置を構成する芯金の寸法のばらつきに拘わらず、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を確保できる構造として、特許文献1、2に記載された構造がある。このうちの特許文献1に記載されたシール装置1aは、図5に示す様に、芯金2aを構成する円筒部5aの先端部(図5の右端部)を径方向内方に断面クランク状に折り曲げ、この部分の外周面を小径段部8としている。そして、上記芯金2の全周に亙って添着された、ゴム材製の弾性材4aの一部を、図示の様に、この小径段部8にも添着している。この小径段部8に添着した弾性材4aの外径は、上記円筒部5aの小径段部8以外の部分の外径よりも大きい。この様に構成されるシール装置1aを回転支持装置に組み込む為に、上記円筒部5aをハウジング7(図2参照)の内周面に内嵌した場合、上記小径段部8に添着した弾性材4aが、このハウジング7の内周面とこの小径段部8との間で圧縮された状態となる。この結果、上記芯金2aの寸法のばらつきが生じた場合でも、上記弾性材4aの弾性力により、上記円筒部5aの外周面と上記ハウジング7の内周面との嵌合部の嵌合強度及び密封性を確保できる。
【0007】
一方、上記特許文献2に記載された構造は、図6に示す様に、芯金2bを構成する円筒部5bの先端部(図6の右端部)に、外径がこの円筒部5bの中間部乃至基端部(図6の左端部)の外径よりも大きい、大径部9を形成している。そして、この円筒部5bのこの大径部9より基端側の小径部10の外周面に、円輪部6aの内周縁(図6の下端縁)に設けた弾性材4bとは別の、ゴム材製の弾性材4cを添着している。この様な図6に記載したシール装置1bも、上述した図5のシール装置1aと同様に、上記円筒部5bをハウジング7(図2参照)に内嵌固定した場合、上記弾性材4cがこのハウジング7の内周面と上記小径部10との間で圧縮された状態となる。そして、この弾性材4cの弾性により、嵌合部の嵌合強度及び密封性を確保する。尚、上記シール装置1bは、ハウジング7に内嵌固定する場合、上記円筒部5bの先端部から挿入する。この為、この円筒部5bの大径部9の先端部外周面には面取り部11を形成している。
【0008】
【特許文献1】
実公昭39−19512号公報
【特許文献2】
実開平5−94575号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した、特許文献1、2に記載されたシール装置1a、1bの場合、次の様な問題がある。即ち、図5に示したシール装置1aの場合、ハウジング7の内周面に内嵌固定する際に、このハウジング7の端面により、小径段部8に添着した弾性材4aの一部が削り取られてしまう場合がある。この場合、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を十分に確保できない。又、円筒部5aに上記小径段部8を形成する必要がある為、製造コストが上昇する。一方、図6に示したシール装置1bによれば、円筒部5bの先端部に大径部9を形成している為、この円筒部5bをハウジング7の内周面に内嵌する時に、この大径部9の存在により、小径部10に添着した弾性材4cが削り取られる量を少なくできる。但し、上記シール装置1bの場合も、上記円筒部5bの先端部にこの大径部9を形成する必要があり、製造コストが高くなる。又、上記小径部10に上記弾性材4cを、上記芯金2bの内径側に設けた弾性材4bとは別に設ける構造としている為、この点も製造コスト上昇の原因となる。
【0010】
又、上述の図5、6に示した様に、上記弾性材4a、4cにより、ハウジング7の内周面と円筒部5a、5bの外周面との嵌合部の嵌合強度及び密封性を確保する場合、この嵌合部の嵌合強度及び密封性を長期に亙って確保する事が難しい。即ち、上記弾性材4a、4cはゴム材により形成されている為、クリープ変形が大きい。従って、上記弾性材4a、4cは、このクリープ変形等の劣化により、比較的早期に弾性力が低下する。この為、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を長期に亙って確保できない。
本発明のシール装置は、上述の様な事情に鑑みて発明したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のシール装置は、前述した従来構造のシール装置と同様に、相対回転する2つの部材の、互いに対向する周面同士の間に存在する空間の開口端部を塞ぐ為に使用する。
このシール装置は、芯金と、弾性材とを備える。
このうちの芯金は、金属製で、上記2つの部材のうちの一方の部材の周面に嵌合固定する円筒部と、この円筒部の基端部から上記他方の部材の周面に向け折れ曲がった円輪部とから成る。
又、上記弾性材は、上記芯金の全周に亙って添着され、他方の部材の一部(スリンガを含む)に摺接するシールリップを有する。
特に、本発明のシール装置は、上記円筒部は、上記一方の部材の周面に嵌合固定する前の状態で、基端部から先端部に向かう程、この一方の部材の周面に向かう方向に傾斜した円すい筒状に形成されている。
そして、上記円筒部の周面は、この円筒部を上記一方の部材の周面に嵌合固定した状態で、この一方の部材の周面に弾性的に当接する。
【0012】
【作用】
上述の様に構成される本発明の場合、芯金を構成する円筒部を一方の部材の周面に嵌合固定した状態で、この円筒部の周面に対向する周面が、この一方の部材の周面に弾性的に当接する。この為、芯金の寸法が多少ばらつついても、この一方の部材の周面と上記円筒部の周面との嵌合部の嵌合強度及び密封性を十分に確保できる。又、これら両周面同士を当接させる為の弾性を得る為に、上記円筒部を円すい筒状に形成しているのみである為、製造コストの上昇を抑えられる。更に、上記芯金は金属製である為、上記一方の部材の周面に嵌合する上記円筒部の周面も金属面となる。従って、ゴム等の弾性材に比べて、クリープ変形等の劣化が少なく、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を長期に亙って確保できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示す。本例のシール装置1は、従来構造のシール装置と同様に、相対回転する2つの部材であって、回転支持装置を構成する、ハウジング7と回転軸(図示省略)との、互いに対向する周面同士である、ハウジング7の内周面と回転軸の外周面との間に存在する空間の開口端部を塞ぐ為に使用する。この様なシール装置1は、断面L字形で全体が円環状の芯金2と、弾性材4とを備える。このうちの芯金2は、軟鋼板等の金属板にプレス加工を施して、断面L字形で全体を円環状に形成して成り、上記ハウジング7の内周面に嵌合固定する円筒部5と、この円筒部5の基端部(図1、2の左端部、図3、4の下端部)から内径側(回転軸の外周面側、図1、2の下側)に向け折れ曲がった円輪部6とを備える。
【0014】
又、上記弾性材4は、ゴム材製で、上記円筒部5の内周面及び上記円輪部6の片側面(図1、2の右側面)に、全周に亙って添着されており、3本のシールリップ3a〜3cを有する。これら各シールリップ3a〜3cは、上記回転軸の外周面に固定する断面略L字形のスリンガ(図示省略)に、それぞれ摺接させる。即ち、このスリンガは、この回転軸の外周面に外嵌する円筒部と、この円筒部の端縁から径方向外方に折れ曲がった円輪部とを有する。そして、このスリンガのうちの円筒部の外周面に、上記3本のシールリップ3a〜3cのうち、弾性材4の内周縁に形成した2本のシールリップ3b、3cを摺接させると共に、残りのシールリップ3aを、上記スリンガのうちの円輪部の片側面に摺接させる。尚、回転軸にスリンガを外嵌しないで、シールリップを直接回転軸に摺接させる場合もある。この場合、上記3本のシールリップ3a〜3cのうち、シールリップ3aを省略し、シールリップ3b、3cを上記回転軸の外周面に直接摺接させるか、或は、上記シールリップ3aを、回転軸の外周面に形成した段部若しくはフランジの側面に摺接させる。
【0015】
特に、本例のシール装置1は、上記芯金2を次の様に形成している。即ち、この芯金2を構成する上記円筒部5は、上記ハウジング7の内周面に嵌合固定する前の自由状態で、基端部から先端部(図1、2の右端部、図3、4の上端部)に向かう程、径方向外方(上記ハウジング7の内周面に向かう方向)に向かう方向に傾斜した、円すい筒状に形成している。この為、図1に示す様に、この円筒部5の先端部の外径D を、この円筒部5の基端部の外径d よりも大きく(D >d )している。本例の場合には、この様に、上記円筒部5全体を円すい筒状に形成する事により、この円筒部5の外周面を上記ハウジング7の内周面に向かう方向に傾斜させている。
【0016】
又、上記円筒部5の先端部の自由状態での外径D は、上記ハウジング7の内径D よりも大きい(D >D )。この為、図2に示す様に、上記シール装置1を、このハウジング7の内周面に内嵌固定した状態では、上記円筒部5の外周面がこのハウジング7の内周面に弾性的に当接する。即ち、この円筒部5の先端部の自由状態での外径D が、上記ハウジング7の内径D よりも大きい為、この円筒部5をハウジング7の内周面に内嵌する事に伴い、この円筒部5の先端部が径方向内方に弾性変形する。そして、この円筒部5をこのハウジング7の内周面に内嵌固定した状態では、この円筒部5に拡径方向の弾性復元力が作用し、この円筒部5がこのハウジング7の内周面に、全周に亙って弾性的に当接する。
【0017】
又、上記円筒部5の先端面は、上記弾性材4の一部に覆われている。即ち、上記各シールリップ3a〜3cを有する弾性材4の一部を上記円筒部5の先端面まで回り込ませている。この様に、この円筒部5の先端面を弾性材4の一部で覆う事により、上記シール装置1の軸方向の幅L は、この円筒部5の軸方向の幅L よりも大きく(L >L )なる。
【0018】
上述の様に構成される、本例のシール装置1は、次の様な製造方法により形成される。先ず、このシール装置1を構成する芯金2を、軟鋼板等にプレス加工を施して、上述した様に、円筒部5が円すい筒状となる様に形成する。そして、この様に形成した芯金2を、図3に示す様に、成形装置12を構成する第一の金型13に設置する。この第一の金型13は、その片面(図3、4の上面)に、円環状に形成された環状凹溝14を設けており、この環状凹溝14内に上記芯金2を設置する。この環状凹溝14の外側周面15は、この環状凹溝14の中心軸と平行な円筒面としている。これに対して、この環状凹溝14の内側周面16は、上記シール装置1を構成するシールリップ3b、3cの形状に合わせた凹凸状に、全周に亙り形成されている。又、上記環状凹溝14の底面17のうち上記芯金を構成する円輪部6と対向する面は、この環状凹溝14の中心軸に直交する平面としている。尚、上記固定金型13の一部(図3、4の下部)を貫通し、上記底面17に開口する通孔24は、上記芯金2を取り出す為のノックアウトピンを挿通する為のものである。
【0019】
上記芯金2の上記環状凹溝14内への設置は、この芯金2を構成する上記円筒部5を上記外側周面15に内嵌する事により行なう。本例の場合、この外側周面15の直径D15をこの円筒部5の先端部の自由状態での外径D よりも小さく(D15>D )している。この為、この芯金2を上記外側周面15に内嵌した状態で、上記円筒部5の外周面がこの外側周面15に弾性的に当接する。従って、上記芯金2の外径寸法にばらつきがあっても、上記円筒部5の、少なくとも先端部がこの外側周面15から離れる事はない。この様に、上記芯金2を構成する円筒部5が、この芯金2の外径寸法のばらつきに拘わらず、この外側周面15に全周に亙って弾性的に当接する様にすれば、後述する、弾性材4を射出形成する工程の際に、この弾性材4の一部が上記円筒部5の外周面に回り込む事を防止できる。
【0020】
又、本例の場合、上記円筒部5を円すい筒状に形成している為、上記外側周面15の直径D15を、上記円筒部5の基端部の外径d よりも大きく(D15>d )設定できる。この結果、上記環状凹溝14内への上記芯金2の嵌合及び取り出しの作業を容易にする事ができる。即ち、上記円筒部5が円すい筒状ではなく、中心軸と平行な直円筒状に形成されていた場合、この円筒部5の外周面と上記外側周面15との嵌合部の隙間をなくす為、この嵌合部の締め代を考慮する必要がある。この場合、上記芯金2の外径寸法のばらつきにより、上記円筒部5の基端部の外径d が寸法公差の上限値となった時、上記環状凹溝14内への上記芯金2の嵌合及び取り出しに必要な力が大きくなる。この結果、作業性が悪化すると共に、この芯金2が変形したり、この芯金2が取り出せなくなる場合がある。これに対して本例の場合には、上記外側周面15の直径D15を上記円筒部5の基端部の外径d よりも大きく設定し、しかも、上記嵌合部の嵌合強度を適切にできるので、上記環状凹溝14内への上記芯金2の嵌合及び取り出しの作業を容易にする事ができる。
【0021】
又、上記環状凹溝14の深さH14を、上記円筒部5の軸方向(図1、2の左右方向、図3、4の上下方向)の幅L よりも大きく(H14>L )している。即ち、この環状凹溝14内に上記芯金2を、この芯金2を構成する円輪部6の他側面(図3、4の下面)が前記底面17と当接するまで挿入した時に、上記円筒部5の先端面は、上記第一の金型13の片面(図3、4の上面)が存在する仮想平面よりも、上記底面17側(図3、4の下側)に存在する。従って、寸法のばらつきにより、上記円筒部の軸方向の幅が多少(寸法公差内で)大きくなったとしても、この円筒部5の先端面が上記仮想平面から突出する事がない。この為、次述する様に、第二の金型18と上記第一の金型13とを組み合わせた時に、上記円筒部5の先端部がこの第二の金型18の他面(図3、4の下面)と接触して、上記芯金2が変形する事がない。
【0022】
次に、図4に示す様に、上記芯金2を上記環状凹溝14内に設置した状態で、上記第二の金型18の他面に突設した環状凸部19を、上記第一の金型13の環状凹溝14に進入させる事により、これら第一の金型13と第二の金型18とを組み合わせる。上記環状凸部19は、上記環状凹溝14と整合する位置に、この環状凹溝14と同心に設けている。又、上記第二の金型18と第一の金型13とを組み合わせた状態で、上記環状凸部19と上記環状凹溝14とに囲まれる空間であるキャビティ20は、上記芯金2に添着する弾性材4の形状となる。
【0023】
そして、上記キャビティ20内に、溶融したゴム材21を射出する。このゴム材21の射出は、上記第一の金型13と第二の金型18とを組み合わせた状態で、上記芯金2の内径側(図3、4の右側)に存在する供給路22を通じて行なう。本例の場合、前述した様に、このゴム材21の射出作業により、このゴム材21が上記円筒部5の外周面に回り込む事がない。即ち、上記芯金2の円輪部6は上記底面17と全周に亙って当接しており、上記円筒部5の先端部外周面は上記外側周面15に、全周に亙って弾性的に当接している。この為、この芯金2の寸法のばらつきに拘わらず、上記ゴム材21が上記円筒部5の外周面に回り込む事がない。
【0024】
又、前述した様に、上記環状凹溝14の深さH14を上記円筒部5の軸方向の幅L よりも大きくしている為、この円筒部5の先端面と上記可動金型18の他面との間には、隙間23が存在する。この為、上記ゴム材21がこの隙間23に入り込む事により、上記円筒部5の先端面がこのゴム材21により覆われる。従って、前記シール装置1の軸方向の幅L は、上記円筒部5の軸方向の幅L の大きさに拘わらず、上記環状凹溝14の深さH14となる。
【0025】
上述の様に、上記キャビティ20内にゴム材21を射出した後、このゴム材21を加硫する事により、この芯金2への上記弾性材4の添着作業が完了する。そして、上記第一の金型13と第二の金型18とを分離して、上記キャビティ20内から弾性材4を添着した芯金2を取り出し、ばりを除去する事により、図1に示した、上記シール装置1が得られる。尚、上記キャビティ20内に充填したゴム材21を加圧して、得られる弾性材4の密度及び強度を高くする事もできる。
【0026】
上述の様に構成される本例のシール装置1は、従来構造と同様に、上記ハウジング7の内周面と回転軸の外周面との間に存在する空間の開口端部を塞いで、この空間内に異物が侵入する事を防ぐ。特に、本例の場合、上記シール装置1を構成する芯金2を上記ハウジング7の内周面に嵌合した状態で、上記円筒部5の外周面がこのハウジング7の内周面に弾性的に当接する為、この芯金2の寸法のばらつきに拘わらず、上記ハウジング7の内周面と上記円筒部5の外周面との嵌合部の嵌合強度及び密封性を十分に確保できる。又、この様に、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を確保する為の弾性力を得る為の構造は、従来構造と比べて、嵌合固定前の上記円筒部5の形状を円すい筒状に形成しているのみである。従って、製造コストの上昇を殆ど伴わずに本例のシール装置1を得る事ができる。
【0027】
又、本例の場合、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を十分に確保する為に、この嵌合部の締め代を、特に厳密に規制する必要がない。この為、上記芯金2の寸法のばらつきにより、締め代が過大となって作業性が悪化したり、シール装置の性能が低下する等の不都合が生じる事がない。即ち、前述した様に、芯金2として円筒部5を円すい筒状としていない(円筒部5が芯金2の中心軸と平行な)構造のものを使用した場合、上記芯金2の寸法のばらつきを考慮して、上記ハウジング7の内径D を、円筒部5の外径の寸法公差の下限値Dmin (最小許容寸法)から、必要最小締め代δを差し引いた値以下(D ≦Dmin −δ)とすると共に、嵌合可能とする面から、上記内径D の下限値を規制する必要があった。これに対して本例の場合、上記円筒部5を円すい筒状に形成する事により、嵌合状態でこの円筒部5の外周面を上記ハウジング7の内周面に弾性的に当接させる為、上記必要最小締め代δ及び組立性を考慮しても、各部の径方向の寸法を厳密に規制する事なく、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を確保できる。
【0028】
又、上記円筒部5の先端面を弾性材4の一部で覆っている為、シール装置1の軸方向の幅寸法のばらつきも抑える事ができる。即ち、このシール装置1は、前述の様に、前記成形装置12により形成される為、このシール装置1の軸方向の幅L は、上記円筒部5の軸方向の幅L の大きさに拘わらず、前記固定金型13の環状凹溝14の深さH14となる。従って、上記シール装置1の軸方向の幅L が上記芯金2の寸法のばらつきに影響されず、このシール装置1の軸方向の幅L のばらつきを抑える事ができる。この様に、シール装置1の軸方向の幅L のばらつきが小さければ、このシール装置1をハウジングの内周面に組み込んだ時に、精度良く位置決めを行なう事ができる。更に、上記芯金2は金属製である為、上記ハウジングの内周面に嵌合する上記円筒部5の外周面も金属面となる。従って、ゴム材と比べてクリープ変形等の劣化が少なく、上記嵌合部の嵌合強度及び密封性を長期に亙って確保できる。
【0029】
尚、上述した実施の形態では、シール装置1を、互いに相対回転する2つの部材のうち、外側部材であるハウジング7の内周面に内嵌固定する構造に就いて説明したが、本発明は、シール装置を内側部材(例えば、固定軸)の外周面に外嵌固定する構造に就いても適用可能である。この場合、外嵌固定する前の、シール装置を構成する芯金の円筒部を、基端部から先端部に向かう程、直径が小さくなる方向に傾斜した円すい筒状に形成する。この様に形成された円筒部を、上記内側部材の外周面に外嵌固定した場合、この円筒部に縮径方向の弾性復元力が作用する。この為、この円筒部の内周面がこの内側部材の外周面に、全周に亙って対して弾性的に当接する。又、前述した実施の形態では、シール装置の製造方法として射出成形による方法に就いて説明したが、圧縮成形によっても同様に製造できる。
【0030】
【発明の効果】
本発明のシール装置は、上述の様に構成され作用する為、芯金の寸法のばらつきに拘わらず、シール装置とこのシール装置を嵌合する部材との嵌合部の嵌合強度及び密封性を、長期に亙って確保できると共に、この様な構造を安価に得る事ができる。この為、各種回転支持装置の開口端部を長期に亙って確実に塞ぐ事ができ、これら各種回転支持装置の寿命向上を低コストで図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、ハウジングに嵌合固定する前の状態で示す部分断面図。
【図2】同じく、ハウジングに嵌合固定後の状態で示す部分断面図。
【図3】本発明のシール装置を得る為の成形装置の1例を、分離した状態で示す部分断面図。
【図4】同じく、組み合わせた状態で示す、部分断面図。
【図5】従来構造の第1例を示す、部分断面図。
【図6】同第2例を示す、部分断面図。
【符号の説明】
1、1a、1b シール装置
2、2a、2b 芯金
3a、3b、3c シールリップ
4、4a、4b、4c 弾性材
5、5a、5b 円筒部
6、6a 円輪部
7 ハウジング
8 小径段部
9 大径部
10 小径部
11 面取り部
12 成形装置
13 第一の金型
14 環状凹溝
15 外側周面
16 内側周面
17 底面
18 第二の金型
19 環状凸部
20 キャビティ
21 ゴム材
22 供給路
23 隙間
24 通孔

Claims (2)

  1. 相対回転する2つの部材の、互いに対向する周面同士の間に存在する空間の開口端部を塞ぐ為に使用するシール装置であって、
    金属製で、一方の部材の周面に嵌合固定する円筒部とこの円筒部の基端部から他方の部材の周面に向け折れ曲がった円輪部とから成る芯金と、この芯金の全周に亙って添着され、上記他方の部材の一部に摺接するシールリップを有する弾性材とを備え、
    上記円筒部は、上記一方の部材の周面に嵌合固定するにの状態で、基端部から先端部に向かう程、この一方の部材の周面に向かう方向に傾斜した円すい筒状に形成されており、この円筒部の周面は、この円筒部を上記一方の部材の周面に嵌合固定した状態で、この一方の部材の周面に弾性的に当接する事を特徴とするシール装置。
  2. 芯金を構成する円筒部の先端面が、弾性材の一部に覆われている、請求項1に記載したシール装置。
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