JP2004251256A - 斜板式圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備え、斜板のシューとの摺接面に金属の焼結層が形成された斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される斜板式圧縮機を提供する。
【解決手段】回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接面に、樹脂が含浸された金属の焼結層が形成され、焼結層の表面が研削されている。
【選択図】 図2
【解決手段】回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接面に、樹脂が含浸された金属の焼結層が形成され、焼結層の表面が研削されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板式圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性を確保すべく、斜板のシューとの摺接面に、金属の焼結層が形成され、焼結層の表面に樹脂層が形成された斜板式圧縮機が特許文献1に開示されている。
特許文献1の斜板式圧縮機においては、焼結層表面の微視的な凹凸によって樹脂層が焼結層に強固につなぎ止められるので、焼結層と樹脂層との結合力が強い。この結果、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−180961
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂層の耐摩耗性能は高くないので、特許文献1の斜板式圧縮機には、樹脂層が摩耗により早期に消滅し、斜板とシューとの間の油膜形成のためのクリアランスが過度に大きくなってシューのばたつきを惹起し、最悪の場合斜板とシューとの摺接部に焼き付きを生ずるという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備え、斜板のシューとの摺接面に金属の焼結層が形成された斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される斜板式圧縮機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接面に、樹脂が含浸された金属の焼結層が形成され、焼結層の表面が研削されていることを特徴とする斜板式圧縮機を提供する。
樹脂が含浸された金属の焼結層の表面が研削されているので、焼結金属と樹脂とが同時にシューに摺接する。樹脂がシューに摺接することにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。樹脂は焼結層の空孔に充填されており、周囲を金属粒子で囲まれているので、容易に摩耗消滅しない。従って、本発明に係る斜板式圧縮機においては、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、前記金属は銅系合金又はアルミニウム系合金である。
一般にシューは鉄系合金により形成されている。従って、焼結層を形成する金属を銅系合金又はアルミ系合金にしておけば、焼結層とシューとの摺接が異種金属同士の摺接となり、斜板のシューとの摺接部の焼き付きが抑制される。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、前記金属に固体潤滑剤が添加されている。
焼結層を形成する金属に固体潤滑剤が添加されることにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、前記固体潤滑剤はグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、焼結層を形成する金属に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂は熱硬化性樹脂である。
熱硬化性樹脂は耐熱性、機械的強度に優れるので、斜板のシューとの摺接部に使用するのに適している。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂は熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂は耐熱性に優れるので、斜板のシューとの摺接部に使用するのに適している。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、金属の焼結体に含浸される樹脂として好適である。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂に固体潤滑剤が添加されている。
樹脂に固体潤滑剤が添加されることにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記固体潤滑剤はポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、樹脂に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例に係る斜板式圧縮機を説明する。
図1に示すように、斜板式圧縮機100は、複数のシリンダボア1aとセンターボア1bとが形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2と共働してクランク室3を形成するフロントハウジング4とを備えている。
シリンダヘッド5がシリンダブロック2と共働して吸入弁6と弁板7と吐出弁8とを挟持している。シリンダヘッド5内に吸入室9と吐出室10とが形成されている。吸入室9は吸入ポートに連通し、吐出室10は吐出ポートに連通している。
【0015】
斜板式圧縮機100は更にクランク室3内で延在する駆動軸11を備えている。駆動軸11の一端はフロントハウジング4を貫通してフロントハウジング4外へ延び、他端は軸受を介してシリンダブロック2のセンターボアに嵌合している。
【0016】
クランク室3内に配設された鉄系合金製の斜板12が駆動軸11に固定されている。斜板12の周縁部に、斜板12を挟んで一対の鉄系合金製シュー13が摺動可能に当接している。複数対のシュー13が、周方向に互いに間隔を隔てて配設されている。各一対のシュー13は、それぞれピストン14の尾部14aに形成されたシュー保持部により保持されている。ピストン14の頭部14bはシリンダボア1aに摺動可能に挿入されている。
【0017】
図2、3に示すように、斜板12のシュー13との摺接面に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせからなる樹脂15が含浸された銅系合金又はアルミニウム系合金の焼結層16が形成されている。
斜板12のシュー13との摺接面に金属の焼結層16を形成し、焼結層16に樹脂15を含浸させ、樹脂15を硬化させ、次いで、樹脂15を含浸させた焼結層16の表面を研削して、焼結層16の表面を覆う樹脂15を削除している。
【0018】
斜板式圧縮機100においては、駆動軸11が外部駆動源により回転駆動され、駆動軸11の回転に伴って斜板12が回転し、シュー13を介して斜板12によりピストン14が往復駆動される。外部冷却回路から圧縮機100へ還流した冷媒ガスが、吸入ポートを介して吸入室9へ流入し、弁板7に形成された吸入穴と吸入弁6とを介してシリンダボア1a内へ吸引され、ピストン14により加圧圧縮され、弁板7に形成された吐出穴と吐出弁8とを介して吐出室10へ吐出し、吐出ポートを介して外部冷却回路へ還流する。
【0019】
斜板式圧縮機100においては、図3に示すように、樹脂15が含浸された金属の焼結層16の表面が研削されているので、焼結層16を形成する金属と樹脂15とが同時にシュー13に摺接する。樹脂15がシュー13に摺接することにより、斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。樹脂15は焼結層16の空孔に充填されており、周囲を金属粒子で囲まれているので、容易に摩耗消滅しない。従って、斜板式圧縮機100においては、斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される。
【0020】
シュー13は鉄系合金により形成されている。従って、焼結層16を形成する金属を銅系合金又はアルミ系合金にしておけば、焼結層16とシュー13との摺接が異種金属同士の摺接となり、斜板12のシュー13との摺接部の焼き付きが抑制される。
【0021】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂共に樹脂15として好適である。熱硬化性樹脂は耐熱性、機械的強度に優れ、熱可塑性樹脂は耐熱性に優れるので、斜板12のシュー13との摺接部に使用するのに適している。具体例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、金属の焼結層16に含浸される樹脂15として好適である。
【0022】
焼結層16を形成する金属に固体潤滑剤を添加しても良い。斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、焼結層16を形成する金属に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0023】
樹脂15に固体潤滑剤を添加しても良い。斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、樹脂15に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0024】
樹脂15が含浸された金属の焼結層16は、必ずしも斜板12の両面に形成する必要は無い。片面に樹脂15が含浸された金属の焼結層16を形成し、他面に樹脂15を含浸させない金属の焼結層を形成しても良く、或いは、片面に樹脂15が含浸された金属の焼結層16を形成し、他面に樹脂15を焼き付けても良く、或いは、片面に樹脂15が含浸された金属の焼結層16を形成し、他面に耐焼付性、摺接性を向上させる他の任意の処理を施しても良い。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明に係る斜板式圧縮機においては、斜板のシューとの摺接部に形成された、樹脂が含浸された金属の焼結層の表面が研削されているので、焼結金属と樹脂とが同時にシューに摺接する。樹脂がシューに摺接することにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。樹脂は焼結層の空孔に充填されており、周囲を金属粒子で囲まれているので、容易に摩耗消滅しない。従って、本発明に係る斜板式圧縮機においては、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機が備える斜板の周縁部の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機が備える斜板のシューとの摺接部の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 シリンダボア
2 シリンダブロック
3 クランク室
4 フロントハウジング
5 シリンダヘッド
11 駆動軸
12 斜板
14 ピストン
15 樹脂
16 焼結層
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板式圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性を確保すべく、斜板のシューとの摺接面に、金属の焼結層が形成され、焼結層の表面に樹脂層が形成された斜板式圧縮機が特許文献1に開示されている。
特許文献1の斜板式圧縮機においては、焼結層表面の微視的な凹凸によって樹脂層が焼結層に強固につなぎ止められるので、焼結層と樹脂層との結合力が強い。この結果、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−180961
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂層の耐摩耗性能は高くないので、特許文献1の斜板式圧縮機には、樹脂層が摩耗により早期に消滅し、斜板とシューとの間の油膜形成のためのクリアランスが過度に大きくなってシューのばたつきを惹起し、最悪の場合斜板とシューとの摺接部に焼き付きを生ずるという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備え、斜板のシューとの摺接面に金属の焼結層が形成された斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される斜板式圧縮機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接面に、樹脂が含浸された金属の焼結層が形成され、焼結層の表面が研削されていることを特徴とする斜板式圧縮機を提供する。
樹脂が含浸された金属の焼結層の表面が研削されているので、焼結金属と樹脂とが同時にシューに摺接する。樹脂がシューに摺接することにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。樹脂は焼結層の空孔に充填されており、周囲を金属粒子で囲まれているので、容易に摩耗消滅しない。従って、本発明に係る斜板式圧縮機においては、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、前記金属は銅系合金又はアルミニウム系合金である。
一般にシューは鉄系合金により形成されている。従って、焼結層を形成する金属を銅系合金又はアルミ系合金にしておけば、焼結層とシューとの摺接が異種金属同士の摺接となり、斜板のシューとの摺接部の焼き付きが抑制される。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、前記金属に固体潤滑剤が添加されている。
焼結層を形成する金属に固体潤滑剤が添加されることにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、前記固体潤滑剤はグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、焼結層を形成する金属に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂は熱硬化性樹脂である。
熱硬化性樹脂は耐熱性、機械的強度に優れるので、斜板のシューとの摺接部に使用するのに適している。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂は熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂は耐熱性に優れるので、斜板のシューとの摺接部に使用するのに適している。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、金属の焼結体に含浸される樹脂として好適である。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記樹脂に固体潤滑剤が添加されている。
樹脂に固体潤滑剤が添加されることにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記固体潤滑剤はポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、樹脂に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例に係る斜板式圧縮機を説明する。
図1に示すように、斜板式圧縮機100は、複数のシリンダボア1aとセンターボア1bとが形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2と共働してクランク室3を形成するフロントハウジング4とを備えている。
シリンダヘッド5がシリンダブロック2と共働して吸入弁6と弁板7と吐出弁8とを挟持している。シリンダヘッド5内に吸入室9と吐出室10とが形成されている。吸入室9は吸入ポートに連通し、吐出室10は吐出ポートに連通している。
【0015】
斜板式圧縮機100は更にクランク室3内で延在する駆動軸11を備えている。駆動軸11の一端はフロントハウジング4を貫通してフロントハウジング4外へ延び、他端は軸受を介してシリンダブロック2のセンターボアに嵌合している。
【0016】
クランク室3内に配設された鉄系合金製の斜板12が駆動軸11に固定されている。斜板12の周縁部に、斜板12を挟んで一対の鉄系合金製シュー13が摺動可能に当接している。複数対のシュー13が、周方向に互いに間隔を隔てて配設されている。各一対のシュー13は、それぞれピストン14の尾部14aに形成されたシュー保持部により保持されている。ピストン14の頭部14bはシリンダボア1aに摺動可能に挿入されている。
【0017】
図2、3に示すように、斜板12のシュー13との摺接面に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせからなる樹脂15が含浸された銅系合金又はアルミニウム系合金の焼結層16が形成されている。
斜板12のシュー13との摺接面に金属の焼結層16を形成し、焼結層16に樹脂15を含浸させ、樹脂15を硬化させ、次いで、樹脂15を含浸させた焼結層16の表面を研削して、焼結層16の表面を覆う樹脂15を削除している。
【0018】
斜板式圧縮機100においては、駆動軸11が外部駆動源により回転駆動され、駆動軸11の回転に伴って斜板12が回転し、シュー13を介して斜板12によりピストン14が往復駆動される。外部冷却回路から圧縮機100へ還流した冷媒ガスが、吸入ポートを介して吸入室9へ流入し、弁板7に形成された吸入穴と吸入弁6とを介してシリンダボア1a内へ吸引され、ピストン14により加圧圧縮され、弁板7に形成された吐出穴と吐出弁8とを介して吐出室10へ吐出し、吐出ポートを介して外部冷却回路へ還流する。
【0019】
斜板式圧縮機100においては、図3に示すように、樹脂15が含浸された金属の焼結層16の表面が研削されているので、焼結層16を形成する金属と樹脂15とが同時にシュー13に摺接する。樹脂15がシュー13に摺接することにより、斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。樹脂15は焼結層16の空孔に充填されており、周囲を金属粒子で囲まれているので、容易に摩耗消滅しない。従って、斜板式圧縮機100においては、斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される。
【0020】
シュー13は鉄系合金により形成されている。従って、焼結層16を形成する金属を銅系合金又はアルミ系合金にしておけば、焼結層16とシュー13との摺接が異種金属同士の摺接となり、斜板12のシュー13との摺接部の焼き付きが抑制される。
【0021】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂共に樹脂15として好適である。熱硬化性樹脂は耐熱性、機械的強度に優れ、熱可塑性樹脂は耐熱性に優れるので、斜板12のシュー13との摺接部に使用するのに適している。具体例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、金属の焼結層16に含浸される樹脂15として好適である。
【0022】
焼結層16を形成する金属に固体潤滑剤を添加しても良い。斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、焼結層16を形成する金属に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0023】
樹脂15に固体潤滑剤を添加しても良い。斜板12のシュー13との摺接部の耐焼付性、摺接性が向上する。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせは、樹脂15に添加される固体潤滑剤として好適である。
【0024】
樹脂15が含浸された金属の焼結層16は、必ずしも斜板12の両面に形成する必要は無い。片面に樹脂15が含浸された金属の焼結層16を形成し、他面に樹脂15を含浸させない金属の焼結層を形成しても良く、或いは、片面に樹脂15が含浸された金属の焼結層16を形成し、他面に樹脂15を焼き付けても良く、或いは、片面に樹脂15が含浸された金属の焼結層16を形成し、他面に耐焼付性、摺接性を向上させる他の任意の処理を施しても良い。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明に係る斜板式圧縮機においては、斜板のシューとの摺接部に形成された、樹脂が含浸された金属の焼結層の表面が研削されているので、焼結金属と樹脂とが同時にシューに摺接する。樹脂がシューに摺接することにより、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が確保される。樹脂は焼結層の空孔に充填されており、周囲を金属粒子で囲まれているので、容易に摩耗消滅しない。従って、本発明に係る斜板式圧縮機においては、斜板のシューとの摺接部の耐焼付性、摺接性が長期に亘って確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機が備える斜板の周縁部の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る斜板式圧縮機が備える斜板のシューとの摺接部の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 シリンダボア
2 シリンダブロック
3 クランク室
4 フロントハウジング
5 シリンダヘッド
11 駆動軸
12 斜板
14 ピストン
15 樹脂
16 焼結層
Claims (9)
- 回転可能な斜板と、シューを介して斜板に係合し斜板の回転に伴って往復動するピストンとを備える斜板式圧縮機であって、斜板のシューとの摺接面に、樹脂が含浸された金属の焼結層が形成され、焼結層の表面が研削されていることを特徴とする斜板式圧縮機。
- 前記金属は銅系合金又はアルミニウム系合金であることを特徴とする請求項1に記載の斜板式圧縮機。
- 前記金属に固体潤滑剤が添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の斜板式圧縮機。
- 前記固体潤滑剤はグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載の斜板式圧縮機。
- 前記樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の斜板式圧縮機。
- 前記樹脂は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の斜板式圧縮機。
- 前記樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択された一種又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の斜板式圧縮機。
- 前記樹脂に固体潤滑剤が添加されていることを特徴とする請求項7に記載の斜板式圧縮機。
- 前記固体潤滑剤はポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、酸化アンチモン、インジウム、スズ、銀、鉛から選択された一種又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載の斜板式圧縮機。
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