JP2004251155A - 筒内噴射式内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】吸気デポジットの付着が検出されると、吸気バルブ18の開弁時期及び排気バルブ19の閉弁時期を排気上死点前に変更し、且つピストン16が排気上死点近傍に位置する排気行程後期に燃料噴射の開始時期を設定して洗浄用燃料噴射が実施される。このとき、インジェクタ11から噴射された燃料は、ピストン16の頂面で反射し、更に排気行程中のピストン16の上昇に応じて形成される気筒内から吸気ポート17への気流に乗って、効率的に吸気ポート17内に吹き戻される。こうして吹き戻された燃料により、吸気ポート17や吸気バルブ18に付着した吸気デポジットが洗浄される。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気筒内に噴射された燃料を吸気ポートに吹き戻しさせて、吸気ポートや吸気バルブ等に付着したデポジット、いわゆる吸気デポジットを洗浄させる洗浄用燃料噴射を行う筒内噴射式内燃機関の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧縮行程前期に吸気バルブの閉弁時期を設定するとともに、ピストンが吸気下死点近傍に位置する時期に燃料噴射を行うことで、上記のような洗浄用燃料噴射を実施する筒内噴射式内燃機関の制御装置が知られている(例えば特許文献1)。この制御装置では、圧縮行程前期まで吸気バルブを開いておくことで、気筒内に噴射された燃料を含む混合気を、圧縮行程でのピストンの押し上げにより、吸気ポートに吹き戻させるようにしている。そしてその吹き戻された混合気中の燃料により、吸気ポートや吸気バルブに付着した吸気デポジットを洗浄させている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−289097号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで筒内噴射式内燃機関では、圧縮行程中の高圧となった気筒内に直接燃料を噴射する必要上、ポート噴射式内燃機関に比して燃料の噴射圧が高く設定されており、噴射燃料の貫徹力は高くなっている。そのため、上記制御装置のようにピストンが吸気下死点近傍に位置する時期に噴射した燃料の多くは、噴射直後に気筒下方に運ばれてしまう。そしてその噴射から間もない圧縮行程前期には、気筒全体への燃料の拡散はさほど進むべくもなく、未だ燃料が気筒下方に遍在したままの状態となっている。そのため上記従来の制御装置では、洗浄用燃料噴射を実施しても、少量の燃料しか吸気ポートに吹き戻させることができず、その吸気デポジットの洗浄効果も自ずと限られたものとなっていた。
【0005】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸気デポジットの洗浄を、より効率的に行うことのできる筒内噴射式内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、前記洗浄用燃料噴射の実施時には、ピストンが上死点近傍に位置する時期に燃料を噴射することをその要旨とする。
【0007】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施時には、ピストンが上死点近傍に位置する時期に燃料噴射が行われるため、噴射された燃料の多くがピストン頂面で反射されて気筒上方に向かうことで、より多くの燃料が吸気ポートに吹き戻されるようになる。したがって上記構成によれば、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、前記洗浄用燃料噴射の実施時には、ピストンが排気上死点近傍に位置する時期から燃料噴射を開始することをその要旨とする。
【0009】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施時には、ピストンが排気上死点近傍に位置する時期から燃料噴射が開始されるようになる。ピストンが排気上死点近傍に位置する時期に燃料を噴射すれば、多くの燃料がピストン頂面で反射されて気筒上方に向かうため、より多くの燃料が吸気ポートに吹き戻されるようになる。したがって上記構成によれば、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0010】
また請求項3に記載の発明は、筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、前記洗浄用燃料噴射の実施時には、排気行程後期から燃料噴射を開始することをその要旨とする。
【0011】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施時には、排気行程後期より燃料噴射が開始されるようになる。排気行程後期にはピストンが上死点近傍に位置しており、噴射された燃料の多くがピストン頂面で反射されて気筒上方に向かうようになる。加えて排気行程後期には、上死点へのピストンの押し上げにより、気筒内にその上方に向かう気流が形成されており、その気流に乗ってより多くの燃料が気筒上方に向かうようになる。そのため上記構成のよれば、より多くの燃料が吸気ポートに吹き戻されるようになり、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0012】
また請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置において、当該筒内噴射式内燃機関は、吸気バルブの開弁時期を可変とする可変動弁機構を備え、且つ前記洗浄用燃料噴射の実施時には、前記吸気バルブの開弁時期を排気行程後期に設定することをその要旨とする。
【0013】
上記構成では、洗浄用燃料噴射が実施される排気行程後期から吸気バルブが開弁されるため、噴射直後から燃料の吸気ポートへの吹き戻しが許容されるようになる。したがって上記構成によれば、噴射した燃料を更に効率的に吸気ポートに吹き戻しさせることができる。
【0014】
また請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置において、当該筒内噴射式内燃機関は、排気バルブの閉弁時期を可変とする可変動弁機構を備え、且つ前記洗浄用燃料噴射の実施時には、前記排気バルブの閉弁時期を排気行程後期に設定することをその要旨とする。
【0015】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施される排気行程後期には排気バルブが閉じられるため、噴射した燃料の排気ポートへの流出を防ぎ、燃料の吸気ポートへの吹き戻しを更に促進することができる。
【0016】
また請求項6に記載の発明は、筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比して燃料の噴射圧を低下させることをその要旨とする。
【0017】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施時には、燃料の噴射圧が低下されて噴射燃料の貫徹力が低減されるようになり、気筒下方への燃料の遍在が抑制されるようになる。また噴射圧を低下させることで空気中に燃料が拡散され易くなり、燃料の吸気ポートへの吹き戻しが促進されるようになる。したがって上記構成のよれば、より多くの燃料を吸気ポートに吹き戻しさせて、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0018】
また請求項7に記載の発明は、筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比してスロットル開度を小さくすることをその要旨とする。
【0019】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施時には、スロットル開度がより小さく設定されて、吸気ポート内の圧力が低下されるようになる。これにより、気筒内と吸気ポート内との差圧が拡大されて、吸気ポートに吹き戻しする空気量が増大されるため、より多くの燃料が吸気ポートに吹き戻されるようになる。したがって上記構成のよれば、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0020】
また請求項8に記載の発明は、吸気バルブのバルブリフト面積を可変とする可変動弁機構を備える筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比して前記吸気バルブのバルブリフト面積を大きくすることをその要旨とする。
【0021】
上記構成では、洗浄用燃料噴射の実施時には、吸気バルブのバルブリフト面積がより増大されるようになる。バルブリフト面積が増大されると、気筒から吸気ポートに空気が流入し易くなり、燃料の吸気ポートへの吹き戻しが促進されるようになる。したがって上記構成によれば、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0022】
なお「バルブリフト面積」とは、開弁から閉弁までのバルブリフト量のクランク角積分値として求められるバルブ特性値であり、例えばバルブリフト量やバルブ作用角を増大すれば、バルブリフト面積も増大されるようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る筒内噴射式内燃機関の制御装置を具体化した第1実施形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の適用される車載用の内燃機関10は、気筒毎に設けられたインジェクタ11によって気筒内に直接燃料が噴射される筒内噴射式内燃機関として構成されている。この内燃機関10の制御装置は、マイクロコンピュータやメモリ等を備える機関制御用の電子制御装置20を中心に構成されている。
【0025】
電子制御装置20には、例えばクランク角センサ21、吸排気側のカム角センサ22,23、アクセルセンサ24、スロットルセンサ25、エアフローメータ26などの機関運転状況を検出する各種センサが接続されている。クランク角センサ21は、内燃機関10の出力軸であるクランクシャフトの回転角を検出し、吸排気側のカム角センサ22,23は、吸排気側のカムシャフトの回転角をそれぞれ検出する。またスロットルセンサ25は、スロットルバルブ12の開度を検出し、エアフローメータ26は、吸入空気量を検出する。これ以外にも、機関冷却水の温度を検出する水温センサや吸気温度を検出する吸気温センサなどの機関制御に必要な情報を検出する各種センサが電子制御装置20に接続されている。
【0026】
電子制御装置20は、それらセンサの検出結果に基づき、機関吸気系に設置されたスロットルバルブ12、各気筒に設けられたインジェクタ11及び点火プラグ13などを制御する。これにより、インジェクタ11による各気筒の燃料噴射量や燃料噴射時期の制御、点火プラグ13による各気筒の点火時期の制御、スロットルバルブ12の開度制御に基づく吸入空気量の制御などの機関制御が行われる。
【0027】
なお内燃機関10には、吸気バルブ18及び排気バルブ19の開閉弁時期、すなわちバルブタイミングをそれぞれ可変とする回転位相差可変機構14,15を備えて構成されている。回転位相差可変機構14,15は、可変動弁機構の1種であり、吸・排気カムシャフトとクランクシャフトとの回転位相差を変更することで、吸気バルブ18及び排気バルブ19のバルブタイミングを可変としている。
【0028】
機関運転中、電子制御装置20は、回転位相差可変機構14,15の作動制御に基づく吸気バルブ18及び排気バルブ19のバルブタイミング制御を実施している。詳しくは、電子制御装置20は、上記クランク角センサ21の検出結果より算出される機関回転速度やアクセルセンサ24の検出結果より把握される機関負荷などに基づいて、吸気バルブ18、排気バルブ19の目標バルブタイミングをそれぞれ設定する。そして、カム角センサ22,23の検出結果より把握される吸気バルブ18及び排気バルブ19の実バルブタイミングが上記設定された目標バルブタイミングとなるように、吸・排気側の回転位相差可変機構14,15の作動量をそれぞれフィードバック制御する。これにより、吸気バルブ18及び排気バルブ19のバルブタイミングが、機関運転状況に応じた適切なバルブタイミングに制御されている。
【0029】
更にこの内燃機関10には、排気を吸気中に還流させる排気再循環装置、及びクランクケース内のオイルやHCの蒸発成分などを吸気中に導入して燃焼させて除去するブローバイガス処理装置が設けられている。そのため、この内燃機関10では、吸気にデポジットを含む排出ガスが導入されることとなり、そのデポジットが吸気ポート17や吸気バルブ18等に付着して、吸気の流れを阻害するなどの不具合が生じることがある。そこで本実施形態では、機関運転中に、付着した吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施するようにしている。
【0030】
図2に、そうした洗浄用燃料噴射の実施に係る「洗浄用燃料噴射制御」のフローチャートを示す。同図に示される処理は、機関運転中に定時割り込み処理として、電子制御装置20により周期的に実施される。
【0031】
このフローチャートの処理が開始されると、まずステップ40で洗浄用燃料噴射の実施の可否が判断される。ここでは、下記条件(a1)、(a2)が共に成立したときに洗浄用噴射の実施条件が成立したと判定して、その可否判断を行っている。
(a1)吸気デポジットの付着が検出されている。
(a2)アイドル運転中である。
【0032】
ここでの吸気デポジットの付着の検出は、次のように行われている。上記のように吸気デポジットが付着した気筒では、気筒内に導入される吸気の流れが阻害されることで、発生トルクが小さくなる。このため、気筒毎の発生トルクのばらつきが大きくなり、内燃機関10のトルク変動が大きくなる。そこで本実施形態では、アイドル運転時の内燃機関10のトルク変動を、クランク角センサ21の検出結果を用いて監視し、トルク変動量が所定の判定値以上となるとき、吸気デポジットの付着有りと判断して、その検出を行っている。
【0033】
またここで洗浄用燃料噴射の実施をアイドル運転中に限定しているのは、次の理由による。洗浄用燃料噴射の実施時には、下記のように吸気バルブ18及び排気バルブ19のバルブタイミングや燃料噴射時期に対して通常とは異なる制御が適用されるため、機関出力等が通常とは変化してしまう。そうした機関出力等の変化が車両の走行に影響することを回避するため、本実施形態では洗浄用燃料噴射をアイドル運転中に限って実施するようにしている。
【0034】
上記条件(a1)、(a2)が共に成立すると(S40:YES)、ステップS41〜S43の処理を通じて、吸気バルブ18の開弁時期、排気バルブ19の閉弁時期、及び燃料噴射の開始時期をそれぞれ設定して洗浄用燃料噴射が実施される。
【0035】
まずステップS41では、吸気バルブ18の開弁時期が排気上死点前となるように、通常のアイドル運転時よりも進角された時期に吸気バルブ18の目標バルブタイミングが設定される。またステップS42では、排気バルブ19の閉弁時期が排気上死点前となるように、通常のアイドル運転時よりも進角された時期に排気バルブ19の目標バルブタイミングが設定される。更にステップS43では、排気行程後期に燃料噴射が開始されるように、燃料噴射の開始時期が設定される。
【0036】
図3に、通常のアイドル運転時、及び洗浄用燃料噴射時の吸気バルブ18及び排気バルブ19の開弁期間(開弁時期から閉弁時期までの期間)の設定例を併せ示す。同図に示されるように、吸気バルブ18の開弁時期及び排気バルブ19の閉弁時期は、通常のアイドル運転時には、排気上死点後にそれぞれ設定されているが、洗浄用燃料噴射時には、それぞれ排気上死点前まで各時期が早められている。
【0037】
また図4には、上記設定例における通常のアイドル運転時における吸排気バルブのリフト曲線が破線によって、洗浄用燃料噴射時の吸排気バルブのリフト曲線が実線によってそれぞれ示されている。同図に示すように、洗浄用燃料噴射時には、ピストン16が上死点に向けて上昇中の排気上死点前に排気バルブ19が閉じられ、吸気バルブ18が開かれる。また同図4に併せ示すように、洗浄用燃料噴射時には、早められた排気バルブ19の閉弁時期及び吸気バルブ18の開弁時期よりも少し前の排気行程後期から燃料噴射が開始される。
【0038】
図5に、以上のようにバルブタイミング及び燃料噴射時期の設定された洗浄用燃料噴射時における内燃機関10の気筒内の様相を例示する。以下、同図5を併せ参照して、本実施形態の作用を説明する。
【0039】
洗浄用燃料噴射時には、上記のように排気行程後期から燃料噴射が開始される。同図5に示すように、このときピストン16は、排気上死点の近傍に位置しており、噴射された燃料の多くがそのピストン16の頂面で反射されて気筒上方に向かうようになる。また排気行程後期には、ピストン16の押し上げにより、気筒上方に向かう気流が形成されている。
【0040】
本実施形態では、洗浄用燃料噴射時には、そうした排気行程後期に、排気バルブ19が閉じられ、吸気バルブ18が開かれる。これにより、気筒内のガスが吸気ポート17に流入されるようになり、噴射された燃料の多くが吸気ポート17内に吹き戻されるようになる。そして吸気ポート17内に吹き戻された燃料によって、吸気ポート17や吸気バルブ18に付着した吸気デポジットが洗浄されるようになる。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)洗浄用燃料噴射の実施時に、ピストン16が排気上死点近傍に位置する排気行程後期から燃料噴射を開始させているため、噴射された燃料の多くがピストン16頂面で反射されて気筒上方に向かうようになる。これにより、より多くの燃料を吸気ポート17に吹き戻させることができ、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0042】
(2)加えて排気行程後期には、上死点へのピストン16の押し上げにより、気筒内にその上方に向かう気流が形成されているため、その気流に乗せてより多くの燃料を吸気ポート17に吹き戻させることができる。
【0043】
(3)洗浄用燃料噴射の実施時には、吸気バルブ18の開弁時期を排気行程後期に設定しているため、噴射直後から燃料の吸気ポート17への吹き戻しが許容されるようになり、噴射した燃料を更に効率的に吸気ポート17に吹き戻させることができる。
【0044】
(4)洗浄用燃料噴射の実施時には、排気バルブ19の閉弁時期を排気行程後期に設定しているため、噴射した燃料の排気側への流出を防いで、燃料の吸気ポート17への吹き戻しを更に促進することができる。
【0045】
(第2実施形態)
続いて本発明を具体化した第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0046】
本実施形態の適用される内燃機関には、可変動弁機構として、排気バルブ19の動弁系には上述した回転位相差可変機構14が設けられている。一方、吸気バルブ18の動弁系には、バルブリフト量や作用角を可変とするリフト量可変機構が設けられている。このリフト量可変機構も、電子制御装置20によって作動制御されている。
【0047】
一方、空燃比制御を行う内燃機関では、低負荷運転時には、噴射燃料の減量に併せて吸入空気量を低減させる必要があり、一般にはスロットルバルブ12の開度(スロットル開度)を絞ることで、吸入空気量を低減させているが、そのことでポンピング損失が大きくなり、燃費性能の悪化を招く。一方、リフト量可変機構を吸気バルブ18の動弁系に備える内燃機関では、リフト量可変機構を利用することで、スロットル開度を絞ることなく吸入空気量を低減させることができ、ポンピング損失の増大を抑えることができる。そこで電子制御装置20は、図6に例示すように、機関負荷、及び機関回転速度に基づき、低負荷・低回転運転時には、吸気バルブ18のバルブリフト量やバルブ作用角を小さくするようにリフト量可変機構を制御することで、ポンピング損失の増大を抑えつつ、吸入空気量を低減させている。
【0048】
ところが、そうした態様で吸入空気量の調整を行う本実施形態の内燃機関に、図2の「洗浄用燃料噴射制御」をそのまま適用した場合、次のような不具合が生じる虞がある。すなわち、スロットル開度を絞ることで吸入空気量を低減させる一般の内燃機関に比して、本実施形態の内燃機関では、洗浄用燃料噴射の実施されるアイドル運転時の吸気通路内の圧力が高くなり、気筒内と吸気通路内との差圧が小さくなっている。そのため、洗浄用燃料噴射時に気筒内から吸気ポート17への燃料の吹き戻し量が低減し、吸気デポジットの洗浄効果が低くなる傾向にある。
【0049】
そこで本実施形態の筒内噴射式内燃機関の制御装置では、図7に示すように「洗浄用燃料噴射制御」を実施することで、吸気ポート17に吹き戻される燃料の量を十分に確保するようにしている。
【0050】
このフローチャートの処理が開始されると、まずステップS50で、第1実施形態と同様に洗浄用燃料噴射の実施の可否が判断される。ここで洗浄用燃料噴射が実施可と判断されると(S50:YES)、本実施形態ではステップS51〜S54の処理を通じて洗浄用燃料噴射が実施される。
【0051】
まずステップS51では、排気バルブ19の閉弁時期が排気上死点前となるように、通常のアイドル運転時よりも進角された時期に排気バルブ19の目標バルブタイミングが設定される。またステップS52では、吸気バルブ18のバルブリフト量を通常のアイドル運転時よりも増大させるように、リフト量可変機構の目標作動量が設定される。これにより、吸気バルブ18及び排気バルブ19のバルブ特性は、図8に破線で示す通常のアイドル運転時の設定から、同図8に実線で示す設定に変更されるようになる。
【0052】
一方、ステップS53では、スロットルバルブ12の目標開度が、通常のアイドル運転時よりも十分に小さい開度に設定される。このときのスロットルバルブ12の目標開度は、吸気通路内の圧力が、洗浄用燃料噴射時の吸気ポート17への燃料の吹き戻しが十分に確保されるまで低下されるように設定されている。
【0053】
更にステップS54では、排気行程後期に燃料噴射が開始されるように、燃料噴射時期が設定される。
こうした本実施形態の内燃機関では、図9(a)に示すように、通常のアイドル運転時には、スロットルバルブ12は比較的大きい開度に設定されており、吸気圧は比較的高いままとされている。そしてリフト量可変機構によって吸気バルブ18のバルブリフト量及びバルブ作用角を小さく設定することで吸入空気量が調整されており、ポンピング損失の増大が抑えられている。
【0054】
一方、洗浄用燃料噴射の実施時には、図9(b)に示すように、スロットル開度が絞られ、吸気圧が十分に低下されるようになる。これに併せ、リフト量可変機構によって吸気バルブ18のバルブリフト量及びバルブ作用角を拡大することで、吸入空気量が調整されて、アイドル運転に必要な吸入空気量が確保される。そしてこうした状態で、燃料噴射時期が排気上死点近傍に設定され、洗浄用燃料噴射が実施される。すなわち、第1実施形態とほぼ同様の状態で、洗浄用燃料噴射が行われるようになる。
【0055】
以上説明した本実施形態では、上記(1)〜(4)に記載の効果に加え、更に次の効果を奏することができる。
(5)本実施形態では、洗浄用燃料噴射の実施時には、スロットルバルブ12の開度がより小さく設定されて、吸気ポート17内の圧力が低下されるようになる。これにより、気筒内と吸気ポート17内との差圧が拡大されて、吸気ポート17に吹き戻しする空気量が増大されるため、より多くの燃料が吸気ポート17に吹き戻されるようになり、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0056】
(6)本実施形態では、吸気バルブ18のバルブリフト面積を可変とするリフト量可変機構によって、洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比して同一運転条件での吸気バルブ18のバルブリフト面積を大きくするようにしている。バルブリフト面積が大きくされると、気筒から吸気ポート17に空気が流入し易くなり、燃料の吸気ポート17への吹き戻しが促進されるため、吸気デポジットの洗浄をより効率的に行うことができる。
【0057】
(7)本実施形態では、通常のアイドル運転時には、スロットル開度を大、吸気バルブ18のバルブリフト面積を小としてポンピング損失を抑制し、洗浄用燃料噴射の実施時には、スロットル開度を小、吸気バルブ18のバルブリフト面積を大として、吸気ポート17への燃料の吹き戻しを促進させている。そのため、ポンピング損失の抑制と吸気デポジットの洗浄効率の向上との両立を図ることができる。
【0058】
(第3実施形態)
続いて本発明を具体化した第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0059】
図10に、本実施形態の「洗浄用燃料噴射制御」のフローチャートを示す。本フローチャートの処理が開始されると、まずステップS60で、第1実施形態と同様に洗浄用燃料噴射の実施の可否が判断される。ここで洗浄用燃料噴射が実施可と判断されると(S60:YES)、本実施形態ではステップS61〜S63の処理を通じて洗浄用燃料噴射が実施される。
【0060】
まずステップS61では、吸気バルブ18の閉弁時期が排気行程前期となるように、吸気バルブ18の目標バルブタイミングが通常のアイドル運転時よりも遅角された時期に設定される。またステップS62では、燃料噴射の開始時期が吸気下死点近傍に設定される。すなわち、ここでは、上述した特許文献1の制御装置と同様に吸気バルブの閉弁時期及び燃料噴射時期を設定して洗浄用燃料噴射が行われる。
【0061】
単にこのように吸気バルブ18の閉弁時期及び燃料噴射時期を設定しただけでは、上述した通り、噴射した燃料が気筒下方に偏在してしまい、十分な量の燃料を吸気ポート17内に吹き戻させることが困難となってしまう。そこで、本実施形態では、ステップS63において、更に燃料の噴射圧を低下させるようにしている。こうして燃料の噴射圧を低下させて、噴射燃料の貫徹力を十分に低減すれば、気筒上方で燃料が拡散されるようになり、燃料の気筒下方への偏在を抑制することができる。また気筒内の空気中への燃料の拡散が促進されることから、気筒内の空気と共により多くの燃料が吸気ポート17内に導入されるようになる。そのため、上記のような吸気バルブ18の閉弁時期及び燃料噴射時期の設定においても、吸気デポジットの洗浄効率を十分に確保することができる。
【0062】
なお、第1実施形態や第2実施形態での洗浄用燃料噴射の実施に際しても、本実施形態と同様に燃料の噴射圧を低下させるようにすれば、吸気デポジットの洗浄効率の更なる向上を図ることができる。
【0063】
以上説明した各実施形態は、次のように変更することもできる。
・上記各実施形態では、吸気デポジットの付着を、内燃機関10のトルク変動量の増大により検出していたが、その検出は他の方法で行うこともできる。例えば前回の洗浄用燃料噴射の実施から内燃機関10の稼働期間が所定期間以上となることで、吸気デポジットの付着が生じたと判定して、洗浄用燃料噴射を定期的に実施させるようにするようにしても良い。
【0064】
・また吸気デポジットの付着の検出を行わず、内燃機関10が洗浄用燃料噴射に適した運転条件にあるときには常に洗浄用燃料噴射を行うようにしても良い。・上記各実施形態では、アイドル運転時にのみ、洗浄用燃料噴射を行うようにその実施条件を設定していたが、洗浄用燃料噴射を行う機関運転条件を適宜変更しても良い。アイドル運転時以外にも、洗浄用燃料噴射の実施が車両の走行等に与える影響を無視できる運転条件があれば、そうした運転条件にも洗浄用燃料噴射を行うようにしても良い。
【0065】
・上記各実施形態では、洗浄用燃料噴射の実施に伴う吸気バルブ18の開弁時期や排気バルブ19の閉弁時期の変更を、回転位相差可変機構14,15により行うようにしていたが、バルブリフト量やバルブ作用角を可変とする他の方式の可変動弁機構により行うようにしても良い。
【0066】
次に、以上説明した本発明の実施の形態から把握される技術的思想を以下に列記する。
(イ)当該筒内噴射式内燃機関は、吸気バルブの開弁時期を可変とする可変動弁機構を備え、且つ前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときよりも前記吸気バルブの開弁時期を早めて、排気行程後期に設定する請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
【0067】
(ロ)当該筒内噴射式内燃機関は、排気バルブの閉弁時期を可変とする可変動弁機構を備え、且つ前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときよりも前記排気バルブの閉弁時期を早めて、排気行程後期に設定する請求項3又は4に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
【0068】
(ハ)前記洗浄用燃料噴射は、前記吸気デポジットの付着量が所定量よりも大きいと予測されるときに、通常の燃料噴射に替えて実施される請求項1〜8、上記(イ)(ロ)のいずれかに記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
【0069】
(ニ)前記洗浄用燃料噴射は、更に当該機関が所定の運転条件にあるときに実施される上記(ハ)に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
(ホ)前記所定の運転条件とは、アイドル運転条件である上記(ニ)に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の全体構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の洗浄用燃料噴射制御のフローチャート。
【図3】同実施形態での洗浄燃料噴射時のバルブタイミング設定例を示す模式図。
【図4】同実施形態での洗浄燃料噴射時のバルブリフト曲線を示すグラフ。
【図5】同実施形態における洗浄用燃料噴射時の燃料挙動の一例を示す拡大断面図。
【図6】第2実施形態のリフト量可変機構によるバルブ特性の変化態様例を示すグラフ。
【図7】同実施形態の洗浄用燃料噴射制御のフローチャート。
【図8】同実施形態でのバルブリフト曲線の設定例を示すグラフ。
【図9】同実施形態での(a)通常のアイドル運転時、及び(b)洗浄用燃料噴射の実施時におけるバルブリフト量及びスロットル開度の設定態様を例示する模式図。
【図10】本発明の実施形態3についてその洗浄用燃料噴射制御のフローチャート。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…インジェクタ、12…スロットルバルブ、13…点火プラグ、14,15…回転位相差可変機構(可変動弁機構)、16…ピストン、17…吸気ポート、18…吸気バルブ、19…排気バルブ、20…電子制御装置、21…クランク角センサ、22,23…カム角センサ、24…アクセルセンサ、25…スロットルセンサ、26…エアフローメータ。
Claims (8)
- 筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、
前記洗浄用燃料噴射の実施時には、ピストンが上死点近傍に位置する時期に燃料を噴射することを特徴とする筒内噴射式内燃機関の制御装置。 - 筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、
前記洗浄用燃料噴射の実施時には、ピストンが排気上死点近傍に位置する時期から燃料噴射を開始することを特徴とする筒内噴射式内燃機関の制御装置。 - 筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、
前記洗浄用燃料噴射の実施時には、排気行程後期から燃料噴射を開始することを特徴とする筒内噴射式内燃機関の制御装置。 - 当該筒内噴射式内燃機関は、吸気バルブの開弁時期を可変とする可変動弁機構を備え、且つ前記洗浄用燃料噴射の実施時には、前記吸気バルブの開弁時期を排気行程後期に設定する請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
- 当該筒内噴射式内燃機関は、排気バルブの閉弁時期を可変とする可変動弁機構を備え、且つ前記洗浄用燃料噴射の実施時には、前記排気バルブの閉弁時期を排気行程後期に設定する請求項3又は4に記載の筒内噴射式内燃機関の制御装置。
- 筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、
前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比して燃料の噴射圧を低下させることを特徴とする筒内噴射式内燃機関の制御装置。 - 筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、
前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比してスロットル開度を小さくすることを特徴とする筒内噴射式内燃機関の制御装置。 - 吸気バルブのバルブリフト面積を可変とする可変動弁機構を備える筒内噴射式内燃機関に適用されて機関運転中に吸気デポジットを洗浄するための洗浄用燃料噴射を実施する制御装置であって、
前記洗浄用燃料噴射の実施時には、そうでないときに比して前記吸気バルブのバルブリフト面積を大きくすることを特徴とする筒内噴射式内燃機関の制御装置。
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