JP2004250563A - スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、粉末物およびこれを用いた表皮体 - Google Patents
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Abstract
【課題】緩衝層であるウレタンフォームとの接着を良好にし、溶融性にも優れたスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、これを粉砕した粉末物、および該粉末物を用いてスラッシュ成形により得られた表皮体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂100質量部に、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、かつビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合が5〜25質量%であり、そして水素添加前の重合体ブロックBの1,2結合量の平均が62モル%以上である水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、活性水素を有するオレフィン系ポリマーを5.0〜20質量部と、イソシアネートの反応を促進する触媒を含み、かつ所定のMFR値をもつスラッシュ成形用エラストマー組成物にある。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリプロピレン樹脂100質量部に、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、かつビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合が5〜25質量%であり、そして水素添加前の重合体ブロックBの1,2結合量の平均が62モル%以上である水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、活性水素を有するオレフィン系ポリマーを5.0〜20質量部と、イソシアネートの反応を促進する触媒を含み、かつ所定のMFR値をもつスラッシュ成形用エラストマー組成物にある。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、粉末物およびこれを用いた表皮体に係り、詳しくは緩衝層であるウレタンフォームとの接着を良好にし、溶融性にも優れたスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、これを粉砕した粉末物、および該粉末物を用いてスラッシュ成形により得られた表皮体に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟質の粉末材料を用いた粉末成形法として、軟質塩化ビニル樹脂粉末を用いた粉末スラッシュ成形法がインストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮に広く採用されている。これはソフトな感触であり、皮シボやステッチを設けることができ、また設計自由度が大きいこと等の意匠性が良好なことによる。
【0003】
この成形方法は、他の成形方法である射出成形や圧縮成形と異なり、賦形圧力をかけないので、成形時には粉末材料を複雑な形状の金型に均一付着させるためには粉体流動性に優れることが必要であり、金型に付着した粉体が溶融して無加圧下でも流動して皮膜を形成するために、溶融粘度が低いことも条件になっている。更に、金型を冷却して成形された表皮を金型より容易に脱型できることも必要であった。
【0004】
これを改善した一つの方法として、特許文献1には、ポリプロピレン樹脂と特定のスチレン系熱可塑性エラストマーとを質量比70/30〜30/70の割合で混合したものを粉砕して用いることが提案されている。
【0005】
ここでは、スチレン系熱可塑性エラストマーがスチレン含量20質量%以下のスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン含量20質量%以下のスチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体、そしてスチレン含量20質量%以下の水素添加スチレンブタジエンゴムから選ばれたものであり、ポリプロピレン樹脂との相溶性が良好で粉末成形に適した組成物になっている。
【0006】
また、スラッシュ成形に用いる熱可塑性エラストマー組成物としては、エチレン・α−オレフィン系共重合体、ポリオレフィン樹脂、および共役ジエン重合体またはビニル芳香族化合物単位含有量が25質量%以下である共役ジエン−ビニル芳香族化合物ランダム共重合体が水添され、かつ水添率が70%以上である水添ジエン系重合体を使用することが、特許文献2に記載されている。
【0007】
更には、ポリプロピレン樹脂と水素添加スチレンブタジエンランダム共重合体ゴムに、エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・オクテン共重合体から選ばれる熱可塑性エラストマーを混合し粉砕したスラッシュ成形に用いる熱可塑性エラストマー組成物も、特許文献3に記載されている。
【0008】
上記スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体において、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックの1,2結合量の平均が62モル%以上の範囲にある水素添加ブロック共重合体を用いたものとして、特許文献4として記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−82433号公報
【特許文献2】
特開平10−30036号公報
【特許文献3】
特許第2973353号明細書
【特許文献4】
特開2002−327097号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のポリプロピレン樹脂と水素添加スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体との混合において水素添加スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体がポリプレピレン樹脂中で微分散するので、物性の低下が少なくて表皮素材に適している。しかし、これらの表皮素材であるオレフィン系熱可塑性エラストマーは非極性であり、極性基を有する緩衝層であるウレタンフォームとの接着は困難であった。
【0011】
そのため、成形表皮裏面に接着剤を塗布してウレタンフォームとの接着性を高めていた。しかし、それに伴う加工費や材料費が増加し、コストアップの問題が生じていた。また、接着処理後の表皮は処理面に粘着性を残すものが多く、重ね置きが出来ず、表皮を保管する場合にはかなりのスペースを占有するという問題も生じていた。
【0012】
本発明はこのような問題点を改善するものであり、緩衝層であるウレタンフォームとの接着を良好にし、溶融性にも優れたスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、これを粉砕した粉末物、および該粉末物を用いてスラッシュ成形により得られた表皮体の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1記載の発明では、スラッシュ成形に用いる粉末材料の素材となる熱可塑性エラストマー組成物であり、
(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に、
(2)ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、かつビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合が5〜25質量%であり、そして水素添加前の重合体ブロックBの1,2結合量の平均が62モル%以上である水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、
(3)数平均分子量が800〜30,000の活性水素を有するオレフィン系ポリマーを5.0〜20質量部と、
(4)イソシアネートの反応を促進する触媒を含み、
かつJIS K7210に準じて温度230°C、荷重2.16kgfの条件下で測定したメルトフローレート(MFR)値が10g/10分以上であるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、溶融性に優れ、これを用いて得られる表皮はウレタンフォームとの接着が良好なものとなる。
【0014】
本願の請求項2記載の発明では、請求項1記載の組成物に、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して5〜250質量部配合したスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、より溶融性に優れたものになる。
【0015】
本願の請求項3記載の発明では、(1)ポリプロピレン樹脂は、示差熱量計にて昇温速度5°C/分で測定される融点が120〜145°Cのプロピレン・α−オレフィン共重合体であるラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、低融点で溶融性が良くてシート成形性に優れるものとなる。
【0016】
本願の請求項4記載の発明では、(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーが酸変性ポリプロピレン、水酸基含有ポリプロピレン、両末端水酸基水素添加ポリブタジエン、そしてエチレン・酢酸ビニルコポリマーの加水分解物から選ばれた少なくとも1種類以上の高分子であるスラッシュ成形用エラストマー組成物にある。
【0017】
本願の請求項5記載の発明では、表面滑性付与剤として25℃における粘度が300cSt以上のジメチルシロキサンを主成分とするシリコンオイルを(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を含む配合物100質量部に対して0.3〜5.0質量部含有したスラッシュ成形用エラストマー組成物にある。
【0018】
本願の請求項6記載の発明では、有機過酸化物を(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.02〜5.0質量部配合したスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、請求項1〜5の何れかに記載の組成物よりポリプロピレン樹脂が低分子量化するためMFR値が大きく、粉末成形の成形性が良好になる。
【0019】
本願請求項7記載の発明では、上記請求項1〜6の何れかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物にプロセスオイルを添加したものであり、MFR値がさらに大きくなり、粉末成形において成形性が良好になる。
【0020】
本願の請求項8記載の発明では、上記請求項1〜7のいずれかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を常温もしくは冷凍粉砕し、最大1.00mmの篩を通過した粒径を有するものであるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物にあり、スラッシュ成形においてもピンホールのない粉末成形体を得ることができる。
【0021】
本願の請求項9記載の発明では、上記請求項1〜7のいずれかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を水中ホットカットし、球換算平均粒径が1.00mm以下であるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物にあり、ピンホールのない粉末成形体を得ることができる。
【0022】
本願の請求項10記載の発明では、上記請求項8もしくは9に記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物を用いてスラッシュ成形して得られた表皮体であり、この表皮体は引張伸び、引張強度等の物性値が高く、溶融性および成形性に優れ,緩衝層であるウレタンフォームとの接着性が良好であり、金型の脱型性にも優れるものであり、インストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮として使用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(1)ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンホモポリマー、α−オレフィンとのブロックあるいはランダム共重合体のいずれでもよいが、特にα−オレフィンとしてエチレンを用いたブロックあるいはランダム共重合体が成形体の柔軟性の面からいって好ましい。また、圧力のかからない粉末スラッシュ成形に用いるためには、ポリプロピレン樹脂の溶融流動性の指数としてJIS K7210により230°C、荷重2.16kgfの条件下で測定したMFRが10g/10分以上であることが必要であり、好ましくは40〜800g/10分である。
【0024】
上記(1)ポリプロピレン樹脂に含まれるプロピレン・α−オレフィン共重合体は、示差熱量計にて昇温速度5°C/分で測定される融点が120〜145°C以下であり、プロピレンとα−オレフィンとのブロックあるいはランダム共重合体のいずれでもよく、α−オレフィンとしてエチレン、ブチレン、ペンテン、オクテンをあげられるが、特に価格面からいってエチレンが好ましい。このプロピレン・α−オレフィン共重合体を使用すると、低融点で溶融性が良くてシート成形性に優れるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物になる。
【0025】
また、MFRが10g/10分未満の溶融流動性に欠けるポリプロピレン樹脂を使用する場合には、該ポリプロピレン樹脂100質量部に対して有機過酸化物を0.02〜5.0質量部配合し、120〜250°Cの温度で混練してMFRを100〜800g/10分になるようにポリプロピレン樹脂の低分子量化を図ることもできる。
【0026】
更に、ポリプロピレン樹脂に有機過酸化物を添加して溶融混練した後に、本発明で使用する(2)水素添加ブロック共重合体を溶融混練することができる。(2)水素添加ブロック共重合体と有機過酸化物を同時に溶融混練した場合、水素添加ブロック共重合体が低分子量化して成形シートの表面へ移行し、熱老化後に表面に粘着性や光沢が発生する。
【0027】
上記有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されているジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2.5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等があり、熱分解による1分間の半減期が150〜250°Cのものが好ましい。
【0028】
有機過酸化物は120〜250°Cの加熱下で混練する過程で、ポリプロピレン樹脂の主鎖を切断して分子量を低下させ、熱可塑性エラストマー組成物に高い溶融流動性をもたせる。有機過酸化物の添加量は熱可塑性エラストマー組成物中、0.02〜5.0質量%であり、0.02質量%未満の場合にはポリプロピレン樹脂の主鎖を切断する分解能力が少なく、熱可塑性エラストマー組成物に高い溶融流動性を付与できなくなる。一方、5.0質量%を越えると、分解が過剰になり、粉体成形品の引張強度等の機械的特性が低下する。
【0029】
本発明で使用する(2)水素添加ブロック共重合体は、(1)ポリプロピレン樹脂との相溶性に優れており、ポリプロピレン樹脂に混練すると柔軟になり、折曲げや白化しにくいスラッシュ形用熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0030】
上記(2)水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、末端にある重合体ブロックの少なくとも1個が重合体ブロックBであり、好ましい構造としてはA−B、A−B―A―B、B−A−B−A−B、(B−A−B)n−X(ここでnは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す)。
【0031】
また、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等のうちから1種、または2種以上から選ばれ、中でもスチレンが好ましい。上記ビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合は5〜25質量%であり、柔軟性に富む表皮体を得るためには5〜15質量%が適当である。
【0032】
そして、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックの1,2結合量の平均が62モル%以上で、最大100モル%に近いものであり、62モル%未満の場合には、シートを折り曲げたときに白化しやすくなる。このような水素添加ブロック共重合体の代表的なものとして、国際公開番号WO00/15681に開示されており、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)である旭化成社製の商品「タフテックH1221」がある。
【0033】
上記のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)は、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックの1,2結合量の平均が62モル%以上であり、他方後述する旭化成社製の「タフテックH1062、H1052」のようなスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)では、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックが1,4結合が主体になっている。
【0034】
上記の(2)水素添加ブロック共重合体の添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して20〜500質量部であり、ポリプロピレン樹脂が多くなると、成形された表皮が硬くなり、一方少なくなると引張強度が低下する。
【0035】
また、本発明で使用する(2)水素添加ブロック共重合体は、(1)ポリプロピレン樹脂と相溶性が非常に良好で、(1)ポリプロピレン樹脂中の(2)水素添加ブロック共重合体が粒子径15〜20nmで微分散していることも透過型電子顕微鏡により確認されている。
【0036】
上記(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を配合すると、(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体成分が均一に微分散することで,成形性が良好になり、物性値が高く、柔軟でかつ折り曲げ時に白化することのないスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物や表皮体が得られる。
【0037】
また、本発明で使用する(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーとしては、酸変性ポリプロピレン樹脂、水酸基含有ポリプロピレン樹脂、エチレン・酢酸ビニルコポリマーの加水分解物、末端カルボキシル基ポリブタジエン、末端水酸基ポリブタジエン、末端カルボキシル基ポリブタジエン水素添加物、末端水酸基ポリブタジエンの水素添加物、酸変性スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を挙げることができる。
【0038】
具体的には、末端水酸基ポリブタジエンでは、例えば三菱化学社製である「ポリテールH」が挙げられ、また水酸基含有ポリプロピレン樹脂では、例えば日本油脂社製の「ユーメックス1210」を挙げることができる。
【0039】
また、上記(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーの重量平均分子量は800〜30,000が好ましく、800未満では表皮表面に移行しやすくなり光沢やべとつきの原因になり、30,000を超えると溶融粘度が大きくなるため、活性水素が全体に分散しにくく、イソシアネート基を有するウレタンフォームとの接着効果が小さくなる。
【0040】
添加量は5.0〜20質量部が好ましく、5.0質量部未満では接着性の改良効果が小さく、一方20質量部を越えると引張強度の低下が大きくなる。
【0041】
(4)イソシアネ−トの反応を促進する触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジステアレート等の有機錫化合物、テトラアルキルエチレンジアミン、N,N’−ジアルキルベンジルアミン等の3級アミン化合物、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸塩、アルカリ金属のカルボン酸塩等を挙げることができる。
上記触媒の添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂と、(2)水素添加ブロック共重合体、そして(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーからなる熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して0.01〜2質量部配合され、0.01質量部未満ではウレタンフォームとの接着力が小さくて効果が乏しく、また2質量部を越えると表面へ移行する悪影響がでる。
【0042】
本発明で使用する(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、吸油能に優れたエラストマーであり、(2)水素添加ブロック共重合体と同時に配合することにより、(1)ポリプロピレン樹脂の相溶性が良好になる。また、プロセスオイルと組成物中のオリゴマー成分を吸収する性質を有するもので、エチレン・α−オレフィン共重合体と非結晶性のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体とから選択される少なくとも1種類である。好ましいα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン等の炭素原子数が3〜10のα−オレフィンが挙げられる。特に、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン・オクテン共重合体(EOR)が好ましい。
【0043】
尚、上記(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、本発明に使用する(2)水素添加ブロック共重合体に比べて(1)ポリプロピレン樹脂に対する相溶性が劣っており、(1)ポリプロピレン樹脂に混練、添加すると、μm単位の大きさで分散するので、引張物性が低下する傾向にある。これに上記に示す吸油能に優れたエラストマーである(5)エチレン・α―オレフィン系共重合体を添加した場合には、組成物中のオリゴマー成分とオイルを吸収してブリードをかなり阻止することができる。
【0044】
上記(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムの添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して5〜25質量部である。5質量部未満になると、組成物中のオリゴマー成分とオイルを充分に吸収できなくなり、また250質量部を越えると、ポリプロピレン樹脂との分散が悪くなり、引張物性が低下する傾向にある。
【0045】
本発明において表面滑性付与剤として使用するシリコンオイルは、粘度が比較的大きいものが好ましく、25℃粘度300cSt以下の低分子量シリコンオイルでは、成形表皮表面へ表面移行して光沢や粘着を発生しやすくなる。シリコンオイルは、直鎖状ジメチルポリシロキサン、例えばジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、アルキル変性シリコンオイル、フッ素変性シリコンオイルが挙げられ、代表的なものにジメチルシロキサンを主成分とする東レ・ダウコーング・シリコーン社製の「SH200CV」が挙げられる。
【0046】
シリコーンオイルは単独で配合することも可能だが、好ましくは、高粘度シリコーンオイルをあらかじめ樹脂に混練したマスターバッチペレットが取り扱い易い。代表的なものに東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のシリコンオイルマスターバッチ「BY27−001」がある。
【0047】
また、シリコンオイルの添加は、オイル状のシリコンオイルの場合、混練する樹脂ペレットに予め分散させてから混練してもよいし、押出し機のオイルベント口から注入して混練させてもよい。またシリコンオイルマスターバッチのペレットの場合は、押出し機の原料ホッパーに混練する樹脂ペレットとドライブレンドしてから混練する。
【0048】
シリコンオイルの添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を含む配合物100質量部に対して0.3〜5.0質量部が好ましく、0.3質量部未満の場合には、表皮体の金型からの脱型性及び表皮表面の滑性効果が劣り、一方5.0質量部を越えると、表皮体の引張物性が低下する傾向にある。
【0049】
本発明では、プロセスオイルを添加することにより組成物中のエラストマー成分に吸収されて溶融粘度を下げるとともに、表皮体の硬度を下げ、柔軟性をもたせる効果がある。上記プロセスオイルはゴム用に使用されるものであり、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系に分類されるが、エラストマー成分との相溶性によりパラフィン系が好ましい。添加量は水素添加ブロック共重合体100質量部に対して5〜200質量部が好ましい。200質量部を越えると、引張物性が低下し、5質量部未満になると、溶融粘度が下がらず表皮が硬くなる。
【0050】
熱安定剤としては、通常のポリオレフィンに用いられるものが使用できる。一般的には、フェノールとリン系の酸化防止剤を併用して使用するが、特に限定されるものではない。
【0051】
また、光安定剤としては、ラジカル捕捉剤であるヒンダードアミン、ベンゾトリアゾール系のものが使用されることもある。
【0052】
顔料は通常のオレフィン系に適した有機、無機のものが使用される。更に、脂肪酸金属塩等の滑剤や炭酸カルシウム、タルク等の充填剤等が必要に応じて添加される。
【0053】
これら配合物の混合は、下記の6つの方法によって溶融混練される。
(a)MFRが100〜800g/10分の(1)ポリプロピレン樹脂に、(2)水素添加ブロック共重合体を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法であり、この場合には有機過酸化物を添加しない。
【0054】
(b)(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法であり、この場合には有機過酸化物を添加しない。
(c)(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体、プロセスオイル、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法であり、この場合には有機過酸化物を添加しない。
(d)予め(1)ポリプロピレン樹脂に有機過酸化物を0.02〜5.0質量部添加し、120〜250℃の温度で混練してMFRを100〜800g/10分に調整した(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法がある。
【0055】
(e)(1)ポリプロピレン樹脂と(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムに有機過酸化物を0.02〜5.0質量部添加し、120〜250℃の温度で混練した後、更にこれに(2)水素添加ブロック共重合体を添加して120〜250℃の温度で混練する方法がある。
【0056】
(f)(1)ポリプロピレン樹脂と(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムとプロセスオイルに有機過酸化物を0.02〜5.0質量部添加し、120〜250℃の温度で混練した後、更にこれに(2)水素添加ブロック共重合体を添加して120〜250℃の温度で混練する方法があり、順次二度に分けて混練しても良く、ベント口を利用してワンパスで混練することもできる。
【0057】
添加混練方法は添加剤をV型ブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いてドライブレンドしたものを原料供給ホッパーより供給し、プロセスオイルはベント口より注入し、120〜250°Cの範囲に温度調節した二軸押出機で溶融混練してペレット化する。
【0058】
また、密閉式混練機であるニーダー、バンバリーミキサー等によってエラストマー成分である水素添加ブロック共重合体とエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムにプロセスオイルを添加して混練してペレット化した後、このペレットとポリプロピレン樹脂とドライブレンドして、120〜250°Cの範囲に温度調節した一軸あるいは二軸押出機で溶融混練してペレット化することもできる。
【0059】
得られたペレットの溶融粘度であるMFRは温度230°C、荷重2.16kgfの条件下で10g/10分以上が好ましい。これ未満になると、組成物の溶融流動性が小さくなって表皮にピンホールが発生する傾向がある。
【0060】
上記の配合から得られたペレットは、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル等の衝撃型微粉砕機を用いて微粉砕される。この時通常では液体窒素を用いて冷凍粉砕される。また、配合によっては溶融樹脂をスプレーあるいはディスクアトマイザーによって噴霧し冷却することによって粉体化することができる。
【0061】
粉砕されたものは篩い等によって粒径が最大1.00mmの篩を通過したもので、平均一次粒径が100〜800μmのものが多く集められ、これに有機あるいは無機の粉体性改良剤を添加、混合して粉末スラッシュ成形用に使用する。
また、水中ホットカット方式により製造される場合も同様に平均一次粒径が100〜800μmのものが多く集められ、粉末成形に用いることができる。
また、繊維状に細く押出されたストランドを1mm以下にカットしたものも使用できる。
【0062】
次いで、エラストマー組成物を用いて粉末スラッシュ成形を行う。この成形では組成物の融点以上に加熱された型にこれを主として重力で落下させて投入し、一定時間経過後に型を反転し、余分の組成物を回収箱に集める。型表面には組成物が層となって付着しており、時間経過とともに溶融してスキン層が形成される。そして、型を冷却してスキン層を脱型するものであり、これが繰り返し行われる。
【0063】
型の加熱方法としては、オイル循環あるいは熱風炉へ入れる方法が一般的である。オイル循環はパイプ配管配置により型温度調整が容易であるが、型面からのみ加熱される。一方、熱風炉を用いると、型面および成形物裏面の両面からの加熱が可能であるが、生産性を考慮して熱風を300°C以上に設定することが多いため、成形物裏面の熱酸化劣化を起こさないように処方や条件を配慮する必要がある。
【0064】
熱風方式は、粉末スラッシュ成形を多層(2ないし3)に行う時に有効である。即ち、加熱された型に最外層となる1回目の粉末をスラッシュ成形し、半溶融状態で2回目の粉末を付着させ、そして必要なら3回目もスラッシュ成形し、その後加熱溶融する。この場合、型面側のみからの加熱では、熱伝達が不充分なので成形物裏面からの加熱も可能な熱風炉方式が用いられることが多い。
【0065】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜5、比較例1〜5
実施例1〜5、比較例1〜5では、表1、2に示すポリプロピレン樹脂、水素添加ブロック共重合体、各種エラストマー、シリコンオイル、安定剤をタンブラーでドライブレンドしたものを、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX44α2‐52.5AW‐5V)の原料供給ホッパーより供給し、190〜230°C、300rpmで混練して押出しペレット化した。
上記で得られたペレットを液体窒素に浸し、ターボミルT250−4J(ターボ工業社製)に投入して粉砕し、1,000μmの篩い通過分のみを集めた。
【0066】
次に、上記粉体組成物を用いて粉末スラッシュ成形を行った。粉末スラッシュ成形の方法としては、まず皮シボ模様のついた150mm×150mm×3mmの板をオーブン中で250°Cに加熱し、その上に上記粉体組成物を約800gのせて10分間置いて付着させた後、溶融付着しなかった粉体を除いて、300°Cに調節したオーブン中で60秒間加熱し、オーブンより取り出し水冷して、厚さ約0.8mmの表皮を脱型した。
【0067】
上記ペレットの溶融粘度、スラッシュ成形した表皮のシート成形性、脱型性、引張物性、及び接着性評価を下記の方法で行った。得られた結果を表1,2に示す。
【0068】
溶融粘度はペレットをJIS K7210により230°C、荷重2.16kgfの条件下でメルトフローレートを測定した。
【0069】
表皮の脱型性の難易は感覚で良否を判断した。○は良であり、×は悪である。また、引張物性は、スラッシュ成形で得られた表皮をJIS3号ダンベルで打ち抜き、引張速度200mm/分で引張強さと伸びを測定した。
【0070】
接着性評価は300×200×8mmの窪みを有する340×200×12mmの鉄板を金型として用い、40℃のオーブンで加熱後、窪み底部に表皮成形シートを置き、予め配合した半硬質ウレタンフォーム原料液約100gを注入し、直ちにアルミ版で密封し、40℃のオーブンで4分間加熱して表皮とウレタンフォーム積層体を得た。これを幅25mm、長さ150mmに切り出し、評価用サンプルとした。
【0071】
表皮とウレタンフォーム層間における180°剥離強度と剥離状態を引張速度200mm/秒で評価した。剥離状態は剥離全面ウレタンフォームの凝集破壊の場合を○、部分的凝集破壊の場合を△、全面界面剥離の場合を×とした。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1に示す所定量の活性水素を有するポリオレフィン系ポリマーを配合し、混練した実施例1〜5では、引張物性が低下することなく、脱型性が良好で、表皮とウレタンフォームとの接着性が良好であり、活性水素を有するオレフィン系ポリマーによる効果があらわれていることが明らかである。他方、活性水素を有するオレフィン系ポリマーが未添加の比較例1,4では表皮とウレタンフォームとの接着性が悪いことが判る。
【0075】
また、表2に示す比較例2、5では、活性水素を有するオレフィン系ポリマーを2.2質量部添加した場合であるが、表皮とウレタンフォームとの剥離状態は悪く、剥離強度も低くなっており、実施例1、4から活性水素を有するオレフィン系ポリマーの5.4質量部以上の添加で効果が現れていることが判る。
【0076】
比較例3では、イソシアネートとの反応を促進する触媒が未添加の場合であるが、表皮とウレタンフォームとの剥離状態は悪く、剥離強度も低くなっており、触媒が未添加の場合、活性水素を有するオレフィン系ポリマーによる接着性向上の効果が現れていることが判る。
【0077】
【発明の効果】
以上のように本願の各請求項記載の発明では、ポリプロピレン樹脂100質量部に、水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、数平均分子量が800〜30,000の活性水素を有するオレフィン系ポリマー5.0〜20質量部とイソシアネートの反応を促進する触媒を含有することで、溶融性に優れた熱可塑性エラストマー組成物となり、これを用いて得られた粉末スラッシュ成形表皮は、ウレタンフォームとの接着性に優れ、また表皮の金型からの脱型性も良好なものとなり、更に表面滑性付与剤やプロセスオイル、有機過酸化物を添加することで、これらの特性をより一層向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、粉末物およびこれを用いた表皮体に係り、詳しくは緩衝層であるウレタンフォームとの接着を良好にし、溶融性にも優れたスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、これを粉砕した粉末物、および該粉末物を用いてスラッシュ成形により得られた表皮体に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟質の粉末材料を用いた粉末成形法として、軟質塩化ビニル樹脂粉末を用いた粉末スラッシュ成形法がインストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮に広く採用されている。これはソフトな感触であり、皮シボやステッチを設けることができ、また設計自由度が大きいこと等の意匠性が良好なことによる。
【0003】
この成形方法は、他の成形方法である射出成形や圧縮成形と異なり、賦形圧力をかけないので、成形時には粉末材料を複雑な形状の金型に均一付着させるためには粉体流動性に優れることが必要であり、金型に付着した粉体が溶融して無加圧下でも流動して皮膜を形成するために、溶融粘度が低いことも条件になっている。更に、金型を冷却して成形された表皮を金型より容易に脱型できることも必要であった。
【0004】
これを改善した一つの方法として、特許文献1には、ポリプロピレン樹脂と特定のスチレン系熱可塑性エラストマーとを質量比70/30〜30/70の割合で混合したものを粉砕して用いることが提案されている。
【0005】
ここでは、スチレン系熱可塑性エラストマーがスチレン含量20質量%以下のスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン含量20質量%以下のスチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体、そしてスチレン含量20質量%以下の水素添加スチレンブタジエンゴムから選ばれたものであり、ポリプロピレン樹脂との相溶性が良好で粉末成形に適した組成物になっている。
【0006】
また、スラッシュ成形に用いる熱可塑性エラストマー組成物としては、エチレン・α−オレフィン系共重合体、ポリオレフィン樹脂、および共役ジエン重合体またはビニル芳香族化合物単位含有量が25質量%以下である共役ジエン−ビニル芳香族化合物ランダム共重合体が水添され、かつ水添率が70%以上である水添ジエン系重合体を使用することが、特許文献2に記載されている。
【0007】
更には、ポリプロピレン樹脂と水素添加スチレンブタジエンランダム共重合体ゴムに、エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・オクテン共重合体から選ばれる熱可塑性エラストマーを混合し粉砕したスラッシュ成形に用いる熱可塑性エラストマー組成物も、特許文献3に記載されている。
【0008】
上記スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体において、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックの1,2結合量の平均が62モル%以上の範囲にある水素添加ブロック共重合体を用いたものとして、特許文献4として記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−82433号公報
【特許文献2】
特開平10−30036号公報
【特許文献3】
特許第2973353号明細書
【特許文献4】
特開2002−327097号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のポリプロピレン樹脂と水素添加スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体との混合において水素添加スチレン・エチレンブチレン・スチレン共重合体がポリプレピレン樹脂中で微分散するので、物性の低下が少なくて表皮素材に適している。しかし、これらの表皮素材であるオレフィン系熱可塑性エラストマーは非極性であり、極性基を有する緩衝層であるウレタンフォームとの接着は困難であった。
【0011】
そのため、成形表皮裏面に接着剤を塗布してウレタンフォームとの接着性を高めていた。しかし、それに伴う加工費や材料費が増加し、コストアップの問題が生じていた。また、接着処理後の表皮は処理面に粘着性を残すものが多く、重ね置きが出来ず、表皮を保管する場合にはかなりのスペースを占有するという問題も生じていた。
【0012】
本発明はこのような問題点を改善するものであり、緩衝層であるウレタンフォームとの接着を良好にし、溶融性にも優れたスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物、これを粉砕した粉末物、および該粉末物を用いてスラッシュ成形により得られた表皮体の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1記載の発明では、スラッシュ成形に用いる粉末材料の素材となる熱可塑性エラストマー組成物であり、
(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に、
(2)ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、かつビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合が5〜25質量%であり、そして水素添加前の重合体ブロックBの1,2結合量の平均が62モル%以上である水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、
(3)数平均分子量が800〜30,000の活性水素を有するオレフィン系ポリマーを5.0〜20質量部と、
(4)イソシアネートの反応を促進する触媒を含み、
かつJIS K7210に準じて温度230°C、荷重2.16kgfの条件下で測定したメルトフローレート(MFR)値が10g/10分以上であるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、溶融性に優れ、これを用いて得られる表皮はウレタンフォームとの接着が良好なものとなる。
【0014】
本願の請求項2記載の発明では、請求項1記載の組成物に、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して5〜250質量部配合したスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、より溶融性に優れたものになる。
【0015】
本願の請求項3記載の発明では、(1)ポリプロピレン樹脂は、示差熱量計にて昇温速度5°C/分で測定される融点が120〜145°Cのプロピレン・α−オレフィン共重合体であるラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、低融点で溶融性が良くてシート成形性に優れるものとなる。
【0016】
本願の請求項4記載の発明では、(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーが酸変性ポリプロピレン、水酸基含有ポリプロピレン、両末端水酸基水素添加ポリブタジエン、そしてエチレン・酢酸ビニルコポリマーの加水分解物から選ばれた少なくとも1種類以上の高分子であるスラッシュ成形用エラストマー組成物にある。
【0017】
本願の請求項5記載の発明では、表面滑性付与剤として25℃における粘度が300cSt以上のジメチルシロキサンを主成分とするシリコンオイルを(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を含む配合物100質量部に対して0.3〜5.0質量部含有したスラッシュ成形用エラストマー組成物にある。
【0018】
本願の請求項6記載の発明では、有機過酸化物を(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.02〜5.0質量部配合したスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物であり、請求項1〜5の何れかに記載の組成物よりポリプロピレン樹脂が低分子量化するためMFR値が大きく、粉末成形の成形性が良好になる。
【0019】
本願請求項7記載の発明では、上記請求項1〜6の何れかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物にプロセスオイルを添加したものであり、MFR値がさらに大きくなり、粉末成形において成形性が良好になる。
【0020】
本願の請求項8記載の発明では、上記請求項1〜7のいずれかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を常温もしくは冷凍粉砕し、最大1.00mmの篩を通過した粒径を有するものであるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物にあり、スラッシュ成形においてもピンホールのない粉末成形体を得ることができる。
【0021】
本願の請求項9記載の発明では、上記請求項1〜7のいずれかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を水中ホットカットし、球換算平均粒径が1.00mm以下であるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物にあり、ピンホールのない粉末成形体を得ることができる。
【0022】
本願の請求項10記載の発明では、上記請求項8もしくは9に記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物を用いてスラッシュ成形して得られた表皮体であり、この表皮体は引張伸び、引張強度等の物性値が高く、溶融性および成形性に優れ,緩衝層であるウレタンフォームとの接着性が良好であり、金型の脱型性にも優れるものであり、インストルメントパネル、コンソールボックス、ドアートリム等の自動車内装品の表皮として使用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(1)ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンホモポリマー、α−オレフィンとのブロックあるいはランダム共重合体のいずれでもよいが、特にα−オレフィンとしてエチレンを用いたブロックあるいはランダム共重合体が成形体の柔軟性の面からいって好ましい。また、圧力のかからない粉末スラッシュ成形に用いるためには、ポリプロピレン樹脂の溶融流動性の指数としてJIS K7210により230°C、荷重2.16kgfの条件下で測定したMFRが10g/10分以上であることが必要であり、好ましくは40〜800g/10分である。
【0024】
上記(1)ポリプロピレン樹脂に含まれるプロピレン・α−オレフィン共重合体は、示差熱量計にて昇温速度5°C/分で測定される融点が120〜145°C以下であり、プロピレンとα−オレフィンとのブロックあるいはランダム共重合体のいずれでもよく、α−オレフィンとしてエチレン、ブチレン、ペンテン、オクテンをあげられるが、特に価格面からいってエチレンが好ましい。このプロピレン・α−オレフィン共重合体を使用すると、低融点で溶融性が良くてシート成形性に優れるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物になる。
【0025】
また、MFRが10g/10分未満の溶融流動性に欠けるポリプロピレン樹脂を使用する場合には、該ポリプロピレン樹脂100質量部に対して有機過酸化物を0.02〜5.0質量部配合し、120〜250°Cの温度で混練してMFRを100〜800g/10分になるようにポリプロピレン樹脂の低分子量化を図ることもできる。
【0026】
更に、ポリプロピレン樹脂に有機過酸化物を添加して溶融混練した後に、本発明で使用する(2)水素添加ブロック共重合体を溶融混練することができる。(2)水素添加ブロック共重合体と有機過酸化物を同時に溶融混練した場合、水素添加ブロック共重合体が低分子量化して成形シートの表面へ移行し、熱老化後に表面に粘着性や光沢が発生する。
【0027】
上記有機過酸化物としては、通常、ゴム、樹脂の架橋に使用されているジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2.5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等があり、熱分解による1分間の半減期が150〜250°Cのものが好ましい。
【0028】
有機過酸化物は120〜250°Cの加熱下で混練する過程で、ポリプロピレン樹脂の主鎖を切断して分子量を低下させ、熱可塑性エラストマー組成物に高い溶融流動性をもたせる。有機過酸化物の添加量は熱可塑性エラストマー組成物中、0.02〜5.0質量%であり、0.02質量%未満の場合にはポリプロピレン樹脂の主鎖を切断する分解能力が少なく、熱可塑性エラストマー組成物に高い溶融流動性を付与できなくなる。一方、5.0質量%を越えると、分解が過剰になり、粉体成形品の引張強度等の機械的特性が低下する。
【0029】
本発明で使用する(2)水素添加ブロック共重合体は、(1)ポリプロピレン樹脂との相溶性に優れており、ポリプロピレン樹脂に混練すると柔軟になり、折曲げや白化しにくいスラッシュ形用熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0030】
上記(2)水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、末端にある重合体ブロックの少なくとも1個が重合体ブロックBであり、好ましい構造としてはA−B、A−B―A―B、B−A−B−A−B、(B−A−B)n−X(ここでnは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す)。
【0031】
また、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等のうちから1種、または2種以上から選ばれ、中でもスチレンが好ましい。上記ビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合は5〜25質量%であり、柔軟性に富む表皮体を得るためには5〜15質量%が適当である。
【0032】
そして、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックの1,2結合量の平均が62モル%以上で、最大100モル%に近いものであり、62モル%未満の場合には、シートを折り曲げたときに白化しやすくなる。このような水素添加ブロック共重合体の代表的なものとして、国際公開番号WO00/15681に開示されており、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)である旭化成社製の商品「タフテックH1221」がある。
【0033】
上記のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)は、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックの1,2結合量の平均が62モル%以上であり、他方後述する旭化成社製の「タフテックH1062、H1052」のようなスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)では、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とするブロックが1,4結合が主体になっている。
【0034】
上記の(2)水素添加ブロック共重合体の添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して20〜500質量部であり、ポリプロピレン樹脂が多くなると、成形された表皮が硬くなり、一方少なくなると引張強度が低下する。
【0035】
また、本発明で使用する(2)水素添加ブロック共重合体は、(1)ポリプロピレン樹脂と相溶性が非常に良好で、(1)ポリプロピレン樹脂中の(2)水素添加ブロック共重合体が粒子径15〜20nmで微分散していることも透過型電子顕微鏡により確認されている。
【0036】
上記(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を配合すると、(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体成分が均一に微分散することで,成形性が良好になり、物性値が高く、柔軟でかつ折り曲げ時に白化することのないスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物や表皮体が得られる。
【0037】
また、本発明で使用する(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーとしては、酸変性ポリプロピレン樹脂、水酸基含有ポリプロピレン樹脂、エチレン・酢酸ビニルコポリマーの加水分解物、末端カルボキシル基ポリブタジエン、末端水酸基ポリブタジエン、末端カルボキシル基ポリブタジエン水素添加物、末端水酸基ポリブタジエンの水素添加物、酸変性スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を挙げることができる。
【0038】
具体的には、末端水酸基ポリブタジエンでは、例えば三菱化学社製である「ポリテールH」が挙げられ、また水酸基含有ポリプロピレン樹脂では、例えば日本油脂社製の「ユーメックス1210」を挙げることができる。
【0039】
また、上記(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーの重量平均分子量は800〜30,000が好ましく、800未満では表皮表面に移行しやすくなり光沢やべとつきの原因になり、30,000を超えると溶融粘度が大きくなるため、活性水素が全体に分散しにくく、イソシアネート基を有するウレタンフォームとの接着効果が小さくなる。
【0040】
添加量は5.0〜20質量部が好ましく、5.0質量部未満では接着性の改良効果が小さく、一方20質量部を越えると引張強度の低下が大きくなる。
【0041】
(4)イソシアネ−トの反応を促進する触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジステアレート等の有機錫化合物、テトラアルキルエチレンジアミン、N,N’−ジアルキルベンジルアミン等の3級アミン化合物、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸塩、アルカリ金属のカルボン酸塩等を挙げることができる。
上記触媒の添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂と、(2)水素添加ブロック共重合体、そして(3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーからなる熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して0.01〜2質量部配合され、0.01質量部未満ではウレタンフォームとの接着力が小さくて効果が乏しく、また2質量部を越えると表面へ移行する悪影響がでる。
【0042】
本発明で使用する(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、吸油能に優れたエラストマーであり、(2)水素添加ブロック共重合体と同時に配合することにより、(1)ポリプロピレン樹脂の相溶性が良好になる。また、プロセスオイルと組成物中のオリゴマー成分を吸収する性質を有するもので、エチレン・α−オレフィン共重合体と非結晶性のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体とから選択される少なくとも1種類である。好ましいα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン等の炭素原子数が3〜10のα−オレフィンが挙げられる。特に、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン・オクテン共重合体(EOR)が好ましい。
【0043】
尚、上記(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、本発明に使用する(2)水素添加ブロック共重合体に比べて(1)ポリプロピレン樹脂に対する相溶性が劣っており、(1)ポリプロピレン樹脂に混練、添加すると、μm単位の大きさで分散するので、引張物性が低下する傾向にある。これに上記に示す吸油能に優れたエラストマーである(5)エチレン・α―オレフィン系共重合体を添加した場合には、組成物中のオリゴマー成分とオイルを吸収してブリードをかなり阻止することができる。
【0044】
上記(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムの添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して5〜25質量部である。5質量部未満になると、組成物中のオリゴマー成分とオイルを充分に吸収できなくなり、また250質量部を越えると、ポリプロピレン樹脂との分散が悪くなり、引張物性が低下する傾向にある。
【0045】
本発明において表面滑性付与剤として使用するシリコンオイルは、粘度が比較的大きいものが好ましく、25℃粘度300cSt以下の低分子量シリコンオイルでは、成形表皮表面へ表面移行して光沢や粘着を発生しやすくなる。シリコンオイルは、直鎖状ジメチルポリシロキサン、例えばジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、アルキル変性シリコンオイル、フッ素変性シリコンオイルが挙げられ、代表的なものにジメチルシロキサンを主成分とする東レ・ダウコーング・シリコーン社製の「SH200CV」が挙げられる。
【0046】
シリコーンオイルは単独で配合することも可能だが、好ましくは、高粘度シリコーンオイルをあらかじめ樹脂に混練したマスターバッチペレットが取り扱い易い。代表的なものに東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のシリコンオイルマスターバッチ「BY27−001」がある。
【0047】
また、シリコンオイルの添加は、オイル状のシリコンオイルの場合、混練する樹脂ペレットに予め分散させてから混練してもよいし、押出し機のオイルベント口から注入して混練させてもよい。またシリコンオイルマスターバッチのペレットの場合は、押出し機の原料ホッパーに混練する樹脂ペレットとドライブレンドしてから混練する。
【0048】
シリコンオイルの添加量は、(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を含む配合物100質量部に対して0.3〜5.0質量部が好ましく、0.3質量部未満の場合には、表皮体の金型からの脱型性及び表皮表面の滑性効果が劣り、一方5.0質量部を越えると、表皮体の引張物性が低下する傾向にある。
【0049】
本発明では、プロセスオイルを添加することにより組成物中のエラストマー成分に吸収されて溶融粘度を下げるとともに、表皮体の硬度を下げ、柔軟性をもたせる効果がある。上記プロセスオイルはゴム用に使用されるものであり、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系に分類されるが、エラストマー成分との相溶性によりパラフィン系が好ましい。添加量は水素添加ブロック共重合体100質量部に対して5〜200質量部が好ましい。200質量部を越えると、引張物性が低下し、5質量部未満になると、溶融粘度が下がらず表皮が硬くなる。
【0050】
熱安定剤としては、通常のポリオレフィンに用いられるものが使用できる。一般的には、フェノールとリン系の酸化防止剤を併用して使用するが、特に限定されるものではない。
【0051】
また、光安定剤としては、ラジカル捕捉剤であるヒンダードアミン、ベンゾトリアゾール系のものが使用されることもある。
【0052】
顔料は通常のオレフィン系に適した有機、無機のものが使用される。更に、脂肪酸金属塩等の滑剤や炭酸カルシウム、タルク等の充填剤等が必要に応じて添加される。
【0053】
これら配合物の混合は、下記の6つの方法によって溶融混練される。
(a)MFRが100〜800g/10分の(1)ポリプロピレン樹脂に、(2)水素添加ブロック共重合体を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法であり、この場合には有機過酸化物を添加しない。
【0054】
(b)(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法であり、この場合には有機過酸化物を添加しない。
(c)(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体、プロセスオイル、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法であり、この場合には有機過酸化物を添加しない。
(d)予め(1)ポリプロピレン樹脂に有機過酸化物を0.02〜5.0質量部添加し、120〜250℃の温度で混練してMFRを100〜800g/10分に調整した(1)ポリプロピレン樹脂に(2)水素添加ブロック共重合体、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム等を同時に添加し、これらを120〜250℃の温度で混練する方法がある。
【0055】
(e)(1)ポリプロピレン樹脂と(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムに有機過酸化物を0.02〜5.0質量部添加し、120〜250℃の温度で混練した後、更にこれに(2)水素添加ブロック共重合体を添加して120〜250℃の温度で混練する方法がある。
【0056】
(f)(1)ポリプロピレン樹脂と(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムとプロセスオイルに有機過酸化物を0.02〜5.0質量部添加し、120〜250℃の温度で混練した後、更にこれに(2)水素添加ブロック共重合体を添加して120〜250℃の温度で混練する方法があり、順次二度に分けて混練しても良く、ベント口を利用してワンパスで混練することもできる。
【0057】
添加混練方法は添加剤をV型ブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いてドライブレンドしたものを原料供給ホッパーより供給し、プロセスオイルはベント口より注入し、120〜250°Cの範囲に温度調節した二軸押出機で溶融混練してペレット化する。
【0058】
また、密閉式混練機であるニーダー、バンバリーミキサー等によってエラストマー成分である水素添加ブロック共重合体とエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムにプロセスオイルを添加して混練してペレット化した後、このペレットとポリプロピレン樹脂とドライブレンドして、120〜250°Cの範囲に温度調節した一軸あるいは二軸押出機で溶融混練してペレット化することもできる。
【0059】
得られたペレットの溶融粘度であるMFRは温度230°C、荷重2.16kgfの条件下で10g/10分以上が好ましい。これ未満になると、組成物の溶融流動性が小さくなって表皮にピンホールが発生する傾向がある。
【0060】
上記の配合から得られたペレットは、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル等の衝撃型微粉砕機を用いて微粉砕される。この時通常では液体窒素を用いて冷凍粉砕される。また、配合によっては溶融樹脂をスプレーあるいはディスクアトマイザーによって噴霧し冷却することによって粉体化することができる。
【0061】
粉砕されたものは篩い等によって粒径が最大1.00mmの篩を通過したもので、平均一次粒径が100〜800μmのものが多く集められ、これに有機あるいは無機の粉体性改良剤を添加、混合して粉末スラッシュ成形用に使用する。
また、水中ホットカット方式により製造される場合も同様に平均一次粒径が100〜800μmのものが多く集められ、粉末成形に用いることができる。
また、繊維状に細く押出されたストランドを1mm以下にカットしたものも使用できる。
【0062】
次いで、エラストマー組成物を用いて粉末スラッシュ成形を行う。この成形では組成物の融点以上に加熱された型にこれを主として重力で落下させて投入し、一定時間経過後に型を反転し、余分の組成物を回収箱に集める。型表面には組成物が層となって付着しており、時間経過とともに溶融してスキン層が形成される。そして、型を冷却してスキン層を脱型するものであり、これが繰り返し行われる。
【0063】
型の加熱方法としては、オイル循環あるいは熱風炉へ入れる方法が一般的である。オイル循環はパイプ配管配置により型温度調整が容易であるが、型面からのみ加熱される。一方、熱風炉を用いると、型面および成形物裏面の両面からの加熱が可能であるが、生産性を考慮して熱風を300°C以上に設定することが多いため、成形物裏面の熱酸化劣化を起こさないように処方や条件を配慮する必要がある。
【0064】
熱風方式は、粉末スラッシュ成形を多層(2ないし3)に行う時に有効である。即ち、加熱された型に最外層となる1回目の粉末をスラッシュ成形し、半溶融状態で2回目の粉末を付着させ、そして必要なら3回目もスラッシュ成形し、その後加熱溶融する。この場合、型面側のみからの加熱では、熱伝達が不充分なので成形物裏面からの加熱も可能な熱風炉方式が用いられることが多い。
【0065】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜5、比較例1〜5
実施例1〜5、比較例1〜5では、表1、2に示すポリプロピレン樹脂、水素添加ブロック共重合体、各種エラストマー、シリコンオイル、安定剤をタンブラーでドライブレンドしたものを、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX44α2‐52.5AW‐5V)の原料供給ホッパーより供給し、190〜230°C、300rpmで混練して押出しペレット化した。
上記で得られたペレットを液体窒素に浸し、ターボミルT250−4J(ターボ工業社製)に投入して粉砕し、1,000μmの篩い通過分のみを集めた。
【0066】
次に、上記粉体組成物を用いて粉末スラッシュ成形を行った。粉末スラッシュ成形の方法としては、まず皮シボ模様のついた150mm×150mm×3mmの板をオーブン中で250°Cに加熱し、その上に上記粉体組成物を約800gのせて10分間置いて付着させた後、溶融付着しなかった粉体を除いて、300°Cに調節したオーブン中で60秒間加熱し、オーブンより取り出し水冷して、厚さ約0.8mmの表皮を脱型した。
【0067】
上記ペレットの溶融粘度、スラッシュ成形した表皮のシート成形性、脱型性、引張物性、及び接着性評価を下記の方法で行った。得られた結果を表1,2に示す。
【0068】
溶融粘度はペレットをJIS K7210により230°C、荷重2.16kgfの条件下でメルトフローレートを測定した。
【0069】
表皮の脱型性の難易は感覚で良否を判断した。○は良であり、×は悪である。また、引張物性は、スラッシュ成形で得られた表皮をJIS3号ダンベルで打ち抜き、引張速度200mm/分で引張強さと伸びを測定した。
【0070】
接着性評価は300×200×8mmの窪みを有する340×200×12mmの鉄板を金型として用い、40℃のオーブンで加熱後、窪み底部に表皮成形シートを置き、予め配合した半硬質ウレタンフォーム原料液約100gを注入し、直ちにアルミ版で密封し、40℃のオーブンで4分間加熱して表皮とウレタンフォーム積層体を得た。これを幅25mm、長さ150mmに切り出し、評価用サンプルとした。
【0071】
表皮とウレタンフォーム層間における180°剥離強度と剥離状態を引張速度200mm/秒で評価した。剥離状態は剥離全面ウレタンフォームの凝集破壊の場合を○、部分的凝集破壊の場合を△、全面界面剥離の場合を×とした。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1に示す所定量の活性水素を有するポリオレフィン系ポリマーを配合し、混練した実施例1〜5では、引張物性が低下することなく、脱型性が良好で、表皮とウレタンフォームとの接着性が良好であり、活性水素を有するオレフィン系ポリマーによる効果があらわれていることが明らかである。他方、活性水素を有するオレフィン系ポリマーが未添加の比較例1,4では表皮とウレタンフォームとの接着性が悪いことが判る。
【0075】
また、表2に示す比較例2、5では、活性水素を有するオレフィン系ポリマーを2.2質量部添加した場合であるが、表皮とウレタンフォームとの剥離状態は悪く、剥離強度も低くなっており、実施例1、4から活性水素を有するオレフィン系ポリマーの5.4質量部以上の添加で効果が現れていることが判る。
【0076】
比較例3では、イソシアネートとの反応を促進する触媒が未添加の場合であるが、表皮とウレタンフォームとの剥離状態は悪く、剥離強度も低くなっており、触媒が未添加の場合、活性水素を有するオレフィン系ポリマーによる接着性向上の効果が現れていることが判る。
【0077】
【発明の効果】
以上のように本願の各請求項記載の発明では、ポリプロピレン樹脂100質量部に、水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、数平均分子量が800〜30,000の活性水素を有するオレフィン系ポリマー5.0〜20質量部とイソシアネートの反応を促進する触媒を含有することで、溶融性に優れた熱可塑性エラストマー組成物となり、これを用いて得られた粉末スラッシュ成形表皮は、ウレタンフォームとの接着性に優れ、また表皮の金型からの脱型性も良好なものとなり、更に表面滑性付与剤やプロセスオイル、有機過酸化物を添加することで、これらの特性をより一層向上させることができる。
Claims (10)
- スラッシュ成形に用いる粉末材料の素材となる熱可塑性エラストマー組成物であり、
(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に、
(2)ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBから構成され、重合体ブロックBの水素添加率が90%以上であり、かつビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中に占める割合が5〜25質量%であり、そして水素添加前の重合体ブロックBの1,2結合量の平均が62モル%以上である水素添加ブロック共重合体20〜500質量部を含む配合物100質量部に対して、
(3)数平均分子量が800〜30,000の活性水素を有するオレフィン系ポリマーを5.0〜20質量部と、
(4)イソシアネートの反応を促進する触媒を含み、
かつJIS K7210に準じて温度230°C、荷重2.16kgfの条件下で測定したメルトフローレート(MFR)値が10g/10分以上であることを特徴とするスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。 - 請求項1記載の組成物に、(5)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して5〜250質量部配合したスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。
- (1)ポリプロピレン樹脂は、示差熱量計にて昇温速度5°C/分で測定される融点が120〜145°Cのプロピレン・α−オレフィン共重合体である請求項1または2記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。
- (3)活性水素を有するオレフィン系ポリマーが酸変性ポリプロピレン、水酸基含有ポリプロピレン、両末端水酸基水素添加ポリブタジエン、そしてエチレン・酢酸ビニルコポリマーの加水分解物から選ばれた少なくとも1種類以上の高分子である請求項1〜3の何れかに記載のスラッシュ成形用エラストマー組成物。
- 表面滑性付与剤として25℃における粘度が300cSt以上のジメチルシロキサンを主成分とするシリコンオイルを(1)ポリプロピレン樹脂と(2)水素添加ブロック共重合体を含む配合物100質量部に対して0.3〜5.0質量部含有した請求項1〜4の何れかに記載のスラッシュ成形用エラストマー組成物。
- 有機過酸化物を(1)ポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.02〜5.0質量部配合した請求項1〜5の何れかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。
- プロセスオイルを添加した請求項1〜6の何れかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1〜7の何れかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を常温もしくは冷凍粉砕し、最大1.00mmの篩を通過した粒径を有するものであるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物。
- 請求項1〜7の何れかに記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を水中ホットカットし、球換算平均粒径が1.00mm以下であるスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物。
- 請求項8もしくは9に記載のスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー粉末物を用いてスラッシュ成形により得られた表皮体。
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2003
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