JP2004250270A - リチウムマンガン酸化物、およびその製造方法 - Google Patents
リチウムマンガン酸化物、およびその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高容量であるほかに、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料を提供する。
【解決手段】Kの含有量が500ppm以下である電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法。
【解決手段】Kの含有量が500ppm以下である電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン電池の正極活物質に用いられるリチウムマンガン酸化物、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
正極にリチウムマンガン酸化物を用いたリチウムイオン電池が実用化されているが、このリチウムイオン電池では高容量であるほかに、レート特性に優れることが要求されている。リチウムマンガン酸化物の製造方法として、マンガン化合物とLi化合物を混合して焼成する方法が一般的であるが硝酸マンガンを用いた水溶液反応によっても得られることが報告されている。たとえば、特許文献1では、固相反応法としてマンガン化合物をLi化合物と混合して焼成することが記載されている。特許文献2では湿式反応原料を用いる方法として硝酸マンガンを用いたリチウムマンガン酸化物の製造方法が記載さている。
【0003】
この中で固相法によりマンガン酸リチウムを得る場合、Mn原料には化学合成二酸化マンガン,電解二酸化マンガンの他に炭酸マンガン、天然二酸化マンガンをMn原料に用いることが考えられるが、安価で豊富であり、かつ得られたリチウムマンガン酸化物のタップ密度が高くできるなどの理由で電解二酸化マンガンを用いることが好適である。
【0004】
また、レート特性を改善するためにはリチウムマンガン酸化物のレート特性を改善することが必要である。しかし、上記の方法で作成したリチウムマンガン酸化物では必ずしもレート特性に優れるとは限らない。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−130025号公報
【特許文献2】
特開2000−44247号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑み、高容量であるほかに、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
我々は、鋭意研究の結果、レート特性は活物質の比表面積や組成により決定されるが、我々は含有している不純物の元素種やその量によっても大きく影響を受けることを見出した。特に、Na,Kはレート特性に与える影響が大きく、レート特性に優れるリチウムマンガン酸化物を得るためには、Na,Kの含有量ができるだけ少ない原料を用いることが必要である。したがって、レート特性に優れるリチウムマンガン酸化物を得るためには、Na,Kの含有量が少ない電解二酸化マンガンを原料に用いる事が必要である。
【0008】
本発明における電解二酸化マンガンは次の方法で得られる。例えば、電解液として所定濃度の硫酸マンガン溶液を用い、陰極にカーボン極、陽極にチタン板を用い、加温しつつ一定の電流密度で電解を行い、陽極に二酸化マンガンを電析させる。このとき、硫酸マンガン水溶液中のKの濃度を低減することで、電析する二酸化マンガン中のKの濃度を低減できる。電析した二酸化マンガンは陽極から剥離し、所定粒度まで粉砕して中和されるが、このときソーダ中和した場合、電解二酸化マンガンにナトリウムが残留する事が知られている。そのため、電解二酸化マンガン中のNa量を制御するためにはアンモニア中和する事が有効である。中和した電解二酸化マンガンは水洗して乾燥する。マンガン酸リチウムの原料として用いる場合、Li化合物との混合性をよくするために所定の粒度まで粉砕することが必要である。なお、中和、粉砕の順序は限定されず、目的粒度まで粉砕した後に中和してもよい。中和された電解二酸化マンガンのpHはJIS1467の方法で測定して4以上がよい。pHが4以下では硫酸塩の除去が不十分であり、リチウムマンガン酸化物にしたときの容量が低下する。
【0009】
得られた電解二酸化マンガンはLi化合物と混合して、また、場合によっては添加元素の化合物と混合して焼成する。Li化合物には炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウムなどが好適に用いられる。添加元素としてはAl,Mg,Co,Ni,Fe,B等の化合物が挙げられる。焼成は600〜1000℃で焼成する事が必要である。焼成時間は0〜20時間が好ましい
【0010】
Na,Kがレート特性を劣化させる要因については、Na,Kがリチウムマンガン酸化物に固溶しないことに起因する。これらの元素は、焼成後、リチウムマンガン酸化物の結晶には固溶せず、酸化物または他の元素との化合物としてリチウムマンガン酸化物の粒界、または、粒子表面上に存在する。この粒界、または粒子表面上に存在するNa,Kの化合物は電子伝導度が小さいと考えられ、結果としてリチウムマンガン酸化物の粉体の電子抵抗が増大するだけでなく、粒子表面上に存在するものについてはLiの電解液との移動を阻害する可能性もある。また、電解二酸化マンガン中には電解液中に存在するSO4が1%前後存在しており、Na,KはSO4との化合物として粒子上に存在している。このような機構により、Na,Kの存在はリチウムマンガン酸化物のレート特性を悪化させるために,できるだけ原料である電解二酸化マンガン中に存在しないほうがよい。
【0011】
ここで、レート試験の方法について述べておく。リチウムマンガン酸化物:カーボンブラック:テフロンバインダー=0.5:0.3:0.2で混合してシート状にした後に10.5φに打ち抜いて正極合材に用いた。負極にLiメタル、電解液には1M−LiPF6/(PC:DME=1:1)の混合溶媒を用いてコイン型セルで電池試験を行った。レート試験は、0.5Cで4.3Vまで充電した後、0.5,1.0,1.5,2.0,2.5Cで3.0Vまで放電し、放電レートを変化させた時の容量の減少からレート特性を求めた。横軸にレート(C)を、縦軸に容量をとり、容量減少の傾きをレート特性の指標とした。傾きのマイナスが大きいほど、レート特性が悪いことを示す。実施例3で得られたリチウムマンガン酸化物例を用いた場合の例を図1に示す。
【0012】
そこで、本発明の第1の態様は、Kの含有量が500ppm以下である電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法である。
【0013】
本発明の第2の態様は、電解析出した二酸化マンガンを粉砕後、アンモニア水で中和し、JIS1467の方法で測定したpHが4以上とした請求項1に記載の電解二酸化マンガンを原料とするリチウムマンガン酸化物の製造方法にある。
【0014】
本発明の第3の態様は、Naの含有量が500ppm以下である請求項2に記載の電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法にある。
【0015】
本発明の第4の態様は、上記1、または2に記載の電解二酸化マンガンにLi化合物,場合によりM元素の化合物(MはNa,K以外の元素)を混合し、600℃から1000℃の範囲で焼成することを特徴とする異種元素添加、または異種元素置換リチウムマンガン酸化物の焼成方法にある。
【0016】
本発明の第5の態様は、Kの含有量が500ppm以下である請求項4に記載のリチウムマンガン酸化物にある。
【0017】
本発明の第6の態様は、Naの含有量が500ppm以下である請求項5に記載のリチウムマンガン酸化物にある。
【0018】
本発明の第7の態様は、上記のリチウムマンガン酸化物を正極に用いることを特徴としたリチウムイオン電池にある。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
電解二酸化マンガンの製造は以下に示す定法により行った。即ち、電解液として所定濃度の硫酸マンガン溶液を用い、陰極にカーボン極、陽極にチタン板を用い、加温しつつ一定の電流密度で電解を行い、陽極に電解二酸化マンガンを電析させた。ただし、Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、中和はNaOHを用いて行った。こうして得られたpHが6.0で、Kの含有量が170ppm、Naの含有量が5000ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、前記の方法でレート試験を行った。容量については、同じコインセルを用いて0.2Cで充放電したときの容量を採用した。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す.
【0021】
(実施例2)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.0で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0022】
(実施例3)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.2で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン938gと炭酸リチウム228g、水酸化アルミニウム53.0gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0023】
(実施例4)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.1で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン959gと炭酸リチウム228g、酸化マグネシウム18.7gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0024】
(実施例5)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.0で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン944gと炭酸リチウム228g、水酸化アルミニウム39.5g、酸化マグネシウム4.69gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0025】
(実施例6)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.0で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン944gと炭酸リチウム228g、水酸化アルミニウム39.5g、酸化マグネシウム4.69g、四ホウ酸リチウム2gをボールミルにより混合し、700℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0026】
(比較例1)
通常のマンガン鉱石原料を用い、また、中和工程でNaOHを用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが7.0で、Kの含有量が700ppm、Naの含有量が3300ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、850℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0027】
(比較例2)
Kの含有量を制御するために、硫酸マンガン水溶液の浄液を強化してKの濃度を低減した。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。アンモニアでJIS の方法でpH2まで中和し、25μmまで粉砕した電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のK,Naの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
以上より、実施例1〜6で得られたリチウムマンガン酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池用は、比較例1〜2で得られたリチウムマンガン酸化物と比較して、高容量であるほかに、レート特性に優れることが分かる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると高容量であるほかに、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電レートと放電容量を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン電池の正極活物質に用いられるリチウムマンガン酸化物、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
正極にリチウムマンガン酸化物を用いたリチウムイオン電池が実用化されているが、このリチウムイオン電池では高容量であるほかに、レート特性に優れることが要求されている。リチウムマンガン酸化物の製造方法として、マンガン化合物とLi化合物を混合して焼成する方法が一般的であるが硝酸マンガンを用いた水溶液反応によっても得られることが報告されている。たとえば、特許文献1では、固相反応法としてマンガン化合物をLi化合物と混合して焼成することが記載されている。特許文献2では湿式反応原料を用いる方法として硝酸マンガンを用いたリチウムマンガン酸化物の製造方法が記載さている。
【0003】
この中で固相法によりマンガン酸リチウムを得る場合、Mn原料には化学合成二酸化マンガン,電解二酸化マンガンの他に炭酸マンガン、天然二酸化マンガンをMn原料に用いることが考えられるが、安価で豊富であり、かつ得られたリチウムマンガン酸化物のタップ密度が高くできるなどの理由で電解二酸化マンガンを用いることが好適である。
【0004】
また、レート特性を改善するためにはリチウムマンガン酸化物のレート特性を改善することが必要である。しかし、上記の方法で作成したリチウムマンガン酸化物では必ずしもレート特性に優れるとは限らない。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−130025号公報
【特許文献2】
特開2000−44247号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑み、高容量であるほかに、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
我々は、鋭意研究の結果、レート特性は活物質の比表面積や組成により決定されるが、我々は含有している不純物の元素種やその量によっても大きく影響を受けることを見出した。特に、Na,Kはレート特性に与える影響が大きく、レート特性に優れるリチウムマンガン酸化物を得るためには、Na,Kの含有量ができるだけ少ない原料を用いることが必要である。したがって、レート特性に優れるリチウムマンガン酸化物を得るためには、Na,Kの含有量が少ない電解二酸化マンガンを原料に用いる事が必要である。
【0008】
本発明における電解二酸化マンガンは次の方法で得られる。例えば、電解液として所定濃度の硫酸マンガン溶液を用い、陰極にカーボン極、陽極にチタン板を用い、加温しつつ一定の電流密度で電解を行い、陽極に二酸化マンガンを電析させる。このとき、硫酸マンガン水溶液中のKの濃度を低減することで、電析する二酸化マンガン中のKの濃度を低減できる。電析した二酸化マンガンは陽極から剥離し、所定粒度まで粉砕して中和されるが、このときソーダ中和した場合、電解二酸化マンガンにナトリウムが残留する事が知られている。そのため、電解二酸化マンガン中のNa量を制御するためにはアンモニア中和する事が有効である。中和した電解二酸化マンガンは水洗して乾燥する。マンガン酸リチウムの原料として用いる場合、Li化合物との混合性をよくするために所定の粒度まで粉砕することが必要である。なお、中和、粉砕の順序は限定されず、目的粒度まで粉砕した後に中和してもよい。中和された電解二酸化マンガンのpHはJIS1467の方法で測定して4以上がよい。pHが4以下では硫酸塩の除去が不十分であり、リチウムマンガン酸化物にしたときの容量が低下する。
【0009】
得られた電解二酸化マンガンはLi化合物と混合して、また、場合によっては添加元素の化合物と混合して焼成する。Li化合物には炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウムなどが好適に用いられる。添加元素としてはAl,Mg,Co,Ni,Fe,B等の化合物が挙げられる。焼成は600〜1000℃で焼成する事が必要である。焼成時間は0〜20時間が好ましい
【0010】
Na,Kがレート特性を劣化させる要因については、Na,Kがリチウムマンガン酸化物に固溶しないことに起因する。これらの元素は、焼成後、リチウムマンガン酸化物の結晶には固溶せず、酸化物または他の元素との化合物としてリチウムマンガン酸化物の粒界、または、粒子表面上に存在する。この粒界、または粒子表面上に存在するNa,Kの化合物は電子伝導度が小さいと考えられ、結果としてリチウムマンガン酸化物の粉体の電子抵抗が増大するだけでなく、粒子表面上に存在するものについてはLiの電解液との移動を阻害する可能性もある。また、電解二酸化マンガン中には電解液中に存在するSO4が1%前後存在しており、Na,KはSO4との化合物として粒子上に存在している。このような機構により、Na,Kの存在はリチウムマンガン酸化物のレート特性を悪化させるために,できるだけ原料である電解二酸化マンガン中に存在しないほうがよい。
【0011】
ここで、レート試験の方法について述べておく。リチウムマンガン酸化物:カーボンブラック:テフロンバインダー=0.5:0.3:0.2で混合してシート状にした後に10.5φに打ち抜いて正極合材に用いた。負極にLiメタル、電解液には1M−LiPF6/(PC:DME=1:1)の混合溶媒を用いてコイン型セルで電池試験を行った。レート試験は、0.5Cで4.3Vまで充電した後、0.5,1.0,1.5,2.0,2.5Cで3.0Vまで放電し、放電レートを変化させた時の容量の減少からレート特性を求めた。横軸にレート(C)を、縦軸に容量をとり、容量減少の傾きをレート特性の指標とした。傾きのマイナスが大きいほど、レート特性が悪いことを示す。実施例3で得られたリチウムマンガン酸化物例を用いた場合の例を図1に示す。
【0012】
そこで、本発明の第1の態様は、Kの含有量が500ppm以下である電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法である。
【0013】
本発明の第2の態様は、電解析出した二酸化マンガンを粉砕後、アンモニア水で中和し、JIS1467の方法で測定したpHが4以上とした請求項1に記載の電解二酸化マンガンを原料とするリチウムマンガン酸化物の製造方法にある。
【0014】
本発明の第3の態様は、Naの含有量が500ppm以下である請求項2に記載の電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法にある。
【0015】
本発明の第4の態様は、上記1、または2に記載の電解二酸化マンガンにLi化合物,場合によりM元素の化合物(MはNa,K以外の元素)を混合し、600℃から1000℃の範囲で焼成することを特徴とする異種元素添加、または異種元素置換リチウムマンガン酸化物の焼成方法にある。
【0016】
本発明の第5の態様は、Kの含有量が500ppm以下である請求項4に記載のリチウムマンガン酸化物にある。
【0017】
本発明の第6の態様は、Naの含有量が500ppm以下である請求項5に記載のリチウムマンガン酸化物にある。
【0018】
本発明の第7の態様は、上記のリチウムマンガン酸化物を正極に用いることを特徴としたリチウムイオン電池にある。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
電解二酸化マンガンの製造は以下に示す定法により行った。即ち、電解液として所定濃度の硫酸マンガン溶液を用い、陰極にカーボン極、陽極にチタン板を用い、加温しつつ一定の電流密度で電解を行い、陽極に電解二酸化マンガンを電析させた。ただし、Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、中和はNaOHを用いて行った。こうして得られたpHが6.0で、Kの含有量が170ppm、Naの含有量が5000ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、前記の方法でレート試験を行った。容量については、同じコインセルを用いて0.2Cで充放電したときの容量を採用した。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す.
【0021】
(実施例2)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.0で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0022】
(実施例3)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.2で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン938gと炭酸リチウム228g、水酸化アルミニウム53.0gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0023】
(実施例4)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.1で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン959gと炭酸リチウム228g、酸化マグネシウム18.7gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0024】
(実施例5)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.0で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン944gと炭酸リチウム228g、水酸化アルミニウム39.5g、酸化マグネシウム4.69gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0025】
(実施例6)
Kの含有量を制御するために、低K品位のマンガン鉱石原料を用いた。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが5.0で、Kの含有量が150ppm、Naの含有量が380ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン944gと炭酸リチウム228g、水酸化アルミニウム39.5g、酸化マグネシウム4.69g、四ホウ酸リチウム2gをボールミルにより混合し、700℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0026】
(比較例1)
通常のマンガン鉱石原料を用い、また、中和工程でNaOHを用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。こうして得られたpHが7.0で、Kの含有量が700ppm、Naの含有量が3300ppmで粒径25μmの電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、850℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のNa,Kの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0027】
(比較例2)
Kの含有量を制御するために、硫酸マンガン水溶液の浄液を強化してKの濃度を低減した。また、Naの含有量を制御するために、中和工程でアンモニア水を用いた。それ以外は実施例1と同様に電解を行った。アンモニアでJIS の方法でpH2まで中和し、25μmまで粉砕した電解二酸化マンガン1000gと炭酸リチウム241gをボールミルにより混合し、900℃で20hr焼成した後、500℃まで20℃/hrで降温してリチウムマンガン酸化物を得た。得られたリチウムマンガン酸化物は、実施例1の場合と同様な方法で評価を行った。表1に得られたリチウムマンガン酸化物のK,Naの含有量、SO4量、比表面積、容量、レート特性の試験結果を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
以上より、実施例1〜6で得られたリチウムマンガン酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池用は、比較例1〜2で得られたリチウムマンガン酸化物と比較して、高容量であるほかに、レート特性に優れることが分かる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると高容量であるほかに、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電レートと放電容量を示す図。
Claims (7)
- Kの含有量が500ppm以下である電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法。
- 電解析出した二酸化マンガンを粉砕後、アンモニア水で中和し、JIS1467の方法で測定したpHが4以上とした請求項1に記載の電解二酸化マンガンを原料とするリチウムマンガン酸化物の製造方法。
- Naの含有量が500ppm以下である請求項2に記載の電解二酸化マンガンを原料に用いることを特徴とする、リチウムマンガン酸化物の製造方法。
- 請求項1、または2に記載の電解二酸化マンガンにLi化合物,場合によりM元素の化合物(MはNa,K以外の元素)を混合し、600℃から1000℃の範囲で焼成することを特徴とする異種元素添加、または異種元素置換リチウムマンガン酸化物の焼成方法。
- Kの含有量が500ppm以下である請求項4に記載のリチウムマンガン酸化物。
- Naの含有量が500ppm以下である請求項5に記載のリチウムマンガン酸化物
- 請求項1〜6記載のリチウムマンガン酸化物を正極に用いることを特徴としたリチウムイオン電池。
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JP2003041434A JP2004250270A (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | リチウムマンガン酸化物、およびその製造方法 |
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JP2011057524A (ja) * | 2009-09-14 | 2011-03-24 | Tosoh Corp | マンガン酸リチウムの製造方法及びそれに用いる二酸化マンガン |
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- 2003-02-19 JP JP2003041434A patent/JP2004250270A/ja active Pending
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