JP2004249380A - 表面被覆Ti基サーメット製切削工具およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決方法】Coまたは、CoおよびNiからなる結合相:1〜30重量%にて、Tiと、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上との複合金属炭窒化物からなる硬質相を結合してなるTi基サーメット基体の表面に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0.4≦x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層を被覆してなり、前記サーメット基体表面におけるCo含有量が前記サーメット内部におけるCo含有量よりも多く、かつ前記サーメット基体表面における酸素含有量がサーメット基体内部における酸素含有量よりも少ない表面領域が存在する表面被覆Ti基サーメット製切削工具からなる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面被覆Ti基サーメット製切削工具とその製造方法に関し、特に、サーメット基体に対する密着性に優れ、高速切削においても硬質被覆層に剥離が発生することなく、優れた切削性能を長期に亘って発揮する表面被覆TiCN系サーメット製切削工具とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、Tiを主成分とする硬質相と、Coおよび/またはNiの結合相からなるTi基サーメット基体の表面に、化学蒸着法や物理蒸着法を用いてTiC、TiN、TiCNまたはTiAlN等の硬質被覆層を被覆した表面被覆Ti基サーメット製切削工具が、鋼などの連続切削や断続切削などに用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、サーメット基体と硬質被覆層との界面に、物理蒸着(PVD)法によって0.01〜0.5μmのCoと硬質被覆層を構成する元素の化合物(Co−I層)を介層せしめることにより硬質被覆層の剥離を防止することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、サーメット基体の表面にCoまたはNiの結合相が多い領域を有することによって基体単体として靭性に優れた工具となると記載されている。
【0005】
〔特許文献1〕
特開平7−243024号公報
〔特許文献2〕
特開2001−181775号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のようにサーメット基体表面にPVD法によってCo−I層を形成する方法では、基体とCo−I層間、およびCo−I層と硬質被覆層間が不連続となるために、界面での密着性が不完全であり、特に湿式切削等の急激な温度変化を伴うような切削や高速断続切削等の過酷な切削条件では硬質被覆層、または硬質被覆層およびCo−I層が基体から剥離してしまう場合があった。
【0007】
また、特許文献2のようにサーメット基体に結合相の多い領域を有するだけでは、きつい切削条件ではすぐに摩耗が進行して表層効果がなくなってしまい、また、特許文献2のサーメット基体に単純に硬質被覆層を設けた場合でも上記特許文献1と同様、基体と硬質被覆層間の界面から剥離してしまう恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高速断続切削のような過酷な切削条件であっても、密着性が高く、耐欠損性および耐摩耗性に優れた硬質被覆層を形成した表面被覆Ti基サーメット製切削工具とその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭化物、窒化物または炭窒化物の硬質被覆層の密着性に優れたTi基サーメットの構成について、サーメット基体表面の組成を内部に比べてCo含有量が多く、かつ酸素含有量が少なくなるよう調整した表面領域を形成することによって、硬質被覆層をサーメット基体表面に強固に密着させることができるとともに、表面領域が硬質被覆層の衝撃を吸収する働きをなす結果、過酷な切削条件においても硬質被覆層が剥離することを防止して耐欠損性および耐摩耗性に優れた切削工具となるとの知見に基づくものである。
【0010】
すなわち、本発明の表面被覆Ti基サーメット製切削工具は、Coまたは、CoおよびNiからなる結合相:1〜30重量%にて、Tiと、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上との複合金属炭窒化物からなる硬質相を結合してなるTi基サーメット基体の表面に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0.4≦x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層を被覆してなるものであって、前記サーメット基体表面におけるCo含有量が前記サーメット内部におけるCo含有量よりも多く、かつ前記サーメット基体表面における酸素含有量がサーメット基体内部における酸素含有量よりも少ない表面領域が存在することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記表面領域の厚みが0.1〜5μmであること、前記Co含有量および前記酸素含有量が表面領域から内部に向かって次第に変化すること、サーメット表面領域におけるCo含有量:Cs/サーメット内部におけるCo含有量:Ciの比は、1.1≦Cs/Ci≦1.3、サーメット表面領域における酸素含有量:Os/サーメット内部における酸素含有量:Oiの比は、0.6≦Os/Oi≦0.8であることが望ましいものである。
【0012】
また、本発明の表面被覆Ti基サーメット製切削工具の製造方法は、TiCN粉末と、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属の1種以上の炭化物粉末、窒化物粉末、炭窒化物粉末の少なくとも1種と、Co粉末、またはCo粉末およびNi粉末とを混合した混合粉末を成形し、1500〜1600℃で0.5〜3時間焼成した後、1000℃〜600℃の温度領域において、10〜50Pa水素と窒素の混合ガスを流しながら降温する条件で焼成したTi基サーメット基体に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0.4≦x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層を被覆することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の表面被覆Ti基サーメット製切削工具は、Co、またはCoおよびNiからなる結合相:1〜30重量%にて、Tiと、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上との複合金属炭窒化物からなる硬質相を結合してなるTi基サーメット基体の表面に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0<x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層を単層または2層以上の複層被覆してなるものである。
【0014】
本発明によれば、前記サーメット基体表面におけるCo含有量:Csが前記サーメット内部におけるCo含有量:Ciよりも多く、かつ前記サーメット基体表面における酸素含有量:Osがサーメット基体内部における酸素含有量:Oiよりも少ない表面領域が存在することを特徴とするものであり、これによって、前記硬質被覆層と前記サーメット基体との間に発生する剪断応力を緩和して両者間の密着性を著しく向上せしめるとともに、サーメット基体の表面領域の靭性を高めて硬質被覆層の耐欠損性を高めることができ、かつサーメット基体への硬質被覆層の密着力が向上する結果、高速断続切削等の過酷な切削条件においても硬質被覆層の剥離を引き起こすことなく、耐欠損性および耐摩耗性に優れた切削工具となる。
【0015】
すなわち、前記表面領域において、前記サーメット基体表面におけるCo含有量:Csが前記サーメット内部におけるCo含有量:Ciよりも少ないかまたは同じであると、表面領域の硬質被覆層との密着性が損なわれて硬質被覆層が剥離しやすくなる。サーメット表面領域におけるCo含有量:Cs/サーメット内部におけるCo含有量:Ciの比は、1.1≦Cs/Ci≦1.3であることが、硬質被覆層との密着性およびサーメットの耐熱性、耐塑性変形性の点で望ましい。
【0016】
また、前記表面領域において、前記サーメット基体表面における酸素含有量:Osがサーメット基体内部における酸素含有量:Oiと同じかまたは多いと、硬質被覆層のサーメット基体へのなじみが悪くなり硬質被覆層が剥離しやすく、かつ表面領域の靭性が損なわれて硬質被覆層が欠損しやすくなる。サーメット表面領域における酸素含有量:Os/サーメット内部における酸素含有量:Oiの比は、0.6≦Os/Oi≦0.8であることが、硬質被覆層との密着性、耐欠損性およびサーメット基体の強度の点で望ましい。
【0017】
なお、本発明において、硬質被覆層の密着性を確保するとともに、熱伝導率が悪く、高温になりやすいTi基サーメット基体の基体表面における熱伝導率を高め、かつ工具切刃における塑性変形を抑制する点で、前記表面領域の厚みは0.1〜5μm、さらに1〜3μm、さらには1〜2.5μmであることが望ましい。
【0018】
ここで、本発明によれば、サーメット基体の表面領域は原子の拡散、移動により形成されるために、前記Co含有量および前記酸素含有量が表面領域から内部に向かって次第に変化するものであり、すなわち、硬質被覆層との界面以外に境界部を有しない。しかも、サーメット基体と硬質被覆層との境界部は、サーメット基体表面における酸素含有量が少なくなっていることから硬質被覆層の密着性が良好であり、サーメット基体から硬質被覆層の全域にわたって密着性の高いものである。
【0019】
なお、本発明において、上記サーメット基体の表面と内部におけるCo含有量と酸素含有量とを定量化するには、サーメット断面についてのX線光電子分光(XPS)分析法にて各元素分布を測定することによって特定することができ、表面における含有量とはサーメット基体の最表面(50nm以内)において測定される元素濃度を指し、一方、内部における含有量とはサーメット基体の表面から内部に向かって元素濃度の深さ方向の分布を測定し、元素濃度がバラツキの範囲内で一定となった時の元素濃度(本発明では表面からの深さが1000μmの地点での深さ2μmの範囲内における元素濃度の平均値と規定する。)を指す。また、表面領域の厚みもサーメット基体の表面から内部に向かって元素濃度の深さ方向の分布から求めることができ、内部の元素濃度に対していずれかの元素濃度が測定データのバラツキの振幅よりも大きくなるよう変化した地点を表面領域の始まりと特定できる。
【0020】
一方、本発明においては、焼結性および耐摩耗性、耐塑性変形性の点で、結合相の含有量が1〜30重量%であることが重要である。すなわち、結合相の含有量が1重量%未満では所望の強度および耐摩耗性を得ることができず、逆に結合相の含有量が30重量%を越えると急激に耐摩耗性が低下する。結合相の望ましい含有量は4〜20重量%である。
【0021】
さらに、本発明のTi基サーメット基体は、硬質相として、Tiと、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上、特にW、Zr、V、Ta、Nb、Mo、Cr、Hfの群から選ればれる少なくとも1種との複合金属炭窒化物からなり、特に、硬質相は、Ti(TiCN)からなる芯部と、Tiと、W、Mo、TaおよびNbのうちの1種以上との複合化合物からなる周辺部とから構成される2重有芯構造、または3重有芯構造をなしていることが、粒成長制御効果を有しサーメット基体が微細で均一な組織となるとともに、結合相との濡れ性に優れてサーメットの高強度化に寄与する点で望ましい。なお、サーメット内部における硬質相の平均粒径r2は、耐欠損性の向上、上記表面領域のCo含有量および酸素含有量を容易に制御できる点で2μm以下、特に1μm以下であることが望ましい。
【0022】
また、硬質被覆層との密着性、熱伝導率向上、塑性変形の抑制の点でサーメット基体の表面における硬質相の平均粒径r1が、サーメット基体内部におけるそれr2よりも大きいことが望ましく、さらに、r1=0.5〜3μm、特にr1=0.7〜1.5μm、r2=0.3〜2μm、特にr2=0.5〜1μmであることが望ましい。
【0023】
さらには、本発明によれば、サーメット基体表面に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0.4<x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層(以下、Ti系被覆層と略す。)を被覆してなるが、かかるTi系被覆層はサーメット母材の直上に形成することが望ましく、さらには、高硬度や高温安定性などの耐熱性の点で、(Ti,M1)N(ただし、M1はAl、Si、ZrおよびCrの群から選ばれる1種)、最適には(Tix,Al1−x)Nからなる硬質被覆層を被覆することが望ましい。
【0024】
本発明によれば、サーメット基体の表面領域においては酸素含有量が内部よりも少ないことからより強固にTi系被覆層が成膜されるために、基体とTi系被覆層との界面においても強固な付着力が得られる。
【0025】
(製造方法)
次に、上記本発明のサーメット製切削工具を作製する方法について説明する。
【0026】
まず、TiCN粉末と、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、特に、W、Mo、Ta、V、ZrおよびNbのうちの1種以上を含有する炭化物粉末、窒化物粉末、炭窒化物粉末の少なくとも1種と、Co、またはCo粉末およびNi粉末とを混合した混合粉末を準備する。なお、Co粉末とNi粉末とをともに用いる場合にはCoとNiとの合金粉末を用いても良い。
【0027】
ここで、本発明によれば、表面領域のCo濃度分布を制御するためにはTiCN原料粉末として平均粒径1.0μm以下、特に0.7μm以下の粉末を、Co原料粉末として平均粒径2.0μm以下、特に0.7μm以下の原料粉末を用いることが望ましく、これに加えて後述する焼成条件にて焼成することにより前述の表面領域を有するサーメットを作製することができる。
【0028】
次に、上記混合粉末を所定形状に成形した後、真空中、4〜15℃/minの昇温速度で昇温し、1500〜1600℃の焼成温度で0.5〜3時間焼成した後、1000℃〜600℃の温度領域において水素−窒素混合ガスを50〜500Paの割合で系内へ導入しながら、15〜5℃/minの降温速度で降温する条件で焼成する。ここで、水素−窒素混合ガスは、水素:窒素=10:1〜1:10であることが表面領域の組成制御の点で望ましい。
【0029】
そして、得られたサーメット基体に対して(所望により研磨等の表面加工処理した後、→徳永殿:表面領域がなくなってしまうので削除します。)化学的蒸着法または物理的蒸着法等のコーティング法を用いて硬質被覆層を単層または2層以上被覆することにより、本発明のサーメット製切削工具を作製することができる。また、コーティング法としては、硬質被覆層の均質化を図る点で、サーメット基体との反応性の低いイオンプレーティング法等の物理的蒸着法を用いることが望ましい。
【0030】
【実施例】
原料粉末として、平均粒径0.7μmのTiCN粉末と、いずれも0.5〜2μmのTiN粉末、TaC粉末、NbC粉末、WC粉末、ZrC粉末、VC粉末、および平均粒径0.5μmのNi粉末と表1に示す平均粒径のCo粉末を用い、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで54時間湿式混合し、乾燥した。
【0031】
次に、上記混合粉末を用いて、成形圧98MPaでプレス成形し、この成形体を各焼成温度まで2〜15℃/minで制御しながら昇温した後、表1の焼成条件で2時間焼成し、表1に示す条件で冷却してCNMG120408形状のサーメット基体を形成した。なお、試料No.1〜7、10、11については、冷却中、1000〜600℃の温度領域において、窒素N2:50%−水素H2:50%の混合ガスを800Paの圧力で流しながら降温した。なお、試料No.12については、サーメット基体表面にPVD法によりTi−Co層を0.4μmの膜厚で成膜した。
【0032】
得られたサーメット基体のそれぞれの表面に、以下いずれもアーク放電型イオンプレーティング法を用い、表2に示される組成および平均層厚の硬質被覆層を形成することにより本発明の表面被覆TiCN系サーメット製切削工具をそれぞれ製造した。
【0033】
得られたサーメット製切削工具に対して、断面について、サーメット基体の表面近傍についてX線光電子分光分析(XPS)(PHI製Quantun2000)を用いて、倍率:10000倍でCo含有量および酸素含有量を表面から内部に向かう深さ方向の分布(元素濃度マッピング)を測定した。また、サーメット基体の表面から1mm研磨した表面における元素濃度を2μmの深さにわたって測定し、CiおよびOiを算出した。そして、上記表面近傍における元素濃度マッピングから、Cs,Osおよび表面領域の厚みを算出した。結果は表1に示した。なお、表面におけるCo含有量Csおよび酸素含有量Osが内部におけるCo含有量Ciおよび酸素含有量Oiと同じである場合には表面領域が存在しないと判定した。
【0034】
また、得られた切削工具について、下記切削条件A、Bにて切削評価を行った。結果は表2に耐摩耗性および耐欠損性として表記した。
【0035】
切削条件A(耐摩耗性試験)
被削材:SCM435、
切削速度:250m/min、
送り:0.30mm/rev、
切込み:2.0mm、
切削時間:30分
切削油:エマルジョン(湿式)
評価項目:試験後の逃げ面摩耗幅
切削条件B(耐欠損性試験)
被削材:S45C
被削材:4本溝入り丸棒、
切削速度:100m/min、
送りおよび切削時間:0.1mm/revで10秒間切削後、送りを0.05mm/revずつ上げて各10秒間ずつ切削(最大送り0.5mm/revまで)
切込み:2mm、
評価項目:欠損するまでの総切削時間
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1、2に示される結果から、本発明の範囲内である試料No.1〜7では、いずれもサーメット基体と硬質被覆層との密着性がよく、連続切削および断続切削のいずれでも高速切削にもかかわらず、硬質被覆層に剥離の発生なく、優れた切削特性を示している。これに対して、原料粉末の平均粒径、焼成条件の違いによってサーメット基体表面に上述した表面領域を持たない試料No.8〜11では、硬質被覆層のサーメット基体に対する密着性が十分でないために、いずれの切削試験でも硬質被覆層に剥離が発生し、これが原因で使用寿命が短くなった。また、サーメット基体表面にPVD法によりTi−Co層を形成した試料No.12では切削中にTi−Co層が剥離し十分な耐摩耗性を得ることができなかった。
【0039】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の表面被覆Ti基サーメット製切削工具は、サーメット基体と硬質被覆層との密着性に優れているので、これを高速切削や湿式切削等の切削条件においても硬質被覆層に剥離が発生することなく、優れた耐摩耗性を長期に亘って発揮する。
【0040】
また、本発明に係る表面被覆Ti基サーメット製切削工具は、Ti基サーメット基体をTiCN粉末と、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上の炭化物粉末、窒化物粉末、炭窒化物粉末の少なくとも1種と、Co粉末、またはCo粉末およびNi粉末とを混合した混合粉末を成形し、1500〜1600℃で0.5〜3時間焼成した後、1000℃〜600℃の温度領域において、10〜50Pa水素と窒素の混合ガスを流しながら降温する条件で焼成して形成することから、サーメット基体と硬質被覆層との密着性に優れ、これを高速切削や湿式切削等の切削条件においても硬質被覆層に剥離が発生することなく、優れた耐摩耗性を長期に亘って発揮する。
Claims (5)
- Coまたは、CoおよびNiからなる結合相:1〜30重量%にて、Tiと、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上との複合金属炭窒化物からなる硬質相を結合してなるTi基サーメット基体の表面に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0.4≦x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層を被覆してなる表面被覆Ti基サーメット製切削工具であって、前記サーメット基体表面におけるCo含有量が前記サーメット内部におけるCo含有量よりも多く、かつ前記サーメット基体表面における酸素含有量がサーメット基体内部における酸素含有量よりも少ない表面領域が存在することを特徴とする表面被覆Ti基サーメット製切削工具。
- 前記表面領域の厚みが0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1記載の表面被覆Ti基サーメット製切削工具。
- 前記Co含有量および前記酸素含有量が表面領域から内部に向かって次第に変化することを特徴とする請求項1または2記載の表面被覆Ti基サーメット製切削工具。
- サーメット表面領域におけるCo含有量:Cs/サーメット内部におけるCo含有量:Ciの比は、1.1≦Cs/Ci≦1.3、サーメット表面領域における酸素含有量:Os/サーメット内部における酸素含有量:Oiの比は、0.6≦Os/Oi≦0.8であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の表面被覆Ti基サーメット製切削工具。
- TiCN粉末と、Ti以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属のうちの1種以上の炭化物粉末、窒化物粉末、炭窒化物粉末の少なくとも1種と、Co粉末、またはCo粉末およびNi粉末とを混合した混合粉末を成形し、1500〜1600℃で0.5〜3時間焼成した後、1000℃〜600℃の温度領域において、10〜50Pa水素と窒素の混合ガスを流しながら降温する条件で焼成したTi基サーメット基体に、(Tix,M1−x)(CyN1−y)(ただし、MはTi以外の周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Siのうちの1種以上、0.4≦x≦1,0≦y≦1)で表わされる硬質被覆層を被覆することを特徴とする表面被覆Ti基サーメット製切削工具の製造方法。
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