JP2004249231A - 粒状物の製造方法とその装置 - Google Patents
粒状物の製造方法とその装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004249231A JP2004249231A JP2003043468A JP2003043468A JP2004249231A JP 2004249231 A JP2004249231 A JP 2004249231A JP 2003043468 A JP2003043468 A JP 2003043468A JP 2003043468 A JP2003043468 A JP 2003043468A JP 2004249231 A JP2004249231 A JP 2004249231A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- temperature
- air
- air supply
- supply
- chamber
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Medical Preparation Storing Or Oral Administration Devices (AREA)
- Medicinal Preparation (AREA)
- Glanulating (AREA)
Abstract
【課題】生理活性物質などの含量のばらつきを少なくでき、団粒の発生を抑制できるようにする。
【解決手段】チャンバー(3)内に加熱気体を案内し、このチャンバー(3)内で液体を噴霧して所定の粒体に形成する。加熱気体の給気温度は給気温度制御手段(7)で所定の給気設定温度に維持する。給気風量は、給気風量制御手段(20)で所定の給気設定風量に維持する。チャンバー(3)内温度を参照温度とし、上記の噴霧開始から所定時間経過時の参照温度に、上限基準値と下限基準値を限定した適正参照温度域を設定する。所定時間経過時の参照温度の実測値が適正参照温度域を外れた場合に、給気設定温度と給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正する。
【選択図】 図1
【解決手段】チャンバー(3)内に加熱気体を案内し、このチャンバー(3)内で液体を噴霧して所定の粒体に形成する。加熱気体の給気温度は給気温度制御手段(7)で所定の給気設定温度に維持する。給気風量は、給気風量制御手段(20)で所定の給気設定風量に維持する。チャンバー(3)内温度を参照温度とし、上記の噴霧開始から所定時間経過時の参照温度に、上限基準値と下限基準値を限定した適正参照温度域を設定する。所定時間経過時の参照温度の実測値が適正参照温度域を外れた場合に、給気設定温度と給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品・医薬品・農薬などの分野において生理活性物質の溶出を適度にコントロールできる有核散剤や有核細粒、顆粒などの、粒状物の製造方法とその装置に関し、さらに詳しくは、生理活性物質などの含量のばらつきを少なくでき、複数粒の粒状物が互いに付着して粗粒を形成する現象を抑制できる、粒状物の製造方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、食品・医薬品・農薬などの薬物放出制御システム(ドラッグデリバリーシステム)に関する検討は数多く行われており、顆粒剤や散剤の製造方法において、従来、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの分散液を核顆粒に噴霧して有核顆粒を得る方法(例えば、特許文献1参照)や、粒子径の小さな核に水溶性高分子と薬物とを含む混合液を噴霧して被覆層に生理活性物質を含有させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
上記の従来技術は、例えば加熱空気を案内したチャンバー内に核となる顆粒や細粒を投入し、高分子と薬物とを含む液体を噴霧して上記の核に被覆層を形成している。このとき、上記の核に被覆される薬物等の含量は造粒中の品温により変化し、通常、品温が低いと含量が高くなったり、複数粒の粒状物が互いに付着して粗粒を形成する、いわゆる団粒の発生が多くなったりする。そこで、上記の造粒は、チャンバー内粒子の品温やチャンバー内温度、排気温度等を参照温度として給気温度制御にフィードバックさせ、例えば品温を約40℃等の設定温度に制御しながら上記の噴霧が行われる。但し、噴霧開始直後や、混合液の種類、噴霧速度などの造粒条件を切替えた直後は、上記の参照温度が急速に変化することが多く、この間で参照温度をフィードバックさせるとハンチングを生じるなど却って制御が乱れる惧れがある。そこで、通常、参照温度が安定するまでの間(以下、遷移期間という)は給気温度が所定温度(例えば70℃等)に制御され、遷移期間経過後の安定状態に達すると、上記のように参照温度がフィードバックされて品温が所定温度に制御される。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−174931号公報
【特許文献2】
特開平5−92918号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、遷移期間中は給気温度が所定の設定温度に維持される。しかし給気温度を一定に維持しても、チャンバー内の品温は外気温や給気の湿度など外乱要因により必ずしも一定せず、遷移期間中の温度変化パターンも一定しない。このため、遷移期間中の温度変化パターンの相違により、得られた粒状物に含まれる生理活性物質などの含量がばらつく問題があり、特に、この遷移期間が長い場合、例えば造粒工程の5〜10%以上を占める場合や、1つの液種について噴霧期間の30%以上を占める場合などには、その影響を無視できない問題がある。また、品温が過剰に低下した場合には前記の団粒の発生が増加し易くなる問題もあった。
本発明は上記の問題点を解消し、生理活性物質などの含量のばらつきを少なくでき、団粒の発生を抑制できる粒状物の製造方法とその装置を提供することを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明1は粒状物の製造方法に関し、チャンバー(3)内に案内した加熱気体中で液体を噴霧することにより所定の粒体に形成する粒状物の製造方法であって、上記の加熱気体の給気温度を所定の給気設定温度に維持させるとともに、給気風量を所定の給気設定風量に維持させ、チャンバー(3)内温度、チャンバー(3)内粒体の品温、及びチャンバー(3)からの排気温度の少なくともいずれかを参照温度とし、上記の噴霧開始から所定時間経過時の参照温度に、上限基準値(12)と下限基準値(13)の少なくとも一方を限定した適正参照温度域(14)を設定し、この所定時間経過時の参照温度の実測値が、上記の適正参照温度域(14)を外れた場合に、前記の給気設定温度と給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正することを特徴とする。
【0007】
また、本発明2は粒状物製造装置に関し、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定温度を増減補正する給気設定温度補正手段(10)とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明3は粒状物製造装置に関し、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定風量を増減補正する給気設定風量補正手段(21)とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明4は粒状物製造装置に関し、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定温度と上記の給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正する給気設定補正手段(22)とを備えることを特徴とする。
【0010】
【作用】
液体の噴霧が開始され或いは造粒条件が切替えられると、給気温度が所定の給気設定温度に維持されて、例えば5分ごとなど、所定時間の経過とともに参照温度が実測される。なおこの測定は必ずしも一定時間ごとでなくてもよい。上記の実測値が適正参照温度域に入っている場合は、上記の給気温度はそのまま維持される。実測値が適正参照温度域から外れた場合は、上記の給気設定温度または給気設定風量あるいはその両者が増減補正される。例えば上記の実測値が下限基準値よりも低い場合は給気設定温度が2℃高い値に補正される。この増減される温度や風量は、一定温度であってもよく、或いは限度値との差温に応じて異なる値を設定してもよい。そしてさらに所定時間経過後の参照温度を実測し、その値が適正参照温度域に入った場合は、上記の補正後の給気設定温度や給気設定風量が維持され、適正参照温度域から外れている場合はさらに給気設定温度や給気設定風量が増減補正される。これにより、給気からチャンバー内の粒体に与えられる熱量が変化し、品温の経時変化が所定のパターンに近似されることとなるうえ、参照温度の僅かな変化に対して給気設定温度や給気設定風量が過剰に増減補正される惧れがなく、品温が安定して制御される。
【0011】
上記の造粒条件の切替とは、具体的には例えば給気設定温度の切替、給気送風量の切替、噴霧液体の種類の切替、噴霧速度の切替などをいう。
上記の適正参照温度域と参照温度の実測値とに基づく給気設定温度の制御は、参照温度が安定するまでの遷移期間で行い、参照温度が安定した後は、給気温度を給気設定温度に維持することに代えて、チャンバー内温度、粒体の品温、及び排気温度のいずれかを所定の設定温度に維持するようにフィードバック制御するのが好ましく、これにより遷移期間後の品温を所定温度に、より精緻に制御できる。これらのフィードバック制御のなかで、とりわけ、排気温度のフィードバックによる判断が好ましい。
【0012】
上記の参照温度は、周期的に或いは不規則的に細かく変動する場合があり、この場合には所定時間経過時の実測値に、この変動範囲内で誤差を生じる。このため、上記の所定時間経過時での実測値は、上記の誤差を少なくするため、その経過時前後での測定値の移動平均値を用いると好ましい。
【0013】
特に遷移期間中に造粒条件を切替えると、条件切替の直前にした補正操作が、条件切替後の造粒工程にとって過剰な影響を与える場合がある。例えば風量を増加する造粒条件の切替直前に給気設定温度を上昇させた場合、チャンバー内の粒体に加わる熱量が過大になる惧れがある。このため、造粒条件の切替直前の所定の期間、例えば10分程度の期間は、上記の増減補正を休止するか、或いは適正参照温度域を広く設定するのが好ましい。
【0014】
また、噴霧開始直後や造粒条件切替直後は、特に条件切替が品温に影響するまでの応答が遅い場合、上記の増減補正が過剰に作用する惧れがある。このため、噴霧開始直後や造粒条件切替直後の所定の期間は、上記の増減補正を休止するか、或いは適正参照温度域を広く設定するのが好ましい。
【0015】
上記の所定期間において適正温度域を広く設定する場合、参照温度の標準値に対し、上限基準値との差と下限基準値との差の両者を大きくしてもよいが、いずれか一方を大きく設定することもできる。例えば、参照温度が低下する遷移期間中に、給気設定風量や給気設定温度を増加する場合、参照温度の標準値と下限基準値との差を、標準値と上限基準値との差よりも大きく設定すると好ましい。参照温度の低下に対し給気設定温度を過剰に増減補正する惧れが少なくなり、品温を一層安定して制御できるからである。
【0016】
上記の液体を噴霧する際、通常、チャンバー内に核となる粒子が投入される。この核は細粒や顆粒であってもよく、前工程で生理活性物質などを被覆された粒状物であってもよい。さらに表面をコーティング剤で被覆したコーティング粒であってもよい。これらの核は、後述の薬物を含んでいてもよく、或いは含まなくても良い。
上記の核は、特定の形状に限定されないが、被覆のバラツキを小さくすると共に被覆量を多くするため、真球状、断面楕円状、なす型状、液滴状など、球状または略球状であるのが好ましい。
【0017】
上記の細粒状の核としては、通常、粒子径が実質的に500μm以下のものが用いられ、50〜500μm、好ましくは100〜400μm程度である。このような粒子径を有する核としては、例えば、結晶セルロースの200〜300μmの球形造粒品(旭化成株式会社製、アビセルSP)、結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)による200〜350μmの球形造粒品(フロイント社製、ノンパレルNP−7:3)、結晶セルロース(5部)と乳糖(5部)による200〜350μmの球形造粒品(フロイント社製、ノンパレルNP−5:5)、乳糖(9部)とアルファー化デンプン(1部)による50〜250μmの撹拌造粒品、特開昭61−213201号公報に記載の微結晶セルロース球形顆粒を分級した500μm以下の微粒、スプレーチリングや溶融造粒により球状に形成されたワックス類などの加工品、オイル成分のゼラチンビーズ品などの加工品、ケイ酸カルシウム、デンプン、キチン、セルロース、キトサンなどの多孔性粒子、グラニュー糖(ショ糖)、結晶乳糖、結晶セルロース、塩化ナトリウムなどのバルク品およびそれらの製剤加工品などが挙げられる。さらにこれらの核は、アビセルRC(旭化成株式会社製)のように結晶セルロースと崩壊剤を含んでいてもよい。
【0018】
上記の顆粒状の核としては、たとえば、ショ糖(75重量部)をコーンスターチ(25重量部)で自体公知の方法でコーティングしたノンパレルや、結晶セルロースを用いた球形顆粒等が挙げられ、さらに、核顆粒にワックスやポリマーでコーティングしたものであっても良い。
【0019】
上記の液体は、一般に不揮発成分を含み、少なくとも1種の生理活性物質を含む液体であってもよく、或いは、水溶性又は親水性高分子を含む液体や、これと生理活性物質とを含む液体であってもよく、コーティング物質を含むものであってもよい。
例えば上記の核が、例えば後述の薬物を含む顆粒核である場合、上記の液体は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(以下、L−HPCと記載することもある)の分散液であってもよい。なお、このL−HPCのヒドロキシプロポキシル基含量は、例えば約4〜20%であり、好ましくは5〜16%、より好ましくは10〜13%である。また、このL−HPCの平均粒子径としては、一般に200μm以下であれば良く、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0020】
上記の少なくとも1種の薬物を含む液体は、水溶性高分子または親水性高分子を含む溶液であってもよく、或いは分散液であってもよい。この混合液は、水、エタノールなどの有機溶媒またはこれらの混液を用いて調製できる。混合液中の水溶性高分子の濃度は、薬物及び添加剤の割合により異なるが、通常、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜10重量%程度である。濃度が0.1重量%未満では、核に対する薬物の結合力が小さく、50重量%を越えると、混合液の粘度が増大して作業性が低下し易い。
【0021】
上記の水溶性高分子の含量は、粒状物中の薬物の溶出性をコントロールできる範囲であればよく、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%程度である。水溶性高分子の割合が、0.1重量%未満である場合には、薬物の溶出をコントロールするのが困難であり、50重量%を越えると薬物含量が低下する。
【0022】
前記の核に対する被覆層の割合は、例えば薬物の溶出性を制御できる範囲で選択でき、通常、核100重量部に対して50〜400重量部程度である。被覆量が50重量部未満では、薬物の溶出をコントロールするのが困難であり、400重量部を越えると、粒が大きく成長して、例えば散剤の粒度規格内に入りにくくなる。
なお、被覆層は1つの層に限らず複数の層で形成してもよい。この場合、水溶性高分子の配合割合や粘度のグレードを選定したり、薬物や他の添加剤の割合が変化した混合液を用いて順次被覆し、各層の薬物濃度を連続的にまたは段階的に変動させてもよい。その場合、複数の層間に非活性の被膜を形成し、薬物を含む各層間を遮断してもよい。また、配合性が悪い2種以上の薬物を配合する場合、それぞれの混合液を同時にまたは別々に使用して、核を被覆してもよい。
【0023】
なお、本明細書において「被覆」とは、核の表面全体を被覆する場合に限らず、核の表面を部分的に被覆する場合や、核に吸着または吸収される場合も含む意味に用いる。
【0024】
上記の水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと記載することがある)、ポリビニルピロリドンなどのエタノール可溶性の水溶性高分子;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと記載することがある)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなどのエタノール不溶性の水溶性高分子が挙げられる。なお、エタノール可溶性の水溶性高分子とエタノール不溶性の水溶性高分子とを併用したり、粘度の異なる水溶性高分子を併用することにより、薬物の溶出性をコントロールできる。
【0025】
好ましい水溶性高分子には、HPC、HPMC、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールが含まれる。特に好ましい水溶性高分子は、HPC、HPMCなどのセルロース誘導体である。
【0026】
HPCは、ヒドロキシプロポキシル基を、例えば、53.4〜77.5重量%、好ましくは60〜70重量%程度含有する。HPCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、1〜150000cps程度である。このようなHPCとしては、日局ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用される。なお、このHPCは、前記の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)とは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が異なる。
【0027】
HPMCは、メトキシル基とヒドロキシプロポキシル基が結合した混合エーテルである。HPMCのメトキシル基の含有量は、例えば、19〜30重量%、ヒドロキシプロポキシル基の含有量は、例えば、4〜12重量%程度である。HPMCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、1〜40000センチストークス程度である。このようなHPMCとしては、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906および日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910などが使用される。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは一種又は二種以上混合して使用できる。
【0028】
上記の混合液に含まれる薬物は特に限定されない。例えば中枢神経系薬物として、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェンなど;循環器系薬物として、モルシドミン、ビンポセチン、塩酸デラプリル、プロプラノーロル、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジピン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビドなど;呼吸器系薬物として、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、グアイフェニシンなど;消化器系薬物として、ランソプラゾールとその光学活性体、オメプラゾールなどのベンツイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、パンクレアチン、ビサコジル、5−アミノサリチル酸など;抗生物質及び化学療法剤として、セファレキシン、セファクロール、セフラジン、アモキシシリン、ピバンピシリン、バカンピシリン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンステアレート、リンコマイシン、ドキシサイクリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾールなど;代謝系薬物として、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アデノシントリフォスフェート、グリペンクラミド、塩化カリウムなど;ビタミン系薬物としては、ビタミンB1 、ビタミンB2 、ビタミンB6 、ビタミンC、フルスルチアミン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンKなど;制酸剤等が挙げられる。これらの薬物は一種または二種以上使用できる。とりわけ、薬物含量の精密な制御や薬物の溶出の厳密な制御が要求される造粒に、本発明は好適に適用される。このような例として、ランソプラゾールやその光学活性体の細粒などが挙げられる。
【0029】
上記の混合液は、粒状物の強度を増す等の理由から、例えば前記の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)や、その他の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤としては、散剤を製造する際に一般に配合される添加剤等が使用できる。具体的には、乳糖、コーンスターチ、ショ糖、タルク、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、L−システィンなどの賦形剤;アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴムなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン類、クロスリンクドカルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスリンクドインソルブルポリビニルピロリドンなどの崩壊剤;酸化チタン、ベンガラ、タール色素などの着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は2種以上用いてもよい。
【0030】
上記の噴霧により形成された粒状物の形状、寸法、成分などは、特定のものに限定されない。例えば有核散剤の場合、粒子径は、実質的に500μm以下、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは100〜400μmにされる。なお、粒子径が500μmを越えると調剤性が低下し易く、粒子径が50μmより小さくなると、製造中に静電気により製造機器の壁に散剤が付着する等の問題が生じ易くなる。
【0031】
得られた粒状物は、篩により粒度を揃えることができる。有核散剤の場合、例えば32メッシュ(500μm)の丸篩が使用して、この32メッシュを通過する散剤を選別することができる。なお、粒状物の形状は、通常、核に対応しており、例えば略球形の粒状物を得ることができる。
【0032】
適切な粒子径の核に、水溶性高分子と少なくとも1種の生理活性物質を含む混合液を噴霧して有核散剤を形成する場合、水溶性高分子、例えばHPCやHPMCの粘度のグレード、含有量、およびエタノール可溶性の水溶性高分子(例えばHPC)とエタノール不溶性の水溶性高分子(例えばHPMC)との比率を選択することにより、薬物の溶出性をコントロールできる。また、薬物の溶解する液性の影響が余りなく、溶出性を適当にコントロールできる。さらに、上記の核に結晶セルロースと糖成分を含んだ細粒状の核を用いると、生理活性物質の溶出をコントロールできる。なお、これらの有核散剤はそのまま散剤として使用できるほか、慣用の方法に従って、細粒や顆粒、錠剤に添加し顆粒剤や錠剤としてもよく、カプセルに充填してカプセル剤としてもよい。錠剤のなかでも、とりわけ細粒を含む口腔内崩壊錠等が好ましい剤形として挙げられる。
【0033】
なお、上記の液体を噴霧する際に、薬物や添加剤を混和した粉末散布剤を散布してもよい。この方法では、粉末状散布剤を散布するという簡単な操作で核に被覆層を形成できる。上記の散布剤の粒度は、一般に約100μm以下、好ましくは約50μm以下である。
【0034】
上記のようにして得られた粒状物には、味のマスキング、腸溶性、胃溶性などを付与するため、慣用の方法によりコーティングを施してもよい。コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、プルロニックF68、ヒマシ油、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、アクリル酸コポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート、セラック、ワックス類、及びタルク、酸化チタン、ベンガラ等の色素が挙げられる。
【0035】
造粒温度は薬物の安定性を損わない範囲に設定され、薬物の安定性が高い場合には上記の混合液の温度は特に調整する必要はなく、一般に1〜30℃程度の室温で行なうことができる。
核を被覆する方法や装置は特に制限されず、例えば、遠心流動型コーティング造粒装置、流動型コーティング造粒装置、撹拌造粒装置などの慣用の設備が使用できる。遠心流動型コーティング造粒装置の具体例としては、例えば、フロイント社製のCF装置やスパイラフロー、パウレック社製のマルチプレックス、不二パウダル社製のニューマルメなどが挙げられる。
また、上記の液体の噴霧方法も特に限定されず、例えば、タンデンシャルスプレー方式、トップスプレー方式、ボトムスプレー方式などの方法を用いることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【0037】
図1に示すように、この粒状物製造装置(1)は、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備える。上記の給気路(2)には、例えば加熱蒸気を供給して上記の給気路(2)内の給気を加熱する熱交換装置(5)と、その給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、給気を供給する送風装置(18)と、給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)とが設けてある。上記の熱交換装置(5)には給気の加熱温度を制御する給気温度制御装置(7)が連結してあり、この給気温度制御装置(7)の入力部に上記の給気温度測定手段(6)が接続してある。この給気温度制御装置(7)は、上記の給気が所定の給気設定温度となるように、上記の給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、蒸気供給路(5a)に設けたバルブ(5b)の開度を調整することで、前記の熱交換装置(5)による給気の加熱を制御するように構成してある。また、上記の送風装置(18)には給気の風量を制御する給気風量制御装置(20)が連結してあり、この給気風量制御装置(20)の入力部に上記の給気風量測定手段(19)が接続してある。この給気風量制御装置(20)は、上記の給気が所定の給気設定風量となるように、上記の給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)のファン回転数や給気路(2)に設けた開閉弁を操作するなどして給気の風量を制御するように構成してある。
【0038】
上記のチャンバー(3)には、室内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、このチャンバー(3)内の雰囲気温度やチャンバー(3)内の粒体の品温を測定する参照温度測定手段(9)が設けてある。
前記の給気温度制御装置(7)には、給気設定温度補正手段(10)が接続されており、この給気設定温度補正手段(10)の入力部に上記の参照温度測定手段(9)が接続されている。上記の給気設定温度補正手段(10)は、参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域から外れたことを識別して上記の給気設定温度を増減補正するように構成してある。
【0039】
また、前記の排気路(4)には、排気温度を測定する排気温度測定手段(11)が設けてある。なお、この排気温度測定手段(11)を参照温度測定手段(9)に用いてもよい。
上記の排気温度測定手段(11)は、前記の給気設定温度補正手段(10)を介して給気温度制御装置(7)に接続されている。排気温度の測定値は、例えば参照温度が安定したのち等、必要に応じて給気温度制御装置(7)にフィードバックされ、これに基づいて排気温度が所定温度となるように熱交換装置(5)が制御される。
【0040】
【実施例】
次に、粒状物として腸溶性有核散剤を、上記の粒状物製造装置を用いて製造する実施例について説明する。この実施例では、製造工程が(1)バルク液の噴霧、(2)下掛フィルム液の噴霧、(3)腸溶性フィルム液の噴霧、及び(4)オーバーコートフィルム液の噴霧からなる。
なお、以下に述べる実施例や参考例は、いうまでもなく本発明を限定するものではない。
【0041】
また、以下の実施例や参考例で用いられる成分、即ち、炭酸マグネシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、タルク、酸化チタン、ポリエチレングリコール6000(マクロゴール6000)、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ポリソルベート80、結晶セルロースは、第14改正日本薬局方適合品を用い、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL 30D−55)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギットNE30D)、クエン酸トリエチル、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄は、医薬品添加物規格適合品を用いた。
また、D−マンニトール、無水クエン酸は第14改正日本薬局方又は第25改正米国薬局方或いは第4版(2002)欧州薬局方の適合品を用い、クロスポビドン、アスパルテームは医薬品添加物規格又は第25改正米国薬局方或いは第4版(2002)欧州薬局方の適合品を用いた。
【0042】
(1)バルク液の噴霧
粒子径100〜200μmのノンパレル105(商品名)41.58kgを転動流動型コーティング造粒機[パウレック社製、MP−400型]のチャンバーに入れ、予め調製した下記組成のバルク液を噴霧コーティングする。噴霧方式はタンジェンシャルスプレー方式で、噴霧液の供給速度は1.4kg/分とした。規定量257.6kgのバルク液を噴霧した時点でバルク液の噴霧を完了し、引き続き次工程の下掛けフィルム有核散剤の製造に移行した。
【0043】
[バルク液]
ランソプラゾール 39.6kg
炭酸マグネシウム 13.2kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
ヒドロキシプロピルセルロース(タイプSL) 13.2kg
精製水 185L
【0044】
上記のバルク液の噴霧の間、チャンバー内への給気は、噴霧開始から30分間は送風量45Nm3/分、給気温度78℃に設定し、噴霧開始後30〜60分は送風量55Nm3/分、給気温度70℃に設定切替し、60分経過後は排気温度が約31℃になるように給気温度を制御した。
【0045】
噴霧開始後60分間は、給気温度が所定の給気設定温度(78℃又は70℃)となるように制御しているが、この間、チャンバー内の粒体の品温は噴霧開始から時間経過とともに低下していく。そこで、この間の時間−温度推移が一定のパターンとなるように給気温度を微調節した。
【0046】
具体的にはチャンバー内温度を参照温度とし、噴霧開始時点から30分間において、図2に示すように、噴霧開始後15分から5分ごとに、上記の参照温度に上限基準値(12)と下限基準値(13)とを有する適正参照温度域(14)を設定した。そして、それぞれの経過時で参照温度を実測し、この実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は、前記の給気設定温度補正手段(10)により、前記の給気設定温度を3℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は2℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。
なお、図2において、細線は標準的な挙動を示す場合の実測値(15)を、太線は何らかの外的要因により低めの挙動を示す場合の実測値(16)を、2点鎖線は比較例として、低めの挙動を示す際に温度補正をしない場合の実測値(17)をそれぞれ示す。
【0047】
引き続き、噴霧開始後30分で送風量と給気温度の設定を上記のように切替えてから10分経過した時点、即ち噴霧開始40分後から50分まで、5分ごとに適正参照温度域(14)を設定した。そして上記と同様、参照温度の実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は給気設定温度を2℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は給気設定温度を1℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。
【0048】
なお、この実施例における各実測値は、それぞれの時点での前後120秒間で1秒ごとに実測した値の平均値を用いた。従って、この平均値に基づく増減補正は、所定の経過時点から60秒後に適用されることになるが、この遅延は実用上は無視することができる。
【0049】
また、上記の条件切替の10分前の前記の適正参照温度域(14)は、参照温度の標準値と下限基準値(13)との差を、標準値と上限基準値(12)との差よりも大きく設定してある。さらに、この条件切替時の直前と直後の各5分間は、給気設定温度の増減補正を休止するようにしてある。
【0050】
(2)下掛フィルム液の噴霧
次に、前記(1)のバルク液の噴霧に引き続き、定常状態の排気温度が約41℃になるよう給気温度を制御し、予め調製した下記組成の下掛フィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は1.2kg/分となるように設定した。規定量132.0kgを噴霧した時点で噴霧を停止し、そのまま乾燥を約12分間行った。その後、42号の丸篩(350μm)と100号の丸篩(150μm)で篩通し、下掛フィルム有核散剤132kgを得た。
【0051】
[下掛フィルム液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 9.24kg
(タイプ2910、粘度3センチストークス)
酸化チタン(TiO2) 3.96kg
滅菌タルク〔松村産業株式会社製] 3.96kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
マンニトール 9.24kg
精製水 99.0L
【0052】
(3)腸溶性フィルム液の噴霧
次に、前記(2)の工程で得た下掛フィルム有核散剤44.0kgを転動流動型コーティング造粒機[パウレツク社製、MP−400型]に入れ、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は1.05kg/分となるようにし、規定量54.6kgを噴霧した。
【0053】
[腸溶性フィルム液(A)]
オイドラギットL30D−55 32.05kg
オイドラギットNE30D 3.570kg
ポリエチレングリコール6000 1.071kg
モノステアリン酸グリセリン 0.629kg
ポリソルベート80 0.189kg
三二酸化鉄 0.006kg
黄色三二酸化鉄 0.006kg
無水クエン酸 0.013kg
精製水 44.3L
【0054】
この間、給気設定温度を85℃とし、図3に示すように、噴霧開始20分後から40分経過時までの10分ごとに、上限基準値(12)と下限基準値(13)とを有する適正参照温度域(14)を設定した。そして、それぞれの経過時で参照温度を実測し、この実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は前記の給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は給気設定温度を3℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は2℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。
なお、図2と同様、図3においても、細線は標準的な挙動を示す場合の実測値(15)を、太線は何らかの外的要因により低めの挙動を示す場合の実測値(16)を、2点鎖線は比較例として、低めの挙動を示す際に温度補正をしない場合の実測値(17)をそれぞれ示す。
【0055】
引き続き、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(B)をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は1.05kg/分となるように設定し、規定量201.6kgを噴霧した。
【0056】
[腸溶性フイルム液(B)]
オイドラギットL30D−55 117.6kg
オイドラギットNE30D 13.06kg
クエン酸トリエチル 7.854kg
モノステアリン酸グリセリン 2.521kg
ポリソルベート80 0.756kg
三二酸化鉄 0.025kg
黄色三二酸化鉄 0.025kg
無水クエン酸 0.021kg
精製水 59.7L
【0057】
この間、腸溶性フィルム液(B)の噴霧開始10分後から10分ごとに、適正参照温度域(14)を設定した。即ち、噴霧液の切替時の直前と直後は、上記の給気設定温度の増減補正を休止してある。そして前記と同様、参照温度の実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は給気設定温度を3℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は給気設定温度を2℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。そして腸溶性フイルム液(B)の噴霧開始60分後は、排気温度が約42℃になるよう給気温度を制御した。
【0058】
引き続き定常状態の排気温度が約42℃になるよう給気温度を制御し、予め調製した前記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。なお、噴霧液の供給速度は1.05kg/分となるようにし、規定量27.3kgを噴霧した。
【0059】
(4)オーバーコートフィルム液の噴霧
次に、前記(3)の工程に引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう給気温度をコントロールし、予め調製した下記組成のフィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は0.72kg/分となるようにし、規定量29.4kgを噴霧した時点で噴霧を停止した。その後は、給気温度をそのまま維持して乾燥を続け、排気温度が65℃に達した後、冷却した。得られた粒状物を、35号の丸篩(420μm)と60号の丸篩(250μm)を用いて篩過し、106kgのオーバーコート腸溶性有核散剤を得た。この得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の平均粒径は、340μmであった。
【0060】
[オーバーコートフィルム液]
マンニトール 4.2kg
精製水 25.2L
【0061】
次に、上記の参照温度に基づいて給気設定温度を補正した場合の主薬含量と団粒の発生を、補正しない場合と比較した。
【0062】
(a)主薬含量について
前記の下掛フィルム有核散剤の製造(上記の工程(1)及び(2))において、参照温度であるチャンバー内温度の推移(バルク液の噴霧開始から30分間を代表例として抜粋)と、得られた下掛フィルム有核散剤に含まれる主薬の、所定量に対する比率を表1に示す。なお、表1には上から順に、参照温度が標準的に挙動する場合の代表例(実施例1・2)、参照温度が何らかの外的要因により低めに挙動する際に給気設定温度を増減補正した場合の代表例(実施例3・4)、参照温度が低めに挙動する際に給気設定温度を補正しない場合の代表例(比較例1・2)を記している。
【0063】
【表1】
【0064】
図2と表1から明らかなように、参照温度が標準的に挙動する場合は適正参照温度域内で変動するので給気設定温度を増減補正することがないが、得られた粒状物の主薬含量はほぼ所定量になり、例えば目標とする99〜101%の範囲内に収まる(実施例1・2を参照)。
一方、何らかの外的要因によりチャンバー内の温度が低めに挙動する場合、給気設定温度を増減補正せずにそのまま維持するとチャンバー内温度が低下を続ける。この結果、1つ1つの粒が2粒以上相互に付着した粗大粒(団粒)の発生を招くほか、主薬含量が高くなって、例えば目標とする99〜101%の範囲から外れ、不良品となる場合がある(比較例1・2を参照)。
これに対し実施例3や実施例4に示すように、外的要因でチャンバー内の温度が低めに挙勤しても給気設定温度を増減補正した場合には、チャンバー内温度や品温を標準的挙動に近づけることができ、主薬含量をほぼ目標範囲付近とすることができる。
【0065】
(b)団粒の発生について
前記のオーバーコート腸溶性有核散剤の製造(上記の工程(3)及び(4))において、参照温度であるチャンバー内温度の推移(腸溶性フィルム液(A)の最初の噴霧時を代表例として抜粋)と、得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の団粒発生率を表2に示す。なお、表2には上から順に、参照温度が標準的に挙動する場合の代表例(実施例5・6)、参照温度が何らかの外的要因により低めに挙動する際に給気設定温度を増減補正した場合の代表例(実施例7・8)、参照温度が低めに挙動する際に給気設定温度を補正しない場合の代表例(比較例3・4)を記している。
【0066】
【表2】
【0067】
図3と表2から明らかなように、参照温度が標準的に挙動する場合は適正参照温度域内で変動するので給気設定温度を増減補正することがないが、得られた粒状物に発生する団粒も少ない(実施例5・6を参照)。
一方、何らかの外的要因によりチャンバー内の温度が低めの挙動をする場合、給気設定温度を増減補正せずにそのまま維持するとチャンバー内温度が低下を続けるため、粒状物が複数粒相互に付着した粗大粒(団粒)が発生し、例えば目標とする1%以下を大きく外れることがある(比較例3・4を参照)。
これに対し、実施例7や実施例8に示すように、外的要因でチャンバー内の温度が低めで挙勤しても、給気設定温度を増減補正した場合には、チャンバー内温度や品温を標準的挙動に近づけることができ、団粒の発生率を目標範囲内に抑制することができる。
【0068】
【参考例】
上記の方法で得られた散剤を用いて、例えば以下の口腔内崩壊錠を製造することができる。
【0069】
(1)混合末の製造
前記マンニトールオーバーコート腸溶性有核散剤270g、マンニトール204.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%)30g、結晶セルロース[旭化成株式会社製、商品名セオラスKG−801]30g、クロスポビドン15g、無水クエン酸3g、アスパルテーム9g、ステアリン酸マグネシウム6g及びフレーバー(日本フィルメニッヒ株式会社製、STRAWBERRY DURAROME)3gを袋混合し、混合末を得た。
【0070】
(2)口腔内崩壊錠の製造
前記の混合末570gを、ロータリー式打錠機を用いて、1錠570mg、直径13mm、隅角平面の杵により、打錠圧1.5ton/cm2で打錠した。
【0071】
上記の実施例では、粒状物としてオーバーコート腸溶性有核散剤を製造する場合について説明したが、本発明は他の粒状物についても同様に適用でき、これらの粒状物は医薬品をはじめ、食品や農薬などにも適用できることはいうまでもない。
また、粒状物の大きさや形状、給気設定温度やこれを増減補正する温度、参照温度、排気温度、適正参照温度域の範囲等は、上記の各実施形態や実施例のものに限定されない。なお、上記の適正参照温度域は上限基準値と下限基準値とのいずれか一方のみを限定してもよいが、前記の実施例のように、両基準値を限定すると品温の変化を所定のパターンから大きく外れることを一層防止することができるので、より好ましい。
【0072】
なお、上記の実施例では遷移期間が、バルク液の噴霧工程では約3時間のうちの約1時間を占め、腸溶性フィルム液(A)の最初の噴霧工程では約50分の全てを占め、腸溶性フィルム液(B)の噴霧工程では約3時間のうちの約1時間を占めており、従って、遷移期間がそれぞれの噴霧工程の30%以上を占め、造粒工程全体でも20%以上を占めている。本発明は上記の遷移期間が短い場合にも適用できるが、上記の実施例のように遷移期間が造粒工程のうちの比較的大きな部分を占めている場合には、この遷移期間での品温の変化を所定のパターンから大きく外れることを防止できるので、特に好適である。
【0073】
上記の第1実施形態では、給気設定温度を増減補正することにより、遷移期間中の品温の温度変化を所定のパターンに近似させるように制御したが、本発明では給気の風量を増減補正することにより品温を制御することも可能である。
【0074】
即ち、図4に示す本発明の第2実施形態では、前記の第1実施形態の給気設定温度補正手段に代えて、給気設定風量補正手段(21)を備えている。この給気設定風量補正手段(21)は、前記の給気風量制御装置(20)に接続されており、前記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域から外れたことを識別して、上記の給気設定風量を増減補正するように構成してある。
その他の構成は前記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0075】
また上記の第1及び第2実施形態では、それぞれ給気設定温度補正手段と給気設定風量補正手段のいずれかを備える場合について説明したが、本発明では、例えば図5に示す第3実施形態のように、両者を備えて給気設定温度と給気設定風量とのいずれか一方または両方を増減補正してもよい。即ち、この第3実施形態では、前記の第1実施形態の給気設定温度補正手段に代えて、給気設定補正手段(22)を備えている。この給気設定補正手段(22)は、前記の給気温度制御装置(7)と給気風量制御装置(20)に接続されており、前記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域から外れたことを識別して、上記の給気設定温度と給気設定風量のいずれか一方を増減補正したり、或いは両方を同時に増減補正するように構成してある。これにより給気設定温度と給気設定風量のそれぞれの増減幅は少なくしてチャンバー内温度や品温の制御範囲を広げることができ、また、例えば給気設定温度の増減補正により精緻で且つ円滑に温度補正を行い、一方、給気設定風量の増減補正により大きな補正幅に対し迅速に対応させたりすることができる。
【0076】
なお本発明の装置は、上記の各実施形態のものに限定されず、造粒装置の種類や型式、噴霧装置の台数、噴霧方式などは他の形式であってもよく、また、上記の給気設定温度補正手段と給気設定風量補正手段とを個別に備え、主制御装置などに連結して作動させてもよい。
【0077】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0078】
(1) 時間経過に対応して参照温度を実測し、これをフィードバックして適正参照温度域から外れた場合に給気温度や給気風量を補正するので、噴霧開始直後や造粒条件切替直後の品温が変化し易い遷移期間であっても、その品温変化が所定のパターンから大きく外れることを防止できる。しかも、適正参照温度域は幅を持たせてあるので、参照温度の僅かな変化に対して給気設定温度や給気設定風量を過剰に増減補正する惧れがなく、品温を安定して制御することができる。これらの結果、得られた粒状物に含まれる生理活性物質などの含量のバラツキを低減することができる。
【0079】
(2) 参照温度が適正参照温度域から大きく外れることがないうえ、外れても速やかに補正されるので、品温が過剰に低下する惧れがなく、複数粒の粒状物が互いに付着した粗大粒(団粒)の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【図2】バルク液の噴霧における、参照温度の経時変化を示すグラフである。
【図3】腸溶性フィルム液の噴霧における、参照温度の経時変化を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1…粒状物製造装置
2…給気路
3…チャンバー
4…排気路
5…加熱装置(熱交換装置)
6…給気温度測定手段
7…給気温度制御手段(給気温度制御装置)
8…噴霧装置
9…参照温度測定手段
10…給気設定温度補正手段
11…排気温度測定手段
12…参照温度の上限基準値
13…参照温度の下限基準値
14…適正参照温度域
18…送風装置
19…給気風量測定手段
20…給気風量制御手段(給気風量制御装置)
21…給気設定風量補正手段
22…給気設定補正手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品・医薬品・農薬などの分野において生理活性物質の溶出を適度にコントロールできる有核散剤や有核細粒、顆粒などの、粒状物の製造方法とその装置に関し、さらに詳しくは、生理活性物質などの含量のばらつきを少なくでき、複数粒の粒状物が互いに付着して粗粒を形成する現象を抑制できる、粒状物の製造方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、食品・医薬品・農薬などの薬物放出制御システム(ドラッグデリバリーシステム)に関する検討は数多く行われており、顆粒剤や散剤の製造方法において、従来、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの分散液を核顆粒に噴霧して有核顆粒を得る方法(例えば、特許文献1参照)や、粒子径の小さな核に水溶性高分子と薬物とを含む混合液を噴霧して被覆層に生理活性物質を含有させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
上記の従来技術は、例えば加熱空気を案内したチャンバー内に核となる顆粒や細粒を投入し、高分子と薬物とを含む液体を噴霧して上記の核に被覆層を形成している。このとき、上記の核に被覆される薬物等の含量は造粒中の品温により変化し、通常、品温が低いと含量が高くなったり、複数粒の粒状物が互いに付着して粗粒を形成する、いわゆる団粒の発生が多くなったりする。そこで、上記の造粒は、チャンバー内粒子の品温やチャンバー内温度、排気温度等を参照温度として給気温度制御にフィードバックさせ、例えば品温を約40℃等の設定温度に制御しながら上記の噴霧が行われる。但し、噴霧開始直後や、混合液の種類、噴霧速度などの造粒条件を切替えた直後は、上記の参照温度が急速に変化することが多く、この間で参照温度をフィードバックさせるとハンチングを生じるなど却って制御が乱れる惧れがある。そこで、通常、参照温度が安定するまでの間(以下、遷移期間という)は給気温度が所定温度(例えば70℃等)に制御され、遷移期間経過後の安定状態に達すると、上記のように参照温度がフィードバックされて品温が所定温度に制御される。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−174931号公報
【特許文献2】
特開平5−92918号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、遷移期間中は給気温度が所定の設定温度に維持される。しかし給気温度を一定に維持しても、チャンバー内の品温は外気温や給気の湿度など外乱要因により必ずしも一定せず、遷移期間中の温度変化パターンも一定しない。このため、遷移期間中の温度変化パターンの相違により、得られた粒状物に含まれる生理活性物質などの含量がばらつく問題があり、特に、この遷移期間が長い場合、例えば造粒工程の5〜10%以上を占める場合や、1つの液種について噴霧期間の30%以上を占める場合などには、その影響を無視できない問題がある。また、品温が過剰に低下した場合には前記の団粒の発生が増加し易くなる問題もあった。
本発明は上記の問題点を解消し、生理活性物質などの含量のばらつきを少なくでき、団粒の発生を抑制できる粒状物の製造方法とその装置を提供することを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明1は粒状物の製造方法に関し、チャンバー(3)内に案内した加熱気体中で液体を噴霧することにより所定の粒体に形成する粒状物の製造方法であって、上記の加熱気体の給気温度を所定の給気設定温度に維持させるとともに、給気風量を所定の給気設定風量に維持させ、チャンバー(3)内温度、チャンバー(3)内粒体の品温、及びチャンバー(3)からの排気温度の少なくともいずれかを参照温度とし、上記の噴霧開始から所定時間経過時の参照温度に、上限基準値(12)と下限基準値(13)の少なくとも一方を限定した適正参照温度域(14)を設定し、この所定時間経過時の参照温度の実測値が、上記の適正参照温度域(14)を外れた場合に、前記の給気設定温度と給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正することを特徴とする。
【0007】
また、本発明2は粒状物製造装置に関し、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定温度を増減補正する給気設定温度補正手段(10)とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明3は粒状物製造装置に関し、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定風量を増減補正する給気設定風量補正手段(21)とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明4は粒状物製造装置に関し、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定温度と上記の給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正する給気設定補正手段(22)とを備えることを特徴とする。
【0010】
【作用】
液体の噴霧が開始され或いは造粒条件が切替えられると、給気温度が所定の給気設定温度に維持されて、例えば5分ごとなど、所定時間の経過とともに参照温度が実測される。なおこの測定は必ずしも一定時間ごとでなくてもよい。上記の実測値が適正参照温度域に入っている場合は、上記の給気温度はそのまま維持される。実測値が適正参照温度域から外れた場合は、上記の給気設定温度または給気設定風量あるいはその両者が増減補正される。例えば上記の実測値が下限基準値よりも低い場合は給気設定温度が2℃高い値に補正される。この増減される温度や風量は、一定温度であってもよく、或いは限度値との差温に応じて異なる値を設定してもよい。そしてさらに所定時間経過後の参照温度を実測し、その値が適正参照温度域に入った場合は、上記の補正後の給気設定温度や給気設定風量が維持され、適正参照温度域から外れている場合はさらに給気設定温度や給気設定風量が増減補正される。これにより、給気からチャンバー内の粒体に与えられる熱量が変化し、品温の経時変化が所定のパターンに近似されることとなるうえ、参照温度の僅かな変化に対して給気設定温度や給気設定風量が過剰に増減補正される惧れがなく、品温が安定して制御される。
【0011】
上記の造粒条件の切替とは、具体的には例えば給気設定温度の切替、給気送風量の切替、噴霧液体の種類の切替、噴霧速度の切替などをいう。
上記の適正参照温度域と参照温度の実測値とに基づく給気設定温度の制御は、参照温度が安定するまでの遷移期間で行い、参照温度が安定した後は、給気温度を給気設定温度に維持することに代えて、チャンバー内温度、粒体の品温、及び排気温度のいずれかを所定の設定温度に維持するようにフィードバック制御するのが好ましく、これにより遷移期間後の品温を所定温度に、より精緻に制御できる。これらのフィードバック制御のなかで、とりわけ、排気温度のフィードバックによる判断が好ましい。
【0012】
上記の参照温度は、周期的に或いは不規則的に細かく変動する場合があり、この場合には所定時間経過時の実測値に、この変動範囲内で誤差を生じる。このため、上記の所定時間経過時での実測値は、上記の誤差を少なくするため、その経過時前後での測定値の移動平均値を用いると好ましい。
【0013】
特に遷移期間中に造粒条件を切替えると、条件切替の直前にした補正操作が、条件切替後の造粒工程にとって過剰な影響を与える場合がある。例えば風量を増加する造粒条件の切替直前に給気設定温度を上昇させた場合、チャンバー内の粒体に加わる熱量が過大になる惧れがある。このため、造粒条件の切替直前の所定の期間、例えば10分程度の期間は、上記の増減補正を休止するか、或いは適正参照温度域を広く設定するのが好ましい。
【0014】
また、噴霧開始直後や造粒条件切替直後は、特に条件切替が品温に影響するまでの応答が遅い場合、上記の増減補正が過剰に作用する惧れがある。このため、噴霧開始直後や造粒条件切替直後の所定の期間は、上記の増減補正を休止するか、或いは適正参照温度域を広く設定するのが好ましい。
【0015】
上記の所定期間において適正温度域を広く設定する場合、参照温度の標準値に対し、上限基準値との差と下限基準値との差の両者を大きくしてもよいが、いずれか一方を大きく設定することもできる。例えば、参照温度が低下する遷移期間中に、給気設定風量や給気設定温度を増加する場合、参照温度の標準値と下限基準値との差を、標準値と上限基準値との差よりも大きく設定すると好ましい。参照温度の低下に対し給気設定温度を過剰に増減補正する惧れが少なくなり、品温を一層安定して制御できるからである。
【0016】
上記の液体を噴霧する際、通常、チャンバー内に核となる粒子が投入される。この核は細粒や顆粒であってもよく、前工程で生理活性物質などを被覆された粒状物であってもよい。さらに表面をコーティング剤で被覆したコーティング粒であってもよい。これらの核は、後述の薬物を含んでいてもよく、或いは含まなくても良い。
上記の核は、特定の形状に限定されないが、被覆のバラツキを小さくすると共に被覆量を多くするため、真球状、断面楕円状、なす型状、液滴状など、球状または略球状であるのが好ましい。
【0017】
上記の細粒状の核としては、通常、粒子径が実質的に500μm以下のものが用いられ、50〜500μm、好ましくは100〜400μm程度である。このような粒子径を有する核としては、例えば、結晶セルロースの200〜300μmの球形造粒品(旭化成株式会社製、アビセルSP)、結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)による200〜350μmの球形造粒品(フロイント社製、ノンパレルNP−7:3)、結晶セルロース(5部)と乳糖(5部)による200〜350μmの球形造粒品(フロイント社製、ノンパレルNP−5:5)、乳糖(9部)とアルファー化デンプン(1部)による50〜250μmの撹拌造粒品、特開昭61−213201号公報に記載の微結晶セルロース球形顆粒を分級した500μm以下の微粒、スプレーチリングや溶融造粒により球状に形成されたワックス類などの加工品、オイル成分のゼラチンビーズ品などの加工品、ケイ酸カルシウム、デンプン、キチン、セルロース、キトサンなどの多孔性粒子、グラニュー糖(ショ糖)、結晶乳糖、結晶セルロース、塩化ナトリウムなどのバルク品およびそれらの製剤加工品などが挙げられる。さらにこれらの核は、アビセルRC(旭化成株式会社製)のように結晶セルロースと崩壊剤を含んでいてもよい。
【0018】
上記の顆粒状の核としては、たとえば、ショ糖(75重量部)をコーンスターチ(25重量部)で自体公知の方法でコーティングしたノンパレルや、結晶セルロースを用いた球形顆粒等が挙げられ、さらに、核顆粒にワックスやポリマーでコーティングしたものであっても良い。
【0019】
上記の液体は、一般に不揮発成分を含み、少なくとも1種の生理活性物質を含む液体であってもよく、或いは、水溶性又は親水性高分子を含む液体や、これと生理活性物質とを含む液体であってもよく、コーティング物質を含むものであってもよい。
例えば上記の核が、例えば後述の薬物を含む顆粒核である場合、上記の液体は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(以下、L−HPCと記載することもある)の分散液であってもよい。なお、このL−HPCのヒドロキシプロポキシル基含量は、例えば約4〜20%であり、好ましくは5〜16%、より好ましくは10〜13%である。また、このL−HPCの平均粒子径としては、一般に200μm以下であれば良く、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0020】
上記の少なくとも1種の薬物を含む液体は、水溶性高分子または親水性高分子を含む溶液であってもよく、或いは分散液であってもよい。この混合液は、水、エタノールなどの有機溶媒またはこれらの混液を用いて調製できる。混合液中の水溶性高分子の濃度は、薬物及び添加剤の割合により異なるが、通常、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜10重量%程度である。濃度が0.1重量%未満では、核に対する薬物の結合力が小さく、50重量%を越えると、混合液の粘度が増大して作業性が低下し易い。
【0021】
上記の水溶性高分子の含量は、粒状物中の薬物の溶出性をコントロールできる範囲であればよく、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%程度である。水溶性高分子の割合が、0.1重量%未満である場合には、薬物の溶出をコントロールするのが困難であり、50重量%を越えると薬物含量が低下する。
【0022】
前記の核に対する被覆層の割合は、例えば薬物の溶出性を制御できる範囲で選択でき、通常、核100重量部に対して50〜400重量部程度である。被覆量が50重量部未満では、薬物の溶出をコントロールするのが困難であり、400重量部を越えると、粒が大きく成長して、例えば散剤の粒度規格内に入りにくくなる。
なお、被覆層は1つの層に限らず複数の層で形成してもよい。この場合、水溶性高分子の配合割合や粘度のグレードを選定したり、薬物や他の添加剤の割合が変化した混合液を用いて順次被覆し、各層の薬物濃度を連続的にまたは段階的に変動させてもよい。その場合、複数の層間に非活性の被膜を形成し、薬物を含む各層間を遮断してもよい。また、配合性が悪い2種以上の薬物を配合する場合、それぞれの混合液を同時にまたは別々に使用して、核を被覆してもよい。
【0023】
なお、本明細書において「被覆」とは、核の表面全体を被覆する場合に限らず、核の表面を部分的に被覆する場合や、核に吸着または吸収される場合も含む意味に用いる。
【0024】
上記の水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと記載することがある)、ポリビニルピロリドンなどのエタノール可溶性の水溶性高分子;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと記載することがある)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなどのエタノール不溶性の水溶性高分子が挙げられる。なお、エタノール可溶性の水溶性高分子とエタノール不溶性の水溶性高分子とを併用したり、粘度の異なる水溶性高分子を併用することにより、薬物の溶出性をコントロールできる。
【0025】
好ましい水溶性高分子には、HPC、HPMC、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールが含まれる。特に好ましい水溶性高分子は、HPC、HPMCなどのセルロース誘導体である。
【0026】
HPCは、ヒドロキシプロポキシル基を、例えば、53.4〜77.5重量%、好ましくは60〜70重量%程度含有する。HPCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、1〜150000cps程度である。このようなHPCとしては、日局ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用される。なお、このHPCは、前記の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)とは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度が異なる。
【0027】
HPMCは、メトキシル基とヒドロキシプロポキシル基が結合した混合エーテルである。HPMCのメトキシル基の含有量は、例えば、19〜30重量%、ヒドロキシプロポキシル基の含有量は、例えば、4〜12重量%程度である。HPMCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、1〜40000センチストークス程度である。このようなHPMCとしては、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906および日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910などが使用される。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは一種又は二種以上混合して使用できる。
【0028】
上記の混合液に含まれる薬物は特に限定されない。例えば中枢神経系薬物として、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェンなど;循環器系薬物として、モルシドミン、ビンポセチン、塩酸デラプリル、プロプラノーロル、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジピン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビドなど;呼吸器系薬物として、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、グアイフェニシンなど;消化器系薬物として、ランソプラゾールとその光学活性体、オメプラゾールなどのベンツイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、パンクレアチン、ビサコジル、5−アミノサリチル酸など;抗生物質及び化学療法剤として、セファレキシン、セファクロール、セフラジン、アモキシシリン、ピバンピシリン、バカンピシリン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンステアレート、リンコマイシン、ドキシサイクリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾールなど;代謝系薬物として、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アデノシントリフォスフェート、グリペンクラミド、塩化カリウムなど;ビタミン系薬物としては、ビタミンB1 、ビタミンB2 、ビタミンB6 、ビタミンC、フルスルチアミン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンKなど;制酸剤等が挙げられる。これらの薬物は一種または二種以上使用できる。とりわけ、薬物含量の精密な制御や薬物の溶出の厳密な制御が要求される造粒に、本発明は好適に適用される。このような例として、ランソプラゾールやその光学活性体の細粒などが挙げられる。
【0029】
上記の混合液は、粒状物の強度を増す等の理由から、例えば前記の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)や、その他の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤としては、散剤を製造する際に一般に配合される添加剤等が使用できる。具体的には、乳糖、コーンスターチ、ショ糖、タルク、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、L−システィンなどの賦形剤;アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴムなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン類、クロスリンクドカルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスリンクドインソルブルポリビニルピロリドンなどの崩壊剤;酸化チタン、ベンガラ、タール色素などの着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は2種以上用いてもよい。
【0030】
上記の噴霧により形成された粒状物の形状、寸法、成分などは、特定のものに限定されない。例えば有核散剤の場合、粒子径は、実質的に500μm以下、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは100〜400μmにされる。なお、粒子径が500μmを越えると調剤性が低下し易く、粒子径が50μmより小さくなると、製造中に静電気により製造機器の壁に散剤が付着する等の問題が生じ易くなる。
【0031】
得られた粒状物は、篩により粒度を揃えることができる。有核散剤の場合、例えば32メッシュ(500μm)の丸篩が使用して、この32メッシュを通過する散剤を選別することができる。なお、粒状物の形状は、通常、核に対応しており、例えば略球形の粒状物を得ることができる。
【0032】
適切な粒子径の核に、水溶性高分子と少なくとも1種の生理活性物質を含む混合液を噴霧して有核散剤を形成する場合、水溶性高分子、例えばHPCやHPMCの粘度のグレード、含有量、およびエタノール可溶性の水溶性高分子(例えばHPC)とエタノール不溶性の水溶性高分子(例えばHPMC)との比率を選択することにより、薬物の溶出性をコントロールできる。また、薬物の溶解する液性の影響が余りなく、溶出性を適当にコントロールできる。さらに、上記の核に結晶セルロースと糖成分を含んだ細粒状の核を用いると、生理活性物質の溶出をコントロールできる。なお、これらの有核散剤はそのまま散剤として使用できるほか、慣用の方法に従って、細粒や顆粒、錠剤に添加し顆粒剤や錠剤としてもよく、カプセルに充填してカプセル剤としてもよい。錠剤のなかでも、とりわけ細粒を含む口腔内崩壊錠等が好ましい剤形として挙げられる。
【0033】
なお、上記の液体を噴霧する際に、薬物や添加剤を混和した粉末散布剤を散布してもよい。この方法では、粉末状散布剤を散布するという簡単な操作で核に被覆層を形成できる。上記の散布剤の粒度は、一般に約100μm以下、好ましくは約50μm以下である。
【0034】
上記のようにして得られた粒状物には、味のマスキング、腸溶性、胃溶性などを付与するため、慣用の方法によりコーティングを施してもよい。コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、プルロニックF68、ヒマシ油、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、アクリル酸コポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート、セラック、ワックス類、及びタルク、酸化チタン、ベンガラ等の色素が挙げられる。
【0035】
造粒温度は薬物の安定性を損わない範囲に設定され、薬物の安定性が高い場合には上記の混合液の温度は特に調整する必要はなく、一般に1〜30℃程度の室温で行なうことができる。
核を被覆する方法や装置は特に制限されず、例えば、遠心流動型コーティング造粒装置、流動型コーティング造粒装置、撹拌造粒装置などの慣用の設備が使用できる。遠心流動型コーティング造粒装置の具体例としては、例えば、フロイント社製のCF装置やスパイラフロー、パウレック社製のマルチプレックス、不二パウダル社製のニューマルメなどが挙げられる。
また、上記の液体の噴霧方法も特に限定されず、例えば、タンデンシャルスプレー方式、トップスプレー方式、ボトムスプレー方式などの方法を用いることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【0037】
図1に示すように、この粒状物製造装置(1)は、給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備える。上記の給気路(2)には、例えば加熱蒸気を供給して上記の給気路(2)内の給気を加熱する熱交換装置(5)と、その給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、給気を供給する送風装置(18)と、給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)とが設けてある。上記の熱交換装置(5)には給気の加熱温度を制御する給気温度制御装置(7)が連結してあり、この給気温度制御装置(7)の入力部に上記の給気温度測定手段(6)が接続してある。この給気温度制御装置(7)は、上記の給気が所定の給気設定温度となるように、上記の給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、蒸気供給路(5a)に設けたバルブ(5b)の開度を調整することで、前記の熱交換装置(5)による給気の加熱を制御するように構成してある。また、上記の送風装置(18)には給気の風量を制御する給気風量制御装置(20)が連結してあり、この給気風量制御装置(20)の入力部に上記の給気風量測定手段(19)が接続してある。この給気風量制御装置(20)は、上記の給気が所定の給気設定風量となるように、上記の給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)のファン回転数や給気路(2)に設けた開閉弁を操作するなどして給気の風量を制御するように構成してある。
【0038】
上記のチャンバー(3)には、室内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、このチャンバー(3)内の雰囲気温度やチャンバー(3)内の粒体の品温を測定する参照温度測定手段(9)が設けてある。
前記の給気温度制御装置(7)には、給気設定温度補正手段(10)が接続されており、この給気設定温度補正手段(10)の入力部に上記の参照温度測定手段(9)が接続されている。上記の給気設定温度補正手段(10)は、参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域から外れたことを識別して上記の給気設定温度を増減補正するように構成してある。
【0039】
また、前記の排気路(4)には、排気温度を測定する排気温度測定手段(11)が設けてある。なお、この排気温度測定手段(11)を参照温度測定手段(9)に用いてもよい。
上記の排気温度測定手段(11)は、前記の給気設定温度補正手段(10)を介して給気温度制御装置(7)に接続されている。排気温度の測定値は、例えば参照温度が安定したのち等、必要に応じて給気温度制御装置(7)にフィードバックされ、これに基づいて排気温度が所定温度となるように熱交換装置(5)が制御される。
【0040】
【実施例】
次に、粒状物として腸溶性有核散剤を、上記の粒状物製造装置を用いて製造する実施例について説明する。この実施例では、製造工程が(1)バルク液の噴霧、(2)下掛フィルム液の噴霧、(3)腸溶性フィルム液の噴霧、及び(4)オーバーコートフィルム液の噴霧からなる。
なお、以下に述べる実施例や参考例は、いうまでもなく本発明を限定するものではない。
【0041】
また、以下の実施例や参考例で用いられる成分、即ち、炭酸マグネシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、タルク、酸化チタン、ポリエチレングリコール6000(マクロゴール6000)、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ポリソルベート80、結晶セルロースは、第14改正日本薬局方適合品を用い、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL 30D−55)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギットNE30D)、クエン酸トリエチル、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄は、医薬品添加物規格適合品を用いた。
また、D−マンニトール、無水クエン酸は第14改正日本薬局方又は第25改正米国薬局方或いは第4版(2002)欧州薬局方の適合品を用い、クロスポビドン、アスパルテームは医薬品添加物規格又は第25改正米国薬局方或いは第4版(2002)欧州薬局方の適合品を用いた。
【0042】
(1)バルク液の噴霧
粒子径100〜200μmのノンパレル105(商品名)41.58kgを転動流動型コーティング造粒機[パウレック社製、MP−400型]のチャンバーに入れ、予め調製した下記組成のバルク液を噴霧コーティングする。噴霧方式はタンジェンシャルスプレー方式で、噴霧液の供給速度は1.4kg/分とした。規定量257.6kgのバルク液を噴霧した時点でバルク液の噴霧を完了し、引き続き次工程の下掛けフィルム有核散剤の製造に移行した。
【0043】
[バルク液]
ランソプラゾール 39.6kg
炭酸マグネシウム 13.2kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
ヒドロキシプロピルセルロース(タイプSL) 13.2kg
精製水 185L
【0044】
上記のバルク液の噴霧の間、チャンバー内への給気は、噴霧開始から30分間は送風量45Nm3/分、給気温度78℃に設定し、噴霧開始後30〜60分は送風量55Nm3/分、給気温度70℃に設定切替し、60分経過後は排気温度が約31℃になるように給気温度を制御した。
【0045】
噴霧開始後60分間は、給気温度が所定の給気設定温度(78℃又は70℃)となるように制御しているが、この間、チャンバー内の粒体の品温は噴霧開始から時間経過とともに低下していく。そこで、この間の時間−温度推移が一定のパターンとなるように給気温度を微調節した。
【0046】
具体的にはチャンバー内温度を参照温度とし、噴霧開始時点から30分間において、図2に示すように、噴霧開始後15分から5分ごとに、上記の参照温度に上限基準値(12)と下限基準値(13)とを有する適正参照温度域(14)を設定した。そして、それぞれの経過時で参照温度を実測し、この実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は、前記の給気設定温度補正手段(10)により、前記の給気設定温度を3℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は2℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。
なお、図2において、細線は標準的な挙動を示す場合の実測値(15)を、太線は何らかの外的要因により低めの挙動を示す場合の実測値(16)を、2点鎖線は比較例として、低めの挙動を示す際に温度補正をしない場合の実測値(17)をそれぞれ示す。
【0047】
引き続き、噴霧開始後30分で送風量と給気温度の設定を上記のように切替えてから10分経過した時点、即ち噴霧開始40分後から50分まで、5分ごとに適正参照温度域(14)を設定した。そして上記と同様、参照温度の実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は給気設定温度を2℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は給気設定温度を1℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。
【0048】
なお、この実施例における各実測値は、それぞれの時点での前後120秒間で1秒ごとに実測した値の平均値を用いた。従って、この平均値に基づく増減補正は、所定の経過時点から60秒後に適用されることになるが、この遅延は実用上は無視することができる。
【0049】
また、上記の条件切替の10分前の前記の適正参照温度域(14)は、参照温度の標準値と下限基準値(13)との差を、標準値と上限基準値(12)との差よりも大きく設定してある。さらに、この条件切替時の直前と直後の各5分間は、給気設定温度の増減補正を休止するようにしてある。
【0050】
(2)下掛フィルム液の噴霧
次に、前記(1)のバルク液の噴霧に引き続き、定常状態の排気温度が約41℃になるよう給気温度を制御し、予め調製した下記組成の下掛フィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は1.2kg/分となるように設定した。規定量132.0kgを噴霧した時点で噴霧を停止し、そのまま乾燥を約12分間行った。その後、42号の丸篩(350μm)と100号の丸篩(150μm)で篩通し、下掛フィルム有核散剤132kgを得た。
【0051】
[下掛フィルム液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 9.24kg
(タイプ2910、粘度3センチストークス)
酸化チタン(TiO2) 3.96kg
滅菌タルク〔松村産業株式会社製] 3.96kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
マンニトール 9.24kg
精製水 99.0L
【0052】
(3)腸溶性フィルム液の噴霧
次に、前記(2)の工程で得た下掛フィルム有核散剤44.0kgを転動流動型コーティング造粒機[パウレツク社製、MP−400型]に入れ、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は1.05kg/分となるようにし、規定量54.6kgを噴霧した。
【0053】
[腸溶性フィルム液(A)]
オイドラギットL30D−55 32.05kg
オイドラギットNE30D 3.570kg
ポリエチレングリコール6000 1.071kg
モノステアリン酸グリセリン 0.629kg
ポリソルベート80 0.189kg
三二酸化鉄 0.006kg
黄色三二酸化鉄 0.006kg
無水クエン酸 0.013kg
精製水 44.3L
【0054】
この間、給気設定温度を85℃とし、図3に示すように、噴霧開始20分後から40分経過時までの10分ごとに、上限基準値(12)と下限基準値(13)とを有する適正参照温度域(14)を設定した。そして、それぞれの経過時で参照温度を実測し、この実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は前記の給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は給気設定温度を3℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は2℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。
なお、図2と同様、図3においても、細線は標準的な挙動を示す場合の実測値(15)を、太線は何らかの外的要因により低めの挙動を示す場合の実測値(16)を、2点鎖線は比較例として、低めの挙動を示す際に温度補正をしない場合の実測値(17)をそれぞれ示す。
【0055】
引き続き、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(B)をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は1.05kg/分となるように設定し、規定量201.6kgを噴霧した。
【0056】
[腸溶性フイルム液(B)]
オイドラギットL30D−55 117.6kg
オイドラギットNE30D 13.06kg
クエン酸トリエチル 7.854kg
モノステアリン酸グリセリン 2.521kg
ポリソルベート80 0.756kg
三二酸化鉄 0.025kg
黄色三二酸化鉄 0.025kg
無水クエン酸 0.021kg
精製水 59.7L
【0057】
この間、腸溶性フィルム液(B)の噴霧開始10分後から10分ごとに、適正参照温度域(14)を設定した。即ち、噴霧液の切替時の直前と直後は、上記の給気設定温度の増減補正を休止してある。そして前記と同様、参照温度の実測値が適正参照温度域(14)に入っている場合は給気設定温度をそのままとし、下限基準値(13)より低い場合は給気設定温度を3℃高い値に補正し、上限基準値(12)より高い場合は給気設定温度を2℃低い値に補正し、この補正後の値を新たな給気設定温度とした。そしてその後の経過時で参照温度の実測値が適正参照温度域(14)から外れると、上記の補正後の新たな給気設定温度に対して同様の増減補正をさらに繰り返した。そして腸溶性フイルム液(B)の噴霧開始60分後は、排気温度が約42℃になるよう給気温度を制御した。
【0058】
引き続き定常状態の排気温度が約42℃になるよう給気温度を制御し、予め調製した前記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。なお、噴霧液の供給速度は1.05kg/分となるようにし、規定量27.3kgを噴霧した。
【0059】
(4)オーバーコートフィルム液の噴霧
次に、前記(3)の工程に引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう給気温度をコントロールし、予め調製した下記組成のフィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で噴霧した。噴霧液の供給速度は0.72kg/分となるようにし、規定量29.4kgを噴霧した時点で噴霧を停止した。その後は、給気温度をそのまま維持して乾燥を続け、排気温度が65℃に達した後、冷却した。得られた粒状物を、35号の丸篩(420μm)と60号の丸篩(250μm)を用いて篩過し、106kgのオーバーコート腸溶性有核散剤を得た。この得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の平均粒径は、340μmであった。
【0060】
[オーバーコートフィルム液]
マンニトール 4.2kg
精製水 25.2L
【0061】
次に、上記の参照温度に基づいて給気設定温度を補正した場合の主薬含量と団粒の発生を、補正しない場合と比較した。
【0062】
(a)主薬含量について
前記の下掛フィルム有核散剤の製造(上記の工程(1)及び(2))において、参照温度であるチャンバー内温度の推移(バルク液の噴霧開始から30分間を代表例として抜粋)と、得られた下掛フィルム有核散剤に含まれる主薬の、所定量に対する比率を表1に示す。なお、表1には上から順に、参照温度が標準的に挙動する場合の代表例(実施例1・2)、参照温度が何らかの外的要因により低めに挙動する際に給気設定温度を増減補正した場合の代表例(実施例3・4)、参照温度が低めに挙動する際に給気設定温度を補正しない場合の代表例(比較例1・2)を記している。
【0063】
【表1】
【0064】
図2と表1から明らかなように、参照温度が標準的に挙動する場合は適正参照温度域内で変動するので給気設定温度を増減補正することがないが、得られた粒状物の主薬含量はほぼ所定量になり、例えば目標とする99〜101%の範囲内に収まる(実施例1・2を参照)。
一方、何らかの外的要因によりチャンバー内の温度が低めに挙動する場合、給気設定温度を増減補正せずにそのまま維持するとチャンバー内温度が低下を続ける。この結果、1つ1つの粒が2粒以上相互に付着した粗大粒(団粒)の発生を招くほか、主薬含量が高くなって、例えば目標とする99〜101%の範囲から外れ、不良品となる場合がある(比較例1・2を参照)。
これに対し実施例3や実施例4に示すように、外的要因でチャンバー内の温度が低めに挙勤しても給気設定温度を増減補正した場合には、チャンバー内温度や品温を標準的挙動に近づけることができ、主薬含量をほぼ目標範囲付近とすることができる。
【0065】
(b)団粒の発生について
前記のオーバーコート腸溶性有核散剤の製造(上記の工程(3)及び(4))において、参照温度であるチャンバー内温度の推移(腸溶性フィルム液(A)の最初の噴霧時を代表例として抜粋)と、得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の団粒発生率を表2に示す。なお、表2には上から順に、参照温度が標準的に挙動する場合の代表例(実施例5・6)、参照温度が何らかの外的要因により低めに挙動する際に給気設定温度を増減補正した場合の代表例(実施例7・8)、参照温度が低めに挙動する際に給気設定温度を補正しない場合の代表例(比較例3・4)を記している。
【0066】
【表2】
【0067】
図3と表2から明らかなように、参照温度が標準的に挙動する場合は適正参照温度域内で変動するので給気設定温度を増減補正することがないが、得られた粒状物に発生する団粒も少ない(実施例5・6を参照)。
一方、何らかの外的要因によりチャンバー内の温度が低めの挙動をする場合、給気設定温度を増減補正せずにそのまま維持するとチャンバー内温度が低下を続けるため、粒状物が複数粒相互に付着した粗大粒(団粒)が発生し、例えば目標とする1%以下を大きく外れることがある(比較例3・4を参照)。
これに対し、実施例7や実施例8に示すように、外的要因でチャンバー内の温度が低めで挙勤しても、給気設定温度を増減補正した場合には、チャンバー内温度や品温を標準的挙動に近づけることができ、団粒の発生率を目標範囲内に抑制することができる。
【0068】
【参考例】
上記の方法で得られた散剤を用いて、例えば以下の口腔内崩壊錠を製造することができる。
【0069】
(1)混合末の製造
前記マンニトールオーバーコート腸溶性有核散剤270g、マンニトール204.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%)30g、結晶セルロース[旭化成株式会社製、商品名セオラスKG−801]30g、クロスポビドン15g、無水クエン酸3g、アスパルテーム9g、ステアリン酸マグネシウム6g及びフレーバー(日本フィルメニッヒ株式会社製、STRAWBERRY DURAROME)3gを袋混合し、混合末を得た。
【0070】
(2)口腔内崩壊錠の製造
前記の混合末570gを、ロータリー式打錠機を用いて、1錠570mg、直径13mm、隅角平面の杵により、打錠圧1.5ton/cm2で打錠した。
【0071】
上記の実施例では、粒状物としてオーバーコート腸溶性有核散剤を製造する場合について説明したが、本発明は他の粒状物についても同様に適用でき、これらの粒状物は医薬品をはじめ、食品や農薬などにも適用できることはいうまでもない。
また、粒状物の大きさや形状、給気設定温度やこれを増減補正する温度、参照温度、排気温度、適正参照温度域の範囲等は、上記の各実施形態や実施例のものに限定されない。なお、上記の適正参照温度域は上限基準値と下限基準値とのいずれか一方のみを限定してもよいが、前記の実施例のように、両基準値を限定すると品温の変化を所定のパターンから大きく外れることを一層防止することができるので、より好ましい。
【0072】
なお、上記の実施例では遷移期間が、バルク液の噴霧工程では約3時間のうちの約1時間を占め、腸溶性フィルム液(A)の最初の噴霧工程では約50分の全てを占め、腸溶性フィルム液(B)の噴霧工程では約3時間のうちの約1時間を占めており、従って、遷移期間がそれぞれの噴霧工程の30%以上を占め、造粒工程全体でも20%以上を占めている。本発明は上記の遷移期間が短い場合にも適用できるが、上記の実施例のように遷移期間が造粒工程のうちの比較的大きな部分を占めている場合には、この遷移期間での品温の変化を所定のパターンから大きく外れることを防止できるので、特に好適である。
【0073】
上記の第1実施形態では、給気設定温度を増減補正することにより、遷移期間中の品温の温度変化を所定のパターンに近似させるように制御したが、本発明では給気の風量を増減補正することにより品温を制御することも可能である。
【0074】
即ち、図4に示す本発明の第2実施形態では、前記の第1実施形態の給気設定温度補正手段に代えて、給気設定風量補正手段(21)を備えている。この給気設定風量補正手段(21)は、前記の給気風量制御装置(20)に接続されており、前記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域から外れたことを識別して、上記の給気設定風量を増減補正するように構成してある。
その他の構成は前記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0075】
また上記の第1及び第2実施形態では、それぞれ給気設定温度補正手段と給気設定風量補正手段のいずれかを備える場合について説明したが、本発明では、例えば図5に示す第3実施形態のように、両者を備えて給気設定温度と給気設定風量とのいずれか一方または両方を増減補正してもよい。即ち、この第3実施形態では、前記の第1実施形態の給気設定温度補正手段に代えて、給気設定補正手段(22)を備えている。この給気設定補正手段(22)は、前記の給気温度制御装置(7)と給気風量制御装置(20)に接続されており、前記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域から外れたことを識別して、上記の給気設定温度と給気設定風量のいずれか一方を増減補正したり、或いは両方を同時に増減補正するように構成してある。これにより給気設定温度と給気設定風量のそれぞれの増減幅は少なくしてチャンバー内温度や品温の制御範囲を広げることができ、また、例えば給気設定温度の増減補正により精緻で且つ円滑に温度補正を行い、一方、給気設定風量の増減補正により大きな補正幅に対し迅速に対応させたりすることができる。
【0076】
なお本発明の装置は、上記の各実施形態のものに限定されず、造粒装置の種類や型式、噴霧装置の台数、噴霧方式などは他の形式であってもよく、また、上記の給気設定温度補正手段と給気設定風量補正手段とを個別に備え、主制御装置などに連結して作動させてもよい。
【0077】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0078】
(1) 時間経過に対応して参照温度を実測し、これをフィードバックして適正参照温度域から外れた場合に給気温度や給気風量を補正するので、噴霧開始直後や造粒条件切替直後の品温が変化し易い遷移期間であっても、その品温変化が所定のパターンから大きく外れることを防止できる。しかも、適正参照温度域は幅を持たせてあるので、参照温度の僅かな変化に対して給気設定温度や給気設定風量を過剰に増減補正する惧れがなく、品温を安定して制御することができる。これらの結果、得られた粒状物に含まれる生理活性物質などの含量のバラツキを低減することができる。
【0079】
(2) 参照温度が適正参照温度域から大きく外れることがないうえ、外れても速やかに補正されるので、品温が過剰に低下する惧れがなく、複数粒の粒状物が互いに付着した粗大粒(団粒)の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【図2】バルク液の噴霧における、参照温度の経時変化を示すグラフである。
【図3】腸溶性フィルム液の噴霧における、参照温度の経時変化を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す、粒状物製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1…粒状物製造装置
2…給気路
3…チャンバー
4…排気路
5…加熱装置(熱交換装置)
6…給気温度測定手段
7…給気温度制御手段(給気温度制御装置)
8…噴霧装置
9…参照温度測定手段
10…給気設定温度補正手段
11…排気温度測定手段
12…参照温度の上限基準値
13…参照温度の下限基準値
14…適正参照温度域
18…送風装置
19…給気風量測定手段
20…給気風量制御手段(給気風量制御装置)
21…給気設定風量補正手段
22…給気設定補正手段
Claims (14)
- チャンバー(3)内に案内した加熱気体中で液体を噴霧することにより所定の粒体に形成する粒状物の製造方法であって、
上記の加熱気体の給気温度を所定の給気設定温度に維持させるとともに、給気風量を所定の給気設定風量に維持させ、
チャンバー(3)内温度、チャンバー(3)内粒体の品温、及びチャンバー(3)からの排気温度の少なくともいずれかを参照温度とし、
上記の噴霧開始から所定時間経過時の参照温度に、上限基準値(12)と下限基準値(13)の少なくとも一方を限定した適正参照温度域(14)を設定し、
この所定時間経過時の参照温度の実測値が、上記の適正参照温度域(14)を外れた場合に、前記の給気設定温度と給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正することを特徴とする、粒状物の製造方法。 - 上記の液体の噴霧開始時若しくは造粒条件切替時から、上記のチャンバー内温度、品温、及び排気温度の少なくともいずれかが安定するまでの間を遷移期間とし、この遷移期間について上記の適正参照温度域(14)を設定した、請求項1に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の遷移期間中に造粒条件の切替を伴う場合であって、この造粒条件切替時の直前の所定期間において、上記の増減補正を休止または上記の適正参照温度域を広く設定する、請求項2に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の噴霧開始時と造粒条件切替時の少なくともいずれかの直後の所定の期間において、上記の増減補正を休止または上記の適正参照温度域を他の部分よりも広く設定する、請求項2に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の所定の期間における適正参照温度域(14)は、参照温度の標準値と下限基準値(13)との差を、標準値と上限基準値(12)との差よりも大きく設定した、請求項3または請求項4に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の所定の期間における適正参照温度域(14)は、参照温度の標準値と上限基準値(12)との差を、標準値と下限基準値(13)との差よりも大きく設定した、請求項3または請求項4に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の遷移期間が経過したのちは、上記の給気温度を給気設定温度に維持することに代えて、上記のチャンバー内温度、品温、及び排気温度のいずれかを所定の設定温度に維持する、請求項2から6のいずれか1項に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の所定時間経過時での参照温度の実測値は、その経過時前後での測定値の移動平均値を用いる、請求項1から7のいずれか1項に記載の粒状物の製造方法。
- 上記のチャンバー(3)内に粒状の核を投入して上記の液体を噴霧する、請求項1から8のいずれか1項に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の液体が、少なくとも1種の生理活性物質を含む、請求項9に記載の粒状物の製造方法。
- 上記の液体がコーティング物質を含む、請求項9に記載の粒状物の製造方法。
- 給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、
上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、
上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、
この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、
上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、
上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、
この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、
上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、
上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、
上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定温度を増減補正する給気設定温度補正手段(10)とを備えることを特徴とする、粒状物製造装置。 - 給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、
上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、
上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、
この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、
上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、
上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、
この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、
上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、
上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、
上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定風量を増減補正する給気設定風量補正手段(21)とを備えることを特徴とする、粒状物製造装置。 - 給気路(2)とチャンバー(3)と排気路(4)とを順に備え、
上記の給気路(2)内の給気を加熱する加熱装置(5)と、
上記の給気の温度を測定する給気温度測定手段(6)と、
この給気温度測定手段(6)の測定値に基づき、上記の加熱装置(5)による給気の加熱温度を所定の給気設定温度に制御する給気温度制御手段(7)と、
上記の給気路(2)内へ給気を供給する送風装置(18)と、
上記の給気の風量を測定する給気風量測定手段(19)と、
この給気風量測定手段(19)の測定値に基づき、上記の送風装置(18)による給気の風量を所定の給気設定風量に制御する給気風量制御手段(20)と、
上記のチャンバー(3)内に液体を噴霧する噴霧装置(8)と、
上記のチャンバー(3)内温度とチャンバー(3)内粒体の品温と排気路(4)内の排気温度との少なくともいずれかを測定する参照温度測定手段(9)と、
上記の参照温度測定手段(9)による測定値が適正参照温度域(14)から外れたことを識別して上記の給気設定温度と上記の給気設定風量の少なくともいずれか一方を増減補正する給気設定補正手段(22)とを備えることを特徴とする、粒状物製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003043468A JP2004249231A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | 粒状物の製造方法とその装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003043468A JP2004249231A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | 粒状物の製造方法とその装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004249231A true JP2004249231A (ja) | 2004-09-09 |
Family
ID=33026444
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003043468A Pending JP2004249231A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | 粒状物の製造方法とその装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004249231A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008229603A (ja) * | 2007-02-22 | 2008-10-02 | Teruhisa Hasegawa | 流動層装置 |
JP2011235172A (ja) * | 2005-02-25 | 2011-11-24 | Takeda Chem Ind Ltd | 顆粒の製造方法 |
JP2013535509A (ja) * | 2010-08-18 | 2013-09-12 | エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 1種以上のアルギン酸の塩を含む胃液抵抗性の医薬又は栄養補助製剤 |
JP2015171675A (ja) * | 2014-03-11 | 2015-10-01 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 造粒装置および造粒方法 |
-
2003
- 2003-02-21 JP JP2003043468A patent/JP2004249231A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011235172A (ja) * | 2005-02-25 | 2011-11-24 | Takeda Chem Ind Ltd | 顆粒の製造方法 |
JP2008229603A (ja) * | 2007-02-22 | 2008-10-02 | Teruhisa Hasegawa | 流動層装置 |
JP2013535509A (ja) * | 2010-08-18 | 2013-09-12 | エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 1種以上のアルギン酸の塩を含む胃液抵抗性の医薬又は栄養補助製剤 |
US9492394B2 (en) | 2010-08-18 | 2016-11-15 | Evonik Roehm Gmbh | Gastric resistant pharmaceutical or nutraceutical formulation comprising one or more salts of alginic acid |
JP2015171675A (ja) * | 2014-03-11 | 2015-10-01 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 造粒装置および造粒方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5824339A (en) | Effervescent composition and its production | |
JP3893439B2 (ja) | 徐放性粒状製剤およびその製造方法 | |
JP2820829B2 (ja) | 有核散剤およびその製造方法 | |
JP2011513204A5 (ja) | ||
CN1886119B (zh) | 泮托拉唑多颗粒制剂 | |
TWI394595B (zh) | Enteric granules and methods for their manufacture | |
EA028217B1 (ru) | Разрушающаяся во рту таблетка (варианты) | |
JPS63301816A (ja) | 有核顆粒およびその製造法 | |
JPH0819003B2 (ja) | 有核顆粒およびその製造法 | |
JP3833314B2 (ja) | 発泡性組成物およびその製造方法 | |
KR101585280B1 (ko) | 고형 의약 제제 | |
JP2813809B2 (ja) | 有核顆粒製剤およびその製造法 | |
JP5615612B2 (ja) | 苦味を有する生理活性物質含有粒子の製造方法 | |
JP2004249231A (ja) | 粒状物の製造方法とその装置 | |
WO2021060304A1 (ja) | 不快な味がマスクされた顆粒剤及びその製造方法 | |
WO2015046383A1 (ja) | 原薬含有核の製造方法、原薬含有核、医薬品組成物、及び口腔内崩壊錠 | |
KR20100130882A (ko) | 서방성 비스테로이드성 소염제 조성물 및 그 제조방법 | |
EP2050439B1 (en) | Process for production of spherical granule containing slightly water-soluble substance | |
JP2015151337A (ja) | 医薬用組成物の製造方法、医薬用組成物、及び口腔内崩壊錠 | |
JPH10182438A (ja) | 有核散剤 | |
JP2969345B2 (ja) | 有核顆粒およびその製造法 | |
JP2015168645A (ja) | 口腔内崩壊錠の製造方法及び口腔内崩壊錠 | |
CN111278434A (zh) | 劳拉西泮的耐酒精口服药物组合物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051003 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20080515 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20080527 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081118 |