JP2004248620A - 高酸度食酢の製造方法 - Google Patents

高酸度食酢の製造方法 Download PDF

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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Abstract

【課題】酸度が10%以上で、アルコール濃度が0.1容量%未満であっても、酢酸菌の失活がおきず、急激な発泡が起こらない発酵方法を開発し、アルコール濃度が低く、ひいては酢酸エチル濃度を低くできて、刺激性の小さいマイルドな高酸度食酢を提供することに関する。
【解決手段】アセトバクター・アルトアセチゲネス(Acetobacter altoacetigenes)MH−24(FERM BP−491)等の耐酸性酢酸菌の用い、酸度が10%以上で、アルコール濃度が0.1容量%より低下する時までに、生産速度を0.002%〜0.08%/時間の範囲に低下させて、発酵を継続して高酸度食酢を製造する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高酸度食酢に関し、さらに詳しくはアルコール濃度が非常に低く、その結果として酢酸エチル含有量を低くすることができて刺激臭が軽減されたマイルドな香味の高酸度食酢とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高酸度食酢は 酸度が10%以上の食酢をいい、通常の食酢が酸度4〜5%程度であるのに対して比較的高濃度の酢酸を含有しており、また、主原料が醸造用アルコール(エタノール)、酵母エキス、有機酸、および有機酸塩類などであって、無色透明に近いためにホワイトビネガーなどとも呼称され、主に食品原料加工用に用いられている。
【0003】
高酸度食酢の発酵は、通常、酸度10%以上にまで発酵できる酢酸菌、例えばアセトバクター・ヨーロペウス(Acetobacter europaeus)(例えば、非特許文献1参照)やアセトバクター・アルトアセチゲネス(Acetobacter altoacetigenes)MH−24(FERM BP−491)(例えば、特許文献1参照)などを用い、通気攪拌型の発酵槽(深部発酵装置)を用いた深部培養法による発酵によって製造されている。
【0004】
その発酵においては、発酵液中のアルコール(エタノール)が酢酸菌によって酢酸に変換されて酢酸が蓄積してくるとともに、次第にアルコール濃度が減少してくることになる。
【0005】
そして、アルコール濃度が0.1容量%程度になると、酢酸菌が失活してしまい、また、発酵液が激しい発泡性を有する状態に変化する結果、発酵の進行が止まり、かつ発酵液が激しく発泡して発酵槽外に流出するなどの現象が発生することから、深部培養法による発酵によって完全にアルコール濃度がゼロの食酢を製造することは出来ず、通常はある程度のアルコールが残留した高酸度食酢しか製造できなかった。
【0006】
これまでに最も低いアルコール濃度の高酸度食酢としては、実際は0.1容量%のものが限界であった(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
一方、食酢中に残留したアルコールは、酢酸と非酵素的に反応し、酢酸エチルを生成することが知られている。その結果、アルコール濃度の高い高酸度食酢においては、発酵終了後の時間経過に伴い酢酸エチルが蓄積してくることになる。
【0008】
このような機構で発生する食酢中の酢酸エチルは、刺激性の強い臭いの原因であることに注目し、酢酸100重量部あたり、0.04〜0.4容量部の酢酸エチル、0.01〜1.33容量部のエチルアルコール及び0.00007〜0.007重量部のクエン酸を含有するマイルドホワイトビネガーが提唱されており、この場合、酸度が10%の高酸度食酢においては、アルコール濃度は0.001〜0.133容量%であると試算される(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
しかし、該公報における実施例においては、酸度10%の高酸度食酢の場合はアルコール濃度0.1容量%付近となったところで、また酸度が15%の高酸度食酢の場合にはアルコール濃度が0.2容量%付近となったところで発酵を止めたことが記載されており、結局、これまでのところ、0.1容量%未満のアルコール濃度まで発酵させた酸度10%以上の高酸度食酢の製造に成功した実例は報告されていない。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−80471号公報
【0011】
【特許文献2】
特開昭 53−44696号公報
【0012】
【特許文献3】
特開平11−178565号公報
【0013】
【非特許文献1】
「システマティック・アンド・アプライド・マイクロバイオロジー(Systematic and Applied Microbiology)」、15巻、p.386〜392、1992年
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
食酢中のアルコール(エタノール)は、同じく食酢中の主成分である酢酸と、化学的に反応し、酢酸エチルに変化するため、アルコール濃度が高ければ高い程、この化学反応が進行しやすく、また、酢酸エチルは、その臭いが刺激的であるが故に、嫌われる傾向が認められるので、なるべく少ないアルコール含量の食酢製造法の開発が望まれている。
【0015】
しかしながら、高濃度食酢の製造においてアルコール濃度が低下すると、酢酸菌が失活し(場合によっては死滅し)、また、同時に激しく発泡して発酵能力が失われてしまう。具体的には、半連続法(連続式回分法)による従来の発酵では、発酵末期でアルコール(エタノール)残量が少なく(例えば、0.1%未満に)なると、酢酸菌が急激に死滅し、また、同時に激しく発泡して発酵能力を失ってしまい、さらに再仕込みが行われてもスムースに発酵が再開しなくなってしまう。
【0016】
すなわち、上記のように、高酸度食酢の製造において、刺激臭を低下させるためにはアルコール濃度を低下させなければならず、しかしながらアルコール濃度を低下させると酢酸菌が死滅するため、双方を同時に両立せしめることは、不可能ないし極めて困難なことである。本発明は、このように両立し得ない相反する条件を同時に両立達成して、刺激臭が弱い高濃度食酢を効率的に工業生産する目的でなされたものである。
【0017】
本発明の目的は、刺激臭が弱い高酸度食酢を提供することを目的とし、その手段として、例えば0.1容量%未満のより低いアルコール濃度まで発酵させる方法を提供して、その結果、酢酸エチル含量が低く刺激臭が弱いマイルドな香味の高酸度食酢を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、深部発酵による高酸度食酢の発酵の際に、0.1容量%未満のアルコール濃度の領域でも、酢酸菌を失活させず、激しい発泡を起こさせずに、安定して酢酸発酵を継続させることができる方法について鋭意検討し、その結果、アルコール濃度が0.1容量%よりも低下する時までに、生酸速度を制限することによって、酢酸菌の失活を防ぎ、激しい発泡を抑制して、正常に酢酸発酵を継続でき、高酸度食酢中のアルコール濃度を低下せしめ得ることをはじめて見出し、そして更に研究の結果、生酸速度の数値限定にもはじめて成功し、例えば、発酵液中への酸素溶解速度を制限したり、発酵温度を低下させたりして、生酸速度を0.08%/時間以下、好ましくは0.002〜0.08%/時間となるように制限することによって、正常に酢酸発酵を継続でき、高濃度食酢中のアルコール濃度を0.1容量%未満の殆どゼロにすることが可能となることを見出し、本発明を完成させることが出来たのである。
【0019】
すなわち本発明は、酸度が10%以上でアルコール濃度が0.1容量%未満に低下する時までに、生酸速度を0.002%〜0.080%/時間の範囲となるように低下させて、アルコール濃度が0.1容量%未満まで発酵させることを特徴とする深部培養法による高酸度食酢の製造方法に関する。
【0020】
また本発明は、酸度が10%以上でアルコール濃度が0.1容量%未満に低下する時までに、生酸速度を0.002%〜0.080%/時間の範囲となるように低下させて、アルコール濃度が0.1容量%未満まで発酵させることを特徴とする深部培養法による高酸度食酢の製造方法によって製造された、酸度が10%以上でアルコール濃度が0.1容量%未満の高酸度食酢に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の高酸度食酢の製造に用いる酢酸菌としては、酸度10%まで発酵できる酢酸菌であればいずれでも良いが、例えば前述のアセトバクター・ヨーロペウス(Acetobacter europaeus)やアセトバクター・アルトアセチゲネス(Acetobacter altoacetigenes)MH−24(FERM BP−491)などを挙げることができる。
【0022】
また、発酵液の組成は、高酸度食酢が癖のないものであることが要求されることから原材料の使用を極力抑える必要があるが、反面、酢酸菌の増殖を支えて発酵を行わせる為に酢酸菌の栄養源を必要量含有する必要があるので、例えば、発酵開始時において、酸度4〜10%、アルコール1〜4容量%、酵母エキス0.005〜1重量/容量%、ブドウ糖0.005〜1重量/容量%などの組成とする例が挙げられる。
【0023】
なお、使用する酢酸菌の性質などを考慮して、構成成分は適宜変更されるべきであり、例えば、ペプトンや微生物エキスを用いたり、フラクトースや蔗糖などの糖類を添加することも可能である。
【0024】
このような組成の発酵液中に前述の酢酸菌を接種して発酵が開始されるが、菌の増殖が確認されて発酵が開始された後、アルコールが消費されアルコール濃度が0.5〜3容量%になった段階で、酸度0.1〜10%、エタノール10〜90容量%、酵母エキス0.005〜0.5重量/容量%、ブドウ糖0.005〜1重量/容量%の組成の添加液を、アルコール濃度が0.4〜3容量%を維持するように制御しつつ発酵液に添加し、発酵が継続される。なお、この場合の各原料についても上記と同様に、適宜各種のものが使用できる。
【0025】
酢酸発酵に用いられる発酵装置としては、例えば、一般的な通気攪拌型の深部発酵装置を使用することができる。
【0026】
また、発酵方式としては、回分発酵法、半連続発酵法、二段発酵法など、従来から実施されてきた各種の方式を採用することができる。
【0027】
発酵に用いる原料は発酵開始時に全量を発酵装置に加えてもよく、また、発酵の進行に伴って適量を適切な速度で添加供給する方法(流加培養法)なども採用することもできる。
【0028】
通気方法についても、従来公知の方法が採用でき、何ら制限がなく、例えば、空気、酸素ガス等の酸素を含む気体を通気管を通じて供給する方法などが挙げられる。
【0029】
通気量は、酸度が10%を越え、アルコール濃度が0.1容量%になるまでは、発酵状況などを考慮して適宜設定すれば良く、例えば0.02〜1vvm(通気容量/発酵液量/分)の通気量で、発酵液の下部に供給し、これを攪拌機で分散させ、発酵液中の溶存酸素が0.2〜8ppm程度を維持するように制御すれば良い。
【0030】
また、発酵温度についても同様であり、酸度が10%を越え、アルコール濃度が0.1容量%になるまでは、15℃〜38℃で実施される。
このようにして、発酵が開始され、さらに発酵が進行して酸度が10%以上となり、アルコール濃度が0.1%付近になった段階で、通気攪拌を停止し、発酵を終了するのが従来の方法であったが、本発明においては、この段階までに発酵の条件を変化させ、生酸速度を0.002〜0.08%/時間となるように低下させてさらに発酵を継続する。
【0031】
本発明においては、アルコール濃度が0.1容量%よりも低下するときまでに、例えば0.4〜0.8容量%、好ましくは、0.5〜0.7容量%となったときに、生酸速度を低下させる。生産速度を低下させる具体的な方法としては、通気攪拌条件を低下させて酸素溶解速度を低下させたり、発酵温度を低下させて酢酸菌の発酵活力を弱めたりする方法があり、例えば、それまで0.4vvm程度で通気していたのを0.1vvmに低下させる、あるいは500rpmの回転数で攪拌していたのを300rpmの回転数に下げる、さらに通気攪拌型の深部発酵装置から散気管通気のみの発酵装置に発酵液を移動して発酵を継続する、また30℃で発酵していたのを25℃に下げるなどの方法が例示される。
【0032】
また、生酸速度が0.08%/時間よりも低ければ激しい発泡は見られないが、完全に菌が死滅するとアルコール濃度の減少は望めない。従って、発酵していることが認識できる生酸速度である0.002%/時間以上、好ましくは0.01%/時間以上の生酸速度にする必要がある。本発明において、生酸速度は、0.002〜0.08%/時間とするのが良いが、好ましくは0.01〜0.08%/時間、更に好ましくは0.03〜0.08%/時間となるように低下せしめると良い。
【0033】
なお、本発明においては、発酵液中のアルコール濃度を精密に測定して制御する必要があり、例えば、精度が高いアルコール測定装置であるガスクロマトグラフィーや、ガスセンサーなどを利用するのが好ましい。
【0034】
なお、ガスクロマトグラフィーを用いた測定の際は、例えば、島津製作所製ガスクロマトグラフィー(GC−17A)で、GLサイエンス製カラム(TC−WAX:0.53mm×30m)を用い、ディテクション220℃、カラム温度40℃で5分間保持し、4℃/分の条件で220℃まで昇温させて220℃で10分保持する測定条件で、試料を1μl用いる方法などが例示される。
【0035】
また、本発明における酸度とは、以下のようにして測定し、計算した結果得られる酢酸換算濃度(重量/容量%)を意味する。すなわち、測定用試料として食酢(発酵液)5mlをビーカーにとり、1N水酸化ナトリウムを用い、フェノールフタレンを指示薬として中和滴定し、得られた滴定量(ml)を1.2倍して酢酸濃度換算した値を酸度とし、%で表わした。
【0036】
さらに、本発明で言う生酸速度とは、発酵の経過とともにアルコールが酸化されて酢酸が発酵液中に蓄積するのであるが、上記の方法で測定した発酵液の酸度(%)の上昇割合を時間当りに計算した値である。
【0037】
以上のような条件で発酵させることによって、従来は避けられなかった酢酸菌の失活に伴う激しい発泡と発酵停止現象を防止し、安定的に酢酸発酵を継続させることができるようにし、最終的に酸度が10%以上で、アルコール濃度が0.1容量%未満の高酸度食酢を効率良く製造することができた。例えば、アルコール濃度が0.07容量%以下、具体的には0.03〜0.04容量%の高酸度食酢を製造することができ、アルコール濃度が0.02容量%以下といったアルコール濃度が極めて低い高酸度食酢の製造も充分可能となった。
【0038】
その結果、化学的に生成する酢酸エチルの量を従来より少なくすることが可能となり、例えば0.02%以下、更には0.01%以下とすることができ、所望する場合、0.005%以下とすることも充分可能となり、刺激性の弱いマイルドな高酸度食酢を製造することがはじめて可能となった。
【0039】
【実施例】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
【比較例1】
種菌液の調製を以下のように行った。
自吸式通気攪拌型の深部発酵が可能な10Kl容量の種菌用発酵槽に、酸度7%、アルコール3容量%、酵母エキス(アサヒビール製)0.2重量/容量%、グルコース0.2重量/容量%の組成の発酵液を5KL仕込み、これに凍結保存してあったアセトバクター・アルトアセチゲネスMH−24(FERM BP−491)を添加し、発酵温度30℃、回転数700rpm、通気量0.15vvmで酢酸発酵を開始させた。
【0041】
3週間後に明らかな増殖が認められ、酢酸発酵が開始してアルコール濃度が2容量%になった段階で、酸度3%、アルコール55容量%、酵母エキス(アサヒビール製)0.2重量/容量%、グルコース0.2重量/容量%の組成の添加液を流加し、発酵液のアルコール濃度が2〜2.5容量%の範囲になるように制御しつつ発酵を継続した。
【0042】
発酵が進行し、酸度13%となった段階でガスクロマトグラフによりアルコール濃度を測定し、酸度とアルコール濃度の合計が16%となるように前記添加液の添加量を調整した。なお、アルコール濃度の測定は、島津製作所製ガスクロマトグラフィー(GC−17A)で、GLサイエンス製カラム(TC−WAX:0.53mm×30m)を用い、ディテクション220℃、カラム温度40℃で5分間保持し、4℃/分の条件で220℃まで昇温させて220℃で10分保持する測定条件で、試料を1μl用いる方法で測定した。
【0043】
さらに酢酸発酵を継続させ、酸度が15.3%でアルコール濃度が0.3容量%になった時点で、2.7KLの発酵液が残留するように発酵液を種菌用発酵槽から取り出した。この時点で、約3.3KLの酸度15.3%、アルコール濃度0.3容量%の発酵液が得られた。
【0044】
その後、種菌用発酵槽内に残留している発酵液の通気攪拌を止めることなく、原料液を仕込み、全体を酸度7%、アルコール3容量%、酵母エキス(アサヒビール製)0.2重量/容量%、グルコース0.2重量/容量%の組成とし、さらに同様にして発酵を継続した。
【0045】
これ以降は、同様にして酸度15%以上の発酵を行い、発酵液を一部取り出した後、原料液を再度仕込んで酸度を低下させて発酵を再開させるサイクルを繰り返す半連続発酵を繰り返す中で、この種菌用発酵槽中の発酵液を種菌液として使用した。
【0046】
続いて、10L容量のジャーファーメンター(三ツワ理化学工業社製)に、種菌用発酵槽において原料液の仕込みが完了した直後の発酵液を5L移植し、発酵温度30℃、回転数500rpm、通気量0.15vvmで発酵を開始させた。ジャーファーメンターには種菌液のみを移植しているので、殆ど増殖誘導期も無く5〜10時間後には明らかな増殖が認められた。
【0047】
その後、アルコール濃度が2容量%になった段階で、酸度3%、アルコール55容量%、酵母エキス(アサヒビール製)0.2重量/容量%、グルコース0.2重量/容量%の添加液を流加し、発酵液のエタノール濃度が2〜2.5容量%の範囲になるように制御しつつ発酵を継続した。
【0048】
48.25時間目に酸度13.6%、アルコール濃度2.05容量%、酸度とアルコール濃度の合計が15.65%となったところで、添加液の流加を停止した。
【0049】
その後、さらに発酵を継続させたところ、発酵開始から63.5時間目で、酸度が15.49%、アルコール濃度が0.1容量%となったが、この時点から急激に発泡が起こり、さらに2時間後にはジャーファーメンター上部から泡が急激に溢れ出す状態になった(泡立ち12cm以上)。
【0050】
この発泡が起こる直前までの生酸速度は0.126%/時間であったが、最終的に発泡が激しくなり、発酵が停止したのは酸度15.5%、アルコール濃度は0.05容量%であった。
このような状態の発酵経過を図1に示す。
【0051】
以上の結果、一般的に行われているような酢酸発酵条件では、アルコール濃度が低下して0.1容量%付近となった時点から急激な発泡が起き、最終的には発酵が停止することが確認された。
アルコール濃度が低い時の発泡を抑制する為には、少なくともアルコール濃度が0.1容量%になる時点までに何らかの対処方法が必要なことがわかった。
【0052】
【実施例1】
比較例1と同じ方法で仕込み、発酵を行って、アルコール濃度が2容量%になった段階で、比較例1と同じように添加液を流加し、発酵液のアルコール濃度が2〜2.5容量%の範囲になるように制御して発酵を継続した。
【0053】
発酵開始から45時間目に酸度13.54%、アルコール濃度2.14容量%、酸度とアルコール濃度の合計が15.68%となったところで、添加液の流加を停止した。
【0054】
さらに発酵開始から55時間目に、酸度が14.99%、アルコール濃度が0.62容量%となった時点で、発酵温度を30℃から25℃に低下させた。
その結果、酢酸菌の発酵活性が低下し、生酸速度は0.03%/時間に低下した。
【0055】
この状態で発酵をさらに継続したところ、発酵開始から73.25時間目にアルコール濃度が発泡の臨界点である0.1容量%になったが、この場合は全く発泡は起こらず、さらに発酵開始から78.25時間目の酸度が15.56%、アルコール濃度が0.03容量%となった発酵を停止させた時点でも、発泡は認められなかった(発酵停止時の泡立ち0cm)。
上記の発酵条件変更後のアルコール濃度と発泡状態の経過を図2に示した。
【0056】
このように、アルコール濃度が0.1容量%になる前に温度を低下させて生酸速度を0.03%/時間に低下させることで、激しい発泡を起こすことなくアルコール濃度を0.1容量%未満にできることがわかった。
【実施例2】
比較例1と同じ条件で仕込みを行い、アルコール濃度が2容量%になった段階で、比較例1と同じように添加液を流加し、発酵液のアルコール濃度が2〜2.5容量%の範囲になるように制御して発酵を行った。
【0057】
発酵開始後49時間目に酸度13.82%、アルコール濃度2.27容量%、酸度とアルコール濃度の合計が15.68%となったので、添加液の流加を停止した。
【0058】
発酵開始から62時間目、酸度が15.53%、アルコール濃度が0.52容量%の時点で、散気管通気のみの発酵装置に発酵液を移動して酸素の溶解効率を約1/2とした。その結果、酢酸菌の発酵活性が低下し、生酸速度は0.08%/時間に低下した。
【0059】
この状態で発酵を継続したところ、発酵開始から68.25時間目にアルコール濃度が発泡の臨界点である0.1容量%になったが、全く発泡は認められなかった。さらに、醗酵開始から71.2時間目で、酸度が15.58%、アルコール濃度が0.04容量%となったところで発酵を停止した時点でも、殆ど発泡は見られなかった(発酵停止時の泡立ち1cm)。
上記の発酵条件変更後のアルコール濃度と発泡状態の経過を図3に示す。
【0060】
このように、アルコール濃度が0.1容量%になる前に供給酸素量を低下させて生酸速度を0.08%/時間に低下させることで、激しい発泡をおこすことなく発酵を継続させることができ、アルコール濃度を0.1容量%未満にできることがわかった。
【0061】
【実施例3】
実施例2の方法で製造したアルコール濃度0.04容量%の高酸度食酢(本発明品)の酢酸エチル量について、30℃で10ヶ月間保存し、保存中の経時的な変化を調べた。比較対照としては、一般的なアルコール濃度が0.34容量%の高酸度食酢(従来品)を用いた。その結果を図4に示した。
【0062】
図4から、本発明品は、アルコール濃度が低いため、酢酸エチルの生成量が保存試験開始時及び保存終了時ともに、従来品の1/5以下程度に低いことがわかった。
【0063】
【実施例4】
実施例3で用いたアルコール濃度が0.04容量%の高酸度食酢(本発明品)と、アルコール濃度が0.34容量%の高酸度食酢(従来品)について、官能検査員24名による官能検査を実施した。その結果を表1に示した。
Figure 2004248620
【0064】
上記結果から、本発明品は明らかに酢酸エチル臭が低減されていることがわかった。また、食酢としても好ましいと感じる人が多いことが確認できた。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、アルコール濃度が0.1容量%になっても激しい発泡を起こさせずに酢酸発酵できる方法が提供され、その結果従来よりも低いアルコール濃度の高酸度食酢が製造でき、生成する酢酸エチルの濃度をより低く抑えて酢酸エチル臭を低減したマイルドな高酸度食酢を安定して提供することが可能になった。
【0066】
このマイルドな高酸度食酢は、嗜好が多様化し、よりマイルドなものが求められてきている現在の食生活の中にあって、生酢としての利用はもちろん、ソース、マヨネーズ、調味酢などの加工用食酢としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1におけるアルコール濃度と起泡状態の経過を示す。
【図2】実施例1におけるアルコール濃度と起泡状態の経過を示す。
【図3】実施例2におけるアルコール濃度と起泡状態の経過を示す。
【図4】従来品と本発明品の酢酸エチル濃度の経時変化を示す。

Claims (6)

  1. 酸度が10%以上でアルコール濃度が0.1容量%未満に低下する時までに、生酸速度を0.002%〜0.080%/時間の範囲となるように低下させて、アルコール濃度が0.1容量%未満まで発酵させることを特徴とする深部培養法による高酸度食酢の製造方法。
  2. 生酸速度の低下方法が、発酵温度の低下または供給酸素量の低下であること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. アルコール濃度が0.1容量%未満に低下するときまで、好ましくは0.1〜0.8容量%、更に好ましくは0.1〜0.7容量%に低下したときに、生酸速度の低下工程を開始すること、を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 生酸速度を0.002〜0.080%/時間、好ましくは0.01〜0.080%/時間、更に好ましくは0.03〜0.080%/時間とすること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された、酸度10%以上アルコール濃度が0.1容量%未満の高酸度食酢。
  6. 更に、酢酸エチル濃度が0.02%未満であること、を特徴とする請求項5に記載の高酸度食酢。
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