JP2004248419A - 電力変換装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制御器の搬送波は、従来例では1個で構成されるが、本発明では搬送波を電力変換器の相数分だけ用意し、さらに各搬送波の位相差を適切に設定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
公知の電力変換装置は、特許文献1(特開平3−218270号公報)の図1に示されているように、交流ラインと直流ラインに発生する高周波成分を除去するため、交流ラインと直流ライン間にコンデンサを接続している。この装置は、各相に共通する1つの搬送波と位相差をもつ各相の信号波を比較し、比較器の出力である正論理、負論理の高周波パルスをスイッチング素子に与えることによって、PWM制御を行っている。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−218270号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
交流ラインと直流ラインに発生する高周波成分を除去する機能を設けることにより、下記するようなメリットがある。
【0005】
(1)交流ラインと電力変換器を変圧器で絶縁することなく、漏洩電流Irの低減ができる。
【0006】
(2)電力変換器から漏れる高周波電流が少なくなるため、EMI対策となる。
【0007】
しかしながら、高周波電流I0が余分に流れる回路が存在しているため、交流ラインと直流ライン間にあるリアクトルの損失や、騒音が増加する。
【0008】
本発明の目的は、高周波電流I0を低減させ、リアクトルの損失・騒音を低減し、さらに、損失・騒音低減による電力変換装置の小型化・コスト低減、変換効率向上を図ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、搬送波源を各相毎に設け、各相の搬送波に位相差を与えることである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例の電力変換装置を示す回路図で、主回路12と負荷装置6とPWM制御装置13で構成される。主回路12は、6個のスイッチング素子T1、T2、,T3、,T4、T5、T6と、このスイッチング素子T1〜T6のそれぞれに逆並列に接続されたダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6を3相ブリッジ接続して構成されている。3相ブリッジ回路の直流側には直列接続された蓄電池9A,9Bが接続されている。
【0011】
主回路12の各スイッチング素子T1〜T6は、PWM制御装置13から与えられるPWM(パルス幅変調)制御用のオンオフ制御信号により駆動され、電圧形PWMコンバータとして機能するようになっている。
【0012】
主回路12の交流側は、それぞれ交流ラインを介して負荷装置6に接続されている。主回路12の直流側は、ラインNを介して交流側へ接続されている。交流ラインの各相にはそれぞれリアクトル4が挿入され、リアクトル4の負荷装置側の各交流ラインとラインNとの間にコンデンサ5u、5v、5wが接続されている。この実施例ではラインNは、蓄電池9A,9Bの中点に接続されている。
【0013】
これらのリアクトル4とコンデンサ5u,5v,5wによって高周波フィルタが形成される。PWM制御装置13は、搬送波1u,1v,1wと信号波2u,2v,2wの大小に応じて比較器3u,3v,3wがON信号またはOFF信号を出力する。
【0014】
比較器3u,3v,3wの出力は直接あるいはNOT回路14u,14v,14wを介して、それぞれのスイッチング素子T1〜T6へ供給される。搬送波1u,1v,1wの周波数は、例えば約7KHzである。負荷装置6−対地間には寄生コンデンサ7、電力変換器−対地間には、寄生コンデンサ8が形成される。
【0015】
比較器3u,3v,3wからの出力は、3相フルブリッジ回路11内のスイッチング素子T1〜T6に伝えられる。なお、搬送波1u,1v,1wは、最適な位相差を与えられる。各相の搬送波の位相差γの値は下記のように(8)、(9)式で決定する。
【0016】
信号波を正弦波、搬送波を三角波とした場合、各相の周波数成分は下式(1)(2)で与えられる。また、信号波と搬送波の関係を図2に示す。(参考文献:「半導体電力変換回路、電気学会、半導体電力変換方式調査専門委員会編」電気学会出版、P−116,117)
n=1,3,5,…のとき
【0017】
【数1】
【0018】
k=2λ,λ=0,1,2,3,…とする。
【0019】
n=2,4,6,…のとき
【0020】
【数2】
【0021】
k=2λ+1,λ=0,1,2,3,…とする。
【0022】
n:搬送波の高調波の次数、k:信号波に関わる高調波の次数、a:変調率、ω0:信号波角周波数、ωS:搬送波基本波角周波数、φ:信号波の位相、Jk(x):第1種ベッセル関数
式(1)(2)において、振幅は、信号波と搬送波の位相差にはまったく依存しない。よって、sin、cosの中の位相だけで考えればよい。さらに、式(1)(2)において搬送波の位相だけを考慮して式(1)(2)に下式(3)〜(5)を代入する。
【0023】
【数3】
【0024】
δ:搬送波の時間差、t’:時間、θ:信号波の位相差、γ:搬送波の位相差
下式(3)〜(5)を代入した式(1)(2)のcos、sin項の中は式(6)のようになる。
【0025】
【数4】
【0026】
式(6)において、各相で異なる部分は、式(7)の項だけである。
【0027】
kθ±nγ…(7)
さらに、I0の高周波の主要成分になるn=1,k=0だけに着目すると、γだけになる。各相の搬送波の位相差γによりI0の高周波の主要成分を打ち消す場合は、式(8)で計算した位相差γを各相に設定すればI0を小さくすることができる。
【0028】
【数5】
【0029】
p:電力変換器の相数
q:q.mod p≠0を満たす整数(例えば、p=3なら、q=,−7,−5,−2,−1,+1,+2,+4,+5,+7,…)
また、I0においてn=1,k=0以外の周波数成分を打ち消すためには、式(9)を満たせばよい。
【0030】
【数6】
【0031】
主回路12はPWM制御13内の比較器3u,3v,3wの出力に応じてスイッチング素子T1〜T6をON・OFFさせる。直流電源9Aと9Bの出力は、スイッチング素子T1〜T6、D1〜D6を介して高周波成分を含むパルス状の電力として3相交流リアクトル4に伝えられる。
【0032】
3相交流リアクトル4に接続されるコンデンサ5u、5v、5wは、3相交流リアクトル4に流れる高周波電流を中性線Nで直流電源9Aと9Bに戻す。さらに、3相交流リアクトル4に流れる電流の内、コンデンサ5u、5v、5wで高周波電流を除去された滑らかな電流が負荷装置6に伝えられる。
【0033】
図1において位相差γを0として図2と同じにして、I0の高周波の主要成分になるn=1,k=0だけに着目するとI0は式(10)のようになる。
【0034】
【数7】
【0035】
L:三相リアクトル4の1相当りのインダクタンス、Ed/2:蓄電池9A, 9Bの電圧
なお、I0のn=1,k=2に関する成分は各相で打ち消しあっているため、0である。式(8)からγ=2π/3を適用すると式(10)は0となる。しかし、打ち消しあっていたn=1,k=2については、式(9)を満たさなくなるため、式(11)のようになり、打ち消し合わなくなる。なお、式(11)において、ωS≫ω0であるため三相リアクトルの1相当りのインピーダンスはωSLで近似してある。
【0036】
【数8】
【0037】
0≦a≦1において、式(10)(11)の振幅の大小関係は、式(12)のようになるため、I0を低減することが可能である。
【0038】
【数9】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、制御器の構造を変更するだけで、三相リアクトルの損失・騒音の低減により、リアクトルの小型軽量化、熱・騒音対策を軽減できる。さらに、特定の周波数成分を低減できるため、EMI対策になる。したがって、コスト低減、変換効率向上を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用している三相インバータの一実施例の構成図である。
【図2】図1の回路における信号波、搬送波の位相関係を示す図である。
【符号の説明】
1,1u,1v,1w…搬送波、2u,2v,2w…信号波、3u,3v,3w…比較器、4…三相リアクトル、5u,5v,5w…コンデンサ、6…負荷装置、7…負荷装置−対地間寄生コンデンサ、8…電力変換器−対地間寄生コンデンサ、9A,9B…蓄電池、11…三相フルブリッジ回路、12…電力変換器(インバータ)、13…制御器、14u,14v,14w…NOT回路、T1〜T6…スイッチング素子、D1〜D6…ダイオード。
Claims (4)
- 交流ラインと直流ラインとの間に接続されたスイッチング素子を、制御器から出力される高周波パルスによってスイッチングし、直流から多相交流、または、多相交流から直流へ電力変換する電力変換装置において、前記交流ラインの各相にリアクトルを挿入し、前記リアクトルの前記スイッチング素子の反対側に接続された前記交流ラインの少なくとも1相をコンデンサを介して前記直流ラインの片側ラインに接続することによって、前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する高周波を吸収する高周波フィルタを構成し、前記制御器は、複数の搬送波源の出力と信号波源の出力を比較器で比較し、前記比較器の出力である正論理、負論理の高周波パルスを前記スイッチング素子に供給するようにし、前記複数の搬送波の位相は所定の位相差を有することを特徴とする電力変換装置。
- スイッチング素子をブリッジ接続した電力変換主回路と、前記スイッチング素子を制御器から出力される高周波パルスによってスイッチングし、直流、交流間の電力変換を行わせる制御回路と、前記電力変換主回路に接続される交流ラインの各相にリアクトルを挿入し、前記リアクトルの前記電力変換主回路の反対側に接続された前記交流ラインの少なくとも1相を、コンデンサを介して前記電力変換主回路の直流ラインの片側ラインに接続することにより形成され、前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する高周波を吸収する高周波フィルタを備え、前記制御器は、複数の搬送波源の出力と信号波源の出力を比較器で比較し、比較器の出力である正論理、負論理の高周波パルスを前記スイッチング素子に供給するようにし、前記複数の搬送波の位相は所定の位相差を有することを特徴とする電力変換装置。
- 前記制御器は、交流出力電圧を入力し、交流出力電圧を所定値に保つように前記スイッチング素子をPWM制御する構成を含み、前記電力変換主回路は、電圧形インバータである請求項2に記載の電力変換装置。
- 交流ラインと直流ラインとの間に接続されたスイッチング素子を、制御器から出力される高周波パルスでスイッチングすることにより直流から交流、または、交流から直流に電力変換を行う電力変換装置において、前記交流ラインの各相にリアクトルを挿入し、前記リアクトルの前記スイッチング素子の反対側に接続された前記交流ラインの少なくとも1相をコンデンサを介して前記直流ラインの片側ラインに接続し、前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する高周波を吸収する高周波フィルタを設け、前記制御器は、複数の搬送波源の出力の位相差を最適に調整し、信号波源の出力を比較器で比較し、前記比較器の出力である正論理、負論理の高周波パルスをスイッチング素子に供給することを特徴とする電力変換装置。
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