JP2004247971A - 伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することを目的とする。
【解決手段】伝搬シミュレーション装置は、送信機から送信される送信信号のデータが入力される入力部1と、送信機と受信機との間の距離に関する所定の関係式に基づいて、受信機における到来方向分布を算出し、到来方向分布に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する算出部2と、上記無線通信における伝搬環境に関する情報と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を生成する生成部6と、入力された送信信号のデータと上記複数の変化情報とに基づいて生成された受信信号のデータを出力する出力部7とを有する
【選択図】 図1
【解決手段】伝搬シミュレーション装置は、送信機から送信される送信信号のデータが入力される入力部1と、送信機と受信機との間の距離に関する所定の関係式に基づいて、受信機における到来方向分布を算出し、到来方向分布に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する算出部2と、上記無線通信における伝搬環境に関する情報と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を生成する生成部6と、入力された送信信号のデータと上記複数の変化情報とに基づいて生成された受信信号のデータを出力する出力部7とを有する
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無線通信システムにおける伝搬特性を設計評価する場合、コンピュータを用いたシミュレーション(無線通信における信号の伝搬に関するシミュレーション、以下、伝搬シミュレーションという)が行われている。この伝搬シミュレーションでは、例えば、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号の模擬が行われる。そして、このシミュレーション結果を用いて、無線通信システムの伝搬特性の設計評価が行われる。
【0003】
従来の伝搬シミュレーションは、例えば、以下のようにして行われる(非特許文献1,非特許文献2参照)。
【0004】
送信機に設けられる複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが伝搬シミュレーション装置に入力される。伝搬シミュレーション装置は、受信機における到来方向分布(又は到来波分布ともいう)を算出する。到来方向分布とは、例えば、受信機に到来する信号の方向を示す到来方向に対する受信レベルの分布を示す情報である。即ち、到来方向分布は、各到来方向に対して、受信機が受信する信号のレベルを示す情報である。
【0005】
伝搬シミュレーション装置は、算出した到来方向分布に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する。また、伝搬シミュレーション装置は、送信機における送信方向分布を算出する。伝搬シミュレーション装置は、算出した送信方向分布に基づいて、送信機に設けられた各送信アンテナ間の相関係数を算出する。
【0006】
伝搬シミュレーション装置は、送信機及び受信機を用いた無線通信における伝搬環境(例えば、レイリーフェージング現象が発生する伝搬環境)に関連する複数の伝搬情報を生成する。各伝搬情報とは、送信アンテナから受信アンテナへ送られる信号の伝搬に関する情報である。
【0007】
伝搬シミュレーション装置は、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数と、各伝搬情報と、入力された送信信号のデータとに基づいて、受信機に設けられる複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータ(模擬された受信信号のデータ)を出力する。
【0008】
【非特許文献1】
D.Chizhik,F.R.Farrokhi,J.Ling,A.Lozano,“Antenna Separation and Capacity of BLAST in Correlated Channels”
【0009】
【非特許文献2】
Lucent Technologies. Spatial channel model for MINO simulations. TSG_R WG1 document TSGR1#20(01)0582
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術では、以下のような問題があった。上述した従来技術では、受信機における到来方向分布の算出においては、送信機と受信機との間の距離が考慮されていなかった。しかし、各種の実験により、送信機及び受信機を用いた無線通信における実際の伝搬においては、受信機における到来方向分布は、上記距離に関連することが知られている。
【0011】
従って、従来の伝搬シミュレーションでは、受信機における到来方向分布の算出においては、送信機と受信機との間の距離が考慮されていなかったので、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬できないという問題があった。これにより、従来では、無線通信システム(例えば、移動通信システム)における伝搬特性の設計評価が適切に行えなかった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、受信機における到来方向分布の算出において、送信機と受信機との間の距離を考慮することにより、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することができる伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、プログラムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上の問題点を解決するために、本発明は、送信機から、無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する際に、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータを入力し、前記送信機と前記受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出し、前記到来方向分布に基づいて前記受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出し、前記無線通信における伝搬環境に関する情報と、前記送信機に設けられた送信アンテナの数と、前記受信機に設けられた受信アンテナの数と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、前記入力手段に前記送信信号のデータが入力されるごとに、生成し、入力された前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、前記受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記入力では、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、前記受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力され、前記算出では、各送信信号のデータごとに、前記受信機の移動に関する情報と、前記受信機と前記送信機との間の距離との関係を示す関係情報に基づいて、前記送信機と前記受信機との間の距離を算出し、前記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、前記1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記到来方向分布を算出し、前記出力では、前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。伝搬シミュレーション装置は、入力部1、算出部2、受信相関行列生成部3、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5、変化情報行列生成部6、出力部7、各部を制御する制御部8を有する。
【0016】
伝搬シミュレーション装置は、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号の模擬(伝搬シミュレーション)を行う。伝搬シミュレーションの前提は、以下のとおりである。送信機には、複数の送信アンテナが設けられているとともに、受信機には、複数の受信アンテナが設けられている。ここでは、送信アンテナ数は、N(Nは1以上の整数)であり、受信アンテナ数は、M(Mは1以上の整数)とする。また、ここでは、図2に示すように、受信アンテナの方向φrとは、例えば、受信アンテナアレイの方向に対して、受信アンテナアレイに到来する到来波の受信レベルが最大になる方向と定義される。
【0017】
同じく、送信アンテナの方向φtとは、例えば、送信アンテナアレイの方向に対して、送信アンテナアレイから送信される送信波の送信レベルが最大になる方向と定義される。
【0018】
また、所定の伝搬環境の下で、上記無線通信が行われることが前提となる。ここでいう伝搬環境とは、送信機と受信機との間の無線通信では、所定の現象が発生するような伝搬路が存在する環境のことをいう。例えば、受信機の移動を前提とする場合、伝搬環境とは、以下のような環境をいう。即ち、この場合の伝搬環境とは、送信機と受信機との間の無線通信では、例えば、レイリーフェージング現象(又は、周波数選択性フェージング現象、シャドウイングなど)が発生するような伝搬路が存在する環境のことをいう。
【0019】
入力部1には、送信機に設けられる複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが入力される。具体的な一例は、以下のとおりである。例えば、入力部1には、送信機に設けられた各送信アンテナ(送信アンテナ1、送信アンテナ2...送信アンテナN)から送信される送信信号のデータsj(j=1〜N)が入力される。即ち、入力部1には、送信アンテナ1から送信される送信信号のデータs1(シンボルデータ、例えば、1又は0)が入力され、送信アンテナ2から送信される送信信号のデータs2(シンボルデータ、例えば、1又は0)が入力され、..のようにして、各送信アンテナから送信される送信信号のデータsj(j=1〜N)が入力される。入力された複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータは、制御部8に送られる。制御部8は、送られてきた送信信号のデータに基づいて、以下の式で示される送信信号データ行列S(N行、1列)を生成し、保持する。
【0020】
【数1】
また、入力部1には、送信機と受信機との間の距離のデータ(以下、距離データd0という)が入力される。入力された距離データd0は、制御部8を介して算出部2に送られる。
【0021】
制御部8は、入力部1から送信信号のデータsj(j=1〜N)を取得した場合、各部(算出部2、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5)に対して、所定の指示信号(クロック信号)を送る。所定の指示信号とは、各部が行う処理を実行するように指示することを示す信号である。
【0022】
算出部2は、所定の指示信号を取得すると以下の処理を行う。算出部2は、送信機と受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出する。算出部2による処理の具体的な一例は、以下のとおりである。
【0023】
算出部2は、送信機と受信機との間の距離に関する所定の関係式を示す情報を複数保持している。具体的には、算出部2は、送信機から送信される電波の散乱半径rと、上記距離dと、受信機から見た上記電波の散乱の見込み角度αwと、の間の所定の関係式を示す情報を保持している。この所定の関係式を以下に示す。
【0024】
αw=arcsin(r/d)......(1)
この所定の関係式の導出方法については、文献(Y.MIURA,Y.ODA,K.TSUNEKAWA,M.HATA,“New Angular Profile Model for Urban Mobile Propagation Channels”,ISAP2000,Vol1.pp253−256,2000.)に記載されているので、上記導出方法の詳細説明は省略する。以下、上記文献を文献1という。
【0025】
また、送信機から送信された送信信号(送信電波)は、複数の伝搬経路を介して、受信機に到達することが知られている。即ち、受信機に到達する信号は、送信機から直接送られてくる直接波による信号と、送信機から障害物(建物など)を経由して送られてくる反射波、回折波、透過波による信号とがある。以下、送信機から障害物を経由して送られてくる伝搬時間の異なる複数の波を、マルチパスという。そして、算出部2は、マルチパスの受信レベルのピーク値Lbと、マルチパスの受信レベルと直接波の受信レベルとの差を示す値Ls(Lsは見通しがあるか否かに関連する情報)と、伝搬損失L(d)(L(d)は電波が距離dを伝搬したときの伝搬損失)との関係を示す所定の関係式を示す情報を保持している。
【0026】
Ls=L(d)/Lb......(2)
ここで、伝搬損失L(d)は、送信機と受信機との間の距離dに関する関数である(文献 M.HATA,“Empirical formula for propagation loss in land mobile radio service”,IEEE Trans.on Veh.Technol.,VT−29,No.3,pp.317−325,1980.参照)。以下、上記文献を文献2という。例えば、文献2の場合には、伝搬損失L(d)は、上記距離dの−3.5乗に依存する関数となっている。また、マルチパスの受信レベルのピーク値Lbは、例えば、自由空間伝搬損失Lf(d)を用いて、以下のような式で表すとする。
【0027】
Lb=a*Lf(d).......(3)
ここで、aは定数である。Lbの値は、例えば、Lf(d)(自由空間伝搬損失)から−20dBという値に設定される。なお、算出部2は、送信機から送信される電波の散乱半径rと、マルチパスの受信レベルのピーク値Lbと、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報とを保持している。
【0028】
そして、算出部2は、送られてきた距離データd0と、所定の関係式(1)とに基づいて、上記見込み角度αwを算出する。算出部2は、距離データd0と、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報と、に基づいて、伝搬損失L(d0)を算出する。また、算出部2は、送られてきた距離データd0と、所定の関係式(2)、(3)に基づいて、以下の所定の関係式を算出する。
【0029】
a*Lf(d)=L(d)/Ls......(4)
ここで、a*Lf(d)=Lbである。そして、算出部2は、距離データd0と、所定の関係式(4)と、算出した伝搬損失L(d0)と、に基づいて、a*Lf(d0)を算出する。
【0030】
算出部2は、算出した見込み角度αwと、算出した伝搬損失L(d0)と、算出したa*Lf(d0)と、受信アンテナアレイの方向に対する到来波の方向φr(図2参照)と、に基づいて、直接波による到来方向分布と、マルチパスによる到来方向分布とを算出する。
【0031】
なお、本実施の形態では、図3に示すように、到来波は送信機の方向φ0から到来すると仮定する。この場合、受信アンテナの方向φrは、受信アンテナアレイの方向に対する送信機の方向φ0に等しくなる。
【0032】
具体的な説明は、以下のとおりである。算出部2は、到来方向(到来方向の角度)αと、受信アンテナアレイの方向に対する到来波の方向(以下、中心方向という)φ0と、到来方向の角度の標準偏差α1と、伝搬損失L(d)と、直接波による到来方向分布Pr1(α)との関係を示す情報を保持している。上記関係の一例を以下の数式に示す。
【0033】
【数2】
同じく、算出部2は、到来方向の角度αと、中心方向φ0と、到来方向の角度の標準偏差α2と、aLf(d)(aLf(d)=Lb)と、マルチパスによる到来方向分布Pr2(α)との関係を示す情報を保持している。上記関係の一例を以下の数式に示す。
【0034】
【数3】
但し、Pr1(α)及びPr2(α)は、以下の関係式(4)を満たすとする。
【0035】
∫Pr1(α)dα=∫Pr2(α)dα......(4)
以下、Pr1(α)及びPr2(α)が上述のような式(〔数2〕、〔数3〕)で表せる理由を説明する。送信機から送信される電波は、散乱することが知られている。そして、送信機から送信された電波の受信レベルについては、以下のようなことがいえる。即ち、中心方向における受信レベルは、最も高く、中心方向から離れる方向における受信レベルは、低くなっていくといえる。
【0036】
このような考えに基づいて、マルチパスによる到来方向分布は、上記見込み角αwを標準偏差α2(α2=αw)とした場合のガウス分布に従うと近似される(文献R.B.Ertel and P.Cardieri,“Overview of Spatial Channel Models for Antenna Array Communication Systems”,IEEE Personal Communications,pp10−22,Feb.1998.参照)以下、上記文献を文献3という。
従って、マルチパスによる到来方向分布は、上述した数式〔数3〕で表される。上述した数式において、例えば、到来方向αが中心方向φ0である場合には、Pr2(φ0)=aLf(d0)である。数式(3)により、aLf(d0)は、Lb(マルチパスの受信レベルのピーク値)となる。
【0037】
同じように、直接波による到来方向分布は、中心方向からの信号の受信レベルが最も高くなるようなガウス分布に従うと近似される(文献3参照)。従って、直接波による到来方向分布は、上述した数式〔数2〕で表される。この際、標準偏差α1は、以下の式で表される。
【0038】
α1=αw/Ls.........(5)
この(5)式は、以下のようにして導出される。上述した(4)式を整理すると、以下の式が導き出される。
【0039】
1/{(2π)1/2*α1}=Ls/{(2π)1/2*αw}..(6)
この(6)式を整理すると、(5)式が導き出される。そして、算出部2は、〔数2〕に示す所定の関係式と数式(5)に基づいて、直接波による到来方向分布を算出する。同じく、算出部2は、〔数3〕に示す所定の関係式に基づいて、直接波による到来方向分布を算出する。
【0040】
算出部2は、マルチパスによる到来方向分布と、直接波による到来方向分布とに基づいて、全ての電波による到来方向分布を算出する。全ての電波による到来方向分布Pr(α)は、例えば、以下のような式(〔数4〕)で表される。
【0041】
【数4】
ここで、αaとαbは、数式Pr1(α)と数式Pr2(α)との交点である。また、定数bは、以下の数式を満たすための定数である。
【0042】
【数5】
全ての電波による到来方向分布が、上述の式(〔数4〕)で表せる理由は、以下のとおりである。文献1,2,3によれば、全ての電波による到来方向分布のモデルを算出する場合、中心方向付近では、直接波による到来方向分布を考慮し、中心方向から離れた方向では、マルチパスによる到来方向分布を考慮することにより、算出された全ての電波による到来方向分布は、実際の全ての電波による到来方向分布に近くなる。このため、全ての電波による到来方向分布が、上述の式で表せる。
【0043】
算出部2は、算出した全ての電波による到来方向分布Pr(α)と、波数Yと、受信アンテナ間隔hr,jkと、受信アンテナの方向φrと、受信機に到来する信号の方向である到来方向αと、に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数ρr,jkを算出する。具体的な説明は、以下のとおりである。
【0044】
算出部2は、波数Y(Y=2πf/c、fは周波数、cは光速度)と、受信アンテナ間隔hr,jk(j、k=1〜M)と、受信アンテナの方向φrと、を保持している。そして、算出部2は、保持している各種の情報と、算出した全ての電波による到来方向分布Pr(α)とに基づいて、以下の式(〔数6〕)で示される相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)を算出する。
【0045】
【数6】
算出部2は、各受信アンテナ間(例えば、受信アンテナ1と受信アンテナ2との間)の相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)を算出する。なお、受信アンテナjと受信アンテナkとの間の相関係数とは、受信アンテナjの出力複素振幅と、受信アンテナkの出力複素振幅との間の相関係数のことである。算出部2は、算出した各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)を、受信相関行列生成部3に送る。
【0046】
受信相関行列生成部3は、送られてきた各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)に基づいて、以下の式(〔数7〕)に示すような受信相関行列(M行、M列の行列)Crを生成する。
【0047】
【数7】
そして、受信相関行列生成部3は、生成した受信相関行列Crを変化情報行列生成部6に送る。
【0048】
送信相関行列生成部4は、制御部8から所定の指示信号を取得すると以下の処理を行う。送信相関行列生成部4は、送信機が送信する信号の方向を示す送信方向(α)に対する送信レベルの分布を示す送信方向分布(Pt(α))を算出する。この送信方向分布の算出方法は、公知技術であり、ここでは、詳細な説明は省略する。例えば、送信機に設けられた各送信アンテナが、無指向性アンテナであり、送信機から全方向において、電波が均等に送信される場合には、送信方向分布(Pt(α))は一様分布を示す。この場合、送信方向分布(P(α))は1/2πとなる。
【0049】
送信相関行列生成部4は、波数Y(Y=2πf/c、fは周波数、cは光速度)と、送信アンテナ間隔ht,jk(j、k=1〜M)と、送信アンテナの方向φtと、を保持している。そして、送信相関行列生成部4は、保持している情報と、送信方向分布Pt(α)に基づいて、以下の式(〔数8〕)で示される相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)を算出する。
【0050】
【数8】
送信相関行列生成部4は、算出した各相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)に基づいて、以下の式(〔数9〕)に示すような送信相関行列(N行、N列の行列)Ctを生成する。
【0051】
【数9】
そして、送信相関行列生成部4は、生成した送信相関行列Ctを変化情報行列生成部6に送る。
【0052】
伝搬情報行列生成部5は、制御部8から所定の指示信号を取得すると、以下の処理を行う。伝搬情報行列生成部5は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数(N)と、受信機に設けられた受信アンテナの数(M)とに基づいて、各送信アンテナから各受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報を複数生成する。伝搬情報行列生成部5による処理の一例の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0053】
伝搬情報行列生成部5は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数と、受信機に設けられた受信アンテナの数とを保持している。ここで、無線通信における伝搬環境に関する情報とは、例えば、以下のような情報である。
【0054】
送信機と受信機との間の無線通信における伝搬環境が、例えば、所定の現象(例えば、レイリーフェージング現象)が発生するような伝搬路が存在する環境である場合、伝搬環境に関する情報とは、例えば、受信機における受信レベルが上記所定の現象に関連する分布(例えば、レイリー分布)に従うための条件である。
【0055】
そして、伝搬情報行列生成部5は、例えば、受信機における受信レベルがレイリー分布に従うための条件に基づいて、送信アンテナから受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報を生成する。この伝搬に関する情報とは、例えば、伝搬遅延や伝搬損失に関連する情報である。伝搬情報行列生成部5は、送信アンテナ1から各受信アンテナ(1,2,..M)への信号の伝搬に関する情報を、各送信アンテナ(1,2..N)ごとに、生成する。このようにして、伝搬情報行列生成部5は、各送信アンテナから各受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報gjk(j=1〜N、k=1〜M)を生成する。例えば、伝搬に関する情報g12は、送信アンテナ1から受信アンテナ2への信号の伝搬に関する情報(伝搬遅延や伝搬損失に関する情報)である。
【0056】
この伝搬情報行列生成部5による伝搬に関する情報の生成方法の詳細な説明は、非特許文献1,2に記載されているので、ここでは、その詳細な説明は省略する。伝搬情報行列生成部5は、生成した伝搬に関する情報に基づいて、以下の式(〔数10〕)で示される伝搬情報行列Gを生成する。
【0057】
【数10】
伝搬情報行列生成部5は、生成した伝搬情報行列Gを変化情報行列生成部6に送る。
【0058】
変化情報行列生成部6は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数(N)と、受信機に設けられた受信アンテナの数(M)と、各受信アンテナ間の相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)と、各送信アンテナ間の相関係数ρt,jk(j、k=1〜N)とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、入力部1に送信信号のデータが入力されるごとに、生成する。そして、変化情報行列生成部6は、生成した複数の変化情報に基づいて、変化情報行列を生成する。具体的な説明は、以下のとおりである。
【0059】
変化情報行列生成部6は、送られてきた受信相関行列Crと、送信相関行列Ctと、伝搬情報行列Gとに基づいて、変化情報行列Zを生成する。変化情報行列生成部6は、例えば、コレスキー分解を用いて、受信相関行列Crの1/2乗、送信相関行列Ctの1/2乗を算出する。そして、変化情報行列生成部6は、受信相関行列Crの1/2乗と、伝搬情報行列Gと、送信相関行列Ctの1/2乗との行列積(Cr1/2*G*Ct1/2 )を計算することにより、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す変化情報zjk(j=1〜M、k=1〜N)を複数(N*Mの数)算出する(非特許文献2参照)。
【0060】
そして、変化情報行列生成部6は、複数の変化情報に基づいて、以下のような式(〔数11〕)の変化情報行列Z(行列積(Cr1/2*G*Ct1/2 ))を生成する。
【0061】
【数11】
ここで、zjkは、以下のような意味である。送信アンテナj(jは整数)から送信される信号のレベル(送信レベル)をQ1とする。上記信号が受信アンテナk(kは整数)に送られる。受信アンテナにおける上記信号のレベル(受信レベル)をQ2とする。zjkは、例えば、Q2/Q1で表される。変化情報行列生成部6は、生成した変化情報行列Gを制御部8に送る。
【0062】
なお、変化情報行列生成部6は、制御部8が所定の指示信号を各部に送るごとに、変化情報行列Gを生成するので、変化情報行列生成部6は、変化情報行列G(複数の変化情報)を、入力部1に送信信号のデータが入力されるごとに生成するといえる。
【0063】
出力部7は、入力された送信信号のデータと、複数の変化情報とに基づいて生成された、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する。この処理の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0064】
制御部8は、保持していた送信信号データ行列Sと、送られてきた変化情報行列Zとに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータrj(j=1〜M)を算出する。例えば、制御部8は、変化情報行列Zと送信信号データ行列Sとの積を算出することにより、各受信信号のデータrj(j=1〜M)を算出する。そして、制御部8は、各受信信号のデータrj(j=1〜M)に基づいて、受信信号データ行列Rを生成する。受信信号データ行列Rは、例えば、以下の式(〔数12〕)のように示される。
【0065】
【数12】
制御部8は、生成した受信信号データ行列Rに基づいて、各受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力部7に出力させる。例えば、出力部7は、各送信アンテナ(送信アンテナ1,2,..N)から送信される送信信号データ(s1,s2,s3,..sN)に対して、各受信アンテナ(受信アンテナ1,2,..M)に受信される受信信号データ(z11*s1+..+z1N*sN、z21*s1+..+z2N*sN、...、zM1*s1+..+zMN*sN)を出力する。この際、出力部7は、送信信号データ(s1,s2,s3,.sN)、各パラメータ(受信機と送信機との間の距離d0、受信アンテナの方向φr、送信アンテナの方向φtなどの情報)も出力してもよい。
【0066】
(伝搬シミュレーション方法)
図4は、上述した伝搬シミュレーション装置を用いた伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。
【0067】
入力部1には、送信機に設けられる複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが入力される。また、入力部1には、送信機と受信機との間の距離のデータ(以下、距離データd0という)が入力される(S10)。
【0068】
例えば、入力部1には、送信機に設けられた各送信アンテナ(送信アンテナ1、送信アンテナ2...送信アンテナN)から送信される送信信号のデータsj(j=1〜N)が入力される。入力された複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータは、制御部8に送られる。制御部8は、送られてきた送信信号のデータに基づいて、〔数1〕で示すような送信信号データ行列S(N行、1列)を生成し、保持する。また、入力された距離データd0は、制御部8を介して算出部2に送られる。
制御部8は、入力部1から送信信号のデータsj(j=1〜N)を取得した場合、各部(算出部2、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5)に対して、所定の指示信号(クロック信号)を送る(S20)。
【0069】
算出部2は、送信機と受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布Pr(α)を算出する(S30)。この算出処理の詳細な説明は、上述したとおりである。
【0070】
算出部2は、算出した到来方向分布Pr(α)と、波数Yと、受信アンテナ間隔hr,jkと、受信アンテナの方向φrと、受信機に到来する信号の方向である到来方向αと、に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数ρr,jkを算出する(S40)。この算出処理の詳細な説明は、上述したとおりである。算出された各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)は、受信相関行列生成部3に送られる。
【0071】
受信相関行列生成部3は、送られてきた各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)に基づいて、(〔数7〕)に示すような受信相関行列(M行、M列の行列)Crを生成する(S50)。受信相関行列生成部3は、生成した受信相関行列Crを変化情報行列生成部6に送る。
【0072】
送信相関行列生成部4は、制御部8から所定の指示信号を取得すると以下の処理を行う。送信相関行列生成部4は、送信方向分布(Pt(α))を算出し、算出した送信方向分布に基づいて、各送信アンテナ間の相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)を算出する。送信相関行列生成部4は、算出した各相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)に基づいて、(〔数9〕)に示すような送信相関行列(N行、N列の行列)Ctを生成する(S60)。送信相関行列生成部4は、生成した送信相関行列Ctを変化情報行列生成部6に送る。
【0073】
伝搬情報行列生成部5は、制御部8から所定の指示信号を取得すると、以下の処理を行う。伝搬情報行列生成部5は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数(N)と、受信機に設けられた受信アンテナの数(M)とに基づいて、各送信アンテナから各受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報を複数生成する。伝搬行列生成部は、生成した複数の伝搬に関する情報に基づいて、(〔数10〕)で示される伝搬情報行列Gを生成する(S70)。伝搬情報行列生成部5は、生成した伝搬情報行列Gを変化情報行列生成部6に送る。
【0074】
変化情報行列生成部6は、送られてきた受信相関行列Crと、送信相関行列Ctと、伝搬情報行列Gとに基づいて、変化情報行列Zを生成する(S80)。変化情報行列生成部6は、生成した変化情報行列Gを制御部8に送る。
【0075】
制御部8は、保持していた送信信号データ行列Sと、送られてきた変化情報行列Zとに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータrj(j=1〜M)を算出する。そして、制御部8は、各受信信号のデータrj(j=1〜M)に基づいて、受信信号データ行列Rを生成する(S90)。
【0076】
出力部7は、制御部8の指示に基づき、各受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する(S100)。例えば、出力部7は、各送信アンテナ(送信アンテナ1,2,..N)から送信される送信信号データ(s1,s2,s3,..sN)に対して、各受信アンテナ(受信アンテナ1,2,..M)に受信される受信信号データ(z11*s1+..+z1N*sN、z21*s1+..+z2N*sN、...、zM1*s1+..+zMN*sN)を出力する。
【0077】
(作用効果)
本実施の形態によれば、受信機における到来方向分布Pr(α)の算出は、送信機と受信機との間の距離dに関する所定の関係式(数式(1)(2)(3)(4)、〔数2〕、〔数3〕、〔数4〕など)に基づいて、行われる。このため、本実施の形態では、受信機における到来方向分布Pr(α)の算出においては、上記距離が考慮されるといえる。この結果、本実施の形態の伝搬シミュレーション装置は、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することができる。この伝搬シミュレーション装置によるシミュレーション結果を用いることで、無線通信システム(例えば、移動通信システム)における伝搬特性の設計評価を適切に行うことが可能となる。
【0078】
(変形例1)
上述した実施の形態1は、以下のように変形することができる。本変形例の伝搬シミュレーション装置は、各種のパラメータを入力するためのパラメータ入力部1(図示せず)を有する。例えば、作業者は、予め、パラメータ入力部1を用いて、送信機と受信機との間の距離のデータd0、中心方向(角度)φ0、送信機から送信される電波の散乱半径r、波数Y、受信アンテナ間隔hr,jk、受信アンテナの方向φr、送信アンテナ間隔ht,jk、送信アンテナの方向φt、マルチパスの受信レベルのピーク値Lb、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報、伝搬環境に関する情報、送信アンテナ数N及び受信アンテナ数M、を入力するようにしてもよい。
【0079】
パラメータ入力部1に入力された上記距離のデータd0、送信機から送信される電波の散乱半径r、マルチパスの受信レベルのピーク値Lb、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報、中心方向φ0、波数Y、受信アンテナ間隔hr,jk、受信アンテナの方向φr、とは、算出部2に送られる。
【0080】
パラメータ入力部1に入力された波数Y、送信アンテナ間隔ht,jk、送信アンテナの方向φtは、送信相関行列生成部4に送られる。パラメータ入力部1に入力された伝搬環境に関する情報、送信アンテナ数N及び受信アンテナ数Mは、伝搬情報行列生成部5に送られる。
【0081】
これにより、各部(算出部2、受信相関行列生成部3、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5)が各処理を行うようにしてもよい。
【0082】
また、送信相関行列生成部4が生成する送信相関行列Ct、受信相関行列生成部3が生成する受信相関行列Crは 上記距離のデータが一定の場合には、一定になる。この場合には、以下のようにしてもよい。受信相関行列生成部3(送信相関行列生成部4)は、いったん生成した受信相関行列(送信相関行列)を保持する。
【0083】
算出部2は、所定の指示信号を取得すると、受信相関行列生成部3に送る。受信相関行列生成部3及び送信相関行列生成部4は、それぞれ、保持している受信相関行列、送信相関行列を変換情報行列生成部に送る。
【0084】
(変形例2)
実施の形態1の算出部2が行う処理は、以下のように変形されてもよい。予め、実験により、送信機と受信機との間の距離に対する角度広がり(アングルスプレッド)が計測されている(図5の実測値を参照)。この角度広がりとは、送信機から受信機に到来する電波(信号)の角度の広がりを示す値である。なお、本変形例でも、到来波は、送信機の方向φ0から到来すると仮定する。
【0085】
そして、予め、図5の実測値に基づいて、送信機と受信機との間の距離dと、角度広がりαvとの関係を示す所定の関係式(例えば、図5に示す実線部分、数式(7))が算出されている。
【0086】
αv=f(d)..........(7)
ここで、fは所定の関数を示す記号である。そして、この所定の関係式(数式(7))は、算出部2に保持される。
【0087】
また、本変形例では、算出部2は、到来方向の角度αと、中心方向の角度φ0と、角度広がりαvと、到来方向分布Pr(α)との関係を示す情報(以下の「数13〕に示す情報)を保持している。
【0088】
【数13】
上述したように、受信機に到来する受信信号の受信レベルは、中心方向では最も高く、中心方向から離れるに従って、低くなっていくといえる。このような考えに基づいて、受信機における到来方向分布Pr(α)は、上記角度広がりαvを、到来方向の標準偏差αas(αv=αas)とした場合のラプラス分布(一般的な統計分布)に従うと近似される(文献 K.I.Pedersen,P.E.Mogensen and B.H.Fleury,“Spatial Channel Charactcristics in Outdoor Environments and their Impact on BS Antenna System Performance”,VTC98,pp719−723,1998.参照,以下、この文献を文献4という)。従って、到来方向分布Pr(α)は、上述した数式(〔数13〕)で表される。
【0089】
そして、算出部2は、送られてきた距離データd0と、所定の関係式(7)とに基づいて、角度広がりαv(d0)を算出する。算出部2は、算出した角度広がりαv(d0)と、〔数13〕に示す所定の関係式とに基づいて、到来方向分布Pr(α)を算出する。この後、実施の形態1と同じようにして、受信アンテナ間の相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)が算出される。
実施の形態2.
図6は、実施の形態2の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。図6において、図1と同一構成、機能については同一符号を付してその説明を省略する。実施の形態2の伝搬シミュレーション装置においては、実施の形態1の伝搬シミュレーション装置に対して、入力部1、算出部2、制御部8、出力部7の機能が以下のように異なる。算出部2は、距離情報算出部20と、到来方向分布算出部21と、相関係数算出部22とを有する。また、伝搬シミュレーション装置は、移動情報入力部(図示せず)、表示部(図示せず)を有する。
【0090】
図7は、実施の形態2の伝搬シミュレーションの前提となる移動通信システムを示す概念図である。図7に示すように、送信機は、特定位置に固定されており、例えば、基地局が該当する。受信機は、移動しており、例えば、移動端末が該当する。例えば、基地局が管轄するサービスエリアの半径を5kmとし、移動端末が基地局から1kmの位置から、エリア端に向けて時速40kmで移動する。この場合には、基地局と移動端末との間の距離は、移動時間の経過に従い、変化する。そして、本実施の形態では、受信機が移動中の場合、送信機から時系列で、送信信号データを上記受信機に送信する場合、受信機に時系列で到来する受信信号のデータの傾向が模擬される。
【0091】
以下、本実施の形態の伝搬シミュレーション装置を用いた伝搬シミュレーション方法の説明を行う。図8は、本実施の形態の伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。なお、実施の形態1の伝搬シミュレーション方法における処理と同一処理については、その説明を省略する。
【0092】
先ず、移動情報入力部には、受信機の移動に関する情報と、受信機と送信機との間の距離と、の関係を示す関係情報が、例えば、予め、入力される。この受信機の移動に関する情報とは、例えば、受信機が移動を開始してから経過する時間(以下、移動経過時間という)である。但し、受信機の移動に関する情報は、上記移動経過時間に限定されない。また、上記関係情報とは、例えば、上記移動経過時間に対する距離(受信機と送信機との間の距離)との関係を示す情報である。関係情報の一例を図9に示す。入力された上記関係情報は、制御部8を介して、距離情報算出部20に送られる。距離情報算出部20は、上記関係情報を保持する。
【0093】
入力部1には、送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力される(S200)。入力部1の処理の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0094】
ここでは、例えば、受信機の移動に関する情報が、受信機が移動を開始してから経過する時間である移動経過時間である場合を考える。制御部8は、受信機が移動を開始してから経過する時間を計測する機能を有する。そして、制御部8は、表示部に、上記移動経過時間を表示させる。
【0095】
作業者は、表示部による表示に基づいて、送信信号のデータを、移動経過時間と関連づけて、複数入力する。例えば、表示部が、移動経過時間が時間t1であることを表示した時点で、作業者により、入力部1に、送信信号のデータsj(t1)(j=1〜N)が入力される。同じく、表示部が、移動経過時間が時間t2であることを表示した時点で、作業者により、入力部1に、送信信号のデータsj(t2)(j=1〜N)が入力される。なお、作業者によらず、自動的に、表示部による表示に基づいて、送信信号のデータが、移動経過時間と関連づけて、複数入力されてもよい。このようにして、入力部1には、送信信号のデータが、上記移動経過時間(t1、t2..)と関連づけて、複数(sj(t1)、sj(t2)...)入力される。
【0096】
入力された各送信信号のデータ(sj(t1)(j=1〜N)、sj(t2)(j=1〜N)....)は、制御部8に送られる。制御部8は、各送信信号のデータに対して、それぞれ、上記移動経過時間(各送信信号のデータに関連する移動経過時間)を示す情報を与える。例えば、制御部8は、入力された送信信号のデータsj(t1)(j=1〜N)に対して、移動経過時間を示す情報t1を与える。同様にして、制御部8は、入力された送信信号のデータsj(tp)(j=1〜N)に対して、移動経過時間を示す情報tp(pは整数)を与える。各送信信号のデータに与えられた上記移動経過時間(t1、t2、....)を示す情報は、距離情報算出部20に送られる。なお、各送信信号のデータは、制御部8に送信信号データ行列として、保持される。この際、各送信信号データ行列S(t1)、S(t2)....は、それぞれ、移動経過時間t1,t2...に対応づけられる。
【0097】
制御部8は、上述した所定の指示信号を、距離情報算出部20、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列に送る(S210)。この際、指示信号は、移動経過時間を示す情報が対応づけられている。
【0098】
距離情報算出部20は、送信信号のデータごとに、受信機の移動に関する情報と、受信機と送信機との間の距離との関係を示す関係情報とに基づいて、送信機と受信機との間の距離を算出する(S220)。具体的な算出処理の一例は、以下のとおりである。
【0099】
例えば、距離情報算出部20には、所定の指示信号とともに、送信信号のデータsj(t1)(j=1〜N)に対応する移動経過時間t1を示す情報が送られる。距離情報算出部20は、保持している関係情報に基づいて、以下の処理を行う。例えば、関係情報が図9に示すような情報である場合、距離情報算出部20は、関係情報に基づいて、移動経過時間t1に対応する距離(送信機と受信機との間の距離)d1を算出する。
【0100】
その後、距離情報算出部20には、所定の指示信号とともに、送信信号のデータsj(t2)(j=1〜N)に対応する移動経過時間t2を示す情報が送られる。距離情報算出部20は、保持している関係情報に基づいて、以下の処理を行う。例えば、関係情報が図9に示すような情報である場合、距離情報算出部20は、関係情報に基づいて、移動経過時間t2に対応する距離(送信機と受信機との間の距離)d2を算出する。このようにして、距離情報算出部20は、送信信号のデータ(sj(t1)、sj(t2)...(j=1〜N))ごとに、送信機と受信機との間の距離(d1,d2,....)を算出する。距離情報算出部20により、算出された各距離d1、d2...は、到来方向分布算出部21に送られる。この際、各距離d1、d2...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0101】
到来方向分布算出部21は、算出された距離d1、d2...ごとに、上記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、上記1又は複数の所定の関係式に基づいて、到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)を算出する(S230)。具体的には、例えば、到来方向分布算出部21は、移動経過時間t1に関連する距離d1における到来方向分布Pr(α)を算出する。その後、到来方向分布算出部21は、移動経過時間t2に関連する距離d2における到来方向分布Pr(α)を算出する。このようにして、到来方向分布算出部21は、移動経過時間tp(pは整数)に関連する距離dpにおける到来方向分布Pr(α)(以下、このPr(α)をPr(α、tp)という)を算出する。なお、到来方向分布算出部21における算出処理は、実施の形態1,変形例で示した処理により行われる。算出された到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)は、相関係数算出部22に送られる。この際、各到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0102】
相関係数算出部22は、各到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)ごとに、各受信アンテナ間の相関係数を算出する(S240)。具体的には、相関係数算出部22は、到来方向分布Pr(α、t1)に基づいて、各受信アンテナ間の相関係数ρjk(j、k=1〜N)を算出する。その後、相関係数算出部22は、到来方向分布Pr(α、t2)に基づいて、各受信アンテナ間の相関係数ρjk(j、k=1〜N)を算出する。このようにして、相関係数算出部22は、到来方向分布Pr(α、tp)(pは整数)ごと、各受信アンテナ間の相関係数ρjk(j,k=1〜N)(以下、このρjkをρjk(tp)という)を算出する。算出された各受信アンテナ間の相関係数ρjk(t1)、ρjk(t2)...は、受信相関行列生成部3に送られる。この際、相関係数ρjk(t1)、ρjk(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0103】
受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数ρjk(t1)(j,k=1〜N)に基づいて、〔数7〕のような受信相関行列Crを生成する。その後、受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数ρjk(t2)(j,k=1〜N)に基づいて、〔数7〕のような受信相関行列Crを生成する。このようにして、受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数ρjk(tp)(j,k=1〜N)に基づいて、〔数7〕のような受信相関行列Cr(以下、Cr(tp)という)を生成する。このようにして、受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数(ρjk(t2)、ρjk(t2)...ごとに、受信相関行列Cr(t1)、Cr(t2)、...を生成する(S250)。この際、受信相関行列Cr(t1)、Cr(t2)..は、それぞれ移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0104】
送信相関行列生成部4は、制御部8から所定の指示信号を取得するごとに、送信相関行列Ct(tp)(tpは移動経過時間、pは整数)を生成する(S260)。この処理は、実施の形態1と同じである。この際、送信相関行列Ct(t1)、Ct(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。また、伝搬情報行列生成部5は、制御部8から所定の指示信号を取得するごとに、伝搬情報行列G(tp)(tpは移動経過時間、pは整数)を生成する(S270)。この処理は、実施の形態1と同じである。この際、伝搬情報行列G(t1)、G(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0105】
変化情報行列生成部6は、各送信信号のデータごとに、送られてきた受信相関行列と、送信相関行列と、伝搬情報行列とに基づいて、変化情報行列を複数、生成する(S290)。例えば、移動経過時間t1と関係する所定の指示信号が制御部8から各部に送られた場合に、受信相関行列Cr(t1)と、送信相関行列Ct(t1)と、伝搬情報行列G(t1)が生成されたとする。この場合には、変化情報行列生成部6は、受信相関行列Cr(t1)と、送信相関行列Ct(t1)と、伝搬情報行列G(t1)とに基づいて、変化情報行列Z(t1)を算出する。
【0106】
その後、移動経過時間t2と関係する所定の指示信号が制御部8から各部に送られた場合に、受信相関行列Cr(t2)と、送信相関行列Ct(t2)と、伝搬情報行列G(t2)が生成されたとする。この場合には、変化情報行列生成部6は、受信相関行列Cr(t2)と、送信相関行列Ct(t2)と、伝搬情報行列G(t2)とに基づいて、変化情報行列Z(t2)を算出する。
【0107】
このようにして、変化情報行列生成部6は、各送信信号のデータと関連する移動経過時間ごとに、変化情報行列Z(t1)、Z(t2)...を生成する。生成された各変化情報行列は、制御部8に送られる。この際、変化情報行列Z(t1)、Z(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0108】
出力部7は、制御部8の指示に基づいて、送信信号のデータと、複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力する(S300)。
【0109】
この処理の具体的な説明の一例は、以下のとおりである。上述したように、制御部8は、各送信信号データ行列(S(t1)、S(t2).)を、移動経過時間t1、t2..と対応づけて、保持している。そして、制御部8に、変化情報行列Z(t1)が送られた場合、例えば、移動経過時間t1と対応づけられた送信信号データ行列S(t1)と、変化情報行列Z(t1)とに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号データ行列R(t1)を生成する。
【0110】
その後、制御部8に、例えば、変化情報行列Z(t2)が送られた場合、例えば、移動経過時間t2と対応づけられた送信信号データ行列S(t2)と、変化情報行列Z(t2)とに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号データ行列R(t2)を生成する。このようにして、制御部8は、複数の受信信号データ行列R(t1)、R(t2)...を生成する。生成された各受信信号データ行列R(t1)、R(t2)...は、出力部7に送られる。この際、各受信信号データ行列R(t1)、R(t2)..は、移動経過時間t1,t2..と対応づけられる。
【0111】
出力部7は、各移動経過時間(t1、t2、..)及び送信信号データ(sj(t1)、Si(t2)...j=1〜N)と、受信信号データ(rj(t1)、Ri(t2)...j=1〜M)とを出力する。
【0112】
これにより、例えば、受信機が移動を開始してから経過する時間(t1、t2、..)ごとに、移動中の受信機に対して送信する信号のデータ(sj(t1)、Si(t2)...j=1〜N)が入力された場合、受信機が移動を開始してから経過する時間ごとに、受信機に到来する受信信号のデータ(rj(t1)、Si(t2)...j=1〜M)が、シミュレーション結果として、出力される。
【0113】
(作用効果)
受信機が移動中の場合、例えば、送信機から時系列で、送信信号データを上記受信機に送信した場合、受信機に時系列で到来する受信信号のデータの傾向がどのようなものであるかを示す情報が必要な場合がある。この際、送信機と受信機との間の距離は、受信機による移動時間の経過に従い、変化するので、受信機における到来方向分布も変化することになる。本実施の形態では、距離情報算出部20は、送信機が送信信号データを上記受信機に送信する各時点ごとに、送信機と受信機との間の距離を算出することができる。そして、この算出した距離を用いて、到来方向算出部2は、上記各時点ごとに、受信機における到来方向分布を算出することができる。このため、本実施の形態では、送信機と受信機との間の距離が、受信機による移動時間の経過に従い、変化した場合でも、受信機における到来方向分布を正確に算出することができるといえる。
【0114】
この結果、受信機が移動中の場合、例えば、送信機から時系列で、送信信号データを上記受信機に送信した場合、伝搬シミュレーション装置は、受信機に時系列で到来する受信信号のデータの傾向を正確に算出することが可能となる。
【0115】
(変形例)
実施の形態2においても、実施の形態1の変形例2が同様に適用できる。また、入力部1には、以下のようにして、送信信号のデータが、受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力されてもよい。変形例の入力部1の処理の具体的な説明は、以下のとおりである。ここでは、例えば、受信機の移動に関する情報が、受信機が移動を開始してから経過する時間である移動経過時間である場合を考える。
【0116】
入力部1には、複数の送信信号のデータが、移動経過時間を示す情報と対応づけて入力される。例えば、入力部1には、送信信号のデータsj(t1),(j=1〜N)が移動経過時間t1と対応づけて入力される。同じく、入力部1には、送信信号のデータsj(t2),(j=1〜N)が移動経過時間t2と対応づけて入力される。このようにして、入力部1には、複数の送信信号のデータ(sj(t1)、sj(t2)、.....)が、移動経過時間を示す情報(t1、t2..)と対応づけて入力される。そして、各送信信号のデータに対応づけられた上記移動経過時間(t1、t2、t3....)を示す情報は、距離情報算出部20に送られる。以降の処理は、実施の形態2のS210の処理以降の処理と同じである。
(プログラム及び記録媒体)
なお、コンピュータに、実施の形態1、2、各変形例の伝搬シミュレーション装置の機能を実現させるためのプログラムは、コンピュータ読みとり可能な記録媒体に記録されることができる。このコンピュータ読みとり可能な記録媒体は、図10に示すように、例えば、ハードディスク100、フレキシブルディスク400、コンパクトディスク500、ICチップ600、カセットテープ700である。このようなプログラムを記録した記録媒体によれば、例えば、プログラムの保存、運搬、販売が容易に行われる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、受信機における到来方向分布の算出では、送信機と受信機との間の距離が考慮される。この結果、本発明では、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1のシミュレーションの前提を説明するための図である。
【図3】実施の形態1のシミュレーションの前提を説明するための図である。
【図4】実施の形態1の伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。
【図5】実施の形態1の変形例2の距離と角度広がりとの関係を示す図である。
【図6】実施の形態2の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。
【図7】実施の形態2の伝搬シミュレーションの前提となる移動通信システムを示す概念図である。
【図8】実施の形態2の伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。
【図9】実施の形態2の移動経過時間と、受信機及び送信機間の距離との関係の一例を示す図である。
【図10】本発明に係るプログラムを記録するコンピュータ読みとり可能な記録媒体を示す図である。
【符号の説明】
1 入力部、2 算出部、3 受信相関行列生成部、4 送信相関行列生成部、5 伝搬情報行列生成部、6 変化情報行列生成部、7 出力部、8 制御部、20 距離情報算出部、21 到来方向分布算出部、22 相関係数算出部、100 ハードディスク、400 フレキシブルディスク 500 コンパクトディスク、600 ICチップ、700 カセットテープ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無線通信システムにおける伝搬特性を設計評価する場合、コンピュータを用いたシミュレーション(無線通信における信号の伝搬に関するシミュレーション、以下、伝搬シミュレーションという)が行われている。この伝搬シミュレーションでは、例えば、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号の模擬が行われる。そして、このシミュレーション結果を用いて、無線通信システムの伝搬特性の設計評価が行われる。
【0003】
従来の伝搬シミュレーションは、例えば、以下のようにして行われる(非特許文献1,非特許文献2参照)。
【0004】
送信機に設けられる複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが伝搬シミュレーション装置に入力される。伝搬シミュレーション装置は、受信機における到来方向分布(又は到来波分布ともいう)を算出する。到来方向分布とは、例えば、受信機に到来する信号の方向を示す到来方向に対する受信レベルの分布を示す情報である。即ち、到来方向分布は、各到来方向に対して、受信機が受信する信号のレベルを示す情報である。
【0005】
伝搬シミュレーション装置は、算出した到来方向分布に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する。また、伝搬シミュレーション装置は、送信機における送信方向分布を算出する。伝搬シミュレーション装置は、算出した送信方向分布に基づいて、送信機に設けられた各送信アンテナ間の相関係数を算出する。
【0006】
伝搬シミュレーション装置は、送信機及び受信機を用いた無線通信における伝搬環境(例えば、レイリーフェージング現象が発生する伝搬環境)に関連する複数の伝搬情報を生成する。各伝搬情報とは、送信アンテナから受信アンテナへ送られる信号の伝搬に関する情報である。
【0007】
伝搬シミュレーション装置は、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数と、各伝搬情報と、入力された送信信号のデータとに基づいて、受信機に設けられる複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータ(模擬された受信信号のデータ)を出力する。
【0008】
【非特許文献1】
D.Chizhik,F.R.Farrokhi,J.Ling,A.Lozano,“Antenna Separation and Capacity of BLAST in Correlated Channels”
【0009】
【非特許文献2】
Lucent Technologies. Spatial channel model for MINO simulations. TSG_R WG1 document TSGR1#20(01)0582
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術では、以下のような問題があった。上述した従来技術では、受信機における到来方向分布の算出においては、送信機と受信機との間の距離が考慮されていなかった。しかし、各種の実験により、送信機及び受信機を用いた無線通信における実際の伝搬においては、受信機における到来方向分布は、上記距離に関連することが知られている。
【0011】
従って、従来の伝搬シミュレーションでは、受信機における到来方向分布の算出においては、送信機と受信機との間の距離が考慮されていなかったので、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬できないという問題があった。これにより、従来では、無線通信システム(例えば、移動通信システム)における伝搬特性の設計評価が適切に行えなかった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、受信機における到来方向分布の算出において、送信機と受信機との間の距離を考慮することにより、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することができる伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、プログラムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上の問題点を解決するために、本発明は、送信機から、無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する際に、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータを入力し、前記送信機と前記受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出し、前記到来方向分布に基づいて前記受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出し、前記無線通信における伝搬環境に関する情報と、前記送信機に設けられた送信アンテナの数と、前記受信機に設けられた受信アンテナの数と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、前記入力手段に前記送信信号のデータが入力されるごとに、生成し、入力された前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、前記受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記入力では、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、前記受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力され、前記算出では、各送信信号のデータごとに、前記受信機の移動に関する情報と、前記受信機と前記送信機との間の距離との関係を示す関係情報に基づいて、前記送信機と前記受信機との間の距離を算出し、前記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、前記1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記到来方向分布を算出し、前記出力では、前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。伝搬シミュレーション装置は、入力部1、算出部2、受信相関行列生成部3、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5、変化情報行列生成部6、出力部7、各部を制御する制御部8を有する。
【0016】
伝搬シミュレーション装置は、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号の模擬(伝搬シミュレーション)を行う。伝搬シミュレーションの前提は、以下のとおりである。送信機には、複数の送信アンテナが設けられているとともに、受信機には、複数の受信アンテナが設けられている。ここでは、送信アンテナ数は、N(Nは1以上の整数)であり、受信アンテナ数は、M(Mは1以上の整数)とする。また、ここでは、図2に示すように、受信アンテナの方向φrとは、例えば、受信アンテナアレイの方向に対して、受信アンテナアレイに到来する到来波の受信レベルが最大になる方向と定義される。
【0017】
同じく、送信アンテナの方向φtとは、例えば、送信アンテナアレイの方向に対して、送信アンテナアレイから送信される送信波の送信レベルが最大になる方向と定義される。
【0018】
また、所定の伝搬環境の下で、上記無線通信が行われることが前提となる。ここでいう伝搬環境とは、送信機と受信機との間の無線通信では、所定の現象が発生するような伝搬路が存在する環境のことをいう。例えば、受信機の移動を前提とする場合、伝搬環境とは、以下のような環境をいう。即ち、この場合の伝搬環境とは、送信機と受信機との間の無線通信では、例えば、レイリーフェージング現象(又は、周波数選択性フェージング現象、シャドウイングなど)が発生するような伝搬路が存在する環境のことをいう。
【0019】
入力部1には、送信機に設けられる複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが入力される。具体的な一例は、以下のとおりである。例えば、入力部1には、送信機に設けられた各送信アンテナ(送信アンテナ1、送信アンテナ2...送信アンテナN)から送信される送信信号のデータsj(j=1〜N)が入力される。即ち、入力部1には、送信アンテナ1から送信される送信信号のデータs1(シンボルデータ、例えば、1又は0)が入力され、送信アンテナ2から送信される送信信号のデータs2(シンボルデータ、例えば、1又は0)が入力され、..のようにして、各送信アンテナから送信される送信信号のデータsj(j=1〜N)が入力される。入力された複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータは、制御部8に送られる。制御部8は、送られてきた送信信号のデータに基づいて、以下の式で示される送信信号データ行列S(N行、1列)を生成し、保持する。
【0020】
【数1】
また、入力部1には、送信機と受信機との間の距離のデータ(以下、距離データd0という)が入力される。入力された距離データd0は、制御部8を介して算出部2に送られる。
【0021】
制御部8は、入力部1から送信信号のデータsj(j=1〜N)を取得した場合、各部(算出部2、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5)に対して、所定の指示信号(クロック信号)を送る。所定の指示信号とは、各部が行う処理を実行するように指示することを示す信号である。
【0022】
算出部2は、所定の指示信号を取得すると以下の処理を行う。算出部2は、送信機と受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出する。算出部2による処理の具体的な一例は、以下のとおりである。
【0023】
算出部2は、送信機と受信機との間の距離に関する所定の関係式を示す情報を複数保持している。具体的には、算出部2は、送信機から送信される電波の散乱半径rと、上記距離dと、受信機から見た上記電波の散乱の見込み角度αwと、の間の所定の関係式を示す情報を保持している。この所定の関係式を以下に示す。
【0024】
αw=arcsin(r/d)......(1)
この所定の関係式の導出方法については、文献(Y.MIURA,Y.ODA,K.TSUNEKAWA,M.HATA,“New Angular Profile Model for Urban Mobile Propagation Channels”,ISAP2000,Vol1.pp253−256,2000.)に記載されているので、上記導出方法の詳細説明は省略する。以下、上記文献を文献1という。
【0025】
また、送信機から送信された送信信号(送信電波)は、複数の伝搬経路を介して、受信機に到達することが知られている。即ち、受信機に到達する信号は、送信機から直接送られてくる直接波による信号と、送信機から障害物(建物など)を経由して送られてくる反射波、回折波、透過波による信号とがある。以下、送信機から障害物を経由して送られてくる伝搬時間の異なる複数の波を、マルチパスという。そして、算出部2は、マルチパスの受信レベルのピーク値Lbと、マルチパスの受信レベルと直接波の受信レベルとの差を示す値Ls(Lsは見通しがあるか否かに関連する情報)と、伝搬損失L(d)(L(d)は電波が距離dを伝搬したときの伝搬損失)との関係を示す所定の関係式を示す情報を保持している。
【0026】
Ls=L(d)/Lb......(2)
ここで、伝搬損失L(d)は、送信機と受信機との間の距離dに関する関数である(文献 M.HATA,“Empirical formula for propagation loss in land mobile radio service”,IEEE Trans.on Veh.Technol.,VT−29,No.3,pp.317−325,1980.参照)。以下、上記文献を文献2という。例えば、文献2の場合には、伝搬損失L(d)は、上記距離dの−3.5乗に依存する関数となっている。また、マルチパスの受信レベルのピーク値Lbは、例えば、自由空間伝搬損失Lf(d)を用いて、以下のような式で表すとする。
【0027】
Lb=a*Lf(d).......(3)
ここで、aは定数である。Lbの値は、例えば、Lf(d)(自由空間伝搬損失)から−20dBという値に設定される。なお、算出部2は、送信機から送信される電波の散乱半径rと、マルチパスの受信レベルのピーク値Lbと、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報とを保持している。
【0028】
そして、算出部2は、送られてきた距離データd0と、所定の関係式(1)とに基づいて、上記見込み角度αwを算出する。算出部2は、距離データd0と、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報と、に基づいて、伝搬損失L(d0)を算出する。また、算出部2は、送られてきた距離データd0と、所定の関係式(2)、(3)に基づいて、以下の所定の関係式を算出する。
【0029】
a*Lf(d)=L(d)/Ls......(4)
ここで、a*Lf(d)=Lbである。そして、算出部2は、距離データd0と、所定の関係式(4)と、算出した伝搬損失L(d0)と、に基づいて、a*Lf(d0)を算出する。
【0030】
算出部2は、算出した見込み角度αwと、算出した伝搬損失L(d0)と、算出したa*Lf(d0)と、受信アンテナアレイの方向に対する到来波の方向φr(図2参照)と、に基づいて、直接波による到来方向分布と、マルチパスによる到来方向分布とを算出する。
【0031】
なお、本実施の形態では、図3に示すように、到来波は送信機の方向φ0から到来すると仮定する。この場合、受信アンテナの方向φrは、受信アンテナアレイの方向に対する送信機の方向φ0に等しくなる。
【0032】
具体的な説明は、以下のとおりである。算出部2は、到来方向(到来方向の角度)αと、受信アンテナアレイの方向に対する到来波の方向(以下、中心方向という)φ0と、到来方向の角度の標準偏差α1と、伝搬損失L(d)と、直接波による到来方向分布Pr1(α)との関係を示す情報を保持している。上記関係の一例を以下の数式に示す。
【0033】
【数2】
同じく、算出部2は、到来方向の角度αと、中心方向φ0と、到来方向の角度の標準偏差α2と、aLf(d)(aLf(d)=Lb)と、マルチパスによる到来方向分布Pr2(α)との関係を示す情報を保持している。上記関係の一例を以下の数式に示す。
【0034】
【数3】
但し、Pr1(α)及びPr2(α)は、以下の関係式(4)を満たすとする。
【0035】
∫Pr1(α)dα=∫Pr2(α)dα......(4)
以下、Pr1(α)及びPr2(α)が上述のような式(〔数2〕、〔数3〕)で表せる理由を説明する。送信機から送信される電波は、散乱することが知られている。そして、送信機から送信された電波の受信レベルについては、以下のようなことがいえる。即ち、中心方向における受信レベルは、最も高く、中心方向から離れる方向における受信レベルは、低くなっていくといえる。
【0036】
このような考えに基づいて、マルチパスによる到来方向分布は、上記見込み角αwを標準偏差α2(α2=αw)とした場合のガウス分布に従うと近似される(文献R.B.Ertel and P.Cardieri,“Overview of Spatial Channel Models for Antenna Array Communication Systems”,IEEE Personal Communications,pp10−22,Feb.1998.参照)以下、上記文献を文献3という。
従って、マルチパスによる到来方向分布は、上述した数式〔数3〕で表される。上述した数式において、例えば、到来方向αが中心方向φ0である場合には、Pr2(φ0)=aLf(d0)である。数式(3)により、aLf(d0)は、Lb(マルチパスの受信レベルのピーク値)となる。
【0037】
同じように、直接波による到来方向分布は、中心方向からの信号の受信レベルが最も高くなるようなガウス分布に従うと近似される(文献3参照)。従って、直接波による到来方向分布は、上述した数式〔数2〕で表される。この際、標準偏差α1は、以下の式で表される。
【0038】
α1=αw/Ls.........(5)
この(5)式は、以下のようにして導出される。上述した(4)式を整理すると、以下の式が導き出される。
【0039】
1/{(2π)1/2*α1}=Ls/{(2π)1/2*αw}..(6)
この(6)式を整理すると、(5)式が導き出される。そして、算出部2は、〔数2〕に示す所定の関係式と数式(5)に基づいて、直接波による到来方向分布を算出する。同じく、算出部2は、〔数3〕に示す所定の関係式に基づいて、直接波による到来方向分布を算出する。
【0040】
算出部2は、マルチパスによる到来方向分布と、直接波による到来方向分布とに基づいて、全ての電波による到来方向分布を算出する。全ての電波による到来方向分布Pr(α)は、例えば、以下のような式(〔数4〕)で表される。
【0041】
【数4】
ここで、αaとαbは、数式Pr1(α)と数式Pr2(α)との交点である。また、定数bは、以下の数式を満たすための定数である。
【0042】
【数5】
全ての電波による到来方向分布が、上述の式(〔数4〕)で表せる理由は、以下のとおりである。文献1,2,3によれば、全ての電波による到来方向分布のモデルを算出する場合、中心方向付近では、直接波による到来方向分布を考慮し、中心方向から離れた方向では、マルチパスによる到来方向分布を考慮することにより、算出された全ての電波による到来方向分布は、実際の全ての電波による到来方向分布に近くなる。このため、全ての電波による到来方向分布が、上述の式で表せる。
【0043】
算出部2は、算出した全ての電波による到来方向分布Pr(α)と、波数Yと、受信アンテナ間隔hr,jkと、受信アンテナの方向φrと、受信機に到来する信号の方向である到来方向αと、に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数ρr,jkを算出する。具体的な説明は、以下のとおりである。
【0044】
算出部2は、波数Y(Y=2πf/c、fは周波数、cは光速度)と、受信アンテナ間隔hr,jk(j、k=1〜M)と、受信アンテナの方向φrと、を保持している。そして、算出部2は、保持している各種の情報と、算出した全ての電波による到来方向分布Pr(α)とに基づいて、以下の式(〔数6〕)で示される相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)を算出する。
【0045】
【数6】
算出部2は、各受信アンテナ間(例えば、受信アンテナ1と受信アンテナ2との間)の相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)を算出する。なお、受信アンテナjと受信アンテナkとの間の相関係数とは、受信アンテナjの出力複素振幅と、受信アンテナkの出力複素振幅との間の相関係数のことである。算出部2は、算出した各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)を、受信相関行列生成部3に送る。
【0046】
受信相関行列生成部3は、送られてきた各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)に基づいて、以下の式(〔数7〕)に示すような受信相関行列(M行、M列の行列)Crを生成する。
【0047】
【数7】
そして、受信相関行列生成部3は、生成した受信相関行列Crを変化情報行列生成部6に送る。
【0048】
送信相関行列生成部4は、制御部8から所定の指示信号を取得すると以下の処理を行う。送信相関行列生成部4は、送信機が送信する信号の方向を示す送信方向(α)に対する送信レベルの分布を示す送信方向分布(Pt(α))を算出する。この送信方向分布の算出方法は、公知技術であり、ここでは、詳細な説明は省略する。例えば、送信機に設けられた各送信アンテナが、無指向性アンテナであり、送信機から全方向において、電波が均等に送信される場合には、送信方向分布(Pt(α))は一様分布を示す。この場合、送信方向分布(P(α))は1/2πとなる。
【0049】
送信相関行列生成部4は、波数Y(Y=2πf/c、fは周波数、cは光速度)と、送信アンテナ間隔ht,jk(j、k=1〜M)と、送信アンテナの方向φtと、を保持している。そして、送信相関行列生成部4は、保持している情報と、送信方向分布Pt(α)に基づいて、以下の式(〔数8〕)で示される相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)を算出する。
【0050】
【数8】
送信相関行列生成部4は、算出した各相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)に基づいて、以下の式(〔数9〕)に示すような送信相関行列(N行、N列の行列)Ctを生成する。
【0051】
【数9】
そして、送信相関行列生成部4は、生成した送信相関行列Ctを変化情報行列生成部6に送る。
【0052】
伝搬情報行列生成部5は、制御部8から所定の指示信号を取得すると、以下の処理を行う。伝搬情報行列生成部5は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数(N)と、受信機に設けられた受信アンテナの数(M)とに基づいて、各送信アンテナから各受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報を複数生成する。伝搬情報行列生成部5による処理の一例の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0053】
伝搬情報行列生成部5は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数と、受信機に設けられた受信アンテナの数とを保持している。ここで、無線通信における伝搬環境に関する情報とは、例えば、以下のような情報である。
【0054】
送信機と受信機との間の無線通信における伝搬環境が、例えば、所定の現象(例えば、レイリーフェージング現象)が発生するような伝搬路が存在する環境である場合、伝搬環境に関する情報とは、例えば、受信機における受信レベルが上記所定の現象に関連する分布(例えば、レイリー分布)に従うための条件である。
【0055】
そして、伝搬情報行列生成部5は、例えば、受信機における受信レベルがレイリー分布に従うための条件に基づいて、送信アンテナから受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報を生成する。この伝搬に関する情報とは、例えば、伝搬遅延や伝搬損失に関連する情報である。伝搬情報行列生成部5は、送信アンテナ1から各受信アンテナ(1,2,..M)への信号の伝搬に関する情報を、各送信アンテナ(1,2..N)ごとに、生成する。このようにして、伝搬情報行列生成部5は、各送信アンテナから各受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報gjk(j=1〜N、k=1〜M)を生成する。例えば、伝搬に関する情報g12は、送信アンテナ1から受信アンテナ2への信号の伝搬に関する情報(伝搬遅延や伝搬損失に関する情報)である。
【0056】
この伝搬情報行列生成部5による伝搬に関する情報の生成方法の詳細な説明は、非特許文献1,2に記載されているので、ここでは、その詳細な説明は省略する。伝搬情報行列生成部5は、生成した伝搬に関する情報に基づいて、以下の式(〔数10〕)で示される伝搬情報行列Gを生成する。
【0057】
【数10】
伝搬情報行列生成部5は、生成した伝搬情報行列Gを変化情報行列生成部6に送る。
【0058】
変化情報行列生成部6は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数(N)と、受信機に設けられた受信アンテナの数(M)と、各受信アンテナ間の相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)と、各送信アンテナ間の相関係数ρt,jk(j、k=1〜N)とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、入力部1に送信信号のデータが入力されるごとに、生成する。そして、変化情報行列生成部6は、生成した複数の変化情報に基づいて、変化情報行列を生成する。具体的な説明は、以下のとおりである。
【0059】
変化情報行列生成部6は、送られてきた受信相関行列Crと、送信相関行列Ctと、伝搬情報行列Gとに基づいて、変化情報行列Zを生成する。変化情報行列生成部6は、例えば、コレスキー分解を用いて、受信相関行列Crの1/2乗、送信相関行列Ctの1/2乗を算出する。そして、変化情報行列生成部6は、受信相関行列Crの1/2乗と、伝搬情報行列Gと、送信相関行列Ctの1/2乗との行列積(Cr1/2*G*Ct1/2 )を計算することにより、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す変化情報zjk(j=1〜M、k=1〜N)を複数(N*Mの数)算出する(非特許文献2参照)。
【0060】
そして、変化情報行列生成部6は、複数の変化情報に基づいて、以下のような式(〔数11〕)の変化情報行列Z(行列積(Cr1/2*G*Ct1/2 ))を生成する。
【0061】
【数11】
ここで、zjkは、以下のような意味である。送信アンテナj(jは整数)から送信される信号のレベル(送信レベル)をQ1とする。上記信号が受信アンテナk(kは整数)に送られる。受信アンテナにおける上記信号のレベル(受信レベル)をQ2とする。zjkは、例えば、Q2/Q1で表される。変化情報行列生成部6は、生成した変化情報行列Gを制御部8に送る。
【0062】
なお、変化情報行列生成部6は、制御部8が所定の指示信号を各部に送るごとに、変化情報行列Gを生成するので、変化情報行列生成部6は、変化情報行列G(複数の変化情報)を、入力部1に送信信号のデータが入力されるごとに生成するといえる。
【0063】
出力部7は、入力された送信信号のデータと、複数の変化情報とに基づいて生成された、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する。この処理の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0064】
制御部8は、保持していた送信信号データ行列Sと、送られてきた変化情報行列Zとに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータrj(j=1〜M)を算出する。例えば、制御部8は、変化情報行列Zと送信信号データ行列Sとの積を算出することにより、各受信信号のデータrj(j=1〜M)を算出する。そして、制御部8は、各受信信号のデータrj(j=1〜M)に基づいて、受信信号データ行列Rを生成する。受信信号データ行列Rは、例えば、以下の式(〔数12〕)のように示される。
【0065】
【数12】
制御部8は、生成した受信信号データ行列Rに基づいて、各受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力部7に出力させる。例えば、出力部7は、各送信アンテナ(送信アンテナ1,2,..N)から送信される送信信号データ(s1,s2,s3,..sN)に対して、各受信アンテナ(受信アンテナ1,2,..M)に受信される受信信号データ(z11*s1+..+z1N*sN、z21*s1+..+z2N*sN、...、zM1*s1+..+zMN*sN)を出力する。この際、出力部7は、送信信号データ(s1,s2,s3,.sN)、各パラメータ(受信機と送信機との間の距離d0、受信アンテナの方向φr、送信アンテナの方向φtなどの情報)も出力してもよい。
【0066】
(伝搬シミュレーション方法)
図4は、上述した伝搬シミュレーション装置を用いた伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。
【0067】
入力部1には、送信機に設けられる複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが入力される。また、入力部1には、送信機と受信機との間の距離のデータ(以下、距離データd0という)が入力される(S10)。
【0068】
例えば、入力部1には、送信機に設けられた各送信アンテナ(送信アンテナ1、送信アンテナ2...送信アンテナN)から送信される送信信号のデータsj(j=1〜N)が入力される。入力された複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータは、制御部8に送られる。制御部8は、送られてきた送信信号のデータに基づいて、〔数1〕で示すような送信信号データ行列S(N行、1列)を生成し、保持する。また、入力された距離データd0は、制御部8を介して算出部2に送られる。
制御部8は、入力部1から送信信号のデータsj(j=1〜N)を取得した場合、各部(算出部2、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5)に対して、所定の指示信号(クロック信号)を送る(S20)。
【0069】
算出部2は、送信機と受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布Pr(α)を算出する(S30)。この算出処理の詳細な説明は、上述したとおりである。
【0070】
算出部2は、算出した到来方向分布Pr(α)と、波数Yと、受信アンテナ間隔hr,jkと、受信アンテナの方向φrと、受信機に到来する信号の方向である到来方向αと、に基づいて、受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数ρr,jkを算出する(S40)。この算出処理の詳細な説明は、上述したとおりである。算出された各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)は、受信相関行列生成部3に送られる。
【0071】
受信相関行列生成部3は、送られてきた各相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)に基づいて、(〔数7〕)に示すような受信相関行列(M行、M列の行列)Crを生成する(S50)。受信相関行列生成部3は、生成した受信相関行列Crを変化情報行列生成部6に送る。
【0072】
送信相関行列生成部4は、制御部8から所定の指示信号を取得すると以下の処理を行う。送信相関行列生成部4は、送信方向分布(Pt(α))を算出し、算出した送信方向分布に基づいて、各送信アンテナ間の相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)を算出する。送信相関行列生成部4は、算出した各相関係数ρt,jk(j、k=1〜M)に基づいて、(〔数9〕)に示すような送信相関行列(N行、N列の行列)Ctを生成する(S60)。送信相関行列生成部4は、生成した送信相関行列Ctを変化情報行列生成部6に送る。
【0073】
伝搬情報行列生成部5は、制御部8から所定の指示信号を取得すると、以下の処理を行う。伝搬情報行列生成部5は、無線通信における伝搬環境に関する情報と、送信機に設けられた送信アンテナの数(N)と、受信機に設けられた受信アンテナの数(M)とに基づいて、各送信アンテナから各受信アンテナへの信号の伝搬に関する情報を複数生成する。伝搬行列生成部は、生成した複数の伝搬に関する情報に基づいて、(〔数10〕)で示される伝搬情報行列Gを生成する(S70)。伝搬情報行列生成部5は、生成した伝搬情報行列Gを変化情報行列生成部6に送る。
【0074】
変化情報行列生成部6は、送られてきた受信相関行列Crと、送信相関行列Ctと、伝搬情報行列Gとに基づいて、変化情報行列Zを生成する(S80)。変化情報行列生成部6は、生成した変化情報行列Gを制御部8に送る。
【0075】
制御部8は、保持していた送信信号データ行列Sと、送られてきた変化情報行列Zとに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータrj(j=1〜M)を算出する。そして、制御部8は、各受信信号のデータrj(j=1〜M)に基づいて、受信信号データ行列Rを生成する(S90)。
【0076】
出力部7は、制御部8の指示に基づき、各受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する(S100)。例えば、出力部7は、各送信アンテナ(送信アンテナ1,2,..N)から送信される送信信号データ(s1,s2,s3,..sN)に対して、各受信アンテナ(受信アンテナ1,2,..M)に受信される受信信号データ(z11*s1+..+z1N*sN、z21*s1+..+z2N*sN、...、zM1*s1+..+zMN*sN)を出力する。
【0077】
(作用効果)
本実施の形態によれば、受信機における到来方向分布Pr(α)の算出は、送信機と受信機との間の距離dに関する所定の関係式(数式(1)(2)(3)(4)、〔数2〕、〔数3〕、〔数4〕など)に基づいて、行われる。このため、本実施の形態では、受信機における到来方向分布Pr(α)の算出においては、上記距離が考慮されるといえる。この結果、本実施の形態の伝搬シミュレーション装置は、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することができる。この伝搬シミュレーション装置によるシミュレーション結果を用いることで、無線通信システム(例えば、移動通信システム)における伝搬特性の設計評価を適切に行うことが可能となる。
【0078】
(変形例1)
上述した実施の形態1は、以下のように変形することができる。本変形例の伝搬シミュレーション装置は、各種のパラメータを入力するためのパラメータ入力部1(図示せず)を有する。例えば、作業者は、予め、パラメータ入力部1を用いて、送信機と受信機との間の距離のデータd0、中心方向(角度)φ0、送信機から送信される電波の散乱半径r、波数Y、受信アンテナ間隔hr,jk、受信アンテナの方向φr、送信アンテナ間隔ht,jk、送信アンテナの方向φt、マルチパスの受信レベルのピーク値Lb、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報、伝搬環境に関する情報、送信アンテナ数N及び受信アンテナ数M、を入力するようにしてもよい。
【0079】
パラメータ入力部1に入力された上記距離のデータd0、送信機から送信される電波の散乱半径r、マルチパスの受信レベルのピーク値Lb、伝搬損失L(d)とdとの関係を示す情報、中心方向φ0、波数Y、受信アンテナ間隔hr,jk、受信アンテナの方向φr、とは、算出部2に送られる。
【0080】
パラメータ入力部1に入力された波数Y、送信アンテナ間隔ht,jk、送信アンテナの方向φtは、送信相関行列生成部4に送られる。パラメータ入力部1に入力された伝搬環境に関する情報、送信アンテナ数N及び受信アンテナ数Mは、伝搬情報行列生成部5に送られる。
【0081】
これにより、各部(算出部2、受信相関行列生成部3、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列生成部5)が各処理を行うようにしてもよい。
【0082】
また、送信相関行列生成部4が生成する送信相関行列Ct、受信相関行列生成部3が生成する受信相関行列Crは 上記距離のデータが一定の場合には、一定になる。この場合には、以下のようにしてもよい。受信相関行列生成部3(送信相関行列生成部4)は、いったん生成した受信相関行列(送信相関行列)を保持する。
【0083】
算出部2は、所定の指示信号を取得すると、受信相関行列生成部3に送る。受信相関行列生成部3及び送信相関行列生成部4は、それぞれ、保持している受信相関行列、送信相関行列を変換情報行列生成部に送る。
【0084】
(変形例2)
実施の形態1の算出部2が行う処理は、以下のように変形されてもよい。予め、実験により、送信機と受信機との間の距離に対する角度広がり(アングルスプレッド)が計測されている(図5の実測値を参照)。この角度広がりとは、送信機から受信機に到来する電波(信号)の角度の広がりを示す値である。なお、本変形例でも、到来波は、送信機の方向φ0から到来すると仮定する。
【0085】
そして、予め、図5の実測値に基づいて、送信機と受信機との間の距離dと、角度広がりαvとの関係を示す所定の関係式(例えば、図5に示す実線部分、数式(7))が算出されている。
【0086】
αv=f(d)..........(7)
ここで、fは所定の関数を示す記号である。そして、この所定の関係式(数式(7))は、算出部2に保持される。
【0087】
また、本変形例では、算出部2は、到来方向の角度αと、中心方向の角度φ0と、角度広がりαvと、到来方向分布Pr(α)との関係を示す情報(以下の「数13〕に示す情報)を保持している。
【0088】
【数13】
上述したように、受信機に到来する受信信号の受信レベルは、中心方向では最も高く、中心方向から離れるに従って、低くなっていくといえる。このような考えに基づいて、受信機における到来方向分布Pr(α)は、上記角度広がりαvを、到来方向の標準偏差αas(αv=αas)とした場合のラプラス分布(一般的な統計分布)に従うと近似される(文献 K.I.Pedersen,P.E.Mogensen and B.H.Fleury,“Spatial Channel Charactcristics in Outdoor Environments and their Impact on BS Antenna System Performance”,VTC98,pp719−723,1998.参照,以下、この文献を文献4という)。従って、到来方向分布Pr(α)は、上述した数式(〔数13〕)で表される。
【0089】
そして、算出部2は、送られてきた距離データd0と、所定の関係式(7)とに基づいて、角度広がりαv(d0)を算出する。算出部2は、算出した角度広がりαv(d0)と、〔数13〕に示す所定の関係式とに基づいて、到来方向分布Pr(α)を算出する。この後、実施の形態1と同じようにして、受信アンテナ間の相関係数ρr,jk(j、k=1〜M)が算出される。
実施の形態2.
図6は、実施の形態2の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。図6において、図1と同一構成、機能については同一符号を付してその説明を省略する。実施の形態2の伝搬シミュレーション装置においては、実施の形態1の伝搬シミュレーション装置に対して、入力部1、算出部2、制御部8、出力部7の機能が以下のように異なる。算出部2は、距離情報算出部20と、到来方向分布算出部21と、相関係数算出部22とを有する。また、伝搬シミュレーション装置は、移動情報入力部(図示せず)、表示部(図示せず)を有する。
【0090】
図7は、実施の形態2の伝搬シミュレーションの前提となる移動通信システムを示す概念図である。図7に示すように、送信機は、特定位置に固定されており、例えば、基地局が該当する。受信機は、移動しており、例えば、移動端末が該当する。例えば、基地局が管轄するサービスエリアの半径を5kmとし、移動端末が基地局から1kmの位置から、エリア端に向けて時速40kmで移動する。この場合には、基地局と移動端末との間の距離は、移動時間の経過に従い、変化する。そして、本実施の形態では、受信機が移動中の場合、送信機から時系列で、送信信号データを上記受信機に送信する場合、受信機に時系列で到来する受信信号のデータの傾向が模擬される。
【0091】
以下、本実施の形態の伝搬シミュレーション装置を用いた伝搬シミュレーション方法の説明を行う。図8は、本実施の形態の伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。なお、実施の形態1の伝搬シミュレーション方法における処理と同一処理については、その説明を省略する。
【0092】
先ず、移動情報入力部には、受信機の移動に関する情報と、受信機と送信機との間の距離と、の関係を示す関係情報が、例えば、予め、入力される。この受信機の移動に関する情報とは、例えば、受信機が移動を開始してから経過する時間(以下、移動経過時間という)である。但し、受信機の移動に関する情報は、上記移動経過時間に限定されない。また、上記関係情報とは、例えば、上記移動経過時間に対する距離(受信機と送信機との間の距離)との関係を示す情報である。関係情報の一例を図9に示す。入力された上記関係情報は、制御部8を介して、距離情報算出部20に送られる。距離情報算出部20は、上記関係情報を保持する。
【0093】
入力部1には、送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力される(S200)。入力部1の処理の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0094】
ここでは、例えば、受信機の移動に関する情報が、受信機が移動を開始してから経過する時間である移動経過時間である場合を考える。制御部8は、受信機が移動を開始してから経過する時間を計測する機能を有する。そして、制御部8は、表示部に、上記移動経過時間を表示させる。
【0095】
作業者は、表示部による表示に基づいて、送信信号のデータを、移動経過時間と関連づけて、複数入力する。例えば、表示部が、移動経過時間が時間t1であることを表示した時点で、作業者により、入力部1に、送信信号のデータsj(t1)(j=1〜N)が入力される。同じく、表示部が、移動経過時間が時間t2であることを表示した時点で、作業者により、入力部1に、送信信号のデータsj(t2)(j=1〜N)が入力される。なお、作業者によらず、自動的に、表示部による表示に基づいて、送信信号のデータが、移動経過時間と関連づけて、複数入力されてもよい。このようにして、入力部1には、送信信号のデータが、上記移動経過時間(t1、t2..)と関連づけて、複数(sj(t1)、sj(t2)...)入力される。
【0096】
入力された各送信信号のデータ(sj(t1)(j=1〜N)、sj(t2)(j=1〜N)....)は、制御部8に送られる。制御部8は、各送信信号のデータに対して、それぞれ、上記移動経過時間(各送信信号のデータに関連する移動経過時間)を示す情報を与える。例えば、制御部8は、入力された送信信号のデータsj(t1)(j=1〜N)に対して、移動経過時間を示す情報t1を与える。同様にして、制御部8は、入力された送信信号のデータsj(tp)(j=1〜N)に対して、移動経過時間を示す情報tp(pは整数)を与える。各送信信号のデータに与えられた上記移動経過時間(t1、t2、....)を示す情報は、距離情報算出部20に送られる。なお、各送信信号のデータは、制御部8に送信信号データ行列として、保持される。この際、各送信信号データ行列S(t1)、S(t2)....は、それぞれ、移動経過時間t1,t2...に対応づけられる。
【0097】
制御部8は、上述した所定の指示信号を、距離情報算出部20、送信相関行列生成部4、伝搬情報行列に送る(S210)。この際、指示信号は、移動経過時間を示す情報が対応づけられている。
【0098】
距離情報算出部20は、送信信号のデータごとに、受信機の移動に関する情報と、受信機と送信機との間の距離との関係を示す関係情報とに基づいて、送信機と受信機との間の距離を算出する(S220)。具体的な算出処理の一例は、以下のとおりである。
【0099】
例えば、距離情報算出部20には、所定の指示信号とともに、送信信号のデータsj(t1)(j=1〜N)に対応する移動経過時間t1を示す情報が送られる。距離情報算出部20は、保持している関係情報に基づいて、以下の処理を行う。例えば、関係情報が図9に示すような情報である場合、距離情報算出部20は、関係情報に基づいて、移動経過時間t1に対応する距離(送信機と受信機との間の距離)d1を算出する。
【0100】
その後、距離情報算出部20には、所定の指示信号とともに、送信信号のデータsj(t2)(j=1〜N)に対応する移動経過時間t2を示す情報が送られる。距離情報算出部20は、保持している関係情報に基づいて、以下の処理を行う。例えば、関係情報が図9に示すような情報である場合、距離情報算出部20は、関係情報に基づいて、移動経過時間t2に対応する距離(送信機と受信機との間の距離)d2を算出する。このようにして、距離情報算出部20は、送信信号のデータ(sj(t1)、sj(t2)...(j=1〜N))ごとに、送信機と受信機との間の距離(d1,d2,....)を算出する。距離情報算出部20により、算出された各距離d1、d2...は、到来方向分布算出部21に送られる。この際、各距離d1、d2...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0101】
到来方向分布算出部21は、算出された距離d1、d2...ごとに、上記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、上記1又は複数の所定の関係式に基づいて、到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)を算出する(S230)。具体的には、例えば、到来方向分布算出部21は、移動経過時間t1に関連する距離d1における到来方向分布Pr(α)を算出する。その後、到来方向分布算出部21は、移動経過時間t2に関連する距離d2における到来方向分布Pr(α)を算出する。このようにして、到来方向分布算出部21は、移動経過時間tp(pは整数)に関連する距離dpにおける到来方向分布Pr(α)(以下、このPr(α)をPr(α、tp)という)を算出する。なお、到来方向分布算出部21における算出処理は、実施の形態1,変形例で示した処理により行われる。算出された到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)は、相関係数算出部22に送られる。この際、各到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0102】
相関係数算出部22は、各到来方向分布(Pr(α、t1)、Pr(α、t2)...)ごとに、各受信アンテナ間の相関係数を算出する(S240)。具体的には、相関係数算出部22は、到来方向分布Pr(α、t1)に基づいて、各受信アンテナ間の相関係数ρjk(j、k=1〜N)を算出する。その後、相関係数算出部22は、到来方向分布Pr(α、t2)に基づいて、各受信アンテナ間の相関係数ρjk(j、k=1〜N)を算出する。このようにして、相関係数算出部22は、到来方向分布Pr(α、tp)(pは整数)ごと、各受信アンテナ間の相関係数ρjk(j,k=1〜N)(以下、このρjkをρjk(tp)という)を算出する。算出された各受信アンテナ間の相関係数ρjk(t1)、ρjk(t2)...は、受信相関行列生成部3に送られる。この際、相関係数ρjk(t1)、ρjk(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0103】
受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数ρjk(t1)(j,k=1〜N)に基づいて、〔数7〕のような受信相関行列Crを生成する。その後、受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数ρjk(t2)(j,k=1〜N)に基づいて、〔数7〕のような受信相関行列Crを生成する。このようにして、受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数ρjk(tp)(j,k=1〜N)に基づいて、〔数7〕のような受信相関行列Cr(以下、Cr(tp)という)を生成する。このようにして、受信相関行列生成部3は、送られてきた相関係数(ρjk(t2)、ρjk(t2)...ごとに、受信相関行列Cr(t1)、Cr(t2)、...を生成する(S250)。この際、受信相関行列Cr(t1)、Cr(t2)..は、それぞれ移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0104】
送信相関行列生成部4は、制御部8から所定の指示信号を取得するごとに、送信相関行列Ct(tp)(tpは移動経過時間、pは整数)を生成する(S260)。この処理は、実施の形態1と同じである。この際、送信相関行列Ct(t1)、Ct(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。また、伝搬情報行列生成部5は、制御部8から所定の指示信号を取得するごとに、伝搬情報行列G(tp)(tpは移動経過時間、pは整数)を生成する(S270)。この処理は、実施の形態1と同じである。この際、伝搬情報行列G(t1)、G(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0105】
変化情報行列生成部6は、各送信信号のデータごとに、送られてきた受信相関行列と、送信相関行列と、伝搬情報行列とに基づいて、変化情報行列を複数、生成する(S290)。例えば、移動経過時間t1と関係する所定の指示信号が制御部8から各部に送られた場合に、受信相関行列Cr(t1)と、送信相関行列Ct(t1)と、伝搬情報行列G(t1)が生成されたとする。この場合には、変化情報行列生成部6は、受信相関行列Cr(t1)と、送信相関行列Ct(t1)と、伝搬情報行列G(t1)とに基づいて、変化情報行列Z(t1)を算出する。
【0106】
その後、移動経過時間t2と関係する所定の指示信号が制御部8から各部に送られた場合に、受信相関行列Cr(t2)と、送信相関行列Ct(t2)と、伝搬情報行列G(t2)が生成されたとする。この場合には、変化情報行列生成部6は、受信相関行列Cr(t2)と、送信相関行列Ct(t2)と、伝搬情報行列G(t2)とに基づいて、変化情報行列Z(t2)を算出する。
【0107】
このようにして、変化情報行列生成部6は、各送信信号のデータと関連する移動経過時間ごとに、変化情報行列Z(t1)、Z(t2)...を生成する。生成された各変化情報行列は、制御部8に送られる。この際、変化情報行列Z(t1)、Z(t2)...は、それぞれ、移動経過時間t1、t2...に対応づけられている。
【0108】
出力部7は、制御部8の指示に基づいて、送信信号のデータと、複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力する(S300)。
【0109】
この処理の具体的な説明の一例は、以下のとおりである。上述したように、制御部8は、各送信信号データ行列(S(t1)、S(t2).)を、移動経過時間t1、t2..と対応づけて、保持している。そして、制御部8に、変化情報行列Z(t1)が送られた場合、例えば、移動経過時間t1と対応づけられた送信信号データ行列S(t1)と、変化情報行列Z(t1)とに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号データ行列R(t1)を生成する。
【0110】
その後、制御部8に、例えば、変化情報行列Z(t2)が送られた場合、例えば、移動経過時間t2と対応づけられた送信信号データ行列S(t2)と、変化情報行列Z(t2)とに基づいて、受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号データ行列R(t2)を生成する。このようにして、制御部8は、複数の受信信号データ行列R(t1)、R(t2)...を生成する。生成された各受信信号データ行列R(t1)、R(t2)...は、出力部7に送られる。この際、各受信信号データ行列R(t1)、R(t2)..は、移動経過時間t1,t2..と対応づけられる。
【0111】
出力部7は、各移動経過時間(t1、t2、..)及び送信信号データ(sj(t1)、Si(t2)...j=1〜N)と、受信信号データ(rj(t1)、Ri(t2)...j=1〜M)とを出力する。
【0112】
これにより、例えば、受信機が移動を開始してから経過する時間(t1、t2、..)ごとに、移動中の受信機に対して送信する信号のデータ(sj(t1)、Si(t2)...j=1〜N)が入力された場合、受信機が移動を開始してから経過する時間ごとに、受信機に到来する受信信号のデータ(rj(t1)、Si(t2)...j=1〜M)が、シミュレーション結果として、出力される。
【0113】
(作用効果)
受信機が移動中の場合、例えば、送信機から時系列で、送信信号データを上記受信機に送信した場合、受信機に時系列で到来する受信信号のデータの傾向がどのようなものであるかを示す情報が必要な場合がある。この際、送信機と受信機との間の距離は、受信機による移動時間の経過に従い、変化するので、受信機における到来方向分布も変化することになる。本実施の形態では、距離情報算出部20は、送信機が送信信号データを上記受信機に送信する各時点ごとに、送信機と受信機との間の距離を算出することができる。そして、この算出した距離を用いて、到来方向算出部2は、上記各時点ごとに、受信機における到来方向分布を算出することができる。このため、本実施の形態では、送信機と受信機との間の距離が、受信機による移動時間の経過に従い、変化した場合でも、受信機における到来方向分布を正確に算出することができるといえる。
【0114】
この結果、受信機が移動中の場合、例えば、送信機から時系列で、送信信号データを上記受信機に送信した場合、伝搬シミュレーション装置は、受信機に時系列で到来する受信信号のデータの傾向を正確に算出することが可能となる。
【0115】
(変形例)
実施の形態2においても、実施の形態1の変形例2が同様に適用できる。また、入力部1には、以下のようにして、送信信号のデータが、受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力されてもよい。変形例の入力部1の処理の具体的な説明は、以下のとおりである。ここでは、例えば、受信機の移動に関する情報が、受信機が移動を開始してから経過する時間である移動経過時間である場合を考える。
【0116】
入力部1には、複数の送信信号のデータが、移動経過時間を示す情報と対応づけて入力される。例えば、入力部1には、送信信号のデータsj(t1),(j=1〜N)が移動経過時間t1と対応づけて入力される。同じく、入力部1には、送信信号のデータsj(t2),(j=1〜N)が移動経過時間t2と対応づけて入力される。このようにして、入力部1には、複数の送信信号のデータ(sj(t1)、sj(t2)、.....)が、移動経過時間を示す情報(t1、t2..)と対応づけて入力される。そして、各送信信号のデータに対応づけられた上記移動経過時間(t1、t2、t3....)を示す情報は、距離情報算出部20に送られる。以降の処理は、実施の形態2のS210の処理以降の処理と同じである。
(プログラム及び記録媒体)
なお、コンピュータに、実施の形態1、2、各変形例の伝搬シミュレーション装置の機能を実現させるためのプログラムは、コンピュータ読みとり可能な記録媒体に記録されることができる。このコンピュータ読みとり可能な記録媒体は、図10に示すように、例えば、ハードディスク100、フレキシブルディスク400、コンパクトディスク500、ICチップ600、カセットテープ700である。このようなプログラムを記録した記録媒体によれば、例えば、プログラムの保存、運搬、販売が容易に行われる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、受信機における到来方向分布の算出では、送信機と受信機との間の距離が考慮される。この結果、本発明では、送信機から無線通信を介して受信機に到来する信号を正確に模擬することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1のシミュレーションの前提を説明するための図である。
【図3】実施の形態1のシミュレーションの前提を説明するための図である。
【図4】実施の形態1の伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。
【図5】実施の形態1の変形例2の距離と角度広がりとの関係を示す図である。
【図6】実施の形態2の伝搬シミュレーション装置の構成を示す図である。
【図7】実施の形態2の伝搬シミュレーションの前提となる移動通信システムを示す概念図である。
【図8】実施の形態2の伝搬シミュレーション方法を説明するためのフローチャート図である。
【図9】実施の形態2の移動経過時間と、受信機及び送信機間の距離との関係の一例を示す図である。
【図10】本発明に係るプログラムを記録するコンピュータ読みとり可能な記録媒体を示す図である。
【符号の説明】
1 入力部、2 算出部、3 受信相関行列生成部、4 送信相関行列生成部、5 伝搬情報行列生成部、6 変化情報行列生成部、7 出力部、8 制御部、20 距離情報算出部、21 到来方向分布算出部、22 相関係数算出部、100 ハードディスク、400 フレキシブルディスク 500 コンパクトディスク、600 ICチップ、700 カセットテープ。
Claims (6)
- 送信機から、無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する伝搬シミュレーション装置であって、
前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータが入力される入力手段と、
前記送信機と前記受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出し、前記到来方向分布に基づいて前記受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する算出手段と、
前記無線通信における伝搬環境に関する情報と、前記送信機に設けられた送信アンテナの数と、前記受信機に設けられた受信アンテナの数と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、前記入力手段に前記送信信号のデータが入力されるごとに、生成する生成手段と、
入力された前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、前記受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する出力手段とを有することを特徴とする伝搬シミュレーション装置。 - 前記入力手段には、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、前記受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力され、
前記算出手段は、各送信信号のデータごとに、前記受信機の移動に関する情報と、前記受信機と前記送信機との間の距離との関係を示す関係情報に基づいて、前記送信機と前記受信機との間の距離を算出し、前記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、前記1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記到来方向分布を算出し、
前記出力手段は、前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力することを特徴とする請求項1に記載の伝搬シミュレーション装置。 - 送信機から、無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する伝搬シミュレーション方法であって、
前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータを入力する入力ステップと、
前記送信機と前記受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出し、前記到来方向分布に基づいて前記受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する算出ステップと、
前記無線通信における伝搬環境に関する情報と、前記送信機に設けられた送信アンテナの数と、前記受信機に設けられた受信アンテナの数と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、前記入力手段に前記送信信号のデータが入力されるごとに、生成するステップと、
入力された前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、前記受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する出力ステップとを有することを特徴とする伝搬シミュレーション方法。 - 前記入力ステップでは、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、前記受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力され、
前記算出ステップでは、各送信信号のデータごとに、前記受信機の移動に関する情報と、前記受信機と前記送信機との間の距離との関係を示す関係情報に基づいて、前記送信機と前記受信機との間の距離を算出し、前記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、前記1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記到来方向分布を算出し、
前記出力ステップでは、前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力することを特徴とする請求項3に記載の伝搬シミュレーション方法。 - 送信機から、無線通信を介して受信機に到来する信号を模擬する伝搬シミュレーション装置を制御するプログラムであって、
前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから送信される送信信号のデータを入力する入力ステップと、
前記送信機と前記受信機との間の距離に関する、1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記受信機に到来する信号の方向である到来方向に対する受信レベルの分布を示す到来方向分布を算出し、前記到来方向分布に基づいて前記受信機に設けられた各受信アンテナ間の相関係数を算出する算出ステップと、
前記無線通信における伝搬環境に関する情報と、前記送信機に設けられた送信アンテナの数と、前記受信機に設けられた受信アンテナの数と、各受信アンテナ間の相関係数と、各送信アンテナ間の相関係数とに基づいて、各送信アンテナからの送信信号に対する各受信アンテナにおける受信信号の変化を示す複数の変化情報を、前記入力手段に前記送信信号のデータが入力されるごとに、生成するステップと、
入力された前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、前記受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを出力する出力ステップとを有する処理を、コンピュータに実行させるためのプログラム。 - 前記入力ステップでは、前記送信機に設けられた複数の送信アンテナから移動中の受信機に対して送信される送信信号のデータが、前記受信機の移動に関する情報と関連して、複数入力され、
前記算出ステップでは、各送信信号のデータごとに、前記受信機の移動に関する情報と、前記受信機と前記送信機との間の距離との関係を示す関係情報に基づいて、前記送信機と前記受信機との間の距離を算出し、前記距離に関する1又は複数の所定の関係式を算出し、前記1又は複数の所定の関係式に基づいて、前記到来方向分布を算出し、
前記出力ステップでは、前記送信信号のデータと、前記複数の変化情報とに基づいて生成された、移動中の受信機に設けられた複数の受信アンテナに到来する受信信号のデータを、各送信信号のデータごとに、出力することを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
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- 2003-02-13 JP JP2003035744A patent/JP2004247971A/ja active Pending
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