JP3817558B2 - フェージングシミュレータ - Google Patents

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Description

本発明は、3次元モデルを用いて伝搬環境を模擬するフェージングシミュレータに関する。
フェージングシミュレータは、送信機と受信機との間にケーブルを接続して使用し、実際の通信環境の時空間特性を模擬的に作り出す装置である。このフェージングシミュレータにおいて、実際の通信環境をシミュレーションするときに重要になるのが伝搬モデルである。従来のフェージングシミュレータでは、一般化した伝搬モデル式を用いて距離に対する時間変動により受信レベル変動を生成し、統計的なモデルを使用してマルチパスの発生確率、各パスのレベルを決定している。そして、フェージングシミュレータ内で確率論的に伝搬チャネルを変化させることにより、時間の進行に伴ってフェージング状態を変化させている。なお、伝搬チャネルとは、電波が通る経路(パス)のことであり、複数の伝搬チャネルが互いにうち消し合ったり、足し合わさったりすることによりフェージング現象が起こる。
ところで、移動体通信の分野では、第三世代携帯電話サービスが始まり、収容数や加入者数に対するデータ伝送速度が大幅に改善された。これは、周波数拡散技術を用いたアクセス技術の導入により広帯域伝送時の時間軸を有効に利用できるようになったためである。
現在、次の段階として多重電波伝搬の空間軸を有効に利用するアレーアンテナやMIMO(Multi-Input Multi-Output)等の複数のアンテナ素子を使用する技術を用いたシステム開発が盛んである。このようなシステムに対応するためには、時間に対する受信電力の変動だけではなく、各経路を正確に再現するために空間を表現する必要があるため、従来の時間ドメイン、受信電力ドメインの2つのドメインで表現するモデルでは機能的に不十分である。
そこで、電波の往来を立体的に表現することができ、実際の3次元地図から絶対的に伝搬チャネルを決定することができる3次元モデルを用いたフェージングシミュレータの開発が期待されている。
複数のアンテナ素子を使用するシステムのシミュレートを行う場合、入力信号をアンテナエレメント数分に分配し、それぞれマルチパス化した上で各アンテナエレメントへ信号を伝送する。
ここで、周波数が高い1つのアナログ信号を複数に分配するには、アナログ回路で行った方がディジタル回路で行うよりも簡単で、コスト的にも有利であることから、従来はアナログ方式により分配・合成を行っている。
特開2002−333459号公報
しかしながら、アナログ方式により分配・合成を行うと、信号が劣化してしまうという問題、アンテナ素子数の拡張を容易に行うことができないという問題がある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、周波数が高い1つの信号の分配・合成を容易に、かつ、信号を劣化させずに行うことができる3次元モデルを用いたフェージングシミュレータを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明は、伝搬モデル生成装置によって生成された3次元モデルのパラメータを用いて伝搬環境のシミュレーションを行うフェージングシミュレータであって、カスケード接続され入力信号を分配する複数の入力インターフェース手段と、受信電力、遅延時間及び位相のパラメータに基づいて前記各入力インターフェース手段を通過した入力信号に空間マルチパスを付加する複数のフェージング生成手段と、カスケード接続され前記各フェージング生成手段の出力信号を合成する複数の出力インターフェース手段と、を具備する構成を採る。
本発明によれば、カスケード接続により、高速ディジタル信号の分配・合成を行うことができるので、周波数が高い1つの信号の分配・合成を容易に、かつ、信号を劣化させずに行うことができ、アンテナ素子数の拡張を容易に行うことができる。
本発明の骨子は、各チャネルのフェージング回路をカスケード接続し、入力信号の分配及びフェージング回路の出力信号の合成を行うことである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係るフェージングシミュレータを含むシステム構成図である。
伝搬モデル生成装置100は、空間モデルを生成し、空間モデルのパラメータをフェージングシミュレータ200に出力する。フェージングシミュレータ200は、空間モデルのパラメータを使用して実際の通信環境の時空間特性を模擬的に作り出し、移動機300から出力された信号に空間マルチパスを付加してアレーアンテナを有する基地局400に出力する。
次に、伝搬モデル生成装置100の構成について、図2のブロック図を用いて説明する。伝搬モデル生成装置100は、3次元地図データ生成部101と、伝搬環境構築部102と、チャネルインパルスレスポンス取得部103と、時空間プロファイル生成部104と、パラメータ算出部105とから主に構成される。
3次元地図データ生成部101は、実際のフィールドの地図・建物情報等の2次元の住宅地図データと標高メッシュデータとを用いて3次元の地図データを生成する。伝搬環境構築部102は、3次元の地図データと基地局データとを用いて基地局における伝搬環境を構築する。
チャネルインパルスレスポンス取得部103は、移動機の走行ルートのデータを入力し、伝搬環境構築部102にて構築された伝搬環境から、受信電界強度、遅延プロファイル等の推定パラメータと到来角度(Angle Of Arrival)、送信角度(Angle Of Departure)の推定を行い、当該基地局受信機のチャネルインパルスレスポンスを取得する。
時空間プロファイル生成部104は、移動機のスピードのデータを入力し、チャネルインパルスレスポンスと到来角度との合成により移動機の走行ルート上の基地局における時空間遅延プロファイルを生成する。
パラメータ算出部105は、時空間遅延プロファイルを用いて、基地局受信機に到達した素波(レイ)の各種パラメータ(受信電力、遅延時間、水平方向到来角度、垂直方向到来角度)を取得し、フェージングシミュレータ200に出力する。
次に、伝搬モデル生成装置100における処理手順について説明する。
まず、伝搬モデル生成装置100は、実際のフィールドの地図・建物情報を用いて、環境データ(3次元の都市データ)を作成する。なお、この環境データには、各障害物の材質毎に複素誘電率が設定される。
次に、伝搬モデル生成装置100は、レイトレーシング法により、環境データを使って、受信電界強度、遅延プロファイル等の推定パラメータと到来角度、送信角度の推定を行い、当該基地局受信機のチャネルインパルスレスポンスを取得する。
なお、レイトレーシング法の代表的なものに、ラウンチング法(launching-method)とイメージ法(Imaging-method)がある。ラウンチング法は、電波の経路を探索するために送信機からΔθで素波(レイ)を離散的に放射し、障害物で反射、透過、回折を繰り返しながら受信機をトレースする方法である。イメージ法は、全ての送信機の虚像を作って電波の経路を探索する方法である。イメージ法は、厳密な探索ができる反面、障害物が増えると指数関数的に探索する経路の組み合わせが増えてしまうため、室内などの比較的狭いエリアを評価するモデルとして使われる。ラウンチング法は、離散角度の広がりによる障害物探索(トレース)の不確かさは増えるが、高速化の工夫がし易い。
レイトレーシング法では、受信電力が受信機の近傍に到着した全てのレイの総和で導出され、到着したレイの経路が明確なため遅延時間が経路長から導出される。これらの結果として、当該受信機のチャネルインパルスレスポンスを取得することができる。なお、電波の振る舞いの推定精度を決める最大のポイントは3次元地図データである。一般に3次元地図データを広範囲に作ることは困難であるが、発明者は、住宅地図から自動的に任意の地域を3次元化することができるソフトウェアを開発した。
次に、伝搬モデル生成装置100は、チャネルインパルスレスポンスと到来角度との合成により移動機の走行ルート上の基地局における時空間遅延プロファイルを生成する。なお、時空間遅延プロファイルの集合がフェージングシミュレータの空間モデルとなる。
次に、伝搬モデル生成装置100は、時空間遅延プロファイルを用いて、基地局受信機に到達した素波(レイ)の各種パラメータ(受信電力、遅延時間、水平方向到来角度、垂直方向到来角度)を取得し、フェージングシミュレータ200に出力する。
以上が、伝搬モデル生成装置100における処理手順の説明である。
次に、フェージングシミュレータ200の構成について、図3のブロック図を用いて説明する。フェージングシミュレータ200は、アンテナ素子数分のインターフェース部201と、アンテナ素子数分のフェージング回路202と、アンテナ素子数分のインターフェース部203とから主に構成される。
各インターフェース部201は、カスケード接続され、入力信号を分配し、フェージング回路202に出力する。フェージング回路202は、伝搬モデル生成装置100から出力された伝搬環境を表す各パラメータに基づいて、伝搬チャネルのフェージング状態を生成し、前記各入力インターフェース手段を通過した入力信号に空間マルチパスを付加する。各インターフェース部203は、カスケード接続され、各フェージング回路202の出力信号を合成する。これにより、実際の通信環境の時空間特性を模擬的に作り出すことができる。
以下、フェージング回路202の構成について図4を用いて説明する。図4は、1つのフェージング回路202の構成を示す図である。各フェージング回路202は、インターフェース部301と、パス発生回路302と、合成器303とから主に構成される。
各インターフェース部301は、カスケード接続され、入力信号を分配し、パス発生回路302に出力する。パス発生回路302は、伝搬モデル生成装置100から出力された伝搬環境を表す各パラメータに基づいて、インターフェース部301を通過した入力信号をマルチパス化し、それぞれのパスに対して位相回転とレベル制御を行う。合成器303は、各パス発生回路302の出力信号を合成する。
このように、本実施の形態によれば、カスケード接続により、高速ディジタル信号の分配・合成を行うことができるので、周波数が高い1つの信号の分配・合成を容易に、かつ、信号を劣化させずに行うことができる。さらに、単体では1入力1出力の標準機器として動作するユニットを追加することにより、アレーアンテナ対応の時空間フェージングシミュレータとしてアンテナ素子数を容易に拡張することができる。
本発明は、空間再現能力により複数のアンテナ素子を使用する装置を用いて無線通信を行う移動体通信システムの開発に用いるに好適である。また、本発明は、地域特性の再現、任意の走行速度による伝搬環境の再現が可能であり、新しい移動体通信の開発に用いるに好適である。
本発明の一実施の形態に係るフェージングシミュレータを含むシステム構成を示す図 上記実施の形態に係る伝搬モデル生成装置の構成を示すブロック図 上記実施の形態に係るフェージングシミュレータの構成を示すブロック図 上記実施の形態に係るフェージングシミュレータのフェージング回路の構成を示す図
符号の説明
100 伝搬モデル生成装置
101 3次元地図データ生成部
102 伝搬環境構築部
103 チャネルインパルスレスポンス取得部
104 時空間プロファイル生成部
105 パラメータ算出部
200 フェージングシミュレータ
201、203、301 インターフェース部
202 フェージング回路
302 パス発生回路
303 合成器

Claims (3)

  1. 伝搬モデル生成装置によって生成された3次元モデルのパラメータを用いて伝搬環境のシミュレーションを行うフェージングシミュレータであって、
    カスケード接続され、入力信号を分配する複数の入力インターフェース手段と、
    受信電力、遅延時間及び位相のパラメータに基づいて前記各入力インターフェース手段を通過した入力信号に空間マルチパスを付加する複数のフェージング生成手段と、
    カスケード接続され前記各フェージング生成手段の出力信号を合成する複数の出力インターフェース手段と、を具備することを特徴とするフェージングシミュレータ。
  2. 3次元モデルを生成する伝搬モデル生成装置であって、
    3次元地図データを用いて時空間プロファイルを生成する時空間プロファイル生成手段と、請求項1記載のフェージングシミュレータにて使用される伝搬チャネルを表すパラメータを前記時空間プロファイルを用いて算出するパラメータ算出手段と、を具備することを特徴とする伝搬モデル生成装置。
  3. 3次元地図データを用いて伝搬チャネルを決定し、伝搬チャネルを表すパラメータを算出する伝搬モデル生成装置と、
    前記パラメータを用いて入力信号に空間マルチパスを付加するフェージング生成回路を複数有し、前記複数のフェージング生成回路をカスケード接続するフェージングシミュレータと、を具備することを特徴とするフェージングシミュレーションシステム。
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