JP2004247682A - 半導体積層構造及びそれを備えた半導体装置 - Google Patents

半導体積層構造及びそれを備えた半導体装置 Download PDF

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慎吾 榊原
Hiroshi Fujiyasu
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Abstract

【課題】半導体層の結晶性が向上し、最上部層のキャリア濃度が高まり、膜厚が薄くなり、したがって、寿命特性が向上し、動作時の抵抗が小さくなり、消費電力が低下し、素子の小型化が可能な半導体積層構造及びそれを備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の半導体積層構造は、P型基板11上に、III族窒化物系半導体のバッファ層12、P型のGaN系半導体のコンタクト層13、P型のAlGaN系半導体の下部クラッド層14、InGaN系半導体の多重量子井戸構造(MQW)の活性層15、N型のAlGaN系半導体の上部クラッド層16、N型のGaN系半導体のコンタクト層17を順次積層して半導体積層構造20とし、コンタクト層17上にN型電極18を、P型基板11の下面にP型電極19を、それぞれ設けたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体積層構造及びそれを備えた半導体装置に関し、特に、積層された半導体層の結晶性を向上させることで、最上部層のキャリア濃度を高め、半導体層の膜厚を薄くすることが可能な半導体積層構造、及び、半導体層の結晶性を向上させることで寿命特性が向上し、最上部層のキャリア濃度を高めることで動作時の抵抗が低下し、その結果、消費電力を低下させることが可能な半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、青色光〜紫外光を発光するIII族窒化物系半導体を活性層に用いた発光ダイオード(LED:Light−Emitting Diode)が開発されている。この発光ダイオードは、従来のSiC(炭化珪素)等を用いた青色発光ダイオードと比較して極めて高い発光効率を有することから、盛んに研究が進められ、各種の提案がなされている。一例としてサファイア基板上に活性層を形成した構造の発光ダイオードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のIII族窒化物系半導体を活性層に用いた発光ダイオードの一例を示す断面図であり、図において、符号1はサファイア基板、2はサファイア基板1上に成膜されたN型のGaN(N−GaN)からなる下部クラッド層、3は下部クラッド層2上の一部に成膜された組成比の異なる2種類のInGaN層を交互に積層してなる多重量子井戸構造(MQW)の活性層、4は活性層3上に成膜されたP型のGaN(P−GaN)からなる上部クラッド層、5は上部クラッド層4上に形成されたP型電極、6は下部クラッド層2上に形成されたN型電極である。
この発光ダイオードでは、これらP型電極5とN型電極6との間に直流電圧を印加することにより、405〜535nmの青色・緑色光を発光させることができる。
【0004】
一方、基板の下側から最下層の電極の取り出しを行うことができる構造の発光ダイオードとしては、N型のシリコン基板上に活性層を含む複数の半導体層からなる積層構造を形成し、この積層構造の上面にP型電極を、N型のシリコン基板の下面にN型電極を、それぞれ形成した構造の発光ダイオードが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−297446号公報
【特許文献2】
特開平10−242584号公報
【特許文献3】
特開平11−040850号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のサファイア基板を用いた発光ダイオードにおいては、サファイア基板が絶縁体であるために、このサファイア基板の下側から最下層の電極の取り出しを行うことができない。そこで、下部クラッド層の一部を横に張り出させ、この張り出した部分にN型電極を形成した構造としているが、この構造では、素子面積が大きくなってしまうという問題点があった。
【0007】
また、下部クラッド層に対しては横方向に電流を流す必要があるが、横方向の直列抵抗を極力小さくするためには、その厚みを4μm以上とする必要があり、さらなる薄膜化が難しいという問題点があった。
さらに、最上部層である上部クラッド層4は、P型のGaNにより構成されているために、キャリア濃度をあまり高くすることができず、したがって、上部クラッド層4とP型電極5との間の接触抵抗が大きくなってしまい、閾値を低くすることが難しく、低電圧動作が困難であるという問題点があった。
また、N型のシリコン基板を用いた発光ダイオードにおいても、同様の問題点があり、いずれの発光ダイオードにおいても、さらなる低電圧動作、消費電力の減少、素子面積の小面積化等を図ることは難しい。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、積層された半導体層の結晶性を向上させることができ、最上部層のキャリア濃度を高めることができ、しかも、半導体層の膜厚を薄くすることができる半導体積層構造、及び、半導体層の結晶性を向上させることで寿命特性を向上させることができ、最上部層のキャリア濃度を高めることで動作時の抵抗を小さくすることができ、その結果、消費電力を低下させることができ、さらには素子の小型化を図ることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次の様な半導体積層構造及びそれを備えた半導体装置を提供した。
すなわち、本発明の半導体積層構造は、P型の基板上に、P型のGaN系半導体からなる第1の半導体層が形成され、該第1の半導体層上にN型のGaN系半導体からなる第2の半導体層が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
この半導体積層構造では、P型の基板上に、P型のGaN系半導体からなる第1の半導体層、N型のGaN系半導体からなる第2の半導体層を順次積層したことにより、低抵抗であるP型の基板上に同じ導電型の第1の半導体層、キャリア濃度が大きい低抵抗のN型の第2の半導体層が積層されることとなり、第1及び第2の半導体層の結晶性が向上し、その厚みを薄くすることが可能になる。さらに、最上層に形成される第2の半導体層上に電極を形成した場合に、電極との間の接触抵抗が小さくなる。
【0011】
この半導体積層構造では、前記P型のGaN系半導体を、AlGa1−x−yInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)とし、前記N型のGaN系半導体を、AlGa1−z−wInN(0≦z≦1、0≦w≦1、0≦z+w≦1)とするのが好ましい。
【0012】
また、本発明の半導体積層構造は、前記基板と、前記第1の半導体層との間に、III族窒化物系半導体からなるバッファ層を形成したことを特徴とする。
また、本発明の半導体積層構造は、前記第1の半導体層と、前記第2の半導体層との間に、III族窒化物系半導体からなる活性層を形成したことを特徴とする。
前記活性層のIII族窒化物系半導体としては、アンドープまたはドープされたAlGa1−u−vInN(0≦u≦1、0≦v≦1、0≦u+v≦1)が好ましい。
前記基板としては、Si、SiC、GaP、GaAs、MgAlの群から選択された1種を主成分としたものが好ましい。
【0013】
本発明の半導体装置は、本発明の半導体積層構造を備えてなることを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前記半導体積層構造の前記基板の一主面及び前記第2の半導体層の一主面各々に電極を設けてなることを特徴とする。
【0014】
この半導体装置では、本発明の半導体積層構造を備えたことにより、半導体積層構造における半導体層の結晶性を向上させることで、その寿命特性が向上し、最上部層のキャリア濃度を高めることで動作時の抵抗が低下する。その結果、消費電力を低下させることが可能になる。また、半導体層の結晶性が向上することで、その厚みを薄くすることが可能になり、素子の小型化が可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体積層構造及びそれを備えた半導体装置の各実施の形態について図面に基づき説明する。
【0016】
「第1の実施形態」
図1は本発明の第1の実施形態の発光ダイオード(半導体装置)を示す断面図であり、InGaN活性層を、この活性層よりバンドギャップエネルギーの大きいGaAlNクラッド層で挟んだダブルヘテロ構造である。
【0017】
図において、符号11はP型基板、12はIII族窒化物系半導体からなるバッファ層、13はP型のGaN系半導体からなるコンタクト層(第1の半導体層)、14はP型のAlGaN系半導体からなる下部クラッド層、15はInGaN系半導体の多重量子井戸構造(MQW)からなる活性層、16はN型のAlGaN系半導体からなる上部クラッド層、17はN型のGaN系半導体からなるコンタクト層(第2の半導体層)、18はコンタクト層17上に形成されたN型電極、19はP型基板11の下面に形成されたP型電極であり、バッファ層12〜コンタクト層17により半導体積層構造20が構成されている。
【0018】
P型基板11は、Si、SiC、GaP、GaAs、スピネル構造のMgAl(酸化アルミニウムマグネシウム)の群から選択された1種を主成分としたP型の基板で、キャリア濃度は1018/cm以上の高濃度である。
このP型基板11としては、ボロン(B)をドープしたP(高濃度P型)−Si基板の他、ボロン(B)をドープしたP−SiC基板、亜鉛(Zn)をドープしたP−GaP基板、ZnをドープしたP−GaAs基板が好適に用いられ、他にP−MgAl基板等を用いてもよい。
【0019】
バッファ層12は、例えば、InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表されるIII族窒化物系半導体により構成され、その膜厚は0.01〜0.1μmである。
コンタクト層13は、例えば、Mgをドープした高キャリア濃度のP型のGaN(GaN:Mg)により構成され、その膜厚は0.3〜1.0μmである。
下部クラッド層14は、例えば、MgをドープしたAlGa1−xN(AlGa1−xN:Mg)で表されるP型のAlGaN系半導体により構成され、その膜厚は0.3〜0.5μmである。
【0020】
活性層15は、組成比の異なるInGaNを交互に積層した多重量子井戸構造(MQW)で、例えば、In0.2Ga0.8Nからなる井戸層と、In0.05Ga0.95Nからなる障壁層とを、交互に積層した2〜10層の多重量子井戸構造(MQW)である。この井戸層の膜厚は5〜100Å、障壁層の膜厚は5〜100Åである。
【0021】
上部クラッド層16は、例えば、SiをドープしたAlGa1−xN(AlGa1−xN:Si)で表されるN型のAlGaN系半導体により構成され、その膜厚は0.3〜0.5μmである。
コンタクト層17は、例えば、Siをドープした高キャリア濃度のN型のGaN(GaN:Si)により構成され、その膜厚は0.3〜1.0μmである。
【0022】
N型電極18は、コンタクト層17を構成するN型GaNとの接触抵抗が小さい金属を用いた積層構造で、例えば、Ti層とAl層を積層した2層構造である。
P型電極19は、P型基板11を構成するP−Si等との接触抵抗が小さい金属を用いた積層構造で、例えば、Ni層とAu層を積層した2層構造である。
【0023】
この発光ダイオードの製造方法について説明する。
P型基板11としてP−Si基板を用いる場合、(111)面または(100)面のP−Si基板の表面を、フッ酸系溶液を用いて洗浄し、その後高純度の純水を用いて洗浄し、その後、乾燥させる。
次いで、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、有機金属気相成長法(MOVPE)、ハイドライドVPE(HVPE)等により、P型基板11上にバッファ層12〜コンタクト層17を順次成長させ、半導体積層構造20を形成する。
【0024】
例えば、MOCVDによりP−Si基板上にAlGaN系半導体層を成長させる場合、Ga源として金属GaまたはTMG(トリメチルガリウム)を、Al源として金属AlまたはTMA(トリメチルアルミニウム)を、N源としてアンモニアガス(NH)を用いて成膜する。このとき、P−Si基板を900〜1000℃に保持した状態で、AlGaN系半導体層を成長させる。
その後、例えば、真空蒸着法等により、コンタクト層17上に、Ti層、Al層を順次積層し、2層構造のN型電極18とする。また、P−Si基板の下面にNi層、Au層を順次積層し、2層構造のP型電極19とする。
以上により、本実施形態の発光ダイオードを製造することができる。
【0025】
この発光ダイオードでは、順方向にバイアスを印加した状態、すなわち、P型電極19に正の電圧を、N型電極18に負の電圧を、印加した状態では、P型電極19からホール(正孔)が、N型電極18から電子がそれぞれ注入され、P型電極19からN型電極18に向かって電流が流れる。活性層15内では、注入されたホール及び電子の双方のキャリアが存在することになるが、ホールと電子は活性層15内で再結合し、この再結合により所定の波長、例えば405〜480nmの波長の光が誘導放出される。
【0026】
この発光ダイオードによれば、P型基板11上に、P型のIII族窒化物系半導体のバッファ層12〜N型のGaNのコンタクト層17を順次積層して半導体積層構造20としたので、この半導体積層構造20の各層における結晶性を向上させることができる。したがって、寿命特性を向上させることができる。また、最上部層であるコンタクト層17のキャリア濃度を高めることができるので、動作時の抵抗を低下させることができる。
【0027】
また、キャリア濃度が高くかつ低抵抗のN型のGaNからなるコンタクト層17上にN型電極18を形成したので、コンタクト層17とN型電極18との間の接触抵抗が無視できるほどに小さなものとなる。また、キャリア濃度が高くかつ低抵抗のP型基板11の下面にP型電極19を形成したので、N型電極18と同様、P型基板11とP型電極19との間の接触抵抗も無視できるほどに小さなものとなる。
以上により、素子の主要部である半導体積層構造の個々の層の膜厚を薄くすることができ、素子全体の抵抗を低減することができる。したがって、素子の閾値電流を小さくすることができ、消費電力を低下させることができる。
【0028】
「第2の実施形態」
図2は本発明の第2の実施形態の発光ダイオード(半導体装置)を示す断面図であり、InGaN活性層を、この活性層よりバンドギャップエネルギーの大きいGaNクラッド層で挟んだダブルヘテロ構造である。
【0029】
図において、符号31はP型のGaN系半導体からなる下部クラッド層(第1の半導体層)、32はN型のGaN系半導体からなる上部クラッド層(第2の半導体層)であり、バッファ層12〜上部クラッド層32により半導体積層構造33が構成されている。
【0030】
下部クラッド層31は、例えば、Mgをドープした高キャリア濃度のP型のGaN(GaN:Mg)により構成され、その膜厚は0.3〜0.5μmである。
上部クラッド層32は、例えば、Siをドープした高キャリア濃度のN型のGaN(GaN:Si)により構成され、その膜厚は0.3〜0.5μmである。
本実施形態の発光ダイオードにおいても、第1の実施形態の発光ダイオードと全く同様の効果を奏することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明の半導体積層構造によれば、P型の基板上に、P型のGaN系半導体からなる第1の半導体層、N型のGaN系半導体からなる第2の半導体層を順次積層したので、低抵抗であるP型の基板上に同じ導電型の第1の半導体層、キャリア濃度が大きい低抵抗のN型の第2の半導体層が順次積層されることとなり、第1及び第2の半導体層の結晶性を向上させることができる。したがって、第1及び第2の半導体層の厚みを薄くすることができ、積層構造の薄膜化を図ることができる。
【0032】
本発明の半導体装置によれば、本発明の半導体積層構造を備えたので、この半導体積層構造における各半導体層の結晶性を向上させることで、寿命特性を向上させることができる。また、最上部層の第2の半導体層をN型のGaN系半導体としたので、キャリア濃度を高めることができ、動作時の抵抗を低下させることができる。その結果、消費電力を低下させることができる。また、上記の各半導体層の結晶性が向上したことにより、各層の厚みを薄くすることができ、素子の小型化、省面積化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の発光ダイオードを示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の発光ダイオードを示す断面図である。
【図3】従来の発光ダイオードを示す断面図である。
【符号の説明】
11…P型基板、12…バッファ層、13…コンタクト層(第1の半導体層)、14…下部クラッド層、15…活性層、16…上部クラッド層、17…コンタクト層(第2の半導体層)、18…N型電極、19…P型電極、20…半導体積層構造、31…下部クラッド層(第1の半導体層)、32…上部クラッド層(第2の半導体層)、33…半導体積層構造。

Claims (8)

  1. P型の基板上に、P型のGaN系半導体からなる第1の半導体層が形成され、該第1の半導体層上にN型のGaN系半導体からなる第2の半導体層が形成されてなることを特徴とする半導体積層構造。
  2. 前記P型のGaN系半導体は、AlGa1−x−yInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)であり、前記N型のGaN系半導体は、AlGa1−z−wInN(0≦z≦1、0≦w≦1、0≦z+w≦1)であることを特徴とする請求項1記載の半導体積層構造。
  3. 前記基板と、前記第1の半導体層との間には、III族窒化物系半導体からなるバッファ層が形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の半導体積層構造。
  4. 前記第1の半導体層と、前記第2の半導体層との間には、III族窒化物系半導体からなる活性層が形成されてなることを特徴とする請求項1、2または3記載の半導体積層構造。
  5. 前記III族窒化物系半導体は、アンドープまたはドープされたAlGa1−u−vInN(0≦u≦1、0≦v≦1、0≦u+v≦1)であることを特徴とする請求項4記載の半導体積層構造。
  6. 前記基板は、Si、SiC、GaP、GaAs、MgAlの群から選択された1種を主成分としてなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の半導体積層構造。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項記載の半導体積層構造を備えてなることを特徴とする半導体装置。
  8. 前記半導体積層構造の前記基板の一主面及び前記第2の半導体層の一主面各々に電極を設けてなることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
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