JP2004242570A - 麺用ほぐれ向上剤およびそれを使用した麺類加工食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアクリル酸ナトリウムを含有する麺用ほぐれ向上剤である。ポリアクリル酸ナトリウム共に、水溶性多糖類、乳化剤、有機酸またはその塩の少なくとも1種を併用してもよい。ポリアクリル酸ナトリウムは分散性に優れるため、特に他剤の併用によって麺表面上にほぐれ向上剤を均一に分散させることができ、少量で優れたほぐれ性を確保することができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、麺類のほぐれ向上の目的で使用する麺用ほぐれ向上剤およびこれを用いたほぐれが向上した麺類加工食品に関する。より詳細には、ポリアクリル酸ナトリウムを含有し、または更に水溶性多糖類、乳化剤、有機酸もしくはその塩の少なくとも1種を含む麺用ほぐれ向上剤およびこれを用いたほぐれ性が向上した麺類加工食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の加工技術、保存技術の進歩発展に伴い、麺類においても、多種類のレトルト食品、冷蔵食品、カップメン、調理麺類等の加工食品、半加工食品が市場に流通している。これら麺類加工食品は、簡便に調理され、またはそのまま食されることを目的としたものであり、一般的な保存性と共に、おいしさの持続や調理の容易さや出来映えの美しさが商品価値に大きく反映する。
【0003】
上記麺類加工食品に要求されるおいしさの持続、調理の容易性や美観の問題から茹で麺、蒸し麺では、麺のほぐれ性が問題となる。一例を挙げると、コンビニエンスストアなどで販売される茹で麺のうち、いわゆる調理麺、例えば小分けうどんなどは、トレイに盛りつけられた後の吸水から、麺線表面のデンプン粒が露出し、麺線同士の強固な結着が生じ、この状態では食するときに食べにくく味を損ねるばかりでなく外観上も商品価値を損ねている。
【0004】
また、いわゆるロングライフ麺は、茹で麺の中でもpH調整と蒸煮殺菌を併用することにより長期保存を可能にしたタイプの麺であり、長期保存の故に麺線の付着が特に激しい。しかしながら実際に食する時の調理の容易さ、出来映えの美しさや食味の点でも保存性と共に麺類のほぐれ性の向上が望まれる。
【0005】
このようなほぐれ性の問題を解決するために、従来より乳化剤、乳化油脂、蛋白、蛋白分解物、加工澱粉、水溶性多糖類、有機酸、食用油等の様々な麺用ほぐれ向上剤が提案されている。このような麺用ほぐれ向上剤は、使用態様から3種類に大別される。すなわち、製麺時に添加して使用する練り込みタイプ、茹で麺をほぐれ向上剤を溶解させた浸漬液に漬けて処理する浸漬タイプ、茹で麺にほぐれ向上剤を噴霧して処理する噴霧タイプの3種類である。
【0006】
練り込みタイプは、乳化剤、乳化油脂、蛋白、加工澱粉等を主な成分とし、麺線の表面の改良を主目的とするものである。練り込みタイプでは、生麺製造時のミキシング時に投入するものであり、作業効率が良好であるが生麺を茹でている間にほぐれ向上剤の有効成分が茹で水に溶出してしまうため、他の方法に比べて効果が低い場合がある。また、浸漬タイプや噴霧タイプのほぐれ向上剤としては、水溶性多糖類、乳化剤等を主成分とするもので、麺線の表面に被膜をコーティングし、麺線の接触摩擦を軽減させる事で麺表面の潤滑を良くしほぐれ性の向上を図るものである。
【0007】
一方、同じ化合物が練り込みタイプ、浸漬タイプ、噴霧タイプのいずれにも使用できる場合もある。例えば、ほぐれ向上剤として大豆由来の水溶性ヘミセルロース(soluble Hemi−Cellulose)を添加する技術がある(特許文献1)。当該公報では、従来主としてダイエタリーファイバーとして食品や整腸剤に添加されている水溶性ヘミセルロースに着目し、これを穀類加工食品のほぐれ性改良剤として、練り込みタイプ、浸漬タイプ、噴霧タイプのいずれにも使用している。
【0008】
また、有機酸または有機酸塩のうち少なくとも1種と水溶性ヘミセルロースとを含有する製麺用製剤も報告されている(特許文献2)。該公報では、有機酸として乳酸を使用し、有機酸と有機酸塩の配合により製麺用製剤自体の保存性に優れると共にpH調整作用をも発揮するため、麺類の保存性を向上させることができるとしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−121647号公報
【特許文献2】
特開2000−139385号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれのほぐれ向上剤を練り込みタイプで使用しても、一般に配合量が多くなり、麺の風味を損なう場合がある。
【0011】
また、浸漬タイプや噴霧タイプで使用する場合には、使用化合物の溶媒への溶解性が問題となる。例えば水溶性ヘミセルロースは乾燥微粉末の状態で流通しているが、浸漬タイプで使用する場合には、ほぐれ向上の効果を発揮するに足る量の濃度に水で希釈し溶解するといわゆるママコの状態になり易く、これを均一に分散溶解させるのに非常に手間と時間を要する。このため、ほぐれ向上剤の水溶液を毎回調製すること自体が煩雑な作業となる。
【0012】
また、一般には、浸漬タイプは、麺全体を浸漬液に直接漬けるので麺ほぐし効果が高いといわれているが、ほぐれ向上剤を投入した浸漬液は微生物汚染を受けやすいため長時間の使用に耐えられず、また浸漬液中のほぐれ向上剤の濃度を常に一定に保つ事は難しいため品質のばらつきが多くなりやすい。
【0013】
一方、噴霧タイプで使用すると、ほぐれ向上剤が麺に均一に分散されにくい場合がある。少量で効果的に麺表面上にほぐれ向上剤を分散させるために種々の装置も提案されているが、装置に有機物が付着して残存するため生菌数が増加したり、装置との接触によって麺線に物理的なダメージを与えてしまう等の問題点がある。一方、分散性の悪さから麺に対する使用量が多くなり、このため茹で麺の味、麺つゆに対して悪影響が出ている場合もある。
【0014】
このように、従来のほぐれ向上剤には十分に満足出来るほぐれ効果を発揮するものはないのが現状である。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、麺類加工食品に使用するほぐれ向上剤の使用態様とその効果について検討したところ、ポリアクリル酸ナトリウムに麺類のほぐし効果があること、および噴霧タイプのほぐれ向上剤として使用する場合には、茹で麺の表面におけるほぐれ向上剤の分散性が優れるため少量でも効率的なほぐれ効果が得られ、このようなほぐれ効果および分散性に優れる食品添加物として上記ポリアクリル酸ナトリウムが好ましいことを見い出し、本発明を完成させた。
【0016】
特に、ポリアクリル酸ナトリウムと共に、水溶性多糖類、乳化剤、有機酸またはその塩の少なくとも1種を併用すると、ポリアクリル酸ナトリウムによる分散性向上効果によって麺表面上のほぐれ効果が相乗的に発揮される。
【0017】
ポリアクリル酸ナトリウムは、練り込みタイプ、浸漬タイプ、噴霧タイプのいずれの使用も可能であるが、特に噴霧タイプで使用する場合に麺上での分散性に優れ、ポリアクリル酸ナトリウムの少量の使用でほぐれ向上効果を得ることができ、茹で麺の喫食時に麺のほぐれにくさを解決する共に、少量の添加でよいため麺の風味に優れる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、ポリアクリル酸ナトリウムを含有する麺用ほぐれ向上剤である。従来から、ポリアクリル酸ナトリウムが増粘安定剤として有用であることは知られており、麺の食感の向上や、麺の保存性を向上するために使用されてきた。例えば、特公昭56−54132号公報には、米粉85〜95対馬鈴薯でんぷん15〜5の割合で配合した原料に水を加え、シート状に製麺した後に蒸煮し、練り上げてから麺帯に、または加圧押出して麺帯にして冷却してから所定の幅に切断する米うどんの製造方法が開示され、米粉に配合する添加物としてポリアクリル酸ソーダを品質改良剤および/または増粘剤として配合し得ると記載している。該公報の実施例では、米粉90kgに対してポリアクリル酸ソーダを0.076質量%となる量で添加している。しかしながら、このように増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムが使用された例はあるが、ほぐれ向上剤として有用であることは全く知られていなかった。
【0019】
本発明において、ポリアクリル酸ナトリウムによってほぐれ性が向上する理由は不明であるが、ポリアクリル酸ナトリウムには保湿効果があるため麺の乾燥防止効果が高く、これによってほぐれ性が向上すると考えられる。また、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液が、他の増粘安定剤を溶かした場合には見られない独特な増粘性を示すため、この独特な増粘性によってほぐれ向上剤を茹で麺の表面に均一に分散させることができ、結果的に茹で麺のほぐれ性が向上すると考えられる。
【0020】
本発明で使用するポリアクリル酸ナトリウムは、分子量が100万〜1千万であることが好ましく、より好ましくは200万〜800万、特に好ましくは400万〜500万である。1千万を超えると粘度が高くなり分散性が低下する場合がある。一方、100万を下回るとほぐれ向上効果が低下する場合がある。
【0021】
本発明の麺用ほぐれ向上剤は、ポリアクリル酸ナトリウムを含有するものであり、麺用ほぐれ向上剤中にポリアクリル酸ナトリウムが0.01〜2質量%、より好ましくは0.03〜1.0質量%、特に好ましくは0.05〜0.2質量%である。その使用態様に応じて使用量を選択できる。一般には、練り込みタイプで使用する場合には、原料粉中にポリアクリル酸ナトリウムとして0.01〜0.2質量%配合し、より好ましくは0.03〜0.15質量%、特に好ましくは0.05〜0.1質量%である。原料粉に添加しても、仕込み水に溶解した後に原料粉に混合してもよい。
【0022】
また、浸漬タイプや噴霧タイプで使用する場合には、予め麺用ほぐれ向上剤をそのまま、またはポリアクリル酸ナトリウムが溶媒中に0.01〜2質量%、より好ましくは0.03〜1.0質量%、特に好ましくは0.05〜0.2質量%配合するように希釈したものを調製し、これを直接、または適宜希釈して使用すると簡便である。麺用ほぐれ向上剤中のポリアクリル酸ナトリウムの配合量が0.01質量%を下回ると、効果を発揮させるのに必要な茹で麺に対する使用量が多くなり、一方、2質量%を超えるとほぐれ向上剤の粘性が極めて高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。
【0023】
麺用ほぐれ向上剤に使用する溶媒としては、水、エタノール等があり、これらの混合液であってもよい。
【0024】
本発明の麺用ほぐれ向上剤は、ポリアクリル酸ナトリウムのみを配合した場合でもほぐれ向上効果を有するが、水溶性多糖類、乳化剤、有機酸またはその塩の少なくとも1種と併用すると、従来のほぐれ向上剤に比較して麺のほぐれ性が著しく向上し、このため特別な装置を使用することなく容易に麺全体に均一に分散させることができ、かつ麺に対する使用量も少なく出来る。このようなポリアクリル酸ナトリウムと他のほぐれ向上剤との併用効果は、ポリアクリル酸ナトリウム自体のほぐれ向上作用に加え、ポリアクリル酸ナトリウムが他のほぐれ向上剤の分散性を向上し得るためと考えられる。このため、本発明の麺用ほぐれ向上剤は、ポリアクリル酸ナトリウムに他のほぐれ向上剤を併用しかつ噴霧タイプで使用する場合に、極めて少量でほぐれ向上効果を得ることができる。
【0025】
このような併用可能な水溶性多糖類としては、水溶性ヘミセルロースなどの水溶性大豆食物繊維、水溶性グアー酵素分解物、水溶性ゼラチン等がある。ここで水溶性ヘミセルロースは、植物の細胞壁に含まれる多糖類のうち、水溶性であって希アルカリによって抽出されるものである。油糧種子(大豆、パーム、椰子、コーン、綿実等)または穀類(米、小麦等)や豆類(小豆、エンドウ豆等)を原料とし、それらから通常の方法で油脂、蛋白質、澱粉質を除いた穀又は粕を用いて、それらを酸性ないしアルカリ性の条件下、好ましくは各々の蛋白質の等電点付近のpHで、好ましくは130℃以下80℃以上で加水分解して水溶性画分を分画した後、そのまま乾燥するか、または活性炭処理、樹脂吸着処理或いはエタノール沈殿処理して疎水性物質もしくは低分子物質を除去し乾燥することによって得ることができる。原料が大豆であれば、豆腐、豆乳及び分離大豆蛋白を製造するときに副生するオカラを利用することができ、こうして得られた水溶性ヘミセルロースは、平均分子量が数万〜数百万である。本発明で使用する水溶性ヘミセルロースの原料としては、溶解性や工業性の面から、豆類由来、特に大豆、なかでも子葉由来のものが好ましい。本発明では、水溶性多糖類の1種以上を併用してもよい。本発明の麺用ほぐれ向上剤における水溶性多糖類の配合量は、ほぐれ向上剤の使用態様によって適宜選択することができるが、一般には麺用ほぐれ向上剤中に、1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%である。1質量%以下であると効果が少なく、50質量%以上であると溶解度の点から、液状では無くスラリー状になってしまうからである。
【0026】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ステアロイル乳酸カルシウム、ダイズサポニン等が掲げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を併用することができる。特に、乳化剤は、それ自体がほぐれ向上効果を発揮するが、例えば水溶性多糖類として水溶性ヘミセルロースを配合する場合には、水溶性ヘミセルロースの持つ気泡性を抑える目的で乳化剤を配合することが好ましい。このような消泡剤として機能する乳化剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレン脂肪酸エステル、レシチン類がある。なお、本発明の麺用ほぐれ向上剤における上記乳化剤の配合量は、ほぐれ向上剤の使用態様によって適宜選択することができるが、一般には麺用ほぐれ向上剤中に、0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%である。0.01質量%以下であると効果が少なく、10質量%以上であると液状では無くスラリー状になってしまう場合が多いからである。
【0027】
本発明で使用する有機酸またはその塩は、食品に使用できる必要があり、有機酸としては、乳酸、フィチン酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、その他、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、酒石酸、酢酸等が例示できる。これらのなかでも、乳酸、フィチン酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸が好ましい。また、有機酸塩としては、上記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が例示できるが、好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩である。本発明ではこれらの1種を単独で使用するほか、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することにより、pHの緩衝作用を得ることができ、これにより優れたpH調整作用も得られる。本発明で使用できる有機酸またはその塩としては、好ましくは乳酸、フィチン酸、乳酸ナトリウムである。特に、乳酸およびその塩は、食品の味覚を損ないにくく、安全で安定性に優れた製剤を提供しうる。特に、本発明において、乳酸ナトリウムを併用すると、乳酸ナトリウムの存在によりほぐれ向上剤の調製時にポリアクリル酸ナトリウムや水溶性多糖類がだまにならず、容易に水に溶けやすくなるためである。よって、本発明のほぐれ向上剤を調製する場合には、乳酸ナトリウム水溶液にポリアクリル酸ナトリウムや水溶性多糖類を加えるようにすることが好ましい。更に、乳酸またはフィチン酸を少量併用すると、ほぐれ向上剤のpHを弱酸性下にすることができ、溶解しているポリアクリル酸ナトリウムがゲル化しにくくなり、ほぐれ向上剤の安定性が長期間保たれる。この目的を達成するためには、酢酸の添加でも可能であるが、酢酸の場合は、酸臭、酸味の点から適しない。本発明の麺用ほぐれ向上剤における有機酸またはその塩の配合量は、ほぐれ向上剤の使用態様によって適宜選択することができるが、一般には麺用ほぐれ向上剤中に、有機酸の場合は、0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.1〜1%であり、有機酸塩の場合は、1〜50質量%、より好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは8〜25%である。この範囲で、ほぐれ性に優れると共にpH調整作用および保存性に優れるからである。
【0028】
本発明の麺用ほぐれ向上剤が、ポリアクリル酸ナトリウムに加えて水溶性多糖類、乳化剤、有機酸またはその塩の少なくとも1種を併用する場合には、その調製方法としては、以下の方法が便宜である。例えば、有機酸あるいは有機酸塩が存在下すると、ポリアクリル酸ナトリウムおよび水溶性ヘミセルロースが、ままこにならずに容易に溶解するので、最初に有機酸あるいは有機酸塩をあらかじめ添加し、次にポリアクリル酸ナトリウムおよび水溶性ヘミセルロースを添加し、撹拌、分散させて調製する方法である。また、乳化剤を配合する場合には、得られた麺用ほぐれ向上剤に乳化剤を分散させた溶液を撹拌しながら混合して溶解することができる。なお、得られた溶液を更にろ過等して固形分を分別してもよい。本発明の麺用ほぐれ向上剤はこれを更に希釈して麺類の表面処理等に使用することができるものである。
【0029】
本発明の麺用ほぐれ向上剤には、更に保存性を高める目的としてソルビン酸、ソルビン酸カリウム、アルコール、グリシン、ポリリジン、プロタミンなどを添加してもよく、味の改善を目的としてアミノ酸類(グリシン、アラニンなど)、糖類(ショ糖、グルコース等)等を、また、食物繊維としてのプルラン、水溶性デンプン、ガム類、また各種の酸特有の臭いを消すマスキングするための香料類、種子やこれらを焙煎したものからの抽出物等を、上記ほぐれ効果やpH調整効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0030】
このようにして得られた本発明の麺用ほぐれ向上剤は、ポリアクリル酸ナトリウムと共に水溶性多糖類や乳化剤、有機酸またはその塩などが含有され、各成分が均一な状態で安定に保たれている。特に、水溶性ヘミセルロースを併用する場合に、これを水に溶解するに際して有機酸またはその塩を併用し、または乳化剤と併用すると、水溶性ヘミセルロースが安定して水溶液中に分散され、かつ有機酸等の存在により製麺におけるpH調整作用をも発揮できる。しかも、本発明の麺用ほぐれ向上剤は溶媒中にポリアクリル酸ナトリウムを初めとするほぐれ向上成分が溶解しているため、使用時において容易に水などの溶媒で希釈して使用することができ使用が簡便である。なお、使用態様によって、原液のまま使用してもよく、水などの溶媒で2〜3倍に希釈して用いると麺への分散性がより高まる。
【0031】
上記のように、本発明の麺用ほぐれ向上剤は、小麦粉などの原料粉に練り込んで使用することもでき、浸漬タイプや噴霧タイプで使用することができる。浸漬タイプや噴霧タイプで使用する場合の具体的な方法としては、上記麺用ほぐれ向上剤を麺又はパスタを茹でる際の水又は熱湯に予め添加して茹でる他、麺等を茹でた後に冷却する際に冷却水に溶解させて浸漬し、または噴霧によって表面に塗布する方法、茹で麺の冷却後に、濃厚原液または希釈水溶液を噴霧する方法などで行なう。噴霧タイプで使用する場合には、冷却した麺類の表面に麺用ほぐれ向上剤を塗布するため、浸漬タイプと相違してpH調整などの必要性が少ない点で有利である。また、本発明の麺用ほぐれ向上剤は、溶媒中に有効成分が溶解し、しかもポリアクリル酸ナトリウムの配合によって溶媒中に他の成分も均一に溶解または分散しているため、噴霧に際して目詰まりなどの発生が少ない。ほぐれ向上剤が麺表面上で十分な分散性を有しないとほぐれ向上の効果が十分に発揮できないが、本発明の麺用ほぐれ向上剤を使用すると、希釈が容易であるため至適な濃度への調整が簡便で、均一な塗布も容易である。なお、浸漬タイプや噴霧タイプで使用する場合の麺に対する使用量は、麺類加工食品の0.5%〜2質量%、より好ましくは0.8〜1.8質量%、特に好ましくは1.0〜1.5質量%である。
【0032】
本発明の第二は、上記記載の麺用ほぐれ向上剤を、麺に対して0.5〜2質量%含有する麺類加工食品である。
【0033】
本発明の麺類加工食品とは、穀類食品(そば、米、小麦、大麦、稗、粟等)を1次加工又は更に2次加工した食品のことをいう。1次加工食品としては生うどん、生そば、中華麺、パスタ、乾麺、インスタントラーメン等があり、2次加工食品としては一次加工食品を調味するか否かに関わらず、再調理した食品、例えば、茹で麺、蒸し麺、焼そば、うどん、そば、スパゲティー、インスタントラーメン、麺類加工食品に具材等を配した形でコンビニエンスストア等で販売される小分けそば、小分けうどん、カップうどん、鍋焼きうどんなどの弁当類がある。その他麺類加工食品であれば、家庭で調理されるものを始めその場で食べることを目的とする最終商品や食べる際に調理の必要な半製品等、常温、冷蔵、冷凍、氷温等の方法で市場に流通している各種の食品を含むものとする。
【0034】
麺類加工食品のほぐれ性の改良による効果としては、その食品を食べる際に食べ易いことであるが、美観にすぐれるため旨く感じられる。半調理品等においては再加熱等の際に加熱ムラがなく、熱効率がよい為、短時間で最適の食品を得ることができるなどの利点がある。例えば、乾麺タイプのインスタントやきそば等においても、熱湯を注いだ後に容易に麺がほぐれる結果、少しの撹拌で麺がほぐれ麺線が切れにくく、麺線を損なうことがない。また、麺類に具材が添加されている冷やし中華そばや、焼そば、スパゲティー等においては、ソースや具材とを容易にまんべんなく混ぜることができ、食感に優れると共に食べやすく、調理性にも優れる。
【0035】
このようなほぐれ向上剤を添加した麺類加工食品を製造するには、茹で麺を冷却した後に上記麺用ほぐれ向上剤を噴霧し、麺の表面上に均一に分散させればよく、このような分散は攪拌機を使用してもよい。
【0036】
添加量は、麺類加工食品に対して0.5〜2質量%、好ましくは0.8〜1.8質量%、特に好ましくは1.0〜1.5質量%である。この範囲で十分に、麺類加工食品のほぐれ性が改善され、麺線の結着がなく水分の流出がなく、優れた歩留まりが得られるからである。より具体的には、本発明の麺用ほぐれ向上剤を適宜希釈して、ポリアクリル酸ナトリウムが0.003〜0.7質量%、より好ましくは0.01〜0.3質量%、特に好ましくは0.02〜0.07質量%含有する溶液を調製し、これを用いて表面処理をすることが好ましい。この範囲で噴霧時の目詰まりもなく、かつ薬剤が麺類の表面に均一に分散され、優れたほぐれ性を発揮するからである。
【0037】
本発明の麺類加工食品は、従来のほぐれ向上剤に代えて本発明の麺用ほぐれ向上剤を使用する点で従来品とことなる。従って、従来の麺類加工食品と同様にほぐれ向上剤で処理した後に麺を冷凍保存し、または冷蔵するなどの処理をおこなってもよい。本発明の麺用ほぐれ向上剤は、凝固点が低いために冷凍した後にも極めて速やかにほぐれ向上効果を発揮することができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0039】
実施例1〜8、比較例1
ポリアクリル酸ナトリウム(株式会社日本触媒製、商品名:アクアリックFH)、水溶性多糖類(大豆由来ヘミセルロース、不二製油株式会社製、商品名:ソヤファイブ−S−DN)、乳化剤(ソルビタン脂肪酸エステル、花王株式会社製、商品名:エマゾールスーパーL−10)、乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)、フィチン酸(株式会社築野食品工業株式会社製)、乳酸ナトリウム(株式会社武蔵野化学研究所製)を使用して、表1に示す配合量になるように水に溶解して、実施例1〜8、比較例1のほぐれ向上剤を調製した。なお、調製する際には、最初に乳酸あるいはフィチン酸と乳酸ナトリウムをあらかじめ溶解させ、ポリアクリル酸ナトリウムおよび水溶性多糖類を添加する。これにより、ポリアクリル酸ナトリウムおよび水溶性多糖類がままこにならずに、容易に溶解できる。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例9
小麦粉、塩および水のみから調製された市販の生うどんを茹で、水流により十分に冷却した後に十分に水を切った。この茹で麺に対して表2に示す使用量になるように、実施例1〜8、比較例1のほぐれ向上剤を噴霧して麺のほぐれ性を評価した。
【0042】
具体的には、噴霧後の茹で麺をカップに一定量ずつ小分けし蓋をして10℃で保存し、24時間後、48時間後にほぐれ性について評価した。なお、表2でのブランクとは、ほぐれ向上剤を全く使用していない場合である。
【0043】
ほぐれ性の試験結果を表2に示す。なお、表2において、評価方法は15人のパネラーによりテストし、ほぐれ性が良いか否かの2者択一として質問し、ほぐれ性が良いと回答した人数により、以下のように判断した。
【0044】
13〜15人:非常に良好、 10〜12人:良好、 7〜9人:やや良好、
4〜6人:やや悪い、 1〜3人:悪い、0人:非常に悪い
【0045】
【表2】
【0046】
表2にから判るように、ポリアクリル酸ナトリウムを配合しているほぐれ向上剤の場合、そのほぐれ効果が著しく優れており、その使用量も少なくて済む。実施例8に示すように、ポリアクリル酸ナトリウム単独であっても、該化合物を配合しない場合に比較するとほぐれを向上させている。
【0047】
【発明の効果】
ポリアクリル酸ナトリウムを必須成分とし、これに水溶性多糖類、乳化剤等を併用したほぐれ向上剤により、茹で麺のほぐれ性が著しく向上し、長時間そのほぐれ性が保たれる。
【0048】
また、その使用量も大幅に軽減されたため、味質及び麺つゆへの悪影響も全く無い。本発明では、麺類の表面に処理しまたは添加するのみで容易に麺類に上記ほぐれ性を付与することができる。しかも、使用量が少ないため、食材の風味を長期に亘り保持することができる。
Claims (5)
- ポリアクリル酸ナトリウムを含有する麺用ほぐれ向上剤。
- ポリアクリル酸ナトリウムと共に、水溶性多糖類、乳化剤、有機酸またはその塩の少なくとも1種を含む、請求項1記載の麺用ほぐれ向上剤。
- 前記有機酸またはその塩が、乳酸、フィチン酸、乳酸ナトリウムのいずれかである、請求項2記載の麺用ほぐれ向上剤。
- ポリアクリル酸ナトリウムを0.01〜2質量%含有し噴霧用に使用するものである、請求項1〜3のいずれかに記載の麺用ほぐれ向上剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の麺用ほぐれ向上剤を、麺に対して0.5〜2質量%含有する麺類加工食品。
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---|---|---|---|---|
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-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003035201A patent/JP2004242570A/ja active Pending
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