JP2004241601A - 電気二重層キャパシタ用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現しうる電気二重層キャパシタ用セパレータを提供する。
【解決手段】融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【選択図】 なし
【解決手段】融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現しうる電気二重層キャパシタ用セパレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大容量の電気二重層キャパシタの開発が主流であるが、同時に内部抵抗が低く、且つ電圧維持率の高いものが求められている。これらの特性を出すためには、電極や電解液の改良もさることながら、電気二重層キャパシタ用セパレータの改良も必要である。電気二重層キャパシタ用セパレータとしては従来、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙などが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙は200℃以上の高温では炭化や分解してしまうため、乾燥温度を150℃程度に抑えざるを得ず、そのため、乾燥時間が長くなり、乾燥効率、すなわち電気二重層キャパシタの製造効率が悪い問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−3834号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に見られる上記問題点を解決するものである。即ち、本発明の目的は、リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現しうる電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、耐熱性に優れるフィブリル化高分子を用い、且つ扁平度2.0以上の扁平板状繊維を用いることにより、リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0008】
本発明においては、扁平板状繊維が、芳香族ジカルボン酸成分を60モル%以上含むジカルボン酸成分と、炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンを60モル%以上含むジアミン成分とから合成される芳香族ポリアミドからなることが好ましい。
【0009】
本発明においては、不織布が、扁平板状繊維を30wt%未満含有することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータについて詳細に説明する。
【0011】
本発明における電気二重層キャパシタとは、対向する2つの電極間に電気二重層を挟んだ形で構成されてなる蓄電機能を有するものである。電気二重層キャパシタの電極としては、一対の電気二重層容量型電極、片方が電気二重層容量型電極でもう片方が酸化還元型電極の組み合わせの何れでも良い。
【0012】
電気二重層キャパシタの電解液は、水溶液系、有機溶媒系、導電性高分子の何れでも良い。有機溶媒系電解液としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホラン、スルホラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブなどの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0013】
本発明における融点または熱分解温度が250℃以上の高分子としては、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられ、これら単独でも良いし、2種類以上の組み合わせでも良い。PBZTはトランス型、シス型の何れでも良い。また、全芳香族ではない芳香族ポリアミドや芳香族ポリエステルの中にもモノマーの種類と組成比によっては、融点または熱分解温度が250℃以上のものがあり、これらを用いることができる。ここで、芳香族とは、主鎖の一部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。これらの中でも、液晶性のため均一にフィブリル化されやすい全芳香族ポリアミド、特にパラ系全芳香族ポリアミドと全芳香族ポリエステルが好ましい。全芳香族ポリエステルは、吸湿率が著しく低いため、非水電解液質を用いる電気二重層キャパシタには特に好ましい。
【0014】
パラ系全芳香族ポリアミドは、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−アミドヒドラジド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド−3,4−ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
全芳香族ポリエステルは、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを組み合わせて、組成比を変えて合成される。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明におけるフィブリル化高分子とは、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下になっている高分子を指し、米国特許第5833807号明細書や米国特許第5026456号明細書に明記されているようなフィブリッドとは異なる。本発明におけるフィブリルは、長さと巾のアスペクト比が20:1〜100000:1の範囲に分布し、カナダ標準形濾水度が0ml〜500mlの範囲にある。さらに、重量平均繊維長が0.2mm〜2mmの範囲にあるものが好ましい。
【0017】
フィブリル化高分子は、非常に細いため、繊維本数が相当多く存在するだけでなく、アスペクト比が非常に大きいため、フィブリル同士や他の繊維との絡み合う頻度が高く、緻密で細孔の小さな不織布を形成することができる。そのため、耐熱性と電解液保持性に優れる電気二重層キャパシタ用セパレータが得られる。
【0018】
フィブリル化高分子は、高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置などを用いて製造される。
【0019】
本発明における電気二重層キャパシタ用セパレータは、フィブリル化高分子を5wt%以上、80wt%以下含有することが好ましい。フィブリル化高分子の含有量が5wt%未満の場合は、該セパレータの耐熱性が不十分になりやすい。該高分子の含有量が80wt%より多くなると、該繊維に自己接着力がないため、該セパレータの引張強度や破断伸度が不十分になりやすい。
【0020】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する。扁平度とは、繊維の長径Dlと短径Dsとの比(Dl/Ds)を意味する。扁平板状繊維は、電極間の隔絶性に優れ、自己放電を抑制し、電圧維持率を高くすることができる。しかし、該繊維の含有量が多くなると、その形状が故に電気二重層キャパシタ用セパレータの空隙率が低くなり、電解液保持性とイオン透過性が不十分になり、抵抗が高くなりやすいため、含有量は30wt%未満が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる扁平板状繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂からなる単繊維や複合繊維が挙げられるが、中でも耐熱性と耐薬品性に優れることから、芳香族ジカルボン酸成分を60モル%以上含むジカルボン酸成分と、炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンを60モル%以上含むジアミン成分とから合成される芳香族ポリアミドからなるものが好ましい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸としては、キャパシタ用セパレーターの耐熱性、耐電解液性の点でテレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、フタル酸、4,4′−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を1種類のみならず2種類以上併用することができる。これら芳香族ジカルボン酸の含有量はジカルボン酸成分の60モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましい。
【0023】
上記ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、2,2−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸を1種類以上用いることができる。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を適宜含有させても良い。キャパシタ用セパレーターの強度、耐電解液性、耐熱性等の点でジカルボン酸成分が100%芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0024】
一方、ジアミン成分の60モル%以上は、炭素数が6〜12のアルキレンジアミンで構成され、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の直鎖または側鎖を有する脂肪族ジアミンが挙げられる。これらの中でも、耐電解液性の点で1,9−ノナンジアミン、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの併用が好ましい。この脂肪族アルキレンジアミンの含有量はジアミン成分の60モル%以上であるが、75モル%以上、特に90モル%以上であることが耐熱性の点で好ましい。
【0025】
上記脂肪族アルキレンジアミン以外のジアミンとしては、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルジアミン、トリシクロデカンジメチルジアミン等の脂環式ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、キシレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン、あるいは、これらの混合物を挙げることができ、これらは1種類のみならず2種類以上併用することができる。
【0026】
脂肪族アルキレンジアミンとして、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとを併用する場合、ジアミン成分の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなり、そのモル比は前者:後者=30:70〜99:1、特に前者:後者=40:60〜95:5であることが好ましい。
【0027】
また、本発明における芳香族ポリアミドは、その分子鎖における[CONH/CH2]の比が1/2〜1/8、特に1/3〜1/5であることが好ましい。この範囲の芳香族ポリアミドを使用することにより、耐電解液性および耐熱性に優れた電解コンデンサ用セパレーターが得られる。
【0028】
本発明における芳香族ポリアミドは、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましく、末端の40%以上、さらには70%以上が封止されていることが好ましい。分子鎖の末端を封止することにより、得られる電気二重層キャパシタ用セパレーターの強度、耐電解液性、耐熱性等が優れたものとなる。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であればとくに限定されるものではないが、反応性、および封止末端の安定性などの点からモノカルボン酸、モノアミンが好ましい。取り扱い易さ、反応性、封止末端の安定性の点でモノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸などが挙げられる。末端の封止率は1H−NMRにより、各末端に対応する特性シグナルの積分値より求めることができる。
【0029】
本発明で用いられる芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、結晶性ポリアミドを製造する方法として公知の任意の方法を用いることができる。例えば、酸クロライドとジアミンとを原料とする溶液重合法あるいは界面重合法、ジカルボン酸またはジカルボン酸のアルキルエステルとジアミンとを原料とする溶液重合法、固相重合法などの方法により製造できる。
【0030】
扁平板状繊維は、スリット状口金から、上記した樹脂を押出し(紡糸)して製造される。このとき、2種類以上の樹脂を複合紡糸し、分割型複合繊維にしても良い。分割型複合繊維を分割して2成分(樹脂)以上の扁平板状繊維を得て用いても良いし、例えば、溶剤処理して1成分(樹脂)以上を除去し、耐溶剤性の成分(樹脂)だけを残して扁平板状繊維を得て用いても良い。
【0031】
本発明における扁平板状繊維の長さとしては、特に限定されるものではないが、セパレータの地合が均一になりやすいことから、1〜15mmが好ましく、3〜10mmがより好ましい。繊維長が1mmより短いと、フィブリル化高分子の捕捉能が低下し、15mmより長くなると繊維同士がよれてセパレータの厚みむらが生じやすい。扁平板状繊維の厚さ(短径)は0.1μm〜30μmが好ましく、巾(長径)は0.2μm〜100μmが好ましい。厚さ(短径)が30μmより厚いと電気二重層キャパシタ用セパレータの厚みを薄くしにくい。巾(長径)が100μmより広いと、電気二重層キャパシタ用セパレータの空隙率が低くなりすぎる。
【0032】
扁平板状繊維が、分割型複合繊維から得られる場合には、分割前の繊度は5dtex以下が好ましく、分割数は3以上で多いほど好ましい。分割型複合繊維の断面は円形、楕円形、正方形、長方形何れの形状でも良い。
【0033】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、フィブリル化セルロースやバクテリアセルロースを含有しても良い。これらは、少量でもセパレータの機械的強度を強める効果があるため好ましい。ここで、フィブリル化セルロースとは、リンターをはじめとする各種パルプ、リント、溶剤紡糸セルロースなどを原料とし、高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置などを用いて主に繊維軸と平行な方向に分割、微細化されて製造されたもので、少なくとも一部が繊維径1μm以下のものを指す。
【0034】
本発明におけるバクテリアセルロースとは、微生物が産生するバクテリアセルロースのことを指す。このバクテリアセルロースは、セルロースおよびセルロースを主鎖とするヘテロ多糖を含むものおよびβ−1,3、β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖および有機酸等である。これらの多糖は単一物質で構成される場合もあるが、2種以上の多糖が水素結合などで結合して構成されている場合もあり、何れも利用できる。
【0035】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種あるいは異種の抄紙機を2つ以上組み合わせたコンビネーションマシンなどを用いて湿式抄紙し、1層あるいは多層に抄き合わせて製造される。多層の場合には、相対的に層毎に粗密の差を持たせても良い。本発明においては、抄紙機の抄紙ワイヤーには80メッシュ以上の目の細かいワイヤーを用いる。湿式抄紙の際に用いる水はイオン交換水が好ましく、分散助剤やその他添加薬品、剥離剤などは、非イオン性のものが好ましい。
【0036】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、強度向上、不純物除去、耐熱寸法安定性付与、親水性付与などの目的に応じて、熱処理、熱圧処理、プラズマ放電処理などが施される。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。
【0038】
<フィブリル化高分子1の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド(繊度2.5dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、クリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の条件で30回繰り返し処理し、重量平均繊維長0.42mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミドを作製した。以下、これをフィブリル化高分子1と表記する。
【0039】
<フィブリル化高分子2の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド(繊度2.5dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、クリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら30回繰り返し叩解処理し、重量平均繊維長1.1mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミドを作製した。以下、これをフィブリル化高分子2と表記する。
【0040】
<フィブリル化高分子3の作製>
全芳香族ポリエステル(繊度1.7dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水中に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いてクリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の条件で20回繰り返し処理し、重量平均繊維長0.36mmのフィブリル化全芳香族ポリエステルを作製した。以下、これをフィブリル化高分子3と表記する。
【0041】
<フィブリル化セルロース1の作製>
リンターを5wt%濃度になるようにイオン交換水中に分散させ、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の圧力で20回繰り返し処理して、重量平均繊維長0.33mmのフィブリル化セルロース1を作製した。
【0042】
<分割型複合繊維1>
ナイロン66とポリエチレンテレフタレートの2成分を交互に層状に配してなる5分割型の分割型複合繊維(分割後の扁平度2.3、短径3μm)を分割型複合繊維1とし、扁平板状繊維の元として用いた。
【0043】
<扁平板状繊維1>
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンをジアミン成分とし、テレフタル酸をジカルボン酸成分とする芳香族ポリアミドからなる扁平度5.7の扁平板状繊維(短径1μm)を扁平板状繊維1とした。
【0044】
<セパレータの作製>
【0045】
実施例1〜19、比較例2、3
表1に示した配合比で水性スラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量15g/m2、厚み42μmの湿式不織布を作製し、それぞれ電気二重層キャパシタ用セパレータとした。実施例は1〜3、5〜8、10〜15、18、19は湿式抄紙の後、加圧せずに215℃で熱処理した。実施例3、8、9、13、18は、最後にプラズマ放電処理した。プラズマ放電処理は、0.1Torr、13.56MHz、100W・min/m2の条件で実施した。表1中の「F1」、「F2」、「F3」、「FC1」とはそれぞれフィブリル化高分子1、2、3、フィブリル化セルロース1を意味し、「分割1」、「扁平1」とは、それぞれ分割型複合繊維1、扁平板状繊維1を意味し、「PET1」、「PET2」、「PET3」とは、それぞれポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.1dtex、繊維長3mm)、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度1dtex、繊維長5mm)、芯部に融点255℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部に融点110℃の共重合ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体)を配してなる芯鞘複合繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm)を意味し、CMCとは、置換度1のNa−カルボシキメチルセルロースを意味する。
【0046】
比較例1
カナダ標準形濾水度0mlまで叩解した溶剤紡糸セルロース50wt%、同濾水度の麻パルプ50wt%を混合してスラリーとし、長網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量16g/m2、厚み40μm、密度0.400g/cm3の電気二重層キャパシタ用セパレータとした。
【0047】
【表1】
【0048】
<電気二重層キャパシタの作製>
電極活物質として平均粒径6μmの活性炭85%、導電材としてカーボンブラック7%、結着材としてポリテトラフルオロエチレン8%を混練して厚み0.2mmのシート状電極を作製した。これを厚み50μmのアルミニウム箔の両面に導電性接着剤を用いて接着させ、圧延して電極を作製した。この電極を正極および負極として用いた。電気二重層キャパシタ用セパレータを負極と正極の間に介して積層し、巻回機を用いて渦巻き型に巻回して渦巻き型素子を作製した。正極側および負極側の最外層には何れもセパレーターを配した。この渦巻き型素子をアルミニウム製ケースに収納した。ケースに取り付けられた正極端子および負極端子に正極リードおよび負極リードを溶接した後、電解液注液口を残してケースを封口した。この素子を収納したケースごと200℃に10時間加熱し乾燥処理した。これを室温まで放冷した後、ケース内に電解液を注入し、注液口を密栓して電気二重層キャパシタを作製した。さらに電気二重層キャパシタを240℃で10秒間リフロー処理した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C2H5)3(CH3)NBF4を溶解させたものを用いた。
【0049】
実施例1〜19、比較例1〜3で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータ並びにそれら電気二重層キャパシタ用セパレータを用いて作製した電気二重層キャパシタについて、下記の試験方法により測定し、その結果を下記表2に示した。
【0050】
<内部抵抗>
電気二重層キャパシタを2.7Vで充電した後、30Aで定電流放電したときの放電開始直後の電圧低下より算出した。
【0051】
<漏れ電流>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電し、24時間保持した時に計測される電流値を漏れ電流(mA)とした。漏れ電流が小さい程好ましい。
【0052】
<電圧維持率>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電した後、端子を開放し、72時間放置後の電圧を測定し、2.7Vに対する割合を電圧維持率(%)とした。電圧維持率が高い程好ましい。
【0053】
【表2】
【0054】
評価:
表1の結果から明らかなように、実施例1〜19で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、フィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなるため、リフロー耐熱性に優れ、該セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタは、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率が高く優れていた。特に実施例1〜5、7〜10、12〜14、16〜18で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、扁平度2.0以上の扁平板状繊維の含有量が30wt%未満であるため、内部抵抗と漏れ電流のバランスが良く優れていた。さらに実施例3、8、9、13、18で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、プラズマ放電処理されてなるため、そうでない場合よりも電解液との親和性が向上し、低抵抗の電気二重層キャパシタが得られた。
【0055】
一方、比較例1で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、セルロースのみからなるため、リフロー耐熱性が悪く、該セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタは、特性が著しく悪化した。
【0056】
比較例2及び3で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有しないため、該セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタは、漏れ電流がやや大きめで、電圧維持率が低めであった。
【0057】
【発明の効果】
以上、説明したごとく、本発明によれば、耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現する電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現しうる電気二重層キャパシタ用セパレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大容量の電気二重層キャパシタの開発が主流であるが、同時に内部抵抗が低く、且つ電圧維持率の高いものが求められている。これらの特性を出すためには、電極や電解液の改良もさることながら、電気二重層キャパシタ用セパレータの改良も必要である。電気二重層キャパシタ用セパレータとしては従来、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙などが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、溶剤紡糸セルロースを主体成分とする電解紙は200℃以上の高温では炭化や分解してしまうため、乾燥温度を150℃程度に抑えざるを得ず、そのため、乾燥時間が長くなり、乾燥効率、すなわち電気二重層キャパシタの製造効率が悪い問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−3834号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に見られる上記問題点を解決するものである。即ち、本発明の目的は、リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現しうる電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、耐熱性に優れるフィブリル化高分子を用い、且つ扁平度2.0以上の扁平板状繊維を用いることにより、リフロー耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0008】
本発明においては、扁平板状繊維が、芳香族ジカルボン酸成分を60モル%以上含むジカルボン酸成分と、炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンを60モル%以上含むジアミン成分とから合成される芳香族ポリアミドからなることが好ましい。
【0009】
本発明においては、不織布が、扁平板状繊維を30wt%未満含有することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータについて詳細に説明する。
【0011】
本発明における電気二重層キャパシタとは、対向する2つの電極間に電気二重層を挟んだ形で構成されてなる蓄電機能を有するものである。電気二重層キャパシタの電極としては、一対の電気二重層容量型電極、片方が電気二重層容量型電極でもう片方が酸化還元型電極の組み合わせの何れでも良い。
【0012】
電気二重層キャパシタの電解液は、水溶液系、有機溶媒系、導電性高分子の何れでも良い。有機溶媒系電解液としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホラン、スルホラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブなどの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0013】
本発明における融点または熱分解温度が250℃以上の高分子としては、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられ、これら単独でも良いし、2種類以上の組み合わせでも良い。PBZTはトランス型、シス型の何れでも良い。また、全芳香族ではない芳香族ポリアミドや芳香族ポリエステルの中にもモノマーの種類と組成比によっては、融点または熱分解温度が250℃以上のものがあり、これらを用いることができる。ここで、芳香族とは、主鎖の一部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。これらの中でも、液晶性のため均一にフィブリル化されやすい全芳香族ポリアミド、特にパラ系全芳香族ポリアミドと全芳香族ポリエステルが好ましい。全芳香族ポリエステルは、吸湿率が著しく低いため、非水電解液質を用いる電気二重層キャパシタには特に好ましい。
【0014】
パラ系全芳香族ポリアミドは、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−アミドヒドラジド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド−3,4−ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
全芳香族ポリエステルは、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを組み合わせて、組成比を変えて合成される。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明におけるフィブリル化高分子とは、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下になっている高分子を指し、米国特許第5833807号明細書や米国特許第5026456号明細書に明記されているようなフィブリッドとは異なる。本発明におけるフィブリルは、長さと巾のアスペクト比が20:1〜100000:1の範囲に分布し、カナダ標準形濾水度が0ml〜500mlの範囲にある。さらに、重量平均繊維長が0.2mm〜2mmの範囲にあるものが好ましい。
【0017】
フィブリル化高分子は、非常に細いため、繊維本数が相当多く存在するだけでなく、アスペクト比が非常に大きいため、フィブリル同士や他の繊維との絡み合う頻度が高く、緻密で細孔の小さな不織布を形成することができる。そのため、耐熱性と電解液保持性に優れる電気二重層キャパシタ用セパレータが得られる。
【0018】
フィブリル化高分子は、高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置などを用いて製造される。
【0019】
本発明における電気二重層キャパシタ用セパレータは、フィブリル化高分子を5wt%以上、80wt%以下含有することが好ましい。フィブリル化高分子の含有量が5wt%未満の場合は、該セパレータの耐熱性が不十分になりやすい。該高分子の含有量が80wt%より多くなると、該繊維に自己接着力がないため、該セパレータの引張強度や破断伸度が不十分になりやすい。
【0020】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する。扁平度とは、繊維の長径Dlと短径Dsとの比(Dl/Ds)を意味する。扁平板状繊維は、電極間の隔絶性に優れ、自己放電を抑制し、電圧維持率を高くすることができる。しかし、該繊維の含有量が多くなると、その形状が故に電気二重層キャパシタ用セパレータの空隙率が低くなり、電解液保持性とイオン透過性が不十分になり、抵抗が高くなりやすいため、含有量は30wt%未満が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる扁平板状繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂からなる単繊維や複合繊維が挙げられるが、中でも耐熱性と耐薬品性に優れることから、芳香族ジカルボン酸成分を60モル%以上含むジカルボン酸成分と、炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンを60モル%以上含むジアミン成分とから合成される芳香族ポリアミドからなるものが好ましい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸としては、キャパシタ用セパレーターの耐熱性、耐電解液性の点でテレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、フタル酸、4,4′−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を1種類のみならず2種類以上併用することができる。これら芳香族ジカルボン酸の含有量はジカルボン酸成分の60モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましい。
【0023】
上記ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、2,2−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸を1種類以上用いることができる。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を適宜含有させても良い。キャパシタ用セパレーターの強度、耐電解液性、耐熱性等の点でジカルボン酸成分が100%芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0024】
一方、ジアミン成分の60モル%以上は、炭素数が6〜12のアルキレンジアミンで構成され、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の直鎖または側鎖を有する脂肪族ジアミンが挙げられる。これらの中でも、耐電解液性の点で1,9−ノナンジアミン、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの併用が好ましい。この脂肪族アルキレンジアミンの含有量はジアミン成分の60モル%以上であるが、75モル%以上、特に90モル%以上であることが耐熱性の点で好ましい。
【0025】
上記脂肪族アルキレンジアミン以外のジアミンとしては、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルジアミン、トリシクロデカンジメチルジアミン等の脂環式ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、キシレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン、あるいは、これらの混合物を挙げることができ、これらは1種類のみならず2種類以上併用することができる。
【0026】
脂肪族アルキレンジアミンとして、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとを併用する場合、ジアミン成分の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなり、そのモル比は前者:後者=30:70〜99:1、特に前者:後者=40:60〜95:5であることが好ましい。
【0027】
また、本発明における芳香族ポリアミドは、その分子鎖における[CONH/CH2]の比が1/2〜1/8、特に1/3〜1/5であることが好ましい。この範囲の芳香族ポリアミドを使用することにより、耐電解液性および耐熱性に優れた電解コンデンサ用セパレーターが得られる。
【0028】
本発明における芳香族ポリアミドは、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましく、末端の40%以上、さらには70%以上が封止されていることが好ましい。分子鎖の末端を封止することにより、得られる電気二重層キャパシタ用セパレーターの強度、耐電解液性、耐熱性等が優れたものとなる。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であればとくに限定されるものではないが、反応性、および封止末端の安定性などの点からモノカルボン酸、モノアミンが好ましい。取り扱い易さ、反応性、封止末端の安定性の点でモノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸などが挙げられる。末端の封止率は1H−NMRにより、各末端に対応する特性シグナルの積分値より求めることができる。
【0029】
本発明で用いられる芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、結晶性ポリアミドを製造する方法として公知の任意の方法を用いることができる。例えば、酸クロライドとジアミンとを原料とする溶液重合法あるいは界面重合法、ジカルボン酸またはジカルボン酸のアルキルエステルとジアミンとを原料とする溶液重合法、固相重合法などの方法により製造できる。
【0030】
扁平板状繊維は、スリット状口金から、上記した樹脂を押出し(紡糸)して製造される。このとき、2種類以上の樹脂を複合紡糸し、分割型複合繊維にしても良い。分割型複合繊維を分割して2成分(樹脂)以上の扁平板状繊維を得て用いても良いし、例えば、溶剤処理して1成分(樹脂)以上を除去し、耐溶剤性の成分(樹脂)だけを残して扁平板状繊維を得て用いても良い。
【0031】
本発明における扁平板状繊維の長さとしては、特に限定されるものではないが、セパレータの地合が均一になりやすいことから、1〜15mmが好ましく、3〜10mmがより好ましい。繊維長が1mmより短いと、フィブリル化高分子の捕捉能が低下し、15mmより長くなると繊維同士がよれてセパレータの厚みむらが生じやすい。扁平板状繊維の厚さ(短径)は0.1μm〜30μmが好ましく、巾(長径)は0.2μm〜100μmが好ましい。厚さ(短径)が30μmより厚いと電気二重層キャパシタ用セパレータの厚みを薄くしにくい。巾(長径)が100μmより広いと、電気二重層キャパシタ用セパレータの空隙率が低くなりすぎる。
【0032】
扁平板状繊維が、分割型複合繊維から得られる場合には、分割前の繊度は5dtex以下が好ましく、分割数は3以上で多いほど好ましい。分割型複合繊維の断面は円形、楕円形、正方形、長方形何れの形状でも良い。
【0033】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、フィブリル化セルロースやバクテリアセルロースを含有しても良い。これらは、少量でもセパレータの機械的強度を強める効果があるため好ましい。ここで、フィブリル化セルロースとは、リンターをはじめとする各種パルプ、リント、溶剤紡糸セルロースなどを原料とし、高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置などを用いて主に繊維軸と平行な方向に分割、微細化されて製造されたもので、少なくとも一部が繊維径1μm以下のものを指す。
【0034】
本発明におけるバクテリアセルロースとは、微生物が産生するバクテリアセルロースのことを指す。このバクテリアセルロースは、セルロースおよびセルロースを主鎖とするヘテロ多糖を含むものおよびβ−1,3、β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖および有機酸等である。これらの多糖は単一物質で構成される場合もあるが、2種以上の多糖が水素結合などで結合して構成されている場合もあり、何れも利用できる。
【0035】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種あるいは異種の抄紙機を2つ以上組み合わせたコンビネーションマシンなどを用いて湿式抄紙し、1層あるいは多層に抄き合わせて製造される。多層の場合には、相対的に層毎に粗密の差を持たせても良い。本発明においては、抄紙機の抄紙ワイヤーには80メッシュ以上の目の細かいワイヤーを用いる。湿式抄紙の際に用いる水はイオン交換水が好ましく、分散助剤やその他添加薬品、剥離剤などは、非イオン性のものが好ましい。
【0036】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、強度向上、不純物除去、耐熱寸法安定性付与、親水性付与などの目的に応じて、熱処理、熱圧処理、プラズマ放電処理などが施される。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。
【0038】
<フィブリル化高分子1の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド(繊度2.5dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、クリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の条件で30回繰り返し処理し、重量平均繊維長0.42mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミドを作製した。以下、これをフィブリル化高分子1と表記する。
【0039】
<フィブリル化高分子2の作製>
パラ系全芳香族ポリアミド(繊度2.5dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて、クリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら30回繰り返し叩解処理し、重量平均繊維長1.1mmのフィブリル化パラ系全芳香族ポリアミドを作製した。以下、これをフィブリル化高分子2と表記する。
【0040】
<フィブリル化高分子3の作製>
全芳香族ポリエステル(繊度1.7dtex、繊維長3mm)を初期濃度5wt%になるようにイオン交換水中に分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いてクリアランスを回数を重ねる毎に狭めながら15回繰り返し叩解処理した後、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の条件で20回繰り返し処理し、重量平均繊維長0.36mmのフィブリル化全芳香族ポリエステルを作製した。以下、これをフィブリル化高分子3と表記する。
【0041】
<フィブリル化セルロース1の作製>
リンターを5wt%濃度になるようにイオン交換水中に分散させ、高圧ホモジナイザーを用いて500kg/cm2の圧力で20回繰り返し処理して、重量平均繊維長0.33mmのフィブリル化セルロース1を作製した。
【0042】
<分割型複合繊維1>
ナイロン66とポリエチレンテレフタレートの2成分を交互に層状に配してなる5分割型の分割型複合繊維(分割後の扁平度2.3、短径3μm)を分割型複合繊維1とし、扁平板状繊維の元として用いた。
【0043】
<扁平板状繊維1>
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンをジアミン成分とし、テレフタル酸をジカルボン酸成分とする芳香族ポリアミドからなる扁平度5.7の扁平板状繊維(短径1μm)を扁平板状繊維1とした。
【0044】
<セパレータの作製>
【0045】
実施例1〜19、比較例2、3
表1に示した配合比で水性スラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量15g/m2、厚み42μmの湿式不織布を作製し、それぞれ電気二重層キャパシタ用セパレータとした。実施例は1〜3、5〜8、10〜15、18、19は湿式抄紙の後、加圧せずに215℃で熱処理した。実施例3、8、9、13、18は、最後にプラズマ放電処理した。プラズマ放電処理は、0.1Torr、13.56MHz、100W・min/m2の条件で実施した。表1中の「F1」、「F2」、「F3」、「FC1」とはそれぞれフィブリル化高分子1、2、3、フィブリル化セルロース1を意味し、「分割1」、「扁平1」とは、それぞれ分割型複合繊維1、扁平板状繊維1を意味し、「PET1」、「PET2」、「PET3」とは、それぞれポリエチレンテレフタレート繊維(繊度0.1dtex、繊維長3mm)、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度1dtex、繊維長5mm)、芯部に融点255℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部に融点110℃の共重合ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体)を配してなる芯鞘複合繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm)を意味し、CMCとは、置換度1のNa−カルボシキメチルセルロースを意味する。
【0046】
比較例1
カナダ標準形濾水度0mlまで叩解した溶剤紡糸セルロース50wt%、同濾水度の麻パルプ50wt%を混合してスラリーとし、長網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量16g/m2、厚み40μm、密度0.400g/cm3の電気二重層キャパシタ用セパレータとした。
【0047】
【表1】
【0048】
<電気二重層キャパシタの作製>
電極活物質として平均粒径6μmの活性炭85%、導電材としてカーボンブラック7%、結着材としてポリテトラフルオロエチレン8%を混練して厚み0.2mmのシート状電極を作製した。これを厚み50μmのアルミニウム箔の両面に導電性接着剤を用いて接着させ、圧延して電極を作製した。この電極を正極および負極として用いた。電気二重層キャパシタ用セパレータを負極と正極の間に介して積層し、巻回機を用いて渦巻き型に巻回して渦巻き型素子を作製した。正極側および負極側の最外層には何れもセパレーターを配した。この渦巻き型素子をアルミニウム製ケースに収納した。ケースに取り付けられた正極端子および負極端子に正極リードおよび負極リードを溶接した後、電解液注液口を残してケースを封口した。この素子を収納したケースごと200℃に10時間加熱し乾燥処理した。これを室温まで放冷した後、ケース内に電解液を注入し、注液口を密栓して電気二重層キャパシタを作製した。さらに電気二重層キャパシタを240℃で10秒間リフロー処理した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C2H5)3(CH3)NBF4を溶解させたものを用いた。
【0049】
実施例1〜19、比較例1〜3で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータ並びにそれら電気二重層キャパシタ用セパレータを用いて作製した電気二重層キャパシタについて、下記の試験方法により測定し、その結果を下記表2に示した。
【0050】
<内部抵抗>
電気二重層キャパシタを2.7Vで充電した後、30Aで定電流放電したときの放電開始直後の電圧低下より算出した。
【0051】
<漏れ電流>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電し、24時間保持した時に計測される電流値を漏れ電流(mA)とした。漏れ電流が小さい程好ましい。
【0052】
<電圧維持率>
電気二重層キャパシタを2.7Vで定電圧充電した後、端子を開放し、72時間放置後の電圧を測定し、2.7Vに対する割合を電圧維持率(%)とした。電圧維持率が高い程好ましい。
【0053】
【表2】
【0054】
評価:
表1の結果から明らかなように、実施例1〜19で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、フィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなるため、リフロー耐熱性に優れ、該セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタは、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率が高く優れていた。特に実施例1〜5、7〜10、12〜14、16〜18で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、扁平度2.0以上の扁平板状繊維の含有量が30wt%未満であるため、内部抵抗と漏れ電流のバランスが良く優れていた。さらに実施例3、8、9、13、18で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、プラズマ放電処理されてなるため、そうでない場合よりも電解液との親和性が向上し、低抵抗の電気二重層キャパシタが得られた。
【0055】
一方、比較例1で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、セルロースのみからなるため、リフロー耐熱性が悪く、該セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタは、特性が著しく悪化した。
【0056】
比較例2及び3で作製した電気二重層キャパシタ用セパレータは、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有しないため、該セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタは、漏れ電流がやや大きめで、電圧維持率が低めであった。
【0057】
【発明の効果】
以上、説明したごとく、本発明によれば、耐熱性に優れ、低抵抗で漏れ電流が小さく、電圧維持率の高い電気二重層キャパシタを実現する電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することができる。
Claims (3)
- 融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子、扁平度2.0以上の扁平板状繊維を含有する不織布からなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。
- 扁平板状繊維が、芳香族ジカルボン酸成分を60モル%以上含むジカルボン酸成分と、炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンを60モル%以上含むジアミン成分とから合成される芳香族ポリアミドからなることを特徴とする請求項1記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
- 不織布が、扁平板状繊維を30wt%未満含有することを特徴とする請求項1記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
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JP2005159283A (ja) * | 2003-07-02 | 2005-06-16 | Japan Vilene Co Ltd | 湿式不織布、湿式不織布の製造方法、及び電気二重層キャパシタ用セパレータ、リチウムイオン二次電池用セパレータ、並びに電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池 |
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2003
- 2003-02-06 JP JP2003029003A patent/JP2004241601A/ja active Pending
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