JP2004241103A - 光記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

光記録媒体およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004241103A
JP2004241103A JP2003337080A JP2003337080A JP2004241103A JP 2004241103 A JP2004241103 A JP 2004241103A JP 2003337080 A JP2003337080 A JP 2003337080A JP 2003337080 A JP2003337080 A JP 2003337080A JP 2004241103 A JP2004241103 A JP 2004241103A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recording
dielectric layer
layer
film
main component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003337080A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroyasu Inoue
弘康 井上
Hironori Kakiuchi
宏憲 柿内
Masaki Aoshima
正貴 青島
Koji Mishima
康児 三島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2003337080A priority Critical patent/JP2004241103A/ja
Publication of JP2004241103A publication Critical patent/JP2004241103A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)
  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)

Abstract

【課題】 所望の波長を有するデータ記録および再生用のレーザビームに対して、良好な光学特性を発揮することができる光記録媒体を提供する。
【解決手段】 第二の記録膜22と第一の記録膜21とを含む記録層14と、記録層の近傍に設けられ、酸化物を主成分として含み、窒素が添加された第二の誘電体層13および第一の誘電体層15を備えたことを特徴とする光記録媒体。
【選択図】 図2

Description

本発明は光記録媒体およびその製造方法に関するものであり、さらに詳細には、データの記録および再生に用いるレーザビームに対して、良好な光学特性を発揮することができる光記録媒体およびその製造方法に関するものである。
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録媒体が広く利用されている。これらの光記録媒体は、CD−ROMやDVD−ROMのように、データの追記や書き換えができないタイプの光記録媒体(ROM型光記録媒体)と、CD−RやDVD−Rのように、データの追記はできるが、データの書き換えができないタイプの光記録媒体(追記型光記録媒体)と、CD−RWやDVD−RWのように、データの書き換えが可能なタイプの光記録媒体(書き換え型光記録媒体)とに大別することができる。
ROM型光記録媒体においては、製造段階において、基板に形成されるピットにより、データが記録されることが一般的であり、螺旋状に配列されたピットに沿って、レーザビームを照射し、レーザビームの反射光量を検出することによって、データを再生するように構成されている。
これに対して、追記型光記録媒体や書き換え型光記録媒体においては、基板上に螺旋状に設けられたグルーブおよび/またはランドに沿って、強度変調されたレーザビームを記録層に照射して、記録層に含まれた有機色素や相変化材料を、化学的におよび/または物理的に変化させ、記録マークを形成することにより、データを記録し、螺旋状のグルーブおよび/またはランドに沿って、記録層にレーザビームを照射し、レーザビームの反射光量を検出することによって、データを再生するように構成されている。
追記型光記録媒体や書き換え型光記録媒体においては、記録層を化学的および/または物理的に保護するとともに、変調度、すなわち、記録マークが形成された記録層の領域と、記録マークが形成されていない記録層の領域との光反射率の差が増大するように、記録層の近傍に、通常は、記録層に隣接して、誘電体層が設けられるのが一般的である。
このように、記録層の近傍に、誘電体層を設ける場合には、誘電体層が、高い変調度、すなわち、記録マークが形成された記録層の領域と、記録マークが形成されていない記録層の領域との光反射率の差を増大させるためには、誘電体層が高い屈折率nを有することが好ましく、また、誘電体層に吸収されるレーザビームのエネルギーを減少させて、データの記録感度を向上させ、反射率の低下を防止するためには、誘電体層が低い消衰係数kを有していることが好ましい。
しかしながら、従来の誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kは、光の波長に大きく依存するため、データの記録および再生に用いるレーザビームの波長によっては、誘電体層の屈折率nが低くなったり、消衰係数kが高くなったりして、光記録媒体の光学特性が悪化するという問題があった。
たとえば、誘電体層を形成するために広く用いられている酸化物のうち、ある酸化物は、レーザビームの波長が短くなると、消衰係数kが高くなるため、データの記録および再生に、青色波長領域のレーザビームを用いる次世代型の光記録媒体において、このような酸化物によって、誘電体層を形成するときは、良好な光学特性、すなわち、高い変調度と高い記録密度を得ることができないという問題があった。
したがって、本発明は、所望の波長を有するデータ記録および再生用のレーザビームに対して、良好な光学特性を発揮することができる光記録媒体およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の別の目的は、青色波長領域のデータ記録および再生用のレーザビームに対して、良好な光学特性を発揮することができる光記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、本発明の前記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、酸化物を主成分として含む誘電体層に、窒素を添加することによって、誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kのレーザビームの波長に対する依存性を変化させることが可能になることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づくものであり、本発明によれば、本発明の前記目的は、少なくとも一つの記録層と、前記少なくとも一つの記録層の近傍に設けられ、酸化物を主成分として含み、窒素が添加された誘電体層を備えたことを特徴とする光記録媒体によって達成される。
誘電体層を形成するために広く用いられている酸化物のうち、ある酸化物の屈折率nおよび消衰係数kは、光の波長に大きく依存するため、データの記録および再生に用いるレーザビームの波長によっては、誘電体層の屈折率nが低くなったり、消衰係数kが高くなったりして、光記録媒体の光学特性が悪化するという問題があり、とくに、データの記録および再生に、青色波長領域のレーザビームを用いる次世代型の光記録媒体において、このような酸化物によって、誘電体層を形成するときは、誘電体層の消衰係数kが高くなって、良好な光学特性を得ることができないという問題があったが、本発明によれば、酸化物を主成分として含む誘電体層に、窒素が添加され、酸化物を主成分として含む誘電体層に、窒素を添加することによって、誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kのレーザビームの波長に対する依存性を変化させることが可能になるから、窒素の添加量を制御することによって、所望の波長を有するデータ記録および再生用のレーザビームに対して、高い屈折率nと低い消衰係数kを有する誘電体層を形成することができ、したがって、良好な光学特性、すなわち、高い変調度と高い記録密度を有する光記録媒体を得ることが可能になる。
本発明において、好ましくは、誘電体層が、TaまたはTiOを主成分として含んでいる。誘電体層が、TaまたはTiOを主成分として含んでいるときは、誘電体層に窒素を添加した場合に、誘電体層の消衰係数kの低下が著しく、したがって、データの記録感度を大幅に向上させることが可能になり、また、青色波長領域のレーザビームに対して、誘電体層の屈折率nを大幅に向上させることが可能になるとともに、誘電体層の消衰係数kの増大を防止することができ、したがって、とくに、データの記録および再生に、青色波長領域のレーザビームを用いた場合に、高い変調度と高い記録密度を有する光記録媒体を得ることが可能になる。
本発明において、誘電体層への窒素の好ましい添加量は、誘電体層の主成分である酸化物の種類や、データの記録および再生に用いるレーザビームLの波長によって異なるが、データの記録および再生に、青色波長領域のレーザビームを用いる場合、すなわち、データの記録および再生に、380nmないし450nmの波長λを有するレーザビームを用いる場合には、誘電体層がTaを主成分として含んでいるときは、1ないし12原子%の窒素を誘電体層に添加することが好ましく、より好ましくは、2ないし10原子%の窒素が、誘電体層に添加され、他方、誘電体層がTiOを主成分として含んでいるときは、1ないし5原子%の窒素を誘電体層に添加することが好ましく、より好ましくは、2ないし4原子%のの窒素が、誘電体層に添加される。ここに、誘電体層への窒素の添加量は、ESCA(Electron Spectroscopy for chemical Analisys)、すなわち、XPS(X線光電子分光法)によって求めることができる。
本発明において、光記録媒体が、酸化物を主成分として含む複数の誘電体層を有している場合、少なくとも1つの誘電体層に窒素が添加されていればよい。
本発明において、光記録媒体が、酸化物を主成分として含む複数の誘電体層を有している場合、記録層の光入射面側に位置する誘電体層に窒素が添加されていることが好ましく、すべての誘電体層に窒素が添加されていることがより好ましい。
本発明において、380nmないし450nmの波長を有するレーザビームによって、記録層に、データが記録可能であることが好ましい。TaまたはTiOを主成分として含む誘電体層は、380nmないし450nmの波長を有するレーザビームに対して、高い屈折率nと低い消衰係数kを有している。
本発明の好ましい実施態様においては、前記少なくとも一つの記録層が、Si、Ge、Sn、Mg、C、Al、Zn、In、Cu、TiおよびBiよりなる群から選ばれる一種の元素を主成分として含む第一の記録膜と、前記第一の記録膜の近傍に設けられ、Cu、Al、ZnおよびAgよりなる群から選ばれ、第一の記録膜に含まれた元素とは異なる元素を主成分として含む第二の記録膜とによって構成され、前記レーザビームが照射されたときに、前記第一の記録膜に主成分として含まれた元素と、前記第二の記録膜に主成分として含まれた元素とが混合して、記録マークが形成されるように構成されている。
本明細書において、第一の記録膜が、ある元素を主成分として含むとは、第一の記録膜に含まれる元素のうち、その元素の含有率が最も大きいことをいい、第二の記録膜が、ある元素を主成分として含むとは、第二の記録膜に含まれる元素のうち、その元素の含有率が最も大きいことをいう。
本発明の好ましい実施態様において、第二の記録膜は、レーザビームの照射を受けたときに、第一の記録膜に主成分として含まれている元素と、第二の記録膜に主成分として含まれている元素とが混合した領域が形成されるように、第一の記録膜の近傍に位置していればよく、第二の記録膜が、第一の記録膜に接触していることは必ずしも必要でなく、第一の記録膜と第二の記録膜の間に、誘電体層などの一または二以上の他の層が介在していてもよい。
本発明の好ましい実施態様において、好ましくは、前記第二の記録膜が、前記第一の記録膜に接するように、形成されている。
本発明の好ましい実施態様において、光記録媒体は、第一の記録膜および第二の記録膜に加えて、一もしくは二以上の第一の記録膜に主成分として含まれた元素を主成分として含む記録膜、または、一もしくは二以上の第二の記録膜に主成分として含まれた元素を主成分として含む記録膜を備えていてもよい。
レーザビームが照射されたときに、第一の記録膜に主成分として含まれている元素と、第二の記録膜に主成分として含まれている元素とが混合した領域が形成される理由は必ずしも明らかでないが、レーザビームが照射されたときに、第一の記録膜に主成分として含まれている元素および第二の記録膜に主成分として含まれている元素が、部分的にあるいは全体として、溶融ないし拡散し、第一の記録膜に主成分として含まれている元素と、第二の記録膜に主成分として含まれている元素とが混合された領域が形成されるものと推測される。
このように、本発明の好ましい実施態様によれば、レーザビームが照射されたときに、第一の記録膜に主成分として含まれている元素と、第二の記録膜に主成分として含まれている元素とが混合して、第一の記録膜および第二の記録膜に、他の領域とは再生のためのレーザビームに対する反射率が異なる記録マークが形成されるとともに、少なくとも一つの誘電体層の記録マークに接する領域の少なくとも一部が結晶化して、少なくとも一つの誘電体層に、他の領域とは再生のためのレーザビームに対する反射率が異なる結晶化領域が形成されるから、記録マークが形成された領域の再生のためのレーザビームに対する反射率と、それ以外の領域の再生のためのレーザビームに対する反射率との差が十分に大きくなり、したがって、反射率の大きな差異を利用して、記録されたデータを再生し、C/N比の向上した再生信号を得ることが可能になる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第一の記録膜に隣接して、第一の誘電体膜が設けられ、前記第一の記録膜に接して形成された前記第二の誘電体膜に隣接して、第二の誘電体膜が設けられ、前記第一の誘電体膜および前記第二の誘電体膜が、それぞれ、酸化物を主成分として含み、窒素が添加されている。
本発明の好ましい実施態様においては、第一の記録膜が、Si、GeおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含んでいる。
本発明の好ましい実施態様においては、第二の記録膜に、Cu、Al、Zn、Ag、Mg,Sn、Au,TiおよびPdよりなる群から選ばれる元素で、第二の記録膜に主成分として含まれている元素と異なる元素が添加されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第一の記録膜が、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録膜が、Cuを主成分として含んでいる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第一の記録膜が、Si、Ge、Sn、MgおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含んでいる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、Cuを主成分として含む第二の記録膜に、Al、Si、Zn、Mg、Au、Sn、Ge、Ag、P、Cr、FeおよびTiよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
Cuを主成分として含む第二の記録膜に、Al、Si、Zn、Mg、Au、Sn、Ge、Ag、P、Cr、FeおよびTiよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている場合には、再生された信号中のノイズレベルをより低減させることが可能となるとともに、長期間の保存に対する信頼性を向上させることができ、さらに、第二の記録膜の熱伝導性が低下するため、レーザビームによって、第一の記録膜および第二の記録膜中に生成された熱が、効果的に、少なくとも一つの誘電体層に伝達され、少なくとも一つの誘電体層の結晶化を促進することが可能になる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、Cuを主成分として含む第二の記録膜に、Al、Zn、SnおよびAuよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
本発明の別の好ましい実施態様においては、第一の記録膜が、Si、Ge、C、Sn、ZnおよびCuよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録膜が、Alを主成分として含んでいる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、Alを主成分として含む第二の記録膜に、Mg、Au、TiおよびCuよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が添加されている。
Alを主成分として含む第二の記録膜に、Mg、Au、TiおよびCuよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が添加されている場合には、再生された信号中のノイズレベルをより低減させることが可能となるとともに、長期間の保存に対する信頼性を向上させることができ、さらに、第二の記録膜の熱伝導性が低下するため、レーザビームによって、第一の記録膜および第二の記録膜中に生成された熱が、効果的に、少なくとも一つの誘電体層に伝達され、少なくとも一つの誘電体層の結晶化を促進することが可能になる。
本発明の他の好ましい実施態様においては、第一の記録膜が、Si、Ge、CおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録膜が、Znを主成分として含んでいる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、Znを主成分として含む第二の記録膜に、Mg、CuおよびAlよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が添加されている。
Znを主成分として含む第二の記録膜に、Mg、CuおよびAlよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が添加されている場合には、再生された信号中のノイズレベルをより低減させることが可能となるとともに、長期間の保存に対する信頼性を向上させることができ、さらに、第二の記録膜の熱伝導性が低下するため、レーザビームによって、第一の記録膜および第二の記録膜中に生成された熱が、効果的に、少なくとも一つの誘電体層に伝達され、少なくとも一つの誘電体層の結晶化を促進することが可能になる。
本発明の他の好ましい実施態様においては、第一の記録膜が、Si、GeおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録膜が、Agを主成分として含んでいる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、Agを主成分として含む第二の記録膜に、CuおよびPdよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が添加されている。
Agを主成分として含む第二の記録膜に、CuおよびPdよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素が添加されている場合には、再生された信号中のノイズレベルをより低減させることが可能となるとともに、長期間の保存に対する信頼性を向上させることができ、さらに、第二の記録膜の熱伝導性が低下するため、レーザビームによって、第一の記録膜および第二の記録膜中に生成された熱が、効果的に、少なくとも一つの誘電体層に伝達され、少なくとも一つの誘電体層の結晶化を促進することが可能になる。
本発明の好ましい実施態様において、好ましくは、第一の記録膜および第二の記録膜は、第一の記録膜と第二の記録膜の総厚が2nmないし40nmとなるように、より好ましくは、第一の記録膜と第二の記録膜の総厚が2nmないし30nmになるように、さらに好ましくは、第一の記録膜と第二の記録膜の総厚が2nmないし15nmになるように形成される。
本発明の好ましい実施態様においては、光記録媒体は、2以上の互いに離間した記録層と、各記録層の近傍に設けられた誘電体層を備え、少なくとも、光入射面に最も近い記録層の近傍に設けられた誘電体層が、酸化物を、主成分として含み、窒素を添加物として含んでいる。
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも、光入射面に最も近い記録層の近傍に設けられた誘電体層が、酸化物を、主成分として含み、窒素を添加物として含んでいるから、光入射面に最も近い記録層の近傍に設けられた誘電体層は高い屈折率と低い消衰係数を有し、したがって、光入射面に最も近い記録層以外の記録層へのデータ記録特性および光入射面から離れた記録層からのデータ再生特性を大幅に向上させることが可能になる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、光入射面に最も近い記録層に対して、光入射面側に位置する誘電体層が、酸化物を、主成分として含み、窒素を添加物として含んでいる。
本発明の前記目的はまた、少なくとも1つの記録層と、前記少なくとも1つの記録層の近傍に設けられた誘電体層を備えた光記録媒体の製造方法であって、窒素ガスを含む混合ガス雰囲気下で、酸化物を気相成長させて、前記誘電体層を形成することを特徴とする光記録媒体の製造方法によって達成される。
本発明によれば、混合ガス中の窒素ガスの含有量を制御することによって、所望の量の窒素が添加された誘電体層を形成することが可能になるから、所望の波長を有するデータ記録および再生用のレーザビームに対して、高い屈折率nと低い消衰係数kを有する誘電体層を形成することができ、したがって、良好な光学特性、すなわち、高い変調度と高い記録密度を有する光記録媒体を得ることが可能になる。
本発明の好ましい実施態様においては、スパッタリングによって、酸化物を主成分として含み、窒素を添加物として含む誘電体層が形成される。
本発明によれば、所望の波長を有するデータ記録および再生用のレーザビームに対して、良好な光学特性を発揮することができる光記録媒体およびその製造方法を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、青色波長領域のデータ記録および再生用のレーザビームに対して、良好な光学特性を発揮することができる光記録媒体およびその製造方法を提供することが可能になる。
以下、添付図面に基づき、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の略斜視図であり、図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。
本実施態様にかかる光記録媒体10は、追記型の光記録媒体として構成されており、図2に示されるように、支持基板11と、支持基板11の表面上に形成された反射層12と、反射層12の表面上に形成された第二の誘電体層13と、第二の誘電体層13の表面上に形成された記録層14と、記録層14の表面上に形成された第一の誘電体層15と、第一の誘電体層15の表面上に形成された光透過層16を備えている。
図2に示されるように、記録層14は、第二の誘電体層13の表面上に形成された第二の記録膜22と、第二の記録膜22の表面上に形成された第一の記録膜21とによって構成されている。
本実施態様においては、図2に示されるように、光透過層16の光入射面16aに、レーザビームLが照射されて、光記録媒体10にデータが記録され、光記録媒体10から、データが再生されるように構成されている。
支持基板11は、光記録媒体10に求められる機械的強度を確保するための支持体として、機能する。
支持基板11を形成するための材料は、光記録媒体10の支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではない。支持基板11は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂およびオレフィン樹脂がとくに好ましい。
本実施態様においては、支持基板11は、約1.2mmの厚さを有している。
支持基板11の形状は、とくに限定されるものではないが、通常は、ディスク状、カード状あるいはシート状である。
本実施態様においては、データの記録および再生にあたって、レーザビームLは支持基板11を透過しないから、支持基板11は高い光透過性を有している必要はない。
図2に示されるように、支持基板11の表面には、交互に、グルーブ11aおよびランド11bが形成されている。支持基板11の表面に形成されたグルーブ11aおよび/またはランド11bは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザビームLのガイドトラックとして、機能する。
反射層12は、光透過層16を介して、入射したレーザビームLを反射し、再び、光透過層16から出射させる機能を有している。
反射層12の厚さは、とくに限定されるものではないが、5nmないし300nmであることが好ましく、20nmないし200nmであることが、とくに好ましい。
反射層12を形成するための材料は、レーザビームLを反射することができれば、とくに限定されるものではなく、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Auなどによって、反射層12を形成することができる。これらのうち、高い反射率を有しているAl、Au、Ag、Cu、または、AlとTiとの合金などのこれらの金属の少なくとも1つを含む合金などの金属材料が、反射層12を形成するために、好ましく用いられる。
反射層12は、レーザビームLを用いて、記録層14に記録されたデータを再生するときに、多重干渉効果によって、記録部と未記録部との反射率の差を大きくして、高い再生信号(C/N比)を得るために、設けられている。
第一の誘電体層15および第二の誘電体層13は、第一の記録膜21および第二の記録膜22によって構成された記録層14を保護する役割を果たす。したがって、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13により、長期間にわたって、記録層14に記録されたデータの劣化を効果的に防止することができる。
第一の誘電体層15および第二の誘電体層13は、それぞれ、TaまたはTiOを主成分として含み、添加物として、窒素を含んでいる。
TaあるいはTiOの屈折率nおよび消衰係数kは、光の波長に大きく依存するため、TaまたはTiOを用いて、誘電体層を形成した場合に、データの記録および再生に用いるレーザビームの波長によっては、誘電体層の屈折率nが低くなったり、消衰係数kが高くなったりして、光記録媒体の光学特性が悪化するという問題があり、とくに、データの記録および再生に、青色波長領域のレーザビームが用いる次世代型の光記録媒体において、誘電体層の消衰係数kが高くなって、良好な光学特性を得ることができないという問題があった。
しかしながら、本発明者の研究によれば、酸化物を主成分として含む誘電体層に、窒素を添加することによって、誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kのレーザビームの波長に対する依存性を変化させることができ、窒素の添加量を制御することによって、所望の波長を有するデータ記録および再生用のレーザビームに対して、十分に高い屈折率nと十分に低い消衰係数kを有する誘電体層を形成し得ることが見出されている。
すなわち、TaまたはTiOを主成分とし、添加物として、窒素を含まない誘電体層の屈折率n0と、TaまたはTiOを主成分とし、添加物として、窒素を含む誘電体層の屈折率nとの差(n0−n)は、データ記録および再生に用いるレーザビームLの波長が短いほど、小さく、また、TaまたはTiOを主成分とし、添加物として、窒素を含まない誘電体層の消衰係数k0と、TaまたはTiOを主成分とし、添加物として、窒素を含む誘電体層の消衰係数kとの差(k0−k)は、データ記録および再生に用いるレーザビームLの波長が短いほど、大きくなることが見出されており、とくに、窒素の添加量を選択することによって、データ記録および再生に、青色波長域のレーザビームL、すなわち、380nmないし450nmの波長λを有するレーザビームLを用いた場合においても、誘電体層の屈折率nがn0よりも大きく、かつ、誘電体層の消衰係数kがk0よりも小さくなるように、誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kを設定することが可能になることが見出されている。
また、本発明者のさらなる研究によれば、Taを主成分として含み、窒素が添加されていない誘電体層の屈折率n0は、レーザビームLの波長が短くなるにつれて、大きく低下するのに対し、Taを主成分として含み、所定量の窒素が添加されている誘電体層の屈折率nは、レーザビームLの波長が短くなるにつれて、大きく増大し、Taを主成分として含み、所定量の窒素が添加されている誘電体層の消衰係数kは、窒素が添加されていない誘電体層の消衰係数k0よりも小さく、レーザビームLの波長が短くなるにつれて、より一層小さくなることが見出されており、また、TiOを主成分として含み、窒素が添加されていない誘電体層の屈折率n0は、レーザビームLの波長が変化しても、ほとんど変化しないのに対し、TiOを主成分として含み、所定量の窒素が添加されている誘電体層の屈折率nは、レーザビームLの波長が短くなるにつれて、増大し、TiOを主成分として含み、所定量の窒素が添加されている誘電体層の消衰係数kは、窒素が添加されていない誘電体層の消衰係数k0よりも小さく、レーザビームLの波長が短くなるにつれて、より一層小さくなることが見出されている。
したがって、本実施態様においては、データの記録および再生に、405nmの波長λを有するレーザビームLを用いた場合に、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の屈折率nが、それぞれ、十分に高くなり、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13への窒素の添加量が決定されている。
第一の誘電体層15および第二の誘電体層13は、互いに同じ材料によって形成されていてもよいが、異なる材料によって形成されていてもよい。
第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の層厚は、とくに限定されるものではないが、3ないし200nmであることが好ましい。第一の誘電体層15あるいは第二の誘電体層13の層厚が3nm未満であると、上述した効果が得られにくくなる。一方、第一の誘電体層15あるいは第二の誘電体層13の層厚が200nmを越えると、成膜に要する時間が長くなり、光記録媒体10の生産性が低下するおそれがあり、さらに、第一の誘電体層15あるいは第二の誘電体層13のもつ応力によって、光記録媒体10にクラックが発生するおそれがある。
記録層14は、データを記録する層である。
本実施態様においては、記録層14は、第一の記録膜21および第二の記録膜22によって構成され、第一の記録膜21は、光透過層16側に配置され、第二の記録膜22は、基板11側に配置されている。
本実施態様においては、第一の記録膜21は、Si、GeおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録膜22は、Cuを主成分として、含んでいる。
第二の記録膜22に主成分として含まれているCuは、レーザビームが照射されたときに、第一の記録膜21に主成分として含まれている元素とともに速やかに混合して、記録マークを形成し、これによって、第一の記録膜21および第二の記録膜22に、データを速やかに記録することが可能になる。
第一の記録膜21の記録感度を向上させるために、第一の記録膜21に、さらに、Mg、Al、Cu、Ag、Auよりなる群から選ばれ1または2以上の元素が添加されていてもよい。
また、第二の記録膜22の保存信頼性の向上させ、記録感度を向上させるために、第二の記録膜22に、さらに、Al、Si、Zn、MgおよびAuよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されていてもよい。第二の記録膜22に添加すべき元素の添加量は、1原子%以上、50原子%未満であることが好ましい。
第一の記録膜21および第二の記録膜22の総厚が厚くなればなるほど、レーザビームLが照射される第一の記録膜21の表面平滑性が低下し、その結果、再生された信号中のノイズレベルが高くなるとともに、記録感度が低下する。その一方で、第一の記録膜21および第二の記録膜22の総厚が薄すぎると、データを記録する前後の反射率の差が少なくなり、高い再生信号(C/N比)を得ることができなくなり、膜厚制御も困難になる。
そこで、本実施態様においては、第一の記録膜21と第二の記録膜22の総厚が、2nmないし40nmになるように、第一の記録膜21および第二の記録膜22が形成されている。より高い再生信号(C/N比)を得るとともに、再生信号中のノイズレベルをより一層低下させるためには、第一の記録膜21と第二の記録膜22の総厚が、2nmないし20nmであることが好ましく、2nmないし15nmであることがより好ましい。
第一の記録膜21および第二の記録膜22のそれぞれの膜厚は、とくに限定されるものではないが、記録感度を十分に向上させ、データを記録する前後の反射率の変化を十分に大きくするためには、第一の記録膜21の膜厚が、1nmないし30nmであり、第二の記録膜22の膜厚が、1nmないし30nmであることが好ましい。さらに、レーザビームを照射する前後の反射率の変化を十分に大きくするために、第一の記録膜21の膜厚と第二の記録膜22の膜厚との比(第一の記録膜21の膜厚/第二の記録膜22の膜厚)は、0.2ないし5.0であることが好ましい。
光透過層16は、レーザビームLが透過する層であり、10μmないし300μmの厚さを有していることが好ましく、より好ましくは、光透過層16は、50μmないし150μmの厚さを有している。
光透過層16を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、スピンコーティング法などによって、光透過層16を形成する場合には、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが好ましく用いられ、より好ましくは、紫外線硬化性樹脂によって、光透過層16が形成される。
光透過層16は、第一の誘電体層15の表面に、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成されてもよい。
以上のような構成を有する光記録媒体10は、たとえば、以下のようにして、製造される。
まず、スタンパ(図示せず)を用い、射出成形法によって、表面に、グルーブ11aおよびランド11bが形成された支持基板11を作製する。
さらに、グルーブ11aおよびランド11bが形成された支持基板11の表面上に、反射層12が形成される。
反射層12は、たとえば、反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
次いで、反射層12の表面上に、第二の誘電体層13が形成される。
本実施態様においては、第二の誘電体層13は、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガスをスパッタリングガスとして用い、Ta、TiOなどの酸化物をターゲットとして用いたスパッタリング法によって、形成され、その結果、第二の誘電体層13は、Ta、TiOなどの酸化物を主成分として含み、窒素が添加された組成を有している。ここに、第二の誘電体層13中の窒素の含有量は、第二の誘電体層13が高い屈折率nと低い消衰係数kを有するように、決定されており、第二の誘電体層13中の窒素の含有量は、スパッタリングガス中の窒素ガスの割合を制御することによって、制御することができる。
さらに、第二の誘電体層13の表面上に、第二の記録膜22が形成される。第二の記録膜22は、第二の記録膜22の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
次いで、第二の記録膜22の表面上に、第一の記録膜21が形成される。第一の記録膜21も、第一の記録膜31の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって形成することができ、気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
本実施態様においては、第一の記録膜21と第二の記録膜22の総厚が、2nmないし40nmとなるように、第一の記録膜21および第二の記録膜22が形成されるから、第一の記録膜21の表面平滑性を向上させることができる。
さらに、第一の記録膜31の表面上に、第一の誘電体層15が形成される。
本実施態様においては、第一の誘電体層15もまた、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガスをスパッタリングガスとして用い、Ta、TiOなどの酸化物をターゲットとしたスパッタリング法によって、形成され、その結果、第二の誘電体層13は、Ta、TiOなどの酸化物を主成分として含み、窒素が添加された組成を有している。ここに、第一の誘電体層15中の窒素の含有量は、第一の誘電体層15が高い屈折率nと低い消衰係数kを有するように、決定されており、第一の誘電体層15中の窒素の含有量は、スパッタリングガス中の窒素ガスの割合を制御することによって、制御することができる。
最後に、第一の誘電体層15の表面上に、光透過層16が形成される。光透過層16は、たとえば、粘度調整されたアクリル系の紫外線硬化性樹脂あるいはエポキシ系の紫外線硬化性樹脂を、スピンコーティング法などによって、第一の誘電体層15の表面に塗布して、塗膜を形成し、紫外線を照射して、塗膜を硬化させることによって、形成することができる。
以上のようにして、光記録媒体10が製造される。
以上のような構成を有する光記録媒体10に、たとえば、以下のようにして、データが記録される。
まず、図2に示されるように、所定のパワーを有するレーザビームLが、光透過層16を介して、第一の記録膜21および第二の記録膜22に照射される。
データを高い記録密度で、光記録媒体10に記録するためには、450nm以下の波長を有するレーザビームLを、開口数NAが0.7以上の対物レンズ(図示せず)を用いて、光記録媒体10上に集束することが好ましく、λ/NA≦640nmであることがより好ましい。
本実施態様においては、405nmの波長を有するレーザビームLが、開口数が0.85の対物レンズを用いて、光記録媒体10上に集束される。
その結果、レーザビームLが照射された領域において、第一の記録膜21に主成分として含まれた元素と、第二の記録膜22に主成分として含まれた元素とが混合されて、図3に示されるように、第一の記録膜21に主成分として含まれた元素と、第二の記録膜22に主成分として含まれた元素とが混合された混合領域が形成され、記録マークMが形成される。
第一の記録膜21に主成分として含まれた元素と、第二の記録膜22に主成分として含まれた元素とが混合されて、記録マークMが形成されると、記録マークMが形成された領域の反射率が大きく変化し、したがって、こうして形成された記録マークMの反射率は、その周囲の領域の反射率と大きく異なることになるので、記録されたデータを再生する際に、高い再生信号(C/N比)が得ることが可能になる。
本実施態様によれば、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13への窒素の添加量が決定されているから、光記録媒体10に、データを記録するにあたり、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13に吸収されるレーザビームのエネルギーを減少させて、データの記録感度を向上させることが可能になり、光記録媒体10から、データを再生するにあたり、変調度、すなわち、記録マークが形成された記録層14の領域と、記録マークが形成されていない記録層14の領域との光反射率の差を増大させることが可能になるとともに、記録層14の反射率の低下を防止することが可能になる。
図4は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の層構成を示す略断面図である。
本実施態様にかかる光記録媒体は、書き換え型の光記録媒体として構成されており、図4に示されるように、支持基板11と、支持基板11の表面上に形成された反射層12と、反射層12の表面上に形成された第二の誘電体層13と、第二の誘電体層13の表面上に形成された記録層14と、記録層14の表面上に形成された第一の誘電体層15と、第一の誘電体層15の表面上に形成された光透過層16を備えている。
本実施態様においても、光透過層16の光入射面16aに、レーザビームLが照射されて、光記録媒体10にデータが記録され、光記録媒体10から、データが再生されるように構成されている。
本実施態様にかかる光記録媒体10の支持基板11、反射層12および光透過層16は、それぞれ、図2に示された実施態様にかかる光記録媒体10の支持基板11、反射層12および光透過層16と同様の機能を有し、同様に構成されている。
本実施態様にかかる光記録媒体10の第一の誘電体層15および第二の誘電体層13は、記録層14を保護する役割を果たしている点を除き、図2に示された実施態様にかかる光記録媒体10の第一の誘電体層15および第二の誘電体層13と同様の構成を有している。
すなわち、本実施態様においても、データの記録および再生に、405nmの波長λを有するレーザビームLを用いた場合に、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の屈折率nが、それぞれ、十分に高くなり、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13への窒素の添加量が決定されている。
記録層14は、データを記録する層である。
本実施態様においては、記録層14は、相変化材料によって形成されており、結晶状態にある場合の反射率と、アモルファス状態にある場合の反射率とが異なることを利用して、記録層14にデータが記録され、記録層14からデータが再生される。
記録層14を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、高速で、データを直接的に上書きすることを可能にするためには、アモルファス状態から結晶状態への相変化に要する時間(結晶化時間)が短いことが好ましく、このような材料としては、SbTe系材料を挙げることができる。
SbTe系材料としては、SbTeのみでもよいし、結晶化時間をより短縮するとともに、長期の保存に対する信頼性を高めるために、添加物が添加されていてもよい。
具体的には、組成式(SbTe1−x1−y(MはSbおよびTeを除く元素である。)で表されるSbTe系材料のうち、0.55≦x≦0.9、0≦y≦0.25であるSbTe系材料によって、記録層14が形成されることが好ましく、0.65≦x≦0.85、0≦y≦0.25であるSbTe系材料によって、記録層14が形成されることがより好ましい。
元素Mはとくに限定されるものではないが、結晶化時間を短縮し、保存信頼性を向上させるためには、元素Mが、In,Ag,Au,Bi,Se,Al,P,Ge,H,Si,C,V,W,Ta,Zn,Mn,Ti,Sn,Pd,N,Oおよび希土類元素よりなる群から選ばれる1または2以上の元素であることが好ましい。とくに、保存信頼性を向上させるためには、元素Mが、Ag,In,Geおよび希土類元素よりなる群から選ばれる1または2以上の元素によって構成されることが好ましい。
以上のような構成を有する光記録媒体10は、たとえば、以下のようにして、製造される。
図2に示された光記録媒体10と同様にして、まず、支持基板11が作製され、支持基板11の表面上に、反射層12が形成される。
次いで、反射層12の表面上に、図2に示された光記録媒体10と同様にして、第二の誘電体層13が形成される。
さらに、第二の誘電体層13の表面上に、記録層14が形成される。記録層14は、記録層14の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
さらに、図2に示された実施態様において、第一の記録膜21の表面上に、第一の誘電体層15を形成したのと同様にして、記録層14の表面上に、第一の誘電体層15が形成される。
最後に、第一の誘電体層15の表面上に、光透過層16が形成される。光透過層16は、たとえば、粘度調整されたアクリル系の紫外線硬化性樹脂あるいはエポキシ系の紫外線硬化性樹脂を、スピンコーティング法などによって、第一の誘電体層15の表面に塗布して、塗膜を形成し、紫外線を照射して、塗膜を硬化させることによって、形成することができる。
以上のようにして、図4に示された光記録媒体10が製造される。
以上のような構成を有する光記録媒体10に、たとえば、以下のようにして、データが記録される。
まず、所定のパワーを有するレーザビームLが、光透過層16を介して、記録層14に照射される。
図2に示された前記実施態様と同様に、本実施態様においても、405nmの波長を有するレーザビームLが、開口数が0.85の対物レンズを用いて、光記録媒体10上に集束される。
レーザビームLを照射することにより、記録層14の所定の領域を、相変化材料の融点以上の温度に加熱し、急冷するときは、その領域の状態がアモルファス状態になり、一方、レーザビームLを照射することにより、記録層14の所定の領域を、相変化材料の結晶化温度以上の温度に加熱し、除冷すると、その領域の状態は結晶化状態になる。
記録層14のアモルファス状態になった領域により、記録マークが形成され、記録マークの長さと、隣り合った記録マークとの間のブランク領域の長さによって、記録層14に記録されたデータが構成される。
本実施態様においては、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13への窒素の添加量が決定されているから、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13に吸収されるレーザビームのエネルギーを減少させて、データの記録感度を向上させることが可能になる。
一方、光記録媒体10の記録層14に記録されたデータを再生する場合には、光透過層16の光入射面16aに、強度変調されたレーザビームLが照射され、記録層14に、レーザビームLのフォーカスが合わせられる。
記録層14の領域が、アモルファス状態である場合と、結晶化状態である場合とで、反射率が異なるから、記録層14から反射されたレーザビームLの光量を検出することにより、記録層14に記録されたデータを再生することができる。
本実施態様においては、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13への窒素の添加量が決定されているから、変調度、すなわち、記録マークが形成された記録層の領域と、記録マークが形成されていない記録層の領域との光反射率の差を増大させることが可能になるとともに、記録層14の反射率の低下を防止することが可能になる。
本実施態様によれば、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13への窒素の添加量が決定されているから、光記録媒体10に、データを記録するにあたり、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13に吸収されるレーザビームのエネルギーを減少させて、データの記録感度を向上させることが可能になり、光記録媒体10から、データを再生するにあたり、変調度、すなわち、記録マークが形成された記録層の領域と、記録マークが形成されていない記録層の領域との光反射率の差を増大させることが可能になるとともに、記録層14の反射率の低下を防止することが可能になる。
図5は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の層構成を示す略断面図である。
本実施態様にかかる光記録媒体30は、追記型の光記録媒体として構成されており、図5に示されるように、支持基板31と、透明中間層32と、光透過層33と、支持基板31と透明中間層32との間に設けられたL0層40と、透明中間層32と光透過層33との間に設けられたL1層50とを備えている。
L0層40およびL1層50は、データを記録する記録層であり、本実施態様にかかる光記録媒体30は、二層の記録層を有している。
図5に示されるように、L0層40は、光入射面33aから遠い記録層を構成し、支持基板31側から、反射膜41、第四の誘電体膜42、第二のL0記録膜43a、第一のL0記録膜43bおよび第三の誘電体膜44が積層されて、構成されている。
一方、L1層50は、光入射面33aに近い記録層を構成し、図5に示されるように、支持基板31側から、反射膜51、第二の誘電体膜52、第二のL1記録膜53a、第一のL1記録膜53bおよび第一の誘電体膜54が積層されて、構成されている。
L0層40に、データを記録し、L0層40に記録されたデータを再生する場合には、光入射面33aに近い側に位置するL1層50を介して、レーザビームLが照射される。
支持基板31は、光記録媒体10に求められる機械的強度を確保するための支持体として、機能し、図2に示された光記録媒体10の支持基板11と同様に、構成されている。
透明中間層32は、L0層40とL1層50とを物理的および光学的に十分な距離をもって離間させる機能を有している。
図5に示されるように、透明中間層32の表面には、支持基板31の表面に形成されたグルーブ31aおよびランド31bに対応して、交互に、グルーブ32aおよびランド32bが設けられている。透明中間層32の表面に形成されたグルーブ32aおよび/またはランド32bは、L0層40にデータを記録する場合およびL0層40からデータを再生する場合において、レーザビームLのガイドトラックとして、機能する。
透明中間層32は、10μmないし50μmの厚さを有するように形成されることが好ましく、さらに好ましくは、15μmないし40μmの厚さを有するように、形成される。
透明中間層32を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。
透明中間層32は、L0層40にデータを記録し、L0層40からデータを再生する場合に、レーザビームLが通過するため、十分に高い光透過性を有している必要がある。
透明中間層32を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。
光透過層33は、レーザビームLを透過させる層であり、その一方の表面によって、光入射面33aが構成されている。光透過層33は、図2に示された光記録媒体10の光透過層16と同様に、構成されている。
L0層40は、Si、GeおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一のL0記録膜43bと、Cuを主成分として含む第二のL0記録膜43aを備えている。
再生信号のノイズレベルを低下させ、保存信頼性を向上させるために、第二のL0記録膜43aに、Al、Zn、Sn、MgおよびAuよりなる群から選ばれ1または2以上の元素が添加されていることが好ましい。
L1層50は、Siを主成分として含む第一のL1記録膜53bと、Cuを主成分として含む第二のL1記録膜53aを備えている。
本実施態様において、L0層40に含まれた第四の誘電体膜42および第三の誘電体膜44ならびにL1層50に含まれた第三の誘電体膜52および第一の誘電体膜54は、いずれも、TaまたはTiOを主成分とし、添加物として、窒素を含んでおり、第一の誘電体膜54、第二の誘電体膜52、第三の誘電体膜44および第四の誘電体膜42の各々への窒素の添加量は、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、それぞれの屈折率nが、それぞれ、十分に高く、消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、決定されている。
図6は、図5に示された光記録媒体のL1層50にレーザビームLが照射された後の状態を示す略拡大断面図である。
図6に示されるように、光入射面33aを介して、光記録媒体30のL1層50に、レーザビームLが照射されると、第二のL1記録膜53aに主成分として含まれているCuと、第一のL1記録膜53bに主成分として含まれているSiとが速やかに溶融ないし拡散して、CuとSiとが混合した領域Mが形成され、記録マークMが形成される。
同様に、光入射面33aを介して、光記録媒体30のL040に、レーザビームLが照射されると、第二のL1記録膜43aに主成分として含まれているCuと、第一のL1記録膜43bに主成分として含まれているSiとが速やかに溶融ないし拡散して、CuとSiとが混合した領域Mが形成され、記録マークMが形成される。
こうして、記録マークMが形成されたL0層40またはL1層50の領域の反射率は、その周囲のL0層40またはL1層50の領域の反射率と大きく異なるため、L0層40またはL1層50に、レーザビームLを照射し、L0層40またはL1層50によって、反射されたレーザビームLの光量を検出することによって、高い再生信号(C/N比)が得ることができる。
本実施態様によれば、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、L0層40に含まれた第四の誘電体膜42および第三の誘電体膜44の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、それらの消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第四の誘電体膜42および第三の誘電体膜44への窒素の添加量が決定されているから、光記録媒体10のL0層40に、データを記録するにあたり、第四の誘電体膜42および第三の誘電体膜44に吸収されるレーザビームのエネルギーを減少させて、データの記録感度を向上させることが可能になり、光記録媒体10のL0層40から、データを再生するにあたり、変調度、すなわち、記録マークが形成されたL0層40の領域と、記録マークが形成されていないL0層40の領域との光反射率の差を増大させることが可能になるとともに、L0層40の反射率の低下を防止することが可能になる。
また、本実施態様によれば、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、L1層50に含まれた第二の誘電体膜52および第一の誘電体膜54の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、それらの消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第二の誘電体膜52および第一の誘電体膜54への窒素の添加量が決定されているから、光記録媒体10のL1層50に、データを記録するにあたり、第二の誘電体膜52および第一の誘電体膜54に吸収されるレーザビームのエネルギーを減少させて、データの記録感度を向上させることが可能になり、光記録媒体10のL1層50から、データを再生するにあたり、変調度、すなわち、記録マークが形成されたL1層50の領域と、記録マークが形成されていないL1層50の領域との光反射率の差を増大させることが可能になるとともに、L1層50の反射率の低下を防止することが可能になる。
さらに、本実施態様によれば、405nmの波長λを有するレーザビームLに対して、L1層50に含まれた第二の誘電体膜52および第一の誘電体膜54の屈折率nが、それぞれ、十分に高く、それらの消衰係数kが、それぞれ、十分に低くなるように、第二の誘電体膜52および第一の誘電体膜54への窒素の添加量が決定されているから、L1層50の光透過率を増大させることができ、したがって、L0層40へのデータ記録特性およびL0層40からのデータ再生特性を大幅に向上させることが可能になる。
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
実施例1
まず、射出成型法により、1.1mmの厚さと、120mmの直径を有するディスク状のポリカーボネート基板を作製した。
こうして作製されたポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、Taターゲットを用い、800Wのパワーで、スパッタリングを実行し、ポリカーボネート基板の表面に、30nmの厚さを有し、Taを、主成分として含む誘電体層を形成した。
スパッタリングガスとしては、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガスを用い、窒素ガスの流量を0ないし35SCCMの範囲で、変化させて、誘電体層に添加された窒素の添加量が異なるサンプル#1−1ないサンプル#1−6を作製した。
次いで、サンプル#1−1ないサンプル#1−6の誘電体層中に含まれた窒素の含有量を測定し、スパッタリングガスとして、用いた混合ガスの組成と、サンプル#1−1ないサンプル#1−6の誘電体層への窒素の添加量との関係を求めた。
測定結果は、表1に示されている。
ここに、誘電体層中に含まれた窒素の含有量は、ESCA(X線光電子分光法:XPS)によって検出されたTa−4fピーク(ピーク位置:約28.2〜37.4eV)、O−1sピーク(ピーク位置:約523〜543eV)およびN−1sピーク(ピーク位置:約390〜410eV)のピーク面積に、それぞれのピーク感度係数(Sensitivity Factor)、すなわち、0.596、2.994および4.505を乗ずることによって、求めた。
Figure 2004241103
次いで、サンプル#1−1ないしサンプル#1−6に、405nmの波長を有するレーザビームおよび680nmのレーザビームを、それぞれ、照射して、屈折率nおよび消衰係数kを測定し、誘電体層への窒素の添加量(原子%)と誘電体層の屈折率nとの関係および誘電体層への窒素の添加量(原子%)と誘電体層の消衰係数kとの関係を求めた。
こうして求められた誘電体層への窒素の添加量(原子%)と誘電体層の屈折率nとの関係は、図7に示され、誘電体層への窒素の添加量(原子%)と、誘電体層の消衰係数kとの関係は、図8に示されている。
図7に示されるように、Taを主成分として含む誘電体層に添加した窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、680nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の屈折率nは、窒素の小さくなることが認められた。
これに対し、図7に示されるように、405nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の屈折率nは、Taを主成分として含む誘電体層に添加した窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、大きくなるが、窒素の添加量が約6原子%を越えると、窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、小さくなることが認められた。
一方、図8に示されるように、Taを主成分として含む誘電体層に、窒素を添加すると、405nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kおよび680nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kは、いずれも、小さくなり、添加した窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、小さくなることが認められた。
また、図8に示されるように、誘電体層への窒素の添加量が約6原子%ないし約10原子%の範囲では、405nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kおよび680nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kは、いずれも、ゼロであったが、誘電体層への窒素の添加量が約10原子%を越えると、大きくなることがわかった。
さらに、図8に示されるように、405nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kは、誘電体層に窒素を添加すると、大幅に小さくなることが認められた。
次いで、サンプル#1−1およびサンプル#1−2に照射するレーザビームの波長を350nmないし800nmの範囲内で変化させ、誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kを測定し、レーザビームの波長と誘電体層の屈折率nとの関係およびレーザビームの波長と誘電体層の消衰係数kとの関係を求めた。
レーザビームの波長と誘電体層の屈折率nとの関係を測定した結果は、図9に示され、レーザビームの波長と誘電体層の消衰係数kとの関係を測定した結果は、図10に示されている。
図9に示されるように、Taを主成分として含み、窒素が添加されていない誘電体層を備えたサンプル#1−1の屈折率nは、レーザビームの波長が短くなるにつれて、小さくなるのに対し、Taを主成分として含み、3.3原子%の窒素が添加された誘電体層を備えたサンプル#1−2の屈折率nは、レーザビームの波長が短くなるにつれて、増大し、約470nm以下の波長を有するレーザビームに対しては、サンプル#1−2の方が、サンプル#1−1よりも、屈折率nが高くなることが認められた。
また、図10に示されるように、Taを主成分として含み、窒素が添加されていない誘電体層を備えたサンプル#1−1の消衰係数kは、レーザビームの波長が短くなるにつれて、ほぼ線形に増大するのに対し、Taを主成分として含み、3.3原子%の窒素が添加された誘電体層を備えたサンプル#1−2の消衰係数kは、レーザビームの波長が変化しても、ほとんど変化せず、350nmないし800nmの波長を有するレーザビームに対する消衰係数kは、サンプル#1−1の方が、サンプル#1−2よりも小さく、レーザビームの波長が短くなるほど、その差が大きくなることがわかった。
実施例2
まず、射出成型法により、1.1mmの厚さと、120mmの直径を有するディスク状のポリカーボネート基板を作製した。
こうして作製されたポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、TiOターゲットを用い、800Wのパワーで、スパッタリングを実行し、ポリカーボネート基板の表面に、30nmの厚さを有し、TiOを、主成分として含む誘電体層を形成した。
スパッタリングガスとしては、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガスを用い、窒素ガスの流量を0ないし35SCCMの範囲で、変化させて、誘電体層に添加された窒素の添加量が異なるサンプル#2−1ないサンプル#2−8を作製した。
次いで、サンプル#2−1ないサンプル#2−8の誘電体層中に含まれた窒素の含有量を測定し、スパッタリングガスとして、用いた混合ガスの組成と、サンプル#2−1ないサンプル#2−8の誘電体層への窒素の添加量との関係を求めた。
測定結果は、表2に示されている。
ここに、誘電体層中に含まれた窒素の含有量は、ESCA(Electron Spectroscopy for chemical Analisys)、すなわち、XPS(X線光電子分光法)によって検出されたチタンの2pピーク(ピーク位置:約443.8ないし473.8eV)、酸素の1sピーク(ピーク位置:約523ないし543eV)および窒素の1sピーク(ピーク位置:約390ないし410eV)のピーク面積に、それぞれのピーク感度係数(Sensitivity Factor)、すなわち、1.703、2.994および4.505を乗じることよって、求めた。
Figure 2004241103
次いで、サンプル#2−1ないしサンプル#2−8に、405nmの波長を有するレーザビームおよび680nmのレーザビームを、それぞれ、照射して、屈折率nおよび消衰係数kを測定し、誘電体層への窒素の添加量(原子%)と光記録媒体の屈折率nとの関係および誘電体層への窒素の添加量(原子%)と誘電体層の消衰係数kとの関係を求めた。
こうして求められた誘電体層への窒素の添加量(原子%)と誘電体層の屈折率nとの関係は、図11に示され、誘電体層への窒素の添加量(原子%)と、誘電体層の消衰係数kとの関係は、図12に示されている。
図11に示されるように、405nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の屈折率nは、TiOを主成分として含む誘電体層に添加した窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、大きくなるが、窒素の添加量が約4.5原子%を越えると、窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、徐々に小さくなることが認められた。
これに対して、図11に示されるように、680nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の屈折率nは、TiOを主成分として含む誘電体層に、窒素を添加しても、ほとんど変わらないことが判明した。
他方、図12に示されるように、405nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kは、窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、小さくなるが、窒素の添加量が約2.7原子%を越えると、逆に増大することがわかった。
また、図12に示されるように、680nmの波長を有するレーザビームに対する誘電体層の消衰係数kは、窒素の添加量(原子%)が多くなるほど、小さくなるが、窒素の添加量が約3原子%を越えると、逆に増大することがわかった。
次いで、サンプル#2−1およびサンプル#2−3に照射するレーザビームの波長を350nmないし800nmの範囲内で変化させ、誘電体層の屈折率nおよび消衰係数kを測定し、レーザビームの波長と誘電体層の屈折率nとの関係およびレーザビームの波長と誘電体層の消衰係数kとの関係を求めた。
レーザビームの波長と誘電体層の屈折率nとの関係を測定した結果は、図13に示され、レーザビームの波長と誘電体層の消衰係数kとの関係を測定した結果は、図14に示されている。
図13に示されるように、TiOを主成分として含み、窒素が添加されていない誘電体層を備えたサンプル#2−1の屈折率nは、レーザビームの波長が短くなっても、それほど変化しなかったのに対し、TiOを主成分として含み、2.9原子%の窒素が添加された誘電体層を備えたサンプル#2−3の屈折率nは、レーザビームの波長が短くなるにつれて、増大し、青色波長域のレーザビームに対し、屈折率nがきわめて大きくなることがわかった。
また、図14に示されるように、TiOを主成分として含み、窒素が添加されていない誘電体層を備えたサンプル#2−1の消衰係数kおよびTiOを主成分として含み、2.9原子%の窒素が添加された誘電体層を備えたサンプル#2−3の消衰係数kは、ともに、レーザビームの波長が短くなるにつれて、増大することが認められ、レーザビームの波長にかかわらず、サンプル#2−1の消衰係数kの方が、サンプル#2−3の消衰係数kよりも大きいことがわかった。
実施例3
以下のようにして、光記録媒体サンプル#3−1を作製した。
まず、射出成型法により、1.1mmの厚さと、120mmの直径を有するディスク状のポリカーボネート基板を作製した。
次いで、こうして作成されたポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、ポリカーボネート基板の表面上に、Agを主成分として含み、100nmの厚さを有する反射膜、TiOを主成分として含み、2.9原子%の窒素が添加された17nmの厚さを有する第二の誘電体膜、Cuを主成分として含み、23原子%のAlおよび13原子%のAuが添加された5nmの厚さを有する第二の記録膜、Siを主成分として含み、5nmの厚さを有する第一の記録膜ならびにTiOを主成分として含み、2.9原子%の窒素が添加された17nmの厚さを有する第一の誘電体膜を、順次、スパッタリング法によって、形成した。
さらに、アクリル系紫外線硬化性樹脂を、溶剤に溶解して、調製した樹脂溶液を、第一の誘電体膜上に、スピンコーティング法によって、塗布して、塗膜を形成し、塗膜に、紫外線を照射して、アクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させ、100μmの厚さを有する光透過層を形成した。
次いで、以下のようにして、光記録媒体サンプル#3−2を作製した。
まず、射出成型法により、1.1mmの厚さと、120mmの直径を有するディスク状のポリカーボネート基板を作製した。
次いで、こうして作成されたポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、ポリカーボネート基板の表面上に、Agを主成分として含み、100nmの厚さを有する反射膜、TiOを主成分として含み、20nmの厚さを有する第二の誘電体膜、Cuを主成分として含み、23原子%のAlおよび13原子%のAuが添加された5nmの厚さを有する第二の記録膜、Siを主成分として含み、5nmの厚さを有する第一の記録膜ならびにTiOを主成分として含む23nmの厚さを有する第一の誘電体膜を、順次、スパッタリング法によって、形成した。
さらに、アクリル系紫外線硬化性樹脂を、溶剤に溶解して、調製した樹脂溶液を、第一の誘電体膜上に、スピンコーティング法によって、塗布して、塗膜を形成し、塗膜に、紫外線を照射して、アクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させ、100μmの厚さを有する光透過層を形成した。
次いで、光記録媒体サンプル#3−1および#3−2に、最も高い変調度が得られる記録条件で、レーザビームを照射して、データを記録し、変調度を測定した。
得られた最も高い変調度と、最も高い変調度が得られたレーザビームのパワーの測定結果は、表3に示されている。
Figure 2004241103
表3に示されるように、第一の誘電体膜および第二の誘電体膜に、窒素が添加されている光記録媒体サンプル#3−1の方が、第一の誘電体膜および第二の誘電体膜に、窒素が添加されていない光記録媒体サンプル#3−2よりも、パワーの低いレーザビームで、高い変調度が得られることが判明した。
したがって、TiOを主成分として含む第一の誘電体膜および第二の誘電体膜に、窒素を添加することによって、光記録媒体の変調度および記録感度を向上させることができることがわかった。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
たとえば、図2および図3に示された実施態様ならびに図4に示された実施態様においては、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13が、いずれも、添加物として、窒素を含み、図5および図6に示された実施態様においては、L0層40に含まれた第四の誘電体膜42および第三の誘電体膜44ならびにL1層50に含まれた第三の誘電体膜52および第一の誘電体膜54が、いずれも、添加物として、窒素を含んでいるが、光記録媒体10、30に形成されたすべての誘電体層ないし誘電体膜が、添加物として、窒素を含んでいることは好ましいが、必ずしも必要でなく、少なくとも1つの誘電体層ないし誘電体膜が、添加物として、窒素を含んでいればよく、記録層の光入射面側の誘電体層ないし誘電体膜が、添加物として、窒素を含んでいることが好ましい。
さらに、図2および図3に示された実施態様においては、第一の記録膜21と第二の記録膜22が、互いに接触するように形成されているが、第二の記録膜22は、レーザビームLの照射を受けたときに、第一の記録膜21に主成分として含まれている元素と、第二の記録膜22に主成分として含まれている元素とが混合して、記録マークMが形成されるように、第一の記録膜21の近傍に配置されていればよく、第一の記録膜21と第二の記録膜22が、互いに接触するように形成されていることは必ずしも必要でなく、第一の記録膜21と第二の記録膜22の間に、誘電体層などの一または二以上の他の層が介在していてもよい。
また、図2および図3に示された実施態様ならびに図4に示された実施態様においては、光記録媒体10は反射層12を備え、図5に示された実施態様においては、L0層40およびL1層50は、それぞれ、反射膜41、51を備えているが、記録マークMが形成された領域によって反射されたレーザビームLのレベルと、記録マークMが形成されていないブランク領域によって反射されたレーザビームLのレベルの差が十分に大きい場合には、反射層12および反射膜41、51を省略することもできる。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の略斜視図である。 図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。 図3は、データが記録された後の図2に示された光記録媒体の略拡大断面図である。 図4は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の層構成を示す略断面図である。 図5は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の層構成を示す略断面図である。 図6は、データが記録された後の図5に示された光記録媒体の略拡大断面図である。 図7は、実施例1における誘電体層への窒素の添加量と誘電体層の屈折率nとの関係を示すグラフである。 図8は、実施例1における誘電体層への窒素の添加量と、誘電体層の消衰係数kとの関係を示すグラフである。 図9は、実施例1におけるレーザビームの波長と誘電体層の屈折率nとの関係を示すグラフである。 図10は、実施例1におけるレーザビームの波長と誘電体層の消衰係数kとの関係を示すグラフである。 図11は、実施例2における誘電体層への窒素の添加量と誘電体層の屈折率nとの関係を示すグラフである。 図12は、実施例2における誘電体層への窒素の添加量と、誘電体層の消衰係数kとの関係を示すグラフである。 図13は、実施例2におけるレーザビームの波長と誘電体層の屈折率nとの関係を示すグラフである。 図14は、実施例1におけるレーザビームの波長と誘電体層の消衰係数kとの関係を示すグラフである。
符号の説明
10 光記録媒体
11 支持基板
11a グルーブ
11b ランド
12 反射層
13 第二の誘電体層
14 記録層
15 第一の誘電体層
16 光透過層
16a 光入射面
21 第一の記録膜
22 第二の記録膜
40 L0層
41 反射膜
42 第四の誘電体膜
43a 第二のL0記録膜
43b 第一のL0記録膜
44 第三の誘電体膜
50 L1層
51 反射膜
52 第二の誘電体膜
53a 第二のL1記録膜
53b 第二のL1記録膜
54 第一の誘電体膜
L レーザビーム
M 記録マーク

Claims (11)

  1. 少なくとも一つの記録層と、前記少なくとも一つの記録層の近傍に設けられ、酸化物を主成分として含み、窒素が添加された誘電体層を備えたことを特徴とする光記録媒体。
  2. 前記誘電体層が、TaおよびTiOよりなる群から選ばれた酸化物を主成分として含んでいることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 前記少なくとも一つの記録層が、380nmないし450nmの波長を有するレーザビームによって、データを記録可能に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
  4. 前記少なくとも一つの記録層が、Si、Ge、Sn、Mg、C、Al、Zn、In、Cu、TiおよびBiよりなる群から選ばれる一種の元素を主成分として含む第一の記録膜と、前記第一の記録膜の近傍に設けられ、Cu、Al、ZnおよびAgよりなる群から選ばれ、第一の記録膜に含まれた元素とは異なる元素を主成分として含む第二の記録膜とによって構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  5. 前記第二の記録層が、前記第一の記録層に接するように、形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体。
  6. 前記第一の記録膜が、Si、GeおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含んでいることを特徴とする請求項4または5に記載の光記録媒体。
  7. 前記第二の記録膜が、Cuを主成分として含んでいることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  8. 前記第二の記録膜に、Cu、Al、Zn、Ag、Mg,Sn、Au,TiおよびPdよりなる群から選ばれる元素で、前記第二の記録膜に主成分として含まれている元素と異なる元素が添加されていることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  9. 2以上の互いに離間した記録層と、各記録層の近傍に設けられた誘電体層を備え、少なくとも、光入射面に最も近い記録層の近傍に設けられた誘電体層が、酸化物を、主成分として含み、窒素を添加物として含んでいることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  10. 少なくとも1つの記録層と、前記少なくとも1つの記録層の近傍に設けられた誘電体層を備えた光記録媒体の製造方法であって、窒素ガスを含む混合ガス雰囲気下で、酸化物を気相成長させて、前記誘電体層を形成することを特徴とする光記録媒体の製造方法。
  11. スパッタリング法によって、酸化物を主成分として含み、窒素を添加物として含む誘電体層を形成することを特徴とする請求項10に記載の光記録媒体の製造方法。
JP2003337080A 2002-10-22 2003-09-29 光記録媒体およびその製造方法 Pending JP2004241103A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003337080A JP2004241103A (ja) 2002-10-22 2003-09-29 光記録媒体およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002307369 2002-10-22
JP2003005635 2003-01-14
JP2003337080A JP2004241103A (ja) 2002-10-22 2003-09-29 光記録媒体およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004241103A true JP2004241103A (ja) 2004-08-26

Family

ID=32966261

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003337080A Pending JP2004241103A (ja) 2002-10-22 2003-09-29 光記録媒体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004241103A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009011391A1 (ja) * 2007-07-19 2009-01-22 Tdk Corporation 光情報媒体
WO2013190626A1 (ja) * 2012-06-18 2013-12-27 パイオニア株式会社 記録媒体及び記録再生装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009011391A1 (ja) * 2007-07-19 2009-01-22 Tdk Corporation 光情報媒体
WO2013190626A1 (ja) * 2012-06-18 2013-12-27 パイオニア株式会社 記録媒体及び記録再生装置
WO2013190949A1 (ja) * 2012-06-18 2013-12-27 パイオニア株式会社 記録媒体及び記録再生装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7276274B2 (en) Optical recording medium and method for recording and reproducing data
JP2004039146A (ja) 光記録媒体
EP1414029A2 (en) Optical recording medium and method for manufacturing the same
JP2004273067A (ja) 光記録媒体
JP2004158145A (ja) 光記録媒体
KR100731472B1 (ko) 광기록재생방법과 광기록매체
KR100614505B1 (ko) 재기록가능한 광 정보매체
JP2003072244A (ja) ライト・ワンスアプリケーション用の相変化記録素子
KR100678301B1 (ko) 광기록재생방법과 광기록매체
JP2002074742A (ja) 情報記録媒体
KR100678300B1 (ko) 광기록재생방법과 광기록매체
JP5437793B2 (ja) 情報記録媒体及びその製造方法
JP2004241103A (ja) 光記録媒体およびその製造方法
JP4105589B2 (ja) 光記録媒体および光記録方法
JP2006095821A (ja) 光記録媒体
JP2005129192A (ja) 光記録媒体
JP4542922B2 (ja) 光学的情報記録媒体とその製造方法
JP4086689B2 (ja) 光学的情報記録媒体とその製造方法
JPWO2010032348A1 (ja) 情報記録媒体及びその製造方法
WO2006025162A1 (ja) 光学的情報記録媒体およびその製造方法
JP2006247855A (ja) 多層相変化型光記録媒体
JP2004005947A (ja) 光記録媒体および光記録方法
JP4171438B2 (ja) 光記録媒体
JP2004185798A (ja) 光記録媒体
JP2005182860A (ja) 光記録媒体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051116

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070910

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080507

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080930