JP2004238902A - トンネルの分岐・合流部構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トンネルの分岐・合流部構造は、複数のシールドトンネル10,12を地中で横方向に連結して構築され、分岐・合流部16の外周を概略同一平面上で囲繞する水平ビーム部18と、水平ビーム部18に両端が支持され、分岐・合流部16の長手方向に沿って、その上部側で湾曲するように形成された一対のアーチ部20と、分岐・合流部16を構成するシールドトンネル10,12の上部とアーチ部20との間に設置され複数の吊材22とを有している。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トンネルの分岐・合流部構造に関し、特に、複数のシールドトンネルの分岐・合流部構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地下鉄用ないしは道路用トンネルは、必要に応じて、分岐・合流部が設けられる。シールド工法によりトンネルを構築している場合に、このような分岐・合流部を構築する際には、複数のトンネルを横方向に連結させることになる。
【0003】
特許ないしは非特許文献の開示は、確認していないが、従来、シールドトンネルで分岐・合流部を構築する際には、図4〜図5に示すような構造が用いられていた。同図に示したシールドトンネルは、円形断面で、同じ直径の第1および第2シールドトンネル1,2を備えている。
【0004】
このシールドトンネル1,2は、先端側に配置されたシールド掘進機3の掘進により、図5に示した断面形状の掘削面を形成し、シールド掘進機3の後部側に掘削面に沿ってセグメント4を組立てることにより形成される。
【0005】
第1および第2シールドトンネル1,2は、図5に示すように、円形断面の端部同士が、相互に重なるようにして、横方向に直接的に連結形成し、これらの重合した部分を切除して、隣接するシールドトンネル1,2のセグメント4間の結合部5には、上および下連結セグメントピース6,7が配置される。
【0006】
これらの連結セグメントピース6,7は、両端面がセグメント4にそれぞれ接合され、上下方向に所定の間隔を隔てて対向する上,下連結セグメントピース6,7間には、中柱8が設置されている。
【0007】
このような形状のトンネルにおいては、トンネルを構造的に安定化させるために、中柱8は、図4に示すように、セグメント4の1リング毎に配置されていた。
【0008】
また、複数のシールドトンネルを横方向に連結する構造としては、上記したようにシールドトンネル1,2を直接的に連結する構成以外に、例えば、図6に示すように、一対の円形断面のシールドトンネル1a,2aを、相互に隣接するように平行に近接配置して、両者間に跨る結合部5aを形成して、シールドトンネル1a,2aを間接的に連結する構造もある。
【0009】
このような構造のトンネルにおいても、形状の安定性を確保するために、上下の結合部5a間に中柱8aを設けていた。
【0010】
しかしながら、上述した如き構造のトンネルには、いずれも以下に説明する技術的な課題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、図5に示したシールドトンネル1,2を直接的に連結する前者のトンネル、および、図6に示したシールドトンネル1a,2aを間接的に連結する後者のトンネルは、地下鉄のホームなどに利用されることが多く、また、地下鉄の渡り線部や道路トンネルの分岐・分合流部などへの利用が考えられている。
【0012】
ところが、これらのシールドトンネルには、トンネル内を仕切るようにして中柱8,8aが設けられているので、広い空間を確保することが難しく、特に、道路トンネルの分岐・分合流部や地下鉄の渡り線部に採用する場合には、中柱8,8aによりシールドトンネル間で車両や地下鉄の車線変更ができないという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、中柱を可及的に少なくすることにより、広い空間の確保が可能になり、車線変更が可能になるトンネルおよびその構築工法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のシールドトンネルを地中で横方向に連結するトンネルの分岐・合流部構造において、前記分岐・合流部の外周を概略同一平面上で囲繞する水平ビーム部と、前記水平ビーム部に両端が支持され、前記分岐・合流部の長手方向に沿って、その上部側で湾曲するように形成された一対のアーチ部と、前記分岐・合流部を構成する前記シールドトンネルの上部と前記アーチ部との間に設置され複数の吊材とから構成した。
【0015】
このように構成したトンネルの分岐・合流部構造によれば、分岐・合流部の外周を概略同一平面上で囲繞する水平ビーム部に両端が支持されたアーチ部を備え、分岐・合流部を構成するシールドトンネルの上部とアーチ部との間に複数の吊材が設置されているので、分岐・合流部は、吊材を介してアーチ部により吊り下げ支持されるので、アーチ部で分岐・合流部の荷重を支持することで、構造が安定し、中柱は、分岐・合流部の両端側だけに設置すればよい。なお、中柱は、分岐・合流部に全く設けない場合もある。
【0016】
前記分岐・合流部を構成する前記シールドトンネルには、その下部から地盤中に打設された複数のグラウンドアンカーを設けることができる。
【0017】
この構成によれば、分岐・合流部を構成するシールドトンネルは、下方側からもグラウンドアンカーにより支持され、上下方向のバランスが図れるので、より一層構造が安定する。
【0018】
前記水平ビーム部およびアーチ部は、前記シールドトンネル内から構築される発進立坑から発進するシールド掘進機、または、推進機により構築することができる。
【0019】
前記アーチ部は、前記シールド掘進機により構築したシールドトンネル内にコンクリートを充填することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図3は、本発明にかかるトンネルの分岐・合流部構造の一実施例を示している。
【0021】
同図に示した分岐・合流部構造は、直径の異なる円形断面の小径シールドトンネル10と、大径シールドトンネル12とが、ほぼ平行になるように隣接構築し、両者間に跨る結合部14を形成して、シールドトンネル10,12を間接的に連結して、分岐・合流部16としている。
【0022】
各シールドトンネル10,12は、分岐・合流部分においてトンネル軸が相互に平行になるように、隣接配置され、これらのシールドトンネル10,12間を、結合部14を介して連結していて、内部同士が相互に連通する2連状態になっている。
【0023】
各シールドトンネル10,12は、円筒体を周および軸方向に複数の分割したセグメント10a,12aを、シールド掘進機により掘削した面に沿って組立てることでその形状が維持されている。結合部14は、上下方向に平行に配置される上結合セグメント14aと下結合セグメント14bを備えている。
【0024】
結合部14の上,下結合セグメント14a,14bは、横方向の両端が各シールドトンネル10,12のセグメント10a,12aを除去した部分に一体的に固設されている。なお、これらの結合セグメント14a,14bは、場所打ちコンクリートに代替することができる。
【0025】
また、分岐・合流部16の外周には、これを概略同一平面上で囲繞する水平ビーム部18が設けられている。本実施例の水平ビーム部18は、シールドトンネル10,12の横断方向に延設された一対の横ビーム部18a,18bと、シールドトンネル10,12の長手軸方向に延設された一対の縦ビーム部18c,18dとから構成されて、概略長方形状になっている。
【0026】
横および縦ビーム部18a〜18dは、内部が中空な円筒形であって、その交差点には、立方体形状の第1〜第4立坑18e〜18hが配置されている。なお、図1においては、第4立坑18hは、後方に隠れていて、図面上には示されていない。そして、縦ビーム18c,18bの両端に設けられた立坑18e,18g間および立坑18f,18h間には、一対のアーチ部20が設けられている。
【0027】
このアーチ部20は、内部が中空ないしは中実状のものであって、両端がそれぞれ立坑18e〜18hにより支持されていて、小径および大径シールドトンネル10,12の長手軸方向に延設されるとともに、各アーチ部20は、その中央部分が小径および大径シールドトンネル10,12の長手軸上に近接するように、上部側に湾曲し、かつ、シールドトンネル10,12側に向けて所定の角度で傾斜している。
【0028】
そして、分岐・合流部16を構成するシールドトンネル10,12の上部とアーチ部20との間には、複数の吊材22が設置されている。この吊材22は、例えば、鋼棒などで構成され、アーチ部20の両端側を除く中央部分に、相互に平行になるように配置されている。
【0029】
各吊材22は、取付状態の詳細を図2および図3に示すように、シールドトンネル10,12のセグメント10a,12aを貫通して、補強材24を介装して止め具26を装着することにより、下端側が各シールドトンネル10,12に固定される。なお、各吊材22の上端側は、図2,3に示した構造と同じ状態で、アーチ部20の内面に固定される。
【0030】
さらに、本実施例の場合には、分岐・合流部16を構成する小径および大径シールドトンネル10,12には、その下部から地盤中に打設された複数のグラウンドアンカー28が設けられている。
【0031】
本実施例の場合、グラウンドアンカー28は、例えば、所定長さの鋼棒が用いられ、小径および大径シールドトンネル10,12の下部から、一対が両側にハ字形に拡開するように延設され、かつ、トンネル12の長手軸方向に沿って、所定の間隔を隔てて複数が平行になるように配置され、各グラウンドアンカー28の一端は、地盤中に定着されている。
【0032】
また、図1に符号30で示した部材は、小径および大径シールドトンネル10,12の結合部14に設けた中柱であり、本実施例の場合には、この中柱30は、分岐・合流部16の端部側にだけ配置されていて、中央部分には設けられていない。
【0033】
これは、吊材22がアーチ部20の中央部にだけ配置されていて、アーチ部20の端部側にないので、この部分の補強のために設けているが、分岐・合流部16の中央には、中柱30がないので、車両や地下鉄などの車線変更は可能になっている。
【0034】
次に、上記構成の分岐・合流部16の構築工法について説明する。図1に示した構造の分岐・合流部16を構築する際には、小径および大径シールドトンネル10,12が、合流部の構築予定個所の近傍位置まで到達すると、まず、シールドトンネル10,12の内部から、凍結工法などにより地盤改良区域を、両トンネル10,12挟まれた部分に形成する。
【0035】
この地盤改良区域は、シールドトンネル10,12の結合部14の直上および直下外方に対応しており、地盤改良区域が形成されると、セグメント10a,12aを除去して、シールドトンネル10,12を横方向で連結する結合部14が形成される。なお、このような地盤改良区域を形成する際には、小径および大径シールドトンネル10,12の内部に、予め、変形防止用の補強工を行う。
【0036】
次に、大径シールドトンネル12の内部から、セグメント12aの下部を破断して、その下方にシールド掘進機の発進立坑32を形成する。なお、発進立坑32の形成位置は、図に示した場所に限ることはなく、任意の場所に設けることができる。次に、この発進立坑32の内部から左右方向にシールド掘進機を発進させて、水平ビーム部18の横ビーム部18aを形成する。
【0037】
横ビーム部18aが形成されると、その先端側にそれぞれ第1および第2立坑18e,18fを構築し、構築された立坑18a,18bから、それぞれシールド掘進機を発進させて、縦ビーム部18c,18dを横ビーム部18aと直交する方向に構築する。なお、水平ビーム部18やアーチ部20の形成には、シールド掘進機による方法以外に、推進機を用いる推進工法によっても形成することができる。
【0038】
縦ビーム部18c,18dが所定の長さだけ構築されると、その先端に第3および第4立坑18g,18hを構築する。そして、立坑18g,18h間に、シールド掘進機により横ビーム部18bを構築すると、水平ビーム部18が完成する。
【0039】
次に、立坑18eと18g間および立坑18dと18hとの間にアーチ部20をそれぞれシールド掘進機により構築し、しかる後に、シールドトンネル10,12の上部とアーチ部20との間に複数の吊材22を設置する。この吊材22の設置が終了すると、アーチ部20内には、コンクリートを打設して、中空部を中実にしてもよい。
【0040】
そして、小径および大径シールドトンネル10,12の下部から地盤中に向けて、複数のグラントアンカー28を打設すると、図1に示した分岐・合流部16が構築される。なお、中柱30は、結合部14を形成した後の適当な時期に構築すればよい。
【0041】
さて、以上のように構成した分岐・合流部構造によれば、分岐・合流部16の外周を概略同一平面上で囲繞する水平ビーム部18に両端が支持されたアーチ部20を備え、分岐・合流部16を構成するシールドトンネル10,12の上部とアーチ部20との間に複数の吊材22が設置されているので、分岐・合流部16は、吊材22を介してアーチ部20により吊り下げ支持されるので、アーチ部20で分岐・合流部16の荷重を支持することで、構造が安定し、中柱30は、分岐・合流部の両端側だけに設置すればよいし、場合によっては、中柱30を全く設けなくてもよい。
【0042】
このような構造にすると、分岐・合流部16の中央部分には、中柱30を設ける必要がないので、中柱30を可及的に少なくすることが可能になり、分岐・合流部16の中央部分で広い空間が確保され、その結果、中央部分で車両や地下鉄の分岐ないしは合流のための車線変更が可能になる。
【0043】
また、本実施例の場合には、分岐・合流部16を構成するシールドトンネル12には、その下部から地盤中に打設された複数のグラウンドアンカー28を設けている。
【0044】
このため、分岐・合流部16を構成するシールドトンネル12は、下方側からもグラウンドアンカー28により支持され、吊材22との協働により、上下方向のバランスが図れるので、より一層構造が安定する。
【0045】
なお、上記実施例では、本発明を円形断面の2連シールドトンネルに適用した場合を例示したが、本発明の実施は、この構造に限定されることはなく、同一直径の円形断面の2連構造,円形断面の3連構造や、角形など他の断面形状が連続したトンネルにも適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかるトンネルの分岐・合流部構造によれば、中柱を可及的に少なくすることにより、広い空間の確保が可能になり、車線変更が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるトンネルの分岐・合流部構造の一実施例を示す説明図である。
【図2】図1の要部横断面説明図である。
【図3】図2の側面説明図である。
【図4】従来のトンネルの一例を示す断面図である。
【図5】図4のA−A線拡大図である。
【図6】従来のトンネルの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 小径1シールドトンネル
12 大径シールドトンネル
14 結合部
14a 上結合セグメント
14b 下結合セグメント
16 分岐・合流部
18 水平ビーム部
20 アーチ部
22 吊材
24 補強材
28 グラウンドアンカー
Claims (4)
- 複数のシールドトンネルを地中で横方向に連結するトンネルの分岐・合流部構造において、
前記分岐・合流部の外周を概略同一平面上で囲繞する水平ビーム部と、
前記水平ビーム部に両端が支持され、前記分岐・合流部の長手方向に沿って、その上部側で湾曲するように形成された一対のアーチ部と、
前記分岐・合流部を構成する前記シールドトンネルの上部と前記アーチ部との間に設置された複数の吊材とからなることを特徴とするトンネルの分岐・合流部構造。 - 前記分岐・合流部を構成する前記シールドトンネルに、その下部から地盤中に打設された複数のグラウンドアンカーを設けたことを特徴とする請求項1記載のトンネルの分岐・合流部構造。
- 前記水平ビーム部およびアーチ部は、前記シールドトンネル内から発進立坑を構築し、前記発進立坑から発進したシールド掘進機、または、推進機により構築することを特徴とする請求項1記載のトンネルの分岐・合流部構造。
- 前記アーチ部は、前記シールド掘進機により構築したシールドトンネル内にコンクリートを充填することを特徴とする請求項2記載のトンネルの分岐・合流部構造。
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