JP2004238886A - 断熱構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】建築物外壁面を構成する断熱構造体であって、壁面の屋内側から屋外側へ向かって、断熱層(A)、基材層(B)、有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)、水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)、を有する。
【選択図】なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ビル、集合住宅、戸建住宅等の建築物外壁面を構成する断熱構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビル、集合住宅、戸建住宅等の建築物においては、屋外の温度変化が屋内に直接影響することを抑制すること、あるいは屋内の気密性を高めることなどを目的として、外壁面構造に断熱性を付与することが行われている。このような断熱性外壁面としては、外壁面の室内側にフェノールフォーム、グラスウール等の各種断熱材を設けたものや、外壁面を構成する基材自体が断熱性を有するもの等が用いられている。
【0003】
一方、建築物外壁面においては、意匠性を付与するために、様々な塗料が塗付形成されている。このうち、有機質樹脂を含有する塗料は、配合設計の自由度が高く様々な色相・意匠性が付与でき、またその被膜層が適度な可とう性を示し、下地のコンクリートやモルタル等の微細なひび割れに追従できる性能を有することから、好んで使用されている。
【0004】
このような、有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層は、屋外において長期にわたり曝露されると、太陽光、降雨、粉塵等の影響により劣化や汚染が進行してしまう。このため、塗り替えの必要が生じ、各種の上塗材が塗装される。また、劣化が進行してなくても、前述の如く、色や形状等の意匠性を変更する要望がある場合には、上塗材による塗り替えが行われる。(例えば、特許文献1等。)
【0005】
【特許文献1】特開平6−306305号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層は、水分や高沸点溶剤等の塗料中の成分が被膜層内に残存しやすい傾向がある。さらに、被膜層表面が外気に直接曝されていると、劣化の進行とともに降雨等による水分が被膜層表面から吸収される場合や、水洗等により水分が被膜層表面から吸収される場合、また建築物基材側からの水分が吸収される場合もあり、それらの水分が被膜層内に滞留しやすくなる。
【0007】
このように、有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層内部には、水分や高沸点溶剤等の気化性成分が含まれるおそれがある。このような被膜層の上に、通常の塗料を塗付形成すると、施工後、太陽光等による温度上昇に伴って、気化性成分の気化による体積膨張等の作用により、被膜層が経時的に膨れ、剥離等を生じ、美観を損う場合がある。
【0008】
特に、断熱性を有する層上に積層された有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層においては、断熱性を有する層と該被膜層の界面付近に熱がこもり易い傾向があり、前記の問題がより発生しやすくなる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、水分や高沸点溶剤等の気化性成分が残存しやすい有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層において、被膜層の膨れ、剥離等が生じることのない断熱性を有する断熱構造体を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため本発明者らは鋭意検討を行った結果、有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)に、水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)を積層することにより、被膜層(D)が自律的に水分を吸湿し、太陽光等の熱量を水の蒸発潜熱に置換することで被膜層(C)の温度上昇を抑え、膨れ、剥離等が生じることのない断熱性を有する断熱構造体を見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.建築物外壁面を構成する断熱構造体であって、壁面の屋内側から屋外側へ向かって、断熱層(A)、基材層(B)、
有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)、
水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)、
を有することを特徴とする断熱構造体。
2.建築物外壁面を構成する断熱構造体であって、壁面の屋内側から屋外側へ向かって、断熱性基材層(B’)、
有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)、
水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)、
を有することを特徴とする断熱構造体。
3.被膜層(D)の赤外線反射率が20%以上であることを特徴とする1.または2.に記載の断熱構造体。
4.被膜層(D)の表面の水に対する接触角が70°以下であることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の断熱構造体。
5.被膜層(D)が、(a)結合剤、(b)多孔質無機粉体を含有することを特徴とする2.から4.のいずれかに記載の断熱構造体。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の断熱構造体は、壁面の屋内側から屋外側へ向かって、断熱層(A)、基材層(B)、熱可塑性樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)、水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)、を有することを特徴とする。
【0013】
[断熱層]
断熱層(以下「(A)層」ともいう)は、本発明の断熱構造体において最も屋内側に位置するものであり、屋外の温度変化が屋内に直接影響することを抑制すること、あるいは屋内の気密性を高めることなどの効果を得るために設けられる層である。このような(A)層を構成するものとしては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等があげられる。各種基材にサンドイッチされた空気層も(A)層に含まれる。このような(A)層は、具体的には熱伝導率が0.5W/(m・K)以下の断熱性を有するものであることが望ましい。
【0014】
[基材層]
本発明における基材層(以下「(B)層」ともいう)としては、建築物外壁面を構成するものである限り特に限定されないが、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属ボード、磁器タイル、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板等、あるいはこれらの複合体等があげられる。
このような基材層は、予め何らかの表面処理層(例えば、シーラー層、サーフェーサー層等)を有するものであってもよい。
【0015】
[断熱性基材層]
本発明における断熱性基材層(以下「(B’)層」ともいう)とは、上述の基材層のうち、具体的には熱伝導率が0.5W/(m・K)以下の断熱性を有するものを言う。このような(B’)層はそれ自体が断熱性を有するので、断熱層を省略することができる。(B’)層を構成する基材としては、例えば、軽量モルタル、軽量コンクリート、発泡コンクリート板、けい酸カルシウム板、パーライトセメント板、石膏ボード、ロックウール板、グラスウール保温板等、あるいはこれらの複合体等があげられる。このような(B’)層は、上述の基材層と同様に何らかの表面処理層を有するものであってもよい。
【0016】
[被膜層(C)]
本発明における被膜層(C)(以下「(C)層」ともいう)は、その被膜層が有機質樹脂を含有する塗料から形成されるものであれば特に限定されず、様々な色相・意匠性が付与でき、基材層の微細なひび割れに追従できる性能を有するものである。また、凹凸形状の立体模様を表出することもできる。
【0017】
有機質樹脂を含有する塗料としては、有機質樹脂を含む各種の塗料が挙げられる。具体的には、例えば、JIS K5654「アクリル樹脂エナメル」、JASS18 M−207「非水分散形アクリル樹脂エナメル」、JIS K5656「建築用ポリウレタン樹脂塗料」、JASS18 M−404「アクリルシリコン樹脂塗料」、JIS K5658「建築用ふっ素樹脂塗料」、JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5663「合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5667「多彩模様塗料」、JIS K5668「合成樹脂エマルション模様塗料」、JIS A6909「建築用仕上塗材」の外装薄塗材E、可とう形外装薄塗材E、防水形外装薄塗材E、外装厚塗材E、複層塗材E、防水形複層塗材E、複層塗材RE、防水形複層塗材RE、複層塗材RS、防水形複層塗材RE等が挙げられる。
【0018】
有機質樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、公知のものを使用することができる。例えば、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン樹脂、塩素化ポリエチレン等の塩素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンコポリマー等のオレフィン系樹脂、エチルセルロース等のセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上で使用することができる。また、これらの有機質樹脂は、水分散型、水可溶型、溶剤可溶型、NAD型等を用いることができ、特に水分散型、水可溶型が好適に用いられる。
本発明では、特に有機質樹脂が熱可塑性樹脂である場合において有利な効果を奏することができる。
【0019】
有機質樹脂を含有する塗料における有機質樹脂の含有量は特に限定されないが、塗料の固形分中に通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上である。
【0020】
また、有機質樹脂のガラス転移温度(以下「Tg」と略す。)は、概ね−50〜30℃、好ましくは−30〜20℃、さらに好ましくは−15〜10℃程度である。
なお、本発明におけるTgは、Foxの計算式により求められる値である。
【0021】
有機質樹脂を形成する塗料は、他の成分として、骨材、無機質粉体、顔料、溶剤、可塑剤、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤等を、適宜配合することができる。
【0022】
骨材としては、例えば、大理石、御影石、石灰岩、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
【0023】
無機質粉体としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、けい藻土、ホワイトカーボン、タルク、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ウォラストナイト、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0024】
顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、べんがら、黄色酸化鉄、オーカー、クロムグリーン、群青等の無機顔料、β−ナフトール系、ナフトールAS系、ピラゾロン系、ベンツイミダゾロン系等の不溶性アゾ顔料、パーマネントレッド、レーキレッド等の溶性アゾ顔料、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系等の縮合多環顔料、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー等のモノアゾ系顔料、パーマネントイエロー等のジスアゾ系顔料、イソインドリノンイエロー等の縮合アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系イエロー顔料、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット等の有機顔料等が挙げられる。
【0025】
溶剤としては、水と有機溶剤が挙げられ、有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール類、n−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、イソパラフィン、シクロヘキサノン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル類等またはそれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
有機質樹脂を含有する塗料の塗付量は、特に限定されず、0.1〜15kg/m2で塗付することができる。特に、塗付量が1.0〜15kg/m2の場合は、乾燥膜厚が概ね1〜10mmと厚膜のものとなり、水分や高沸点溶剤等の気化性成分が被膜層内部に残存しやすいが、後述する被膜層(D)が大気中に存在する水蒸気や被膜層(C)中に存在する水分を吸湿し、太陽光等の熱量を水の蒸発潜熱に置換し、温度上昇を抑制するため、被膜層の膨れ発生、剥れ発生等を防止することができる。なお、本発明の気化性成分には、可塑剤、造膜助剤等の塗料添加剤も含まれる。
【0027】
有機質樹脂を含有する塗料は、公知の塗装器具を用いて塗付することができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、リシンガン、万能ガン、ローラー、刷毛、コテ等を使用することができる。プレコートを行う場合は、ロールコーター、フローコーター等を用いることもできる。塗装時には水を用いて塗料を希釈することができる。水の混合量は、使用する塗装器具、所望の表面形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0028】
また、塗付量が1.0〜15kg/m2と厚塗の場合には、その断面が玉状、台形状等の凹凸形状を有するものであってもよい。一般に、断面が玉状となる被膜は吹放し仕上げによって形成することができ、断面が台形状となる被膜は、吹放し仕上げを行った後にローラー等を用いて凸部を押える処理を施すことにより形成することができる。
【0029】
[被膜層(D)]
本発明における被膜層(D)は、水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有するものである。
【0030】
ここで水蒸気吸脱着性のヒステリシス特性とは、図1に示すように、相対湿度を横軸に、水蒸気吸脱着量を縦軸にとった場合の吸脱着等温線で、吸着曲線より脱離曲線が上側になることを意味するものである。なお、この吸脱着等温線は、温度を一定(25℃に設定)として相対湿度を低い状態から高い状態へ順次上げた後、再び低い状態へ戻すことによって得られ、被膜層(D)が単位重量当りに保持可能な水蒸気量を表すものである。
【0031】
具体的には、まず温度25℃、相対湿度40%の恒温恒湿器内に被膜層(D)の重量が平衡になるまで放置し、放置後の重量を測定する。次に同温度で湿度のみを上昇させた恒温恒湿器内で同様の操作を行い、順次段階的に湿度のみを上げながら相対湿度90%まで測定を行う。その後、同温度下で湿度のみを段階的に下げながら同様の操作を繰り返し、重量を測定する。このような測定により得られる各湿度における被膜層(D)の重量から水蒸気吸脱着量を算出することにより、水蒸気吸脱着性を示す吸脱着等温線を得ることができる。
【0032】
本発明は、被膜層(D)の水蒸気吸脱着性により、被膜層(D)が大気中に存在する水蒸気や被膜層(C)中に存在する水分を自律的に吸湿し、温度の上昇とともに水分を脱離し、その際、水分の蒸発潜熱により被膜層(D)から熱が奪われるため、温度の上昇を抑えることができ、気化性成分の気化を抑え、被膜層の膨れ発生、剥れ発生等を防止することができる。
【0033】
また、本発明では、このような水蒸気吸脱着性のヒステリシス特性により、脱離する水蒸気量を抑え、被膜層(D)内の水分を長時間保持することができるため、温度上昇抑制効果を持続させることができる。さらに、このヒステリシス特性によって、夜間等の温度の低い状態において大気中の水蒸気等を吸湿し、温度が高い昼の間に脱離による温度上昇の抑制効果を発揮することができる。
【0034】
さらに被膜層(D)は、赤外線反射率が20%以上、さらには50%以上であることが好ましい。赤外線反射率が20%以上であることにより、太陽光による蓄熱を十分に抑制することができ、より被膜層の膨れ、剥離等を抑えることができる。
【0035】
なお、本発明における赤外線反射率は、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100)により、波長1μmの光で測定した値であり、硫酸バリウムの微粉末を固めた白板の分光反射率を100%として、その相対値で示した値である。
【0036】
さらに被膜層(D)は、接触角が70°以下(好ましくは65°以下)であることが好ましい。接触角が70°以下であることにより、被膜層(D)の表面に付着した汚染物質が降雨等によって流れ落とされやすくなり、汚染物質による蓄熱場の形成を防止することができる。そのため、吸放湿能の低下を抑制し、且つ、被膜層自体の温度上昇を抑制することができ、より被膜層の膨れ、剥離等を抑えることができる。
【0037】
また被膜層(D)は、水蒸気透過性を有することが好ましい。具体的には、JIS K5400 8.17による水蒸気透過度が40g/m2・24h以上、さらには60g/m2・24h以上であることが好ましい。水蒸気透過性を有することにより、被膜層中の水分や高沸点溶剤等の気化性成分が被膜層外に放散され、より被膜層の膨れ発生、剥れ発生等を防止することが可能となる。
【0038】
また、被膜層(D)は、適度な伸び性を有していることが好ましく、例えば、20℃での伸び率(以下、単に「伸び率」ともいう)が5〜500%であることが好ましい。被膜層(D)が適度な伸び性を有していることにより、割れの発生が抑制される。
【0039】
また、被膜層(D)の被膜層(C)に対する付着強さは、0.3N/mm2以上であることが望ましい。このような付着強さを有することにより、密着性を長期にわたり維持することができる。
【0040】
本発明における被膜層(D)は、(a)結合剤、(b)多孔質無機粉体を含有する吸放湿性塗料から形成されることが好ましい。
【0041】
具体的に、(a)結合剤(以下「(a)成分」という。)としては、(a−1)合成樹脂結合剤及び/または(a−2)無機結合剤を使用することが好ましい。
【0042】
(a−1)合成樹脂結合剤(以下「(a−1)成分」という。)としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等の水分散型、水可溶型、溶剤型、NAD型の何れの樹脂も使用することができる。特に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂から選ばれる1種または2種以上の樹脂を用いると耐久性を高めることができ好ましい。
(a−1)成分を用いることにより、可とう性を有する被膜層(D)を得ることができる。また、可とう性の程度は、樹脂のガラス転移温度等を調整することにより、自由に変えることができる。
【0043】
(a−2)無機結合剤(以下「(a−2)成分」という。)としては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(a−2)成分を用いることにより、被膜層(D)の厚みを大きくすることが可能となる。また高い水蒸気吸脱着性能を確保することも可能となる。
【0044】
結合剤として(a−1)成分を含む場合、(a−1)成分は反応性官能基含有合成樹脂結合剤であることが望ましい。(a−1)成分の反応性官能基としては、後述する架橋剤の官能基と反応可能であるものが使用できる。このような官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基等が挙げられる。
【0045】
本発明では(a−1)成分の反応性官能基として、特に、カルボキシル基が好適に用いられる。カルボキシル基含有合成樹脂結合剤は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸等、及びこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩等のカルボキシル基含有モノマーを共重合することにより得られる。これらモノマーは1種または2種以上を使用することができる。
【0046】
(b)多孔質無機粉体(以下「(b)成分」という。)は、本発明被膜層(D)にヒステリシス特性を付与するために有効にはたらく成分である。(b)成分を含有することにより、水分の蒸発潜熱による温度上昇抑制効果を長時間保持することができる。
(b)成分としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、活性炭、アロフェン等の粘土鉱物の多孔質粉体を使用することができる。(b)成分としてはシリカゲル、ゼオライト、活性炭、アロフェンから選ばれる1種以上が好ましく、この中でもシリカゲルが最も好ましい。
【0047】
(b)成分の比表面積は100m2/g以上(好ましくは200m2/g以上、さらに好ましくは300m2/g以上)であることが好ましく、このような比表面積を有することにより優れた温度上昇抑制効果を発揮させることが可能となる。なお、比表面積は、BET法により測定される値である。
(b)成分の混合量は(a)成分の固形分100重量部に対して、10〜600重量部であることが好ましい。(b)成分の混合量が10重量部より小さい場合は、十分な吸脱着性能、ヒステリシス特性を得ることが困難となる。600重量部を超えると被膜層(D)が脆くなりやすく、クラック発生のおそれが高くなる。
【0048】
吸放湿性塗料においては、上述の成分に加え、さらに
(c)吸放湿性合成樹脂微粒子(以下「(c)成分」という。)を含有することが望ましい。(c)成分を含有することにより、水蒸気吸脱着量を増加させ、水蒸気吸脱着速度を高めることができる。
(c)成分は吸放湿性を有するものであるが、具体的には、温度20℃、相対湿度45%における吸湿率が10wt%以上(好ましくは20wt%以上、さらに好ましくは30wt%以上)である吸放湿性合成樹脂微粒子を好適に用いることができる。
なお、温度20℃、相対湿度45%における吸湿率とは、試料を120℃にて1時間乾燥した後、温度20℃、相対湿度45%の恒温恒湿器にて24時間吸湿させたときの重量変化を測定することにより得られる値であり、下記式により求めることができる。
吸湿率(wt%)={(吸湿後の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量}×100
【0049】
(c)成分は、例えば、各種(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル類等の単量体の1種または2種以上を公知の方法により共重合して得られるものであるが、水蒸気吸脱着性向上の点から、架橋構造を有することが望ましい。このような架橋構造は、重合段階における架橋性単量体の導入、重合後における架橋性化合物の導入等の方法により形成することができる。架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等、また、架橋性化合物としては、ヒドラジン系化合物等を好適に用いることができる。
【0050】
(c)成分は反応性官能基含有吸放湿性合成樹脂微粒子であることが望ましい。このような反応性官能基としては、(a−1)成分と同様のものが使用できるが、本発明では、特に、カルボキシル基が好適に用いられる。(c)成分にカルボキシル基を導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基を有する単量体の単独重合あるいは共重合可能な他の単量体との共重合による方法、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体を共重合した重合体に加水分解処理を施す方法、アルケン、ハロゲン化アルキル、アルコール、アルデヒド等の酸化による方法、等があげられる。(c)成分のカルボキシル基含有量は、1mmol/g以上であることが好ましい。
【0051】
(c)成分の混合量は、(a)成分の固形分100重量部に対して2〜100重量部、好ましくは10〜40重量部である。この混合量が2重量部より小さい場合は単位時間における水蒸気吸着性が低下する傾向となる。100重量部を超えると被膜層(D)が脆くなりやすく、クラック発生のおそれが高くなる。
(c)成分の粒径は、特に限定されないが、0.1〜100μm程度のものを使用することができる。
【0052】
吸放湿性塗料において、(a−1)成分として反応性官能基含有合成樹脂結合剤を使用し、(c)成分として反応性官能基含有吸放湿性合成樹脂微粒子を使用する場合には、(a−1)成分及び(c)成分の反応性官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤(以下「(d)成分」という。)を使用することが望ましい。このような(d)成分が含まれることにより、架橋構造が導入され、被膜層(D)の強度が向上し、さらには優れた水蒸気吸脱着性を発揮することができる。
(d)成分は、これらの官能基を一分子中に二個以上含むことが望ましい。
(d)成分の官能基としては、(a−1)成分及び(c)成分と反応可能なものである限り限定されないが、本発明では特に、カルボキシル基と反応可能な官能基であるカルボジイミド基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基等から選ばれる1種以上が好適に用いられる。
【0053】
(d)成分の具体例としては、例えば、カルボジイミド基を含む架橋剤として、特開平10−60272号公報、特開平10−316930号公報、特開平11−60667号公報等に記載のもの等、エポキシ基を含む架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等、アジリジン基を含む架橋剤として、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノ―ル―トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等、オキサゾリン基を含む架橋剤として、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の重合性オキサゾリン化合物を各化合物と共重合可能な単量体と共重合した樹脂等があげられる。
【0054】
吸放湿性塗料においては、(e)赤外線反射性粉粒体(以下「(e)成分」という。)を含有することが望ましい。(e)成分としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、無機系中空ビーズ、有機系中空ビーズ等があげられる。このような(e)成分は、通常、(a)成分の固形分100重量部に対し、10〜300重量部配合される。赤外線反射性粉粒体が10重量部より少ない場合は、太陽光に対し十分な赤外線反射性が得られず、温度上昇をまねきやすくなる。300重量部より多い場合は、被膜層(D)にクラックが生じやすくなり、赤外線反射性低下のおそれがある。
【0055】
本発明において、被膜層(D)の表面を親水性、特に接触角が70℃以下にする方法としては、例えば、
▲1▼水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の親水性基ないしは親水性セグメントとしてポリアルキレンオキサイド、ポリオキサゾリン、ポリアミド等を有するポリマーを結合剤として使用する。
▲2▼一般的な結合剤に、親水性を付与する成分を配合する。
等の方法があげられる。
【0056】
このうち、▲2▼の方法においては、親水性付与成分として(f)アルコキシシラン化合物(以下「(f)成分」という)を含有する組成物が好適に用いられる。
【0057】
(f)成分は、吸放湿性塗料の被膜層形成途上において層の表面に局在化し、層表面を親水性にすることができるものである。本発明では、層表面への局在化のしやすさと表面親水化の早期発現の点から、特に、(f)成分として、
(f−1)炭素数が1〜3のアルコキシル基と、炭素数が4〜12のアルコキシル基を含有するアルコキシシランの縮合物(以下、「(f−1)成分」という。)、または、
(f−2)繰り返し単位の炭素数が1〜4のポリオキシアルキレン基と、炭素数が1〜4のアルコキシル基を含有するアルコキシシランの縮合物(以下、「(f−2)成分」という。)、
を使用することが望ましい。
【0058】
(f−1)成分においては、アルコキシル基が、炭素数1〜3と炭素数4〜12のものが混在していることにより、(a)成分との相溶性が飛躍的に向上し、表面配向性に優れ、被膜物性の優れた層が形成できる。炭素数が1〜3のアルコキシル基のみの場合は、(a)成分との相溶性、表面配向性が不十分となり、炭素数が4〜12のアルコキシル基のみの場合は、耐汚染性が低下する傾向となる。
(f−1)成分は、該低縮合物全体のアルコキシル基のうち、約5〜50当量%が炭素数4〜12のアルコキシル基となるようにしたものが(a)成分との相溶性、被膜層の耐汚染性に優れるため好ましい。
【0059】
(f−1)成分の平均縮合度は4〜20であることが望ましい。平均縮合度が20より大きいものは、粘度上昇等により取り扱いが不便となり、平均縮合度が4より小さいのものは、揮発性が高くなりやはり取り扱いが不便となる。
【0060】
このような(f−1)成分は、公知の方法により製造することができるが、例えば、炭素数1〜3のアルコキシル基を有するテトラアルコキシシラン縮合物を、炭素数4〜12のアルコールでエステル交換反応により変性する方法等があげられる。
【0061】
(f−2)成分は、特に(a)成分が合成樹脂エマルションである場合に好適に用いることができる。このような(f−2)成分は、合成樹脂エマルションとの相溶性が良好で、耐汚染性に優れた層を形成することができる。
(f−2)成分のアルコキシル基の炭素数は1〜4である。炭素数が4を超えると、耐汚染性が低下する傾向となる。
ポリオキシアルキレン基の平均分子量は、150〜2000であることが望ましい。平均分子量が150未満の場合は、(a)成分との相溶性が低下し、2000を超えると被膜層の耐水性、強度等が低下する傾向となる。
また、(f−2)の平均縮合度は1〜20であることが望ましい。平均縮合度が20を超えると、取り扱いが不便になる。
【0062】
(f−2)成分は、公知の方法により製造することが可能であるが、例えば、アルコキシシラン縮合物の1種または2種以上の混合物を、ポリオキシアルキレン基含有化合物1種または2種以上でエステル交換反応させる方法、カップリング剤を用いて付加反応させる方法等があげられる。
【0063】
このような(f)成分は、(a)成分の固形分100重量部に対して、SiO2換算で1.0〜50.0重量部、好適には2.0〜30.0重量部配合することが望ましい。1.0重量部未満では層表面の親水性が十分とならず耐汚染性に劣り、50.0重量部を超えると、形成被膜層の外観が悪化したり、クラックが生じるといった問題が発生しやすくなる。
【0064】
ここでSiO2換算とは、アルコキシシランやシリケートなどのSi−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO2)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケートは、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO2)となる。これらの反応は
RO(Si(OR)2O)nR+(n+1)H2O→nSiO2+(2n+2)ROH
(Rはアルキル基を示す。nは整数。)
という反応式で表されるが、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0065】
吸放湿性塗料においては、上記成分の他、各種の添加剤、例えば、顔料、染料、骨材、艶消し剤、繊維、増粘剤、レベリング剤、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含むこともできる。
【0066】
被膜層(D)は、上述のような成分を各種混合機によって均一に混合して得られる吸放湿性塗料を塗付、乾燥することによって形成することができる。このとき、必要に応じて水を配合することができる。
【0067】
吸放湿性塗料の塗装時には、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、リシンガン、万能ガン、ローラー、刷毛、コテ等を使用することができる。塗装時には水を用いて塗料を希釈することができる。水の混合量は、使用する塗装器具、所望の表面形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
本発明の吸放湿性塗料は、塗装対象となる被膜層(C)に対し直接塗装することもできるし、塗装する前に、本発明の効果を損なわない程度に、例えばシーラー、フィラー等を塗付してもよい。
この際、被膜層(C)の形状をそのまま生かす場合は塗付量を少なくすることによって、また、被膜層(C)の形状を変える場合は塗付量を多くすることによって被膜層を形成すればよい。
【0069】
吸放湿性塗料の塗装は、被膜層(C)が形成された後、任意の時期に塗装することが可能である。吸放湿性塗料の塗装は、主に既存の建築物に対して行うものであるが、塗装対象となる建築物は、新築物件でもよいし、改装物件でもよい。特に、本発明の吸放湿性塗料は各種既存塗膜との密着性にも優れるため、改修・改装用として好適に使用することができる。
また被膜層(D)を、予め、シート状、ボード状等の成形体に成形する場合は、例えば、加圧成形、押出成形、鋳込み成形、加熱圧縮成形、流し込み等の方法により製造することもできる。
【0070】
また、本発明の断熱構造体は、主に、屋外に適用し上記効果を奏でるものであるが、場合によっては、屋内においても適用できる。
【0071】
さらに、被膜層(D)を形成した後に、本発明の効果を損なわない程度に、上塗塗料を積層することもできる。上塗塗料を積層することにより、被膜層(D)が、外気や太陽光線に直接触れることがなくなり、被膜層(D)の劣化や汚染等を防止することができる。
【0072】
上塗塗料としては、特に、その形成被膜層(E)が水蒸気透過性を有していることが好ましい。具体的には、JIS K 5400「塗料一般試験方法」8.17−1990の水蒸気透過度が、40g/m2・24h以上、さらには60g/m2・24h以上であることが好ましい。
【0073】
このような上塗塗料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン樹脂等の水分散型、水可溶型樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような上塗塗料は、樹脂中に架橋構造を有するもの、あるいは被膜層形成後に架橋構造を生じるもの等であってもよい。上塗塗料を積層することによって、耐侯性、耐薬品性、耐久性等を高めることができる。
【0074】
さらに、上塗塗料から形成される被膜層(E)は、赤外線反射率が20%以上、さらには50%以上であることが好ましい。赤外線反射率が20%以上であることにより、太陽光による蓄熱をより抑制することができ、被膜層(C)の膨れ、剥離等を抑える効果を高めることができる。
【0075】
さらに上塗塗料から形成される被膜層(E)は、接触角が70°以下(好ましくは65°以下)であることが好ましい。接触角が70°以下であることにより、被膜層(E)の表面に付着した汚染物質が降雨等によって流れ落とされやすくなり、汚染物質による蓄熱場の形成を防止し、且つ、被膜層(E)自体の温度上昇を抑制することができ、被膜層(C)の膨れ、剥離等を抑える効果を高めることができる。
【0076】
また、被膜層(D)が赤外線反射性を有する場合は、被膜層(E)が赤外線透過性を有するものも可能である。具体的に、赤外線透過率が50%以上であることが好ましい。被膜層(E)が赤外線透過性を有することにより、被膜層(E)自体の蓄熱を抑制することが可能となる。
なお、本発明における赤外線透過率は、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100)により、波長1μmの光に対する分光透過率を測定することにより得られる値である。
【0077】
上塗塗料の積層には、公知の塗装器具を用いて塗装することができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ等を使用することができる。プレコートを行う場合は、ロールコーター、フローコーター等を用いることもできる。塗装時には水を用いて塗料を希釈することができる。水の混合量は、使用する塗装器具、所望の表面形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0078】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0079】
−被膜層(C)を形成する塗料Cの製造−
アクリル樹脂エマルション(固形分50%、Tg1℃)30重量部、酸化チタン5重量部、重質炭酸カルシウム20重量部、寒水石・ゴム粉35重量部、添加剤(造膜助剤、凍結防止剤、増粘剤、消泡剤)10重量部を混合し、塗料Cを得た。
−被膜層(D)を形成する塗料の製造−
表1に示す原料を用い、表2に示す原料配合で、原料を混合し、吸放湿性塗料1〜6を製造した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
(被膜層(D)の水蒸気吸脱着性試験)
得られた吸放湿性塗料1〜6を、それぞれ厚さ0.5mmのアルミ板上に、乾燥膜厚が500μmとなるように塗付し、温度25℃相対湿度55%下で14日間乾燥し被膜層を形成させて、試験体を作製した。得られた試験体を、温度25℃、相対湿度40%の恒温恒湿器内に重量が平衡になるまで放置し、放置後の重量を測定した。次に同温度で湿度のみを上昇させた恒温恒湿器内で同様の操作を行い、順次段階的に湿度のみを上げながら相対湿度90%まで測定を行った。その後、同温度下で湿度のみを段階的に下げながら同様の操作を繰り返し、重量を測定した。各湿度における試験体の重量から水蒸気吸脱着量を算出することにより、水蒸気吸脱着性を示す吸脱着等温線を得た。結果はそれぞれ図2に示す。
【0083】
(被膜層(D)の赤外線反射率測定)
得られた吸放湿性塗料1〜6を、それぞれ厚さ0.5mmのアルミ板上に、乾燥膜厚が500μmとなるように塗付し、温度25℃相対湿度55%下で14日間乾燥し被膜層を形成させて、試験体を作製した。得られた試験体の赤外線反射率を、分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)により測定した。ブランクとしては、硫酸バリウム微粉末を固めた白板を用いた。結果はそれぞれ表2に示す。
【0084】
(被膜層(D)の接触角測定)
得られた吸放湿性塗料1〜6を、それぞれ厚さ0.5mmのアルミ板上に、乾燥膜厚が500μmとなるように塗付し、温度25℃相対湿度55%下で14日間乾燥し被膜層を形成させて、試験体を作製した。得られた試験体を脱イオン水中に3時間浸漬し、18時間乾燥させた後、CA−A型接触角測定装置にて被膜層表面の接触角を測定した。結果はそれぞれ表2に示す。
【0085】
(実施例1)
フェノール樹脂発泡体(25mm厚)の片面に、シーラー処理を施したスレート板(12mm厚)を貼着し、スレート板が外側になるように、450×450×450mmのボックスを作製した。次にボックス表面に、塗料Cを、万能ガンで、玉状に吹付けた後、ミネラルスピリットを付けたプラスチックローラーで玉の凸部を押え、断面が台形状の凹凸を有する4〜8mmの被膜層(C)を形成させ、試験体1を作製した。
試験体1を作製した後、大阪府茨木市で、3ヶ月間、屋外に設置した後、エアブローによりほこり等を除去し、水で洗浄し、十分乾燥させた後、吸放湿性塗料1を万能ガンで吹付け、14日間養生したした。このとき、吸放湿性塗料1は乾燥膜厚が0.5mmとなるように塗装を行った。
【0086】
(被膜の膨れ・剥れ試験)
塗装後、大阪府茨木市で、屋外暴露を実施し、12ヶ月後の被膜層の表面状態の変化を目視にて観察した。その結果、被膜層の膨れ、剥れがなく、また、汚れも目立たず、美観性にも優れていた。
【0087】
(実施例2)
吸放湿性塗料1と吸放湿性塗料2に替えた以外は、実施例1と同様の方法で被膜層の膨れ・剥れ試験を行なった。その結果、被膜層の膨れ、剥れがなく、また、美観性にも優れていた。
【0088】
(実施例3)
吸放湿性塗料1と吸放湿性塗料3に替えた以外は、実施例1と同様の方法で被膜層の膨れ・剥れ試験を行なった。その結果、被膜層の膨れ、剥れがなく、また、美観性にも優れていた。
【0089】
(実施例4)
吸放湿性塗料1と吸放湿性塗料4に替えた以外は、実施例1と同様の方法で被膜層の膨れ・剥れ試験を行なった。その結果、被膜層の膨れ、剥れがほとんどなく、また、美観性にも優れていた。
【0090】
(実施例5)
吸放湿性塗料1と吸放湿性塗料5に替えた以外は、実施例1と同様の方法で被膜層の膨れ・剥れ試験を行なった。その結果、被膜層の膨れ、剥れがほとんどなく、また、美観性にも優れていた。
【0091】
(実施例6)
シーラー処理を施した軽量モルタル板(25mm厚)を用いて、450×450×450mmのボックスを作製し、その表面に、塗料Cを、万能ガンで、玉状に吹付けた後、ミネラルスピリットを付けたプラスチックローラーで玉の凸部を押え、断面が台形状の凹凸を有する4〜8mmの被膜層(C)を形成させ、試験体2を作製した。
試験体2を作製した後、大阪府茨木市で、3ヶ月間、屋外に設置した後、エアブローによりほこり等を除去し、水で洗浄し、十分乾燥させた後、吸放湿性塗料1を万能ガンで吹付け、14日間養生した。このとき、吸放湿性塗料1は乾燥膜厚が0.5mmとなるように塗装を行った。
塗装後、被膜層の膨れ・剥れ試験を行なった結果、被膜層の膨れ、剥れがなく、また、汚れも目立たず、美観性にも優れていた。
【0092】
(比較例1)
吸放湿性塗料1と吸放湿性塗料6に替えた以外は、実施例1と同様の方法で被膜層の膨れ・剥れ試験を行なった。その結果、被膜層の膨れ、剥れが発生した。
【0093】
【発明の効果】
本発明の断熱構造体は、経時的に膨れ、剥離等が生じることなく、長期にわたりその美観性を維持することができる。
【0094】
【図面の簡単な説明】
【図1】水蒸気吸脱着性のヒステリシス特性を示すグラフである。
【図2】水蒸気吸脱着性試験結果を示すグラフである。(吸放湿性塗料1〜6)
Claims (5)
- 建築物外壁面を構成する断熱構造体であって、壁面の屋内側から屋外側へ向かって、断熱層(A)、基材層(B)、
有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)、
水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)、
を有することを特徴とする断熱構造体。 - 建築物外壁面を構成する断熱構造体であって、壁面の屋内側から屋外側へ向かって、断熱性基材層(B’)、
有機質樹脂を含有する塗料から形成される被膜層(C)、
水蒸気吸脱着性がヒステリシス特性を有する被膜層(D)、
を有することを特徴とする断熱構造体。 - 被膜層(D)の赤外線反射率が20%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の断熱構造体。
- 被膜層(D)の表面の水に対する接触角が70°以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の断熱構造体。
- 被膜層(D)が、(a)結合剤、(b)多孔質無機粉体を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の断熱構造体。
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JP2013513741A (ja) * | 2009-12-10 | 2013-04-22 | サン−ゴバン・イソベール | 特に建物を断熱するための水分適応性蒸気バリア、および蒸気バリアの製造方法 |
JPWO2014087834A1 (ja) * | 2012-12-07 | 2017-01-05 | 旭硝子株式会社 | 断熱材およびその製造方法、ならびに断熱施工方法 |
-
2003
- 2003-02-05 JP JP2003028187A patent/JP2004238886A/ja active Pending
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