JP2004238446A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(i)乳酸系樹脂、(ii)乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、(iii)芳香族脂肪族ポリエステル、(iv)無機フィラーから選ばれる2種類以上の混合物を含有する成形体において、屈折率が約2以上である隠蔽性向上剤(例えば酸化チタン)を、前記混合物100質量部に対して約0.1〜5質量部配合することにより、ウェルドライン部を透過する光を散乱させ、ウェルドラインを隠蔽してウェルドラインの見えない優れた外観を有する成形体(特に射出成形体)を提供することができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた外観を有する成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックは今や生活と産業のあらゆる分野に浸透し、全世界の年間生産量は約1億トンにも達している。しかし、その大半が使用後廃棄されるため、これが地球環境を乱す原因の一つとして認識されている。その一方、枯渇性資源の有効活用が注目されるようになり、再生可能資源としてのプラスチックの利用は益々重要性が増している。現在、その解決策として最も注目されているのが植物原料(生分解性)プラスチックの利用である。植物原料プラスチックは、非枯渇資源を利用し、プラスチック製造時における枯渇性資源の節約を図ることができるだけでなく、優れたリサイクル性をも備えている。
【0003】
植物原料(生分解性)プラスチックの中でも、特に乳酸系樹脂は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料としており、化学工学的に量産可能であって、しかも透明性・剛性・耐熱性等に優れているため、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレート等の代替材料としてフィルム包装材や成形分野において特に注目されている。
【0004】
乳酸系樹脂は、成形分野に用いるためには耐衝撃性を改良する必要がある。従来の耐衝撃性の改良手段としては、乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、或いは芳香族脂肪族ポリエステルを配合する手法が知られている。例えば、耐衝撃性を改良する手段として、特許文献1(特開平10−87976)には、乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルを配合する手法が開示されている。
【0005】
しかし、2種類以上の樹脂を混合したり、或いは樹脂と無機フィラーを混合したりして成形(例えば射出成形)を行うと、樹脂同士の分離、無機フィラーの配向などを原因として、成形体内部への光の透過、吸収、散乱が生じ、樹脂合流部にウェルドラインが発生することがある。このようなウェルドラインは、家電製品、自動車部品など、外観の仕上がりが重視される分野において特に重大な欠陥となる。
【0006】
ウェルドラインを改良する手段としては、特許文献2(特開2001−207062)が、板状フィラー、繊維状フィラー及び/又は針状フィラーを配合する手法を開示し、特許文献3(特開2001−269978)が、板状フィラー、繊維状フィラー及び/又は針状フィラー、発泡剤を配合する手法を開示している。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−87976号公報
【特許文献2】
特開2001−207062号公報
【特許文献3】
特開2001−269978号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新たな知見に基づき、ウェルドラインのない優れた外観を有する成形体(特に射出成形体)を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形体(特に射出成形体)は、(i)乳酸系樹脂、(ii)乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、(iii)芳香族脂肪族ポリエステル、(iv)無機フィラーから選ばれる2種類以上の混合物と、屈折率が約2以上である隠蔽性向上剤とを含有し、隠蔽性向上剤を、前記混合物100質量部に対して約0.1〜5質量部含有することを特徴とする。
【0010】
(i)乳酸系樹脂、(ii)乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、(iii)芳香族脂肪族ポリエステル、(iv)無機フィラーから選ばれる2種類以上の混合物を含有して成る成形体は、上述のようにウェルドラインを生じる可能性があるが、所定の隠蔽性向上剤を所定量配合することによりウェルドライン部を透過する光を散乱させ、ウェルドラインを隠蔽することができ、ウェルドラインの見えない優れた外観を有する成形体(特に射出成形体)を提供することができる。
【0011】
なお、本発明において、数値の前に「約」を付しているのは、本発明が特定する数値範囲から外れる成形体であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に包含される意を示すためである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(乳酸系樹脂)
本発明に用いられる乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、或いは、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの二種類以上の混合体を用いることができる。この時、乳酸系樹脂のDL構成比が、L体:D体=100:0〜90:10、若しくはL体:D体=0:100〜10:90が好ましい。中でもL体:D体=99.5:0.5〜94:6、若しくはL体:D体=0.5:99.5〜6:94であるのがより好ましい。かかる範囲内であれば、部品の耐熱性が得られ易く、広範囲の用途に用いることができる。
【0014】
また、本発明に用いられる乳酸系樹脂は、上記いずれかの乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸やジオール/ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
乳酸系樹脂に共重合される上記の他のヒドロキシ−カルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
乳酸系樹脂に共重合される上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
また、上記「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が挙げられる。
【0015】
乳酸系樹脂の重合法としては、縮重合法、開環重合法、その他の公知の重合法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸或いはD−乳酸或いはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持った乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを必要に応じて重合調整剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸系重合体を得ることができる。この際、ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成及び結晶性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
【0016】
なお、耐熱性を向上させるなどの必要に応じ、少量共重合成分としてテレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いて共重合させてもよい。
また、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを共重合させることもできる。
【0017】
本発明に用いられる乳酸系樹脂の重量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。5万以上の分子量であれば好適な実用物性を発揮する。また、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎることがなく良好な成形加工性を発揮する。
乳酸系樹脂の代表的なものとして、三井化学製レイシアシリーズ、カーギル・ダウ製Nature Worksシリーズなどが挙げられる。
【0018】
(乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル)
本発明に用いられる乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとしては、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0019】
上記肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジオールであるエチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれか或いは二種類以上の組合わせからなる混合物と、脂肪族ジカルボン酸であるコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等のいずれか或いは二種類以上の組合わせからなる混合物と、を縮合重合して得ることができる。必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマーを得ることもできる。
【0020】
上記環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類以上選ばれて重合される。
【0021】
上記合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類との共重合体等、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド等との共重合体等が挙げられる。
【0022】
(芳香族脂肪族ポリエステル)
本発明に用いられる芳香族脂肪族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルである。
【0023】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分あるいは脂肪族ジオール成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0024】
本発明において、最も好適に用いられる芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、脂肪族ジカルボン酸成分はアジピン酸であり、脂肪族ジオール成分は1,4−ブタンジオールである。
【0025】
(無機フィラー)
本発明で用いる無機フィラーの具体例としては、タルク、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、合成マイカ、モンモリロナイト、黒鉛、金属箔、板状炭酸カルシウム、板状アルミナ、炭酸カルシウム、シリカ、各種ビーズ、各種バルーン、アルミナ、酸化チタン、グレー、金属粉、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、チタン酸バリウム、各種フェライトなどが挙げられる。
【0026】
無機フィラーの形状は、板状フィラー、不定形フィラー及び球状フィラーのいずれでもよく、その粒径は0.1〜10μmの範囲が好ましく、2〜5μmの範囲がより好ましい。0.1μm以上であれば、フィラーが凝集して成形体の強度を低下させることがなく、10μm以下であれば、フィラーが破壊の開始点となって強度を低下させることもない。
【0027】
(隠蔽性向上剤)
本発明で用いる屈折率が約2以上である隠蔽性向上剤としては、酸化チタン、チタン酸鉛、チタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化亜鉛などが挙げられる。中でも、隠蔽性を効率よく向上させるためには屈折率が最も高い酸化チタンが特に好ましい。
【0028】
上記屈折率が約2以上である隠蔽性向上剤の配合量は、(i)乳酸系樹脂、(ii)乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、(iii)芳香族脂肪族ポリエステル、(iv)無機フィラーから選ばれる2種類以上の混合物100質量部に対して0.1〜5質量部であるのが好ましく、中でも0.5〜2質量部であるのがより好ましい。隠蔽性向上剤の配合量が0.1質量部以上であれば、所望の隠蔽効果を発揮してウェルドライン外観を改善することができる。また、5質量部以下であれば、隠蔽性の程度が適当で着色剤による調色も好適に行うことができる。
【0029】
(着色剤及びその他の添加剤)
本発明に用いられる着色剤としては、アンサンスロン、アンスラキノン、アンスラピリミシン、イソイントリノン、インダンスロン、カーボンブラック、キナクリドン、キノフタロン、酸化チタン、酸化鉄、チオインシゴ、酸化二鉄亜鉛、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、ナフトール、βナフトール、二酸化チタン、ピラゾロン、フタロシアニン、ベンスイミダゾロン、ペリレンなどが挙げられる。
【0030】
また、本発明に用いられる成形体に耐加水分解性を付与するために、成形体を形成する樹脂100質量部に対してカルボジイミド化合物0.1〜5質量部添加することができる。0.1質量部以上の添加量であれば、耐加水分解性改良効果を好適に発現し、また、5質量部以下の添加量であれば、カルボジイミド化合物のブリードアウトによる成形体の外観不良や、可塑化による機械物性の低下が起こることもない。
【0031】
カルボジイミド化合物は、下記一般式の基本構造を有するものが挙げられる。
なお、下記式において、nは1以上の整数を示し、Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでもよい。また、nは通常1〜50の間で適宜決められる。
【0032】
【化1】
【0033】
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体が挙げられる。該カルボジイミド化合物は、単独、または、2種以上組み合わせて用いられる。
【0034】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、滑剤、核剤、可塑剤等の添加剤を処方することができる。
【0035】
(成形方法)
次に、本発明における成形体の成形方法、特に射出成形について説明する。なお、射出成形以外の成形方法については、現在公知の方法を適用することができる。
【0036】
上記乳酸系樹脂、乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル及び無機フィラーなどの混合は、同一の射出成形機にそれぞれの原料を投入して行うことができる。例えば、射出成型機を用いて原料を直接混合して射出成形する方法、或いはドライブレンドした原料を二軸押出機を用いてストランド形状に押出してペレットを作成した後、再度射出成形機を用いて射出成形体を作成する方法などがある。いずれの方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためには後者を選択することが好ましい。例えば、乳酸系樹脂と芳香族脂肪族ポリエステルとを十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作成すればよい。
溶融押出温度については、L−乳酸構造とD−乳酸構造の組成比によって乳酸系樹脂の融点が変化すること、芳香族脂肪族ポリエステルの混合割合によって混合樹脂の融点が変化すること等を考慮して適宜選択することが好ましい。実際には100〜250℃の温度範囲が通常選択される。
【0037】
上記の如くペレットを作製する場合には、そのペレットを十分に乾燥して水分を除去した後、以下の方法で射出成形を行えばよい。
【0038】
本発明の成形体は、特に限定され無いが代表的には熱可塑性樹脂用の一般射出成形法、ガスアシスト成形法及び射出圧縮成形法等の射出成形法によって得ることができる。その他目的に合わせて、上記の方法以外でインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH−PULL、SCORIM等を採用することもできる。
【0039】
射出成形装置としては、一般に射出成形機、ガスアシスト成形機及び射出圧縮成形機等と、これらに用いられる成形用金型及び付帯機器、金型温度制御装置及び原料乾燥装置等とを備えている。
成形条件は、射出シリンダー内での樹脂の熱分解を避けるため、溶融樹脂温度を170℃〜210℃の範囲で成形するのが好ましい。
【0040】
射出成形体を非晶状態で得る場合は、成形サイクル(型閉〜射出〜保圧〜冷却〜型開〜取出)の冷却時間を短くする観点から、金型温度はできるだけ低温とするのが好ましい。一般的には15℃〜55℃で、チラーを用いることも望ましい。後結晶化時の成形体の収縮、反り、変形を抑える点ではこの範囲で高温とすることが有利である。
【0041】
また、無機フィラー充填系の場合、充填量が多いほど成形品表面にフローマークが発生し易くなるため、射出速度を未充填系より低速とすることが必要となる。タルク15質量%を含む乳酸系樹脂をL100mm×W100mm×t2mmのプレート金型を備えたスクリュー径25mmの射出成形機で射出成形したところ、射出速度30mm/sec以下でフローマークの無い成形体が得られたが、未充填樹脂の場合は50mm/secでもフローマークは発生しなかった。
【0042】
なお、ヒケが発生がしやすい場合は、保持圧力及び保持時間を十分に取ることが好ましい。例えば、保持圧力は30MPa〜100MPaの範囲に、保持時間は成形体の形状や肉厚によって1sec〜15secの範囲に適宜設定される。上記の肉厚2mmプレートを成形する場合は3sec前後となる。
【0043】
金型内で結晶化させるためには、加熱した金型内に溶融樹脂を充填した後、一定時間金型内で保持するのが好ましい。
金型温度としては、60℃〜130℃、好ましくは70℃〜90℃である。60℃以上であれば結晶化に長時間を要することがなく、サイクルが長くなり過ぎることもない。一方、130℃以下であればリリース時に変形を生じることがない。
【0044】
射出成形によって得られた成形品の耐熱性をさらに向上するために、熱処理により結晶化を行うことが有効である。熱処理温度は、60〜130℃の範囲が好ましく、70〜90℃の範囲がより好ましい。熱処理温度が60℃以上であれば、成形工程において好適に結晶化が進行し、130℃以下であれば成形体の冷却時において変形や収縮を生じることもない。
加熱時間は、組成や熱処理温度によって適宜決められるが、例えば70℃の場合は15分〜5時間熱処理を行うのが好ましい。また、130℃の場合は10秒〜30分熱処理を行うのが好ましい。
【0045】
結晶化の方法としては、事前に温度の上げられた金型に射出成形し、金型内で結晶化させる方法や、射出成形後に金型の温度を上げて金型内で結晶化させる方法、或いは、射出成形体を非晶状態で金型から取り出した後、熱風、蒸気、温水、遠赤外線ヒーター、IHヒーターなどで結晶化させる方法が挙げられる。このとき、射出成形体を固定しなくてもよいが、成形体の変形を防止するために金型、樹脂型などで固定することが好ましい。また、生産性を考慮に入れて、梱包した状態で熱処理を行うこともできる。
【0046】
上記の如く成形した成形体は、ウェルドラインの見えない優れた外観と優れた着色性とを備えているため、意匠性の高い家電製品、自動車部品、その他一般成形品として好適に使用することができる。
【0047】
(実施例)
以下に本発明の実施例を示すが、これらにより本発明が何らかの制限を受けるものではない。
なお、実施例中に示す結果は以下の方法で評価を行った。
【0048】
(1)ウェルドライン外観
東芝機械製射出成形機「IS50E」を用いて、図1に示す電卓型成形体を得た。この時の成形条件は、シリンダー温度195℃、金型温度25℃、射出圧力110MPa、射出時間1.5sec、保圧力80MPa、保持時間3.0sec、背圧10MPa、スクリュー回転数110rpmであった。
上記方法にて得られた図1の電卓型成形体のウェルドライン部▲1▼〜▲9▼の外観を、室内蛍光灯の下で目視にて評価を行った。
判定は以下の基準に従って行い、▲1▼〜▲9▼のウェルドライン部のうち、○が6項目以上であるものを合格レベルとした。
【0049】
○:ウェルドラインは実質的に認められない。
△:ウェルドラインはやや認められる。
×:ウェルドラインは明瞭に認められる。
【0050】
(2)着色性
三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて、▲1▼PANTONE802C(ライトグリーン)、▲2▼PANTONE803C(イエロー)、PANTONE804C(オレンジ)の3色に調色を行ったペレットを作製した後、東芝機械製射出成形機「IS50E」を用いてL100mm×W100mm×t3mmの射出
成形体を射出成形した。得られた射出成形体と色見本の色味を比較した。
判定は以下の基準に従って行い、▲1▼〜▲3▼のうち、○が2項目以上であるものを合格レベルとした。
【0051】
○:射出成形体と色見本の色味が一致
△:射出成形体と色見本の色味がほぼ一致
×:射出成形体と色見本の色味が不一致
【0052】
(実施例1)
乳酸系樹脂としてカーギル・ダウ社製「NatureWorks4031D」(L−乳酸/D−乳酸=98.5/1.5、重量平均分子量20万)、乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルとして昭和高分子社製「ビオノーレ3003」(ポリブチレンサクシネート80モル%/アジペート20モル%共重合体、重量平均分子量20万)、隠蔽性向上剤として酸化チタン(屈折率:2.76)を用い、前記NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び酸化チタンを質量比60:40:0.1の割合でドライブレンドした後、三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて押出温度190℃で、▲1▼PANTONE802C(ライトグリーン)、▲2▼PANTONE803C(イエロー)、PANTONE804C(オレンジ)に調色してコンパウンドし、ペレット形状にした。
得られたペレットを、東芝機械製射出成形機 IS50E(スクリュー径25mm)を用い、図1に示す電卓型成形体を射出成形した。この時の成形条件は、シリンダー温度195℃、金型温度25℃、射出圧力110MPa、射出時間1.5sec、保圧力80MPa、保持時間3.0sec、背圧10MPa、スクリュー回転数110rpmであった。得られた電卓型成形体に関してウェルドライン外観、着色性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び酸化チタンを質量比60:40:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び酸化チタンを質量比60:40:3の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例4)
NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び酸化チタンを質量比60:40:5の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例5)
芳香族脂肪族ポリエステルとして、BASF社製「Ecoflex」(テレフタル酸24モル%、アジピン酸26モル%、1,4−ブタンジオール50モル%、重量平均分子量12万)を用い、NatureWorks4031D、Ecoflex及び酸化チタンを質量比60:40:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例6)
無機フィラーとして、日本タルク社製「ミクロエースL1」(タルク、平均粒径4.9μm)を用い、NatureWorks4031D、ミクロエースL1及び酸化チタンを質量比60:40:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品の作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例7)
NatureWorks4031D、ビオノーレ3003、Ecoflex及び酸化チタンを質量比60:20:20:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例8)
NatureWorks4031D、ビオノーレ3003、Ecoflex、ミクロエースL1及び酸化チタンを質量比60:10:10:20:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
(比較例1)
NatureWorks4031D及びビオノーレ3003を質量比60:40の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色し、射出成形品の作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
(比較例2)
NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び酸化チタンを質量比60:40:6の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(比較例3)
隠蔽性向上剤として、硫酸カルシウム(屈折率:1.60)を用い、NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び硫酸カルシウムを質量比60:40:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
(比較例4)
隠蔽性向上剤として、酸化マグネシウム(屈折率:1.70)を用い、NatureWorks4031D、ビオノーレ3003及び酸化マグネシウムを質量比60:40:1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で調色して射出成形品を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表1から明らかなように、実施例1〜8の射出成形体はウェルドライン外観、着色性に優れていることがわかった。
一方、表2から明らかなように、比較例1、3、4の射出成形体は、着色性には優れているものの、ウェルドライン外観に劣ったものであった。また、比較例2の射出成形体は、ウェルドライン外観には優れているものの、着色性に劣ったものであった。このように、比較例1〜4の射出成形体では、ウェルドライン外観、着色性のいずれかにおいて、実用不可能なものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例において、ウェルドライン外観評価のために製造した電卓型成形体を示した斜視図であり、図中の番号付太線部分はウェルドラインが生じる部分であり、ウェルドライン外観評価の位置を示している。
Claims (3)
- (i)乳酸系樹脂、(ii)乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステル、(iii)芳香族脂肪族ポリエステル、(iv)無機フィラーから選ばれる2種類以上の混合物と、屈折率が約2以上である隠蔽性向上剤とを含有し、隠蔽性向上剤を、前記混合物100質量部に対して約0.1〜5質量部含有することを特徴とする成形体。
- 隠蔽性向上剤が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- 成形体中に着色剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体。
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JP2005068229A (ja) * | 2003-08-21 | 2005-03-17 | Mitsubishi Plastics Ind Ltd | 射出成形体の変色防止方法 |
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-
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