JP2004236437A - モータの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御する。
【解決手段】駆動装置100は、複数相のIPMモータ25を制御する装置である。この駆動装置100は、IPMモータ25の回転速度を設定する設定部21と、特定相の電圧および電流のいずれかを検出する電流検出器31と、IPMモータ25の回転子の機械角を検出する振動検出器32および変換部205と、位相差データを算出する第2検出部202と、設定された回転速度を満足するように、制御データに基づいて駆動信号を作成し、各複数相に駆動信号を印加するインバータ23と、IPMモータ25の仕事率が変動する周期より短い周期で、位相差データが目標値に近づくような制御データを複数相の各相ごとに作成し、作成された制御データを用いて印加手段を制御する演算部203とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】駆動装置100は、複数相のIPMモータ25を制御する装置である。この駆動装置100は、IPMモータ25の回転速度を設定する設定部21と、特定相の電圧および電流のいずれかを検出する電流検出器31と、IPMモータ25の回転子の機械角を検出する振動検出器32および変換部205と、位相差データを算出する第2検出部202と、設定された回転速度を満足するように、制御データに基づいて駆動信号を作成し、各複数相に駆動信号を印加するインバータ23と、IPMモータ25の仕事率が変動する周期より短い周期で、位相差データが目標値に近づくような制御データを複数相の各相ごとに作成し、作成された制御データを用いて印加手段を制御する演算部203とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はブラシレスモータを制御する技術に関し、特に、空気調和機の圧縮機を駆動するブラシレスモータを安定して駆動するモータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータを安定に駆動させるためには、モータ回転数の変動を抑制することと、ロータ位置に対するモータコイル電流の通電タイミングを一定かつ適切な値に制御することとが必要である。ブラシレスモータの発生トルクは通電タイミングに関係しており、通電タイミングが定まっていない場合はコイル電流とロータの磁束とで発生するモータトルクが一定とならず、正常回転ができないからである。たとえば、通電タイミングの変動が大きい状態、すなわちコイル電流の位相とロータの位相とが同期していない状態においては、モータトルクが通電タイミングごとに急変するので、モータは回転を持続することができず停止する。
【0003】
特開2000−50677公報(特許文献1)は、位置センサレスで駆動電圧に間欠部分を必要としない連続通電駆動を実現する制御装置を提供する。この公報に開示された制御装置は、コントローラと、電力変換回路と、モータと、コイル電流の符号検出回路とを含む。コントローラは、外部からモータに対する指令速度を入力するとともに、コイル電流の符号検出回路からモータに流れる電流の符号を入力して、電力変換回路にモータを駆動するための電圧の指令信号を出力する。電力変換回路は、コントローラからモータを駆動するための電圧の指令信号を入力して、コイル電流の符号検出回路へモータを駆動するための電圧を出力する。コイル電流の符号検出回路は、電力変換回路からモータを駆動するための電圧を入力し、モータに流れる電流の符号を判別してコントローラへ出力するとともに、モータ駆動電圧をモータへ出力する。
【0004】
この制御装置によると、コントローラは、コイル電流の符号情報に基づいてロータ位置と電流および電圧との関係を推定し、駆動電圧の振幅とコイル電流の通電タイミングとを制御する。これにより、ロータの位置を直接検出せずに通電タイミングを制御することができる。その結果、位置センサレスで連続して通電駆動を実現する制御装置を提供できる。
【0005】
特開2001−112287公報(特許文献2)は、通電タイミングを制御しモータを安定してエネルギ損失を抑えて駆動させるモータ制御装置を開示する。この公報に開示されたモータ制御装置は、複数相のモータコイルを備えた同期モータを制御するモータ制御装置である。回転数の設定のための指令が与えられたことに応じて、同期モータを駆動するための駆動波データを複数相の各相ごとに作成する駆動波データ作成回路と、複数相のうちのいずれかの特定相のモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出回路と、駆動波データ作成回路によって作成された駆動波データから特定相のモータ駆動電圧位相差を検出し、モータ電流検出回路から出力されたモータ電流信号との位相差を検出して位相差情報を出力する位相差検出回路と、位相差検出回路から出力される位相差情報を目標の値に制御するためのデューティ基準値を算出する位相差制御回路と、駆動波データ作成回路から出力される各相の駆動波データと位相差制御回路から出力されるデューティ基準値とを乗算して、各相ごとの出力デューティを算出するデューティ算出回路と、複数の駆動素子を含み、デューティ算出回路によって算出された各相ごとの出力デューティにしたがってパルス幅変調信号を生成して各駆動素子の導通を制御し、各モータコイルに通電するインバータとを含む。位相差検出回路は、特定相のモータ駆動電圧位相差を基準とした2個所の位相期間中のモータ電流信号面積をそれぞれの位相期間で求め、2個所の位相期間中のモータ電流信号面積の面積比を算出して、これを位相差情報とすることを特徴とする。
【0006】
このモータ制御装置によると、モータ回転速度を制御側で設定した周波数に同期するよう制御するとともに、モータ駆動電圧位相差とモータ電流との位相差を、2個所の位相期間でのモータ電流面積比で検出し、かつ制御する。ロータとステータとの相対位置は、モータ駆動電圧とモータ電流との位相差によって決まる。これにより、ロータ位置センサを用いることなく間接的にロータとステータとの相対位置を検知し、通電タイミングを制御できる。通電タイミングを間接的に制御できるので、最もエネルギの損失を抑える通電タイミングでモータを駆動することができる。その結果、エネルギ損失の抑制、低騒音および低振動を実現できるモータ制御装置を提供することができる。
【0007】
特開2000−60178公報(特許文献3)は、位置センサレスで連続通電が可能な駆動回路を開示する。この公報に開示された駆動回路は、パルス幅変調された信号を出力する三相ブリッジ回路と、三相ブリッジ回路に接続されて駆動されるブラシレスモータと、ブラシレスモータへの通電が休止されている相の端子電圧を検出する端子電圧検出装置と、端子電圧検出装置の検出結果に基づいて、三相ブリッジ回路の通電を制御する制御回路とを含む。端子電圧検出装置は、検出したパルス状の電圧の立ち上がり時の時定数よりも、立ち下がり時の時定数の方が大きくなるように調整されている。
【0008】
この駆動回路によると、端子電圧検出装置は、検出したパルス状の電圧の立ち上がり時の時定数よりも、立ち下がり時の時定数の方が大きくなるように調整されている。これにより、電圧のパルスは実質上幅が広くなったような波形に処理され出力される。実質上パルス幅が広くなったような波形に処理されるので、誘起電圧が観測されやすくなる。誘起電圧が観測されやすくなるので、電源電圧が高くて印加パルスのパルス幅が極めて細い場合でも確実に誘起電圧が検出される。その結果、モータに印加する電圧をパルス幅変調にて作成する場合に、安定で広範囲な始動を実現できる駆動回路を提供することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−50677公報(第3−5頁)
【0010】
【特許文献2】
特開2001−112287公報(第5−7頁)
【0011】
【特許文献3】
特開2000−60178公報(第6−9頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の公報に開示された装置や方法には、以下のような問題がある。
【0013】
特開2000−50677号公報で開示された制御装置は、コイル電流あるいは駆動電圧の、振幅値と通電タイミングとの2つのパラメータを操作する必要がある。いずれか一方のみを制御する場合、モータ回転速度および通電タイミングが同時に変化してしまい、所望のモータ回転速度および通電タイミングとなるように制御することが困難なためである。2つのパラメータを操作するためには、2つのパラメータを操作する制御系が必要なので、制御系について複雑な設計が必要となる。2つのパラメータを操作するので、2つのパラメータを協調的かつ非干渉に操作するための演算量が増大する。演算量が増大するので処理時間が増大する。処理時間が増大するのでレスポンスが低下する。必要なレスポンスを得るために高性能なコンピュータなどを用いると、装置のコストが増加する。
【0014】
特開2001−112287公報で開示されたモータ制御装置は、2つのパラメータの一方のみを制御して所望の通電タイミングに制御できるが、これは同期モータの消費エネルギの変動が一定(変動小)であることを前提とする。したがって、消費エネルギの変動が大きい負荷に接続された同期モータに対して、2つのパラメータの一方のみを制御して所望の通電タイミングに制御することはできない。
【0015】
特開2000−60178公報で開示された駆動回路は、駆動電圧の振幅値という1つのパラメータのみを操作することにより、安定で広範囲な始動を実現できる。しかしこの駆動回路は間欠駆動において逆起電圧を検出することを前提としている。間欠駆動は騒音、エネルギ損失の点で180°通電駆動をはじめとする連続駆動に劣る。
【0016】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、1つのパラメータを操作することにより、単位時間あたりにおける負荷の消費エネルギである仕事率についての変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1の発明にかかるモータの制御装置は、複数相の同期モータを制御するためのモータの制御装置である。このモータの制御装置は、同期モータの回転速度を設定するための設定手段と、複数相のうちのいずれかの特定相の電圧および電流のいずれかを検出するための第1の検出手段と、同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、回転子の機械角に対する、第1の検出手段による検出結果により特定される特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出するための算出手段と、設定された回転速度を満足するように、複数相の電圧および電流のいずれかを制御するための制御データに基づいて駆動信号を作成し、各複数相に駆動信号を印加するための印加手段と、同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、算出手段から出力される位相差データが目標値に近づくような制御データを複数相の各相ごとに作成し、作成された制御データを用いて印加手段を制御するための制御手段とを含む。
【0018】
第1の発明によると、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、位相差データが目標値に近づくように制御データを作成し、その制御データを用いて印加手段を制御する。仕事率とは、単位時間あたりの負荷の消費エネルギをいう。負荷の仕事率が変動する周期より短い周期で印加手段が制御されるので、同期モータの仕事率の変動が大きくなる前に印加手段が制御される。仕事率の変動が大きくなる前に印加手段が制御されると、仕事率の変動が位相差と複数相の電圧および電流との関係におよぼす影響が小さくなる。仕事率の変動の影響が小さくなると、複数相の電圧または電流のいずれか一方が制御されることで位相差もある程度制御される。これにより、制御手段は、複数相の電圧または電流のいずれか一方を制御することで位相差を制御できるので、1つのパラメータで位相差を制御できる。また同期モータの回転速度は設定された値で一定に保たれる。このように1つのパラメータで位相差が制御されるので、簡単な構成の制御装置により同期モータを制御できる。モータ電流により機械角を検出するとは限らないので、連続駆動が可能である。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0019】
第2の発明にかかるモータの制御装置は、第1の発明の構成に加えて、第2の検出手段は、同期モータが発生する振動の振幅および周波数のいずれかの変動に基づいて機械角を検出するための手段を含む。
【0020】
第2の発明によると、機械角は、同期モータが発生する振動の振幅および周波数のいずれかの変動に基づいて検出される。一般に振動は装置の外部へも容易に伝達するので、第2の検出手段は多様な場所において振動の振幅および周波数のいずれかの変動を検出することができる。これにより、第2の検出手段の構造に対する制約がなくなるので、第2の検出手段をより簡単な構成とすることができる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、より簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0021】
第3の発明にかかるモータの制御装置は、複数相の同期モータを制御するためのモータの制御装置であって、同期モータの回転速度を設定するための設定手段と、複数相のうちのいずれかの特定相の電圧および電流を検出するための第1の検出手段と、第1の検出手段による検出結果により特定される特定相の電圧および電流から、回転子の機械角に対する、特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出するための算出手段と、設定された回転速度を満足するように、複数相の電圧および電流のいずれかを制御するための制御データに基づいて駆動信号を作成し、各複数相に駆動信号を印加するための印加手段と、同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、算出手段から出力される位相差データが目標値に近づくような制御データを複数相の各相ごとに作成し、作成された制御データを用いて印加手段を制御するための制御手段とを手段を含む。
【0022】
第3の発明によると、算出手段は、特定相の電流および電圧から前記回転子の機械角に対する、特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出する。これにより、機械的な検出要素を設けることなく容易に位相差を検出することができるので、構成を簡素化することができる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0023】
第4の発明にかかるモータの制御装置は、第1から3のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/4以下の長さの周期で、制御データを作成するための手段を含む。
【0024】
第4の発明によると、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/4以下の長さの周期で制御データを作成し、かつ制御データを用いて印加手段を制御する。一般に同期モータの仕事率が変動する場合、その変動の周期の1/4以下の期間の間に生じた仕事率の変動の影響は、位相差と複数相の電圧および電流との関係にほとんど影響をおよぼさないことが多い。これにより、制御手段は、複数相の電圧または電流のいずれか一方を制御することにより位相差をより確実に制御できるので、1つのパラメータにより位相差を確実に制御できる。1つのパラメータにより位相差が確実に制御されるので、簡単な構成の制御装置により同期モータを確実に制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により確実に制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0025】
第5の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第3のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で、制御データを作成するための手段を含む。
【0026】
第5の発明によると、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で制御データを作成し、かつ制御データを用いて印加手段を制御する。一般に同期モータを制御する場合、制御データを変更した影響によって一時的にロータの回転などが不安定になる。同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で印加手段を制御すると、仕事率の変動が少なくなるので、仕事率の変動を無視できる。仕事率の変動を無視できるので、制御データの変更量はほとんどなくなる。制御データの変更量がほとんどないので、制御データを変更した影響による不安定化は抑制される。これにより、不安定化が抑制され、かつ確実に位相差データが制御されるので、簡単な制御装置で特定相のモータ電流と機械角の変動との位相差を確実かつ安定して制御できる。確実かつ安定して位相差が制御されるので、簡単な制御装置で同期モータの駆動を確実かつ安定して最適化できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により確実かつ安定して制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0027】
第6の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第5のいずれかの発明の構成に加えて、同期モータの仕事率が変動する周期は、同期モータの負荷トルクが変動する周期である。
【0028】
第6の発明によると、制御手段は、同期モータの負荷トルクが変動する周期より短い周期で複数相の電圧および電流のいずれかを補正するように印加手段を制御する。同期モータの負荷トルクの変動が位相差と複数相の電圧および電流との関係におよぼす影響は、仕事率の変動がおよぼす影響より大きい。これにより、制御手段は同期モータの負荷トルクが変動する周期より短い周期で複数相の電圧または電流のいずれか1つのパラメータを制御するので、より確実に位相差を制御できる。1つのパラメータにより位相差がより確実に制御されるので、簡単な構成の制御装置が同期モータを確実に制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により確実に制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0029】
第7の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第6のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、設定手段が回転速度を設定したことに応答して、予め定められた時間が経過した後に印加手段を制御するための手段を含む。
【0030】
第7の発明によると、同期モータの制御においては、同期モータの回転速度が設定され、その結果回転速度が変更されると、位相差と複数相の電圧および電流との関係が変化する。この関係が変化すると、同期モータの回転が不安定化する。制御手段は、設定手段が回転速度を設定したことに応答して、予め定められた時間が経過した後に印加手段を制御する。これにより、同期モータの回転は、経過した時間に応じて回転速度の変化に対応した制御を受け、安定化する。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、より簡単な構成で連続駆動により安定して制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0031】
第8の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第7のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段が回転速度を新たに設定したことに応答して、制御データの一部として回転速度の影響を緩和するために駆動信号の作成に用いられる補正データを作成するための手段をさらに含む。
【0032】
第8の発明によると、補正データは、制御データとともに回転速度の影響を緩和するために、制御データの一部として駆動信号の作成に用いられる。補正データが駆動信号の作成に用いられると、駆動信号の急激な変化は回避される。これにより、同期モータの回転が不安定化することを回避することができる。不安定化が回避されるので、同期モータを安定して制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、回転速度の変化にともなう不安定性を緩和し、かつ簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0033】
第9の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第8のいずれかの発明の構成に加えて、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。
【0034】
第9の発明によると、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。埋込み磁石型同期モータは、適切な駆動信号を用いて制御することにより、通常の同期モータに比べてより大きなトルクを得ることができる。これにより、エネルギの損失が少なくなるように同期モータを制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動によりエネルギの損失が少なくなるように制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る駆動装置100は、設定部21と、センサ部22と、インバータ23と、制御部24とを含む。設定部21は、システム制御回路(図示せず)からの指令を受けて、モータコイル端子に印加する駆動電圧(あるいは駆動電流)の周波数を設定し、インバータ23に周波数情報として出力する。周波数情報は、インバータ23に接続されたIPM(Interior Per−manent Magnet)モータ25の回転速度を設定するために出力される。IPMモータ25のコイルは、この周波数で励磁される。その結果、IPMモータ25は強制励磁駆動される。
【0037】
センサ部22はIPMモータ25の回転状態を示す検出信号あるいはインバータ23の駆動信号を検出し、制御部24に出力する。インバータ23は設定部21からの周波数情報と、制御部24からの振幅値などの操作パラメータからIPMモータ25のコイル端子に印加する駆動信号を作成し、ドライバを介して出力する。
【0038】
制御部24はセンサ部22で検出された、IPMモータ25の状態を示す信号およびインバータ23の駆動信号を用いて、駆動電圧(あるいは駆動電流)の振幅値を決定する信号を作成し、インバータ23に出力する。振幅値を決定する信号は、PI(Proportional Integral)制御などにより設定されたIPMモータ25の回転速度に対応する通電タイミングが得られるように作成される。通電タイミングとは、ロータと駆動電圧あるいは駆動電流との位相差を表わす情報をいう。
【0039】
周波数情報のみが設定されており、制御部24が作動しておらず振幅値を決定する信号が入力されていない場合には、インバータ23は駆動信号の振幅を適切に設定することができない。この時IPMモータ25の動作は、設定された周波数に対応したモータ回転数で回転することができずに停止したり、振動したり、コイルへの過電流によって発熱したりする。確実にIPMモータ25を駆動するためには制御部24によって駆動信号の振幅を制御する必要がある。
【0040】
IPMモータ25は、同期モータであるロータ内部に永久磁石を埋め込んで配置した埋込み磁石型ブラシレスモータであり、3相Y結線のコイルによる固定子と、永久磁石回転子とで構成される。
【0041】
センサ部22は、電流検出器31と、振動検出器32とを含む。電流検出器31は、IPMモータ25のコイルからコイル電流を検出し、制御部24に出力する。振動検出器32は、IPMモータ25のロータの機械角を検出するために、IPMモータ25あるいはIPMモータ25が取り付けられているコンプレッサなどの部材の振動の振幅を検出し、振動信号として出力する。
【0042】
制御部24は、第1検出部201と、第2検出部202と、演算部203と、決定部204と、変換部205とを含む。第1検出部201は、IPMモータ25のコイル電流の位相を検出する。第2検出部202は、コイル電流と、ロータ位置との位相差を算出する。演算部203は、決定部204から出力された位相差の目標値と算出された位相差との差に基づいてPI制御に基づく演算などを実行し、修正情報を駆動電圧あるいはコイル電流の振幅を設定する情報としてインバータ23に出力する。決定部204はメモリ(図示せず)を内蔵し、そのメモリに記憶された電流位相差βの値のうちから目標値を決定する。
【0043】
変換部205は振動検出器32が出力した振動信号をIPMモータ25のロータの位置に対応した信号に変換し、第2検出部202に出力する。一般にシングルピストン型のコンプレッサなどは、ロータ1回転の間に内部の気体を圧縮する工程と吸入する工程とを含む。これらの工程はロータの位置に同期する。工程がロータの位置に同期するので、このような負荷を駆動する際にはこの工程によって生じる負荷トルク変動をIPMモータ25のロータ位置の検出に利用することができる。
【0044】
具体的には、負荷トルクの変動に伴って変化してしまうモータ、コンプレッサ、装置の振動変化を検出し、これをロータ位置に換算することで、ロータ位置を検出することができる。変換部205は、振動の発生タイミングとIPMモータ25のロータ位置との対応関係に基づき、振動をロータ位置に変換する。これは特にコンプレッサなど、IPMモータ25が悪環境下におかれている場合に、位置センサを取り付ける必要がなくなるという有効な方法である。
【0045】
図2を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電流振幅IAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0046】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、設定部21は、モータコイルの励磁周波数に同期しているIPMモータ25の回転数を設定する。S102にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された電流位相差βの値のうちから目標値を読出し、決定する。S104にて、第1検出部201は、IPMモータ25のコイル電流の位相を検出する。本実施の形態においては、コイル電流のいわゆるゼロクロス点を検出することによりコイル電流の位相を検出する。
【0047】
S106にて、変換部205は、振動検出器32を用いてIPMモータ25により発生する振動を検出し、その振動を表わす振動信号をIPMモータ25のロータの位置に対応したロータ情報に変換し、第2検出部202に出力する。
【0048】
S108にて、第2検出部202は、変換部205によって得られたロータの機械角の位相に対する第1検出部201によって検出された位相である電流位相差βを算出する。電流位相差βは通電タイミングの一種である。S110にて、演算部203は、位相差の目標値と算出された位相差との差に基づき、これを目標値と一致させるためのPI制御に基づく演算を実行し、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。
【0049】
S112にて、インバータ23は電流振幅IAを設定し、出力する。
S114にて、第2検出部202は、次の制御周期を待つ。この間にIPMモータ25の特性値が、電流振幅IA出力されることで互いの値の変化により変動する。ここでいう特性値とは、電圧振幅VA、コイル電流のd軸成分ID、q軸成分IQ、電圧振幅VAのd軸成分VD、q軸成分VQおよび電流位相差βをいう。これらの特性値は、各々の変数と連携して決定される。制御周期は、IPMモータ25の負荷トルクの変動周期が、本実施の形態における駆動装置100全体の制御周期の4倍以上となるように定められる。これは、負荷トルクがその都度変動してしまうと後述する式(3)において発生トルクTを定数と見なすことができなくなってしまい、電流位相差β、電流振幅IAが定まらなくなってしまうためである。
【0050】
変動している負荷トルクに対して高精度に通電タイミングを制御するためには、負荷トルクの変動周期に対して制御周期を充分に短く設定する必要がある。負荷トルク変動をゼロにすることは非常に困難であり、使用できる装置も限られるが、制御周期に対して緩やかに変化していく負荷トルク変動であればそのような制御は可能である。制御動作によって負荷トルク変動に追従した、安定な通電タイミングでのモータ駆動が実現できるからである。負荷トルク変動周期に対する制御部24の制御周期の設定は、負荷トルクの変化率や制御部24の追従特性によって決まるものであるが、負荷トルクの変動の影響がおよばない周期である必要がある。これにより本実施の形態においては負荷トルク変動周期に対して1/4の制御周期としているが、制御における整定時間を考慮し、より安定な通電タイミング制御を実施する場合には1/10程度に設定することが望ましい。
【0051】
図3を参照して、負荷トルクの変動周期と制御部24の制御周期との関係を説明する。図3は負荷トルクの変動周期と制御部24の制御周期とを時間軸で示した図である。図中、制御タイミングを「○」印で示した制御周期TSは負荷トルク変動周期に対して充分に短い周期で通電タイミング制御を実施しており、負荷トルクの変動に対して制御が追従することができている例である。また制御タイミングを「●」印で示した制御周期TNは負荷トルクの変動周期に対して制御周期が長すぎる例である。このような場合には、制御出力として振幅情報を出力した後、負荷トルクが非常に大きく変動してしまうことになり、高精度な通電タイミングでのモータ駆動が実現できなくなってしまうことがある。
【0052】
本実施の形態においては、制御部24の制御周期が負荷トルクの変動周期に対応して設定されるので、制御部24は、負荷トルク変動が生じても通電タイミングを高精度に制御することができる。一般的に、制御部24の制御周期は、コイル電流周波数のゼロクロスの周期や、ロータ位置の検出周期に同期していることが多い。具体的にはモータ1回転に1回〜4回程度である。しかしながら、変動周期が短い場合には制御周期も短く設定するなど、負荷トルク変動周期に対応して設定することで、より高精度な制御が実現できる。変動周期が長い場合には制御周期も検出周期の数回に1回にするなど長く設定して、制御コンピュータの処理負荷を軽減し安価なコンピュータを使用したり、他の処理を充実させたりすることができる。
【0053】
参考文献(「リラクタンストルクを利用した電動機」電気学会D誌、平成6年9号、824頁〜)を基にして、ブラシレスモータの特性から以上の事項の理論的根拠を説明する。式(1)は、ブラシレスモータの過渡特性を除去した定常時の電圧方程式を、よく知られているdq軸座標で表した式である。この式においては、ロータに配置された永久磁石から発生する磁束がコイル巻線と鎖交する方向をd軸、d軸と電気角で直交する軸をq軸とする。
【0054】
【数1】
【0055】
VD、VQは駆動電圧のd軸およびq軸成分を表わす。RAはコイル抵抗を表わす。ID、IQはコイル電流のd軸およびq軸成分を表わす。ωはIPMモータ25のロータの角速度を表わす。LD、LDはd軸方向およびq軸方向の電気子自己インダクタンスを表わす。φAは永久磁石による電機子鎖交磁束を表わす。
【0056】
電機子電流のd、q軸成分であるID、IQは、電流振幅IAおよび、ロータ位置に対するコイル電流の通電タイミングを示す電流位相差βを用いて次の式(2)で表わされる。
【0057】
【数2】
【0058】
以上より、モータトルクTは電流振幅IAと電機子鎖交磁束φAのベクトルとの外積として次の式(3)で求められる。
【0059】
【数3】
【0060】
PNは永久磁石の極対数を表わす。この式(3)において、右辺第1項は永久磁石の磁束と電機子電流によって発生するマグネットトルクであり、右辺第2項は磁気的突極性によって発生するリラクタンストルクである。
【0061】
このリラクタンストルクは、IPMモータで特に大きく発生する。IPMモータにおいてこのリラクタンストルクを積極的に使用すると、総合的なモータトルクTは増加するので、IPMモータをエネルギの損失が少なくなるように運転することができる。
【0062】
図4を参照して、IPMモータにおけるモータトルクTと電流位相差βとの代表的な特性を示す。IPMモータ25の発生トルクは、リラクタンストルクとマグネットトルクを合成した総合トルクである。発生トルクは電流位相差βをパラメータとして変化する。IPMモータ25に代えて永久磁石をロータ内部に埋め込まないタイプのブラシレスモータを用いる場合、リラクタンストルクは非常に小さな値として考えられる。
【0063】
定常時のモータコイルの電圧振幅VAおよび電機子反作用を考慮した総合電機子鎖交磁束φ(0)は次の式(4)の通りである。
【0064】
【数4】
【0065】
ρは各軸のインダクタンスLD、LQの比(LD/LQ)である。電流振幅IAと電圧振幅VAとの位相差θは次の式(5)で表わされる。
【0066】
【数5】
【0067】
ロータ位置に対する駆動電圧の通電タイミングを示す電圧位相差δ、および電流位相差βは次の式(6)で表される。
【0068】
【数6】
【0069】
図5を参照して、式(1)〜式(6)に基づくIPMモータ25の定常時の電圧および電流ベクトル図を説明する。式(5)および式(6)に示すように、電流振幅IAと電圧振幅VAとの位相差θ、電圧位相差δ、電流位相差βは、モータ構造で決まる定数と、角速度ω、駆動電圧およびコイル電流とによって決定される。モータ構造で決まる定数とは、電機子鎖交磁束φA、d軸の自己インダクタンスLD、q軸の自己インダクタンスLQなどをいう。駆動電圧およびコイル電流とは、電圧振幅VAのd軸成分VD、q軸成分VQおよび電流振幅IAのd軸成分ID、q軸成分IQをいう。
【0070】
モータの入力PIと出力POの関係は次の式(7)の通りとなる。
【0071】
【数7】
【0072】
WLはモータにおける損失(鉄損+銅損)を示すので、電流振幅IAおよび電圧振幅VAは次の式(8)と式(9)とで表される。
【0073】
【数8】
【0074】
【数9】
【0075】
本実施の形態においては、角速度ωは設定部21で設定されており、IPMモータ25は設定部21により設定された一定の回転数で回転する。速度を変更するために設定部21が出力値を変更した時を除き、角速度ωの変動は生じない。
【0076】
式(8)は、制御部24によって電流振幅IAを操作した場合、トルクT、損失WL、電圧振幅VA、位相差θが変化することを表わす。式(9)は、制御部24によって電圧振幅VAを操作した場合、トルクT、損失WL、電流振幅IA、位相差θが変化することを表わす。
【0077】
ここで本実施の形態においては負荷トルクの変動が問題にならないよう制御周期を設定するので、各式において発生トルクTは一定と見なすことができる。トルクTが一定なので、損失WLも定数として見なすことができる。トルクTおよび損失WLが一定であることによりIPMモータ25の仕事率が一定となる結果、式(8)における変数は電圧振幅VAと位相差θ、式(9)における変数は電流振幅IAと位相差θのみとなる。
【0078】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置100の動作について説明する。
【0079】
決定部204は、設定部21はIPMモータ25の回転数を設定する(S100)。IPMモータ25の回転数が設定されると、回転数に見合った目標値を内蔵するメモリに記憶された電流位相差βの値のうちから目標値を読出し、決定する(S102)。目標値が決定されると、第1検出部201は、IPMモータ25のコイル電流の位相を検出する(S104)。コイル電流の位相が検出されると、変換部205はロータ情報を第2検出部202に出力する(S106)。
【0080】
ロータ情報が出力されると、第2検出部202は電流位相差βを算出する(S108)。電流位相差βが算出されると、演算部203は修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する(S110)。
【0081】
修正情報が出力されると、インバータ23は電流振幅IAを設定し、出力する(S112)。電流振幅IAが出力されると、第2検出部202は、次の制御周期を待つ(S114)。この制御周期間に、電流振幅IAの出力によってIPMモータ25の特性値は、互いの値の変化により変動する。具体的には、式(8)に基づき電圧振幅VAが変化する。また発生トルクTを一定とみなすので、式(3)より電流位相差βおよびコイル電流のd軸成分ID、q軸成分IQが変化する。また、電圧振幅VAが変化したことにより式(1)から電圧振幅VAのd軸成分VD、q軸成分VQが変化する。これらの値は、式(1)、式(3)および式(6)の2番目の式等を満たすよう変化して決定され、当然ながら通電タイミングである電流位相差βも決定する。
【0082】
以上のようにして、通電タイミングが目標値と一致させるように制御されるので、シングルロータリ型圧縮機をはじめとする負荷トルクが変動する負荷に対してもモータ脱調などを生じないように制御することができる。負荷トルクが変動する負荷がモータ脱調などを生じないように制御されるので、簡単な構成の駆動装置により低騒音、低振動、低エネルギ損失である正弦波通電をはじめとする180度通電によるモータ駆動をより幅広い分野に適用できる。180度通電によるモータ駆動は低騒音、低振動、低エネルギ損失なので、騒音や振動の影響でシングルロータリ型圧縮機などを使用できなかった用途にも、180度通電によるモータ駆動が可能となる。シングルロータリ型圧縮機などを使用できなかった用途においても180度通電によるモータ駆動が可能となるので、装置全体としての低コスト化、エネルギ損失低化、低騒音化、低振動化を図ることができる。
【0083】
なお、制御部24が制御周期を可変あるいは自動調整できるように設定しておくことで、その都度適切な制御周期を設定できる。
【0084】
また、IPMモータ25の1回転中の負荷トルク変動によるモータ回転への影響が小さい場合は、この変動を無視して、全体としての平均負荷トルク変動のみを考慮して制御周期を設定してもよい。このとき1回転中の負荷トルクは平均化する。このように平均化できるかを考察して、制御装置を設計することで制御周期を不要に短くしてしまうことが防止できる。
【0085】
さらに、急激な負荷トルク変動など予期できない事態が発生した場合に備えて、従来方式のモータ駆動方法を併用すれば装置の信頼性を高めることができる。従来のモータ駆動方法とは、コイル端子の逆起電圧などを検出してロータ位置を検出し、これを基にモータ回転数をフィードバック制御し、通電タイミングを設定するような方法をいう。本実施の形態の構成によると、設定部21で設定した周波数にモータ回転数が同期しないとIPMモータ25は停止する。これにより、急激に負荷トルクが変動すると、IPMモータ25は停止する恐れがある。従来のモータ駆動方法を併用すると、急激な負荷トルク変動をコイル電流の変化などで検出した場合、従来のモータ駆動方法に切り換えることでモータ停止を防止する信頼性の高い制御が実現できる。
【0086】
その他、振動検出器32は、振動の振幅に代えて、振動の周波数を検出してもよい。IPMモータ25やそれに接続されたコンプレッサの構造によっては振動の振幅より振動の周波数の方がよりIPMモータ25のロータの機械角に対応することがある。これにより、IPMモータなどの構造に応じてより的確にロータの機械角を検出することができる。
【0087】
S114にて、第2検出部202が待つ時間、すなわち制御周期は、IPMモータ25の単位時間あたりの消費エネルギ、すなわち仕事率の変動周期が、本実施の形態における駆動装置100全体の制御周期の4倍以上および10倍以上のいずれかとなるように定められてもよい。仕事率=角速度(rad/秒)×回転半径×トルク÷回転半径+単位時間あたりの損失=角速度×トルク+単位時間あたりの損失=ωT+WLとなる。式(8)および式(9)より、IPMモータ25の仕事率が一定の間は、1つのパラメータのみでIPMモータ25を制御できることは明らかだからである。
【0088】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置200について説明する。
【0089】
図6を参照して、本実施の形態に係る駆動装置200の制御部24は、第1検出部201に代えて第3検出部210を含む。第3検出部210には、インバータ23から駆動信号が入力される。この駆動信号は複数のコイル端子のうち1つでもよいし、複数の端子を検出してもよいが、本実施の形態においては前者とする。センサ部22は、振動検出器32のみを含む。決定部204は電流位相差βに代えて電圧位相差δの目標値を決定する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0090】
図7を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電圧振幅VAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図7に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0091】
S200にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された電圧位相差δの値のうちから目標値を読出し、決定する。S204にて、第3検出部210は、インバータ23が出力した駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する。本実施の形態においては、交流として表れる駆動信号のゼロクロス点を検出することにより駆動電圧の位相を検出する。
【0092】
S208にて、第2検出部202は、変換部205によって得られたロータ情報に対する第3検出部210によって検出された駆動電圧の位相である電圧位相差δを算出する。S210にて、演算部203は、目標値と算出された電圧位相差δとの差に基づき、これを目標値と一致させるためのPI制御に基づく演算を実行し、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。
【0093】
図8を参照して、電圧位相差δに基づき通電タイミングを制御できる理由について説明する。図8は、電圧振幅VAに対する電流位相差β、電圧位相差δおよび駆動電圧とコイル電流との位相差θの関係を表わす図である。電圧位相差δと電流位相差βとの間に相関があることが表わされている。これにより、電圧位相差δに基づき通電タイミングを制御できる。
【0094】
S212にて、インバータ23は、電圧振幅VAを設定し、出力する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置200の動作について説明する。
【0095】
決定部204は、内蔵するメモリに記憶された電圧位相差δの値のうちから目標値を読出し、決定する(S200)。IPMモータ25の回転数が設定されると、第3検出部210は、インバータ23が出力した駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する(S204)。
【0096】
ロータ情報が出力されると、第2検出部202は、電圧位相差δを算出する(S208)。電圧位相差δが算出されると、演算部203は、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する(S210)。
【0097】
修正情報が出力されると、インバータ23は、電圧振幅VAを設定し、出力する(S212)。
【0098】
以上のようにして、モータ回転数および負荷トルクを一定と考えることで、電圧振幅VAをある値に設定すると、電流位相差βひいては通電タイミングである電圧位相差δは一義的な値に決まる。電圧位相差δが一義的な値に決まると制御部24にフィードバックし、目標値と一致させる制御系によって通電タイミングを適切な値に制御することができる。電圧振幅VAにより電圧位相差δが制御されるので、簡単な構成の制御装置がIPMモータを制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続されたIPMモータを、簡単な構成で連続駆動により制御できる駆動装置を提供できる。
【0099】
なお、図6の構成においては、振動検出器32からモータロータの位置に対応した信号を検出しているが、振動に限らず負荷トルク変動に関する情報であればよい。ロータ位置あるいは負荷トルク変動に関する情報として、たとえば騒音を検出し、これをロータ位置に変換して使用してもよい。モータコイル電流の振幅変化あるいはモータコイル端子に発生する逆起電圧変化を検出して、これをロータ位置に変換して使用してもよい。また、モータロータの磁極位置を検出する検出コイルなどを配置して、磁極位置をロータ位置に変換して使用してもよい。
【0100】
さらに、設定部21は、IPMモータ25の回転数を変更する場合、変動が少なくなるように回転数の変更量を調整してもよい。回転数の変化を前述の負荷トルク変動と同様にとらえて、不安定さが小さくなるよう段階的に回転数を調整することにより、モータ回転の不安定化を抑制することができる。
【0101】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置300について説明する。
【0102】
図9を参照して、本実施の形態に係る駆動装置300の制御部24は、第2検出部202と、演算部203と、決定部204とを含む。第2検出部202には、インバータ23からIPMモータ25のロータの機械角を検出するために駆動信号が入力され、かつ電流検出器31からコイル電流が入力される。この駆動信号は複数のコイル端子のうち1つから情報が入力されてもよいし、複数の端子から入力されてもよいが、本実施の形態においては前者とする。センサ部22は、電流検出器31のみを含む。第2検出部202は、駆動電圧とコイル電流との位相差θを算出する。IPMモータ25はインバータ23から出力される駆動信号をコイルに供給されることによりロータを回転させることから、駆動信号と駆動電圧との間には対応関係がある。駆動信号と駆動電圧との間に対応関係があり、かつ駆動信号からロータの機械角を検出できるので、駆動電圧とコイル電流との位相差θは、ロータの機械角に対する電流の位相差を間接的に表わすことになる。位相差θが、ロータの機械角に対する電流の位相差を間接的に表わすので、位相差θは通電タイミングの一種である。演算部203は、決定部204から出力された位相差θの目標値と算出された位相差との差に基づき、いわゆるPI制御に基づく演算などを実行し、修正情報を駆動電圧あるいはコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。決定部204は電流位相差βに代えて位相差θの目標値を記憶する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0103】
図10を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電圧振幅VAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図10に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0104】
S300にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された位相差θの値のうちから目標値を読出し、決定する。図11を参照して、本実施の形態に係る決定部204における目標値の決定について説明する。図11はIPMモータ25を用いて、図9の構成で回転させたときの電流位相差βすなわち通電タイミングに対するモータ効率の関係を測定した実験結果のグラフである。モータ回転数は3000rpm、負荷トルクは1.47Nmとする。モータ効率とは、モータに供給したエネルギに対する、負荷への仕事に費やされたエネルギの割合をいう。
【0105】
制御部24は、電圧振幅VAを操作して位相差θを制御する。モータ効率は、入力電力とモータ出力との比から算出する。入力電力は、IPMモータ25への入力である駆動電圧とコイル電流とから求まる。モータ出力は、モータ回転数と負荷トルクとから求まる。グラフの四角印は電流位相差βに対するモータ効率の関係を表わす。菱形印は電流位相差βに対するコイル電流と駆動電圧の位相差θの関係を表わす。位相差θと電流位相差βとの間に相関があることが確認される。モータ効率の特性からモータ効率は電流位相差βによって決まるので、電流位相差βを最適値に設定するとIPMモータ25が最高のモータ効率で駆動されることがわかる。決定部204は、この最高のモータ効率が得られる値を制御目標として出力することで、IPMモータ25を最高のモータ効率で運転することができる。具体的には、決定部204を、回転条件(IPMモータ25のモータ回転数および負荷トルク)をパラメータとするテーブルとし、制御中の回転条件に応じて目標値を出力する。コンプレッサなどではモータ回転数によって負荷トルクがほぼ一義的に決まるので、本実施の形態においては、回転条件はモータ回転数のみとする。なお、この特性は発明の前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態で説明した構成にも適用でき、各実施例とも回転条件によって目標値を設定することで高効率運転が実現できる。
【0106】
S304にて、第2検出部202は、インバータ23から入力された駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する。本実施の形態においては、交流として表れる駆動信号のゼロクロス点、あるいは電流の積算結果などを検出することにより駆動電圧の位相を検出する。
【0107】
S306にて、第2検出部202は、電流検出器31を用いてIPMモータ25のコイル電流の位相を検出する。本実施の形態においては、コイル電流のいわゆるゼロクロス点、あるいは電流の積算結果などを検出することによりコイル電流の位相を検出する。
【0108】
S308にて、第2検出部202は、駆動電圧の位相と、電流検出器31を用いて得られたIPMモータ25のコイル電流の位相情報との差、すなわち位相差θを算出する。
【0109】
S310にて、演算部203は、位相差の目標値と算出された位相差θとの差に基づき、これを目標値と一致させるためのPI制御に基づく演算を実行し、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。
【0110】
図8から明らかなように、位相差θは電流位相差βに対して相関がある。電流位相差βに対して相関があるので、位相差θはIPMモータ25を精度よく制御でき、安定回転が実現できる。
【0111】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置300の動作について説明する。
【0112】
IPMモータ25の回転数が設定されると、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された位相差θの値のうちから目標値を読出し、決定する(S300)。目標値が決定されると、第2検出部202は、インバータ23から入力された駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する(S304)。駆動電圧の位相が検出されると、第2検出部202は、電流検出器31を用いてIPMモータ25のコイル電流の位相を検出する(S306)。コイル電流の位相が検出されると、第2検出部202は、位相差θを算出する(S308)。位相差θが算出されると、演算部203は、修正情報を出力する(S310)。
【0113】
以上のようにして、モータ回転数および負荷トルクを一定と考えることで、電圧振幅VAをある値に設定すると、電流位相差βひいては通電タイミングである位相差θは一義的な値に決まる。位相差θが一義的な値に決まると位相差θは制御部24にフィードバックされ、目標値と一致させる制御系によって制御される。位相差θを決める際、第2検出部202は、インバータ23から出力される駆動信号に基づいて容易にロータの機械角を検出できる。ロータの機械角が容易に検出されるので、第2検出部202を簡単な構成とすることができる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続されたIPMモータを、簡単な構成で連続駆動により制御できる駆動装置を提供できる。
【0114】
なお、電流位相差β、電圧位相差δ、位相差θの検出および制御については、上記した方法にこだわらず、結果としてこれらの情報を検出できればよい。たとえば、インバータ23の電源ラインの微小変動を検出する方法も考えられるし、コイル端子からIPMモータ25の回転によって発生する逆起電圧を検出する方法も考えられる。
【0115】
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態に係る駆動装置400について説明する。
【0116】
図12を参照して、本実施の形態に係る駆動装置400は、オフセット設定部26と、加算器27とを含む。オフセット設定部26は、振幅を変更するため、回転数の変更量に基づき、式(8)あるいは式(9)を用いて演算する。加算器27は、オフセット設定部26が出力した値と制御部24の振幅指令とを加算してインバータ23に出力する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0117】
図13を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電流振幅IAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図13に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0118】
S400にて、オフセット設定部26は、設定部21が回転数を変更したか否かを判断する。回転数を変更したと判断した場合には(S400にてYES)、処理はS402へと移される。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS408へと移される。
【0119】
S402にて、オフセット設定部26は、設定部21のモータ回転数に関する設定に基づいてその回転数における負荷トルクの代表値を予想する。コンプレッサなどの負荷の場合、モータ回転数と負荷トルクの関係はほぼ決まる。モータ回転数と負荷トルクの関係がほぼ決まるので、オフセット設定部26は、モータ回転数に関する設定から負荷トルクの代表値を予想することができる。
【0120】
S404にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された通電タイミングの値のうちから変更する回転数における制御の目標値を読出し、決定する。S406にて、オフセット設定部26は、回転数の変更に伴って変更すべき駆動電圧あるいはコイル電流のオフセット値を決定する。オフセット設定部26は、センサ部22から駆動電圧あるいは電流振幅IAを検出し、かつ式(8)または式(9)により変更する回転数における電流振幅IAの理論値との差を求めることで、オフセット値を決定する。S408にて、加算器27は、オフセット値と演算部203が出力した修正情報とを加算し、インバータ23に出力する。
【0121】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置400の動作について説明する。
【0122】
修正情報が出力されると、オフセット設定部26は、設定部21が回転数を変更したと判断するので(S400にてYES)、オフセット設定部26は、その回転数における負荷トルクの代表値を予想する(S402)。代表値が予想されると、決定部204は、変更する回転数における制御の目標値を読出し、決定する(S404)。目標値が決定されると、オフセット設定部26は、回転数の変更に伴って変更すべき駆動電圧あるいはコイル電流のオフセット値を決定する(S406)。オフセット値が決定されると、加算器27は、オフセット値と演算部203が出力した修正情報とを加算し、インバータ23に出力する(S408)。
【0123】
IPMモータ25の回転数は、設定部21が一義的に設定しているので、回転数変更時の通電タイミングの変動を予見することができる。これにより、モータ回転数の変化にともなう一時的な回転の不安定化を抑制することができる。その結果、回転数が変化してもモータの回転を安定して制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0124】
なお、オフセット設定部26は、回転数が変化した後の負荷トルクの代表値を予想せず、別途検出してもよい。また、オフセット設定部26は、実験などで求めた各回転数に対応する振幅値を、回転数をパラメータとするテーブルとして記憶しておいてもよい。回転数が変更されると、変更後の回転数に対応する振幅値をオフセット値として選択し、出力する。これにより、オフセット設定部26は、式(8)および式(9)に用いられるパラメータを検出せず、かつオフセット値を演算しなくても、簡単にオフセット値を設定することができる。
【0125】
さらに、オフセット設定部26は、振幅値を、回転数をパラメータとする1次関数として記憶しておいてもよい。オフセット設定部26は、回転数指令に基づいて振幅値を算出し、オフセット値として出力する。これにより、簡単な計算式でオフセット値が導出でき、かつデータテーブルを保持しないので記憶容量を削減できる。
【0126】
なお、モータ回転数の変更は、変更による電流位相差βなどへの影響を極力小さくするためにも、設定手段21において1回に可能な変更量をある範囲内に抑制するように制御することも有効であり、こうすることで本発明のオフセット値との誤差も小さくすることができ、より高精度なモータ制御が実現できる。
【0127】
<第5の実施の形態>
以下、本発明の第5の実施の形態に係る駆動装置500について説明する。
【0128】
図14を参照して、本実施の形態に係る駆動装置500の第2検出部202は、設定部21に検出が終了したことを示す信号を出力する。設定部21はこの信号を、回転数を変更するトリガ信号として使用し、信号の入力とともに、あるいは所定のディレイ時間(ユーザの指定などによって予め設定されている時間)経過後に回転数を変更する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0129】
図15を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電流振幅IAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図15に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0130】
S500にて、設定部21は、制御が開始されたことおよび第2検出部202から信号が出力されたことのいずれかに応答して、IPMモータ25の回転数を設定するか否かを判断する。この信号は、検出が終了したことを示す信号または制御が開始されたことを示す信号である。回転数を設定すると判断した場合には(S500にてYES)、処理はS502へと移される。もしそうでないと(S500にてNO)、処理はS104へと移される。S502にて、設定部21は、前述したディレイ時間が経過した後、回転数を設定する。本実施の形態においては、ディレイ時間はゼロとする。
【0131】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置500の動作について説明する。
【0132】
設定部21は、制御が開始されたことおよび信号が第2検出部202から出力されたことのいずれかに応答して、IPMモータ25の回転数を設定するか否かを判断する(S500)。この場合、回転数を設定すると判断されるので(S500にてYES)、設定部21は、直ちに回転数を設定する(S502)。
【0133】
以上のようにして、回転数を変更した後に制御を実施して、変動の早期収束を図ることができるので、IPMモータ25をより安定して回転させることができる。その結果、早期に通電タイミングを所定値に制御することができ、安定回転が実現できるモータの制御装置を提供できる。
【0134】
なお、設定部21は、回転数変更トリガ信号が出力された後、次回の検出タイミングまでの推定時間から、回転数変更に伴って電流位相差βが変動するまでの時間遅れ分を差し引いた時間をディレイ時間としてもよい。ディレイ時間が任意に設定されると、回転数の変動に対応した制御ができない恐れがあるからである。たとえば、回転数変更トリガ信号入力から回転数指令を変更するまでのディレイ時間をゼロにすると、制御において次の検出タイミングまで回転数の変動が考慮されない恐れがある。ディレイ時間を次の検出タイミングの直前とすると、次回の制御部24の検出時に、回転数の変更に伴う変動が検出されない恐れがある。
【0135】
なお、IPMモータ25に対して外部より入力する情報は、電流振幅IAであっても電圧振幅VAであっても発明の実施の形態1の各式に基づいた同様な変化が起こり、更に操作パラメータは電流位相差βのみならず電圧位相差δ、駆動電圧とコイル電流との位相差θも、各入力情報に基づいて変化する。したがって、制御装置において、IPMモータ25に対する出力する情報は、電流振幅IAであっても電圧振幅VAであってもかまわず、また、操作パラメータは、電流位相差β、電圧位相差δ、駆動電圧とコイル電流との位相差θのうちどれを用いてもよい。本発明はこれら各組み合わせの構成で実現できるものである。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータの負荷トルクの変動周期と駆動装置の制御周期との関係を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータにおけるモータトルクと電流位相差との特性を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータの定常時の電圧および電流ベクトルを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電圧振幅に対する電流位相差、電圧位相差および位相差の関係を表わす図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るIPMモータを回転させたときの電流位相差に対するモータ効率の関係を測定した実験結果のグラフである。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
100,200,300,400,500 駆動装置、21 設定部、22 センサ部、23 インバータ、24 制御部、25 IPMモータ、26 オフセット設定部、27 加算器、31 電流検出器、32 振動検出器、201 第1検出部、202 第2検出部、203 演算部、204 決定部、205 変換部、210 第3検出部。
【発明の属する技術分野】
この発明はブラシレスモータを制御する技術に関し、特に、空気調和機の圧縮機を駆動するブラシレスモータを安定して駆動するモータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータを安定に駆動させるためには、モータ回転数の変動を抑制することと、ロータ位置に対するモータコイル電流の通電タイミングを一定かつ適切な値に制御することとが必要である。ブラシレスモータの発生トルクは通電タイミングに関係しており、通電タイミングが定まっていない場合はコイル電流とロータの磁束とで発生するモータトルクが一定とならず、正常回転ができないからである。たとえば、通電タイミングの変動が大きい状態、すなわちコイル電流の位相とロータの位相とが同期していない状態においては、モータトルクが通電タイミングごとに急変するので、モータは回転を持続することができず停止する。
【0003】
特開2000−50677公報(特許文献1)は、位置センサレスで駆動電圧に間欠部分を必要としない連続通電駆動を実現する制御装置を提供する。この公報に開示された制御装置は、コントローラと、電力変換回路と、モータと、コイル電流の符号検出回路とを含む。コントローラは、外部からモータに対する指令速度を入力するとともに、コイル電流の符号検出回路からモータに流れる電流の符号を入力して、電力変換回路にモータを駆動するための電圧の指令信号を出力する。電力変換回路は、コントローラからモータを駆動するための電圧の指令信号を入力して、コイル電流の符号検出回路へモータを駆動するための電圧を出力する。コイル電流の符号検出回路は、電力変換回路からモータを駆動するための電圧を入力し、モータに流れる電流の符号を判別してコントローラへ出力するとともに、モータ駆動電圧をモータへ出力する。
【0004】
この制御装置によると、コントローラは、コイル電流の符号情報に基づいてロータ位置と電流および電圧との関係を推定し、駆動電圧の振幅とコイル電流の通電タイミングとを制御する。これにより、ロータの位置を直接検出せずに通電タイミングを制御することができる。その結果、位置センサレスで連続して通電駆動を実現する制御装置を提供できる。
【0005】
特開2001−112287公報(特許文献2)は、通電タイミングを制御しモータを安定してエネルギ損失を抑えて駆動させるモータ制御装置を開示する。この公報に開示されたモータ制御装置は、複数相のモータコイルを備えた同期モータを制御するモータ制御装置である。回転数の設定のための指令が与えられたことに応じて、同期モータを駆動するための駆動波データを複数相の各相ごとに作成する駆動波データ作成回路と、複数相のうちのいずれかの特定相のモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出回路と、駆動波データ作成回路によって作成された駆動波データから特定相のモータ駆動電圧位相差を検出し、モータ電流検出回路から出力されたモータ電流信号との位相差を検出して位相差情報を出力する位相差検出回路と、位相差検出回路から出力される位相差情報を目標の値に制御するためのデューティ基準値を算出する位相差制御回路と、駆動波データ作成回路から出力される各相の駆動波データと位相差制御回路から出力されるデューティ基準値とを乗算して、各相ごとの出力デューティを算出するデューティ算出回路と、複数の駆動素子を含み、デューティ算出回路によって算出された各相ごとの出力デューティにしたがってパルス幅変調信号を生成して各駆動素子の導通を制御し、各モータコイルに通電するインバータとを含む。位相差検出回路は、特定相のモータ駆動電圧位相差を基準とした2個所の位相期間中のモータ電流信号面積をそれぞれの位相期間で求め、2個所の位相期間中のモータ電流信号面積の面積比を算出して、これを位相差情報とすることを特徴とする。
【0006】
このモータ制御装置によると、モータ回転速度を制御側で設定した周波数に同期するよう制御するとともに、モータ駆動電圧位相差とモータ電流との位相差を、2個所の位相期間でのモータ電流面積比で検出し、かつ制御する。ロータとステータとの相対位置は、モータ駆動電圧とモータ電流との位相差によって決まる。これにより、ロータ位置センサを用いることなく間接的にロータとステータとの相対位置を検知し、通電タイミングを制御できる。通電タイミングを間接的に制御できるので、最もエネルギの損失を抑える通電タイミングでモータを駆動することができる。その結果、エネルギ損失の抑制、低騒音および低振動を実現できるモータ制御装置を提供することができる。
【0007】
特開2000−60178公報(特許文献3)は、位置センサレスで連続通電が可能な駆動回路を開示する。この公報に開示された駆動回路は、パルス幅変調された信号を出力する三相ブリッジ回路と、三相ブリッジ回路に接続されて駆動されるブラシレスモータと、ブラシレスモータへの通電が休止されている相の端子電圧を検出する端子電圧検出装置と、端子電圧検出装置の検出結果に基づいて、三相ブリッジ回路の通電を制御する制御回路とを含む。端子電圧検出装置は、検出したパルス状の電圧の立ち上がり時の時定数よりも、立ち下がり時の時定数の方が大きくなるように調整されている。
【0008】
この駆動回路によると、端子電圧検出装置は、検出したパルス状の電圧の立ち上がり時の時定数よりも、立ち下がり時の時定数の方が大きくなるように調整されている。これにより、電圧のパルスは実質上幅が広くなったような波形に処理され出力される。実質上パルス幅が広くなったような波形に処理されるので、誘起電圧が観測されやすくなる。誘起電圧が観測されやすくなるので、電源電圧が高くて印加パルスのパルス幅が極めて細い場合でも確実に誘起電圧が検出される。その結果、モータに印加する電圧をパルス幅変調にて作成する場合に、安定で広範囲な始動を実現できる駆動回路を提供することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−50677公報(第3−5頁)
【0010】
【特許文献2】
特開2001−112287公報(第5−7頁)
【0011】
【特許文献3】
特開2000−60178公報(第6−9頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の公報に開示された装置や方法には、以下のような問題がある。
【0013】
特開2000−50677号公報で開示された制御装置は、コイル電流あるいは駆動電圧の、振幅値と通電タイミングとの2つのパラメータを操作する必要がある。いずれか一方のみを制御する場合、モータ回転速度および通電タイミングが同時に変化してしまい、所望のモータ回転速度および通電タイミングとなるように制御することが困難なためである。2つのパラメータを操作するためには、2つのパラメータを操作する制御系が必要なので、制御系について複雑な設計が必要となる。2つのパラメータを操作するので、2つのパラメータを協調的かつ非干渉に操作するための演算量が増大する。演算量が増大するので処理時間が増大する。処理時間が増大するのでレスポンスが低下する。必要なレスポンスを得るために高性能なコンピュータなどを用いると、装置のコストが増加する。
【0014】
特開2001−112287公報で開示されたモータ制御装置は、2つのパラメータの一方のみを制御して所望の通電タイミングに制御できるが、これは同期モータの消費エネルギの変動が一定(変動小)であることを前提とする。したがって、消費エネルギの変動が大きい負荷に接続された同期モータに対して、2つのパラメータの一方のみを制御して所望の通電タイミングに制御することはできない。
【0015】
特開2000−60178公報で開示された駆動回路は、駆動電圧の振幅値という1つのパラメータのみを操作することにより、安定で広範囲な始動を実現できる。しかしこの駆動回路は間欠駆動において逆起電圧を検出することを前提としている。間欠駆動は騒音、エネルギ損失の点で180°通電駆動をはじめとする連続駆動に劣る。
【0016】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、1つのパラメータを操作することにより、単位時間あたりにおける負荷の消費エネルギである仕事率についての変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1の発明にかかるモータの制御装置は、複数相の同期モータを制御するためのモータの制御装置である。このモータの制御装置は、同期モータの回転速度を設定するための設定手段と、複数相のうちのいずれかの特定相の電圧および電流のいずれかを検出するための第1の検出手段と、同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、回転子の機械角に対する、第1の検出手段による検出結果により特定される特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出するための算出手段と、設定された回転速度を満足するように、複数相の電圧および電流のいずれかを制御するための制御データに基づいて駆動信号を作成し、各複数相に駆動信号を印加するための印加手段と、同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、算出手段から出力される位相差データが目標値に近づくような制御データを複数相の各相ごとに作成し、作成された制御データを用いて印加手段を制御するための制御手段とを含む。
【0018】
第1の発明によると、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、位相差データが目標値に近づくように制御データを作成し、その制御データを用いて印加手段を制御する。仕事率とは、単位時間あたりの負荷の消費エネルギをいう。負荷の仕事率が変動する周期より短い周期で印加手段が制御されるので、同期モータの仕事率の変動が大きくなる前に印加手段が制御される。仕事率の変動が大きくなる前に印加手段が制御されると、仕事率の変動が位相差と複数相の電圧および電流との関係におよぼす影響が小さくなる。仕事率の変動の影響が小さくなると、複数相の電圧または電流のいずれか一方が制御されることで位相差もある程度制御される。これにより、制御手段は、複数相の電圧または電流のいずれか一方を制御することで位相差を制御できるので、1つのパラメータで位相差を制御できる。また同期モータの回転速度は設定された値で一定に保たれる。このように1つのパラメータで位相差が制御されるので、簡単な構成の制御装置により同期モータを制御できる。モータ電流により機械角を検出するとは限らないので、連続駆動が可能である。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0019】
第2の発明にかかるモータの制御装置は、第1の発明の構成に加えて、第2の検出手段は、同期モータが発生する振動の振幅および周波数のいずれかの変動に基づいて機械角を検出するための手段を含む。
【0020】
第2の発明によると、機械角は、同期モータが発生する振動の振幅および周波数のいずれかの変動に基づいて検出される。一般に振動は装置の外部へも容易に伝達するので、第2の検出手段は多様な場所において振動の振幅および周波数のいずれかの変動を検出することができる。これにより、第2の検出手段の構造に対する制約がなくなるので、第2の検出手段をより簡単な構成とすることができる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、より簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0021】
第3の発明にかかるモータの制御装置は、複数相の同期モータを制御するためのモータの制御装置であって、同期モータの回転速度を設定するための設定手段と、複数相のうちのいずれかの特定相の電圧および電流を検出するための第1の検出手段と、第1の検出手段による検出結果により特定される特定相の電圧および電流から、回転子の機械角に対する、特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出するための算出手段と、設定された回転速度を満足するように、複数相の電圧および電流のいずれかを制御するための制御データに基づいて駆動信号を作成し、各複数相に駆動信号を印加するための印加手段と、同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、算出手段から出力される位相差データが目標値に近づくような制御データを複数相の各相ごとに作成し、作成された制御データを用いて印加手段を制御するための制御手段とを手段を含む。
【0022】
第3の発明によると、算出手段は、特定相の電流および電圧から前記回転子の機械角に対する、特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出する。これにより、機械的な検出要素を設けることなく容易に位相差を検出することができるので、構成を簡素化することができる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0023】
第4の発明にかかるモータの制御装置は、第1から3のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/4以下の長さの周期で、制御データを作成するための手段を含む。
【0024】
第4の発明によると、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/4以下の長さの周期で制御データを作成し、かつ制御データを用いて印加手段を制御する。一般に同期モータの仕事率が変動する場合、その変動の周期の1/4以下の期間の間に生じた仕事率の変動の影響は、位相差と複数相の電圧および電流との関係にほとんど影響をおよぼさないことが多い。これにより、制御手段は、複数相の電圧または電流のいずれか一方を制御することにより位相差をより確実に制御できるので、1つのパラメータにより位相差を確実に制御できる。1つのパラメータにより位相差が確実に制御されるので、簡単な構成の制御装置により同期モータを確実に制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により確実に制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0025】
第5の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第3のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で、制御データを作成するための手段を含む。
【0026】
第5の発明によると、制御手段は、同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で制御データを作成し、かつ制御データを用いて印加手段を制御する。一般に同期モータを制御する場合、制御データを変更した影響によって一時的にロータの回転などが不安定になる。同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で印加手段を制御すると、仕事率の変動が少なくなるので、仕事率の変動を無視できる。仕事率の変動を無視できるので、制御データの変更量はほとんどなくなる。制御データの変更量がほとんどないので、制御データを変更した影響による不安定化は抑制される。これにより、不安定化が抑制され、かつ確実に位相差データが制御されるので、簡単な制御装置で特定相のモータ電流と機械角の変動との位相差を確実かつ安定して制御できる。確実かつ安定して位相差が制御されるので、簡単な制御装置で同期モータの駆動を確実かつ安定して最適化できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により確実かつ安定して制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0027】
第6の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第5のいずれかの発明の構成に加えて、同期モータの仕事率が変動する周期は、同期モータの負荷トルクが変動する周期である。
【0028】
第6の発明によると、制御手段は、同期モータの負荷トルクが変動する周期より短い周期で複数相の電圧および電流のいずれかを補正するように印加手段を制御する。同期モータの負荷トルクの変動が位相差と複数相の電圧および電流との関係におよぼす影響は、仕事率の変動がおよぼす影響より大きい。これにより、制御手段は同期モータの負荷トルクが変動する周期より短い周期で複数相の電圧または電流のいずれか1つのパラメータを制御するので、より確実に位相差を制御できる。1つのパラメータにより位相差がより確実に制御されるので、簡単な構成の制御装置が同期モータを確実に制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動により確実に制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0029】
第7の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第6のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、設定手段が回転速度を設定したことに応答して、予め定められた時間が経過した後に印加手段を制御するための手段を含む。
【0030】
第7の発明によると、同期モータの制御においては、同期モータの回転速度が設定され、その結果回転速度が変更されると、位相差と複数相の電圧および電流との関係が変化する。この関係が変化すると、同期モータの回転が不安定化する。制御手段は、設定手段が回転速度を設定したことに応答して、予め定められた時間が経過した後に印加手段を制御する。これにより、同期モータの回転は、経過した時間に応じて回転速度の変化に対応した制御を受け、安定化する。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、より簡単な構成で連続駆動により安定して制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0031】
第8の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第7のいずれかの発明の構成に加えて、設定手段が回転速度を新たに設定したことに応答して、制御データの一部として回転速度の影響を緩和するために駆動信号の作成に用いられる補正データを作成するための手段をさらに含む。
【0032】
第8の発明によると、補正データは、制御データとともに回転速度の影響を緩和するために、制御データの一部として駆動信号の作成に用いられる。補正データが駆動信号の作成に用いられると、駆動信号の急激な変化は回避される。これにより、同期モータの回転が不安定化することを回避することができる。不安定化が回避されるので、同期モータを安定して制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、回転速度の変化にともなう不安定性を緩和し、かつ簡単な構成で連続駆動により制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0033】
第9の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第8のいずれかの発明の構成に加えて、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。
【0034】
第9の発明によると、同期モータは、埋込み磁石型同期モータである。埋込み磁石型同期モータは、適切な駆動信号を用いて制御することにより、通常の同期モータに比べてより大きなトルクを得ることができる。これにより、エネルギの損失が少なくなるように同期モータを制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続された同期モータを、簡単な構成で連続駆動によりエネルギの損失が少なくなるように制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る駆動装置100は、設定部21と、センサ部22と、インバータ23と、制御部24とを含む。設定部21は、システム制御回路(図示せず)からの指令を受けて、モータコイル端子に印加する駆動電圧(あるいは駆動電流)の周波数を設定し、インバータ23に周波数情報として出力する。周波数情報は、インバータ23に接続されたIPM(Interior Per−manent Magnet)モータ25の回転速度を設定するために出力される。IPMモータ25のコイルは、この周波数で励磁される。その結果、IPMモータ25は強制励磁駆動される。
【0037】
センサ部22はIPMモータ25の回転状態を示す検出信号あるいはインバータ23の駆動信号を検出し、制御部24に出力する。インバータ23は設定部21からの周波数情報と、制御部24からの振幅値などの操作パラメータからIPMモータ25のコイル端子に印加する駆動信号を作成し、ドライバを介して出力する。
【0038】
制御部24はセンサ部22で検出された、IPMモータ25の状態を示す信号およびインバータ23の駆動信号を用いて、駆動電圧(あるいは駆動電流)の振幅値を決定する信号を作成し、インバータ23に出力する。振幅値を決定する信号は、PI(Proportional Integral)制御などにより設定されたIPMモータ25の回転速度に対応する通電タイミングが得られるように作成される。通電タイミングとは、ロータと駆動電圧あるいは駆動電流との位相差を表わす情報をいう。
【0039】
周波数情報のみが設定されており、制御部24が作動しておらず振幅値を決定する信号が入力されていない場合には、インバータ23は駆動信号の振幅を適切に設定することができない。この時IPMモータ25の動作は、設定された周波数に対応したモータ回転数で回転することができずに停止したり、振動したり、コイルへの過電流によって発熱したりする。確実にIPMモータ25を駆動するためには制御部24によって駆動信号の振幅を制御する必要がある。
【0040】
IPMモータ25は、同期モータであるロータ内部に永久磁石を埋め込んで配置した埋込み磁石型ブラシレスモータであり、3相Y結線のコイルによる固定子と、永久磁石回転子とで構成される。
【0041】
センサ部22は、電流検出器31と、振動検出器32とを含む。電流検出器31は、IPMモータ25のコイルからコイル電流を検出し、制御部24に出力する。振動検出器32は、IPMモータ25のロータの機械角を検出するために、IPMモータ25あるいはIPMモータ25が取り付けられているコンプレッサなどの部材の振動の振幅を検出し、振動信号として出力する。
【0042】
制御部24は、第1検出部201と、第2検出部202と、演算部203と、決定部204と、変換部205とを含む。第1検出部201は、IPMモータ25のコイル電流の位相を検出する。第2検出部202は、コイル電流と、ロータ位置との位相差を算出する。演算部203は、決定部204から出力された位相差の目標値と算出された位相差との差に基づいてPI制御に基づく演算などを実行し、修正情報を駆動電圧あるいはコイル電流の振幅を設定する情報としてインバータ23に出力する。決定部204はメモリ(図示せず)を内蔵し、そのメモリに記憶された電流位相差βの値のうちから目標値を決定する。
【0043】
変換部205は振動検出器32が出力した振動信号をIPMモータ25のロータの位置に対応した信号に変換し、第2検出部202に出力する。一般にシングルピストン型のコンプレッサなどは、ロータ1回転の間に内部の気体を圧縮する工程と吸入する工程とを含む。これらの工程はロータの位置に同期する。工程がロータの位置に同期するので、このような負荷を駆動する際にはこの工程によって生じる負荷トルク変動をIPMモータ25のロータ位置の検出に利用することができる。
【0044】
具体的には、負荷トルクの変動に伴って変化してしまうモータ、コンプレッサ、装置の振動変化を検出し、これをロータ位置に換算することで、ロータ位置を検出することができる。変換部205は、振動の発生タイミングとIPMモータ25のロータ位置との対応関係に基づき、振動をロータ位置に変換する。これは特にコンプレッサなど、IPMモータ25が悪環境下におかれている場合に、位置センサを取り付ける必要がなくなるという有効な方法である。
【0045】
図2を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電流振幅IAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0046】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、設定部21は、モータコイルの励磁周波数に同期しているIPMモータ25の回転数を設定する。S102にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された電流位相差βの値のうちから目標値を読出し、決定する。S104にて、第1検出部201は、IPMモータ25のコイル電流の位相を検出する。本実施の形態においては、コイル電流のいわゆるゼロクロス点を検出することによりコイル電流の位相を検出する。
【0047】
S106にて、変換部205は、振動検出器32を用いてIPMモータ25により発生する振動を検出し、その振動を表わす振動信号をIPMモータ25のロータの位置に対応したロータ情報に変換し、第2検出部202に出力する。
【0048】
S108にて、第2検出部202は、変換部205によって得られたロータの機械角の位相に対する第1検出部201によって検出された位相である電流位相差βを算出する。電流位相差βは通電タイミングの一種である。S110にて、演算部203は、位相差の目標値と算出された位相差との差に基づき、これを目標値と一致させるためのPI制御に基づく演算を実行し、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。
【0049】
S112にて、インバータ23は電流振幅IAを設定し、出力する。
S114にて、第2検出部202は、次の制御周期を待つ。この間にIPMモータ25の特性値が、電流振幅IA出力されることで互いの値の変化により変動する。ここでいう特性値とは、電圧振幅VA、コイル電流のd軸成分ID、q軸成分IQ、電圧振幅VAのd軸成分VD、q軸成分VQおよび電流位相差βをいう。これらの特性値は、各々の変数と連携して決定される。制御周期は、IPMモータ25の負荷トルクの変動周期が、本実施の形態における駆動装置100全体の制御周期の4倍以上となるように定められる。これは、負荷トルクがその都度変動してしまうと後述する式(3)において発生トルクTを定数と見なすことができなくなってしまい、電流位相差β、電流振幅IAが定まらなくなってしまうためである。
【0050】
変動している負荷トルクに対して高精度に通電タイミングを制御するためには、負荷トルクの変動周期に対して制御周期を充分に短く設定する必要がある。負荷トルク変動をゼロにすることは非常に困難であり、使用できる装置も限られるが、制御周期に対して緩やかに変化していく負荷トルク変動であればそのような制御は可能である。制御動作によって負荷トルク変動に追従した、安定な通電タイミングでのモータ駆動が実現できるからである。負荷トルク変動周期に対する制御部24の制御周期の設定は、負荷トルクの変化率や制御部24の追従特性によって決まるものであるが、負荷トルクの変動の影響がおよばない周期である必要がある。これにより本実施の形態においては負荷トルク変動周期に対して1/4の制御周期としているが、制御における整定時間を考慮し、より安定な通電タイミング制御を実施する場合には1/10程度に設定することが望ましい。
【0051】
図3を参照して、負荷トルクの変動周期と制御部24の制御周期との関係を説明する。図3は負荷トルクの変動周期と制御部24の制御周期とを時間軸で示した図である。図中、制御タイミングを「○」印で示した制御周期TSは負荷トルク変動周期に対して充分に短い周期で通電タイミング制御を実施しており、負荷トルクの変動に対して制御が追従することができている例である。また制御タイミングを「●」印で示した制御周期TNは負荷トルクの変動周期に対して制御周期が長すぎる例である。このような場合には、制御出力として振幅情報を出力した後、負荷トルクが非常に大きく変動してしまうことになり、高精度な通電タイミングでのモータ駆動が実現できなくなってしまうことがある。
【0052】
本実施の形態においては、制御部24の制御周期が負荷トルクの変動周期に対応して設定されるので、制御部24は、負荷トルク変動が生じても通電タイミングを高精度に制御することができる。一般的に、制御部24の制御周期は、コイル電流周波数のゼロクロスの周期や、ロータ位置の検出周期に同期していることが多い。具体的にはモータ1回転に1回〜4回程度である。しかしながら、変動周期が短い場合には制御周期も短く設定するなど、負荷トルク変動周期に対応して設定することで、より高精度な制御が実現できる。変動周期が長い場合には制御周期も検出周期の数回に1回にするなど長く設定して、制御コンピュータの処理負荷を軽減し安価なコンピュータを使用したり、他の処理を充実させたりすることができる。
【0053】
参考文献(「リラクタンストルクを利用した電動機」電気学会D誌、平成6年9号、824頁〜)を基にして、ブラシレスモータの特性から以上の事項の理論的根拠を説明する。式(1)は、ブラシレスモータの過渡特性を除去した定常時の電圧方程式を、よく知られているdq軸座標で表した式である。この式においては、ロータに配置された永久磁石から発生する磁束がコイル巻線と鎖交する方向をd軸、d軸と電気角で直交する軸をq軸とする。
【0054】
【数1】
【0055】
VD、VQは駆動電圧のd軸およびq軸成分を表わす。RAはコイル抵抗を表わす。ID、IQはコイル電流のd軸およびq軸成分を表わす。ωはIPMモータ25のロータの角速度を表わす。LD、LDはd軸方向およびq軸方向の電気子自己インダクタンスを表わす。φAは永久磁石による電機子鎖交磁束を表わす。
【0056】
電機子電流のd、q軸成分であるID、IQは、電流振幅IAおよび、ロータ位置に対するコイル電流の通電タイミングを示す電流位相差βを用いて次の式(2)で表わされる。
【0057】
【数2】
【0058】
以上より、モータトルクTは電流振幅IAと電機子鎖交磁束φAのベクトルとの外積として次の式(3)で求められる。
【0059】
【数3】
【0060】
PNは永久磁石の極対数を表わす。この式(3)において、右辺第1項は永久磁石の磁束と電機子電流によって発生するマグネットトルクであり、右辺第2項は磁気的突極性によって発生するリラクタンストルクである。
【0061】
このリラクタンストルクは、IPMモータで特に大きく発生する。IPMモータにおいてこのリラクタンストルクを積極的に使用すると、総合的なモータトルクTは増加するので、IPMモータをエネルギの損失が少なくなるように運転することができる。
【0062】
図4を参照して、IPMモータにおけるモータトルクTと電流位相差βとの代表的な特性を示す。IPMモータ25の発生トルクは、リラクタンストルクとマグネットトルクを合成した総合トルクである。発生トルクは電流位相差βをパラメータとして変化する。IPMモータ25に代えて永久磁石をロータ内部に埋め込まないタイプのブラシレスモータを用いる場合、リラクタンストルクは非常に小さな値として考えられる。
【0063】
定常時のモータコイルの電圧振幅VAおよび電機子反作用を考慮した総合電機子鎖交磁束φ(0)は次の式(4)の通りである。
【0064】
【数4】
【0065】
ρは各軸のインダクタンスLD、LQの比(LD/LQ)である。電流振幅IAと電圧振幅VAとの位相差θは次の式(5)で表わされる。
【0066】
【数5】
【0067】
ロータ位置に対する駆動電圧の通電タイミングを示す電圧位相差δ、および電流位相差βは次の式(6)で表される。
【0068】
【数6】
【0069】
図5を参照して、式(1)〜式(6)に基づくIPMモータ25の定常時の電圧および電流ベクトル図を説明する。式(5)および式(6)に示すように、電流振幅IAと電圧振幅VAとの位相差θ、電圧位相差δ、電流位相差βは、モータ構造で決まる定数と、角速度ω、駆動電圧およびコイル電流とによって決定される。モータ構造で決まる定数とは、電機子鎖交磁束φA、d軸の自己インダクタンスLD、q軸の自己インダクタンスLQなどをいう。駆動電圧およびコイル電流とは、電圧振幅VAのd軸成分VD、q軸成分VQおよび電流振幅IAのd軸成分ID、q軸成分IQをいう。
【0070】
モータの入力PIと出力POの関係は次の式(7)の通りとなる。
【0071】
【数7】
【0072】
WLはモータにおける損失(鉄損+銅損)を示すので、電流振幅IAおよび電圧振幅VAは次の式(8)と式(9)とで表される。
【0073】
【数8】
【0074】
【数9】
【0075】
本実施の形態においては、角速度ωは設定部21で設定されており、IPMモータ25は設定部21により設定された一定の回転数で回転する。速度を変更するために設定部21が出力値を変更した時を除き、角速度ωの変動は生じない。
【0076】
式(8)は、制御部24によって電流振幅IAを操作した場合、トルクT、損失WL、電圧振幅VA、位相差θが変化することを表わす。式(9)は、制御部24によって電圧振幅VAを操作した場合、トルクT、損失WL、電流振幅IA、位相差θが変化することを表わす。
【0077】
ここで本実施の形態においては負荷トルクの変動が問題にならないよう制御周期を設定するので、各式において発生トルクTは一定と見なすことができる。トルクTが一定なので、損失WLも定数として見なすことができる。トルクTおよび損失WLが一定であることによりIPMモータ25の仕事率が一定となる結果、式(8)における変数は電圧振幅VAと位相差θ、式(9)における変数は電流振幅IAと位相差θのみとなる。
【0078】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置100の動作について説明する。
【0079】
決定部204は、設定部21はIPMモータ25の回転数を設定する(S100)。IPMモータ25の回転数が設定されると、回転数に見合った目標値を内蔵するメモリに記憶された電流位相差βの値のうちから目標値を読出し、決定する(S102)。目標値が決定されると、第1検出部201は、IPMモータ25のコイル電流の位相を検出する(S104)。コイル電流の位相が検出されると、変換部205はロータ情報を第2検出部202に出力する(S106)。
【0080】
ロータ情報が出力されると、第2検出部202は電流位相差βを算出する(S108)。電流位相差βが算出されると、演算部203は修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する(S110)。
【0081】
修正情報が出力されると、インバータ23は電流振幅IAを設定し、出力する(S112)。電流振幅IAが出力されると、第2検出部202は、次の制御周期を待つ(S114)。この制御周期間に、電流振幅IAの出力によってIPMモータ25の特性値は、互いの値の変化により変動する。具体的には、式(8)に基づき電圧振幅VAが変化する。また発生トルクTを一定とみなすので、式(3)より電流位相差βおよびコイル電流のd軸成分ID、q軸成分IQが変化する。また、電圧振幅VAが変化したことにより式(1)から電圧振幅VAのd軸成分VD、q軸成分VQが変化する。これらの値は、式(1)、式(3)および式(6)の2番目の式等を満たすよう変化して決定され、当然ながら通電タイミングである電流位相差βも決定する。
【0082】
以上のようにして、通電タイミングが目標値と一致させるように制御されるので、シングルロータリ型圧縮機をはじめとする負荷トルクが変動する負荷に対してもモータ脱調などを生じないように制御することができる。負荷トルクが変動する負荷がモータ脱調などを生じないように制御されるので、簡単な構成の駆動装置により低騒音、低振動、低エネルギ損失である正弦波通電をはじめとする180度通電によるモータ駆動をより幅広い分野に適用できる。180度通電によるモータ駆動は低騒音、低振動、低エネルギ損失なので、騒音や振動の影響でシングルロータリ型圧縮機などを使用できなかった用途にも、180度通電によるモータ駆動が可能となる。シングルロータリ型圧縮機などを使用できなかった用途においても180度通電によるモータ駆動が可能となるので、装置全体としての低コスト化、エネルギ損失低化、低騒音化、低振動化を図ることができる。
【0083】
なお、制御部24が制御周期を可変あるいは自動調整できるように設定しておくことで、その都度適切な制御周期を設定できる。
【0084】
また、IPMモータ25の1回転中の負荷トルク変動によるモータ回転への影響が小さい場合は、この変動を無視して、全体としての平均負荷トルク変動のみを考慮して制御周期を設定してもよい。このとき1回転中の負荷トルクは平均化する。このように平均化できるかを考察して、制御装置を設計することで制御周期を不要に短くしてしまうことが防止できる。
【0085】
さらに、急激な負荷トルク変動など予期できない事態が発生した場合に備えて、従来方式のモータ駆動方法を併用すれば装置の信頼性を高めることができる。従来のモータ駆動方法とは、コイル端子の逆起電圧などを検出してロータ位置を検出し、これを基にモータ回転数をフィードバック制御し、通電タイミングを設定するような方法をいう。本実施の形態の構成によると、設定部21で設定した周波数にモータ回転数が同期しないとIPMモータ25は停止する。これにより、急激に負荷トルクが変動すると、IPMモータ25は停止する恐れがある。従来のモータ駆動方法を併用すると、急激な負荷トルク変動をコイル電流の変化などで検出した場合、従来のモータ駆動方法に切り換えることでモータ停止を防止する信頼性の高い制御が実現できる。
【0086】
その他、振動検出器32は、振動の振幅に代えて、振動の周波数を検出してもよい。IPMモータ25やそれに接続されたコンプレッサの構造によっては振動の振幅より振動の周波数の方がよりIPMモータ25のロータの機械角に対応することがある。これにより、IPMモータなどの構造に応じてより的確にロータの機械角を検出することができる。
【0087】
S114にて、第2検出部202が待つ時間、すなわち制御周期は、IPMモータ25の単位時間あたりの消費エネルギ、すなわち仕事率の変動周期が、本実施の形態における駆動装置100全体の制御周期の4倍以上および10倍以上のいずれかとなるように定められてもよい。仕事率=角速度(rad/秒)×回転半径×トルク÷回転半径+単位時間あたりの損失=角速度×トルク+単位時間あたりの損失=ωT+WLとなる。式(8)および式(9)より、IPMモータ25の仕事率が一定の間は、1つのパラメータのみでIPMモータ25を制御できることは明らかだからである。
【0088】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置200について説明する。
【0089】
図6を参照して、本実施の形態に係る駆動装置200の制御部24は、第1検出部201に代えて第3検出部210を含む。第3検出部210には、インバータ23から駆動信号が入力される。この駆動信号は複数のコイル端子のうち1つでもよいし、複数の端子を検出してもよいが、本実施の形態においては前者とする。センサ部22は、振動検出器32のみを含む。決定部204は電流位相差βに代えて電圧位相差δの目標値を決定する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0090】
図7を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電圧振幅VAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図7に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0091】
S200にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された電圧位相差δの値のうちから目標値を読出し、決定する。S204にて、第3検出部210は、インバータ23が出力した駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する。本実施の形態においては、交流として表れる駆動信号のゼロクロス点を検出することにより駆動電圧の位相を検出する。
【0092】
S208にて、第2検出部202は、変換部205によって得られたロータ情報に対する第3検出部210によって検出された駆動電圧の位相である電圧位相差δを算出する。S210にて、演算部203は、目標値と算出された電圧位相差δとの差に基づき、これを目標値と一致させるためのPI制御に基づく演算を実行し、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。
【0093】
図8を参照して、電圧位相差δに基づき通電タイミングを制御できる理由について説明する。図8は、電圧振幅VAに対する電流位相差β、電圧位相差δおよび駆動電圧とコイル電流との位相差θの関係を表わす図である。電圧位相差δと電流位相差βとの間に相関があることが表わされている。これにより、電圧位相差δに基づき通電タイミングを制御できる。
【0094】
S212にて、インバータ23は、電圧振幅VAを設定し、出力する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置200の動作について説明する。
【0095】
決定部204は、内蔵するメモリに記憶された電圧位相差δの値のうちから目標値を読出し、決定する(S200)。IPMモータ25の回転数が設定されると、第3検出部210は、インバータ23が出力した駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する(S204)。
【0096】
ロータ情報が出力されると、第2検出部202は、電圧位相差δを算出する(S208)。電圧位相差δが算出されると、演算部203は、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する(S210)。
【0097】
修正情報が出力されると、インバータ23は、電圧振幅VAを設定し、出力する(S212)。
【0098】
以上のようにして、モータ回転数および負荷トルクを一定と考えることで、電圧振幅VAをある値に設定すると、電流位相差βひいては通電タイミングである電圧位相差δは一義的な値に決まる。電圧位相差δが一義的な値に決まると制御部24にフィードバックし、目標値と一致させる制御系によって通電タイミングを適切な値に制御することができる。電圧振幅VAにより電圧位相差δが制御されるので、簡単な構成の制御装置がIPMモータを制御できる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続されたIPMモータを、簡単な構成で連続駆動により制御できる駆動装置を提供できる。
【0099】
なお、図6の構成においては、振動検出器32からモータロータの位置に対応した信号を検出しているが、振動に限らず負荷トルク変動に関する情報であればよい。ロータ位置あるいは負荷トルク変動に関する情報として、たとえば騒音を検出し、これをロータ位置に変換して使用してもよい。モータコイル電流の振幅変化あるいはモータコイル端子に発生する逆起電圧変化を検出して、これをロータ位置に変換して使用してもよい。また、モータロータの磁極位置を検出する検出コイルなどを配置して、磁極位置をロータ位置に変換して使用してもよい。
【0100】
さらに、設定部21は、IPMモータ25の回転数を変更する場合、変動が少なくなるように回転数の変更量を調整してもよい。回転数の変化を前述の負荷トルク変動と同様にとらえて、不安定さが小さくなるよう段階的に回転数を調整することにより、モータ回転の不安定化を抑制することができる。
【0101】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置300について説明する。
【0102】
図9を参照して、本実施の形態に係る駆動装置300の制御部24は、第2検出部202と、演算部203と、決定部204とを含む。第2検出部202には、インバータ23からIPMモータ25のロータの機械角を検出するために駆動信号が入力され、かつ電流検出器31からコイル電流が入力される。この駆動信号は複数のコイル端子のうち1つから情報が入力されてもよいし、複数の端子から入力されてもよいが、本実施の形態においては前者とする。センサ部22は、電流検出器31のみを含む。第2検出部202は、駆動電圧とコイル電流との位相差θを算出する。IPMモータ25はインバータ23から出力される駆動信号をコイルに供給されることによりロータを回転させることから、駆動信号と駆動電圧との間には対応関係がある。駆動信号と駆動電圧との間に対応関係があり、かつ駆動信号からロータの機械角を検出できるので、駆動電圧とコイル電流との位相差θは、ロータの機械角に対する電流の位相差を間接的に表わすことになる。位相差θが、ロータの機械角に対する電流の位相差を間接的に表わすので、位相差θは通電タイミングの一種である。演算部203は、決定部204から出力された位相差θの目標値と算出された位相差との差に基づき、いわゆるPI制御に基づく演算などを実行し、修正情報を駆動電圧あるいはコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。決定部204は電流位相差βに代えて位相差θの目標値を記憶する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0103】
図10を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電圧振幅VAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図10に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0104】
S300にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された位相差θの値のうちから目標値を読出し、決定する。図11を参照して、本実施の形態に係る決定部204における目標値の決定について説明する。図11はIPMモータ25を用いて、図9の構成で回転させたときの電流位相差βすなわち通電タイミングに対するモータ効率の関係を測定した実験結果のグラフである。モータ回転数は3000rpm、負荷トルクは1.47Nmとする。モータ効率とは、モータに供給したエネルギに対する、負荷への仕事に費やされたエネルギの割合をいう。
【0105】
制御部24は、電圧振幅VAを操作して位相差θを制御する。モータ効率は、入力電力とモータ出力との比から算出する。入力電力は、IPMモータ25への入力である駆動電圧とコイル電流とから求まる。モータ出力は、モータ回転数と負荷トルクとから求まる。グラフの四角印は電流位相差βに対するモータ効率の関係を表わす。菱形印は電流位相差βに対するコイル電流と駆動電圧の位相差θの関係を表わす。位相差θと電流位相差βとの間に相関があることが確認される。モータ効率の特性からモータ効率は電流位相差βによって決まるので、電流位相差βを最適値に設定するとIPMモータ25が最高のモータ効率で駆動されることがわかる。決定部204は、この最高のモータ効率が得られる値を制御目標として出力することで、IPMモータ25を最高のモータ効率で運転することができる。具体的には、決定部204を、回転条件(IPMモータ25のモータ回転数および負荷トルク)をパラメータとするテーブルとし、制御中の回転条件に応じて目標値を出力する。コンプレッサなどではモータ回転数によって負荷トルクがほぼ一義的に決まるので、本実施の形態においては、回転条件はモータ回転数のみとする。なお、この特性は発明の前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態で説明した構成にも適用でき、各実施例とも回転条件によって目標値を設定することで高効率運転が実現できる。
【0106】
S304にて、第2検出部202は、インバータ23から入力された駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する。本実施の形態においては、交流として表れる駆動信号のゼロクロス点、あるいは電流の積算結果などを検出することにより駆動電圧の位相を検出する。
【0107】
S306にて、第2検出部202は、電流検出器31を用いてIPMモータ25のコイル電流の位相を検出する。本実施の形態においては、コイル電流のいわゆるゼロクロス点、あるいは電流の積算結果などを検出することによりコイル電流の位相を検出する。
【0108】
S308にて、第2検出部202は、駆動電圧の位相と、電流検出器31を用いて得られたIPMモータ25のコイル電流の位相情報との差、すなわち位相差θを算出する。
【0109】
S310にて、演算部203は、位相差の目標値と算出された位相差θとの差に基づき、これを目標値と一致させるためのPI制御に基づく演算を実行し、修正情報を駆動電圧やコイル電流の振幅を設定する情報として出力する。
【0110】
図8から明らかなように、位相差θは電流位相差βに対して相関がある。電流位相差βに対して相関があるので、位相差θはIPMモータ25を精度よく制御でき、安定回転が実現できる。
【0111】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置300の動作について説明する。
【0112】
IPMモータ25の回転数が設定されると、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された位相差θの値のうちから目標値を読出し、決定する(S300)。目標値が決定されると、第2検出部202は、インバータ23から入力された駆動信号に基づき、駆動電圧の位相を検出する(S304)。駆動電圧の位相が検出されると、第2検出部202は、電流検出器31を用いてIPMモータ25のコイル電流の位相を検出する(S306)。コイル電流の位相が検出されると、第2検出部202は、位相差θを算出する(S308)。位相差θが算出されると、演算部203は、修正情報を出力する(S310)。
【0113】
以上のようにして、モータ回転数および負荷トルクを一定と考えることで、電圧振幅VAをある値に設定すると、電流位相差βひいては通電タイミングである位相差θは一義的な値に決まる。位相差θが一義的な値に決まると位相差θは制御部24にフィードバックされ、目標値と一致させる制御系によって制御される。位相差θを決める際、第2検出部202は、インバータ23から出力される駆動信号に基づいて容易にロータの機械角を検出できる。ロータの機械角が容易に検出されるので、第2検出部202を簡単な構成とすることができる。その結果、仕事率の変動が大きい負荷に接続されたIPMモータを、簡単な構成で連続駆動により制御できる駆動装置を提供できる。
【0114】
なお、電流位相差β、電圧位相差δ、位相差θの検出および制御については、上記した方法にこだわらず、結果としてこれらの情報を検出できればよい。たとえば、インバータ23の電源ラインの微小変動を検出する方法も考えられるし、コイル端子からIPMモータ25の回転によって発生する逆起電圧を検出する方法も考えられる。
【0115】
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態に係る駆動装置400について説明する。
【0116】
図12を参照して、本実施の形態に係る駆動装置400は、オフセット設定部26と、加算器27とを含む。オフセット設定部26は、振幅を変更するため、回転数の変更量に基づき、式(8)あるいは式(9)を用いて演算する。加算器27は、オフセット設定部26が出力した値と制御部24の振幅指令とを加算してインバータ23に出力する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0117】
図13を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電流振幅IAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図13に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0118】
S400にて、オフセット設定部26は、設定部21が回転数を変更したか否かを判断する。回転数を変更したと判断した場合には(S400にてYES)、処理はS402へと移される。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS408へと移される。
【0119】
S402にて、オフセット設定部26は、設定部21のモータ回転数に関する設定に基づいてその回転数における負荷トルクの代表値を予想する。コンプレッサなどの負荷の場合、モータ回転数と負荷トルクの関係はほぼ決まる。モータ回転数と負荷トルクの関係がほぼ決まるので、オフセット設定部26は、モータ回転数に関する設定から負荷トルクの代表値を予想することができる。
【0120】
S404にて、決定部204は、内蔵するメモリに記憶された通電タイミングの値のうちから変更する回転数における制御の目標値を読出し、決定する。S406にて、オフセット設定部26は、回転数の変更に伴って変更すべき駆動電圧あるいはコイル電流のオフセット値を決定する。オフセット設定部26は、センサ部22から駆動電圧あるいは電流振幅IAを検出し、かつ式(8)または式(9)により変更する回転数における電流振幅IAの理論値との差を求めることで、オフセット値を決定する。S408にて、加算器27は、オフセット値と演算部203が出力した修正情報とを加算し、インバータ23に出力する。
【0121】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置400の動作について説明する。
【0122】
修正情報が出力されると、オフセット設定部26は、設定部21が回転数を変更したと判断するので(S400にてYES)、オフセット設定部26は、その回転数における負荷トルクの代表値を予想する(S402)。代表値が予想されると、決定部204は、変更する回転数における制御の目標値を読出し、決定する(S404)。目標値が決定されると、オフセット設定部26は、回転数の変更に伴って変更すべき駆動電圧あるいはコイル電流のオフセット値を決定する(S406)。オフセット値が決定されると、加算器27は、オフセット値と演算部203が出力した修正情報とを加算し、インバータ23に出力する(S408)。
【0123】
IPMモータ25の回転数は、設定部21が一義的に設定しているので、回転数変更時の通電タイミングの変動を予見することができる。これにより、モータ回転数の変化にともなう一時的な回転の不安定化を抑制することができる。その結果、回転数が変化してもモータの回転を安定して制御できるモータの制御装置を提供できる。
【0124】
なお、オフセット設定部26は、回転数が変化した後の負荷トルクの代表値を予想せず、別途検出してもよい。また、オフセット設定部26は、実験などで求めた各回転数に対応する振幅値を、回転数をパラメータとするテーブルとして記憶しておいてもよい。回転数が変更されると、変更後の回転数に対応する振幅値をオフセット値として選択し、出力する。これにより、オフセット設定部26は、式(8)および式(9)に用いられるパラメータを検出せず、かつオフセット値を演算しなくても、簡単にオフセット値を設定することができる。
【0125】
さらに、オフセット設定部26は、振幅値を、回転数をパラメータとする1次関数として記憶しておいてもよい。オフセット設定部26は、回転数指令に基づいて振幅値を算出し、オフセット値として出力する。これにより、簡単な計算式でオフセット値が導出でき、かつデータテーブルを保持しないので記憶容量を削減できる。
【0126】
なお、モータ回転数の変更は、変更による電流位相差βなどへの影響を極力小さくするためにも、設定手段21において1回に可能な変更量をある範囲内に抑制するように制御することも有効であり、こうすることで本発明のオフセット値との誤差も小さくすることができ、より高精度なモータ制御が実現できる。
【0127】
<第5の実施の形態>
以下、本発明の第5の実施の形態に係る駆動装置500について説明する。
【0128】
図14を参照して、本実施の形態に係る駆動装置500の第2検出部202は、設定部21に検出が終了したことを示す信号を出力する。設定部21はこの信号を、回転数を変更するトリガ信号として使用し、信号の入力とともに、あるいは所定のディレイ時間(ユーザの指定などによって予め設定されている時間)経過後に回転数を変更する。なお、その他のハードウェア構成については前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0129】
図15を参照して、制御部24で実行されるプログラムは、操作パラメータとして電流振幅IAを使用するIPMモータ25の制御に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図15に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0130】
S500にて、設定部21は、制御が開始されたことおよび第2検出部202から信号が出力されたことのいずれかに応答して、IPMモータ25の回転数を設定するか否かを判断する。この信号は、検出が終了したことを示す信号または制御が開始されたことを示す信号である。回転数を設定すると判断した場合には(S500にてYES)、処理はS502へと移される。もしそうでないと(S500にてNO)、処理はS104へと移される。S502にて、設定部21は、前述したディレイ時間が経過した後、回転数を設定する。本実施の形態においては、ディレイ時間はゼロとする。
【0131】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、駆動装置500の動作について説明する。
【0132】
設定部21は、制御が開始されたことおよび信号が第2検出部202から出力されたことのいずれかに応答して、IPMモータ25の回転数を設定するか否かを判断する(S500)。この場合、回転数を設定すると判断されるので(S500にてYES)、設定部21は、直ちに回転数を設定する(S502)。
【0133】
以上のようにして、回転数を変更した後に制御を実施して、変動の早期収束を図ることができるので、IPMモータ25をより安定して回転させることができる。その結果、早期に通電タイミングを所定値に制御することができ、安定回転が実現できるモータの制御装置を提供できる。
【0134】
なお、設定部21は、回転数変更トリガ信号が出力された後、次回の検出タイミングまでの推定時間から、回転数変更に伴って電流位相差βが変動するまでの時間遅れ分を差し引いた時間をディレイ時間としてもよい。ディレイ時間が任意に設定されると、回転数の変動に対応した制御ができない恐れがあるからである。たとえば、回転数変更トリガ信号入力から回転数指令を変更するまでのディレイ時間をゼロにすると、制御において次の検出タイミングまで回転数の変動が考慮されない恐れがある。ディレイ時間を次の検出タイミングの直前とすると、次回の制御部24の検出時に、回転数の変更に伴う変動が検出されない恐れがある。
【0135】
なお、IPMモータ25に対して外部より入力する情報は、電流振幅IAであっても電圧振幅VAであっても発明の実施の形態1の各式に基づいた同様な変化が起こり、更に操作パラメータは電流位相差βのみならず電圧位相差δ、駆動電圧とコイル電流との位相差θも、各入力情報に基づいて変化する。したがって、制御装置において、IPMモータ25に対する出力する情報は、電流振幅IAであっても電圧振幅VAであってもかまわず、また、操作パラメータは、電流位相差β、電圧位相差δ、駆動電圧とコイル電流との位相差θのうちどれを用いてもよい。本発明はこれら各組み合わせの構成で実現できるものである。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータの負荷トルクの変動周期と駆動装置の制御周期との関係を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータにおけるモータトルクと電流位相差との特性を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るIPMモータの定常時の電圧および電流ベクトルを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電圧振幅に対する電流位相差、電圧位相差および位相差の関係を表わす図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るIPMモータを回転させたときの電流位相差に対するモータ効率の関係を測定した実験結果のグラフである。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係る駆動装置の全体構成図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係るIPMモータを駆動する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
100,200,300,400,500 駆動装置、21 設定部、22 センサ部、23 インバータ、24 制御部、25 IPMモータ、26 オフセット設定部、27 加算器、31 電流検出器、32 振動検出器、201 第1検出部、202 第2検出部、203 演算部、204 決定部、205 変換部、210 第3検出部。
Claims (9)
- 複数相の同期モータを制御するためのモータの制御装置であって、
前記同期モータの回転速度を設定するための設定手段と、
前記複数相のうちのいずれかの特定相の電圧および電流のいずれかを検出するための第1の検出手段と、
前記同期モータの回転子の機械角を検出するための第2の検出手段と、
前記回転子の機械角に対する、前記第1の検出手段による検出結果により特定される前記特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出するための算出手段と、
前記設定された回転速度を満足するように、前記複数相の電圧および電流のいずれかを制御するための制御データに基づいて駆動信号を作成し、各前記複数相に前記駆動信号を印加するための印加手段と、
前記同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、前記算出手段から出力される位相差データが目標値に近づくような前記制御データを前記複数相の各相ごとに作成し、前記作成された制御データを用いて前記印加手段を制御するための制御手段とを含む、モータの制御装置。 - 前記第2の検出手段は、前記同期モータが発生する振動の振幅および周波数のいずれかの変動に基づいて前記機械角を検出するための手段を含む、請求項1に記載のモータの制御装置。
- 複数相の同期モータを制御するためのモータの制御装置であって、
前記同期モータの回転速度を設定するための設定手段と、
前記複数相のうちのいずれかの特定相の電圧および電流を検出するための第1の検出手段と、
前記第1の検出手段による検出結果により特定される前記特定相の電圧および電流から、前記回転子の機械角に対する、前記特定相の電圧および電流のいずれかの位相差を表わす位相差データを算出するための算出手段と、
前記設定された回転速度を満足するように、前記複数相の電圧および電流のいずれかを制御するための制御データに基づいて駆動信号を作成し、各前記複数相に前記駆動信号を印加するための印加手段と、
前記同期モータの仕事率が変動する周期より短い周期で、前記算出手段から出力される位相差データが目標値に近づくような前記制御データを前記複数相の各相ごとに作成し、前記作成された制御データを用いて前記印加手段を制御するための制御手段とを含む、モータの制御装置。 - 前記制御手段は、前記同期モータの仕事率が変動する周期の1/4以下の長さの周期で、前記制御データを作成するための手段を含む、請求項1から3のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記制御手段は、前記同期モータの仕事率が変動する周期の1/10以下の長さの周期で、前記制御データを作成するための手段を含む、請求項1から3のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記同期モータの仕事率が変動する周期は、前記同期モータの負荷トルクが変動する周期である、請求項1から5のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記制御手段は、前記設定手段に対して、前記回転速度を新たに設定するタイミングを決定するトリガ信号を出力する手段を含む、請求項1から6のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記モータの制御装置は、前記設定手段が前記回転速度を新たに設定したことに応答して、前記制御データの一部として前記回転速度の影響を緩和するために前記駆動信号の作成に用いられる補正データを作成するための手段をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載のモータの制御装置。
- 前記同期モータは、埋込み磁石型同期モータである、請求項1から8のいずれかに記載のモータの制御装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003022207A JP2004236437A (ja) | 2003-01-30 | 2003-01-30 | モータの制御装置 |
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JP2003022207A JP2004236437A (ja) | 2003-01-30 | 2003-01-30 | モータの制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006288083A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-10-19 | Fujitsu General Ltd | 同期モータの制御方法 |
JP2008104246A (ja) * | 2006-10-17 | 2008-05-01 | Mitsubishi Motors Corp | 車両用制御装置及び車両用制御方法 |
JP2014107880A (ja) * | 2012-11-22 | 2014-06-09 | Fujitsu General Ltd | モータ駆動装置 |
-
2003
- 2003-01-30 JP JP2003022207A patent/JP2004236437A/ja not_active Withdrawn
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JP2006288083A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-10-19 | Fujitsu General Ltd | 同期モータの制御方法 |
JP2008104246A (ja) * | 2006-10-17 | 2008-05-01 | Mitsubishi Motors Corp | 車両用制御装置及び車両用制御方法 |
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