JP2004235266A - 電子素子内蔵多層配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子素子と絶縁層間の熱膨張差が大きいために、熱応力によって電気的接続不良が発生する。
【解決手段】有機材料から成る複数の絶縁層3を積層するとともにこれら絶縁層3の表面に配線導体4を形成し、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁層3に形成された貫通導体5を介して電気的に接続して成り、絶縁層3の少なくとも一層に設けられた空洞部7の内部に、配線導体4または貫通導体5と電気的に接続される引出し電極部10を有する電子素子8を内蔵した電子素子内蔵多層配線基板9であって、少なくとも電子素子8の直上および直下に位置する絶縁層3は、液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有しており、この被覆層2は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側にかけて減少するように形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】有機材料から成る複数の絶縁層3を積層するとともにこれら絶縁層3の表面に配線導体4を形成し、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁層3に形成された貫通導体5を介して電気的に接続して成り、絶縁層3の少なくとも一層に設けられた空洞部7の内部に、配線導体4または貫通導体5と電気的に接続される引出し電極部10を有する電子素子8を内蔵した電子素子内蔵多層配線基板9であって、少なくとも電子素子8の直上および直下に位置する絶縁層3は、液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有しており、この被覆層2は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側にかけて減少するように形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種AV機器や家電機器・通信機器・コンピュータやその周辺機器等の電子機器に使用されるコンデンサ素子等の電子素子を内蔵した配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、配線基板は、アルミナ等のセラミック材料から成る絶縁層あるいはガラスエポキシ樹脂等の有機樹脂材料から成る絶縁層の内部および表面に複数の配線導体を形成し、上下に位置する配線導体間を絶縁層に形成した貫通導体を介して電気的に接続して成り、この配線基板の表面に半導体素子やコンデンサ・抵抗素子等の電子素子を搭載取着するとともにこれらの電極を各配線導体に接続することによって電子機器に使用される電子装置が形成されている。
【0003】
しかしながら、近年、電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型・薄型・軽量化が要求されてきており、このような電子機器に搭載される配線基板も小型・高密度化が要求されるようになってきている。
このような要求に対応するために、特開平11−220262号公報には、配線基板の表面に搭載される電子素子の数を減らして配線基板を小型化する目的で、配線基板の内部にチップ状コンデンサ素子等の回路部品を内蔵した回路部品内蔵モジュールが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−220262号公報参照
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−220262号公報に示された回路部品内蔵モジュールは、銅箔上に実装した回路部品をエポキシ樹脂やシアネート樹脂から成る絶縁性基板に埋設することにより製作されており、エポキシ樹脂やシアネート樹脂は熱膨張係数が大きいため、電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が繰り返し印加されると、回路部品を内蔵する絶縁性基板の膨張あるいは収縮により回路部品と配線パターンの実装部に応力が集中してクラックが発生し、断線等の電気的接続不良が発生してしまうという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、接続信頼性に優れた小型で軽量な電子素子内蔵多層配線基板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板は、有機材料から成る複数の絶縁層を積層するとともにこれら絶縁層の表面に配線導体を形成し、前記絶縁層を挟んで上下に位置する前記配線導体間を前記絶縁層に形成された貫通導体を介して電気的に接続して成り、前記絶縁層の少なくとも一層に設けられた空洞部の内部に、前記配線導体または前記貫通導体と電気的に接続される引出し電極部を有する電子素子を内蔵した電子素子内蔵多層配線基板であって、少なくとも前記電子素子の直上および直下に位置する前記絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有しており、この被覆層は、前記無機絶縁粉末の含有量が前記液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板によれば、少なくとも電子素子の直上および直下に位置する絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有していることから、熱膨張係数の小さい液晶ポリマー層が熱膨張係数の大きい被覆層を拘束して絶縁層の熱膨張係数を電子素子の熱膨張係数と近似させることができるので、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、絶縁層と電子素子との接合面に両者の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはないので、両者の接合面にクラックが発生したり両者間で剥離することはなく、その結果、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することがない、接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板とすることができる。
【0009】
また、被覆層は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることから、被覆層の液晶ポリマー層側の熱膨張係数が液晶ポリマー層の熱膨張係数と近似し、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、液晶ポリマー層と被覆層との間に熱膨張係数の相異に起因する大きな応力が発生して両者間で剥離することはなく、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0010】
さらに、被覆層の液晶ポリマー層の反対側では無機絶縁物粉末の量が少なく熱硬化性樹脂の量が多いので、電子素子や隣接する絶縁層との密着性が良好となり、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、これらの間で剥離して配線導体や貫通導体が断線することはなく、電気的接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の電子素子内蔵多層配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の、電子素子内蔵多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は図1に示す電子素子の拡大断面図である。また、図3は図1に示す絶縁層3の部分拡大断面図である。
【0012】
これらの図において、1は液晶ポリマー層、2は被覆層であり、主にこれらで絶縁層3が形成されており、また、4は配線導体、5は貫通導体、8はコンデンサ素子等の電子素子であり、主に絶縁層3と、配線導体4と、貫通導体5と、電子素子8とで本発明の電子素子内蔵多層配線基板9が構成されている。
なお、本実施例では、絶縁層3を4層積層して成るとともに、1個の電子素子8を埋設して成る電子素子内蔵多層配線基板9について説明する。
【0013】
まず、電子素子内蔵多層配線基板9に内蔵される電子素子8について説明する。なお、本実施例では、電子素子8がコンデンサ素子である場合を例にとって説明する。
コンデンサ素子8は、縦・横・高さがそれぞれ1〜5mmの直方体であり、図2に断面図で示すように、電極層11とセラミック誘電体層12とを交互に複数層積層することにより形成されている。
【0014】
このようなセラミック誘電体層12の材料としては、種々の誘電体セラミック材料を用いることができ、例えば、BaTiO3やLaTiO3・CaTiO3・SrTiO3等のセラミック組成物、あるいは、BaTiO3の構成元素であるBaをCaで、TiをZrやSnで部分的に置換した固溶体等のチタン酸バリウム系材料や、鉛系ペロブスカイト型構造化合物等が挙げられる。
また、電極層11を形成する材料としては、例えばPdやAg・Pt・Ni・Cu・Pb等の金属やそれらの合金が用いられる。
【0015】
さらに、コンデンサ素子8は、多数の電極層11に電気的に接続した複数の引き出し電極部10を有しており、これらはコンデンサ素子8の電極層11と電子素子内蔵多層配線基板9の配線導体4や貫通導体5とを電気的に接続する作用を成す。
【0016】
このような引き出し電極部10は、コンデンサ素子8の端面に半田ペーストを印刷することによって、あるいは電極層11とセラミック誘電体層12との積層体に貫通孔を形成し、これに導体を埋め込むことによって形成される。なお、微細化・工程の容易性・インダクタンス低減という観点からは、引き出し電極部10は、貫通孔を形成後、これに導体を埋め込むことによって形成されることが好ましい。
【0017】
このようなコンデンサ素子8に形成される貫通孔は、電極層11とセラミック誘電体層12とから成る積層体に、パンチングによる打ち抜き加工やUV−YAGレーザやエキシマレーザ・炭酸ガスレーザ等によるレーザ穿設加工等の方法により形成され、特に微細な貫通孔とするためには、レーザによる穿設加工により形成されることが好ましい。また、貫通孔の径は数10μm〜数mmであり、コンデンサ素子8の大きさにあわせて適宜決めればよい。
なお、貫通孔は、内部に充填される導体と電極層11との電気的接続を良好にするために、打ち抜き加工やレーザ穿設加工後に超音波洗浄処理やデスミア処理等を施すことが好ましい。
【0018】
また、引き出し電極部10を形成する導体としては、PdやAg・Pt・Ni・Cu・Pb等の金属やそれらの合金が用いられ、特に電極層11との電気的接続を良好にするという観点からは、電極層11と同じ材質のものを含有することが好ましい。
【0019】
このような引き出し電極部10となる導体は、有機溶剤に有機バインダ樹脂を溶解させた有機ビヒクル中に金属粉末を分散させて成る導電ペーストを、貫通孔にスクリーン印刷法等の方法で充填することにより形成される。なお、ビヒクル中には、これらの他、各種分散剤・活性剤・可塑剤などが必要に応じて添加されていても良い。
【0020】
また、導電ペーストに用いられる有機バインダ樹脂は、金属粉末を均質に分散させるとともに貫通孔への埋め込みに適正な粘度とレオロジーを与える役割をもっており、例えば、アクリル樹脂やフェノール樹脂・アルキッド樹脂・ロジンエステル・エチルセルロース・メチルセルロース・PVA(ポリビニルアルコール)・ポリビニルブチラート等が挙げられる。特に、金属粉末の分散性を良くするという観点からは、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
さらに、導電ペーストに用いられる有機溶剤は、有機バインダ樹脂を溶解して金属粉末粒子を分散させ、このような混合系全体をペースト状にする役割をなし、例えば、α−テルピネオールやベンジルアルコール等のアルコール系や炭化水素系・エーテル系・BCA(ブチルカルビトールアセテート)等のエステル系・ナフサ等が用いられ、特に、金属粉末の分散性を良くするという観点からは、α−テルピネオール等のアルコール系溶剤を用いることが好ましい。
【0022】
さらにまた、導電ペーストは、埋め込み・焼成後のコンデンサ磁器への接着強度を上げるために、ガラスフリットやセラミックフリットを加えたペーストとすることができる。この場合のガラスフリットやセラミックフリットとしては特に限定されるものではなく、例えば、ホウ珪酸系やホウ珪酸亜鉛系のガラスやチタニア・チタン酸バリウムなどのチタン系酸化物などを適宜用いることができる。
【0023】
このようなコンデンサ素子8は、次に述べる方法により製作される。
まず、周知のシート成形法により製作したセラミック誘電体層12と成る、例えば複数のBaTiO3誘電体セラミックグリーンシート表面に、周知のペースト作成法により作成したNi金属ペーストをスクリーン印刷法により所定形状と成るように印刷して電極層11と成る未焼成電極層を形成し、続いてこれらを所定順序に積層するとともに圧着して積層体を得る。そして、これを所定の大きさに切断するとともに800〜1600℃の温度で焼成することにより製作される。
【0024】
また、コンデンサ素子8の表面は、絶縁層3との接着性を向上させるという観点からは、セラミック誘電体層12の表面の算術平均粗さRの最大値Rmaxを0.2μmより大きく、望ましくは0.5μm以上、最適には1.0μm以上とすることが好ましい。なお、セラミック誘電体層12の表面粗さRの最大値Rmaxが5μmを超えると、コンデンサ素子8に割れや欠けが発生し易くなる傾向があるため、表面粗さRの最大値Rmaxを5μm以下としておくことが好ましい。
【0025】
このようなコンデンサ素子8表面のセラミック誘電体層12の表面は、焼成前のグリーンシート積層体の段階で、積層体の表面をブラシ研磨による粗化処理やあらかじめ凹凸加工した平板を押し付けるなどの方法で物理的に凹凸をつけた後、あるいはレーザによりグリーンシート積層体表面に非貫通孔を開けることによりディンプル加工を施した後、焼成することにより所望の表面粗さとすることができる。また、セラミック誘電体層12に用いられるセラミック材料よりも焼成時の耐熱性が高く平均粒子径が10μm以上のセラミック粉末、あるいはセラミック誘電体層12に用いられるセラミック材料の一部と反応性を有し、平均径が10μm以上のセラミック粉末を一部が埋入するようにグリーンシート積層体表面に付着させて焼成することによって所望の表面粗さとしても良い。さらに、グリーンシート積層体の焼成後のコンデンサ素子8の表面をサンドブラスト等の物理的手法あるいはエッチング等の化学的手法により粗化しても良い。
【0026】
次に、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9は、図1に断面図で示すように、複数の絶縁層3を積層するとともにこれら絶縁層3の表面に銅箔から成る配線導体4が形成されている。また、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁層3に形成された導電性樹脂から成る貫通導体5を介して電気的に接続して成り、上下の最外層に位置する配線導体4の一部が外部電気回路と接続される接続パッド6とされている。さらに、絶縁層3の少なくとも一層に設けられた空洞部7の内部に前述のコンデンサ素子8を内蔵するとともに、そのコンデンサ素子8の上下両主面において引き出し電極部10が貫通導体5を介して配線導体4やその一部から成る接続パッド6に電気的に接続されている。
【0027】
そして、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9においては、少なくともコンデンサ素子8の直上および直下に位置する絶縁層3は、図3に断面図で示すように、液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有する構成となっている。また、このことが重要である。なお、本実施例においては、4層の絶縁層3全てが液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有する構成とした場合の例を示す。
【0028】
なお、ここで液晶ポリマーとは、溶融時に液晶状態あるいは光学的に複屈折する性質を有するポリマーを指し、一般に溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーや溶融時に液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマー、あるいは、熱変形温度で分類される1型・2型・3型すべての液晶ポリマーを含むものであり、本発明に用いる液晶ポリマーとしては、温度サイクル信頼性・半田耐熱性・加工性の観点からは200〜400℃の温度、特に250〜350℃の温度に融点を有するものが好ましい。また、ポリフェニレンエーテル系有機物とは、ポリフェニレンエーテル樹脂やポリフェニレンエーテルに種々の官能基が結合した樹脂、あるいはこれらの誘導体・重合体を意味するものである。
【0029】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板9によれば、少なくともコンデンサ素子8の直上および直下に位置する絶縁層3は、液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有していることから、熱膨張係数の小さい液晶ポリマー層1が熱膨張係数の大きい被覆層2を拘束して絶縁層3の熱膨張係数をコンデンサ素子8の熱膨張係数と近似させることができるので、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、絶縁層3とコンデンサ素子8の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはないので、両者の界面にクラックが発生したり両者間で剥離することはなく、その結果、配線導体4や貫通導体5に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0030】
このような液晶ポリマー層1は、絶縁層3に機械的な強度を付与するとともに絶縁層3の熱膨張係数をコンデンサ素子8の熱膨張係数に近似させる機能を有し、層としての物性を損なわない範囲内で、熱安定性を改善するための酸化防止剤や耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル・高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数を調整するため、および/または機械的強度を向上するための酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材を含有してもよい。
【0031】
なお、上記の充填材等の粒子形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは略球状が好ましい。また、粒子径は、通常0.1〜15μm程度であり、液晶ポリマー層1の厚みよりも小さい。
【0032】
また、被覆層2は、後述する配線導体4を被着形成する際の接着剤の機能を有するとともに、コンデンサ素子8を空洞部7に内蔵した際にコンデンサ素子8と空洞7内部に固定させる接着剤としての役割や絶縁層3同士を積層する際の接着剤の役目を果たす。
【0033】
被覆層2は、例えばポリフェニレンエーテル樹脂やその誘導体、または、これらのポリマーアロイ等のポリフェニレンエーテル系有機物を30〜90体積%含有しており、とりわけ熱サイクル信頼性や配線導体4を接着する際の位置精度の観点からは、アリル変性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0034】
なお、ポリフェニレンエーテル系有機物等の熱硬化性樹脂の含有量が30体積%未満であると、後述する無機絶縁粉末との混練性が低下する傾向があり、また、90体積%を超えると、液晶ポリマー層1表面に被覆層2を形成する際に、被覆層2の厚みバラツキが大きくなる傾向がある。従って、ポリフェニレンエーテル系有機物等の熱硬化性樹脂の含有量は、30〜90体積%の範囲が好ましい。
【0035】
また、被覆層2は、液晶ポリマー層1との密着性や配線導体4・後述する貫通導体5との密着性を良好にするという観点からは、重合反応可能な官能基を2個以上有する多官能性モノマーあるいは多官能性重合体等の添加剤を含有することが好ましく、例えば、トリアリルイソシアヌレートやトリアリルシアヌレートおよびこれらの重合体等を含有することが好ましい。
【0036】
さらに、被覆層2は、その熱膨張係数を調整したり機械的強度を向上したりするための酸化アルミニウムや酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の粒径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末が10〜70体積%を含有している。
【0037】
なお、このような無機絶縁粉末は、その粒径が0.1μm未満では、この無機粉末をペースト化する際の混錬工程において、無機粉末同士で凝集粒となってしまい、その凝集粒部分が被覆層2となった後の絶縁信頼性を低下させる傾向にあり、2μmを超えると、被覆層2表面の平坦性が低下し、被着させる配線導体4との接着性低下し、結果として、配線導体4の位置ずれが大きくなる傾向にある。従って、被覆層2に含有された無機絶縁粉末の粒径は、0.1〜2μmの範囲が好ましい。また、特に絶縁層3を積層・加圧して電子素子内蔵多層配線基板9を形成する際に、被覆層2の流動性を抑制し、貫通導体5の位置ずれや被覆層2の厚みばらつきを防止するという観点からは、被覆層2は10体積%以上の無機絶縁粉末を含有することが好ましい。さらに、液晶ポリマー層1との接着界面および配線導体4との接着界面での半田リフロー時の剥離を防止するという観点からは、無機絶縁粉末の含有量を70体積%以下とすることが好ましい。
【0038】
なお、被覆層2内部において、無機絶縁粉末の含有量は、液晶ポリマー層1側の領域で40〜70体積%であることが、液晶ポリマー層1と反対側の領域では10〜30体積%であることが好ましい。
被覆層2内部において、液晶ポリマー層1側の無機絶縁粉末の含有量が40体積%未満であると、液層ポリマー層1の熱膨張係数と被覆層2の液晶ポリマー層1側の熱膨張係数とが大きく異なってしまい、電子部品を搭載する際の熱や電子部品が作動時に発生する熱が印加されると両者間で剥離して絶縁不良が発生し易く成る傾向があり、70体積%を超えると、樹脂が少なくなって両者間の密着性が低下してしまう傾向がある。
【0039】
また、被覆層2内部において、液晶ポリマー層1と反対側の無機絶縁粉末の含有量が10体積%未満であると、絶縁層3同士を加熱・加圧により接着して配線基板を製作する際に、絶縁層3表面の被覆層2が流動化して絶縁層3の表面や内部に形成される配線導体4や貫通導体5に位置ずれが発生する危険性があり、30体積%を超えると、被覆層2の熱硬化性樹脂の量が減少して、被覆層2表面に形成される配線導体4とのアンカー効果が不十分なものとなり、配線導体4との密着性が低下してしまう傾向がある。従って、被覆層2内部において、液晶ポリマー層1側の領域の無機絶縁粉末の含有量は40〜70体積%であることが、液晶ポリマー層1と反対側では10〜30体積%であることが好ましい。
【0040】
なお、無機絶縁粉末の形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは、略球状が好ましい。また、被覆層2は、弾性率を調整するためのゴム成分や熱安定性を改善するための酸化防止剤、耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、あるいは、無機絶縁粉末との親和性を高めこれらの接合性向上と機械的強度を高めるためのシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。
【0041】
また、本発明の電子内蔵多層配線基板9においては、被覆層2は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側にかけて減少するように形成されていることが重要である。
【0042】
本発明の電子内蔵多層配線基板9においては、被覆層2は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側にかけて減少するように形成されていることから、被覆層2の液晶ポリマー層1側の熱膨張係数が液晶ポリマー層1の熱膨張係数と近似し、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、液晶ポリマー層1と被覆層2との間に熱膨張係数の相異に起因する大きな応力が発生して両者間で剥離することはなく、配線導体4や貫通導体5に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0043】
また、被覆層2の液晶ポリマー層1の反対側では無機絶縁物粉末の量が少なく熱硬化性樹脂の量が多いので、コンデンサ素子8や隣接する絶縁層2との密着性が良好となり、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、これらの間で剥離して配線導体4や貫通導体5が断線することはなく、電気的接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板9とすることができる。
【0044】
なおここで、被覆層2を無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側かけて減少したものとするには、次に述べるような方法が採用される。
例えば、従来周知のドクターブレード法等のシート成形法を採用して被覆層2を形成する際に、無機絶縁粉末を含有する熱硬化性樹脂のペーストとして、粘度をせん断速度1000s−1において1000〜3000Pa・sとしたもの用い、このペーストを用いて液晶ポリマー層1の上面に被覆層2となる未硬化のシートを形成後、この未硬化のシート中で無機絶縁粉末を自然に沈降させながら、このシートを温度が30〜50℃、時間が15〜60分の条件で1次乾燥後、温度が60〜100℃、時間が15〜60分の条件で2次乾燥を行なうことにより、シート成形時に液晶ポリマー層1側に位置する表面から反対側の表面にかけて無機絶縁粉末の含有量が減少した被覆層2を形成することができる。さらに、液晶ポリマー層1の他方の面の被覆層2も同様な方法により形成される。
【0045】
なお、被覆層2内部における無機絶縁粉末の含有量の分布状態は、無機絶縁粉末を含有する熱硬化性樹脂のペーストの粘度や乾燥温度・乾燥時間を調整することにより所望のものとすることができる。
【0046】
また、被覆層2における無機絶縁粉末の含有量は、被覆層2に熱が繰り返し印加されたり、被覆層2が高温高湿環境下に曝されたりしても、被覆層2の内部にクラックが発生することなく、さらに、被覆層2と液晶ポリマー層1間や被覆層2と配線導体4間で剥離することのないものにするという観点からは、被覆層2に垂直な方向において、液晶ポリマー層1側から反対側にかけて連続的に減少することが好ましい。
【0047】
この無機絶縁粉末の含有量は定量可能なものであり、絶縁層3をミクロトーム等で切断して断面を面出し、この断面を電子顕微鏡や原子間力顕微鏡(AFM)により観察して無機絶縁粉末の大きさおよび単位面積当たりの分布状態を調べることにより、無機絶縁粉末の含有量が定量される。なお、被覆層2における無機絶縁粉末の含有量は、たとえば一辺の長さが5μmである正方格子を用いて、この格子内に観察される無機絶縁粉末の個数および大きさを調べ、これを10μm3当たりへ換算することによりもとめることができる。なお、被覆層2において上下面と垂直な方向に、少なくとも異なる3面で無機絶縁粉末の含有量を測定することにより無機絶縁粉末の含有量を定量化することができる。
【0048】
また、被覆層2は液晶ポリマー層1側に位置する表面に、無機絶縁粉末がこの表面から部分的に突出することによって形成され、液晶ポリマー層1に嵌入する突出部を有することが好ましい。
【0049】
次に、絶縁層3の表面に形成された配線導体4は、銅・金・銀・アルミニウム等から選ばれる1種または2種以上の合金から成り、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士が貫通導体5を介して電気的に接続されることにより立体的な高密度配線が可能となっている。
【0050】
なお、本実施例では、配線導体4の形成を転写法によって行なっており、このような配線導体4は、次に述べる方法により形成される。まず、離型シートの表面にめっき法などによって製作され、銅・金・銀・アルミニウム等から選ばれる1種または2種以上の合金からなる厚さ1〜35μmの電解金属箔を接着し、その表面に所望の配線パターンの鏡像パターンとなるようにレジスト層を形成した後、エッチング・レジスト除去によって離型シート上に所定の配線パターンの鏡像の配線導体4が形成された転写シートを準備する。次に、表面に配線導体4が形成された転写シートを絶縁層3用の前駆体シートの表面および/または裏面へ重ね合わせ、しかる後、圧力が0.5〜10MPa、温度が60〜150℃の条件で加圧加熱した後、離型シートを剥がすことにより、配線導体4を前駆体シート上に転写する。そして、前駆体シートを複数枚積層後に熱硬化させる際の加熱・加圧により絶縁層3の表面に被着される。なお、上下の最外層に位置する配線導体4の一部は外部電気回路と接続される接続パッド6とされている。
【0051】
また、貫通導体5は、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士および配線導体4とコンデンサ素子8の引き出し電極部10とを電気的に接続するための接続導体として機能し、絶縁層3用の前駆体シートに貫通導体5形成用の貫通孔をレーザ加工により穿孔するとともに、その貫通孔内に銅・銀・金・半田等の金属粉末とエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂・液晶ポリマー樹脂等の有機樹脂材料とにトルエン・酢酸ブチル・メチルエチルケトン・メタノール・メチルセロソルブアセテート・イソプロピルアルコール・メチルイソブチルケトン・ジメチルホルムアミド等の溶媒を添加混合して成る貫通導体5用の導電性ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等を採用して充填し、それを前駆体シートとともに熱硬化させることにより形成される。
【0052】
さらに、絶縁層3の一部には空洞部7が形成されており、この空洞部7の内部には前述したコンデンサ素子8がその引き出し電極部10と配線導体4とが空洞部7の直上および直下の絶縁層3に設けた貫通導体5を介して電気的に接続されるようにして収納されている。
【0053】
このような空洞部7は、絶縁層3用の前駆体シートの一部に、例えばレーザ加工により貫通穴を形成しておくことにより形成される。そして、そのような貫通穴内にコンデンサ素子8を挿入するとともに、コンデンサ素子8の引き出し電極部10に対応する位置に貫通導体5用の導電性ペーストが充填された他の絶縁層3用の前駆体シートをその上下に積層し、温度が150〜300℃、圧力が0.5〜10MPaの条件で30分〜24時間ホットプレスして前駆体シートおよび導電性ペーストを熱硬化させることによりコンデンサ素子8が空洞部7内に収納されるとともにコンデンサ素子8の引き出し電極部10とその上下の絶縁層3に設けた貫通導体5とが電気的に接続される。
【0054】
なお、空洞部7の縦・横の長さは、コンデンサ素子8の縦または横の長さをLμmとした場合、L+3〜L+30μmであり、貫通導体5とコンデンサ素子8との接続における位置精度の観点からはL+30μm以下が好ましく、コンデンサ素子8を空洞部7に挿入する際にコンデンサ素子8を挿入し易くするという観点からはL+3μm以上が好ましい。
【0055】
かくして、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9によれば、上記構成の電子素子内蔵多層配線基板9の最外層に位置する配線導体4の一部から成る接続パッド6に半田等の導体バンプ(図示せず)を介して半導体素子等の電子部品(図示せず)を電気的に接続することにより、内蔵する電子素子8と貫通導体5や配線導体4との接続信頼性に優れた混成集積回路とすることができる。
【0056】
なお、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例では4層の絶縁層3を積層することによって電子素子内蔵多層配線基板9を製作したが、3層や5層以上の絶縁層3を積層して電子内蔵多層配線基板9を製作してもよい。また、電子素子8を埋設するための空洞部7となる貫通穴7が形成された絶縁層3を1層としたが、2層以上としてもよい。さらに本実施例では、電子素子がコンデンサ素子の場合について説明したが、電子素子が抵抗器やコイル等の電子素子であってもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板によれば、少なくとも電子素子の直上および直下に位置する絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有していることから、熱膨張係数の小さい液晶ポリマー層が熱膨張係数の大きい被覆層を拘束して絶縁層の熱膨張係数を電子素子の熱膨張係数と近似させることができるので、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、絶縁層と電子素子の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはないので、両者の界面にクラックが発生したり両者間で剥離することはなく、その結果、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0058】
また、被覆層は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることから、被覆層の液晶ポリマー層側の熱膨張係数が液晶ポリマー層の熱膨張係数と近似し、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、液晶ポリマー層と被覆層との間に熱膨張係数の相異に起因する大きな応力が発生して両者間で剥離することはなく、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0059】
さらに、被覆層の液晶ポリマー層の反対側では無機絶縁物粉末の量が少なく熱硬化性樹脂の量が多いので、電子素子や隣接する絶縁層との密着性が良好となり、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、これらの間で剥離して配線導体や貫通導体が断線することはなく、電気的接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子素子内蔵多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子素子内蔵多層配線基板に内蔵される電子素子の実施の形態の一例を示す拡大断面図である。
【図3】図1の絶縁層の拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・液晶ポリマー層
2・・・・・・・・・被覆層
3・・・・・・・・・絶縁層
4・・・・・・・・・配線導体
5・・・・・・・・・貫通導体
7・・・・・・・・・空洞部
8・・・・・・・・・電子素子(コンデンサ素子)
9・・・・・・・・・電子素子内蔵多層配線基板(コンデンサ素子内蔵多層配線基板)
10・・・・・・・・・引出し電極部
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種AV機器や家電機器・通信機器・コンピュータやその周辺機器等の電子機器に使用されるコンデンサ素子等の電子素子を内蔵した配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、配線基板は、アルミナ等のセラミック材料から成る絶縁層あるいはガラスエポキシ樹脂等の有機樹脂材料から成る絶縁層の内部および表面に複数の配線導体を形成し、上下に位置する配線導体間を絶縁層に形成した貫通導体を介して電気的に接続して成り、この配線基板の表面に半導体素子やコンデンサ・抵抗素子等の電子素子を搭載取着するとともにこれらの電極を各配線導体に接続することによって電子機器に使用される電子装置が形成されている。
【0003】
しかしながら、近年、電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型・薄型・軽量化が要求されてきており、このような電子機器に搭載される配線基板も小型・高密度化が要求されるようになってきている。
このような要求に対応するために、特開平11−220262号公報には、配線基板の表面に搭載される電子素子の数を減らして配線基板を小型化する目的で、配線基板の内部にチップ状コンデンサ素子等の回路部品を内蔵した回路部品内蔵モジュールが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−220262号公報参照
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−220262号公報に示された回路部品内蔵モジュールは、銅箔上に実装した回路部品をエポキシ樹脂やシアネート樹脂から成る絶縁性基板に埋設することにより製作されており、エポキシ樹脂やシアネート樹脂は熱膨張係数が大きいため、電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が繰り返し印加されると、回路部品を内蔵する絶縁性基板の膨張あるいは収縮により回路部品と配線パターンの実装部に応力が集中してクラックが発生し、断線等の電気的接続不良が発生してしまうという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、接続信頼性に優れた小型で軽量な電子素子内蔵多層配線基板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板は、有機材料から成る複数の絶縁層を積層するとともにこれら絶縁層の表面に配線導体を形成し、前記絶縁層を挟んで上下に位置する前記配線導体間を前記絶縁層に形成された貫通導体を介して電気的に接続して成り、前記絶縁層の少なくとも一層に設けられた空洞部の内部に、前記配線導体または前記貫通導体と電気的に接続される引出し電極部を有する電子素子を内蔵した電子素子内蔵多層配線基板であって、少なくとも前記電子素子の直上および直下に位置する前記絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有しており、この被覆層は、前記無機絶縁粉末の含有量が前記液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板によれば、少なくとも電子素子の直上および直下に位置する絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有していることから、熱膨張係数の小さい液晶ポリマー層が熱膨張係数の大きい被覆層を拘束して絶縁層の熱膨張係数を電子素子の熱膨張係数と近似させることができるので、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、絶縁層と電子素子との接合面に両者の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはないので、両者の接合面にクラックが発生したり両者間で剥離することはなく、その結果、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することがない、接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板とすることができる。
【0009】
また、被覆層は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることから、被覆層の液晶ポリマー層側の熱膨張係数が液晶ポリマー層の熱膨張係数と近似し、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、液晶ポリマー層と被覆層との間に熱膨張係数の相異に起因する大きな応力が発生して両者間で剥離することはなく、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0010】
さらに、被覆層の液晶ポリマー層の反対側では無機絶縁物粉末の量が少なく熱硬化性樹脂の量が多いので、電子素子や隣接する絶縁層との密着性が良好となり、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、これらの間で剥離して配線導体や貫通導体が断線することはなく、電気的接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の電子素子内蔵多層配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の、電子素子内蔵多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は図1に示す電子素子の拡大断面図である。また、図3は図1に示す絶縁層3の部分拡大断面図である。
【0012】
これらの図において、1は液晶ポリマー層、2は被覆層であり、主にこれらで絶縁層3が形成されており、また、4は配線導体、5は貫通導体、8はコンデンサ素子等の電子素子であり、主に絶縁層3と、配線導体4と、貫通導体5と、電子素子8とで本発明の電子素子内蔵多層配線基板9が構成されている。
なお、本実施例では、絶縁層3を4層積層して成るとともに、1個の電子素子8を埋設して成る電子素子内蔵多層配線基板9について説明する。
【0013】
まず、電子素子内蔵多層配線基板9に内蔵される電子素子8について説明する。なお、本実施例では、電子素子8がコンデンサ素子である場合を例にとって説明する。
コンデンサ素子8は、縦・横・高さがそれぞれ1〜5mmの直方体であり、図2に断面図で示すように、電極層11とセラミック誘電体層12とを交互に複数層積層することにより形成されている。
【0014】
このようなセラミック誘電体層12の材料としては、種々の誘電体セラミック材料を用いることができ、例えば、BaTiO3やLaTiO3・CaTiO3・SrTiO3等のセラミック組成物、あるいは、BaTiO3の構成元素であるBaをCaで、TiをZrやSnで部分的に置換した固溶体等のチタン酸バリウム系材料や、鉛系ペロブスカイト型構造化合物等が挙げられる。
また、電極層11を形成する材料としては、例えばPdやAg・Pt・Ni・Cu・Pb等の金属やそれらの合金が用いられる。
【0015】
さらに、コンデンサ素子8は、多数の電極層11に電気的に接続した複数の引き出し電極部10を有しており、これらはコンデンサ素子8の電極層11と電子素子内蔵多層配線基板9の配線導体4や貫通導体5とを電気的に接続する作用を成す。
【0016】
このような引き出し電極部10は、コンデンサ素子8の端面に半田ペーストを印刷することによって、あるいは電極層11とセラミック誘電体層12との積層体に貫通孔を形成し、これに導体を埋め込むことによって形成される。なお、微細化・工程の容易性・インダクタンス低減という観点からは、引き出し電極部10は、貫通孔を形成後、これに導体を埋め込むことによって形成されることが好ましい。
【0017】
このようなコンデンサ素子8に形成される貫通孔は、電極層11とセラミック誘電体層12とから成る積層体に、パンチングによる打ち抜き加工やUV−YAGレーザやエキシマレーザ・炭酸ガスレーザ等によるレーザ穿設加工等の方法により形成され、特に微細な貫通孔とするためには、レーザによる穿設加工により形成されることが好ましい。また、貫通孔の径は数10μm〜数mmであり、コンデンサ素子8の大きさにあわせて適宜決めればよい。
なお、貫通孔は、内部に充填される導体と電極層11との電気的接続を良好にするために、打ち抜き加工やレーザ穿設加工後に超音波洗浄処理やデスミア処理等を施すことが好ましい。
【0018】
また、引き出し電極部10を形成する導体としては、PdやAg・Pt・Ni・Cu・Pb等の金属やそれらの合金が用いられ、特に電極層11との電気的接続を良好にするという観点からは、電極層11と同じ材質のものを含有することが好ましい。
【0019】
このような引き出し電極部10となる導体は、有機溶剤に有機バインダ樹脂を溶解させた有機ビヒクル中に金属粉末を分散させて成る導電ペーストを、貫通孔にスクリーン印刷法等の方法で充填することにより形成される。なお、ビヒクル中には、これらの他、各種分散剤・活性剤・可塑剤などが必要に応じて添加されていても良い。
【0020】
また、導電ペーストに用いられる有機バインダ樹脂は、金属粉末を均質に分散させるとともに貫通孔への埋め込みに適正な粘度とレオロジーを与える役割をもっており、例えば、アクリル樹脂やフェノール樹脂・アルキッド樹脂・ロジンエステル・エチルセルロース・メチルセルロース・PVA(ポリビニルアルコール)・ポリビニルブチラート等が挙げられる。特に、金属粉末の分散性を良くするという観点からは、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
さらに、導電ペーストに用いられる有機溶剤は、有機バインダ樹脂を溶解して金属粉末粒子を分散させ、このような混合系全体をペースト状にする役割をなし、例えば、α−テルピネオールやベンジルアルコール等のアルコール系や炭化水素系・エーテル系・BCA(ブチルカルビトールアセテート)等のエステル系・ナフサ等が用いられ、特に、金属粉末の分散性を良くするという観点からは、α−テルピネオール等のアルコール系溶剤を用いることが好ましい。
【0022】
さらにまた、導電ペーストは、埋め込み・焼成後のコンデンサ磁器への接着強度を上げるために、ガラスフリットやセラミックフリットを加えたペーストとすることができる。この場合のガラスフリットやセラミックフリットとしては特に限定されるものではなく、例えば、ホウ珪酸系やホウ珪酸亜鉛系のガラスやチタニア・チタン酸バリウムなどのチタン系酸化物などを適宜用いることができる。
【0023】
このようなコンデンサ素子8は、次に述べる方法により製作される。
まず、周知のシート成形法により製作したセラミック誘電体層12と成る、例えば複数のBaTiO3誘電体セラミックグリーンシート表面に、周知のペースト作成法により作成したNi金属ペーストをスクリーン印刷法により所定形状と成るように印刷して電極層11と成る未焼成電極層を形成し、続いてこれらを所定順序に積層するとともに圧着して積層体を得る。そして、これを所定の大きさに切断するとともに800〜1600℃の温度で焼成することにより製作される。
【0024】
また、コンデンサ素子8の表面は、絶縁層3との接着性を向上させるという観点からは、セラミック誘電体層12の表面の算術平均粗さRの最大値Rmaxを0.2μmより大きく、望ましくは0.5μm以上、最適には1.0μm以上とすることが好ましい。なお、セラミック誘電体層12の表面粗さRの最大値Rmaxが5μmを超えると、コンデンサ素子8に割れや欠けが発生し易くなる傾向があるため、表面粗さRの最大値Rmaxを5μm以下としておくことが好ましい。
【0025】
このようなコンデンサ素子8表面のセラミック誘電体層12の表面は、焼成前のグリーンシート積層体の段階で、積層体の表面をブラシ研磨による粗化処理やあらかじめ凹凸加工した平板を押し付けるなどの方法で物理的に凹凸をつけた後、あるいはレーザによりグリーンシート積層体表面に非貫通孔を開けることによりディンプル加工を施した後、焼成することにより所望の表面粗さとすることができる。また、セラミック誘電体層12に用いられるセラミック材料よりも焼成時の耐熱性が高く平均粒子径が10μm以上のセラミック粉末、あるいはセラミック誘電体層12に用いられるセラミック材料の一部と反応性を有し、平均径が10μm以上のセラミック粉末を一部が埋入するようにグリーンシート積層体表面に付着させて焼成することによって所望の表面粗さとしても良い。さらに、グリーンシート積層体の焼成後のコンデンサ素子8の表面をサンドブラスト等の物理的手法あるいはエッチング等の化学的手法により粗化しても良い。
【0026】
次に、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9は、図1に断面図で示すように、複数の絶縁層3を積層するとともにこれら絶縁層3の表面に銅箔から成る配線導体4が形成されている。また、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁層3に形成された導電性樹脂から成る貫通導体5を介して電気的に接続して成り、上下の最外層に位置する配線導体4の一部が外部電気回路と接続される接続パッド6とされている。さらに、絶縁層3の少なくとも一層に設けられた空洞部7の内部に前述のコンデンサ素子8を内蔵するとともに、そのコンデンサ素子8の上下両主面において引き出し電極部10が貫通導体5を介して配線導体4やその一部から成る接続パッド6に電気的に接続されている。
【0027】
そして、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9においては、少なくともコンデンサ素子8の直上および直下に位置する絶縁層3は、図3に断面図で示すように、液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有する構成となっている。また、このことが重要である。なお、本実施例においては、4層の絶縁層3全てが液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有する構成とした場合の例を示す。
【0028】
なお、ここで液晶ポリマーとは、溶融時に液晶状態あるいは光学的に複屈折する性質を有するポリマーを指し、一般に溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーや溶融時に液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマー、あるいは、熱変形温度で分類される1型・2型・3型すべての液晶ポリマーを含むものであり、本発明に用いる液晶ポリマーとしては、温度サイクル信頼性・半田耐熱性・加工性の観点からは200〜400℃の温度、特に250〜350℃の温度に融点を有するものが好ましい。また、ポリフェニレンエーテル系有機物とは、ポリフェニレンエーテル樹脂やポリフェニレンエーテルに種々の官能基が結合した樹脂、あるいはこれらの誘導体・重合体を意味するものである。
【0029】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板9によれば、少なくともコンデンサ素子8の直上および直下に位置する絶縁層3は、液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層2を有していることから、熱膨張係数の小さい液晶ポリマー層1が熱膨張係数の大きい被覆層2を拘束して絶縁層3の熱膨張係数をコンデンサ素子8の熱膨張係数と近似させることができるので、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、絶縁層3とコンデンサ素子8の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはないので、両者の界面にクラックが発生したり両者間で剥離することはなく、その結果、配線導体4や貫通導体5に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0030】
このような液晶ポリマー層1は、絶縁層3に機械的な強度を付与するとともに絶縁層3の熱膨張係数をコンデンサ素子8の熱膨張係数に近似させる機能を有し、層としての物性を損なわない範囲内で、熱安定性を改善するための酸化防止剤や耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル・高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数を調整するため、および/または機械的強度を向上するための酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材を含有してもよい。
【0031】
なお、上記の充填材等の粒子形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは略球状が好ましい。また、粒子径は、通常0.1〜15μm程度であり、液晶ポリマー層1の厚みよりも小さい。
【0032】
また、被覆層2は、後述する配線導体4を被着形成する際の接着剤の機能を有するとともに、コンデンサ素子8を空洞部7に内蔵した際にコンデンサ素子8と空洞7内部に固定させる接着剤としての役割や絶縁層3同士を積層する際の接着剤の役目を果たす。
【0033】
被覆層2は、例えばポリフェニレンエーテル樹脂やその誘導体、または、これらのポリマーアロイ等のポリフェニレンエーテル系有機物を30〜90体積%含有しており、とりわけ熱サイクル信頼性や配線導体4を接着する際の位置精度の観点からは、アリル変性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0034】
なお、ポリフェニレンエーテル系有機物等の熱硬化性樹脂の含有量が30体積%未満であると、後述する無機絶縁粉末との混練性が低下する傾向があり、また、90体積%を超えると、液晶ポリマー層1表面に被覆層2を形成する際に、被覆層2の厚みバラツキが大きくなる傾向がある。従って、ポリフェニレンエーテル系有機物等の熱硬化性樹脂の含有量は、30〜90体積%の範囲が好ましい。
【0035】
また、被覆層2は、液晶ポリマー層1との密着性や配線導体4・後述する貫通導体5との密着性を良好にするという観点からは、重合反応可能な官能基を2個以上有する多官能性モノマーあるいは多官能性重合体等の添加剤を含有することが好ましく、例えば、トリアリルイソシアヌレートやトリアリルシアヌレートおよびこれらの重合体等を含有することが好ましい。
【0036】
さらに、被覆層2は、その熱膨張係数を調整したり機械的強度を向上したりするための酸化アルミニウムや酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の粒径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末が10〜70体積%を含有している。
【0037】
なお、このような無機絶縁粉末は、その粒径が0.1μm未満では、この無機粉末をペースト化する際の混錬工程において、無機粉末同士で凝集粒となってしまい、その凝集粒部分が被覆層2となった後の絶縁信頼性を低下させる傾向にあり、2μmを超えると、被覆層2表面の平坦性が低下し、被着させる配線導体4との接着性低下し、結果として、配線導体4の位置ずれが大きくなる傾向にある。従って、被覆層2に含有された無機絶縁粉末の粒径は、0.1〜2μmの範囲が好ましい。また、特に絶縁層3を積層・加圧して電子素子内蔵多層配線基板9を形成する際に、被覆層2の流動性を抑制し、貫通導体5の位置ずれや被覆層2の厚みばらつきを防止するという観点からは、被覆層2は10体積%以上の無機絶縁粉末を含有することが好ましい。さらに、液晶ポリマー層1との接着界面および配線導体4との接着界面での半田リフロー時の剥離を防止するという観点からは、無機絶縁粉末の含有量を70体積%以下とすることが好ましい。
【0038】
なお、被覆層2内部において、無機絶縁粉末の含有量は、液晶ポリマー層1側の領域で40〜70体積%であることが、液晶ポリマー層1と反対側の領域では10〜30体積%であることが好ましい。
被覆層2内部において、液晶ポリマー層1側の無機絶縁粉末の含有量が40体積%未満であると、液層ポリマー層1の熱膨張係数と被覆層2の液晶ポリマー層1側の熱膨張係数とが大きく異なってしまい、電子部品を搭載する際の熱や電子部品が作動時に発生する熱が印加されると両者間で剥離して絶縁不良が発生し易く成る傾向があり、70体積%を超えると、樹脂が少なくなって両者間の密着性が低下してしまう傾向がある。
【0039】
また、被覆層2内部において、液晶ポリマー層1と反対側の無機絶縁粉末の含有量が10体積%未満であると、絶縁層3同士を加熱・加圧により接着して配線基板を製作する際に、絶縁層3表面の被覆層2が流動化して絶縁層3の表面や内部に形成される配線導体4や貫通導体5に位置ずれが発生する危険性があり、30体積%を超えると、被覆層2の熱硬化性樹脂の量が減少して、被覆層2表面に形成される配線導体4とのアンカー効果が不十分なものとなり、配線導体4との密着性が低下してしまう傾向がある。従って、被覆層2内部において、液晶ポリマー層1側の領域の無機絶縁粉末の含有量は40〜70体積%であることが、液晶ポリマー層1と反対側では10〜30体積%であることが好ましい。
【0040】
なお、無機絶縁粉末の形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは、略球状が好ましい。また、被覆層2は、弾性率を調整するためのゴム成分や熱安定性を改善するための酸化防止剤、耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、あるいは、無機絶縁粉末との親和性を高めこれらの接合性向上と機械的強度を高めるためのシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。
【0041】
また、本発明の電子内蔵多層配線基板9においては、被覆層2は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側にかけて減少するように形成されていることが重要である。
【0042】
本発明の電子内蔵多層配線基板9においては、被覆層2は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側にかけて減少するように形成されていることから、被覆層2の液晶ポリマー層1側の熱膨張係数が液晶ポリマー層1の熱膨張係数と近似し、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、液晶ポリマー層1と被覆層2との間に熱膨張係数の相異に起因する大きな応力が発生して両者間で剥離することはなく、配線導体4や貫通導体5に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0043】
また、被覆層2の液晶ポリマー層1の反対側では無機絶縁物粉末の量が少なく熱硬化性樹脂の量が多いので、コンデンサ素子8や隣接する絶縁層2との密着性が良好となり、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、これらの間で剥離して配線導体4や貫通導体5が断線することはなく、電気的接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板9とすることができる。
【0044】
なおここで、被覆層2を無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層1側から反対側かけて減少したものとするには、次に述べるような方法が採用される。
例えば、従来周知のドクターブレード法等のシート成形法を採用して被覆層2を形成する際に、無機絶縁粉末を含有する熱硬化性樹脂のペーストとして、粘度をせん断速度1000s−1において1000〜3000Pa・sとしたもの用い、このペーストを用いて液晶ポリマー層1の上面に被覆層2となる未硬化のシートを形成後、この未硬化のシート中で無機絶縁粉末を自然に沈降させながら、このシートを温度が30〜50℃、時間が15〜60分の条件で1次乾燥後、温度が60〜100℃、時間が15〜60分の条件で2次乾燥を行なうことにより、シート成形時に液晶ポリマー層1側に位置する表面から反対側の表面にかけて無機絶縁粉末の含有量が減少した被覆層2を形成することができる。さらに、液晶ポリマー層1の他方の面の被覆層2も同様な方法により形成される。
【0045】
なお、被覆層2内部における無機絶縁粉末の含有量の分布状態は、無機絶縁粉末を含有する熱硬化性樹脂のペーストの粘度や乾燥温度・乾燥時間を調整することにより所望のものとすることができる。
【0046】
また、被覆層2における無機絶縁粉末の含有量は、被覆層2に熱が繰り返し印加されたり、被覆層2が高温高湿環境下に曝されたりしても、被覆層2の内部にクラックが発生することなく、さらに、被覆層2と液晶ポリマー層1間や被覆層2と配線導体4間で剥離することのないものにするという観点からは、被覆層2に垂直な方向において、液晶ポリマー層1側から反対側にかけて連続的に減少することが好ましい。
【0047】
この無機絶縁粉末の含有量は定量可能なものであり、絶縁層3をミクロトーム等で切断して断面を面出し、この断面を電子顕微鏡や原子間力顕微鏡(AFM)により観察して無機絶縁粉末の大きさおよび単位面積当たりの分布状態を調べることにより、無機絶縁粉末の含有量が定量される。なお、被覆層2における無機絶縁粉末の含有量は、たとえば一辺の長さが5μmである正方格子を用いて、この格子内に観察される無機絶縁粉末の個数および大きさを調べ、これを10μm3当たりへ換算することによりもとめることができる。なお、被覆層2において上下面と垂直な方向に、少なくとも異なる3面で無機絶縁粉末の含有量を測定することにより無機絶縁粉末の含有量を定量化することができる。
【0048】
また、被覆層2は液晶ポリマー層1側に位置する表面に、無機絶縁粉末がこの表面から部分的に突出することによって形成され、液晶ポリマー層1に嵌入する突出部を有することが好ましい。
【0049】
次に、絶縁層3の表面に形成された配線導体4は、銅・金・銀・アルミニウム等から選ばれる1種または2種以上の合金から成り、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士が貫通導体5を介して電気的に接続されることにより立体的な高密度配線が可能となっている。
【0050】
なお、本実施例では、配線導体4の形成を転写法によって行なっており、このような配線導体4は、次に述べる方法により形成される。まず、離型シートの表面にめっき法などによって製作され、銅・金・銀・アルミニウム等から選ばれる1種または2種以上の合金からなる厚さ1〜35μmの電解金属箔を接着し、その表面に所望の配線パターンの鏡像パターンとなるようにレジスト層を形成した後、エッチング・レジスト除去によって離型シート上に所定の配線パターンの鏡像の配線導体4が形成された転写シートを準備する。次に、表面に配線導体4が形成された転写シートを絶縁層3用の前駆体シートの表面および/または裏面へ重ね合わせ、しかる後、圧力が0.5〜10MPa、温度が60〜150℃の条件で加圧加熱した後、離型シートを剥がすことにより、配線導体4を前駆体シート上に転写する。そして、前駆体シートを複数枚積層後に熱硬化させる際の加熱・加圧により絶縁層3の表面に被着される。なお、上下の最外層に位置する配線導体4の一部は外部電気回路と接続される接続パッド6とされている。
【0051】
また、貫通導体5は、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士および配線導体4とコンデンサ素子8の引き出し電極部10とを電気的に接続するための接続導体として機能し、絶縁層3用の前駆体シートに貫通導体5形成用の貫通孔をレーザ加工により穿孔するとともに、その貫通孔内に銅・銀・金・半田等の金属粉末とエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂・液晶ポリマー樹脂等の有機樹脂材料とにトルエン・酢酸ブチル・メチルエチルケトン・メタノール・メチルセロソルブアセテート・イソプロピルアルコール・メチルイソブチルケトン・ジメチルホルムアミド等の溶媒を添加混合して成る貫通導体5用の導電性ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等を採用して充填し、それを前駆体シートとともに熱硬化させることにより形成される。
【0052】
さらに、絶縁層3の一部には空洞部7が形成されており、この空洞部7の内部には前述したコンデンサ素子8がその引き出し電極部10と配線導体4とが空洞部7の直上および直下の絶縁層3に設けた貫通導体5を介して電気的に接続されるようにして収納されている。
【0053】
このような空洞部7は、絶縁層3用の前駆体シートの一部に、例えばレーザ加工により貫通穴を形成しておくことにより形成される。そして、そのような貫通穴内にコンデンサ素子8を挿入するとともに、コンデンサ素子8の引き出し電極部10に対応する位置に貫通導体5用の導電性ペーストが充填された他の絶縁層3用の前駆体シートをその上下に積層し、温度が150〜300℃、圧力が0.5〜10MPaの条件で30分〜24時間ホットプレスして前駆体シートおよび導電性ペーストを熱硬化させることによりコンデンサ素子8が空洞部7内に収納されるとともにコンデンサ素子8の引き出し電極部10とその上下の絶縁層3に設けた貫通導体5とが電気的に接続される。
【0054】
なお、空洞部7の縦・横の長さは、コンデンサ素子8の縦または横の長さをLμmとした場合、L+3〜L+30μmであり、貫通導体5とコンデンサ素子8との接続における位置精度の観点からはL+30μm以下が好ましく、コンデンサ素子8を空洞部7に挿入する際にコンデンサ素子8を挿入し易くするという観点からはL+3μm以上が好ましい。
【0055】
かくして、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9によれば、上記構成の電子素子内蔵多層配線基板9の最外層に位置する配線導体4の一部から成る接続パッド6に半田等の導体バンプ(図示せず)を介して半導体素子等の電子部品(図示せず)を電気的に接続することにより、内蔵する電子素子8と貫通導体5や配線導体4との接続信頼性に優れた混成集積回路とすることができる。
【0056】
なお、本発明の電子素子内蔵多層配線基板9は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例では4層の絶縁層3を積層することによって電子素子内蔵多層配線基板9を製作したが、3層や5層以上の絶縁層3を積層して電子内蔵多層配線基板9を製作してもよい。また、電子素子8を埋設するための空洞部7となる貫通穴7が形成された絶縁層3を1層としたが、2層以上としてもよい。さらに本実施例では、電子素子がコンデンサ素子の場合について説明したが、電子素子が抵抗器やコイル等の電子素子であってもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明の電子素子内蔵多層配線基板によれば、少なくとも電子素子の直上および直下に位置する絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有していることから、熱膨張係数の小さい液晶ポリマー層が熱膨張係数の大きい被覆層を拘束して絶縁層の熱膨張係数を電子素子の熱膨張係数と近似させることができるので、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、絶縁層と電子素子の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはないので、両者の界面にクラックが発生したり両者間で剥離することはなく、その結果、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0058】
また、被覆層は、無機絶縁粉末の含有量が液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることから、被覆層の液晶ポリマー層側の熱膨張係数が液晶ポリマー層の熱膨張係数と近似し、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、液晶ポリマー層と被覆層との間に熱膨張係数の相異に起因する大きな応力が発生して両者間で剥離することはなく、配線導体や貫通導体に断線等の電気的接続不良が発生することはない。
【0059】
さらに、被覆層の液晶ポリマー層の反対側では無機絶縁物粉末の量が少なく熱硬化性樹脂の量が多いので、電子素子や隣接する絶縁層との密着性が良好となり、搭載される電子素子が作動時に発生する熱や外部環境の温度変化等が配線基板に繰り返し印加されたとしても、これらの間で剥離して配線導体や貫通導体が断線することはなく、電気的接続信頼性に優れた電子素子内蔵多層配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子素子内蔵多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子素子内蔵多層配線基板に内蔵される電子素子の実施の形態の一例を示す拡大断面図である。
【図3】図1の絶縁層の拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・液晶ポリマー層
2・・・・・・・・・被覆層
3・・・・・・・・・絶縁層
4・・・・・・・・・配線導体
5・・・・・・・・・貫通導体
7・・・・・・・・・空洞部
8・・・・・・・・・電子素子(コンデンサ素子)
9・・・・・・・・・電子素子内蔵多層配線基板(コンデンサ素子内蔵多層配線基板)
10・・・・・・・・・引出し電極部
Claims (1)
- 有機材料から成る複数の絶縁層を積層するとともにこれら絶縁層の表面に配線導体を形成し、前記絶縁層を挟んで上下に位置する前記配線導体間を前記絶縁層に形成された貫通導体を介して電気的に接続して成り、前記絶縁層の少なくとも一層に設けられた空洞部の内部に、前記配線導体または前記貫通導体と電気的に接続される引出し電極部を有する電子素子を内蔵した電子素子内蔵多層配線基板であって、少なくとも前記電子素子の直上および直下に位置する前記絶縁層は、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂により無機絶縁粉末を結合して成る被覆層を有しており、該被覆層は、前記無機絶縁粉末の含有量が前記液晶ポリマー層側から反対側にかけて減少するように形成されていることを特徴とする電子素子内蔵多層配線基板。
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CN112203415A (zh) * | 2019-07-07 | 2021-01-08 | 深南电路股份有限公司 | 埋入式电路板及其制备方法 |
-
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- 2003-01-28 JP JP2003019490A patent/JP2004235266A/ja active Pending
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