JP2004233534A - 波長変換素子および波長変換装置 - Google Patents

波長変換素子および波長変換装置 Download PDF

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  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

【課題】任意の励起波長数に対応した設計が可能で、かつ、変換効率の低下がなく、さらに、実用的な大きさの非線形材料を用いて容易に構成することが可能な波長変換素子および波長変換装置を提供すること。
【解決手段】波長変換素子に備える非線形光学媒質を、その非線形定数の変調周期が光の進行方向に基本周期Λと略同一でかつ略連続的に変化する変調単位構造をもち、かつ、この変調単位構造が周期Λ(>Λ)で繰り返された周期変調構造を有するように構成し、さらに、位相不整合量Δβが、2π/Λ±2πi/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)、または、2π/Λ±2π(2i+1)/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)、もしくは、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,…,n:m,nは正または負の整数であり、|m|≠|n|)において変換効率を極大ならしめるようにした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長変換素子および波長変換装置に関し、より詳細には、任意の励起波長数に対応した設計が可能で、かつ、変換効率の低下がなく、さらに、実用的な大きさの非線形材料を用いて容易に構成することが可能な波長変換素子および励起波長可変型の波長変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、種々の2次非線形光学効果を利用した波長変換素子およびそれを用いて構成した波長変換装置が知られており、例えば、第2高調波発生装置は入射光をその波長の半分の波長(2倍の周波数)の光(第2高調波)に変換することができ、和周波発生装置は異なる2つの波長の光をこれらの光の周波数の和に相当する周波数の光に変換することができる。
【0003】
また、差周波発生装置は、異なる2つの波長の光をこれらの光の周波数の差に相当する周波数の光に変換することが可能であることに加え、入射光の一方の光強度が他方の光強度に比較して充分大きい場合にはパラメトリック効果により入射光の強度を増幅する光増幅装置として構成したり、このようなパラメトリック効果を利用したパラメトリック共振器を構成して波長可変光源とすることも可能である。
【0004】
以下に、2次非線形光学効果を利用した差周波発生素子を例にして、従来の波長変換素子の動作原理を簡単に説明する。これらの素子では、波長λの信号光を、波長λの励起光で励起された非線形光学媒質に入射させて波長λの変換光へと変換する。これらの3つの波長間では次式で与えられる関係が成立し、λ=λの場合も含まれる。
【0005】
【数5】
Figure 2004233534
【0006】
このような素子に用いられる非線形光学媒質としては種々の材料が研究開発されており、素子構造としては、例えば、非特許文献1で報告されているように、LiNbOなどの2次非線形光学材料をその非線形定数が周期的に変化するように周期変調した、いわゆる「擬似位相整合型構造」が有望視されている。
【0007】
図8は、2次非線形光学効果を利用した従来の波長変換素子(差周波発生素子)を説明するための図で、図8(a)はこの波長変換素子の構成を概念的に説明するための図であり、図8(b)は変換効率の位相不整合量依存性を説明するための図である。2次非線形光学材料中に周期変調構造を形成するためには、この材料の非線形定数の符号を空間的に交互に反転させるか、あるいは、非線形定数の大きな部分と小さな部分とを交互に配置させる方法が考えられる。
【0008】
LiNbOのような強誘電体結晶では、非線形定数(d定数)の正負は自発分極の極性に対応する。従って、図8(a)に示した波長変換素子では、非線形光学媒質であるLiNbO基板81上にプロトン交換法で光導波路82を形成し、LiNbOの自発分極を変調周期Λ14.75μmで周期的に反転させることで非線形定数に変調を加えている。この波長変換素子では、0.78μm帯の励起光85によって1.55μm帯の信号光83を波長変換することができる。
【0009】
この種の素子においては、波長λの信号光83に対するLiNbOの屈折率がn、波長λの変換光(差周波光)84に対する屈折率がn、波長λの励起光85に対する屈折率がn、非線形定数の変調周期をΛとして、位相不整合量Δβは、
【0010】
【数6】
Figure 2004233534
【0011】
で与えられ、変換効率ηはこの位相不整合量Δβを用いて、
【0012】
【数7】
Figure 2004233534
【0013】
で与えられる。ここで、Lは非線形光学媒質の導波方向の長さである。すなわち、この波長変換素子の変換効率ηは、位相不整合量Δβが2π/Λのときに最大値をとる。例えば、信号光83の波長λを固定して考えると、上式(2)で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λとなる「擬似位相整合条件」を満足する励起光85の波長は、非線形光学媒質の屈折率の波長分散に依存し、変調周期Λが与えられれば実質的に一意に定まることとなる。
【0014】
励起光85の波長を、擬似位相整合条件を満足する擬似位相整合波長から変化させると、上式(2)および(3)に従って変換効率ηは減少する。図8(b)は、変換効率ηの位相不整合量Δβ依存性を示す図で、この図では、変換効率ηの最大値が1となるように規格化して示している。この波長変換素子のLiNbOの光導波路82の長さを42mmとすると、変換効率ηがその最大値の半分の値となる位相不整合量Δβの帯域は0.78μm帯の励起波長換算で約0.1nm程度と非常に狭い。
【0015】
上式(1)から明らかなように、信号光83の波長λを任意の波長(λ´)の差周波光に変換するためには複数の異なる波長の励起光を用いる必要があるが、図8(a)に示すような非線形定数が一定周期で変化する従来の変調構造では、励起光の波長に対する許容範囲が狭いために実質的には励起光の波長を変化させることができず、その結果、任意の波長の差周波光へと変換することはできない。
【0016】
また、異なる励起光波長に対応させるためには、例えば、複数種類の変調周期を有する変調構造を順次長手方向に配列する方法も考えられるが、この方法で非線形光学媒質の全長を一定にすると、1つの変調周期の配列に用いることが可能な非線形光学媒質の長さが短くなってしまう。2次非線形効果を用いる波長変換素子の変換効率ηは、一般に非線形光学媒質の長さの2乗に比例するため、例えば4種類の変調周期を配列することとすると、同じ長さの非線形光学媒質を用いた場合に比較して変換効率ηは6.25%にまで低下してしまう。
【0017】
複数の励起光波長に対応可能な波長変換素子を構成するために、非特許文献2では、周期変調構造に位相反転構造を付与する方法が提案されている。
【0018】
図9および図10は、周期変調構造に位相反転構造を付与することで複数の励起光波長に対応可能とした従来の波長変換素子を説明するための図で、図9(a)はこの波長変換素子の構成を概念的に示す斜視図、図9(b)はその一部の拡大図であり、図10はこの波長変換素子における位相変調の様子および変換効率の位相不整合量依存性を説明するための図である。
【0019】
この波長変換素子は、図8で示した波長変換素子と同様に、非線形媒質としてLiNbO基板91にプロトン交換法で光導波路92を形成し、LiNbOの自発分極を基本変調周期Λ14.75μmで周期的に反転させて非線形定数に変調を加えている。すなわち、この波長変換素子では、一定の長周期Λphで一定周期Λ(基本変調周期14.75μm)の分極反転構造の位相を180°反転させて分極反転構造を形成しており、これにより、複数の位相不整合量Δβにおいて変換効率ηがピークをもつようにすることができる。なお、この波長変換素子も、0.78μm帯の波長λの励起光95によって1.55μm帯の波長λの信号光93を波長変換して波長λの差周波光94とすることができる。
【0020】
図10に示した変換効率の位相不整合量依存性において、図10(a)は、位相反転周期Λphを14mm、デューティ比を50%として位相反転させた分極反転構造の非線形光学媒質中での長手方向への位相変化を示す図であり、図10(b)は、この波長変換素子の変換効率を、図8に示した非線形光学媒質と同じ長さではあるが位相反転構造をもたない非線形光学媒質を用いて構成した波長変換素子の変換効率を1として規格化した場合の位相不整合量依存性を示す図である。なお、この波長変換素子において分極反転が施された光導波路の長さは42mmである。
【0021】
図10(b)から分るように、変換効率は、位相不整合量が{(2π/Λ)−(2π/Λph)}と{(2π/Λ)+(2π/Λph)}のときに最大となり、2つの励起波長を用いて波長変換を行うことが可能となる。
【0022】
また、図10(c)および図10(d)に示すように、周期Λphを7mmとし位相反転のデューティ比を26.5%とすることで、位相不整合量が、それぞれ、{(2π/Λ)−(2π/Λph)}、(2π/Λ)、および、{(2π/Λ)+(2π/Λph)}のときに変換効率が最大となり、3つの励起波長を用いて波長変換を行うことが可能となる。
【0023】
さらに、図10(e)および図10(f)に示すように、周期Λphを14mmと倍にしてさらに位相反転を重畳させることで、位相不整合量が、それぞれ{(2π/Λ)−(6π/Λph)}、{(2π/Λ)−(2π/Λph)}、{(2π/Λ)+(2π/Λph)}、および、{(2π/Λ)+(6π/Λph)}のときに変換効率が最大となり、4π/Λphごとに4つのピークが得られるため、4つの励起波長を用いて波長変換を行うことが可能となる。
【0024】
【非特許文献1】
M.H.Chouら, Optics Letters, Vol.23, p.1004 (1998).
【0025】
【非特許文献2】
M.H.Chouら, Optics Letters, Vol.24, p.1157 (1999).
【0026】
【先行出願1】
特願2002−174938号
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の構成の波長変換素子では、以下のような問題があった。
【0028】
第1に、例えば図10(f)に示すような4つのピークが得られるようにした構造の規格化変換効率は、必要な波長以外にも変換効率の副次的なピークが生じることとなる結果、素子の変換効率が17%まで低下してしまうという問題である。
【0029】
第2に、狭い励起光波長間隔で変換効率のピークを得ようとすると必然的に長い周期反転構造が必要となり、通常用いられる3〜4インチ程度のサイズの基板内に位相反転周期を配置する際に制限が生じてしまうという問題がある。
【0030】
図10(a)、(c)、(e)の位相整合曲線のそれぞれのピーク間隔は0.78μm帯の励起波長に換算すると0.8nmとなり、これは、励起波長を400GHz間隔で変化できることを意味している。すなわち、式(1)の関係から、励起光波長を変化させると励起光波長の変化分だけ変換光波長も変化するため、変換光波長を400GHz間隔で変化できることとなる。
【0031】
WDM通信への応用を考えると、200GHz、100GHz等の更に短い間隔でピークをもつ素子も必要と考えられる。例えば図10(f)に示す4つのピークをもたせるようにした構造の規格化変換効率は、Λphの位相反転周期に対して位相不整合が4π/Λphごとにピークをもつため、位相反転周期を長くすることでピーク間隔を短くすることができる。LiNbO光導波路で200GHz間隔や100GHz間隔の励起波長に対応させることを想定すると、4つの励起波長に対応させるために必要な位相反転周期は、各々28mmおよび56mmと極めて長いものとなってしまうのである。
【0032】
第3に、上述したように、位相反転パターンの重畳により1〜4までの励起光波長数に対応する方法は開示されていたものの、それ以外の励起光波長数に対応させる方法は先行出願1を除いて現在まで殆ど知られておらず、任意の励起光波長数に柔軟に対応させることが困難であった。
【0033】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、任意の励起光波長数に対応した設計が可能で、かつ、変換効率の低下がなく、さらに、実用的な大きさの非線形材料を用いて容易に構成することが可能な波長変換素子および励起波長可変型の波長変換装置を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非線形光学媒質を備え、当該非線形光学媒質に次式を満足する3つの波長(λ、λ、λ:但しλ=λの場合を含む)のうちの1つまたは2つの波長の光を入射させ、当該非線形光学媒質内で生じる2次非線形光学効果によって、前記3つの波長のうちの何れかであり、かつ、少なくとも入射光の1つの波長とは異なる波長の出射光に変換する波長変換素子であって、前記非線形光学媒質は、非線形定数の変調周期が光の進行方向に基本周期Λと略同一でかつ略連続的に変化する変調単位構造を有し、かつ、当該変調単位構造が前記基本周期Λよりも長い周期Λで繰り返された周期変調構造を有していることを特徴とする。
【0035】
【数8】
Figure 2004233534
【0036】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の波長変換素子において、前記非線形光学媒質内での波長変換に関わる前記3つの波長(λ、λ、λ)の光に対する前記非線形光学媒質の屈折率を各々n、nおよびnとする場合に、次式で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ±2πi/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)のときに変換効率が極大となるように前記基本周期Λおよび周期Λならびに前記周期変調構造の周期変化曲線が設定されていることを特徴とする。
【0037】
【数9】
Figure 2004233534
【0038】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の波長変換素子において、前記非線形光学媒質内での波長変換に関わる前記3つの波長(λ、λ、λ)の光に対する前記非線形光学媒質の屈折率を各々n、nおよびnとする場合に、次式で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ±2π(2i+1)/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)のときに変換効率が極大となるように前記基本周期Λおよび周期Λならびに前記周期変調構造の周期変化曲線が設定されていることを特徴とする。
【0039】
【数10】
Figure 2004233534
【0040】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の波長変換素子において、前記非線形光学媒質内での波長変換に関わる前記3つの波長(λ、λ、λ)の光に対する前記非線形光学媒質の屈折率を各々n、nおよびnとする場合に、次式で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,…,n:m,nは正または負の整数であり、|m|≠|n|)のときに変換効率が極大となるように前記基本周期Λおよび周期Λならびに前記周期変調構造の周期変化曲線が設定されていることを特徴とする。
【0041】
【数11】
Figure 2004233534
【0042】
さらに、請求項5に記載の発明は、波長変換装置であって、発振波長が可変あるいは複数の発振波長を切替可能な励起光源と、請求項1乃至4の何れかに記載の波長変換素子とを備え、前記波長変換素子が外部からの入力信号光と前記励起光源からの入射光とにより前記非線形光学媒質中で差周波光を発生するとともに、前記励起光の波長が前記差周波光の発生効率を極大とする位相不整合量となるように選択されて前記差周波光の波長が変換されるように構成されていることを特徴とする。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本明細書において用いられている「波長変換素子(および波長変換装置)」という用語は、波長変換素子(および波長変換装置)が光増幅機能をも併せもつ場合には、単に波長変換素子(および波長変換装置)のみを意味するものではなく、光増幅素子(および光増幅装置)をも意味する。
【0044】
なお、発明者らは、上述した課題を解決する技術として、一定周期の分極反転構造に連続的かつ周期的な位相変調を施すことにより高効率な多波長励起を可能とする素子構造を考案して既に出願しているが(先行出願1)、高効率な多波長励起を可能とする素子構造に関する更なる検討の結果、一定周期と位相変調とを用いた構造ではなく、分極反転の周期を略連続的に変化させ、かつ、その周期変化を別の周期で繰り返すことによっても、周期変化波形の形状を適切に設定することで効率を大幅に損なうことなく任意の励起波長数に対応できることを見出した。
【0045】
図1は、本発明の波長変換素子の構成を概念的に説明するための図で、ここでは、分極を反転することにより非線形定数の符号を反転させることのできるLiNbOのような強誘電体結晶材料を非線形光学媒質として用いた差周波発生素子を例に説明する。
【0046】
この波長変換素子は、非線形光学媒質を備え、この非線形光学媒質に上述した式(1)を満足する3つの波長(λ、λ、λ:但しλ=λの場合を含む)のうちの1つまたは2つの波長の光を入射させ、非線形光学媒質内で生じる2次非線形光学効果によって、これら3つの波長のうちの何れかであり、かつ、少なくとも入射光の1つの波長とは異なる波長の出射光に変換する波長変換素子である。
【0047】
図1(a)に示すように、この波長変換素子では、非線形光学媒質である非線形材料基板11上に光導波路12を形成し、非線形光学媒質の自発分極を周期的に反転させることで非線形定数に変調を加え、波長λの励起光15によって波長λの信号光13を波長λの変換光14に変換している。
【0048】
この波長変換素子は、非線形定数の変調周期が非線形媒質の長手方向(光の進行方向)に略周期的に変調されている点は従来の波長変換素子と同様であるが、光導波路12方向に基本(反転)周期Λ付近(基本周期Λおよびこの基本周期と略等しい周期)で略連続的に(徐々に)変化する「変調単位構造」(図1(b))をもち、かつ、この変調単位構造が基本(反転)周期Λよりも長い周期Λで繰り返される「周期変調構造」(図1(a))を有している。そして、このような周期変調構造をもつ非線形光学媒質の光導波路12に、波長λの信号光13と波長λの励起光15とを入射させると、励起光15により非線形光学媒質内に生じる2次非線形光学効果によって信号光13とは異なる波長λの変換光14が生成される。
【0049】
なお、この図では高い波長変換効率が得られるように、非線形媒質として光の閉じ込めが強く、長い相互作用が得られる光導波路型の構造の素子を示しているが、高パワーのレーザ波長を変換する素子の場合にはバルク型の構造としてもよい。
【0050】
以下に、周期変化曲線の設定方法について説明する。光の伝搬方向軸上の位置zにおける非線形定数をd(z)とすると、光導波路がz=0からz=Lまで存在すると仮定して、光導波路を励起光と信号光が伝搬した後(z=L)の変換効率は、位相不整合量Δβに対して次式で与えられる。
【0051】
【数12】
Figure 2004233534
【0052】
この式から非線形定数の空間的な変化d(z)を与え、フーリエ変換を行うことで位相不整合量Δβに対する変換効率の変化を計算することができる。本発明では、非線形定数が略周期Λごとに変調され、かつ、別の周期Λで周期が変調されているために、2π/Λを中心に2π/Λごとに離れた位相不整合量Δβ(Δβ=2π/Λ、2π/Λ±2π/Λ、2π/Λ±4π/Λ、…)において、変換効率のピークをもつようになる。
【0053】
所望の励起光波長数において最大の効率を得るためには、所望のピークのみが大きくなり、それ以外のピークが小さくなるようにすればよい。例えば、3つの励起波長に対応させる場合は、Δβが2π/Λおよび2π/Λ±2π/Λの3つのピークが最大となるようにすればよい。また、L個のピークをもつようにする場合、分極反転構造単位ごとの周期変化曲線を変化させては非線形定数の空間変化d(z)を計算し、フーリエ変換を行って所望の各ピークにおける変換効率を求めて以下に与える評価関数Tを計算し、その値が最小になるように逐次計算を行って最適化すればよい。
【0054】
【数13】
Figure 2004233534
【0055】
但し、ここでη(j)はj番目のピークにおける効率、ηnormは長さが同じで周期変化をもたない場合の波長変換素子の効率である。
【0056】
発明者らは、この方法により、様々な励起波長数の場合において周期変化の設定を検討した結果、本発明によれば、変換効率を損なうことなく任意の励起波長数に対応可能であることを見出した。
【0057】
図2は、種々の励起波長数に対応可能な本発明の波長変換素子の、周期変化曲線および変換効率の位相不整合量依存性の例を説明するための図である。これらの図において、変換効率は、非線形媒質の長さが同じで周期変化をもたない場合の波長変換素子の変換効率を1として規格化して示している。
【0058】
例えば、図2(a)および図2(b)の各々は、3つの励起光波長に対応させるように構成した波長変換素子の周期変化曲線と変換効率の位相不整合量依存性を示す図であるが、図10(b)に示した構成の従来の波長変換素子の特性と比較すると、図2(b)に示すように、変換効率の位相不整合量依存性の余分な副次的ピークが抑制され、かつ、30%という高い変換効率が得られている。
【0059】
本発明の波長変換素子では、変調単位構造における非線形定数の変調周期の基本周期Λ、および、この変調単位構造の繰返しの周期Λ、ならびに、変調単位構造が繰り返されて形成される周期変調構造の周期変化曲線を上述した方法によって適当に設定してその形状を変化させることで、任意の励起波長数に容易に対応させることができる。これらの周期Λ、Λおよび周期変化曲線の設定の仕方はその目的に応じて異なるが、何れの方法においても、位相不整合量Δβが周期Λ、Λで決定される特定の値を取るときに変換効率が極大値を取るように周期変化曲線が設定される。
【0060】
具体的には、第1の方法は、位相不整合量Δβが2π/Λ±2πi/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)において変換効率が極大となるように設定する方法であり、第2の方法は、位相不整合量Δβが2π/Λ±2π(2i+1)/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)において変換効率が極大となるように設定する方法であり、そして、第3の方法は、位相不整合量Δβが2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,…,n:m,nは正または負の整数であり、|m|≠|n|)において変換効率が極大となるように設定する方法である。
【0061】
例えば、4つの励起光波長に対応可能な波長変換素子を構成するためには、その周期変化曲線を図2(c)に示すようにすることで、図2(d)に示すように、位相不整合量が、それぞれ、{(2π/Λ)−(2π/Λ)}、(2π/Λ)、{(2π/Λ)+(2π/Λ)}、および、{(2π/Λ)+(4π/Λ)}のときに変換効率を最大とすることができる。
【0062】
このように、本発明の波長変換素子によれば、従来の構成の波長変換素子のように倍の長さの周期構造を用いることなく、位相不整合量が2π/Λごとに4つのピークを有する構造を実現できる。
【0063】
非線形媒質としてLiNbOにプロトン交換法で形成した光導波路を用いることとし、LiNbOの自発分極を周期的に反転させて非線形定数に変調を加え、図2中の周期Λを約14mmあるいは28mmとした場合を想定すると、位相整合カーブのピークに相当する使用可能な励起波長の間隔はそれぞれ200GHzおよび100GHzとなり、従来の波長変換素子に比較して半分の繰り返し周期で同じ励起波長間隔を実現でき、その結果、一般的に使用される3〜4インチ径の基板上に容易に配置することが可能となる。
【0064】
以上説明したように、本発明の波長変換素子では、非線形光学媒質の構造を、非線形定数の変調周期が略連続的に変化する「変調単位構造」が周期Λで繰り返される「周期変調構造」としたことにより、任意の励起波長数に対応可能で、かつ、変換効率の低下が抑制され、さらに、実用的な大きさの非線形材料を用いて容易に構成可能な励起波長可変型の波長変換素子(およびそれを用いて構成される波長変換装置)を実現することが可能となる。かかる効果は、本発明の波長変換素子の構成を採用することにより始めて得られるものである。
【0065】
以下に実施例により、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図3は、本発明の波長変換素子の第1の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図で、この波長変換素子は、波長0.78μm帯の励起光を入射して波長1.55μm帯の信号光を差周波光へ変換するように構成されている。ここで、図3(a)は本実施例に用いた非線形定数の変調構造における周期変化カーブ、図3(b)は1.55μm帯の波長可変光源を用いてSHG特性を評価した規格化変換効率、図3(c)は信号光と励起光を入射させた場合の1.55μm帯における変換光のスペクトルである。
【0066】
この波長変換素子では、LiNbOのZ板(Z軸に垂直な面となるように切出された基板)を用い、分極反転部を電界印加法により周期約15.5μmで分極反転させている。このようにして分極反転させた基板にフォトリソグラフィー技術によりSiOをパターンニングし、約180度の温度で安息香酸中に浸漬させた後に酸素雰囲気中で熱処理して光導波路を形成した。なお、この波長変換素子は5つの励起波長に対応可能なように構成されている。
【0067】
以下に分極反転部の詳細を説明する。この波長変換素子の分極反転部は、変調単位構造の繰返し周期Λを14.26mmとし、分極反転部の全体の長さが57.04mmであり、周期変化パターンが4周期分(57.04mm/14.26mm)繰り返されるように構成されており、周期変化パターンの1周期当たりに配置される分極反転構造は920周期(14.26mm/15.5μm)となる。本実施例においては、この周期15.5μmの分極反転構造を2周期ごとを単位として周期変化の周期を460分割し、それぞれの分極反転構造単位ごとの位相を最適化して5つの励起波長において最大の変換効率が得られるように構成している。また、図3(a)に示した周期変化カーブのように、1周期の間に分極反転周期が15.5μmを中心に滑らかに変化するように周期変化が施されている。
【0068】
本実施例で用いた分極反転構造を有するLiNbO基板は、この基板の+Z面にレジストを塗布した後にフォトリソグラフィ技術によりパターン化して電極を蒸着し、基板の両側に電解液を接触させて電界を印加することでレジストのない電極が基板に直接触れている部分の分極を反転させるようにして作成される。なお、分極反転するドメインの幅は電極の幅よりも若干広くなるため、その広がりを考慮してフォトリソグラフィに用いるマスクを設計しておく必要がある。本実施例では、計算上理想的な周期変化分極反転構造を計算した後に反転ドメイン幅の広がり分だけレジスト幅が広くなるようにマスクを設計している。
【0069】
図3(b)の横軸は波長変換素子から発生する0.78μm帯の第2高調波の波長であり、縦軸の変換効率は57.04mmの長さに一定周期15.5μmの分極反転構造で同様に作成した素子の変換効率を1として規格化して示している。この図に示した結果から、この波長変換素子に0.78μm帯の励起光を入射して差周波発生させた際の変換効率の波長依存性が評価できる。
【0070】
この図に示すように、波長778.7nmを中心として約0.4nm間隔で5つのピークが得られており、このことは、励起光波長を200GHz間隔で変化させることができることに相当する。また、一定周期の素子に比較した場合の変換効率は約18%であり、図10(f)に示した従来の構成の4波長対応の波長変換素子と比較すると、励起波長数が多いのにも関わらず同等の変換効率が実現されていることがわかる。
【0071】
図3(c)は、信号光の波長を1548.9nmとし、励起光の波長を777.9、778.3、778.7、779.1、および、779.5nmと0.4nm間隔で変化させた場合の1.55μm帯のスペクトルで、この図に示すように、励起光の波長が変化することに伴って変換光の波長を1.6nm間隔で変化させることが可能である。
【0072】
(実施例2)
図4は、本発明の波長変換素子の第2の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図で、図4(a)は本実施例に用いた非線形定数の変調構造における周期変化カーブ、図4(b)は1.55μm帯の波長可変光源を用いてSHG特性を評価した規格化変換効率、図4(c)は信号光と励起光を入射させた場合の1.55μm帯における変換光のスペクトルである。
【0073】
この波長変換素子は、第1の実施例が奇数の励起波長に対応するように構成されているのに対して、偶数の励起波長を用いて波長変換を行えるように構成されている。図3からわかるように、基本周期Λに周期Λで周期変化を施した第1の実施例の構成では、位相不整合量が2π/Λを中心に2π/Λごとに変換効率のピークが現れる。従って、偶数のピークをもたせるためには、中心ピークを0次ピークとすると、この中心から数えて奇数番目のピークのみを大きくし、0次ピークを含めた偶数番目のピークが小さくなるように周期変化カーブを設定すればよい。
【0074】
これに対して本実施例では、図4中に示すように、+1次、+3次、−1次、および、−3次の4つのピークが最大となるように構成されている。なお、本実施例では、分極反転の周期を約15.5μm、分極反転部の全長を57.04mm、変調単位構造の繰返し周期Λを14.26mmとして、周期変化パターンが4周期分繰り返されるようにしている。従って、周期変化パターン1周期当たりに配置される分極反転構造は920周期となる。本実施例では、この周期約15.5μmの分極反転構造を2周期ごとを単位として周期変化の周期を460分割してそれぞれの分極反転構造単位ごとの周期を最適化し、4つの励起波長において最大の変換効率が得られる構造とされている。また、図4(a)に示す周期変化カーブのように、1周期の間に分極反転周期が15.5μmを中心に滑らかに変化するように周期変化が施されている。
【0075】
この波長変換素子からは、図4(b)に示すように、波長778.7nmを中心として約0.8nm間隔で4つのピークが得られ、これは、励起光波長を400GHz間隔で変化させ得ることに相当する。本実施例では、偶数次のピークを間引いた間隔でピークが得られるように周期変化曲線を構成したことに対応して、第1の実施例と同様の周期変化周期を用いたにも関わらず各ピーク間隔が倍となっている。このように、本発明では、周期変化カーブを様々に変更することでピーク数やピーク間隔を自在に変更することができる。
【0076】
図4(b)の縦軸の変換効率は、57.04mmの長さに一定周期15.5μmの分極反転を有する構造とした素子の変換効率を1として規格化して示しており、一定周期の分極反転を有する構造の素子に比較した場合の変換効率は約23%であり、図10(b)で説明した4波長対応の従来技術と比較して、励起波長数が同じでありながら1.25倍程度の効率が実現できていることがわかる。
【0077】
第1の実施例では、励起光として0.78μm帯の光を外部から入射して1.55μm帯の波長変換動作させる例を示したが、この他にも、1.55μm帯の光源を外部励起光として用い、非線形媒質中のSHGにより媒質内部で0.78μm帯の光を発生して励起光として用いるいわゆるカスケード励起を行うことも可能である。
【0078】
図4(c)は、本発明の波長変換素子をカスケード励起方式で動作確認を行い、信号光の波長を1542.7nmとし、励起光の波長を1559.8、1558.2、1556.6、および、1555.0nmと約1.6nm間隔で変化させた場合の1.55μm帯のスペクトルで、この図に示すように、励起光の波長が変化することに伴って変換光の波長を3.2nm間隔で変化させることが可能である。
【0079】
(実施例3)
図5は、本発明の波長変換素子の第3の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図で、図5(a)は本実施例に用いた非線形定数の変調構造における周期変化カーブ、図5(b)は1.55μm帯の波長可変光源を用いてSHG特性を評価した規格化変換効率、図5(c)は信号光と励起光を入射させた場合の1.55μm帯における変換光のスペクトルである。
【0080】
この波長変換素子は、第2の実施例が偶数の励起波長に対応するように構成されているのに対して、偶数の励起波長を用いて波長変換を行えるように構成されていることに加え、励起光波長間隔を短くすることができるように構成している。第2の実施例では、偶数次のピークを間引いてピークが得られるように周期変化曲線を構成したが、偶数のピークをもたせるためには0次ピークも含めて0次ピークの周りに非対称にピークが得られるように周期変化曲線を設定する方法もある。本実施例では、図5中に示すように、0次、−1次、−3次、および、+1次の4つのピークが最大となるように構成している。なお、本実施例では、分極反転の基本周期を15.5μmとし、分極反転部の全長を57.04mm、変調単位構造の繰返し周期Λを14.26mmとして、周期変化パターンが4周期分繰り返すようにしている。従って、周期変化パターン1周期当たりに配置される分極反転構造は920周期となる。本実施例では、この周期約15.5μmの分極反転構造を2周期を単位として周期変化の周期を460分割してそれぞれの分極反転構造単位ごとの周期を最適化し、4つの励起波長において最大の変換効率が得られる構造とされ、図5(a)に示す周期変化カーブのように、1周期の間に分極反転周期が15.5μmを中心にほぼ滑らかに変化するように位相変調が施されている。
【0081】
この波長変換素子からは、図5(b)に示すように、波長778.7nmを中心として約0.4nm間隔で4つのピークが得られ、これは、励起光波長を200GHz間隔で変化させ得ることに相当する。本実施例では、0次のピークの周りに非対称に4つのピークが得られるように周期変化カーブを構成した結果として、第2の実施例と同様の周期変化周期を用いたにも関わらず各ピーク間隔が半分となっている。このように、本発明では、周期変化カーブを様々に変更することでピーク数やピーク間隔を自在に変更することができる。
【0082】
図5(b)の縦軸の変換効率は、57.04mmの長さに一定周期15.5μmの分極反転を有する構造の素子の変換効率を1として規格化して示しており、一定周期の素子に比較した場合の本実施例の素子の変換効率は約23%であり、図10(b)で説明した4波長対応の従来技術と比較して、励起波長数が同じでありながら1.25倍程度の効率が実現できていることがわかる。
【0083】
本実施例では、1.55μm帯の波長の光を信号光とし、励起光の波長をそれぞれ778.3、778.7、779.1、および、779.5nmと約0.4nm間隔で変化させることにより、変換光の波長を1.6nm間隔で変化させることが可能である。なお、本実施例では200GHz間隔で励起光波長を変化させるために周期変化周期を14.26nmとしたが、例えば励起光波長の間隔を半分の100GHzにしたい場合には、周期変化周期を倍の28.52mmとして同様の手順で構成すればよい。この周期とすれば、一般的に使用されている3〜4インチ径の基板上に容易にレイアウトすることが可能となる。このように、本発明によれば、周期変化関数を工夫することで従来よりも短い周期構造を用いても100GHz等の狭い励起波長間隔に対応可能となる。
【0084】
本発明の波長変換素子に入射する励起光のパワーが充分に大きな場合には、差周波光を発生するだけではなく、パラメトリック効果により入力光を増幅することも可能である。このことを確認するため、本実施例では、1.55μm帯の光源を外部励起光として用い、非線形媒質中のSHGにより媒質内部で0.78μm帯の光を発生して励起光とするカスケード方式で増幅動作の確認を行った。
【0085】
励起光としては、繰り返し周波数100MHz、時間幅100psの励起光パルスを用い、信号光には繰り返し周波数100MHz、時間幅10psのパルスを励起光パルスと時間的に同期させて本実施例の素子に入射させて増幅動作を確認した。
【0086】
図5(c)は、本実施例の素子をカスケード励起方式で動作確認を行い、信号光の波長を1540.0nmとし、励起光の波長を1557.4と1559.0nmとに変化させた場合の1.55μm帯のスペクトルで、この図に示すように、励起光の波長が変化することに伴って変換光の波長を変化させることが可能であるとともに、励起光を入射させない場合に比較して12dB程入射信号が増幅されており、変換光のパワーも信号光と同等のパワーが得られることがわかる。
【0087】
(実施例4)
図6は、本発明の波長変換素子の第4の実施例の、非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図で、図6(a)は本実施例に用いた非線形定数の変調構造における周期変化カーブ、図6(b)は1.55μm帯の波長可変光源を用いてSHG特性を評価した規格化変換効率である。
【0088】
この波長変換素子は、第1〜3の実施例が4または5の励起波長に対応するように構成されているのに対して、更に多くの励起波長を用いて波長変換が可能であり、図6中に示すように、奇数次の8つのピークが最大になるように構成されている。
【0089】
本実施例では、分極反転の基本周期を15.5μmとし、分極反転部の全長を57.04mm、変調単位構造の繰返し周期Λを14.26mmとして、周期変化パターンが4周期分繰り返すようにしている。従って、周期変化パターン1周期当たりに配置される分極反転構造は920周期となる。本実施例では、この周期15.5μmの分極反転構造を2周期を単位として周期変化の周期を460分割してそれぞれの分極反転構造単位ごとの周期を最適化し、4つの励起波長において最大の変換効率が得られる構造とされ、本実施例の波長変換素子には、図6(a)に示す周期変化カーブのように、1周期の間に分極反転周期が15.5μmを中心にほぼ滑らかに変化するように周期変化が施されている。
【0090】
この波長変換素子では、図6(b)に示すように、波長778.7nmを中心として約0.8nm間隔で8つのピークが得られ、これは、励起光波長を400GHz間隔で変化させ得ることに相当する。
【0091】
本実施例では、1.55μm帯の波長の光を信号光とし、励起光の波長をそれぞれ780nm近傍で約0.4nm間隔で変化させることにより、変換光の波長を3.2nm間隔で変化させることが可能である。このように、本発明によれば、周期変化関数を工夫することで、励起波長数が非常に多い場合においても、容易に設計・作製を行うことが可能となる。
【0092】
(実施例5)
図7は、本発明の波長変換素子を備える波長変換装置の構成を説明するための図で、この波長変換装置70の励起発生部71には1.55μm帯の異なる波長でそれぞれ発振する5つの半導体レーザが励起光源72として用いられている。これらの励起光源72からのレーザ光をアレイ導波路格子からなる合波器73で合波し、Erドープの光ファイバ増幅器74で増幅して励起光を発生させる。信号光78と励起光は、誘電体多層膜からなる合波器76により合波され、本発明の波長変換素子77に入射して変換光79を射出する。なお、この実施例では、波長変換素子77として、第1の実施例と同様に5つの励起波長に対応可能な素子を用いている。
【0093】
この実施例では、1.55μm帯の外部励起光を用いてカスケード励起方式を採用している。この他にも、0.78μm帯の異なる波長でそれぞれ発振する5つの半導体レーザを用意すれば同様の装置が構成できる。その場合、Erドープの光ファイバ増幅器74を省略するか半導体レーザ増幅器を用いることとすればよい。本実施例では、励起光源72として用いられるそれぞれの半導体レーザの波長を1555.8、1556.6、1557.4、1558.2、および、1559.0nmとして約0.8nm間隔で用意した。
【0094】
励起波長制御部75によりこれらの半導体レーザのどれか1つを選択して発振させることにより、図3(c)に示したのと同様に、変換光の波長を1.6nm間隔で変化させることができる。また、複数の半導体レーザを同時に発振させることにより1.6nm間隔ごとに離れた複数の変換光79を同時に発生させることもできる。
【0095】
なお、本実施例では、複数の励起光源を用いて励起光発生部71を構成することとしたが、発振波長が可変な単体の光源、あるいは、複数の波長の切替可能な光源を用いる構成としても同様の装置が構成可能である。
【0096】
また、本実施例では、非線形材料としてLiNbOを用いたが、これに限定されるものではなく、非線形定数の反転もしくは変調が可能な2次非線形材料(例えば、LiTaO、KNbO、KTaO、Li1−xTaNb1−y、KTP等の酸化物結晶、AlGaAs等の半導体、有機材料など)を用いることとしてもよい。
【0097】
さらに、本実施例では、本発明の波長変換素子を、光の閉じ込めを強くし、長い相互作用長が得られ、高効率化に有利な非線形媒質として光導波路型の素子構成で説明したが、これに限定されるものではなく、例えば高パワーのレーザ波長を変換するような場合においては、バルク型の素子構成を採用するようにしてもよい。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、波長変換素子に備える非線形光学媒質を、非線形定数の変調周期が光の進行方向に基本周期Λと略同一でかつ略連続的に変化する変調単位構造をもち、かつ、この変調単位構造が周期Λ(>Λ)で繰り返された周期変調構造を有するように構成し、さらに、位相不整合量Δβが、2π/Λ±2πi/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)、または、2π/Λ±2π(2i+1)/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)、もしくは、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,…,n:m,nは正または負の整数であり、|m|≠|n|)において変換効率を極大ならしめるようにしたので、任意の励起波長数に対応した設計が可能で、かつ、変換効率の低下がなく、さらに、実用的な大きさの非線形材料を用いて容易に構成することが可能な波長変換素子および波長変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の波長変換素子の構成を概念的に説明するための図である。
【図2】本発明の波長変換素子の、周期変化曲線、および、変換効率の位相不整合量依存性を説明するための図である。
【図3】本発明の波長変換素子の第1の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図である。
【図4】本発明の波長変換素子の第2の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図である。
【図5】本発明の波長変換素子の第3の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図である。
【図6】本発明の波長変換素子の第4の実施例の非線形定数の変調構造と動作特性とを説明するための図である。
【図7】本発明の波長変換装置の構成を説明するための図である。
【図8】2次非線形光学効果を利用した従来の波長変換素子を説明するための図で、(a)はこの波長変換素子の構成を説明するための図であり、(b)は位相不整合量に対する変換効率依存性を説明するための図である。
【図9】周期変調構造に位相反転構造を付与することで複数の励起光波長に対応可能とした、従来の波長変換素子の構成を示す図である。
【図10】周期変調構造に位相反転構造を付与することで複数の励起光波長に対応可能とした、従来の波長変換素子における変換効率の位相不整合量依存性を説明するための図である。
【符号の説明】
11、81、91 非線形材料基板
12、82、92 光導波路
13、83、93 信号光
14、84、94 変換光
15、85、95 励起光
70 波長変換装置
71 励起発生部
72 励起光源
73 アレイ導波路格子からなる合波器
74 光ファイバ増幅器
75 励起波長制御部
76 誘電体多層膜からなる合波器
77 波長変換素子
78 信号光
79 変換光

Claims (5)

  1. 非線形光学媒質を備え、当該非線形光学媒質に次式を満足する3つの波長(λ、λ、λ:但しλ=λの場合を含む)のうちの1つまたは2つの波長の光を入射させ、当該非線形光学媒質内で生じる2次非線形光学効果によって、前記3つの波長のうちの何れかであり、かつ、少なくとも入射光の1つの波長とは異なる波長の出射光に変換する波長変換素子であって、
    前記非線形光学媒質は、非線形定数の変調周期が光の進行方向に基本周期Λと略同一でかつ略連続的に変化する変調単位構造を有し、かつ、当該変調単位構造が前記基本周期Λよりも長い周期Λで繰り返された周期変調構造を有していることを特徴とする波長変換素子。
    Figure 2004233534
  2. 前記非線形光学媒質内での波長変換に関わる前記3つの波長(λ、λ、λ)の光に対する前記非線形光学媒質の屈折率を各々n、nおよびnとする場合に、次式で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ±2πi/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)のときに変換効率が極大となるように前記基本周期Λおよび周期Λならびに前記周期変調構造の周期変化曲線が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
    Figure 2004233534
  3. 前記非線形光学媒質内での波長変換に関わる前記3つの波長(λ、λ、λ)の光に対する前記非線形光学媒質の屈折率を各々n、nおよびnとする場合に、次式で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ±2π(2i+1)/Λ(i=0,1,…,n:nは正の整数)のときに変換効率が極大となるように前記基本周期Λおよび周期Λならびに前記周期変調構造の周期変化曲線が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
    Figure 2004233534
  4. 前記非線形光学媒質内での波長変換に関わる前記3つの波長(λ、λ、λ)の光に対する前記非線形光学媒質の屈折率を各々n、nおよびnとする場合に、次式で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,…,n:m,nは正または負の整数であり、|m|≠|n|)のときに変換効率が極大となるように前記基本周期Λおよび周期Λならびに前記周期変調構造の周期変化曲線が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
    Figure 2004233534
  5. 発振波長が可変あるいは複数の発振波長を切替可能な励起光源と、請求項1乃至4の何れかに記載の波長変換素子とを備え、
    前記波長変換素子が外部からの入力信号光と前記励起光源からの入射光とにより前記非線形光学媒質中で差周波光を発生するとともに、
    前記励起光の波長が前記差周波光の発生効率を極大とする位相不整合量となるように選択されて前記差周波光の波長が変換されるように構成されていることを特徴とする波長変換装置。
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