JP2011033727A - 波長変換素子及び波長変換光源 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長変換素子の変換効率の帯域を拡大した場合に生ずる変換効率の変動を低減する。
【解決手段】波長変換素子の非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が基本周期Λ0ごとに周期的に反転し、かつ基本周期Λ0ごとに連続的に反転の位相が変化する分極反転構造を有する。分極反転構造は、基本周期Λ0を複数周期束ねた断片から構成され、断片の一部分の非線形光学定数の符号を一方の符号に固定した複数の符号固定部分を含む。さらに、非線形光学媒質の両端に近づくにつれて、断片の中で符号固定部分が占める割合が大きくなるようにして、所与の評価関数が最小になるように、反転の位相を設定する。
【選択図】図5
【解決手段】波長変換素子の非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が基本周期Λ0ごとに周期的に反転し、かつ基本周期Λ0ごとに連続的に反転の位相が変化する分極反転構造を有する。分極反転構造は、基本周期Λ0を複数周期束ねた断片から構成され、断片の一部分の非線形光学定数の符号を一方の符号に固定した複数の符号固定部分を含む。さらに、非線形光学媒質の両端に近づくにつれて、断片の中で符号固定部分が占める割合が大きくなるようにして、所与の評価関数が最小になるように、反転の位相を設定する。
【選択図】図5
Description
本発明は、レーザ装置、光通信システムにおいて用いられる波長変換素子及び波長変換光源に関する。
従来、種々の二次非線形光学効果を利用した波長変換装置が知られている。例えば、第二高調波発生では、入射光の半分の波長の第二高調波に波長変換することができる。また、和周波発生では、2つの異なる波長の光を両者の和の周波数に相当する波長の光に変換することができる。さらに、差周波発生では、2つの異なる波長の光を両者の差の周波数に相当する波長の光に変換することができる。同様の構成において、一方の光のパワーが十分に大きい場合には、差周波光を発生するだけでなく、パラメトリック効果により、入力光を増幅する増幅装置を構成することもできる。また、パラメトリック共振器を構成することにより波長可変光源を構成することもできる。
以下、波長変換装置の動作原理を、和周波発生を利用した従来例に従って簡単に説明する。非線形光学効果を利用した波長変換装置は、2つの励起光を入力し、異なる波長の変換光に変換する。第1の励起光波長をλ1、第2の励起光波長をλ2、変換光波長をλ3とすると、3つの波長の間には以下の関係がある。
非線形光学媒質としては、種々の材料が研究開発されている。例えば、非特許文献1に示されているように、LiNbO3等の2次非線形光学材料を用いて、非線形光学定数を周期的に変調したいわゆる擬似位相整合型の構造が有望視されている。
図1に、従来の擬似位相整合型の波長変換素子の構成を示す。二次非線形光学効果を利用して和周波発生を行う波長変換素子の構成である。波長変換素子は、第1の励起光(λ1)13および第2の励起光(λ2)14を合波する合波器15と、LiNbO3からなり周期変調構造を有する非線形光学媒質11とを備えている。非線形光学媒質11は、第1の励起光(λ1)13および第2の励起光(λ2)14を入射すると、変換光(λ3)16を出力する。
周期変調構造を形成するには、非線形光学定数の符号を交互に反転するか、非線形光学定数が大きい部分と小さい部分をほぼ交互に配置する方法が考えられる。LiNbO3のような強誘電体結晶では、非線形光学定数(d定数)の正負は自発分極の極性に対応している。そこで、自発分極を反転することにより非線形光学定数の符号を周期的に反転することができる(以下、分極反転構造ともいう)。図1の例では、非線形光学媒質11に作成した光導波路12を用いて、LiNbO3の自発分極を、変調周期(Λ0)7.9μmで周期的に反転することにより、非線形光学定数に変調を加えている。図1の例では、0.98μm帯と1.3μmの励起光を導波路へ入射し、0.56μm帯の変換光を発生することができる。
図1の例では、第1の励起光波長λ1における屈折率をn1、第2の励起光波長λ2における屈折率をn2、変換光波長λ3における屈折率をn3、非線形光学定数の変調周期をΛ0とすると、位相不整合量Δβは、
で与えられ、変換効率ηは、この位相不整合量Δβを用いて、
で与えられる。ここでLは、非線形光学媒質11の長さである。
すなわち変換効率は、位相不整合量Δβが2π/Λ0の時最大となる。例えば、第1の励起光波長λ1を固定して考えると、式(2)で与えられる位相不整合量Δβが2π/Λ0となる条件、いわゆる擬似位相整合条件を満たす第2の励起光波長λ2は、非線形材料の屈折率の波長分散に依存する。従って、第2の励起光波長λ2は、変調周期Λ0を決定すると実質的に一意に決定される。第2の励起波長λ2を、擬似位相整合条件を満たす擬似位相整合波長から変化させると、式(2)および(3)に従って変換効率が減少してしまう。
図2は、非線形光学媒質における変換効率の位相不整合量依存性を説明するための図である。図2は、変換効率の最大値を1として規格化してある。図1に示したLiNbO3の非線形光学媒質11の光導波路12の長さを30mmとすると、図2の変換効率が最大値の半分となる位相不整合量の帯域は、1.3μm帯の第2の励起波長に換算すると、約0.2nm程度と非常に狭い。また、この位相不整合量の帯域を、LiNbO3の温度に対する分散からその温度許容幅に換算すると、約1℃程度と非常に狭い。このため、温度変化などにより位相整合条件が変化すると、波長変換効率が著しく劣化してしまうという問題があった。
励起光の光源として半導体レーザ用い、注入電流の変調により光源の強度を変調した場合、強度によって半導体レーザの波長が動的に変動し、その波長変動によって変換効率が著しく変動してしまうといった問題があった。また、第2の励起光の光源を、波長を掃引できるような波長可変光源とすると、波長変換の帯域が狭いために、変換光として得られる波長が極めて狭い範囲に限定されてしまうといった問題もあった。同様に、従来の単一周期の周期変調構造を用いた場合、第二高調波発生、和周波発生、差周波発生を行う際に、励起光の波長に対する位相整合の帯域が狭いため、励起光の波長および波長変換素子の温度を高精度に制御しないと安定した波長変換が行えないという問題もあった。
波長に対する許容範囲の拡張が可能な波長変換素子を構成するために、例えば、非特許文献2に開示されているように、周期変調構造の周期を、光の伝播方向に線形に変化(線形チャープ)させる方法が提案されている。この方法を用いた場合の位相整合曲線を図3に示す。波長変換素子の長さが同じで、線形チャープを行った場合を実線で、線形チャープを行わない場合を点線(効率は1/10にして表示)で示す。図3に示したように、線形チャープにより、波長帯域が拡大されていることがわかる。しかしながら、周期変調構造の周期を変化させる方法では、図3に示されるように帯域内の変換効率の変化(以下、リップルと呼ぶ)が大きいという課題があった。これにより、例えば、波長を掃引した場合には、変換光の出力強度の変動が大きくなってしまう。変換光の出力強度が一定になるように、特殊な装置を用いることもできるが、技術的にもコスト的にも困難を伴う。また、変動の下限を基準にして、出力強度を一定となるようにするので、変換効率が低下してしまうという問題もある。
このような問題を解決する技術として、例えば、非特許文献3に示されているように、非線形光学定数の反転周期における二つの符号のうち、一方の符号の部分の割合(以下、デューティと呼ぶ)を変化させる。変換効率を優先するならば、デューティを50%に設定しておくと良い。変換効率を多少犠牲にする代わりに、リップルを低減するために、波長変換素子の端に近づくほどデューティを小さくする。素子の端部において波長変換の効率に寄与する割合が小さい部分(以下、冗長部分という)を設けることによって、アポダイズを実現する。この方法によれば、波長変換素子の素子長が長くなってしまうが、特に強誘電体の分極反転周期がある程度大きい場合には有効な方法である。しかし、可視光を発生するような周期の短い短波長用の素子においては、非常に微細な周期変調構造を形成することが必要になり、作製精度の問題から実現が困難となるといった問題がある。
このような問題を解決する方法として、例えば、非特許文献4に示されているようなアポダイズを実現する方法がある。非線形光学定数の符号の周期的な反転構造を一定区間ごとに区切り、それぞれの区間の一部の非線形光学定数の符号を一方の符号のみにし、非線形光学媒質の両端に近づくにつれて、非線形光学定数の符号を一方の符号とする割合を大きくする。この方法では、短い周期中のデューティを変化させることなくアポダイズによるリップルの低減が可能となる。
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T. Umeki et. al. "Widely tunable 3.4μm band difference frequency generation using apodized x(2) grating," Optics Letters, Vol. 32, No.9, pp.1129-1131, 2007
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しかしながら、上述した従来技術による波長変換素子では以下に述べるような問題点がある。
図4に、チャープ量を変化させた場合の変換効率の位相不整合量依存性を示す。図4(a)は、非線形光学媒質の周期変調構造を示す。周期変調構造の周期を一定とし、分極が反転する位相を変化させる。非線形光学媒質の長さ方向の両端に対して、位相を0から−14ラジアンまで対称に変化させる。図4(b)は、変換効率の位相不整合量依存性を示す。規格化された変換効率は、図3と比較すると、位相整合曲線の変換効率の変動は減っているものの、依然として変換効率の変動が残っている。
図4に、チャープ量を変化させた場合の変換効率の位相不整合量依存性を示す。図4(a)は、非線形光学媒質の周期変調構造を示す。周期変調構造の周期を一定とし、分極が反転する位相を変化させる。非線形光学媒質の長さ方向の両端に対して、位相を0から−14ラジアンまで対称に変化させる。図4(b)は、変換効率の位相不整合量依存性を示す。規格化された変換効率は、図3と比較すると、位相整合曲線の変換効率の変動は減っているものの、依然として変換効率の変動が残っている。
例えば、このような波長変換素子と半導体レーザを組み合わせて第二高調波発生、和周波発生による可視波長域の光源を構成する場合を考える。通常、半導体レーザの波長は電流を増大させることにより長波長側へシフトしてゆく傾向を有している。従って、図4のように、変換効率が励起波長に対して変動するような特性を持っていると、半導体レーザの駆動電流に対して可視光出力が単調増加とならない部分が発生してしまう。このような波長変換素子を有する光源では、半導体レーザの電流を変調することにより、出力光を変調しようとすると、変調電流波形には存在しない雑音が出力光に発生するという問題を生じる。
可視波長域の出力光の一部をモニターし、出力強度が常に一定となるように半導体レーザの駆動電流にフィードバックして安定化する場合を考える。上述したように、駆動電流に対して出力強度が単調増加とならない場合、フィードバックがうまく動作せず、出力強度の変動が増大してしまうといった問題がある。
このような問題を、従来のアポダイズ技術で解決するためには、波長変換素子の端部の冗長部分を長くしなければならず、リップルの低減は原理的に可能なものの波長変換素子の素子長が長くなってしまう。限りある素子長でリップルの低減を実現しようとすると、波長変換素子の変換効率を大幅に犠牲にすることになる。
本発明の目的は、上記のような従来技術の課題を解決し、非線形光学定数の符号の周期変調構造に変調を加えて、変換効率の帯域を拡大した場合に生ずる変換効率の変動を低減する。これにより、波長変換素子の長さを変更したり、変換効率を大幅に低減させることなく、帯域が広く変換効率の変動の少ない波長変換素子を提供する。
本発明は、このような目的を達成するために、波長変換素子の一実施態様は、非線形光学媒質を備え、式(1)を満足する何れか2つの波長の2つの励起光を前記非線形光学媒質に入射させ、前記非線形光学媒質中で生じる二次非線形光学効果により、式(1)を満足する前記励起光とは異なる波長の変換光を出力し、または波長λ1=λ2の1つの励起光を前記非線形光学媒質に入射させ、前記非線形光学媒質中で生じる二次非線形光学効果により、波長λ3の変換光を出力する波長変換素子において、前記非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が基本周期Λ0ごとに周期的に反転し、かつ前記基本周期Λ0ごとに連続的に反転の位相が変化する分極反転構造を有し、前記基本周期Λ0を複数周期束ねた断片から構成され、前記断片の一部分の非線形光学定数の符号を一方の符号に固定した複数の符号固定部分を含み、前記非線形光学媒質の両端に近づくにつれて前記断片の中で前記符号固定部分が占める割合が大きくなり、式(1)の波長λ1、λ2、λ3に対する前記非線形光学媒質内の屈折率を、それぞれn1、n2、n3としたとき、式(2)により表される位相不整合量Δβが、最大2π/Λ0となる近傍の、位相整合曲線中の平坦性を必要とする領域の下端lから上端mの領域において、位相不整合量Δβに対する変換効率η(Δβ)と目標する変換効率ηtargetについて、式(5)で与えられる評価関数が最小になるように、前記分極反転構造の反転の位相を設定したことを特徴とする。
前記非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が連続的に反転し、かつ連続的に反転の周期が変化する分極反転構造を有することとし、評価関数が最小になるように、前記分極反転構造の反転の周期を設定してもよい。
前記非線形光学媒質は、1周期の中で一方の非線形光学定数の符号が占める割合を、前記非線形光学媒質の両端に近づくにつれて変化させ、評価関数が最小になるように、前記分極反転構造の反転の位相または反転の周期を設定してもよい。
波長変換光源の一実施態様は、1つまたは2つの半導体レーザと、前記波長変換素子とを備え、前記半導体レーザから出射される励起光を前記波長変換素子に入射し、前記半導体レーザへの駆動電流を変化させて、前記波長変換素子から出射される変換光の強度または波長を変化させることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、波長変換素子の長さを変更したり、変換効率を大幅に低減させることなく、変換効率の帯域を拡大した場合に生ずる変換効率の変動を低減することが可能となる。すなわち、変換効率の変動の少ない広帯域で高効率な波長変換素子を実現することができる。
また、半導体レーザと本発明の波長変換素子とを組み合わせて波長変換光源を構成すると、半導体レーザの変調による波長変動が生じても変換効率の変動が少ないために、電流変調による出力光の変調が可能な光源を実現することができる。これにより、電流の変化に対する出力光強度の増加が単調増加となる特性を得られるので、出力光のフィードバックによって、光源の出力を安定化することが可能になる。さらに、波長変換素子の温度変化、励起光の光源の温度変化に対する許容幅が拡大し、温度変化による変換効率の変動を抑制することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
発明者らは、従来技術の周期変調構造のチャーピングによって発生する変換効率のリップルを、波長変換素子の端部の冗長部分を増やすことなく低減し、平坦性の良い広帯域波長変換素子を実現する方法について様々な素子構造を検討した。その結果、周期変調構造にアポダイズを施すとともに、自発分極を反転による位相変調、周期変調によって構成されるチャープ構造を最適化することにより、変換効率のリップルをさらに低減できることを見出した。以下、位相変調によるチャープ構造を最適化した場合を例にして説明する。
発明者らは、従来技術の周期変調構造のチャーピングによって発生する変換効率のリップルを、波長変換素子の端部の冗長部分を増やすことなく低減し、平坦性の良い広帯域波長変換素子を実現する方法について様々な素子構造を検討した。その結果、周期変調構造にアポダイズを施すとともに、自発分極を反転による位相変調、周期変調によって構成されるチャープ構造を最適化することにより、変換効率のリップルをさらに低減できることを見出した。以下、位相変調によるチャープ構造を最適化した場合を例にして説明する。
図1に示したような波長変換素子において、光の伝播方向の光軸上の位置zにおける非線形光学定数をd(z)とする。非線形光学媒質11がz=0からz=Lまで存在しているとすると、非線形光学媒質11の光導波路12を、2つの励起光が伝播した後(z=L)の変換効率は、位相不整合量Δβに対して次式で与えられる。
式(4)から非線形光学定数の空間的な変化d(z)を与え、フーリエ変換を行うことにより位相不整合量Δβに対する変換効率の変化を計算することができる。
従来技術では、チャーピングによる広い帯域を得るために、自発分極の反転周期を線形的にチャープさせるか、または同様の効果が得られる2次関数的な位相変調を施していた。このように非線形光学定数の符号を周期的に反転する分極反転構造にアポダイズを加えると、図4(b)に示したような位相整合曲線が得られる。発明者らは、従来技術に対して、位相整合曲線のうち平坦な変換効率を必要とする領域を決定し、その領域の変換効率の目標効率を決定した。次に、アポダイズを施した状態での分極反転構造単位ごとの位相変調曲線を変化させては、非線形光学定数の空間変化d(z)を計算した。そして、フーリエ変換を行って、所望の領域における変換効率を求めて、以下に与える評価関数Tを計算し、その値が最小になるように逐次計算を行って最適化することを試みた。
ここでl,mは、位相整合曲線中の平坦性を必要とする領域の下端と上端における位相不整合量であり(図4(b)参照)、ηtargetは目標とする変換効率である。
図5に、本発明の一実施形態にかかるチャープ構造と位相整合曲線を示す。図5(a)は、チャープ構造を示し、周期変調構造の周期(Λ0)を一定とし、分極が反転する位相を変化させている。図5(b)は、変換効率の位相不整合量依存性を示す。図4(b)と比較すると分かるように、最適化計算の結果、位相変調曲線をわずかに変更することにより、位相整合曲線上のリップルを大きく低減できることが分かる。
発明者らは同様の方法により、様々な帯域を有するチャープ構造の最適化を試みた結果、アポダイズのみを施した場合に比べて、波長変換素子の冗長性を増やすことなく、リップルの低減が可能であることを見出した。なお、ここでは位相変調を施した場合を例にとり説明したが、非線形光学定数の変調周期を変化させるチャーピングを施した場合であっても、同様の効果を得ることができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。実施例1では、波長1.06μm帯の第1の励起光を非線形光学媒質に入射して、第二高調波発生を利用して、波長0.53μm帯の変換光へ変換できる波長変換素子を構成した。次に、波長変換素子の詳細について説明する。非線形光学媒質は、例えば、非特許文献5に示されたウエハ接合法によって作製される。
非線形光学媒質の光導波路のコアには、LiNbO3のZ板(Z軸に垂直な面となるように切り出された基板)を用い、クラッドにはLiTaO3を用いて、ドライエッチングにより光導波路を形成してある。LiNbO3の分極反転構造により、位相整合特性すなわち波長変換可能な波長帯域特性が決定される。
以下、分極反転構造と位相整合特性の詳細を説明する。実施例1では、LiNbO3基板を電界印可法により周期(Λ0)約6μmで分極反転した。自発分極の反転周期が比較的短いので、分極反転の基本周期中のデューティを変化させず、基本周期である6μmよりも広い範囲で、部分的に一方の分極方向となる構造を付与する。
実施例1では、基本周期(Λ0)を複数周期束ねた断片を構成し、断片の一部分を、一方の分極方向(非線形光学定数の符号)とする。この部分の割合を変化させることにより、アポダイズを施した。波長変換素子の素子長は約10mmであり、基本周期(Λ0)の10倍である60μmごとに分割して、166個の断片からなる分極反転構造を構成する。それぞれの60μmごとに分割された断片内では、分極反転の位相は同じであり、それぞれの分割された断片ごとの位相を変調することによりチャーピングを施している。なお、分割された断片内の位相は、1周期ごとに変えても良い。
図6に、実施例1にかかる分極反転構造の素子端部付近の構造を示す。60μmごとに分割された断片のうち、分極反転構造の素子端部から8個の断片が示されている。それぞれの分割された断片内では、周期6μmの反転構造が10周期配置されており、その一部は、アポダイズに必要な分だけ一方の分極方向(非線形光学定数の符号)に固定されている(以下、符号固定部分という)。
例えば、3番目と4番目の断片では、周期6μmの反転構造を2周期有し、残りの8周期が符号固定部分であり、符号+の分極方向に固定されている。素子端部に近づくほど、分割された断片の中で、符号+の分極方向に固定されている符号固定部分の占める割合を大きくすることにより、擬似的にデューティを変化させたのと同じ効果を得ている。10周期の全てが反転構造を有している場合、デューティは50%であることに相当する。10周期中2周期が反転構造を有し、残りの8周期が固定されている場合は、デューティは10%であることに相当する。
図7に、実施例1にかかる分極反転構造のアポダイズの構成法を示す。素子の長さ方向に対して、アポダイズを実現にするのに用いた実質的なデューティの分布を表している。分割された断片内で、アポダイズに必要な分だけ一方の分極方向に固定することにより、図5(a)に示したチャープ構造を近似している。
図8に、実施例1にかかる波長変換素子の変換効率を示す。同じ素子長でチャーピングを施さない場合の位相整合帯域は、1.06μm帯の波長に換算すると0.2nm程度であった。これに対して実施例1では、約2nm程度の領域に渡って平坦な変換効率が得られている。すなわち、波長変換素子の温度許容幅、入射するレーザ光の波長変動に対する許容幅を大幅に拡大しながら、出力の変動を大きく抑えることが可能になっている。
図9に、実施例2にかかる分極反転構造の素子端部付近の構造を示す。実施例2では、波長1.06μm帯の第1の励起光と、波長1.55μm帯の第2の励起光とを非線形光学媒質に入射して、差周波発生を利用して、波長3.35μm帯の変換光へ変換できる波長変換素子を構成した。このとき、第2の励起光の波長を掃引して、広い波長範囲で波長変換が可能なように、分極反転構造にチャーピングを加えてある。
以下、分極反転構造と位相整合特性の詳細を説明する。実施例2では、LiNbO3基板を電界印可法により基本周期(Λ0)約28μmで分極反転した。実施例1では、反転構造10周期を1断片として、断片内の一部の周期に対して、アポダイズに必要な分だけ一方の分極方向に固定した。実施例2では、分極反転の基本周期中のデューティを変化させる。
図9には、分極反転構造の素子端部から20周期の反転構造が示されている。例えば、5番目の断片では、デューティ50%の基本周期を4周期含み、2番目の断片では、デューティ20%の基本周期を4周期含んでいる。素子端部に近づくほど、デューティを小さくして、擬似的にデューティを変化させたのと同じ効果を得ている。断片をいくつに設定するか、断片内で同じデューティの基本周期をいくつか含むかは、実施例1と同様に、式(5)の評価関数Tを計算して、最適化する。
実施例3では、実施例1の波長変換素子と半導体レーザを用いて、0.53μm帯の緑色の可視光を発生する光源を構成した。実施例3では、1.064μmで発振するDFB−LDを用いた。本レーザは、注入電流を600mAとすると、212mWの出力光が得られる。この出力光を、実施例1の波長変換素子(LiNbO3基板、素子長10mm、基本周期Λ0=6μm)に70%の結合効率で入射する。実施例3で用いた半導体レーザは、電流を25〜600mAまで変化させると、電流の増大にともなって出力の波長が1.2nmほど長波長側へとシフトする。
チャーピングを施さない場合の位相整合帯域は、1.06μm帯の波長に換算すると0.2nm程度なので、励起波長の変動幅が従来の波長変換素子の帯域を越えてしまい、電流を変調することができない。一方、実施例2では、波長変換素子の帯域が2nm程度あり、かつ変換帯域中のリップルが低減されているために、電流を変調しても励起光の波長変動による変換効率の変動を抑えることができる。
図10に、実施例3にかかる波長変換素子の注入電流に対する第二高調波の出力の変化を示す。波長変換帯域内のリップルが十分に抑えられているため、注入電流に対して出力は、単調増加を示す特性となる。このため電流の変調による可視光出力の変調を滑らかに行うことが可能となる。また、出力光の一部をフォトダイオードで検出し、光強度に応じて注入電流にフィードバックすることにより、可視光出力を一定に制御した場合であっても、フィードバックによる不安定性を生じない。
(応用例)
本実施形態では、チャーピングを行う方法として位相変調を施す方法を用いたが、非線形光学定数の変調周期を変調してチャーピングを行い、周期変調の関数を最適化しても同様の効果が得られる。
本実施形態では、チャーピングを行う方法として位相変調を施す方法を用いたが、非線形光学定数の変調周期を変調してチャーピングを行い、周期変調の関数を最適化しても同様の効果が得られる。
本実施形態では、第二高調波発生を利用したが、和周波発生、差周波発生、パラメトリック増幅・発振等を用いても波長変換効率の波長、温度依存性におけるリップルを低減することにより、同様の効果を得ることができる。
本実施形態では、非線形光学材料としてLiNbO3を用いたが、この他にも非線形光学定数の反転、または変調が可能な2次非線形光学材料として、例えば、LiTaO3,KNbO3,KTaO3,LixK1-xTayNb1-yO3,KTP等の酸化物結晶、AlGaAs等の半導体等を用いても本発明を適用することができる。
ここでは光の閉じ込めを強くし、長い相互作用長が得られ、高効率化に有利な非線形光学媒質として光導波路型の形態を取り上げた。本発明の適用はこれに限定されるものではなく、例えば高パワーのレーザ波長を変換するような場合においては、バルク型の形態においても同様の方法で波長変換素子を構成することができる。
11 非線形光学媒質
12 光導波路
13 第1の励起光(λ1)
14 第2の励起光(λ2)
15 合波器
16 変換光(λ3)
12 光導波路
13 第1の励起光(λ1)
14 第2の励起光(λ2)
15 合波器
16 変換光(λ3)
Claims (5)
- 非線形光学媒質を備え、
前記非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が基本周期Λ0ごとに周期的に反転し、かつ前記基本周期Λ0ごとに連続的に反転の位相が変化する分極反転構造を有し、前記基本周期Λ0を複数周期束ねた断片から構成され、前記断片の一部分の非線形光学定数の符号を一方の符号に固定した複数の符号固定部分を含み、前記非線形光学媒質の両端に近づくにつれて前記断片の中で前記符号固定部分が占める割合が大きくなり、
式(1)の波長λ1、λ2、λ3に対する前記非線形光学媒質内の屈折率を、それぞれn1、n2、n3としたとき、
- 非線形光学媒質を備え、
前記非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が連続的に反転し、かつ連続的に反転の周期が変化する分極反転構造を有し、前記基本周期Λ0を複数周期束ねた断片から構成され、前記断片の一部分の非線形光学定数の符号を一方の符号に固定した複数の符号固定部分を含み、前記非線形光学媒質の両端に近づくにつれて前記断片の中で前記符号固定部分が占める割合が大きくなり、
式(1)の波長λ1、λ2、λ3に対する前記非線形光学媒質内の屈折率を、それぞれn1、n2、n3としたとき、
- 非線形光学媒質を備え、
前記非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が基本周期Λ0ごとに周期的に反転し、かつ前記基本周期Λ0ごとに連続的に反転の位相が変化する分極反転構造を有し、1周期の中で一方の非線形光学定数の符号が占める割合を、前記非線形光学媒質の両端に近づくにつれて変化させ、
式(1)の波長λ1、λ2、λ3に対する前記非線形光学媒質内の屈折率を、それぞれn1、n2、n3としたとき、
- 非線形光学媒質を備え、
前記非線形光学媒質は、非線形光学定数の符号が連続的に反転し、かつ連続的に反転の周期が変化する分極反転構造を有し、1周期の中で一方の非線形光学定数の符号が占める割合を、前記非線形光学媒質の両端に近づくにつれて変化させ、
式(1)の波長λ1、λ2、λ3に対する前記非線形光学媒質内の屈折率を、それぞれn1、n2、n3としたとき、
- 1つまたは2つの半導体レーザと、
請求項1ないし4のいずれかに記載の波長変換素子とを備え、
前記半導体レーザから出射される励起光を前記波長変換素子に入射し、前記半導体レーザへの駆動電流を変化させて、前記波長変換素子から出射される変換光の強度または波長を変化させることを特徴とする波長変換光源。
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2009
- 2009-07-30 JP JP2009178241A patent/JP2011033727A/ja active Pending
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