JP2004232743A - 動力伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】雨天走行時にエンジンルーム内に水が入っても、ベルトスリップの発生を抑制し、その効果を経時的に持続させることが可能な伝動ベルトを提供することにある。
【解決手段】ベルト長手方向に沿って心線3を埋設した接着ゴム層2に隣接してリブを設けた圧縮ゴム層4を配置し、ベルト背面に基布5を積層したVリブドベルト1であり、圧縮ゴム層4が、ゴム100質量部に対して、ナイロン樹脂パウダー6を3〜25質量部配合したゴム組成物で構成されてなる。プーリとの接触部を該ゴム組成物で構成することで、注水時において水膜除去効果を呈し、スリップを抑制できる。ナイロン樹脂パウダーとしては、平均一次粒径500μm以下のものが好ましく用いられる。
【選択図】 図1
【解決手段】ベルト長手方向に沿って心線3を埋設した接着ゴム層2に隣接してリブを設けた圧縮ゴム層4を配置し、ベルト背面に基布5を積層したVリブドベルト1であり、圧縮ゴム層4が、ゴム100質量部に対して、ナイロン樹脂パウダー6を3〜25質量部配合したゴム組成物で構成されてなる。プーリとの接触部を該ゴム組成物で構成することで、注水時において水膜除去効果を呈し、スリップを抑制できる。ナイロン樹脂パウダーとしては、平均一次粒径500μm以下のものが好ましく用いられる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は動力伝動ベルトに係り、詳しくは伝達面に水が付着しても高い伝動力を発揮することができる動力伝動ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム工業分野、なかでも自動車用部品の高機能、高性能化が望まれている。そのような状況の中で、通常走行時に限らず、注水時においても高い伝達性能を有する動力伝動ベルトが求められている。また静粛化についても厳しい要求があり、特に駆動装置においてはエンジン音以外の音は異音とされるため、ベルト発音対策についても要請がある。
【0003】
動力伝動ベルト駆動装置における異音としては、回転変動の大きな条件や高負荷条件において発生するスリップ音や、圧縮ゴム層が粘着摩耗を起こし、その結果リブ間の溝底に付着した粘着ゴムにより発生する騒音が指摘されているが、これら発音に対しては、圧縮ゴム層に綿、ナイロン、ポリエステル等の短繊維を配合したり、カーボンブラックなどの補強材を増量することによる対処が可能である。
【0004】
しかし、雨天走行時などにおいてエンジンルーム内に水が入り、ベルトとプーリの間に水が付着した際には、前記ベルトは水膜除去効果が低いためにスリップ率が高く、伝達性能が低下したり、騒音が発生するなどの問題があった。このような注水時におけるスリップ対策としては、タルク等のパウダーを圧縮ゴム層表面に塗布したり、ベルト張力を高めてスリップ率を小さくする試みがなされている。また特定繊維(例えばパラ系アラミド繊維)を配合したゴム組成物で圧縮ゴム層を形成するといった提案もある。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特開平07−151191号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、パウダー塗布に関しては作業工程増によるコストアップとなるとともに、経時的にベルト表面のパウダーが剥がれ落ちてスリップ抑制効果が低下するといった問題があった。一方、初期にベルト張力を高く設定した場合、ベルトの摩耗や心線の伸び等でベルトの張力が徐々に低下していき、経時的にスリップが起こりやすくなるといった問題が指摘されている。またパラ系アラミド繊維を配合したベルトにあっては水膜除去効果が充分とは言えない。
【0007】
上記問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、本発明を提案するものであり、その目的とするところは、注水時においてもベルトスリップ発生を抑制し、その効果を経時的に持続させることが可能な伝動ベルトを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1の発明では、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる動力伝動ベルトにおいて、少なくとも上記圧縮ゴム層側表面が、ナイロン樹脂パウダーを配合したゴム配合物で構成されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項2記載の発明では、請求項1記載の動力伝動ベルトにあって、前記ゴム配合物は、ゴム100質量部に対してナイロン樹脂パウダーが3〜25質量部配合されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の動力伝動ベルトにあって、ナイロン樹脂パウダーの平均一次粒径が500μm以下であることを特徴とする。
【0011】
本願請求項4記載の発明では、請求項1乃至3のいずれかに記載の動力伝動ベルトいあって、動力伝動ベルトが、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、少なくとも1つのリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトであることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1に本発明に係る動力伝動ベルトの一例としてVリブドベルト1を示す。Vリブドベルト1は、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などを素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線3を接着ゴム層2中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を有している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられ、またベルト表面には基布5が積層されている。
【0013】
前記リブの少なくともリブ側面9が、ナイロン樹脂パウダー6を配合したゴム組成物で構成されている。リブ部側表面、つまりプーリとの接触部を該ゴム組成物で構成することで、注水時において水膜除去効果を呈し、スリップを抑制できる。
【0014】
尚、図1は具体的な一実施形態であって、圧縮ゴム層4全体を、ナイロン樹脂パウダー6を配合したゴム組成物で構成しているが、少なくともリブ側表面が該ゴムで構成されていればよいので、例えば圧縮ゴム層の表面層のみ該ゴム配合物で構成しても良い。
【0015】
ナイロン樹脂パウダー6は、6ナイロン、66ナイロン等のナイロン樹脂からなるパウダーであって、特徴としては、比較的安価で、水分率が高く、接着性に優れることが挙げられる。ナイロン樹脂パウダーとしては、平均一次粒径500μm以下のものが好ましく用いられる。500μmを超えると、ゴムの引張強度の低下などベルト物性への影響がある。またゴム配合物におけるナイロン樹脂パウダー6の配合割合は、ゴム100質量部に対して3〜25質量部配合されることが好ましい。3質量部未満の場合は、注水時における耐スリップ効果が十分に得られないといった問題があり、一方、25質量部を超えると作業性に難があり、しかもゴム配合物の引張強度の低下を引き起こすなどに問題がある。
【0016】
圧縮ゴム層4に使用されるポリマーとしては、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBR、エチレン−α−オレフィンエラストマーが使用され、水素化ニトリルゴムは水素添加率80%以上であり、耐熱性及び耐オゾン性の特性を発揮するために、好ましくは90%以上が良い。水素添加率80%未満の水素化ニトリルゴムは、耐熱性及び耐オゾン性は極度に低下する。耐油性及び耐寒性を考慮すると、結合アクリロニトリル量は20〜45%の範囲が好ましい。中でも、耐油性と耐寒性を有するエチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。
【0017】
上記エチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、その代表的なものとしてEPDMがあり、これはエチレン−プロピレン−ジエンモノマーをいう。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどがあげられる。
【0018】
上記ゴムの架橋には、硫黄や有機過酸化物が使用される。有機過酸化物としては具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1.1−t−ブチルペロキシ−3.3.5−トリメチルシクロヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン−3、ビス(t−ブチルペロキシジ−イソプロピル)ベンゼン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシベンゾアート、t−ブチルペロキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートが挙げられる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常エチレン−α−オレフィンエラストマー100gに対して0.005〜0.02モルgの範囲で使用される。
【0019】
また加流促進剤を配合しても良い。加硫促進剤としてはチアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系の加硫促進剤が例示でき、チアゾール系加硫促進剤としては、具体的に2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等があり、チウラム系加硫促進剤としては、具体的にテトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル− N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド等があり、またスルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的にN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等がある。また、他の加硫促進剤としては、ビスマレイミド、エチレンチオウレアなども使用できる。これら加硫促進剤は単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0020】
また、架橋助剤(co−agent)を配合することによって、架橋度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。架橋助剤として挙げられるものとしては、TIAC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N‘−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄など通常パーオキサイド架橋に用いるものである。
【0021】
そして、それ以外に必要に応じてシリカ、カーボンブラックのような補強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に使用されるものが使用される。
【0022】
また、圧縮ゴム層4には、短繊維、例えばナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミドからなる短繊維を混入し、圧縮ゴム層4の耐側圧性を向上させることが好ましい。また、プーリと接する面になる圧縮ゴム層4の表面に該短繊維を突出させ、圧縮ゴム層4の摩擦係数を低下させて、ベルト走行時の騒音を軽減させることもできる。これらの短繊維のうち、剛直で強度を有し、しかも耐摩耗性を有するアラミド短繊維が最も効果がある。
【0023】
上記アラミド短繊維が前述の効果を十分に発揮するためには、アラミド繊維の繊維長さは1.5〜20mmで、その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して1〜30質量部である。このアラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーメックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等である。
【0024】
アラミド短繊維の添加量が1質量部未満の場合には、圧縮ゴム層4のゴムが粘着しやすくなって摩耗する欠点があり、また一方30質量部を超えると短繊維がゴム中に均一に分散しなくなる。ただし、このアラミド短繊維の添加は必須ではなく、他の素材からなる短繊維を添加したものでも良い。また単独で添加するに限るものではない。
【0025】
基布5は、織物、編物、不織布から選択される帆布である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。
【0026】
上記基布5は、公知技術に従ってレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬後、未加硫ゴムを基布5に擦り込むフリクションを行ったり、またRFL液に浸漬後にゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理する。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
【0027】
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くできてベルト寿命を延長させるために好ましい。このコードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニールが4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また8,000を越えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が悪くなる。
【0028】
エチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下に適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0029】
心線3にはゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をRFL液に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0030】
接着処理されたコードは、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを1.0〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。1.0mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる
【0031】
一方、接着ゴム層2には耐熱性を有し、圧縮ゴム層4と同種のゴムが使用される。ただし、短繊維は混入されないが、必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合に用いるものが使用される。
【0032】
Vリブドベルトの代表的な製造方法は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に帆布と接着ゴム層とを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に接着ゴム層、圧縮ゴム層を順次巻きつけて積層体を得た後、これを架橋してスリーブを得る。
【0033】
次に、架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架して所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の架橋スリーブに当接するように移動して架橋スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨する。
【0034】
このようにして得られた架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該架橋スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定の幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0035】
尚、上記Vリブドベルト1は本発明の実施の一形態であって、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る動力伝動ベルトの他の一例としてVベルト10を図2に示す。Vベルト10は、接着ゴム層12内にベルト長手方向に沿って心線13が埋設され、接着ゴム層12の上部下部に隣接して伸張ゴム層20と圧縮ゴム層14を有し、伸張ゴム層20はその表面に基布15が積層した構造を有する。そして少なくとも圧縮ゴム層側面19がナイロン樹脂パウダー6を配合したゴム組成物で構成されている。尚、必要に応じて、圧縮ゴム層12にベルト長手方向に所定間隔でコグ部を設けてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜5、比較例1,2
円筒状モールドに経糸と緯糸とが綿糸からなる平織物にクロロプレンゴムをフリクションしたゴム付帆布を1プライ巻き付けた後、表2に示すクロロプレンゴム組成物からなる接着ゴムシートを巻き、更にその上にコードをスピニングし、そして表1の配合のクロロプレンゴムシートからなる圧縮ゴム層を巻き付け成形を終えた。これを公知の方法で160°C、30分で加硫して円筒状の加硫ゴムスリーブを得た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
上記各加硫ゴムスリーブを研磨機の駆動ロールと従動ロールに装着して、張力を付与した後に回転させた。150メッシュのダイヤモンドを表面に装着した研磨ホイールを1,600rpmで回転させ、これを加硫スリーブに当接させてリブ部を研磨した。研磨機から取り出したスリーブを切断機に設置した後、回転しながら切断した。
【0040】
作製したVリブドベルトは、心線が接着ゴム層内に埋設され、その上側にゴム付綿帆布を1プライ積層し、他方接着ゴム層の下側にはゴム圧縮部があって複数個のリブがベルト長手方向に設けられている。このVリブドベルトはRMA規格による長さ1,100mmのK型3PK1100であった。
【0041】
これら作製した各Vリブドベルトについて、注水走行及びドライ時走行におけるベルトの伝達性能について試験した。上記Vリブドベルトを駆動プーリ(直径120mm)と従動プーリ(直径120mm)に巻き付けてベルト張力を一定(10.2kgf/ベルト)に調節し、雰囲気温度23℃、駆動プーリの回転数2,000rpm、注水(注水量120ml/分)の条件下で負荷を上昇させながら、ベルトのスリップ率が2%になったときの負荷を求めた。またドライ時の評価においては、同一のレイアウトで注水を行わずに試験を行った。
【0042】
また発音性能試験として、各ベルトの発音限界張力を試験した。上記Vリブドベルトを駆動プーリ(直径120mm)と従動プーリ(直径120mm)に巻き付けて負荷を0.92kgf・mに一定した後、雰囲気温度23℃の条件下で、ベルト張力を下げていきながら走行させ、発音した時のベルト張力を発音限界張力とした。
【0043】
この結果、ナイロン樹脂パウダーを配合したゴム組成物で構成した実施例は、比較例に比べて注水時における伝達性能が向上していることが判る。またドライ時と注水時のスリップ率の差が小さく伝達性能が安定しているといった効果もある。特に、適量のナイロン樹脂パウダーを配合した実施例2〜4については発音限界張力も低く、騒音低減効果も奏することが判明した。しかし、ナイロン樹脂パウダーを少量配合した実施例1では注水時における伝達性能は比較例1に比べて高いものの、発音抑制効果が顕著ではない。またナイロン樹脂パウダーを多量に配合した実施例5では、注水時における伝達性能は良好なものの、ゴム組成物の剛性が高くなるなどの不具合があった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の発明によれば、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、少なくとも1つのリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトにおいて、少なくともリブ部側表面がナイロン樹脂パウダーを配合したゴム配合物で構成されていることを特徴とする動力伝動ベルトであって、注水時における伝達性能が高いベルトを提供することができた。またナイロン樹脂パウダーの配合量を特定量にすることで、作業性が良く、通常走行時および注水時ともに高い伝達性能が得られると共に、スリップ音の発生を改善することができた。また平均一次粒径を特定値以下のものを用いることでゴム物性にも悪影響を与えないことも判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明に係るVベルトの断面斜視図である。
【符号の説明】
1 Vリブドベルト
2 接着ゴム層
3 心線
4 圧縮ゴム層
5 基布
6 ナイロン樹脂パウダー
9 リブ側面
10 Vベルト
12 接着ゴム層
13 心線
14 圧縮ゴム層
15 基布
19 圧縮ゴム層側面
20 伸張ゴム層
【発明の属する技術分野】
本発明は動力伝動ベルトに係り、詳しくは伝達面に水が付着しても高い伝動力を発揮することができる動力伝動ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム工業分野、なかでも自動車用部品の高機能、高性能化が望まれている。そのような状況の中で、通常走行時に限らず、注水時においても高い伝達性能を有する動力伝動ベルトが求められている。また静粛化についても厳しい要求があり、特に駆動装置においてはエンジン音以外の音は異音とされるため、ベルト発音対策についても要請がある。
【0003】
動力伝動ベルト駆動装置における異音としては、回転変動の大きな条件や高負荷条件において発生するスリップ音や、圧縮ゴム層が粘着摩耗を起こし、その結果リブ間の溝底に付着した粘着ゴムにより発生する騒音が指摘されているが、これら発音に対しては、圧縮ゴム層に綿、ナイロン、ポリエステル等の短繊維を配合したり、カーボンブラックなどの補強材を増量することによる対処が可能である。
【0004】
しかし、雨天走行時などにおいてエンジンルーム内に水が入り、ベルトとプーリの間に水が付着した際には、前記ベルトは水膜除去効果が低いためにスリップ率が高く、伝達性能が低下したり、騒音が発生するなどの問題があった。このような注水時におけるスリップ対策としては、タルク等のパウダーを圧縮ゴム層表面に塗布したり、ベルト張力を高めてスリップ率を小さくする試みがなされている。また特定繊維(例えばパラ系アラミド繊維)を配合したゴム組成物で圧縮ゴム層を形成するといった提案もある。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特開平07−151191号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、パウダー塗布に関しては作業工程増によるコストアップとなるとともに、経時的にベルト表面のパウダーが剥がれ落ちてスリップ抑制効果が低下するといった問題があった。一方、初期にベルト張力を高く設定した場合、ベルトの摩耗や心線の伸び等でベルトの張力が徐々に低下していき、経時的にスリップが起こりやすくなるといった問題が指摘されている。またパラ系アラミド繊維を配合したベルトにあっては水膜除去効果が充分とは言えない。
【0007】
上記問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、本発明を提案するものであり、その目的とするところは、注水時においてもベルトスリップ発生を抑制し、その効果を経時的に持続させることが可能な伝動ベルトを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1の発明では、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる動力伝動ベルトにおいて、少なくとも上記圧縮ゴム層側表面が、ナイロン樹脂パウダーを配合したゴム配合物で構成されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項2記載の発明では、請求項1記載の動力伝動ベルトにあって、前記ゴム配合物は、ゴム100質量部に対してナイロン樹脂パウダーが3〜25質量部配合されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の動力伝動ベルトにあって、ナイロン樹脂パウダーの平均一次粒径が500μm以下であることを特徴とする。
【0011】
本願請求項4記載の発明では、請求項1乃至3のいずれかに記載の動力伝動ベルトいあって、動力伝動ベルトが、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、少なくとも1つのリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトであることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1に本発明に係る動力伝動ベルトの一例としてVリブドベルト1を示す。Vリブドベルト1は、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などを素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線3を接着ゴム層2中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を有している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられ、またベルト表面には基布5が積層されている。
【0013】
前記リブの少なくともリブ側面9が、ナイロン樹脂パウダー6を配合したゴム組成物で構成されている。リブ部側表面、つまりプーリとの接触部を該ゴム組成物で構成することで、注水時において水膜除去効果を呈し、スリップを抑制できる。
【0014】
尚、図1は具体的な一実施形態であって、圧縮ゴム層4全体を、ナイロン樹脂パウダー6を配合したゴム組成物で構成しているが、少なくともリブ側表面が該ゴムで構成されていればよいので、例えば圧縮ゴム層の表面層のみ該ゴム配合物で構成しても良い。
【0015】
ナイロン樹脂パウダー6は、6ナイロン、66ナイロン等のナイロン樹脂からなるパウダーであって、特徴としては、比較的安価で、水分率が高く、接着性に優れることが挙げられる。ナイロン樹脂パウダーとしては、平均一次粒径500μm以下のものが好ましく用いられる。500μmを超えると、ゴムの引張強度の低下などベルト物性への影響がある。またゴム配合物におけるナイロン樹脂パウダー6の配合割合は、ゴム100質量部に対して3〜25質量部配合されることが好ましい。3質量部未満の場合は、注水時における耐スリップ効果が十分に得られないといった問題があり、一方、25質量部を超えると作業性に難があり、しかもゴム配合物の引張強度の低下を引き起こすなどに問題がある。
【0016】
圧縮ゴム層4に使用されるポリマーとしては、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBR、エチレン−α−オレフィンエラストマーが使用され、水素化ニトリルゴムは水素添加率80%以上であり、耐熱性及び耐オゾン性の特性を発揮するために、好ましくは90%以上が良い。水素添加率80%未満の水素化ニトリルゴムは、耐熱性及び耐オゾン性は極度に低下する。耐油性及び耐寒性を考慮すると、結合アクリロニトリル量は20〜45%の範囲が好ましい。中でも、耐油性と耐寒性を有するエチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。
【0017】
上記エチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、その代表的なものとしてEPDMがあり、これはエチレン−プロピレン−ジエンモノマーをいう。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどがあげられる。
【0018】
上記ゴムの架橋には、硫黄や有機過酸化物が使用される。有機過酸化物としては具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1.1−t−ブチルペロキシ−3.3.5−トリメチルシクロヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン−3、ビス(t−ブチルペロキシジ−イソプロピル)ベンゼン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシベンゾアート、t−ブチルペロキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートが挙げられる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常エチレン−α−オレフィンエラストマー100gに対して0.005〜0.02モルgの範囲で使用される。
【0019】
また加流促進剤を配合しても良い。加硫促進剤としてはチアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系の加硫促進剤が例示でき、チアゾール系加硫促進剤としては、具体的に2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等があり、チウラム系加硫促進剤としては、具体的にテトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル− N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド等があり、またスルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的にN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等がある。また、他の加硫促進剤としては、ビスマレイミド、エチレンチオウレアなども使用できる。これら加硫促進剤は単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0020】
また、架橋助剤(co−agent)を配合することによって、架橋度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。架橋助剤として挙げられるものとしては、TIAC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N‘−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄など通常パーオキサイド架橋に用いるものである。
【0021】
そして、それ以外に必要に応じてシリカ、カーボンブラックのような補強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に使用されるものが使用される。
【0022】
また、圧縮ゴム層4には、短繊維、例えばナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミドからなる短繊維を混入し、圧縮ゴム層4の耐側圧性を向上させることが好ましい。また、プーリと接する面になる圧縮ゴム層4の表面に該短繊維を突出させ、圧縮ゴム層4の摩擦係数を低下させて、ベルト走行時の騒音を軽減させることもできる。これらの短繊維のうち、剛直で強度を有し、しかも耐摩耗性を有するアラミド短繊維が最も効果がある。
【0023】
上記アラミド短繊維が前述の効果を十分に発揮するためには、アラミド繊維の繊維長さは1.5〜20mmで、その添加量はエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して1〜30質量部である。このアラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーメックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等である。
【0024】
アラミド短繊維の添加量が1質量部未満の場合には、圧縮ゴム層4のゴムが粘着しやすくなって摩耗する欠点があり、また一方30質量部を超えると短繊維がゴム中に均一に分散しなくなる。ただし、このアラミド短繊維の添加は必須ではなく、他の素材からなる短繊維を添加したものでも良い。また単独で添加するに限るものではない。
【0025】
基布5は、織物、編物、不織布から選択される帆布である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。
【0026】
上記基布5は、公知技術に従ってレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬後、未加硫ゴムを基布5に擦り込むフリクションを行ったり、またRFL液に浸漬後にゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理する。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
【0027】
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くできてベルト寿命を延長させるために好ましい。このコードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニールが4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また8,000を越えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が悪くなる。
【0028】
エチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下に適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0029】
心線3にはゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をRFL液に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行なった後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0030】
接着処理されたコードは、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを1.0〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。1.0mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる
【0031】
一方、接着ゴム層2には耐熱性を有し、圧縮ゴム層4と同種のゴムが使用される。ただし、短繊維は混入されないが、必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合に用いるものが使用される。
【0032】
Vリブドベルトの代表的な製造方法は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に帆布と接着ゴム層とを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に接着ゴム層、圧縮ゴム層を順次巻きつけて積層体を得た後、これを架橋してスリーブを得る。
【0033】
次に、架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架して所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の架橋スリーブに当接するように移動して架橋スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨する。
【0034】
このようにして得られた架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該架橋スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定の幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0035】
尚、上記Vリブドベルト1は本発明の実施の一形態であって、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る動力伝動ベルトの他の一例としてVベルト10を図2に示す。Vベルト10は、接着ゴム層12内にベルト長手方向に沿って心線13が埋設され、接着ゴム層12の上部下部に隣接して伸張ゴム層20と圧縮ゴム層14を有し、伸張ゴム層20はその表面に基布15が積層した構造を有する。そして少なくとも圧縮ゴム層側面19がナイロン樹脂パウダー6を配合したゴム組成物で構成されている。尚、必要に応じて、圧縮ゴム層12にベルト長手方向に所定間隔でコグ部を設けてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜5、比較例1,2
円筒状モールドに経糸と緯糸とが綿糸からなる平織物にクロロプレンゴムをフリクションしたゴム付帆布を1プライ巻き付けた後、表2に示すクロロプレンゴム組成物からなる接着ゴムシートを巻き、更にその上にコードをスピニングし、そして表1の配合のクロロプレンゴムシートからなる圧縮ゴム層を巻き付け成形を終えた。これを公知の方法で160°C、30分で加硫して円筒状の加硫ゴムスリーブを得た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
上記各加硫ゴムスリーブを研磨機の駆動ロールと従動ロールに装着して、張力を付与した後に回転させた。150メッシュのダイヤモンドを表面に装着した研磨ホイールを1,600rpmで回転させ、これを加硫スリーブに当接させてリブ部を研磨した。研磨機から取り出したスリーブを切断機に設置した後、回転しながら切断した。
【0040】
作製したVリブドベルトは、心線が接着ゴム層内に埋設され、その上側にゴム付綿帆布を1プライ積層し、他方接着ゴム層の下側にはゴム圧縮部があって複数個のリブがベルト長手方向に設けられている。このVリブドベルトはRMA規格による長さ1,100mmのK型3PK1100であった。
【0041】
これら作製した各Vリブドベルトについて、注水走行及びドライ時走行におけるベルトの伝達性能について試験した。上記Vリブドベルトを駆動プーリ(直径120mm)と従動プーリ(直径120mm)に巻き付けてベルト張力を一定(10.2kgf/ベルト)に調節し、雰囲気温度23℃、駆動プーリの回転数2,000rpm、注水(注水量120ml/分)の条件下で負荷を上昇させながら、ベルトのスリップ率が2%になったときの負荷を求めた。またドライ時の評価においては、同一のレイアウトで注水を行わずに試験を行った。
【0042】
また発音性能試験として、各ベルトの発音限界張力を試験した。上記Vリブドベルトを駆動プーリ(直径120mm)と従動プーリ(直径120mm)に巻き付けて負荷を0.92kgf・mに一定した後、雰囲気温度23℃の条件下で、ベルト張力を下げていきながら走行させ、発音した時のベルト張力を発音限界張力とした。
【0043】
この結果、ナイロン樹脂パウダーを配合したゴム組成物で構成した実施例は、比較例に比べて注水時における伝達性能が向上していることが判る。またドライ時と注水時のスリップ率の差が小さく伝達性能が安定しているといった効果もある。特に、適量のナイロン樹脂パウダーを配合した実施例2〜4については発音限界張力も低く、騒音低減効果も奏することが判明した。しかし、ナイロン樹脂パウダーを少量配合した実施例1では注水時における伝達性能は比較例1に比べて高いものの、発音抑制効果が顕著ではない。またナイロン樹脂パウダーを多量に配合した実施例5では、注水時における伝達性能は良好なものの、ゴム組成物の剛性が高くなるなどの不具合があった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の発明によれば、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、少なくとも1つのリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトにおいて、少なくともリブ部側表面がナイロン樹脂パウダーを配合したゴム配合物で構成されていることを特徴とする動力伝動ベルトであって、注水時における伝達性能が高いベルトを提供することができた。またナイロン樹脂パウダーの配合量を特定量にすることで、作業性が良く、通常走行時および注水時ともに高い伝達性能が得られると共に、スリップ音の発生を改善することができた。また平均一次粒径を特定値以下のものを用いることでゴム物性にも悪影響を与えないことも判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明に係るVベルトの断面斜視図である。
【符号の説明】
1 Vリブドベルト
2 接着ゴム層
3 心線
4 圧縮ゴム層
5 基布
6 ナイロン樹脂パウダー
9 リブ側面
10 Vベルト
12 接着ゴム層
13 心線
14 圧縮ゴム層
15 基布
19 圧縮ゴム層側面
20 伸張ゴム層
Claims (4)
- ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる動力伝動ベルトにおいて、少なくとも上記圧縮ゴム層側表面が、ナイロン樹脂パウダーを配合したゴム配合物で構成されていることを特徴とする動力伝動ベルト。
- 前記ゴム配合物は、ゴム100質量部に対してナイロン樹脂パウダーが3〜25質量部配合されている請求項1記載の動力伝動ベルト。
- ナイロン樹脂パウダーの平均一次粒径が500μm以下である請求項1または2記載の動力伝動ベルト。
- 動力伝動ベルトが、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、少なくとも1つのリブ部をもつ圧縮ゴム層からなるVリブドベルトである請求項1乃至3のいずれかに記載の動力伝動ベルト。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US8475310B2 (en) | 2008-01-25 | 2013-07-02 | Bando Chemical Industries, Ltd. | Friction transmission belt |
DE112009004597T5 (de) | 2009-03-26 | 2012-05-24 | Bando Chemical Industries, Ltd. | Reibungsübertragungsriemen |
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