JP2004232612A - カムシャフト - Google Patents
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Abstract
【課題】カムのベース円部の振れに伴うバルブの着座力の低下を抑制することができるカムシャフトを提供する。
【解決手段】カムシャフト25は、互いに隣接するジャーナル部26間を連結する軸部27と、軸部27上に設けられかつノーズ部29bとベース円部29aとからなるカム面29を有するカム28とを備える。軸部27の断面形状は、該軸部27の曲げ剛性が、該軸部27に対応するカム28のノーズ部29bの中心及びベース円部29aの中心を通るカム中心線CLと交差する方向において小さくなるような形状とされている。
【選択図】 図2
【解決手段】カムシャフト25は、互いに隣接するジャーナル部26間を連結する軸部27と、軸部27上に設けられかつノーズ部29bとベース円部29aとからなるカム面29を有するカム28とを備える。軸部27の断面形状は、該軸部27の曲げ剛性が、該軸部27に対応するカム28のノーズ部29bの中心及びベース円部29aの中心を通るカム中心線CLと交差する方向において小さくなるような形状とされている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの運転中に同機関の気筒に設けられた吸気・排気バルブ等のバルブを開閉するカムシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
吸排気弁を有する一般のエンジンにおいては、作動時の熱によるシリンダヘッドの膨張と動弁系要素の膨張との差を考慮して、吸排気弁の適切なシールを行なうため、所定のバルブクリアランスがあらかじめ設けてある。
【0003】
ところが、長時間の使用により動弁系要素各部の摩滅等が生じ、初期設定したバルブクリアランスが大きくなることがある。バルブクリアランスの増大はエンジンの性能を低下させ騒音を増大させ、場合によっては有害な排気ガスの濃度をも増大しかねない。したがって、上記不具合を防止するために、バルブクリアランスの点検調整という時間のかかる作業が定期的に必要とされていた。
【0004】
このエンジンにおける、所定のバルブクリアランスの点検調整の煩雑さを解決したのが、特許文献1に示されるように、自動的にバルブクリアランスを略零とする油圧ラッシュアジャスタを備えた動弁装置が提案されている。
【0005】
この動弁装置では、シリンダヘッド内の所定位置に油圧ラッシュアジャスタが配置されている。油圧ラッシュアジャスタの頭部にはロッカアームの一端が当接しており、エンジン動作時にはロッカアームは、油圧ラッシュアジャスタの頭部を支点として揺動する。油圧ラッシュアジャスタは、伸びる方向には自ら素早く伸長するが、縮む方向には強い力が加わっても縮長しにくい構成となっている。ロッカアームの他端の下面には吸気バルブもしくは排気バルブの上端が当接しており、この吸気バルブもしくは排気バルブは、リターンスプリングにより閉じる方向へ付勢されている。カムはカムシャフトと一体となっており、カムシャフトの回転に伴って、カムが回転するようになっている。カムは、カムシャフトのジャーナル部と同軸であるベース円部と、ベース円部から突出したノーズ部とから構成される。ロッカアームはカムとの間で両者が接触する接触面を有している。
【0006】
上記のように構成された動弁装置において、ロッカアームは油圧ラッシュアジャスタとバルブとによって、カムに向かって押圧されており、したがって、各接触面のクリアランスは零となっている。この状態からエンジンが始動されると、カムシャフトが回転しカムのベース円部からノーズ部まで接触面に対するカムの当接部が移動する。それによりノーズ部は、ロッカアームの接触面を押圧するが、油圧ラッシュアジャスタは上述したように外圧が加わっても縮長しないので、ロッカアームは油圧ラッシュアジャスタの頭部を支点として回動する。回動したロッカアームの他端がバルブを押し下げて、バルブの開弁動作を行なう。更に、カムが回動しノーズ部が戻るときには、ロッカアームはバルブを介して、リターンスプリングの付勢力によりカムに向かって押圧されているので、ロッカアームの他端はノーズ部の移動と共に上方に移動し、これによりバルブの閉弁動作が行なわれる。このような動弁系の動作中に、油圧ラッシュアジャスタは動弁系各部の熱膨張や摩耗による各部の変化を吸収し、それによりロッカアームの接触面とカムとの間隙すなわちバルブクリアランスを零とし、異音等の不具合を防止するものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−288020号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、カムシャフトにおけるカムのベース円部は、ジャーナル部と同軸となるように形成されているが、加工公差があり、ジャーナル部の外形を基準としてベース円部が振れることが一般的である。このようにカムのベース円部が振れていると、上述したように油圧ラッシュアジャスタは外力を加えても縮長しにくいことから、ロッカアームによってバルブが押圧されることとなり、バルブの着座力が低下するという問題がある。特に、バルブが開弁状態から閉弁する時においてバルブの着座力が低下すると、各気筒における気密性が低下して、アイドリングが不安定な状態となるいわゆるラフアイドルなどエンジン不調の原因となることがある。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、カムのベース円部の振れに伴うバルブの着座力の低下を抑制することができるカムシャフトを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、エンジンの気筒に対応したバルブを開閉するためのカムシャフトであって、エンジンに対して回転可能に支持される複数のジャーナル部と、互いに隣接するジャーナル部間を連結する軸部と、該軸部上に設けられかつノーズ部と前記ジャーナル部を基準とするベース円部とからなるカム面を有するカムとを備えたカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状を、該軸部の曲げ剛性が、該軸部に対応する前記カムのノーズ部の中心及びベース円部の中心を通るカム中心線と交差する方向において小さくなるような形状としたことを特徴とする。
【0011】
カムシャフトの回転に伴い、カムのノーズ部がバルブに当接する場合にはバルブがリフトされ、カムのベース円部がバルブに当接する場合にはバルブは着座して閉じられる。このとき、加工公差によりカムのベース円部がジャーナル部に対して振れている場合には、その振れ部分がバルブに当接すると、バルブに開方向の力が作用し、バルブの着座力が低下することとなる。
【0012】
この点において、この構成によれば、カムを設けた軸部の曲げ剛性が、カムのノーズ部の中心及びベース円部の中心を通るカム中心線と交差する方向において小さくなっているので、カムを設けた軸部がバルブから離間する方向にわずかに撓み、バルブの着座力の低下が抑制される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状は、前記カム中心線の方向における寸法が長く、該カム中心線と直交する方向における寸法が短い扁平状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、カムシャフトの軸部の断面形状をカム中心線の方向における寸法が長く、該カム中心線と直交する方向における寸法が短い扁平状に形成することによって、軸部の曲げ剛性を小さくすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状は、前記カム中心線にほぼ平行な部分を備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、軸部の加工を容易に行って軸部の曲げ剛性を変更することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状は、前記カム中心線を中心として対称状をなすことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、軸部の断面形状はカム中心線を中心として対称状に形成されているため、カムシャフトの回転バランスの低下を抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、エンジンの気筒に対応したバルブを開閉するためのカムシャフトであって、エンジンに対して回転可能に支持される複数のジャーナル部と、互いに隣接するジャーナル部間を連結する軸部と、該軸部上に設けられかつノーズ部と前記ジャーナル部を基準とするベース円部とからなるカム面を有するカムとを備えたカムシャフトにおいて、前記カムのカム面を、前記カムシャフトの回転方向においてベース円部の終端側から前記ジャーナル部までの寸法が、ベース円部の始端側から前記ジャーナル部までの寸法よりも大きくなる形状に形成したことを特徴とする。
【0018】
カムシャフトの回転に伴い、カムのノーズ部がバルブに当接する場合にはバルブがリフトされ、カムのベース円部がバルブに当接する場合にはバルブは着座して閉じられる。このとき、カムのベース円部がジャーナル部に対して振れている場合には、その振れ部分がバルブに当接すると、バルブに開方向の力が作用し、バルブの着座力が低下することとなる。
【0019】
この構成によれば、カムのカム面を、カムシャフトの回転方向においてベース円部の終端側からジャーナル部までの寸法が、ベース円部の始端側からジャーナル部までの寸法よりも大きくなる形状に形成している。このとき、加工公差によりベース円部がジャーナル部に対してその始端側に振れていても、ベース円部の終端側からジャーナル部までの寸法とベース円部の始端側からジャーナル部までの寸法との差によってベース円部の始端側への振れの一部が相殺され、ベース円部の始端側の振れは許容範囲内に収まる。そのため、ベース円部の始端側においてカムによりバルブに開方向の力が作用することを抑制することができ、バルブの着座力の低下が抑制される。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明をエンジンの動弁装置に具体化した一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0021】
図3に示すように、エンジンのシリンダヘッド11には吸気通路12が設けられ、吸気バルブ13により開閉されるようになっている。吸気バルブ13にはバルブステム14が連結され、該バルブステム14はシリンダヘッド11に形成した貫通孔15に貫通固定されたバルブガイド16により案内されるようになっている。前記バルブステム14の上端部にはスプリングリテーナ17が取り付けられ、該リテーナ17とシリンダヘッド11との間には吸気バルブ13を閉弁方向に付勢するリターンスプリング18が介在されている。
【0022】
シリンダヘッド11の上面には前記バルブステム14に近接して、それと平行に公知の油圧ラッシュアジャスタ21が装設されている。油圧ラッシュアジャスタ21にはシリンダヘッド11に形成された図示しない油通路を介して作動油が供給、排出されるようになっており、油圧ラッシュアジャスタ21は伸びる方向には自ら素早く伸長するが、縮む方向には強い力が加わっても縮長しにくい構成となっている。
【0023】
油圧ラッシュアジャスタ21の頭部23にはロッカアーム22の一端が当接しており、エンジン動作時にはロッカアーム22は、油圧ラッシュアジャスタ21の頭部23を支点として揺動する。ロッカアーム22の他端の下面には吸気バルブ13の上端が当接している。カム28は図1に示すカムシャフト25と一体となっており、カムシャフト25のP矢印方向への回転に伴って、カム28が回転するようになっている。ロッカアーム22は接触面22aにてカム28と接触するようになっている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態において、カムシャフト25は、エンジンのシリンダヘッド11に対して回転可能に支持される複数のジャーナル部26と、互いに隣接するジャーナル部26間を連結する複数の軸部27と、各軸部27上に設けられたカム28とを備える。なお、カムシャフト25の一端には、エンジンのクランクシャフト(図示略)の回転をカムシャフト25に伝達するためのタイミングプーリ30がカムシャフト25と一体回転可能に取付けられている。
【0025】
図2に示すように、カム28は、ジャーナル部26を基準とするベース円部29aと、ベース円部29aから突出したノーズ部29bとからなるカム面29を有する。また、本実施形態において、各軸部27の断面形状は、該軸部27に対応するカム28のノーズ部29bの中心及びベース円部29aの中心を通るカム中心線CLに平行な一対の側縁27aを有する扁平状に形成されている。そして、該軸部27はカム中心線CLを中心として対称状をなし、カム中心線CLの方向における寸法が長く、カム中心線CLと直交する方向における寸法が短くなっている。従って、該軸部27において、カム中心線CL方向における曲げ剛性と、カム中心線CL方向と直交する方向における曲げ剛性との大きさは異なり、カム中心線CL方向と直交する方向における曲げ剛性は、カム中心線CL方向における曲げ剛性よりも小さくなる。
【0026】
上記のように構成された動弁装置において、ロッカアーム22は油圧ラッシュアジャスタ21と吸気バルブ13とによって、カム28に向かって押圧されており、従って、ロッカアーム22の接触面22aとカム28との間のクリアランスは零となっている。
【0027】
この状態からエンジンが始動されると、カムシャフト25がP矢印方向に回転しカム28のベース円部29aからノーズ部29bまで接触面22aに対するカム28の当接部が移動する。それによりノーズ部29bは、ロッカアーム22の接触面22aを押圧するが、油圧ラッシュアジャスタ21は上述したように外圧が加わっても縮長しないので、ロッカアーム22は油圧ラッシュアジャスタ21の頭部23を支点として回動する。回動したロッカアーム22の他端がバルブステム14を押し下げて、吸気バルブ13の開弁動作を行なう。
【0028】
更に、カム28が回動しノーズ部29bが戻るときには、ロッカアーム22は吸気バルブ13を介して、リターンスプリング18の付勢力によりカム28に向かって押圧されているので、ロッカアーム22の他端はノーズ部29bの移動と共に上方に移動し、これにより吸気バルブ13の閉弁動作が行なわれる。そして、図3に示すように、カム28が回動しカム28のベース円部29aがロッカアーム22に当接すると吸気バルブ13はシートに着座して閉じられる。
【0029】
上記のように構成されたカムシャフト25において、カム28のカム面29はジャーナル部26の外形を基準としてカムミラー(研磨装置)によって加工されるが、ベース円部29aはジャーナル部26の外形を基準とした完全な円弧とはならず、加工公差による振れが発生している可能性がある。このように、カム28のベース円部29aが振れていると、油圧ラッシュアジャスタ21は外力に対して縮長しにくい構成のため、閉弁状態の吸気バルブ13を押圧する開弁方向の力が作用し、吸気バルブ13の着座力が低下することとなる。特に、吸気バルブ13が開弁状態から閉弁する時において吸気バルブ13の着座力が低下すると、各気筒における気密性が低下してアイドリングが不安定な状態となるいわゆるラフアイドルなどエンジン不調の原因となることがある。
【0030】
しかしながら、本実施形態のカムシャフト25は、各軸部27の曲げ剛性がカム中心線CLと直交する方向において小さくなっているので、カム28を設けた軸部27が吸気バルブ13から離間する方向にわずかに撓むようになる。その結果、軸部27の撓み分だけ吸気バルブ13を開弁方向に押圧する力が小さくなり、吸気バルブ13の着座力の低下が抑制される。
【0031】
以上のように構成された動弁装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
・ カムシャフト25のカム28が設けられた軸部27の断面形状は、該軸部27の曲げ剛性が、その軸部27に対応するカム28のカム中心線CLと交差する方向において小さくなるような形状とされている。そのため、加工公差によりカム28のベース円部29aがジャーナル部26の外周に対して振れている場合にはと、軸部27が吸気バルブ13から離間する方向にわずかに撓み、その分だけ吸気バルブ13を開弁方向に押圧する力を小さくして吸気バルブ13の着座力の低下を抑制することができる。
【0032】
・ カムシャフト25の軸部27の断面形状を、カム中心線CLの方向における寸法が長く、該カム中心線CLと直交する方向における寸法が短い扁平状に形成するという簡易な構成によって、軸部27のカム中心線CLと直交する方向における曲げ剛性を小さくすることができる。
【0033】
・ カムシャフト25の軸部27の断面形状を、カム中心線CLに平行な一対の側縁27aを形成することによって扁平状とすることができ、軸部27の加工を容易に行って軸部27の曲げ剛性を変更することができる。
【0034】
・ カムシャフト25の軸部27の断面形状はカム中心線CLを中心として対称状をなす扁平状に形成されているので、カムシャフト25の回転バランスの低下を抑制することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図4〜6に基づいて説明する。なお、重複説明を避けるため、図1において説明したものと同じ要素については、同じ参照番号が付されている。
【0036】
第1実施形態においては、カムシャフト25のジャーナル部26間を連結する軸部27の断面形状を変更することによって軸部27の曲げ剛性を変更し、カム28のベース円部29aの振れによる吸気バルブ13の着座力の低下を抑制するようにしている。
【0037】
本実施形態においては、図3に示す動弁装置において上記カムシャフト25に代えて、図4、5に示されるカム43を備えたカムシャフト40が使用されている。
【0038】
図4に示すように、本実施形態において、カムシャフト40は、エンジンのシリンダヘッド11に対して回転可能に支持される複数のジャーナル部41と、互いに隣接するジャーナル部41間を連結する複数の軸部42と、各軸部42上に設けられたカム43とを備える。図5に示すように、各軸部42の断面形状は、ジャーナル部41と同心状の円形状に形成されており、各軸部42の曲げ剛性はその周方向において均一である。
【0039】
図5に示されるように、カム43は、ジャーナル部41を基準とするベース円部45と、ベース円部45から突出したノーズ部46とからなるカム面44を有する。本実施形態において、カム43のカム面44はノーズ部46の中心及びベース円部45の中心を通るカム中心線CLに対して非対称状に形成されている。カムシャフト40のP矢印回転方向においてベース円部45の始端45a側は吸気バルブ13の閉じ側であり、ベース円部45の終端45b側は吸気バルブ13の開き側である。
【0040】
そして、ベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法Lbは、ベース円部45の始端45a側からジャーナル部41までの寸法Laよりも所定値だけ大きくなる形状に形成されている。
【0041】
このように、カム43のカム面44をカム中心線CLに対して非対称状に形成することによって、ベース円部45の振れによる吸気バルブ13の着座力の低下を抑制することができるようになっている。
【0042】
上記したように、カム43のベース円部45が振れていると、油圧ラッシュアジャスタ21は外力に対して縮長しにくい構成のため、閉弁状態の吸気バルブ13を押圧する開弁方向の力が作用し、吸気バルブ13の着座力が低下することとなる。吸気バルブ13の閉じ側において吸気バルブ13の着座力が低下すると、各気筒における気密性が低下してアイドリングが不安定な状態となるいわゆるラフアイドルなどエンジン不調の原因となることがあるため、閉じ側のベース円部45の始端45aでの振れを厳しく制限する必要がある。これに対して、吸気バルブ13の開き側においても吸気バルブ13の着座力を必要とするものの、開き側のベース円部45の終端45bでの振れの制限は閉じ側の始端45aでの振れの制限よりも緩くすることができる。従って、ベース円部45における振れクライテリア(振れ量許容値)は、図6に破線で示されるように、閉じ側のベース円部45の始端45aでは小さな値となり、開き側のベース円部45の終端45bでは閉じ側よりも大きな値となる。
【0043】
今、仮に、カム43のベース円部45を、ジャーナル部41の外形を基準とする円弧状の通常プロフィールに設定すると、閉じ側の始端45aから開き側の終端45bに到る任意の部位において加工公差による振れが発生する可能性がある。このとき、閉じ側の始端45a付近で振れが発生しているとすると、この振れ量は閉じ側での振れクライテリアを超えてしまうおそれがあり、閉じ側の始端45a(吸気バルブ13の閉じ側)において所要の着座力を得ることができなくなる。
【0044】
そのため、本実施形態において、カム43におけるカム面44の形状は、ベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法Lbが、ベース円部45の始端45a側からジャーナル部41までの寸法Laよりも所定値α(図6参照)だけ大きくなるような形状に形成されている。このように、ベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法Lbに所定値αを加えることにより、加工公差によるベース円部45の始端45a側への振れが生じたとしても、カム面44は実線で示されるプロフィールとなり、この振れ量は閉じ側の始端45aでの振れクライテリア以内に収まる。すなわち、前記所定値αによってベース円部45の始端45a側への振れの一部をキャンセルすることができるようになる。
【0045】
例えば、図5に示されるように、加工公差がカム中心線CLと直交する方向に生じたとすると、カム43のカム面44は鎖線で示すようにジャーナル部41に対して変位することとなるが、この変位量が前記所定値αの範囲内の値である場合にはベース円部45の始端45a側での振れ量の増加を抑制することができる。
【0046】
以上のように構成された動弁装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
・ カム43のカム面44を、カムシャフト40の回転方向においてベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法が、始端45a側からジャーナル部41までの寸法よりも所定値だけ大きくなる形状に形成している。そのため、加工公差によりベース円部45の始端45a側が振れていても、ベース円部45の終端45b側に設定した所定値によってベース円部45の始端45a側への振れの一部を相殺することができ、ベース円部45の始端45a側の振れを許容範囲内に収めることができる。その結果、吸気バルブ13の閉弁時においてベース円部45の始端45a側においてカム43により吸気バルブ13に開方向の力が作用することを抑制することができ、吸気バルブ13の着座力の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、実施の形態は、次のように変更してもよい。
・ 上記第1実施形態においては、カムシャフト25のジャーナル部26間における軸部27を断面形状が扁平状をなす中実体としたが、この軸部27を断面外形が円形状をなす中空状とし、中空部の形状を適宜設定することによって軸部の曲げ剛性を異なる値となるようにしてもよい。
【0048】
・ 上記第1実施形態のカムシャフト25において、軸部27上に形成されるカム28のカム面の形状を、第2実施形態におけるカム43のカム面44と同様の形状としてもよい。
【0049】
・ 上記各実施形態においては、エンジンの吸気バルブ13を開閉するためのカムシャフト25,40に具体化したが、排気バルブを開閉するためのカムシャフトに実施することができ、この場合にも同様の作用及び効果を得ることができる。
【0050】
・ 上記各実施形態では、油圧ラッシュアジャスタ21上にロッカアーム22を支持する構成の動弁装置に具体化したが、油圧ラッシュアジャスタを内蔵したバルブリフタを備える動弁装置に実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態のカムシャフトを示す正面図。
【図2】図1のX−X線における断面図。
【図3】エンジンの動弁装置全体を示す縦断面図。
【図4】第2実施形態のカムシャフトを示す正面図。
【図5】図4のY−Y線における断面図。
【図6】第2実施形態のカムを設計するための説明図。
【符号の説明】
11…エンジンを構成するシリンダヘッド、13…吸気バルブ、25,40…カムシャフト、26,41…ジャーナル部、27,42…軸部、28,43…カム、29,44…カム面、29a,45…ベース円部、29b,46…ノーズ部、45a…始端、45b…終端、CL…カム中心線、La,Lb…寸法。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの運転中に同機関の気筒に設けられた吸気・排気バルブ等のバルブを開閉するカムシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
吸排気弁を有する一般のエンジンにおいては、作動時の熱によるシリンダヘッドの膨張と動弁系要素の膨張との差を考慮して、吸排気弁の適切なシールを行なうため、所定のバルブクリアランスがあらかじめ設けてある。
【0003】
ところが、長時間の使用により動弁系要素各部の摩滅等が生じ、初期設定したバルブクリアランスが大きくなることがある。バルブクリアランスの増大はエンジンの性能を低下させ騒音を増大させ、場合によっては有害な排気ガスの濃度をも増大しかねない。したがって、上記不具合を防止するために、バルブクリアランスの点検調整という時間のかかる作業が定期的に必要とされていた。
【0004】
このエンジンにおける、所定のバルブクリアランスの点検調整の煩雑さを解決したのが、特許文献1に示されるように、自動的にバルブクリアランスを略零とする油圧ラッシュアジャスタを備えた動弁装置が提案されている。
【0005】
この動弁装置では、シリンダヘッド内の所定位置に油圧ラッシュアジャスタが配置されている。油圧ラッシュアジャスタの頭部にはロッカアームの一端が当接しており、エンジン動作時にはロッカアームは、油圧ラッシュアジャスタの頭部を支点として揺動する。油圧ラッシュアジャスタは、伸びる方向には自ら素早く伸長するが、縮む方向には強い力が加わっても縮長しにくい構成となっている。ロッカアームの他端の下面には吸気バルブもしくは排気バルブの上端が当接しており、この吸気バルブもしくは排気バルブは、リターンスプリングにより閉じる方向へ付勢されている。カムはカムシャフトと一体となっており、カムシャフトの回転に伴って、カムが回転するようになっている。カムは、カムシャフトのジャーナル部と同軸であるベース円部と、ベース円部から突出したノーズ部とから構成される。ロッカアームはカムとの間で両者が接触する接触面を有している。
【0006】
上記のように構成された動弁装置において、ロッカアームは油圧ラッシュアジャスタとバルブとによって、カムに向かって押圧されており、したがって、各接触面のクリアランスは零となっている。この状態からエンジンが始動されると、カムシャフトが回転しカムのベース円部からノーズ部まで接触面に対するカムの当接部が移動する。それによりノーズ部は、ロッカアームの接触面を押圧するが、油圧ラッシュアジャスタは上述したように外圧が加わっても縮長しないので、ロッカアームは油圧ラッシュアジャスタの頭部を支点として回動する。回動したロッカアームの他端がバルブを押し下げて、バルブの開弁動作を行なう。更に、カムが回動しノーズ部が戻るときには、ロッカアームはバルブを介して、リターンスプリングの付勢力によりカムに向かって押圧されているので、ロッカアームの他端はノーズ部の移動と共に上方に移動し、これによりバルブの閉弁動作が行なわれる。このような動弁系の動作中に、油圧ラッシュアジャスタは動弁系各部の熱膨張や摩耗による各部の変化を吸収し、それによりロッカアームの接触面とカムとの間隙すなわちバルブクリアランスを零とし、異音等の不具合を防止するものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−288020号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、カムシャフトにおけるカムのベース円部は、ジャーナル部と同軸となるように形成されているが、加工公差があり、ジャーナル部の外形を基準としてベース円部が振れることが一般的である。このようにカムのベース円部が振れていると、上述したように油圧ラッシュアジャスタは外力を加えても縮長しにくいことから、ロッカアームによってバルブが押圧されることとなり、バルブの着座力が低下するという問題がある。特に、バルブが開弁状態から閉弁する時においてバルブの着座力が低下すると、各気筒における気密性が低下して、アイドリングが不安定な状態となるいわゆるラフアイドルなどエンジン不調の原因となることがある。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、カムのベース円部の振れに伴うバルブの着座力の低下を抑制することができるカムシャフトを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、エンジンの気筒に対応したバルブを開閉するためのカムシャフトであって、エンジンに対して回転可能に支持される複数のジャーナル部と、互いに隣接するジャーナル部間を連結する軸部と、該軸部上に設けられかつノーズ部と前記ジャーナル部を基準とするベース円部とからなるカム面を有するカムとを備えたカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状を、該軸部の曲げ剛性が、該軸部に対応する前記カムのノーズ部の中心及びベース円部の中心を通るカム中心線と交差する方向において小さくなるような形状としたことを特徴とする。
【0011】
カムシャフトの回転に伴い、カムのノーズ部がバルブに当接する場合にはバルブがリフトされ、カムのベース円部がバルブに当接する場合にはバルブは着座して閉じられる。このとき、加工公差によりカムのベース円部がジャーナル部に対して振れている場合には、その振れ部分がバルブに当接すると、バルブに開方向の力が作用し、バルブの着座力が低下することとなる。
【0012】
この点において、この構成によれば、カムを設けた軸部の曲げ剛性が、カムのノーズ部の中心及びベース円部の中心を通るカム中心線と交差する方向において小さくなっているので、カムを設けた軸部がバルブから離間する方向にわずかに撓み、バルブの着座力の低下が抑制される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状は、前記カム中心線の方向における寸法が長く、該カム中心線と直交する方向における寸法が短い扁平状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、カムシャフトの軸部の断面形状をカム中心線の方向における寸法が長く、該カム中心線と直交する方向における寸法が短い扁平状に形成することによって、軸部の曲げ剛性を小さくすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状は、前記カム中心線にほぼ平行な部分を備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、軸部の加工を容易に行って軸部の曲げ剛性を変更することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカムシャフトにおいて、前記軸部の断面形状は、前記カム中心線を中心として対称状をなすことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、軸部の断面形状はカム中心線を中心として対称状に形成されているため、カムシャフトの回転バランスの低下を抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、エンジンの気筒に対応したバルブを開閉するためのカムシャフトであって、エンジンに対して回転可能に支持される複数のジャーナル部と、互いに隣接するジャーナル部間を連結する軸部と、該軸部上に設けられかつノーズ部と前記ジャーナル部を基準とするベース円部とからなるカム面を有するカムとを備えたカムシャフトにおいて、前記カムのカム面を、前記カムシャフトの回転方向においてベース円部の終端側から前記ジャーナル部までの寸法が、ベース円部の始端側から前記ジャーナル部までの寸法よりも大きくなる形状に形成したことを特徴とする。
【0018】
カムシャフトの回転に伴い、カムのノーズ部がバルブに当接する場合にはバルブがリフトされ、カムのベース円部がバルブに当接する場合にはバルブは着座して閉じられる。このとき、カムのベース円部がジャーナル部に対して振れている場合には、その振れ部分がバルブに当接すると、バルブに開方向の力が作用し、バルブの着座力が低下することとなる。
【0019】
この構成によれば、カムのカム面を、カムシャフトの回転方向においてベース円部の終端側からジャーナル部までの寸法が、ベース円部の始端側からジャーナル部までの寸法よりも大きくなる形状に形成している。このとき、加工公差によりベース円部がジャーナル部に対してその始端側に振れていても、ベース円部の終端側からジャーナル部までの寸法とベース円部の始端側からジャーナル部までの寸法との差によってベース円部の始端側への振れの一部が相殺され、ベース円部の始端側の振れは許容範囲内に収まる。そのため、ベース円部の始端側においてカムによりバルブに開方向の力が作用することを抑制することができ、バルブの着座力の低下が抑制される。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明をエンジンの動弁装置に具体化した一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0021】
図3に示すように、エンジンのシリンダヘッド11には吸気通路12が設けられ、吸気バルブ13により開閉されるようになっている。吸気バルブ13にはバルブステム14が連結され、該バルブステム14はシリンダヘッド11に形成した貫通孔15に貫通固定されたバルブガイド16により案内されるようになっている。前記バルブステム14の上端部にはスプリングリテーナ17が取り付けられ、該リテーナ17とシリンダヘッド11との間には吸気バルブ13を閉弁方向に付勢するリターンスプリング18が介在されている。
【0022】
シリンダヘッド11の上面には前記バルブステム14に近接して、それと平行に公知の油圧ラッシュアジャスタ21が装設されている。油圧ラッシュアジャスタ21にはシリンダヘッド11に形成された図示しない油通路を介して作動油が供給、排出されるようになっており、油圧ラッシュアジャスタ21は伸びる方向には自ら素早く伸長するが、縮む方向には強い力が加わっても縮長しにくい構成となっている。
【0023】
油圧ラッシュアジャスタ21の頭部23にはロッカアーム22の一端が当接しており、エンジン動作時にはロッカアーム22は、油圧ラッシュアジャスタ21の頭部23を支点として揺動する。ロッカアーム22の他端の下面には吸気バルブ13の上端が当接している。カム28は図1に示すカムシャフト25と一体となっており、カムシャフト25のP矢印方向への回転に伴って、カム28が回転するようになっている。ロッカアーム22は接触面22aにてカム28と接触するようになっている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態において、カムシャフト25は、エンジンのシリンダヘッド11に対して回転可能に支持される複数のジャーナル部26と、互いに隣接するジャーナル部26間を連結する複数の軸部27と、各軸部27上に設けられたカム28とを備える。なお、カムシャフト25の一端には、エンジンのクランクシャフト(図示略)の回転をカムシャフト25に伝達するためのタイミングプーリ30がカムシャフト25と一体回転可能に取付けられている。
【0025】
図2に示すように、カム28は、ジャーナル部26を基準とするベース円部29aと、ベース円部29aから突出したノーズ部29bとからなるカム面29を有する。また、本実施形態において、各軸部27の断面形状は、該軸部27に対応するカム28のノーズ部29bの中心及びベース円部29aの中心を通るカム中心線CLに平行な一対の側縁27aを有する扁平状に形成されている。そして、該軸部27はカム中心線CLを中心として対称状をなし、カム中心線CLの方向における寸法が長く、カム中心線CLと直交する方向における寸法が短くなっている。従って、該軸部27において、カム中心線CL方向における曲げ剛性と、カム中心線CL方向と直交する方向における曲げ剛性との大きさは異なり、カム中心線CL方向と直交する方向における曲げ剛性は、カム中心線CL方向における曲げ剛性よりも小さくなる。
【0026】
上記のように構成された動弁装置において、ロッカアーム22は油圧ラッシュアジャスタ21と吸気バルブ13とによって、カム28に向かって押圧されており、従って、ロッカアーム22の接触面22aとカム28との間のクリアランスは零となっている。
【0027】
この状態からエンジンが始動されると、カムシャフト25がP矢印方向に回転しカム28のベース円部29aからノーズ部29bまで接触面22aに対するカム28の当接部が移動する。それによりノーズ部29bは、ロッカアーム22の接触面22aを押圧するが、油圧ラッシュアジャスタ21は上述したように外圧が加わっても縮長しないので、ロッカアーム22は油圧ラッシュアジャスタ21の頭部23を支点として回動する。回動したロッカアーム22の他端がバルブステム14を押し下げて、吸気バルブ13の開弁動作を行なう。
【0028】
更に、カム28が回動しノーズ部29bが戻るときには、ロッカアーム22は吸気バルブ13を介して、リターンスプリング18の付勢力によりカム28に向かって押圧されているので、ロッカアーム22の他端はノーズ部29bの移動と共に上方に移動し、これにより吸気バルブ13の閉弁動作が行なわれる。そして、図3に示すように、カム28が回動しカム28のベース円部29aがロッカアーム22に当接すると吸気バルブ13はシートに着座して閉じられる。
【0029】
上記のように構成されたカムシャフト25において、カム28のカム面29はジャーナル部26の外形を基準としてカムミラー(研磨装置)によって加工されるが、ベース円部29aはジャーナル部26の外形を基準とした完全な円弧とはならず、加工公差による振れが発生している可能性がある。このように、カム28のベース円部29aが振れていると、油圧ラッシュアジャスタ21は外力に対して縮長しにくい構成のため、閉弁状態の吸気バルブ13を押圧する開弁方向の力が作用し、吸気バルブ13の着座力が低下することとなる。特に、吸気バルブ13が開弁状態から閉弁する時において吸気バルブ13の着座力が低下すると、各気筒における気密性が低下してアイドリングが不安定な状態となるいわゆるラフアイドルなどエンジン不調の原因となることがある。
【0030】
しかしながら、本実施形態のカムシャフト25は、各軸部27の曲げ剛性がカム中心線CLと直交する方向において小さくなっているので、カム28を設けた軸部27が吸気バルブ13から離間する方向にわずかに撓むようになる。その結果、軸部27の撓み分だけ吸気バルブ13を開弁方向に押圧する力が小さくなり、吸気バルブ13の着座力の低下が抑制される。
【0031】
以上のように構成された動弁装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
・ カムシャフト25のカム28が設けられた軸部27の断面形状は、該軸部27の曲げ剛性が、その軸部27に対応するカム28のカム中心線CLと交差する方向において小さくなるような形状とされている。そのため、加工公差によりカム28のベース円部29aがジャーナル部26の外周に対して振れている場合にはと、軸部27が吸気バルブ13から離間する方向にわずかに撓み、その分だけ吸気バルブ13を開弁方向に押圧する力を小さくして吸気バルブ13の着座力の低下を抑制することができる。
【0032】
・ カムシャフト25の軸部27の断面形状を、カム中心線CLの方向における寸法が長く、該カム中心線CLと直交する方向における寸法が短い扁平状に形成するという簡易な構成によって、軸部27のカム中心線CLと直交する方向における曲げ剛性を小さくすることができる。
【0033】
・ カムシャフト25の軸部27の断面形状を、カム中心線CLに平行な一対の側縁27aを形成することによって扁平状とすることができ、軸部27の加工を容易に行って軸部27の曲げ剛性を変更することができる。
【0034】
・ カムシャフト25の軸部27の断面形状はカム中心線CLを中心として対称状をなす扁平状に形成されているので、カムシャフト25の回転バランスの低下を抑制することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図4〜6に基づいて説明する。なお、重複説明を避けるため、図1において説明したものと同じ要素については、同じ参照番号が付されている。
【0036】
第1実施形態においては、カムシャフト25のジャーナル部26間を連結する軸部27の断面形状を変更することによって軸部27の曲げ剛性を変更し、カム28のベース円部29aの振れによる吸気バルブ13の着座力の低下を抑制するようにしている。
【0037】
本実施形態においては、図3に示す動弁装置において上記カムシャフト25に代えて、図4、5に示されるカム43を備えたカムシャフト40が使用されている。
【0038】
図4に示すように、本実施形態において、カムシャフト40は、エンジンのシリンダヘッド11に対して回転可能に支持される複数のジャーナル部41と、互いに隣接するジャーナル部41間を連結する複数の軸部42と、各軸部42上に設けられたカム43とを備える。図5に示すように、各軸部42の断面形状は、ジャーナル部41と同心状の円形状に形成されており、各軸部42の曲げ剛性はその周方向において均一である。
【0039】
図5に示されるように、カム43は、ジャーナル部41を基準とするベース円部45と、ベース円部45から突出したノーズ部46とからなるカム面44を有する。本実施形態において、カム43のカム面44はノーズ部46の中心及びベース円部45の中心を通るカム中心線CLに対して非対称状に形成されている。カムシャフト40のP矢印回転方向においてベース円部45の始端45a側は吸気バルブ13の閉じ側であり、ベース円部45の終端45b側は吸気バルブ13の開き側である。
【0040】
そして、ベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法Lbは、ベース円部45の始端45a側からジャーナル部41までの寸法Laよりも所定値だけ大きくなる形状に形成されている。
【0041】
このように、カム43のカム面44をカム中心線CLに対して非対称状に形成することによって、ベース円部45の振れによる吸気バルブ13の着座力の低下を抑制することができるようになっている。
【0042】
上記したように、カム43のベース円部45が振れていると、油圧ラッシュアジャスタ21は外力に対して縮長しにくい構成のため、閉弁状態の吸気バルブ13を押圧する開弁方向の力が作用し、吸気バルブ13の着座力が低下することとなる。吸気バルブ13の閉じ側において吸気バルブ13の着座力が低下すると、各気筒における気密性が低下してアイドリングが不安定な状態となるいわゆるラフアイドルなどエンジン不調の原因となることがあるため、閉じ側のベース円部45の始端45aでの振れを厳しく制限する必要がある。これに対して、吸気バルブ13の開き側においても吸気バルブ13の着座力を必要とするものの、開き側のベース円部45の終端45bでの振れの制限は閉じ側の始端45aでの振れの制限よりも緩くすることができる。従って、ベース円部45における振れクライテリア(振れ量許容値)は、図6に破線で示されるように、閉じ側のベース円部45の始端45aでは小さな値となり、開き側のベース円部45の終端45bでは閉じ側よりも大きな値となる。
【0043】
今、仮に、カム43のベース円部45を、ジャーナル部41の外形を基準とする円弧状の通常プロフィールに設定すると、閉じ側の始端45aから開き側の終端45bに到る任意の部位において加工公差による振れが発生する可能性がある。このとき、閉じ側の始端45a付近で振れが発生しているとすると、この振れ量は閉じ側での振れクライテリアを超えてしまうおそれがあり、閉じ側の始端45a(吸気バルブ13の閉じ側)において所要の着座力を得ることができなくなる。
【0044】
そのため、本実施形態において、カム43におけるカム面44の形状は、ベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法Lbが、ベース円部45の始端45a側からジャーナル部41までの寸法Laよりも所定値α(図6参照)だけ大きくなるような形状に形成されている。このように、ベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法Lbに所定値αを加えることにより、加工公差によるベース円部45の始端45a側への振れが生じたとしても、カム面44は実線で示されるプロフィールとなり、この振れ量は閉じ側の始端45aでの振れクライテリア以内に収まる。すなわち、前記所定値αによってベース円部45の始端45a側への振れの一部をキャンセルすることができるようになる。
【0045】
例えば、図5に示されるように、加工公差がカム中心線CLと直交する方向に生じたとすると、カム43のカム面44は鎖線で示すようにジャーナル部41に対して変位することとなるが、この変位量が前記所定値αの範囲内の値である場合にはベース円部45の始端45a側での振れ量の増加を抑制することができる。
【0046】
以上のように構成された動弁装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
・ カム43のカム面44を、カムシャフト40の回転方向においてベース円部45の終端45b側からジャーナル部41までの寸法が、始端45a側からジャーナル部41までの寸法よりも所定値だけ大きくなる形状に形成している。そのため、加工公差によりベース円部45の始端45a側が振れていても、ベース円部45の終端45b側に設定した所定値によってベース円部45の始端45a側への振れの一部を相殺することができ、ベース円部45の始端45a側の振れを許容範囲内に収めることができる。その結果、吸気バルブ13の閉弁時においてベース円部45の始端45a側においてカム43により吸気バルブ13に開方向の力が作用することを抑制することができ、吸気バルブ13の着座力の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、実施の形態は、次のように変更してもよい。
・ 上記第1実施形態においては、カムシャフト25のジャーナル部26間における軸部27を断面形状が扁平状をなす中実体としたが、この軸部27を断面外形が円形状をなす中空状とし、中空部の形状を適宜設定することによって軸部の曲げ剛性を異なる値となるようにしてもよい。
【0048】
・ 上記第1実施形態のカムシャフト25において、軸部27上に形成されるカム28のカム面の形状を、第2実施形態におけるカム43のカム面44と同様の形状としてもよい。
【0049】
・ 上記各実施形態においては、エンジンの吸気バルブ13を開閉するためのカムシャフト25,40に具体化したが、排気バルブを開閉するためのカムシャフトに実施することができ、この場合にも同様の作用及び効果を得ることができる。
【0050】
・ 上記各実施形態では、油圧ラッシュアジャスタ21上にロッカアーム22を支持する構成の動弁装置に具体化したが、油圧ラッシュアジャスタを内蔵したバルブリフタを備える動弁装置に実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態のカムシャフトを示す正面図。
【図2】図1のX−X線における断面図。
【図3】エンジンの動弁装置全体を示す縦断面図。
【図4】第2実施形態のカムシャフトを示す正面図。
【図5】図4のY−Y線における断面図。
【図6】第2実施形態のカムを設計するための説明図。
【符号の説明】
11…エンジンを構成するシリンダヘッド、13…吸気バルブ、25,40…カムシャフト、26,41…ジャーナル部、27,42…軸部、28,43…カム、29,44…カム面、29a,45…ベース円部、29b,46…ノーズ部、45a…始端、45b…終端、CL…カム中心線、La,Lb…寸法。
Claims (5)
- エンジンの気筒に対応したバルブを開閉するためのカムシャフトであって、エンジンに対して回転可能に支持される複数のジャーナル部と、互いに隣接するジャーナル部間を連結する軸部と、該軸部上に設けられかつノーズ部と前記ジャーナル部を基準とするベース円部とからなるカム面を有するカムとを備えたカムシャフトにおいて、
前記軸部の断面形状を、該軸部の曲げ剛性が、該軸部に対応する前記カムのノーズ部の中心及びベース円部の中心を通るカム中心線と交差する方向において小さくなるような形状とした
ことを特徴とするカムシャフト。 - 請求項1に記載のカムシャフトにおいて、
前記軸部の断面形状は、前記カム中心線の方向における寸法が長く、該カム中心線と直交する方向における寸法が短い扁平状に形成されている
ことを特徴とするカムシャフト。 - 請求項2に記載のカムシャフトにおいて、
前記軸部の断面形状は、前記カム中心線にほぼ平行な部分を備えている
ことを特徴とするカムシャフト。 - 請求項3に記載のカムシャフトにおいて、
前記軸部の断面形状は、前記カム中心線を中心として対称状をなす
ことを特徴とするカムシャフト。 - エンジンの気筒に対応したバルブを開閉するためのカムシャフトであって、エンジンに対して回転可能に支持される複数のジャーナル部と、互いに隣接するジャーナル部間を連結する軸部と、該軸部上に設けられかつノーズ部と前記ジャーナル部を基準とするベース円部とからなるカム面を有するカムとを備えたカムシャフトにおいて、
前記カムのカム面を、前記カムシャフトの回転方向においてベース円部の終端側から前記ジャーナル部までの寸法が、ベース円部の始端側から前記ジャーナル部までの寸法よりも大きくなる形状に形成した
ことを特徴とするカムシャフト。
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