JP2004232145A - 紙を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】抄紙前の製紙原料中に歩留及び/又は濾水性向上を目的として、カチオン当量値がアニオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(A)とアニオン当量値がカチオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(B)とを組み合わせて添加し、抄紙することによって達成できる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
発明は、紙を製造する方法に関するものであり、詳しくは抄紙前の製紙原料中に歩留及び/又は濾水性向上を目的として、カチオン当量値がアニオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(A)とアニオン当量値がカチオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(B)とを組み合わせて添加し、抄紙する紙を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平3−27676号公報
【特許文献2】特開昭62−191598号公報
【特許文献3】特開昭2001−89993号公報
資源の節約や環境への配慮という観点から、近年、製紙原料として古紙や機械パルプの配合率が増加の一途を辿っている。化学パルプは、抄紙すると外観も美しく、強度や印刷適正も優れている紙が製造できるという長所を有する反面、化学薬品を多量に使用するため環境への影響が懸念される。その点、機械パルプは薬品の使用量は、相対的少なく原料に対する歩留も高いという長所を有する。しかし、原料木材中に含有する樹脂やパルプ化時に生成するアニオン性物質が、パルプ分散液中に多く残留する。また、古紙も表面加工時使用する塗工剤が混入し、抄紙時、水不溶性微粒子の凝集物に起因するピッチトラブルの原因となる。そのため現在、一般的に使用されているカチオン性あるいは両性歩留向上剤を添加しても効果を発揮しにくい。
【0003】
また、特に新聞用紙の製紙原料中にも古紙の配合比率が高まり、抄紙の高速化も影響して歩留率の低下傾向を助長している。従来から新聞用紙原料中には、機械パルプが使用されていることもあり、ピッチトラブルを防止するため酸性抄紙抄紙で行なうのが普通である。一方、近年の抄紙の高速化に対応して歩留率を向上させるため歩留剤は、二液処方、いわゆるジュアルシステムを適用している。すなわちカチオン性高分子をファンポンプやスクリーン手前で添加し、アニオン性物質をスクリーン出口で添加する処方である(特許文献1あるいは特許文献2)。しかしこの処方は、中性抄紙においては、効果的であるが酸性抄紙ではアニオン性基の解離の問題もあって、顕著な効果発現は少ない。また、古紙及び機械パルプに配合の高まった製紙原料においては、この処方は有効ではない。あるいは特許文献3においては、製紙工程において、水溶性アルミニウム化合物と両性アクリルアミド系ポリマーとの複合体を製紙原料に添加した後、両性アクリルアミド系ポリマーを添加する方法が開示されている。しかしこの方法は、両性アクリルアミド系ポリマーとの複合体を調製する工程が必要であり実際的ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械パルプや古紙の配合比率が増加した製紙原料を用いて抄造した場合でも高い歩留率が維持できる製紙方法を提供することにある。また特に上記製紙原料を用いた場合、通常のジュアルシステムでは歩留率の向上しにくい酸性において新聞用紙を抄造する場合に、高い歩留率を維持できる製紙方法をも提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、以下のような発明に達した。すなわち本発明の請求項1の発明は、抄紙前の製紙原料中に歩留及び/又は濾水性向上を目的として、カチオン当量値がアニオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(A)とアニオン当量値がカチオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(B)とを組み合わせて添加し、抄紙することを特徴とする紙を製造する方法である。
【0006】
請求項2の発明は、前記抄紙前の製紙原料pHが3〜6であるとき、前記両性水溶性高分子(A)を添加した後、前記両性水溶性高分子(B)を添加することを特徴とする請求項1に記載の紙を製造する方法である。
【0007】
請求項3の発明は、前記抄紙前の製紙原料pHが5〜9であるとき、前記両性水溶性高分子(B)を添加した後、前記両性水溶性高分子(A)を添加することを特徴とする請求項1に記載の紙を製造する方法である。
【0008】
請求項4の発明は、前記両性水溶性高分子(A)及び両性水溶性高分子(B)が、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を必須として含有する水溶性単量体を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶な高分子分散剤を共存させ、前記塩水溶液に不溶な粒径100μm以下の重合体粒子を生成させる分散重合法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1〜3に記載の紙を製造する方法である。
【0009】
請求項5の発明は、前記両性水溶性高分子(A)及び両性水溶性高分子(B)のアニオン性基がカルボキシル基のみで構成されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の紙を製造する方法である。
【0010】
請求項6の発明は、前記製紙原料が新聞用紙原料あるいは中質紙原料であることを特徴とする請求項2に記載の紙を製造する方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、抄紙前の製紙原料中に歩留及び/又は濾水性向上を目的として、両性水溶性高分子(A)と両性水溶性高分子(B)組み合わせて添加し、抄紙することに特徴がある。初めに両性水溶性高分子(A)及び両性水溶性高分子(B)に関して説明する。すなわちこれら両性水溶性高分子は、カチオン性ビニル単量体、アニオン性ビニル単量体を必須とする単量体混合物を重合した共重合体である。たとえばカチオン性ビニル単量体は、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸や有機酸の塩、あるいは塩化メチルや塩化ベンジルによる四級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合体である。例えば単量体として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられる。またジメチルジアリルアンモニウム塩化物のようなジアリルアンモニウム塩類も使用することができる。
【0012】
アニオン性ビニル単量体は、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸あるいたイタコン酸などであり、これらを一種以上用いて共重合する。
【0013】
両性水溶性高分子は上記アニオン性ビニル単量体とカチオン性単量体の共重合により合成することができるが、非イオン性単量体を共重合してもよい。例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどがあげられ、アクリルアミドが好ましい。
【0014】
また本発明で使用する両性水溶性高分子は、複数のビニル基を有する単量体の存在下でアニオン性ビニル単量体とカチオン性ビニル単量体を必須として共重合した架橋性共重合体を使用することもできる。すなわち、製紙における歩留向上剤に関しては、抄紙速度の高速化や製紙原料中への不純物の増加に対応するため凝集力の向上が追求されてきたため、架橋性高分子の応用という観点は考慮されてこなかった。架橋性水溶性高分子は水中における分子の広がりが直鎖状高分子に較べ相対的に小さいので、凝集力が抑制されていて製紙工業におけるプロセス薬剤に適している。このような目的で使用する複数のビニル基を有する単量体としては、メチレンビスアクリルアミドやエチレングルコ−ルジ(メタ)アクリレ−トなどがあげられる。単量体混合物中の配合比としては、0.001〜0.1モル%である。
【0015】
これら両性水溶性高分子の各単量体の比率は、カチオン性ビニル単量体5〜95モル%、アニオン性ビニル単量体5〜95モル%、非イオン性ビニル単量体0〜90モル%であり、好ましくはカチオン性ビニル単量体10〜90モル%、アニオン性ビニル単量体10〜90モル%、非イオン性ビニル単量体0〜80モル%である。
【0016】
これら両性水溶性高分子の分子量は1万〜2,000万であるが、好ましくは1万〜1,500万である。1万以下では凝集力が不足し歩留率が低下し、2000万以上では、凝集力が高すぎ抄紙後の地合崩れを起こす。また、溶液粘度も高くなり過ぎ分散性も悪くなるほか、水溶液の取り扱いも悪くなる。また製品形態は水溶液、粉末、油中水型エマルジョン重合物、塩水溶液中分散重合物などどのようなものでも使用できるが、溶解の速さや製紙原料中への分散性などを考慮すると塩水溶液中分散重合物が好ましい。
【0017】
塩水溶液中に分散した高分子微粒子分散液からなる水溶性重合体は、特開昭62−15251号公報などによって製造することができる。この方法は、カチオン性単量体あるいはカチオン性単量体と非イオン性単量体を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性高分子からなる分散剤共存下で、攪拌しながら製造された粒系100mμ以下の高分子微粒子の分散液からなるもである。両性水溶性高分子を重合する場合は、アニオン性単量体を重合時共存させる。高分子分散剤は、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物の単独重合体や非イオン性単量体との共重合体を使用する。あるいは非イオン性のポリビニルピロリドンなども使用する。塩水溶液を構成する無機塩類は、多価アニオン塩類が、より好ましく、硫酸塩又は燐酸塩が適当であり、具体的には、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム等を例示することができ、これらの塩を濃度15%以上の水溶液として用いることが好ましい。
【0018】
次に本発明の紙を製造する方法において、両性水溶性高分子のイオン当量値と組み合わせに関して説明する。本発明においては、二つの異なったイオン当量値の両性水溶性高分子を使用する。すなわちカチオン当量値がアニオン当量値より高い両性水溶性高分子を先に添加した場合は、アニオン当量値がカチオン当量値より高い両性水溶性高分子を後から添加する。あるいはアニオン当量値がカチオン当量値より高い両性水溶性高分子を先に添加した場合は、カチオン当量値がアニオン当量値より高い両性水溶性高分子を後から添加する。特にこれは抄紙pHが酸性あるいは中性・アルカリ性など異なる場合に適宜使い分けることが肝要である。
【0019】
従来のジュアル処方はカチオン性高分子を添加後、アニオン性物質であるコロイダルシリカ、ベントナイトあるいはアニオン性水溶性高分子を添加してしていた。しかし、酸性抄紙の場合、コロイダルシリカやベントナイトでは珪酸の解離、アニオン性水溶性高分子はカルボキシル基の解離が各々十分ではなくなり、その結果ジュアル処方の効果が発現しにくい。そのため本発明においては、酸性抄紙の場合、初めにカチオン当量値がアニオン当量値より高い両性水溶性高分子を先に添加する。ついでアニオン当量値がカチオン当量値より高い両性水溶性高分子を添加する。酸性におけるカルボキシル基の解離状況は同様であるが、両性高分子であるため分子内にカチオン性基が存在し、分子内塩などを生成しやすく、その結果先に添加したカチオン当量値がアニオン当量値より高い両性水溶性高分子によって生成した分子内塩とも反応し、これら複合体が歩留向上や濾水性に効果を及ぼしているものと推定される。
【0020】
中性・アルカリ性抄紙においては、アニオン当量値がカチオン当量値より高い両性水溶性高分子を添加し、その後カチオン当量値がアニオン当量値より高い両性水溶性高分子を添加する。中性・アルカリ性においては、カチオン性基およびカルボキシル基とも解離しているので、分子内あるいは分子間イオン反応は起き易く、イオンコンプレクッスは生成しやすいが、単なるアニオン性物質を添加するよりもイオン反応は効率が高く、その結果、歩留向上や濾水性に効果を及ぼしているものと推定される。
【0021】
両性水溶性高分のイオン当量値としては、前記のように共重合比が、カチオン性ビニル単量体5〜95モル%、アニオン性ビニル単量体5〜95モル%、非イオン性ビニル単量体0〜90モル%であるので、これをイオン当量値で表すと、組成によりことなるためカチオン当量値約0.5〜12meq/gであり、アニオン当量値約0.6〜13meq/gである。
【0022】
先に添加する両性水溶性高分子(A)の添加場所としては、製紙原料が白水により希釈されるファンポンプ入り口、またはスクリ−ン入り口などが考えられる。また添加量としては、20ppm〜5000ppmであり、好ましくは50ppm〜500ppmである。後から添加する両性水溶性高分子(B)の添加場所としては、スクリーン入り口やスクリーン出口などが考えられる。添加量としては、両性水溶性高分子(A)と同様である。又この時、二つの両性水溶性高分子のイオン当量値比を考慮すると効率良い添加量を決めることができる。
【0023】
以上、上記に説明したように本発明の歩留及び/又は濾水性向上に関する紙の製造方法の適用可能な抄紙pHとしては、適宜両性水溶性高分子を選択することにより酸性抄紙から中性抄紙にも適用可能である。また対象となる紙製品として、上質、中質、段ボールライナー、白ボールあるいは中芯原紙などであるが、特に新聞用紙の抄造に適している。
【0024】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0025】
(合成例1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン126.0gにソルビタンモノオレート6.0g及びポリリシノ−ル酸/ポリオキシエチレンブロック共重合物0.6gを仕込み溶解させた。別に脱イオン水113.1gとアクリル酸(AACと略記)60%水溶液23.6gを混合し、これを35%水酸化ナトリウム水溶液22.4gで当量中和した。中和後、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)80%水溶液126.7g、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMCと略記)80%水溶液34.0g、アクリルアミド(AAMと略記)50%水溶液65.1g及び合成例で作成した多官能性水溶性ポリカチオン単量体60%水溶液0.8g(対単量体0.3重量%)各々採取し前記アクリル酸溶液に添加し、完全に溶解させた。また、pHを4.01に調節し、油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/DMC/AAC/AAM=40/10/15/35(モル%)である。
【0026】
得られたエマルジョンにイソプロピルアルコール40%水溶液2.0g(対単量体0.5重量%)を加え、単量体溶液の温度を30〜33℃に保ち、窒素置換を30分行った後、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液0.35g(対単量体0.02重量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を32±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレントリデシルエ−テル10.0g(対液2.0重量%)を添加混合して試験に供する試料(試料−1)とした。また静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定した。組成を表1に、結果を表2に示す。
【0027】
(合成例2〜4)実施例1と同様な操作により、それぞれDMQ/AAC/AAM=40/20/40(試料−2)(モル%)、DMQ/AAC/AAM=20/30/50(試料−3)(モル%)、DMQ/アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸/AAC/AAM=25/20/15/40(試料−4)(モル%)からなる組成の油中水型両性高分子エマルジョンを合成した。組成を表1に、結果を表2に示す。
【0028】
(合成例5)温度計、攪拌機、窒素導入管、ペリスタポンプ(SMP−21型、東京理化器械製)に接続した単量体供給管およびコンデンサ−を備えた500mLの4ツ口フラスコ内にメタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMCと略記)の80重量水溶液%46.3g、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)の80重量%水溶液60.5g、アクリル酸(以下AACと略記)の60重量%水溶液20.6g、アクリルアミド(以下AAMと略記)の50%水溶液36.5g、イオン交換水173.1g、硫酸アンモニウム125.0g、分散剤としてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物単独重合体30.0g(20重量%液、粘度6450mPa・s)をそれぞれしこみpHを3.3に調節した。この時各単量体のモル%は、DMC/DMQ/AAC/AAM=25/35/20/20である。次ぎに反応器内の温度を30±2℃に保ち、30分間窒素置換をした後、開始剤として2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ニ塩化水素化物の1%水溶液1.0g(対単量体0.01%)を添加し重合を開始させた。内部温度を30±2℃に保ち重合開始から7時間反応させた時点で上記開始剤を対単量体0.01%追加し、さらに7時間反応させ終了した。得られた分散液のしこみ単量体濃度は20%であり、ポリマー粒径は10μm以下、分散液の粘度は750mPa・sであった。また、静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定した。この試料を試料−5とする。結果を表1及び表2に示す。
【0029】
(合成例6〜7)合成例5と同様な操作により、塩水溶液中分散重合品DMQ/AAC/AAM=40/20/40(試料−6)及びDMQ/AAC/AAM=20/30/50(試料−7)を合成した。結果を表1及び表2に示す。
【0030】
(比較合成例1)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水:107.7g、硫酸アンモニウム26.8g、硫酸ナトリウム17.9g、60アクリル酸:32.7g、50%アクリルアミド:90.3gを加え、30重量%の水酸化ナトリウム5.8gによりアクリル酸の16モル%を中和した。また20重量%のアクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸(モル比、酸の90モル%を中和)重合体水溶液(溶液粘度21,500mPa・s)19.2gを添加した。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素の除去を行う。この間恒温水槽により30℃に内部温度を調整する。窒素導入30分後、0.1重量%のペルオキソニ硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの0.1重量%水溶液をそれぞれこの順で0.9g添加し重合を開始させた。重合開始後3時間たったところで前記開始剤を0.6g追加し15時間で反応を終了した。この試料のアクリル酸とアクリルアミドのモル比は30:70であり、粘度は170mPa・sであった。なお、顕微鏡観察の結果、5〜10μmの粒子であることが判明した。また、重量平均分子量を測定すると、1000万であった。これを比較−1とする。結果を表1及び表2に示す。
【0031】
(比較合成例2〜3)合成例1あるいは合成例4と同様な操作により、油中水型両性高分子エマルジョン品あるいは塩水溶液中分散重合品DMQ/AAM=40/60(比較−2)あるいはDMQ/AAM=40/60(比較−3)をそれぞれ合成した。結果を表1及び表2に示す。
【0032】
【表1】
DMC:メタクロルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド
DMQ:アクロルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、AAC:アクリル酸、ACPS:アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、
AAM:アクリルアミド、
【0033】
【表2】
製品粘度:mPa・s、分子量:万
E;油中水型エマルジョン重合品、D;塩水中分散重合品、
【0034】
【実施例1〜12】
製紙原料としてLBKPを主体とした上質紙製造用紙料を用いた。物性はpH6.23、全ss分2.37%、灰分0.41%、カチオン要求量0.0085meq/Lである。歩留試験用の試料は、表1に記載したように合成例1〜7の試料を用い、試験は以下のように行なう。パルプ濃度を0.9重量%に水道水を用いて希釈、製紙原料を500ml採取し、攪拌回転数を1000rpmに設定しブリット式ダイナミックジャ−テスタ−により歩留率を測定する。添加薬品として炭酸カルシウム20%、中性ロジンサイズ0.2%、硫酸バンド1%、表1の両性水溶性高分子(A)として試料−3、試料−4あるいは試料−7を0.015%加えた後、表1の両性水溶性高分子(B)として試料−1、試料−2、試料−5あるいは試料−6を0.015%(いずれも対製紙原料乾燥固形)それぞれこの順で15秒間隔に加えた。また、試料−5あるいは試料−6を添加した後、試料−7を添加する処方を試験した。全薬品添加後のpHは4.51であった。薬品添加完了10秒後に10秒間白水を排出し捨て、引き続き30秒間白水を採取し、下記条件で総歩留率を測定した。その他の条件は、ワイヤー125Pスクリーン(200メッシュ相当)、総歩留率(SS濃度)はADVANTEC NO.2にて濾過し測定した。また乾燥後、濾紙を600℃で焼却し灰分を測定することにより炭酸カルシウムの歩留率を算出した。測定結果を表3に示す。
【0035】
【比較例1〜5】
比較試験として、表1のカチオン性水溶性高分子、比較−2あるいは比較−3を添加した後、アニオン性水溶性高分子、比較−1を添加する処方、あるいはアニオン性水溶性高分子、比較−1を添加した後、カチオン性水溶性高分子、比較−2あるいは比較−3を添加する処方に変えた他は、実施例1〜6と同様な操作により試験した。測定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
総歩留率;重量%、無機物歩留率;重量%
【0037】
【実施例9〜20】
新聞用紙用原料を用い、実施例1〜8と同様な操作により歩留率を測定した。製紙原料の物性は、以下のようである。pH7.5、全ss2.56%、灰分0.53%、カチオン要求量0.0902meq/L。添加薬品としてクレイ、5%、エマルジョン型ロジンサイズ、0.1%、硫酸バンド3%、表1の両性水溶性高分子(A)として試料−1、試料−2、試料−5あるいは試料−6を0.01%加えた後、表1の両性水溶性高分子(B)として試料−3、試料−4あるいは試料−7を0.01%(いずれも対製紙原料乾燥固形)それぞれこの順で15秒間隔に加えた。また試料−3、試料−4あるいは試料−7を添加した後、試料−1試料−2、試料−5あるいは試料−6を添加する処方を試験した。全薬品添加後のpHは4.15であった。また乾燥後の濾紙は900℃で焼却し灰分を測定することによりクレイの歩留率を算出した。測定結果を表4に示す。
【0038】
【比較例5〜8】
比較試験として、表1のカチオン性水溶性高分子、比較−2あるいは比較−3を添加した後、アニオン性水溶性高分子、比較−1を添加する処方、あるいはアニオン性水溶性高分子、比較−1を添加した後、カチオン性水溶性高分子、比較−2あるいは比較−3を添加する処方に変えた他は、実施例9〜20と同様な操作により試験した。測定結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
総歩留率;重量%、クレイ歩留率;重量%
【0040】
【実施例21〜28】
中質紙原料としてLBKP、DIP、TMPを配合された製紙原料を用い実施例9〜18と同様な操作により歩留率を測定した。物性は以下のようである。pH7.1、全ss2.40%、カチオン要求量0.033meq/L。添加薬品として、タルク5.5%、エマルジョン型ロジンサイズ、0.1%、硫酸バンド3%、表1の両性水溶性高分子(A)として試料−1、試料−2、試料−5あるいは試料−6を0.01%加えた後、表1の両性水溶性高分子(B)として試料−3、試料−4あるいは試料−7を0.01%(いずれも対製紙原料乾燥固形)それぞれこの順で15秒間隔に加えた。また試料−7を添加した後、試料−5あるいは試料−6を添加する処方を試験した。全薬品添加後のpHは4.20であった。また乾燥後の濾紙は900℃で焼却し灰分を測定することによりタルクの歩留率を算出した。結果を表5に示す。
【0041】
【比較例9〜12】
比較試験として、表1のカチオン性水溶性高分子、比較−2あるいは比較−3を添加した後、アニオン性水溶性高分子、比較−1を添加する処方、あるいはアニオン性水溶性高分子、比較−1を添加した後、カチオン性水溶性高分子、比較−2あるいは比較−3を添加する処方に変えた他は、実施例9〜20と同様な操作により試験した。測定結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
総歩留率;重量%、タルク歩留率;重量%
Claims (6)
- 抄紙前の製紙原料中に歩留及び/又は濾水性向上を目的として、カチオン当量値がアニオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(A)とアニオン当量値がカチオン当量値に対し同数か高い両性水溶性高分子(B)とを組み合わせて添加し、抄紙することを特徴とする紙を製造する方法。
- 前記抄紙前の製紙原料pHが3〜6であるとき、前記両性水溶性高分子(A)を添加した後、前記両性水溶性高分子(B)を添加することを特徴とする請求項1に記載の紙を製造する方法。
- 前記抄紙前の製紙原料pHが5〜9であるとき、前記両性水溶性高分子(B)を添加した後、前記両性水溶性高分子(A)を添加することを特徴とする請求項1に記載の紙を製造する方法。
- 前記両性水溶性高分子(A)及び両性水溶性高分子(B)が、
カチオン性単量体及びアニオン性単量体を必須として含有する水溶性単量体を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶な高分子分散剤を共存させ、前記塩水溶液に不溶な粒径100μm以下の重合体粒子を生成させる分散重合法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1〜3に記載の紙を製造する方法。 - 前記両性水溶性高分子(A)及び両性水溶性高分子(B)のアニオン性基がカルボキシル基のみで構成されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の紙を製造する方法。
- 前記製紙原料が新聞用紙原料あるいは中質紙原料であることを特徴とする請求項2に記載の紙を製造する方法。
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