JP2004229963A - 走査型光学系 - Google Patents

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Abstract

【課題】光学系の全長が短く、かつ、高い開口数と大きな作動距離を有する生体の細胞観察に適した走査型光学系を提供することを目的とする。
【解決手段】光ファイバと、該光ファイバからの光を被写体に集光する集光光学系と、該集光光学系に入射する光束の角度を反射面の角度に応じて変化させる光走査手段とを有する走査型光学系であって、前記集光光学系が前記光ファイバの射出端に対して、第1レンズと第2レンズとを備えるとともに、該第1レンズが前記光ファイバの射出端に対向する面に非球面形状を備えた両凸レンズであり、前記第2レンズが前記第1レンズに対向する面に凸面を備えた正レンズである構成とすることにより、光学系の全長が短く、かつ、高い開口数と大きな作動距離を有する走査型光学系を提供する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光走査型共焦点光学装置に関し、特に生体を生体内で観察するのに適した走査型光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体内の組織や細胞の様子を生体内で観察できる手段として、例えば、先端に、走査型共焦点光学系が組み込まれたプローブ(内視鏡)を人体に挿入し、内臓の細胞等を直接観察する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、共焦点光学系において被写体上の集光位置を走査する方法としては、光ファイバを動かす方法や光ファイバと集光光学系とを一体化して走査する走査手段により、集光位置を走査する方法およびミラーを揺動させる方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このうち、ミラーを揺動させる方法は、走査速度が速く、しかも小型化が可能であるという利点を有している。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5120953号明細書(第1−5頁、第1図)
【特許文献2】
特開2000−171726号公報(第2−7頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、被写体表面からより深い場所を観察するためには、光学系の先端部と集光位置との距離(以下、WDという。)が100μm以上であることが望ましい。また、生体細胞等は、細胞が立体的に重なっている構造となっているため、被写体表面からより深い場所を観察するためには深さ方向の分解能を高めて、集光点以外の不要な光を排除する効果、すなわち、セクショニング効果を高める必要がある。そのためには、集光光学系の被写体側の開口数(以下、NAという。)を大きくすればよいが、鮮明な画像を得るためには、NAを0.55以上とすることが必要である。
【0005】
ところが、従来提案されている光学系のように、集光光学系を一枚のレンズで構成した場合には、軸外の光の収差を補正できないために、NAやWDを大きくすることができない。一方で、集光光学系を複数のレンズで構成すれば、高いNAを有する光学系を構成することができるが、光学系の全長が長くなり、観察の際に内視鏡を湾曲させることができない等の問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、光学系の全長が短く、かつ、高い開口数と大きな作動距離を有する生体の細胞観察に適した走査型光学系を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、光ファイバと、該光ファイバからの光を被写体に集光する集光光学系と、該集光光学系に入射する光束の角度を反射面の角度に応じて変化させる光走査手段とを有する走査型光学系であって、前記集光光学系が前記光ファイバの射出端に対して、第1レンズと第2レンズとを備えるとともに、該第1レンズが前記光ファイバの射出端に対向する面に非球面形状を備えた両凸レンズであり、前記第2レンズが前記第1レンズに対向する面に凸面を備えた正レンズである走査型光学系を提案している。
【0008】
この発明によれば、第1レンズの両面と第2レンズの一方の面の形状を凸形状とし、正のパワーを持たせたため、レンズ1枚の構成に比べて、パワーを分散させることにより、収差の発生量を少なく抑えることができる。具体的には、第1レンズの光ファイバの射出端に対向する面を非球面とすることにより、第1レンズの被写体側で発生する球面収差およびコマ収差を補正することができる。また、第2レンズの第1レンズに対向する面を凸面にすることにより、収差の発生を少なく抑えることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された走査型光学系について、前記集光光学系が被写体側の開口数を0.55以上とする液浸光学系である走査型光学系を提案している。
【0010】
この発明によれば、集光光学系の被写体側の開口数を0.55以上としたことから、鮮明な生体細胞画像を得ることができる。また、集光光学系を液浸光学系としたことから、WDが大きく、S/N比の高い信号が得られる光学系を構成することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された走査型光学系について、前記第2レンズが前記第1レンズに対向する面に備えた凸面の曲率半径Rが、以下の条件を満足する走査型光学系を提案している。
0.9≦|R|(1+1/n)/(n/A+D)≦1.9 (1)
ただし、A=(n−n)/R+n/WD であり、nは、第2レンズの屈折率、nは、集光位置と第2レンズの間にある媒質の屈折率である。また、Rは、第2レンズの被写体側の曲率半径(被写体側が凹の場合を正、凸の場合を負とする)、Dは、第2レンズの光軸上の厚さ、WDは、第2レンズの被写体側と集光点の間の距離である。
【0012】
この発明によれば、第2レンズの第1レンズに対向する面に備えた凸面の曲率半径Rが上記の条件を満足することにより、第2レンズの被写体側で発生するコマ収差をキャンセルし、第2レンズ全体の収差発生量を小さくすることができる。また、同時に、第2レンズの凸面側での球面収差の発生を抑えることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載された走査型光学系について、前記光走査手段が揺動可能な反射面を有し、該反射面の位置が、以下の条件を満足する走査型光学系を提案している。
1<|L/F|<2.5 (2)
ただし、Lは、集光光学系の光ファイバの端面側の焦点位置と揺動可能な反射面の中心の間の距離、Fは、集光光学系の空気中での焦点距離である。
【0014】
この発明によれば、上記条件を満足することにより、第1レンズと反射面走査ミラーとの距離が物理的に配置可能な程度に保たれる。また、第1レンズおよび第2レンズに入射する光束径を最適化することができる。さらに、走査ミラーを走査したときに、軸外主光線が物体に入射する角度を最適化することができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載された走査型光学系について、固定反射面を有し、前記揺動可能な反射面と該固定反射面とが前記光ファイバから射出される光束に対して傾いて配置されており、前記光ファイバの端面から前記第2レンズの被写体側の面までの距離が5mm以下である走査型光学系を提案している。
【0016】
この発明によれば、揺動可能な反射面と固定反射面との組み合わせにより、全長の短い直視型の光学系を構成することができる。また、揺動可能な反射面と固定反射面に光が曲がって入射するため、反射面で反射する光がピンホールに戻らず、ノイズの発生を抑制できる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載された走査型光学系について、前記揺動可能な反射面の形状が、光軸に対して該反射面が傾いている方向と長軸の方向とが一致している楕円形状である走査型光学系を提案している。
【0018】
この発明によれば、揺動可能な反射面の形状が楕円形状であるため、揺動可能な反射面が光軸に対して傾いても、集光光学系に入射する光束がほぼ円に近くなり、縦方向と横方向の解像度の差を小さくすることができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項5または請求項6に記載された走査型光学系について、前記固定反射面の少なくとも1つが前記第1レンズと一体である走査光学系を提案している。
この発明によれば、固定反射面の少なくとも1つを第1レンズと一体化したため、部品点数を削減し、光学系全体の外径を小さくすることができる。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載された走査型光学系について、前記第1レンズの前記光ファイバの射出端に対向する面の形状が、光軸からの距離に応じて曲率半径が大きくなる非球面形状である走査型光学系を提案している。
この発明によれば、第1レンズの光ファイバの射出端に対向する面の形状を光軸からの距離に応じて曲率半径が大きくなる非球面形状としたことから、第1レンズの被写体側で発生する球面収差、コマ収差を光ファイバ側で補正することができる。
【0021】
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載された走査型光学系について、前記第2レンズの被写体に対向する面の形状が平面である走査型光学系を提案している。
この発明によれば、第2レンズの被写体に対向する面の形状が平面であることから、被写体に密着させやすく、生体表面の平坦度により生ずる収差の発生を抑制することができる。
【0022】
請求項10に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載された走査型光学系について、前記第2レンズの被写体に対向する面の形状が凹面である走査型光学系を提案している。
この発明によれば、第2レンズの被写体に対向する面の形状が凹面であることから、球面収差およびコマ収差の発生を抑制することができる。また、第2レンズの被写体側の面頂と集光位置の距離を大きくすることができる。
【0023】
請求項11に係る発明は、請求項1から請求項10に記載された走査型光学系を先端部に備えた内視鏡プローブを提案している。
この発明によれば、全長が短く、高い解像度を有する内視鏡プローブを構成することができるため、内視鏡の鉗子口を通じて生体内部の拡大像や細胞像を観察することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る走査型光学系について図1から図12を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る走査型光学系を含む光学装置は、図1に示すように、モニタ1と、プロセッサ2と、光源3と、光検出部4と、光カップラ5と、光ファイバ6と、プローブ7と、プローブ先端部8とから構成されている。
【0025】
モニタ1は、被写体の様子を画像情報として表示する表示装置であり、プロセッサ2は、後述する光検出手段3からの電気信号を画像情報に変換し、これをモニタ1に出力する役割を果たす情報処理装置である。光源3には、例えば、レーザーダイオードが用いられる。光源3からの光は、光ファイバ6を介して、プローブ先端部8に導かれる。光検出部4は、後述するプローブ先端部8からの反射光を光の強度として検出し、これを電気信号に変換してプロセッサ2に出力する。なお、光検出部4としては、フォトマルチプライヤーやアバランシェ・フォトダイオード、フォトダイオード等のいずれでもよい。
【0026】
光ファイバカップラ5は、光源3からの光を2つの方向に分岐するとともに、プローブ先端部8からの戻り光を光検出部4に導く役割を有する。なお、同様の作用を有するものとして、これに代えてビームスプリッタを用いてもよい。プローブ7は、走査型光学系を収納するプローブ先端部8を有し、例えば、図2に示すようなチャンネル9と呼ばれる小孔を通して生体の観察を行う。また、プローブ7自身を直接体内に挿入して用いられる場合もある。なお、プローブ先端部8に収納されている走査型光学系については、以下、実施形態の中で、その詳細について説明する。
【0027】
次に、光の進む方向にしたがって、本システムの作用について、図1を用いて説明する。まず、光源3から射出された光は、光ファイバ6を介して光カップラ5に入る。なお、光源は、半導体レーザでなくてもよいが、その波長は、600nmから1350nmであることが望ましい。光源3からの光は、ここで2つの方向に分岐されて、その一部が再び光ファイバ6を介してプローブ先端部8に配置された走査型光学系に入る。走査型光学系では、光源3からの光が反射、集光された後、被写体である生体に向けて照射される。被写体で反射した戻り光は、先程と同様の経路をたどり、光カップラ5に入り、ここで光検出手段4に導かれる。
【0028】
光検出部4は、上述のように、戻り光の光強度を検出し、これを電気信号に変換した後、プロセッサ2に出力する。プロセッサ2は、入力された電気信号を処理してこれを画像情報とした後、これをモニタ1に出力して、観察画像を表示する。なお、上記方法に関わらず、コヒーレンス長100μm以下のSLD(SLD:Super Luminescent Diode)等の低コヒーレンス光源を用いて、信号側と参照側との光路長がコヒーレンス長内で一致したときだけ干渉信号が得られるような、いわゆる、光の干渉を利用した検出方法を用いてもよい。
【0029】
実際に、生体細胞等を観察する場合には、図2に示すように、内視鏡のチャネル(鉗子口)9にプローブ7を通し、プローブ先端部8を生体13にほぼ密着させた状態で行う。このとき、プローブ先端部8を生体13に押し当てると、画像のぶれが少ない安定した画像を得ることができる。なお、生体細胞等の観察にあたっては、事前に、通常の内視鏡でプローブの位置を確認した上、見たい場所を特定してから行う。
【0030】
次に、図3から図7を用いて、本発明の第1の実施形態に係る走査型光学系について説明する。
本実施形態に係る走査型光学は、図3に示すように、光ファイバ6と、走査ミラー14と、集光光学系17を構成する第1レンズ15と、第2レンズ16と、固定ミラー18とから構成されている。
【0031】
走査ミラー14は、揺動可能な構造を有しており、光の反射方向を変化させることのできる光学素子である。走査ミラー14は、例えば、マイクロマシン技術を使用して製作されるジンバル構造のマイクロミラーであって、ジンバル構造によって駆動可能に支持されるとともに、静電気などを利用して駆動される。すなわち、制御電圧を印加することにより、走査ミラー14の角度が変わり、これに応じて、光の反射方向が変化することにより、集光位置が走査される(図5参照)。
本実施形態においては、走査ミラー14の平衡位置に対する振れ角を、縦方向および横方向、それぞれ±3度と設定すると、集光位置において、100μm×100μmの範囲を二次元で走査することができる。
【0032】
図6は、走査ミラー14が平衡位置から傾いたときの光路を示したものである。この図と図3を比較して見れば、集光位置がずれていることがわかる。走査ミラー14は、平衡位置でのミラー面の法線方向が集光光学系の光軸に対して、25度傾くように取り付けられている。したがって、走査ミラー14が揺動しても、走査ミラー14に入射する光が、ミラー面に対して垂直になることがないため、走査ミラー14で反射した光が光ファイバ6に戻ることはない。
【0033】
集光光学系17は、第1レンズ15と第2レンズ16とから構成されている。第1レンズ15は、両面を非球面の凸レンズとした両凸レンズであり、第2レンズ16は、第1レンズに対向する面が凹面、もう一方の面が平面である平凸レンズである。したがって、各面でのパワーを分散させて、収差の発生を抑制する光学系が構成される。また、第1レンズ15は、図4に示すような、光束が通る部分に開口部を有し、光軸に対して垂直な面と傾いた面とを有する保持部材の内部に固定されて配置されている。この保持部材の光軸に対して傾いた面には、開口部を除く部分に反射コーティングが施されており、固定ミラー18としての機能を有している。保持部材の光軸に対して垂直な面は、第2レンズ16を保持する部材の垂直な面と接するように構成されているため、第1レンズ15および第2レンズ16の位置精度を維持しつつ、組立容易な構造となっている。
【0034】
第1レンズ15は、正の屈折力を持った両面非球面の両凸レンズであり、しかも、非球面形状は、光軸から遠ざかるにつれて、曲率半径が大きくなる形状を有しているため、被写体側で発生する球面収差およびコマ収差を光ファイバ側の面で効果的に補正することができる。また、第2レンズ16は、被写体側を平面とした平凸レンズであるため、生体(被写体)13に密着させやすく、第2レンズ16を生体(被写体)13に密着させて、平坦にすることによって、生体表面での収差の発生を抑制することができる。
【0035】
なお、第1レンズ15および第2レンズ16の表面には反射防止膜がコーティングされており、これらのレンズで反射した光がノイズになるのを防止している。本実施形態においては、第1レンズ15の両面と、第2レンズ16の凸面には、膜厚λ/4(λは、光源の波長を示す。)のMgFがコーティングされている。また、第2レンズ16の平面には、第2レンズ16と集光点の間が水で満たされていたときに反射率が小さくなるよう、膜厚λ/4のAlがコーティングされている。これにより、各面での反射率を0.1%にすることができる。
【0036】
本実施形態においては、第2レンズ16と被写体13の間を水に浸した水浸設計が施されている。これは、NAが高く外径が小さい光学系では、WDを小さくせざるを得ないことと関連している。つまり、光学系が水浸設計ではなく、第2レンズ16と被写体13との間が空気で、WDが小さいと、生体の粘液等が最外面の光学素子と生体表面との間に入り込みやすく、最外面の光学素子の表面に水滴等が部分的に付着すると、その部分の光学特性が変化し、安定的に画像が得られないという不具合が生ずるからである。
【0037】
また、第2レンズ16と被写体13との間が空気であると、生体表面と空気との屈折率の差から、生体表面での光の反射が強くなるため、生体内部の細胞等の観察がしずらくなる。さらに、最外面の光学素子と空気との屈折率の差が大きいため、球面収差やコマ収差の発生量が大きくなる。ところが、水浸設計を用いると、水と生体表面での屈折率の差が小さいために、上記のような問題を解消することができる。したがって、第2レンズ16と被写体13の間を水に浸した水浸設計にすることにより、収差の少ない高分解能の生体内部の画像が安定的に得られるようになる。
【0038】
次に、条件式について説明する。
本実施形態における走査型光学系において、所望の目的を達成するためには、第2レンズ16が第1レンズ15に対向する面に備えた凸面の曲率半径Rが、以下の条件を満足することが望ましい。
0.9≦|R|(1+1/n)/(n/A+D)≦1.9 (1)
ただし、A=(n−n)/R+n/WD であり、nは、第2レンズ16の屈折率、nは、集光位置と第2レンズ16の間にある媒質の屈折率である。また、Rは、第2レンズ16の被写体側の曲率半径(被写体側が凹の場合を正、凸の場合を負とする)、Dは、第2レンズ16の光軸上の厚さ、WDは、第2レンズ16の被写体側と集光点の間の距離である。
【0039】
この条件式は、第2レンズ16の被写体側で発生するコマ収差をキャンセルし、第2レンズ16全体の収差の発生量を小さく抑えると同時に、第2レンズ16の凸面側での球面収差の発生を抑制するための条件を示している。したがって、この条件式を満足できないと、第2レンズ16で発生するコマ収差を第1レンズ15だけではキャンセルできなくなり、第2レンズ16の第1レンズ15側で発生した球面収差も他の面ではキャンセルできなくなる。
【0040】
また、走査ミラー14と集光光学系17との位置関係は、以下のようにすることが望ましい。
1<|L/F|<2.5
ただし、Lは、集光光学系17の光ファイバの端面側の焦点位置と揺動可能な反射面の中心の間の距離、Fは、集光光学系17の空気中での焦点距離である。
【0041】
|L/F|が1よりも大きいと、第1レンズ15と走査ミラー14との距離を十分に確保できるので、走査ミラー14や固定ミラー18を物理的に配置することができる。また、|L/F|を2.5よりも小さくすることにより、第1レンズ15および第2レンズ16の外径を大きくする必要がない。このため、内視鏡のチャンネル9に挿入するプローブ7に用いる光学系としては好ましい。また、|L/F|を2.5よりも小さくすることで、走査ミラー14を走査したとき、軸外主光線が物体に入射する角度が大きくなりすぎるのを防止することができる。したがって、0.55以上の高い開口数を有し、しかも、スルーレート比で90%以上の高性能な光学系を構成するためには、上記、2つの条件を満足する光学系にすることが必要となる。なお、本実施形態においては、開口数(NA)が、紙面鉛直側と紙面方向とで異なっているが、ここでいう開口数とは、それらの相乗平均をとった値とする。(本実施形態においては、NA=0.56である。)
【0042】
図7および表1から表3は、本実施形態における走査型光学系の具体的な数値をしめしたものである。図7において、r1、r2、・・・は、光ファイバ側から示した各光学素子の面の曲率半径(非球面の場合は、近軸曲率半径)を、d1、d2、・・・は、光ファイバ側から示した各光学素子の光軸上での面間隔を、nd1、nd2は、第1レンズ、第2レンズのd線での屈折率を、νd1、νd2は、第1レンズ、第2レンズのd線でのアッベ数を、nd3、νd3は、被写体のd線の屈折率およびアッベ数を示している。なお、r1、r2・・・及びd1、d2・・・の単位はmmである。また、非球面は以下の式で定義される。
x=(s/r)/{1+√(1−(1+k)(s/r))}+A+A+A+A1010
ただし、s=y+z、rは近軸曲率半径、kは円錐係数、A、A、A、A10はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。
【表1】
Figure 2004229963
【表2】
Figure 2004229963
【表3】
Figure 2004229963
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態について、図8、図9および表4から表6を用いて説明する。
本実施形態は、第1の実施形態に対して、被写体側の開口数を高くして、高分解能化を図ったものである。表4から表6に示した設計値においては、NA=0.65、WD=100μmとなっている。具体的な構成としては、走査ミラー14の有効部(光を反射するために、金属コートをしている部分)を、図9に示すように、楕円形状としている。
【表4】
Figure 2004229963
【表5】
Figure 2004229963
【表6】
Figure 2004229963
【0044】
走査ミラー14の有効部を楕円形状とすることにより、紙面水平方向と垂直方向の開口数とを同じにすることができる効果がある。なお、楕円の長軸側の径と短軸側の径の比率は、以下のようにすることが望ましい。
短軸側の径=(長軸側の径)×cosθ
ここで、θは、集光光学系の光軸に対する走査ミラー面(平衡位置)の傾きである。上記のような構成とすることにより、本実施形態においても、スルーレート比90%以上の高性能な光学系を実現することができる。
【0045】
次に、本発明の第3の実施形態について、図10、図11および表7から表9を用いて説明する。
本実施形態は、第2の実施形態に対して、光ファイバ6の軸が集光光学系17の光軸と平行になるように配置されている。これにより、光ファイバ6を固定する部材の加工が容易になるという効果がある。また、本実施形態においては、光ファイバ6端面の角度が、集光光学系17の光軸に対して、8°傾いて配置されている。これによって、光ファイバ6端面での反射光が光検出部4側に戻るのを防止し、SN比を高くすることができる。
【0046】
さらに、本実施形態においては、第1レンズ15の下部に固定ミラー18を設けることにより、第1レンズ15と固定ミラー18とを一体化している。具体的には、集光光学系17の光軸に対する固定ミラー18の角度を23°に設定している。この値は、光ファイバ6から射出される光の方向を考慮して求められたものである。こうした構成にすることにより、部品点数を減少でき、光学系全体の外径を小さくできるという効果がある。また、部品点数が減少するため、組立性が向上するという効果もある。表7から表9に示すように、本実施形態においては、上記の構成をとることにより、高い開口数(NA=0.66)で、90%以上のスルーレートを有する高性能な光学系を構成することができる。
【表7】
Figure 2004229963
【表8】
Figure 2004229963
【表9】
Figure 2004229963
【0047】
次に、本発明の第4の実施形態について、図12および表10から表12を用いて説明する。
本実施形態は、第1の実施形態に対して、第2レンズ16の被写体側が凹面となっている。第2レンズ16の形状をこのようにすることにより、球面収差の発生を小さくできるという効果がある。また、第2レンズ16の被写体側の面頂と集光位置との距離(WD:作動距離)を約400μmと大きくすることができるという効果がある。表10から表12に示すように、本実施形態においては、上記の構成をとることにより、高い開口数(NA=0.56)で、90%以上のスルーレートを有する高性能な光学系を構成することができる。
【表10】
Figure 2004229963
【表11】
Figure 2004229963
【表12】
Figure 2004229963
【0048】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、全長が短く、高い開口数を持ち、さらに作動距離の大きい走査型光学系を構成することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る走査型光学系を含む光学装置の構成図である。
【図2】直視型内視鏡の構造図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る走査型光学系の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る第1レンズの保持部材の構造図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る走査ミラーの構造図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る走査ミラーを走査した場合の光束の様子を示した図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る表1から表3の内容を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る表4から表6の内容を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る走査ミラーの構造図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る表7から表9の内容を説明するための図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る第1レンズの構造図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る表10から表12の内容を説明するための図である。
【符号の説明】
1・・・モニタ、2・・・プロセッサ、3・・・光源、4・・・光検出部、5・・・光カップラ、6・・・光ファイバ、7・・・プローブ、8・・・プローブ先端部、9・・・チャンネル、10・・・直視型内視鏡、11・・・対物レンズ、12・・・照明レンズ、13・・・生体(被写体)、14・・・走査ミラー、15・・・第1レンズ、16・・・第2レンズ、17・・・集光光学系、18・・・固定ミラー、19・・・光透過部(開口)

Claims (11)

  1. 光ファイバと、該光ファイバからの光を被写体に集光する集光光学系と、該集光光学系に入射する光束の角度を反射面の角度に応じて変化させる光走査手段とを有する走査型光学系であって、前記集光光学系が前記光ファイバの射出端に対して、第1レンズと第2レンズとを備えるとともに、該第1レンズが前記光ファイバの射出端に対向する面に非球面形状を備えた両凸レンズであり、前記第2レンズが前記第1レンズに対向する面に凸面を備えた正レンズである走査型光学系。
  2. 前記集光光学系が被写体側の開口数を0.55以上とする液浸光学系である請求項1に記載された走査型光学系。
  3. 前記第2レンズが前記第1レンズに対向する面に備えた凸面の曲率半径Rが、以下の条件を満足する請求項1または請求項2に記載された走査型光学系。
    0.9≦|R|(1+1/n)/(n/A+D)≦1.9 (1)
    ただし、A=(n−n)/R+n/WD であり、nは、第2レンズの屈折率、nは、集光位置と第2レンズの間にある媒質の屈折率である。また、Rは、第2レンズの被写体側の曲率半径(被写体側が凹の場合を正、凸の場合を負とする)、Dは、第2レンズの光軸上の厚さ、WDは、第2レンズの被写体側と集光点の間の距離である。
  4. 前記光走査手段が揺動可能な反射面を有し、該反射面の位置が、以下の条件を満足する請求項1から請求項3のいずれかに記載された走査型光学系。
    1<|L/F|<2.5 (2)
    ただし、Lは、集光光学系の光ファイバの端面側の焦点位置と揺動可能な反射面の中心の間の距離、Fは、集光光学系の空気中での焦点距離である。
  5. 固定反射面を有し、前記揺動可能な反射面と該固定反射面とが前記光ファイバから射出される光束に対して傾いて配置されており、前記光ファイバの端面から前記第2レンズの被写体側の面までの距離が5mm以下である請求項4に記載された走査型光学系。
  6. 前記揺動可能な反射面の形状が、光軸に対して該反射面が傾いている方向と長軸の方向とが一致している楕円形状である請求項5に記載された走査型光学系。
  7. 前記固定反射面の少なくとも1つが前記第1レンズと一体である請求項5または請求項6に記載された走査光学系。
  8. 前記第1レンズの前記光ファイバの射出端に対向する面の形状が、光軸からの距離に応じて曲率半径が大きくなる非球面形状である請求項1から請求項7のいずれかに記載された走査型光学系。
  9. 前記第2レンズの被写体に対向する面の形状が平面である請求項1から請求項8のいずれかに記載された走査型光学系。
  10. 前記第2レンズの被写体に対向する面の形状が凹面である請求項1から請求項8のいずれかに記載された走査型光学系。
  11. 請求項1から請求項10に記載された走査型光学系を先端部に備えた内視鏡プローブ。
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