JP2004227032A - 建築物の建方計画方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コンピュータ1の記憶手段2に、躯体部材毎に一端支持可能か否かの種別及び位置を記録した躯体図Dを記憶する。格子点登録手段30により、躯体図D上の階層Zp毎に水平通り芯Xr、Yqが交わる格子点(Xr、Yq、Zp)を想定し、部材毎に近傍の格子点を所属格子点として登録する。直列建方区生成手段41により、所定建方工法に基づき躯体図D上の全格子点を複数の施工順序付き直列建方区Eiに対応する格子点群に分割し、施工昇順に各建方区Eiへ所属格子点が当該建方区Eiの対応格子点となる建方区未割り当て一端支持可能部材と所属格子点が全て当該建方区Ei又は先行建方区Ej(j<i)の対応格子点となる建方区未割り当て部材とを割り当てて建方区図Wを作成する。建方検討手段60で、各建方区Ei毎に割り当て部材のクレーン建方可能性を判定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物の建方計画方法及びプログラムに関し、とくに建築物の施工計画分野において柱や梁等の躯体部材を定置式又は移動式クレーンにより現場で設置する建方工事を計画する方法及びコンピュータ・プログラムに関する。本発明は、建方に要する工事期間が1日で終わらない規模の建築物の建方工事及びクレーン仕様・荷揚げ位置の検討に図面を必要とする建方工事の建方計画に広く適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
建築工事は規模が比較的大きく施工手順も複雑であるため、施工に当たり計画を立てて施工管理により安全・的確に進めることが求められる。計画の良否は施工効率に大きく影響を与えるので、従来からコンピュータを利用した様々な施工計画システムが提案されている。とくに鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物では、建築物の躯体を構成する鉄骨部材を現場で設置する建方の計画の良し悪しが工期や工費に大きく影響するため、特許文献1〜3に示すように、躯体の建方計画を適切に支援するシステムの開発が進められている。
【0003】
躯体の建方計画の概要を図26の流れ図に示す。先ずステップS2601において、建築物の構造図等に基づき柱、梁、床板、階段等の建方に関係する部材(以下、建方部材ということがある。)の数量を算出し、各建方部材の種類・位置・形状等を記入した三次元躯体図D(図23参照。以下、躯体モデルDということがある。)を作成する。次にステップS2602において、建築物の敷地条件・配置条件・近隣道路条件等からゲート位置・建方工法・建方方向・クレーン台数及び機種・構台使用の有無・建方サイクル工程等について基本方針案を作成する。ステップS2603において基本方針案に基づき建方モデルの建方計画案を作成する。
【0004】
具体的には図26のステップS2603において、基本方針案に基づき、建方モデルの全部材を適当な数及び施工順序の部材の集まり(以下、建方区という。)に分割した建方区図W(図24参照)を作成する。建方区の一例は、所定期間(例えば1日)で建方できる数の施工順序付きの部材集合である。更に、基本方針案に基づきクレーンによる各建方区毎の建方可能性(クレーン揚重の可否、干渉の有無等のクレーン操作の可能性)を検討し、建方区図・クレーン配置図・建方状況図等からなる建方計画案を作成する。図26のステップS2602〜S2603では、複数の建方基本方針案、建方計画案を作成して比較検討するのが原則である。なお、同図に示すように広義の建方計画案はクレーンの組み立て・解体計画等を含むが、以下の説明では建方区図の作成と建方区毎の建方可能性検討とからなる狭義の意味で建方計画案の用語を使用する。
【0005】
特許文献1は、画面上に鉄骨建方の検討・手順・クレーンの動き・足場の設置状況を立体的に表示して鉄骨建方の施工計画の策定を支援する施工計画支援システムの一例を開示する。図27のシステム構成を参照するに、同システムは、柱材や梁材の断面及び平面配置等の鉄骨基本データを指定された視点・焦点・高さでパース変換してパースファイル123(図28参照、躯体モデルDに相当)を作成する鉄骨パースファイル作成手段114、柱の属する節や梁の属する層毎に建方未了・建方中・建方済みの情報を設定して区分ファイル124(図29参照、建方区図Wに相当)を作成する区分ファイル作成手段115、パースファイル123と区分ファイル124とを表示し更にクレーンのパース化表示(図30参照、クレーン配置図に相当)を行うと共にクレーン運転のシミュレーション表示を行って柱材や梁材の吊り上げの可否判断を行う建方検討手段116、及び区分ファイル124を建方の順番に従って呼び出し建方手順(図31参照、建方状況図に相当)を表示する建方手順出力手段117を有する。
【0006】
特許文献1による区分ファイル124の作成方法を図32に示す。先ず、区分ファイル作成手段115によりパースファイル123を呼び出し、区分付けしたい柱の属する節を指定して当該節を色替表示する(ステップ1〜3)。パースファイル123上で区分付けしたい柱の上下端を指定して建方未了・建方中・建方済みを選択し(ステップ4〜6)、指定した節の全ての柱について同様の選択を繰り返す(ステップ7)。梁についても、パースファイル123上の区分したい梁の属する層を色替表示し(ステップ8〜9)、区分付したい梁の左右端を指定して建方未了・建方中・建方済みを選択し(ステップ10〜12)、指定した層の全ての梁について前記選択を繰り返す(ステップ13)。全ての節・層についてステップ1〜13を繰り返すことにより、図31のような1日目、2日目、3日目……等の施工日毎の区分ファイル124を作成できる。建方検討手段116は、建方部材毎に当該部材を有する施工日の区分ファイル124を呼び出し、図30のようにクレーンの設置位置・高さ・定格荷重等に基づく運転シミュレーションにより当該部材が吊り上げ可能か否かを検討する。建方手順出力手段117は、図31のように施工日毎の区分ファイル124を一覧表示すると共に施工日毎の鉄骨平面図、鉄骨断面図を表示する。
【0007】
【特許文献1】特開平3−291763号公報
【特許文献2】特開平7−282112号公報
【特許文献3】特開2001−222570号公報
【特許文献1】正村芳久他「PCa工法における建方計画の支援手法―その1工区分割支援ツールの開発―」第16回建築生産シンポジウム論文集、社団法人建築学会、2000年7月、p265−270
【特許文献2】正村芳久他「躯体モデルによる建方計画の支援方法に関する研究」第17回建築生産シンポジウム論文集、社団法人建築学会、2001年7月、p295−302
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の建方計画支援システムは、コンピュータ・ディスプレイに表示した躯体モデルDを参照しながら建方区の設定(建方区毎の建方部材の指定)と建方可能性の判定とを行うものであり、建方計画の容易化を図るものといえる。しかし従来のシステムは、建方計画に必要なデータを対話形式で入力するものであり、多数の建方計画案を短時間で作成することが難しい問題点がある。図26を参照して説明したように、建方計画では多数の建方基本方針案・建方計画案を作成して比較検討することが望ましいが、従来システムでは多数の計画案の作成が難しいため、経験等に基づき比較的少数の計画案の比較検討に止まらざるを得ないのが現実である。このため、建方計画案の作成に熟練を要するだけでなく、作成した建方計画案が工期や工費等の面から最適であるか否かを客観的に判断することが難しい場合がある。
【0009】
最適な建方計画を検討するためには、図3に示すように躯体モデルDに適用可能な複数の建方計画案24を自動的に生成し(ステップS303参照)、それら複数の建方計画案24を参考にして熟練者が最適案を選択できることが望ましい。例えば、施工対象の建築物に応じて最適案に適当な修正を加えて建方計画実施案25とすることができる(ステップS304〜5参照)。従来のシステムは、コンピューターとの対話形式で建方計画の容易化を図るものの、建方計画案の自動生成を予定していない。最適な建方計画を支援するため、躯体モデルDに適用可能な建方計画案を自動的に生成できるシステムの開発が望まれている。
【0010】
そこで本発明の目的は、建築物の三次元躯体図に基づき建方計画案を自動的に作成できる建方計画方法及びプログラムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特許文献1の建方区の設定に代わる建方区図Wの自動作成方法を検討した。一般に建方区は、単独の建方作業班・クレーンにより順次連続的に建方する場合(以下、この場合の建方区を直列建方区という。)と、複数の建方作業班・クレーンにより並列的に建方する場合(以下、この場合の建方区を並列建方区という。)とがある。並列建方区は1つの建方作業班・クレーンが受け持つ範囲であり、通常は並列建方区を更に直列建方区に分割して建方する。
【0012】
従来から、躯体モデルDを並列建方区に分割した上で、各並列建方区を直列建方区に自動的に分割して建方区図Wを作成する方法が提案されている(非特許文献1及び2参照)。例えば、各並列建方区を所定の平面的な分割パターン(階層毎のX方向及びY方向の水平通り芯数(n×m)のパターン等)に基づき自動分割して建方区図Wを作成する。しかし、この建方区図Wの作成手法では、2つの直列建方区に跨るような建方部材を何れの建方区に割り当てるかを判断することが難しく、また下層階と上層階とで床面積が異なっていたり凹凸がある躯体モデルDについて特定の分割パターンのみでは必ずしも実際の実施案に近い建方区図Wが作成できない問題点がある。
【0013】
本発明者は、躯体モデルDの階層毎のX方向及びY方向の水平通り芯が交わる格子点に注目した。各建方部材は、その部材上又は近傍に1つ以上の格子点を有する。他方、各直列建方区は格子点の集合として考えることができ、格子点を介して建方区内に属する部材を指定することができる。本発明者は、格子点に基づき建方区図Wを作成すれば、部材の位置に拘束されずに建方区図Wを作成でき、しかも様々なケースで実際の実施案に近い建方区図Wを自動作成できるとの知見を得た。本発明はこの知見に基づく研究開発の結果、完成に至ったものである。
【0014】
図4、図6の流れ図及び図16の実施例を参照するに、本発明の建築物の建方計画方法は、建築物の躯体の部材毎に一端支持可能か否かの種別C、M(Cは一端支持可能部材を表わし、Mはそれ以外の部材を表わす。以下同じ。)及び部材の位置を記録した三次元躯体図D(図23参照)に基づき当該躯体の建方を計画する方法において、躯体図D上の階層Zp毎にX方向及びY方向の水平通り芯Xr、Yqと両通り芯Xr、Yqが交わる格子点(Xr、Yq、Zp)とを想定し、部材C、M毎に当該部材C、M上又は近傍に存すべき全ての格子点(Xr、Yq、Zp)を当該部材C、Mの所属格子点として定め、所定建方工法に基づき躯体図D上の全ての格子点を複数の施工順序付き直列建方区Ei(1≦i≦n、nは直列建方区数、図示例ではE1〜E21)に対応する格子点群に分割し、初期建方区E1へ所属格子点が当該建方区E1の対応格子点となる一端支持可能部材(例えば柱部材C1、C4)と所属格子点が全て当該建方区E1の対応格子点となる部材(例えば部材M1)とを割り当て、施工順序の昇順に後続建方区Ei(i≧2、例えば建方区E2)へ所属格子点が当該建方区Eiの対応格子点となる建方区未割り当ての一端支持可能部材(例えば柱部材C7、C8)と所属格子点が全て当該建方区Ei又は先行建方区Ej(j<i)の対応格子点となる建方区未割り当ての部材(例えば部材M2、M4)とを割り当て、各直列建方区Ei毎に割り当て部材C、Mのクレーンによる建方可能性を判定してなるものである。
【0015】
また、図1のブロック図及び図16の実施例を参照するに、本発明の建築物の建方計画プラグラムは、建築物の躯体の建方を計画するため、コンピュータを、建築物の躯体の部材毎に一端支持可能か否かの種別C、M及び部材の位置を記録した三次元躯体図D(図23参照)を記憶する記憶手段2;躯体図D上の階層Zp毎にX方向及びY方向の水平通り芯Xr、Yqと両通り芯Xr、Yqが交わる格子点(Xr、Yq、Zp)とを想定し且つ部材C、M毎に当該部材C、M上又は近傍に存すべき全ての格子点(Xr、Yq、Zp)を当該部材C、Mの所属格子点として登録する格子点登録手段30;所定建方工法に基づき躯体図D上の全ての格子点を複数の施工順序付き直列建方区Ei(1≦i≦n、nは直列建方区数、図示例ではE1〜E21)に対応する格子点群に分割し、初期建方区E1へ所属格子点が当該建方区E1の対応格子点となる一端支持可能部材(例えば柱部材C1、C4)と所属格子点が全て当該建方区E1の対応格子点となる部材(例えば部材M1)とを割り当て、施工順序の昇順に後続建方区Ei(i≧2、例えば建方区E2)へ所属格子点が当該建方区Eiの対応格子点となる建方区未割り当ての一端支持可能部材(例えば柱部材C7、C8)と所属格子点が全て当該建方区Ei又は先行建方区Ej(j<i)の対応格子点となる建方区未割り当ての部材(例えば部材M2、M4)とを割り当てて建方区図W(図24参照)を作成する直列建方区生成手段41;並びに建方区図Wの各建方区Ei毎に割り当て部材C、Mのクレーンによる建方可能性を判定する建方検討手段60として機能させるものである。
【0016】
前記一端支持可能部材に、柱部材と地組みした柱ユニット部材と片持ち梁部材と地組みした片持ち梁ユニット部材とを含めることができる。好ましくは、躯体図Dを並列に建方する複数の並列建方区At(1≦t≦u、uは並列建方区数)に分ける並列建方区生成手段44を設け、直列建方区生成手段41により各並列建方区At毎にそれぞれ所定建方工法に基づき当該並列建方区At上の全ての格子点(Xr、Yq、Zp)を前記施工順序付き直列建方区Et,i(1≦i≦n、nは並列建方区At毎の直列建方区数)に対応する格子点群に分割し且つ前記初期建方区Et,1及び後続建方区Et,iへの部材C、Mの割り当てを行って建方区図Wを作成する。
【0017】
更に好ましくは、図17に示すように、直列建方区Eiの列(図示例ではE1〜E8)を施工順序が連続した複数の直列建方区Eiの連結により所与周期内で建方できる大きさの周期建方区Pi(1≦i≦m、mは周期建方区数、図示例ではP1〜P4)の列に組み換える周期建方区編成手段42を設け、建方検討手段60により各周期建方区Pi及び直列建方区Ei毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定する。また必要な場合は建方条件に応じて、周期建方区Piの列を施工順序が連続した複数の周期建方区Piの連結によりブロック建方区Bi(1≦i≦h、hはブロック建方区数)の列に組み換えるブロック建方区編成手段43を設け、建方検討手段60により各ブロック建方区Bi、周期建方区Pi及び直列建方区Ei毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定することができる。記憶手段2に複数の所定建方工法を記憶し、直列建方区生成手段41により躯体に適用可能な建方工法を選択し且つ選択した建方工法の各々に基づき建方区図Wを作成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図3の流れ図は、本発明を用いた建築物躯体の建方計画システムの処理概要を示す。同図の建方計画システムは、建築物の躯体モデルDの作成処理(ステップS301)と、建築物の躯体と並列に施工する他の工事や送電線等の障害物の三次元位置を記録した工事関連図F(以下、三次元関連図又は関連モデルFということがある。)の作成処理(ステップS302)と、建方計画案24の自動生成処理(ステップS303)と、建方計画案24の更新処理(ステップS304)とからなる。建方計画案24の自動生成処理は、複数の建方工法・建方方向等に基づき多数の建方計画案24を自動的に作成し、予め用意した判定基準により実施不能な建方計画案24を自動的に排除し、計画検討の際に参考となるべき実施可能な複数の建方計画案24を生成するプログラム群で実現される。また建方計画案24の更新処理は、自動生成された建方計画案24の建方区生成やクレーン配置等の手動操作による変更・修正の容易化を図り、建方計画の実施案25の作成を支援するプログラム群で実現される。同図の建方計画システムにより、建築物躯体に応じた最適な建方計画を支援することが可能である。
【0019】
図1は、図3の建方計画を実現するプログラム群及びデータを内蔵したコンピュータ1の一実施例を示す。図示例のコンピュータ1は、躯体モデルD及び関連モデルFを記憶する記憶手段2と、躯体モデルDの作成手段90と、関連モデルFの作成手段91と、格子点登録手段30とを有する。作成手段90及び91は図3の躯体モデル作成処理(ステップS301)及び関連モデル作成処理(ステップS302)を実現するプログラム群であり、その一例は3次元CAD(Computer−Aided Design)プログラムである。格子点登録手段30は、後述するように、躯体モデルDの部材毎に属性データとして所属格子点を登録するプログラムである。
【0020】
躯体モデルDの基本データ構成の一例を図2(A)に示す。同図の躯体モデルは、通り芯や階層数・階層高さ等の躯体全体に関するCADデータと、躯体を構成する部材毎の形状(円柱や直方体、円弧、折れ線)・寸法・ID等のCADデータとの集合体である。部材毎の属性を示す数値・文字データはCADデータに含めることも可能であるが、図示例ではCADデータから独立させた部材属性ファイルとして管理している。
【0021】
躯体モデルDの部材属性ファイルのデータは、図2(B)に示すように部材特性、算定用、及び算定結果格納用に分けられる。部材特性データは、ユニットIDと部材IDと部材種類及び部材種類グループとを含む。同一のユニットIDを有する複数の部材は1つのユニット部材として取り扱い、ユニットIDを持たない部材は単独部材である。ユニット部材を複数の部材の集合として取り扱うことにより、ユニット内の部材組み替え修正に容易に対応できる。また、例えば複数の大梁と小梁を組み合わせたユニット化部材について、建方区生成では1部材として取り扱い、建方可能性の判定では場合に応じて1部材又はユニット化以前の複数の部材として取り扱うことも可能である。部材種類は、後述する直列建方区生成の際に、一端支持可能部材Cとそれ以外の部材Mとを識別するために利用する。部材種類グループは、後述する直列建方区生成の際に、近傍にあるカーテウォール等の外壁部材と柱・梁等の主要構造部材とを異なる建方区に割り当てる際等に利用する。部材種類は、後述する建方可能性の判定において、判定不要な部材種類を指定する際にも利用できる。
【0022】
部材属性ファイルの算定用データに含まれる所属通り芯及び所属格子点は、建方区分割の際に使用する。本発明では格子点(Xr、Yq、Zp)を、躯体モデルD上の階層Zp毎に想定したX方向及びY方向の水平通り芯Xr、Yqの交点として定義する。格子点は通常、各階(屋上階を含む)の床レベル毎に定義する。躯体モデルDの各部材は、その部材上又は近傍に1つ以上の格子点(Xr、Yq、Zp)を有する。図1の格子点登録手段30は、躯体モデルDの部材毎にその部材上又は近傍の全ての格子点(Xr、Yq)を所属格子点として部材属性ファイルに登録するプログラムである。
【0023】
本発明の特徴の1つは、躯体モデルDの各部材を建方区へ直接的に割り当てるのではなく、当該部材の所属格子点を用いていわば間接的に建方区へ割り当てる点にある。例えば1節3層の柱部材は3つの所属格子点を有する。また梁部材は少なくとも2つの所属格子点を有する。継手部材等も少なくとも1つの所属格子点を有する。格子点登録手段30は、例えば躯体モデルDの作成手段90に組み込み、躯体モデルDの作成時に例えば部材端部の座標値の入力に応じて当該部材の所属格子点を自動的に部材属性ファイルに登録するプログラムとしてもよい。
【0024】
部材属性ファイルの算定用データに含まれる重心位置、重量及び部材高さは、建方可能性の判定の際に使用する。なお部材の重量は、CADデータとして登録された部材の断面積・長さ、別途登録する比重、接合部(パネルソーン)をもつ柱部材では接合部重量付加のための重量割増係数等から、近似値の算出が可能である。また柱部材及び大梁の重量算出方法として、部材の断面と長さと比重とから基となる重量を全ての柱部材及び大梁部材について計算し、重量算出の対象柱部材に所属する格子点と同一の格子点を持つ全ての大梁について平均ブラケット長さ又はX方向、Y方向、XY方向の方向毎のブラケット長さ又は梁毎のブラケット長さに相当する大梁部材の部分重量を算出し、その重量を柱部材に増加すると共に大梁部材から減少し、柱部材及び大梁部材の種類別毎の重量割増係数を乗じて近似値を算出することができる。算定用データに含まれる継手様式IDは、継手部材のみに使用するデータであり、ボルト本数や溶接長を算定する場合に登録する。算定結果格納用データは、建方計画案24毎に作成されるものであり、本発明では図3のステップS303において複数の建方計画案24が作成される際に計画案毎の算定結果格納用データが作られる。
【0025】
関連モデルFの一例を図25に示し、そのデータ構成例を図2(C)に示す。同図の関連モデルFは、他工事モデルS201と障害物モデルS202とに分けられる。他工事モデルS201は、建築物の躯体の建方中に並列に施工される掘削工事やコンクリート工事等の三次元位置を記憶したものである。躯体モデルDの建方工事と他工事モデルS201との相互干渉を検討するため、他工事モデルS201を後述する躯体モデルDの並列建方区At・ブロック建方区Bi・周期建方区Piに相当する並列工区・ブロック工区・周期工区Psに分割して記憶することができる。これらの工区は三次元形状物であるが部材の概念はもたない。障害物モデルS202は、建方する躯体近傍の既設建物や送電線や既設天井ドームのように建方工事前から工事終了まで現場に存在する形状物の三次元位置を記憶する。他工事モデルS201及び障害物モデルS202からなる関連モデルFは、後述する躯体モデルDの部材の建方可能性判定のうち接触判定の際に考慮される。
【0026】
図1の記憶手段2は、躯体モデルDと関連モデルFと共に、建方工法毎の格子点分割パターン28とクレーンデータベース26とを記憶する。格子点分割パターン28は直列建方区Eiの生成の際に用いるものであるが詳細は後述する。クレーンデータベース26は建方可能性の判定に用いるものであり、クレーンの定置式又は移動式の区別、吊り上げ性能を示す性能仕様、メインブームやジブブームの長さ・起伏角度等で定まる姿勢仕様のデータを含む。
【0027】
表1のクレーン形式一覧表は、移動式・定置式の種別、ブームの本数、トラス式・油圧式の種別等によりクレーン形式を定義して2種類に分類したものである。本建方計画システムでは、表1に示すクレーン形式の範囲内にあるクレーン機種の性能仕様(性能呼称、100t等)及び姿勢仕様(メインブームやジブブームの長さ、メインブームやジブブームのオフセット角度のパラメタ)をクレーンデータベース26に記憶することにより、各々のクレーン機種を取り扱う。また、建方可能性判定のための基本算定式として、各クレーン形式毎の算出式ではなく、クレーンの姿勢仕様を定めるパラメタの種類に応じてクレーンを2種類にまとめた前記分類毎の算定式を用いることにより、建方可能性判定のプログラム構成を単純化できる。クレーン形式が異なっても、例えば基本算定式中のジブブーム長の変数値を零にする等の変更により、前記分類の範囲内においては同一の算出式で対処できる。
【0028】
【表1】
【0029】
なお、建方可能性判定のためにはクレーンの形式、仕様に加えてクレーン位置が必要であるが、本発明では躯体モデルDと関連モデルFの平面上に、移動式クレーンの場合は可動域(二次元)又は動線(一次元)を記入し、固定式クレーンの場合は設置域(二次元)を記入しておけば、後述するように建方可能性判定に必要な建方区毎のクレーン位置をプログラムで算出することができる。
【0030】
また図1のコンピュータ1は、建方計画案24の自動生成処理を実現するプログラム群として建方区生成手段40、建方検討手段60、自立安定性検討手段70、及び補強部材追加手段80を有する。自動生成処理の流れ図の詳細を図4に示す。以下、図4の流れ図に従って本発明を説明するが、処理を説明する前に本発明で使用する建方区の種類を説明する。建方区は個々の工事現場の都合に合わせて自由に設定可能であるが、本発明では様々な工事現場に適用できるように建方区を以下の(a)〜(d)の4階層に分けて定義した。
【0031】
(a)直列建方区Ei(最小単位の建方区)
本発明では、1部材毎の施工順序(建方順序)を考慮した建方可能性の判定を可能にするため、及び建方区の形状による建方区生成の束縛をなくすため、施工順序付きの部材集合体として直列建方区Eiを定義した。直列建方区は最小単位の建方区である。実際の建方工事は次の周期建方区Piに相当する1日分の建方単位(日割建方区と呼ぶ場合もある)毎の計画に基づき施工するが、周期建方区Piより小さい単位の直列建方区を利用することにより、例えば躯体に凹凸部分がある場合等、様々な躯体形状に適用できる周期建方区の生成が必要となる。また、後述するように様々な格子点分割パターン28の組み合わせを用いて直列建方区Eiを生成することにより、複雑な形状をもつ周期建方区の生成が可能となる。
【0032】
(b)周期建方区Pi
所与の周期内で建方できる大きさの施工順序付き建方区であり、1以上の直列建方区Eiの集合体である。周期は通常1日単位の大きさとするが、昼夜2交代で建方工事を行う場合は0.5日を周期としてもよく、周期建方区Pi毎に工事期間が異なっていてもよい。本発明では、例えば各直列建方区Eiの大きさを所与周期で建方できる大きさより小さくし、施工順序が連続した複数の直列建方区Eiを連結して周期建方区Piとすることができる。
【0033】
(c)ブロック建方区Bi
1以上の周期建方区Piの集合体からなる施工順序付き建方区である。例えば、図21に示すように移動式クレーンにより建逃げ工法(屏風建て工法)で躯体を建方する場合に、クレーンの位置を変更する建逃げ毎の躯体部分に相当する。とくに構台上から建方をしている場合、建逃げ工法では先行ブロック建方区と当該ブロック建方区の建方の間に当該ブロック建方区域にある構台部分を解体することとなり、ブロック建方区毎にクレーン位置の変更が必要になる。定置式クレーンでクレーン位置の盛替えがない場合及び移動式クレーンで移動しない場合は、次の並列建方区At内に1つのブロック建方区Biのみが所属することとなり、ブロック建方区は実質的には素通りすることになる。本発明では、施工順序が連続した複数の周期建方区Piを連結してブロック建方区Biとすることができる。
【0034】
(d)並列建方区At
複数台のクレーンを用いて建築物躯体を同時に並列して建方する場合に、各クレーンが受け持つ躯体部分である。複数の並列建方区Atの相互間に空間的・時間的な重なりがない場合は、各並列建方区At毎に建方計画案24を作成し、並列建方区At毎の建方計画案24を合成して建築物躯体の建方計画案24とすることができる。但し、並列建方区Atは相互に一部分が空間的・時間的に重畳していてもよい。各並列建方区Atの建方可能性をそれぞれ独立して判定する場合は、建方時に各並列建方区Atの相互間でクレーン操作の干渉が生じないことを確認する必要がある。
【0035】
図4の自動生成処理では、(1)先ず躯体モデルD(図23参照)を複数の並列建方区Atに自動分割し(ステップS401)、(2)並列建方区At毎に適用可能な建方工法・建方方向の組み合わせ案を作成し(ステップS402〜S403)、(3)その組み合わせ案毎に並列建方区Atから直列建方区Ei・周期建方区Pi・ブロック建方区Biを生成して建方区図W(図24参照)を自動生成する(ステップS404〜S405)。(4)次いで建方区図Wの直列建方区Ei、周期建方区Pi、又はブロック建方区Bi毎に躯体の自立安定性を検討して必要な補強部材を自動的に追加し (ステップS406)、(5)建方区を再編成する(ステップS407)。更に(6)各並列建方区Atの周期建方区Pi、直列建方区Eiの建方順序を同期化した上で(ステップS408)、(7)各直列建方区Ei毎にクレーンによる建方可能性を判定して並列建方区At毎の建方計画案24を作成する(ステップS409〜S414)。最後に(8)並列建方区At毎の建方計画案24を合成することにより、躯体全体の建方計画案24を作成する(ステップS415)。以下、各ステップにおける処理を詳細に説明する。
【0036】
(1)躯体モデルの並列建方区への分割
図4のステップS401は、並列建方区生成手段44による躯体モデルDの並列建方区Atへの分割処理を表わす。並列建方区Atへの分割処理の流れ図の一例を図5に示す。図5のステップS501は、建築物の高層部分と低層部分とで躯体形状が相異する場合に、先ず建築物を階層数に基づき並列建方区Atとして分離することを示す。ステップS502で高層部分、低層部分をそれぞれ取り出し、ステップS503〜509において各部分を総部材数に基づき更に並列建方区Atに分割する必要があるか否かを検討する。躯体形状の相異が3層未満、例えば建物屋上によく見られるペントハウス等の場合は、ステップS501〜S502の階層数に基づく並列建方区Atの生成を省略できる。
【0037】
図5のステップS503では、躯体(又は躯体の高層・低層部分)の総部材数に基づき、建築物を並列建方区Atに分割する必要があるか否か、幾つの並列建方区Atに分割するかを算定する。表2は総部材数に基づく並列建方区分割数の一例を示す。例えば、総部材数が1000未満の場合は並列建方区Atへの分割を行わず、ステップS504で分割処理を終了する。総部材数が1000以上の場合はステップS505で並列建方区Atの2分割案を作成し、2500以上の場合はステップS507で更に3分割案を作成し、5000以上の場合はステップS509で更に4分割案を作成する。
【0038】
【表2】
【0039】
図6(A)及び(B)は躯体をX方向及びY方向に2分割する案の一例を示し、同図(C)〜(H)は躯体を3分割する6通りの案を示す。同図(I)は躯体を4分割する案の一例である。躯体を4分割する方法は多数存在するため、最も単純な4分割案のみを自動生成し、他の4分割案は必要に応じて3分割案から更新処理(図3のステップS304)により手作業で作成することが適当である。躯体の高さ方向についても並列建方区に分割することが可能である。なお、図6では並列建方区Atが相互に重ならない分割案を示すが、相互に一部分が重なる並列建方区Atに分割してもよい。
【0040】
(2)並列建方区毎の建方工法・建方方向の適用案の作成
図4のステップS402において分割した並列建方区Atの何れかを選択し、ステップS403において選択した並列建方区Atに適用可能な建方工法、建方方向、及び関連するクレーン形式の組み合わせ案を作成する。並列建方区Atの分割(ステップS401〜S402)を建方工法等の選択(ステップS403〜S404)に先行して行う理由は、並列建方区At毎に異なる建方工法等とする場合があるからである。表3は並列建方区Atの躯体高さに応じた建方工法の選定方法の一例を示し、表4は躯体高さ及び建方工法に応じたクレーン形式の選定方法の一例を示す。表4のクレーン形式の番号は、クレーンデータベース26に登録された表1のクレーン形式番号と対応する。但し、建方工法・クレーン形式の選定方法はこの例に限定されない。建方方向は、建方工法と敷地条件・配置条件・近隣道路条件等とから自動的に選定することが可能である。ステップS404において、並列建方区At毎に適用可能な全ての建方工法・建方方向・クレーン形式を順次選択する。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
(3)並列建方区Atから直列建方区Eiの建方区図Wの生成
建方工法・建方方向等の組み合わせに基づき、ステップS405において建方区生成手段40の直列建方区生成手段41により、並列建方区Atを直列建方区Eiに分割して建方区図Wを自動生成する。図7は直列建方区生成手段41による建方区図Wの生成の流れ図の一例を示し、図16はその流れ図を6階建て躯体(但し、1〜3階部分に対し4〜6階部分が通り芯1本ずつセットバックした躯体)に適用した実施例を示す。先ず、ステップS701で建方工法毎に建方開始点を設定する。例えば、並列建方区Atの端部又は図心に建方開始点を設定する。
【0044】
図7のステップS702において、記憶手段2の建方工法毎の格子点分割パターン28に基づき、並列建方区Atの建方開始点から建方方向に応じて初期建方区E1を設定する。図16は、積層工法において、通り芯数がX方向2行×Y方向4列×階層数が1層の格子点分割パターン28(以下、2×4×1パターンということがある。)により躯体を分割した実施例である。格子点分割パターン28は、少なくとも1つの格子点を含む任意の格子点配置パターンであり、図16の例に限定されないが、複雑な格子点分割パターン28が必要な場合は、直方体形状の格子点分割パターン28の組み合わせとするのがよい。また、建方工法に応じて建方開始部分・中間繰り返し部分・建方終了部分で異なる格子点分割パターン28を適用することができる。なお、通り芯は曲線であってもよく、更に一つの建築物に複数の通り芯系が用いられている場合は、その各々毎に格子点分割パターン28を適用することになる。
【0045】
ステップS703において、設定した初期直列建方区E1に対応する格子点群(以下、建方区対応格子点群ということがある。)を取り出し、ステップS704において部材属性データ(図2(B)参照)により建方区対応格子点群の格子点を所属格子点とする部材を順次取り出す。図16では、所属格子点が初期直列建方区E1の対応格子点群に含まれる部材として、一端支持可能部材(図示例では柱部材)C1、C4と、それ以外の部材M1、M2、M3とが取り出せる。ステップS705において、取り出した部材に登録された他の所属格子点が初期直列建方区E1内にあるか否かを判断し、所属格子点が全て初期直列建方区E1内にある部材(図16では部材M1)を初期直列建方区E1に割り当てる(ステップS706)。初期直列建方区E1への部材の割り当ては、部材の属性データの建方区ID(図2(B)参照)に初期直列建方区E1を登録することにより行う。
【0046】
また、ステップS707において取り出した部材が一端支持可能部材Cであるか否かを判断し、所属格子点が初期直列建方区E1内にある一端支持可能部材(図16では柱部材C1、C4)の建方区IDに初期直列建方区E1を登録する(ステップS708)。更に、ステップS709〜S710で取り出した部材の他の所属格子点が先行建方区に含まれるか否かを判断するが、初期直列建方区E1に先行する建方区は存在しないのでステップS710からステップS712へ進む。即ち、ステップS704で取り出した部材のうち、所属格子点が初期直列建方区E1以外にある部材M2、M3については、建方区IDを未割り当てのままとする。ステップS712で所属格子点が初期直列建方区E1内にある部材を全て取り出したか否かを判断し、残りの部材がある場合はステップS704〜S712を繰り返す。
【0047】
その後、並列建方区At内に建方区未設定部分がある場合はステップS713からステップS702へ戻り、格子点分割パターン28に応じて並列建方区Atの建方区未設定部分に後続建方区E2を設定し、ステップS703〜S704において所属格子点が後続直列建方区E2の建方区対応格子点群に含まれる部材を取り出す。図16では、所属格子点が後続直列建方区E2内にある部材として一端支持可能部材(図示例では柱部材)C7、C8と、それ以外の部材M2、M3、M4とが取り出せる。
【0048】
ステップS705〜S706において、取り出した部材に登録された他の所属格子点が後続直列建方区E2内にあるか否かを判断し、所属格子点が全て後続直列建方区E2内にある部材(図16では部材M4)を後続直列建方区E2を割り当てる。またステップS707〜S708において、取り出した部材が一端支持可能部材Cであるか否かを判断し、所属格子点が後続直列建方区E2内にある一端支持可能部材(図16では柱部材C7、C8)を後続直列建方区E2に割り当てる。更にステップS709〜S711において、取り出した部材の他の所属格子点が先行建方区(この場合は、初期直列建方区E1)に含まれるか否かを判断し、他の所属格子点が先行建方区にある部材(図16では部材M2)を後続直列建方区E2に割り当てる。他の所属格子点が後続直列建方区E2又は先行直列建方区E1以外にある部材M3については、建方区IDを未割り当てのままとする。
【0049】
並列建方区At内に建方区未設定部分がある場合は再びステップS713からステップS702へ戻り、建方区未設定部分に新たな後続直列建方区Eiを設定してステップS702〜S714を繰り返し、ステップS707〜S708において所属格子点が当該後続直列建方区Ei内にある建方区未割り当ての一端支持可能部材Cを当該後続直列建方区Eiに割り当て、ステップS704〜S706及びステップS709〜S711において所属格子点が全て当該後続直列建方区Ei又は先行直列建方区区Ej(j<i)内にある建方区未割り当ての部材Mを当該後続直列建方区Eiに割り当てる。例えば図16の直列建方区E5では、所属格子点が直列建方区E5内にある一端支持可能部材C2、C4が取り出せるが、柱部材C4は既に初期直列建方区E1へ割り当て済みであるため、ステップS707〜S708で建方区未割り当ての柱部材C2のみを直列建方区E5に割り当てる。なお、一端支持可能部材Cは柱部材に限定されず、例えば片持ち梁部材、地組みした柱ユニット部材、地組みした片持ち梁ユニット部材等を含めることができる。
【0050】
すなわち、図7の流れ図によれば、所定建方工法に基づき並列建方区Atを施工順序付き直列建方区Eiに分割すると共に、一端支持可能部材Cを施工順所が早い直列建方区Eiに割り当て、それ以外の部材Mを施工順所が遅い直列建方区Eiに割り当てることができる。また、格子点分割パターン28に基づき直列建方区Eiを設定するので、図16のように1〜3階部分と4〜6階部分とで境界線が異なる直列建方区E1〜E12、E13〜E21を設定することができる。この直列建方区Eiの設定と部材C、Mの割り当てとにより、実用的な建方区図Wを作成できる。
【0051】
ただし図7の流れ図では、例えば柱・梁等の主要構造部材と外壁部材等の主要構造部材ではない部材とが同一の領域に存在する場合に、主要構造部材と外壁部材とを別々の直列建方区Eiとした建方区図Wを作成することが難しい。主要構造部材と外壁部材等とは建方時期が異なるため、同一の領域にあっても直列建方区Eiを分けることが適切である。このように建方時期が異なる部材が同一領域にある場合の建方区図Wの生成の流れ図の一例を図8に示す。
【0052】
図8の流れ図では、同一の領域にあっても直列建方区Eiを分けるべき建方部材をそれぞれ異なる部材種類グループg(1≦g≦o、oは部材種類グループ数。図2(B)参照)に分類した上で、建方区図Wを生成する。例えば主要構造部材をグループg1とし、外壁部材をグループg2として分類する。ステップS801において特定の部材種類グループg、例えば主要構造部材グループg1を指定し、ステップS802〜S814において格子点分割パターン28に応じて並列建方区Atに直列建方区Eg1,i(例えばEg1,1〜Eg1,21)を設定して部材種類グループg1の部材のみを割り当てることにより、主要構造部材グループg1の部材をグループ内施工順序付きの直列建方区Eg1,i(例えばEg1,1〜Eg1,21)に分割する。この場合のステップS802〜S814における処理は、部材種類グループg1の部材のみを取り出す点を除き、図7及び図16を参照して上述した処理と同様である。
【0053】
図8のステップS815において、他の部材種類グループgがある場合はステップS801へ戻り、他の部材種類グループg、例えば外壁部材グループg2を指定する。図19は、図16と同一の躯体の外周部分にある外壁部材グループg2の建方部材を直列建方区Eg2,iに分割する実施例を示す。図19では、1〜3階部分に4×4×3パターンの格子点分割パターン28を適用し、4〜6階部分を4×3×3パターンの格子点分割パターン28で適用している。ステップS802〜S814において、この分割パターンに基づき並列建方区Atに直列建方区Eg2,i(例えばEg2,1〜Eg2,4)を設定すると共に部材種類グループg2の部材を割り当てることにより、外壁部材グループg2の部材をグループ内施工順序付きの直列建方区Eg2,i(例えばEg2,1〜Eg2,4)に分割することができる。
【0054】
図8のように部材種類グループg別に直列建方区Eg,iを設定した場合は、ステップS816において、建方区生成手段40の直列建方区編成手段46により、部材種類グループg別の直列建方区Eg,iの複数列をグループ内施工順序を維持しつつ統合して、単独の統合施工順序付き直列建方区Eiの列に編成する。直列建方区編成手段46による編成方法の一例を図20に示す。同図では、部材種類グループg1の直列建方区Eg1,1〜Eg1,8の列と部材種類グループg2の直列建方区Eg2,1〜Eg2,4の列とを適当な統合規則に基づき統合し、単独の直列建方区E1〜E12の列に編成している。例えば図16の主要構造部材グループg1の直列建方区Eg1,1〜Eg1,21の列と、図19の外壁部材グループg2の直列建方区Eg2,1〜Eg2,4の列とを統合する場合は、同一領域において外壁部材の建方区が主要構造部材の建方区より施工順序が後となるような適当な統合規則を用いることにより、単独の直列建方区E1〜E25に統合することができる。
【0055】
図8の流れ図によれば、建方時期が異なる部材が同一の領域に存在する場合でも、各部材をそれぞれ別々の直列建方区Eiとした上で建方時期に応じて統合できるので、実用的な建方区図Wを作成できる。なお、部材種類グループgを利用した図8の流れ図は、建方時期が異なる部材を別々の直列建方区Eiに分ける場合だけでなく、同一の領域である部材を直列建方区Eiを分ける必要がある場合に広く適用可能である。
【0056】
並列建方区Atを直列建方区Eiの列に分割して建方区図Wを生成したのち、建方区生成手段40の周期建方区編成手段42により、建方区図Wの施工順序が連続した複数の直列建方区Eiを連結することにより、直列建方区Eiの列を所与周期内で建方できる大きさの施工順序付き周期建方区Pi(1≦i≦m、mは周期建方区数)の列に組み換える。周期建方区Piの大きさは工事現場に応じて任意に設定可能であるが、通常は1日で建方できる40〜50ピース程度とする。図17は、2×2×1パターンで分割された8つの直列建方区E1〜E8の列を、Y方向に2区ずつ連結して、4つの周期建方区P1〜P4の列に組み換えた実施例を示す。
【0057】
直列建方区Eiの列を周期建方区Piに組み換え編成する利点の1つは、部材の種類別の揚重時間を例えば実測により定めて記憶しておけば、建方検討手段60により周期建方区Pi毎の割り当て部材数とその揚重時間(例えば1日毎の建方ピース数と揚重時間)とを算出できることにある。また、各周期建方区Pi及び直列建方区Ei毎に割り当て部材の建方可能性を判定することができる。必要に応じて、建方区生成手段40のブロック建方区編成手段43により、周期建方区Piの列を更に施工順序が連続した複数の周期建方区Piの連結によりブロック建方区Bi(1≦i≦h、hはブロック建方区数)の列に組み換え編成し、各ブロック建方区Bi、周期建方区Pi及び直列建方区Ei毎に割り当て部材の建方可能性を判定することも可能である。
【0058】
(4)各建方区毎の自立安定性の検討
並列建方区At毎に建方区図Wを作成したのち、図4のステップS406において、自立安定性検討手段70により、直列建方区Ei、周期建方区Pi又はブロック建方区Biの建方毎に躯体の自立安定性を検討する。例えば図16において、4階部分の直列建方区E13〜E15の建方に先立ち、下層1〜3階部分の直列建方区E1〜E12の強度を計算し、強風や地震等で倒壊しない構造強度をもっているか否か、下層部分E1〜E12に仮設ブレース材等の補強部材の取り付けが必要であるか否かを検討する。仮設ブレース材等の補強部材については、別途の通り芯体系で仮設部材のみで構成されるブロック建方区Bi以下の設定や仮設部材の撤去(転用による撤去を含む)時の建方可能性の判定も可能である。仮設部材が土止め用の部材であれば、外力として土圧をとれば、それらの部材の強度計算が自立安定性の検討方法により可能である。
【0059】
図9は自立安定性の検討方法の流れ図の一例を示す。ステップS901において並列建方区Atの建方区図Wから施工昇順に自立安定性検討対象の建方区部分(例えば図16のE1〜E12の部分)を取り出し、ステップS902で必要なデータ変換を施した後、ステップS903でコンピュータ1の自立安定性検討手段70へ入力する。自立安定性検討手段70は、入力された建方区部分の躯体構造に基づき、外力を仮定して構造強度を計算し、補強・仮支持の必要性を判定し、必要な補強部材の位置・断面形状等を算出する。また図示例の自立安定性検討手段70は、補強部材の設置後及び撤去後の強度計算を併せて行う。自立安定性検討手段70の一例は、入力された躯体・仮設物の構造に基づき構造強度計算と必要な補強部材の位置・形状を算出するプログラムである。
【0060】
図9のステップS904において自立安定性検討手段70の出力を判断し、補強部材が必要であり且つ補強部材の新規取り付け・転用(撤去及び取り付け)・撤去にクレーンが必要な場合は、当該補強部材を躯体モデルDに記入する(ステップS905〜S906)。更に、ステップS907において、コンピュータ1の格子点登録手段30により、補強部材上又は近傍の全ての格子点(Xr、Yq、Zp)を当該補強部材の所属格子点として部材属性ファイルに登録する。
【0061】
図9のステップS908は、コンピュータ1の補強部材追加手段80により、補強部材を並列建方区Atの直列建方区Eiへ追加する処理を示す。また図18(A)は、図16のように2×2×1パターンで分割された直列建方区E1〜E8に対し、補強部材追加手段80により補強部材M10、M11、M12を追加した実施例を示す。補強部材追加手段80は、補強部材(例えばM10、M11)の所属格子点が含まれる直列建方区Ej(例えばE3)に当該補強部材M10、M11を追加するか、又は補強部材(例えばM12)の所属格子点が含まれる直列建方区Ej(例えばE4)の前又は後に施工順を前後させて当該補強部材M12のみからなる直列建方Ek(k=j±1、例えばE5)を追加挿入する。直列建方区E5を追加挿入する場合は、図18(A)に示すように、挿入前の直列建方区E5〜E8の施工順序を1つ繰り上げて直列建方区E6〜E9とする。このような施工順序の繰り上げは、各直列建方区E5〜E8に割り当てた部材毎の建方区ID(図2(B)参照)を付け替えることにより行う。
【0062】
従来の建方計画システムにおける自立安定性検討では、図22(B)に示すように必要な補強部材を躯体モデルDに追加した後、再び建方区図Wを作成し直す必要があった。また、建方区図Wを作成し直した場合であっても、従来システムでは数日間で建方をする躯体部分に対し纏めて補強部材を設置する必要があるか否かを検討できなかった。これに対し本発明では、設置位置に束縛されない部材の集合として建方区を定義しているので、補強部材の建方区が既存の建方区と同一領域域であっても図22(A)のステップS2203に示すように補強部材追加手段80で建方区図Wを修正すれば足り、建方区図Wを作成し直す必要はない。また、数日間で建方をする躯体部分(例えばブロック建方区Bi)に対して補強部材を設置する必要があるか否かを検討することができるので、建方区図Wの実際的な自立安定性の検討が容易に可能である。
【0063】
(5)建方区の再編成
必要な補強部材を建方区図Wに追加した後、図4のステップS407において周期建方区編成手段42により、建方区図Wの直列建方区Eiの列を施工順序が連続した複数の直列建方区Eiの連結により周期建方区Piの列に組み換えて再編成する。図18(B)は、補強部材M10〜12を追加した後の9つの直列建方区E1〜E9を、部材数に応じて5つの周期建方区P1〜P5に編成した実施例を示す。またステップ407において必要に応じて、ブロック建方区編成手段43により、周期建方区Piの列を更にブロック建方区Biの列に組み換えて再編成してもよい。
【0064】
(6)並列建方区の建方順序の同期化
建方区図Wの周期建方区Piを編成したのち、図4のステップS408において、建方区生成手段40の並列建方区同期化手段45により、並列建方区Atの相互間の周期建方区Pi及び直列建方区Eiの施工順序(建方順序)を同期させる。また必要に応じて、並列建方区Atの周期建方区Piと関連モデルFの周期工区Psとを同期させる。同期化する条件は、各並列建方区Atにおいて、周期建方区Piの周期が同一であること、及び同期をとる連続した周期建方区Piの数が一致していることである。同期化する周期建方区Piの部分は予め指定することができる。
【0065】
図10(A)は、並列建方区同期化手段45による並列建方区Atの相互間の建方順序の同期化方法の流れ図を示す。ステップS1001において建方順序を同期化する2つの並列建方区At(例えば並列建方区A1とA2)を取り出す。ステップS1002でそれぞれ並列建方区Atに所属している周期建方区Piのうち同期化が必要な連続した周期建方区Piの群を指定し、ステップS1003において2つの並列建方区Atの各々において同期化する周期建方区Piの対を指定する。指定がない場合は、省略値(デフォルト)として、各並列建方区Atに所属する先頭の施工順序の周期建方区Pi同士のみを同期化する。各並列建方区Atの周期建方区Piの列は、建方経過日数又は暦日の順序で並べられており、例えば同期化する各並列建方区Atの周期建方区Piの経過日数又は暦日を合わせる。図10(B)は同期化する周期建方区Piの対の指定方法の一例を示し、この例では並列建方区A1の周期建方区P1、P6、P7と並列建方区A2の周期建方区P1、P4、P6との施工順序(経過日数又は暦日)を一致させることにより同期させている。
【0066】
更に図10(A)のステップS1004において、同期化した周期建方区Pi内の直列建方区Eiの相互間を、前ステップS1003と同様の手法により同期化させる。この場合も省略値(デフォルト)として、各周期建方区Piに所属する先頭の施工順序の直列建方区Ei同士のみを同期化することができる。ステップS1005において更に同期化する並列建方区Atがあるか否かを判断し、未同期の並列建方区Atがある場合はステップS1001へ戻り、同期化が必要な全ての並列建方区Atの周期建方区Pi及び直列建方区Eiの建方順序を同期する。
【0067】
周期建方区Piと関連モデルFの周期工区Psとを同期化する場合は、図10(A)の流れ図と同様にして、関連モデルF上の必要な周期工区Psと周期建方区Piとを対応付けて施工順序を一致させることにより同期させる。ただし、関連モデルFには直列建方区Eiに相当する工区がないため、実質的には周期建方区Pi中の先頭の施工順序の直列建方区Eiと関連モデルFの周期工区Psとを同期化することになる。
【0068】
並列建方区Atの相互間の同期化及び並列建方区Atと関連モデルFとの同期化により、複数のクレーンによって同一時期・同一領域の建方を行う際の建方可能性の実際的な検討、及び他の工事の影響があるときの建方可能性の実際的な検討が可能となる。例えば、躯体全体をカバーできる2台のクレーンを用い、1台目で柱部材・大梁部材の建方を行い、2台目で小梁部材・鉄骨階段の建方を行う場合に、並列建方区Atの周期建方区Pi及び直列建方区Eiを他の並列建方区Atの建方区Pi、Eiと同期化させることにより、後述する建方可能性の検討において各並列建方区Atの建方時のクレーン干渉の有無等を判定することが可能となる。
【0069】
従来のシステムでは、複数の並列建方区Atで同一時期に同一領域で建方工事が行われる際の建方可能性の検討が困難であった。その理由は、従来システムでは施工単位として従来からの工区概念を用いており、施工単位間の空間的な重なりへの配慮及び施工単位の大きさへの自由度の配慮が欠けているためである。これに対し本発明は、部材の集合体としての直列建方区Eiを最小の施工単位として用いるので、施工単位間の空間的な重なりは問題とならず、また1施工単位の大きさとしては1部材から取り扱える。
【0070】
(7)各直列建方区Eiの建方可能性の判定
並列建方区相互間の建方順序を同期したのち、図4のステップS410において、各直列建方区Eiのクレーンによる建方可能性を判定する。なお、図4ではステップS409においてクレーンの形式・仕様・位置を設定している。クレーンの仕様は、クレーンの揚重荷重に直接関係する性能仕様とクレーンのブーム長・オフセット角度等に関係する姿勢仕様とからなる。ただし、後述するようにクレーンの位置をプログラムで自動的に算出でき、クレーンの仕様をプログラムで自動的に選定することができるので、ステップS409における仕様と位置の設定は必須のものではない。
【0071】
建方可能性の主な判定項目は、図13に示すように、揚重に関する作業距離判定・定格総荷重判定と干渉に関する吊り高さ判定・接触判定である。作業距離判定は、判定対象部材がクレーンの最小及び最大作業半径内にあるか否かの判定である。定格総荷重判定は、対象部材がその位置で揚重できるか否か、すなわちクレーンの定格総荷重の範囲内にあるか否かの判定である。吊り高さ判定は対象部材が建方済み躯体(既設躯体)等と接触せずに建方できる程度まで吊り上げられる高さを判定するものであり、接触判定はクレーンのフロントアタッチメントが既設躯体等へ接触するか否かを判定するものである。ステップS410の建方可能性判定では、ステップS403〜S404で選択したクレーン形式とステップS406〜S408で作成した並列建方区At毎の建方区図Wとに基づき、各直列建方区Eiの部材毎に前記4項目をそれぞれ判定する。クレーンの形式・仕様・位置が設定されていれば、部材毎に判定結果を示す。また、クレーンの仕様と位置が設定されていなければ、その設定案と確認用の判定結果を出力する。
【0072】
図11は、建方検討手段60による直列建方区Ei毎の建方可能性の判定方法の流れ図を示す。ステップS1101で、並列建方区At毎の建方区図Wから施工昇順又は指定した建方可能性検討対象の直列建方区Eiを取り出し、ステップS1102においてクレーン位置の設定があるか否かを判断する。クレーン位置の設定がない場合はステップS1103において、躯体モデルDの平面上に記入された定置式クレーンの設置域又は移動式クレーンの可動域・動線からクレーン位置を自動算出する(図12参照)。また、ステップS1104においてクレーン姿勢仕様の設定があるか否かを判断し、設定がない場合はステップS1105において、必須設定項目であるクレーン形式と性能仕様とからクレーンデータベース26に基づいて姿勢仕様の最大値又は最小値を自動選定する。ステップS1106において、クレーンの形式・仕様・位置に基づき、各直列建方区Eiの部材毎に前述した4項目の建方可能性を判定する。各建方区Eiの全部材の判定が合格した場合はステップS1107からステップS1113へ進み、判定結果と共に合格したクレーン位置・クレーン形式・クレーン仕様を建方区図Wに記録する。
【0073】
図12は、移動式クレーンにより建逃げ工法(屏風建て工法)で躯体を建方する場合(図21参照)における、移動式クレーンの位置の算出方法の流れ図の一例を示す。先ずステップS1201において、各直列建方区Ei毎の建方可能性を検討する際に、躯体モデルD上に記入したクレーンの可動域又は動線から、当該直列建方区Eiが属するブロック建方区Biと先行ブロック建方区Bj(j<i)と関連モデルFの障害物の平面への投影領域との重畳部分を除外することにより、実効可動域又は実効動線を求める。次にステップS1202において、実効可動域又は動線の内側で、検討対象の直列建方区Eiの平面投影の図心との距離が最短距離となる位置を初期クレーン位置として算出する。ステップS1303(図11のステップS1106に対応する)において、算出した初期クレーン位置に基づき、各直列建方区Eiの部材毎の建方可能性を判定する。
【0074】
ステップ1201〜1202では、クレーンが建方できる旋回中心からの最小距離(以下、最小作業半径という。)、及びクレーンの車体と既設躯体とが干渉する距離(例えば下部走行体体やアウトリガの占有半径。以下、危険半径という。)を考慮して、クレーン位置を算出することが望ましい。例えば、前記ブロック建方区Bi、Bjの投影領域を最小作業半径又は危険半径の大きい半径だけ拡張し、その拡径領域を可動域又は動線から除外して実効可動域又は実効動線とする。こうすれば、実効可動域・動線内のクレーン位置と検討対象の直列建方区Ei内の全部材との間に必ずクレーンの最小作業半径以上の距離が確保でき、クレーン位置と既設躯体との間に必ずクレーンの危険半径以上の距離が確保できる。なお、油圧式トラッククレーンの場合はブームの伸縮度合により最小作業半径が異なる。また、クローラクレーンでは旋回中心とカウンター重り端部の間の距離により危険半径が定まり、トラッククレーンでは旋回中心と旋回部分端部の間の距離により危険半径が定まる。
【0075】
図11のステップS1107〜S1112は、建方可能性判定で建方不能部材がある場合の処理を示す。ステップS1106において何れかの判定で建方不能部材があるときは、ステップS1108〜S1109においてクレーン位置を建方不能部材に近づけて又は遠ざけて再判定することができる。ステップS1108〜S1109の再判定方法の一例を図12のステップS1205〜1211に示す。ステップS1205〜S1206では、建方不能部材の重心との距離が最短距離となる実効可動域又は実効動線内の位置を更新クレーン位置として算出し、その更新クレーン位置に基づき建方不能部材が含まれる検討対象の直列建方区Ei内の全部材の建方可能性を再判定する。この再判定により、既設躯体とクレーンとが遠過ぎることに起因する判定不合格を回避することができる。また、他の判定は合格であるが接触判定のみ不合格となる部材がある場合は、ステップS1207〜S1211において、ステップS1205のクレーン位置と不合格部材との間を結ぶ実効可能域又は実効動線内の直線上でクレーン位置を不合格部材から所定距離(例えば1m)だけ遠ざけ、遠ざけたクレーン位置で建方可能性の再判定を行う。更に接触判定が不合格である場合は、クレーン位置を不合格部材から所定距離ずつ遠ざけながらステップS1207〜S1211の再判定を繰り返すことにより、既設躯体・障害物とクレーンとが近過ぎることに起因する接触判定の不合格を回避し、検討対象の直列建方区Ei内の全部材の建方を可能とするクレーン位置を求めることができる。
【0076】
図11のステップS1108〜S1109の再判定でも、検討対象の直列建方区Ei内に建方不能部材が1部材でもあるときは、ステップS1110においてクレーンの姿勢仕様が変更可能であるクレーン形式かどうかを判別する。原則としてブームの伸縮や起伏角度を調節できるクレーン形式は姿勢仕様の変更が可能であり、ステップS1111〜S1112において建方不能部材の建方可能性を変更したクレーン姿勢仕様に基づき再判定することができる。表1のクレーンデータベース26に示したように、クレーン形式に応じてブーム長さや起伏角度等を調節することによりクレーン姿勢仕様を変更できる。ステップS1111は、ブーム長さや起伏角度等を変更しながら各直列建方区Eiの全部材の判定が合格するクレーン姿勢仕様を選定する処理であり、このときステップS1106(図12のステップS1201〜S1202)と同様にしてクレーン位置を算出する。なおクレーン位置の算出で注意を要する点は、クレーンの姿勢仕様の変更に伴いクレーンの最小作業半径が変化するため、ステップS1106とステップS1111とではクレーンの実効可動域又は実効動線が相違し得ることである。クレーンの姿勢仕様を変更してもステップS1111において建方不能部材が残る場合は、建方区図Wの各直列建方区Ei毎に不合格判定項目を記録する。変更の結果、合格した場合は、建方区図Wの各直列建方区Ei毎に「クレーン位置を近づければ合格」・「起伏角度を浅くすれば合格」等の判定結果を記録する。
【0077】
従来システムでは、クレーン形式に拘わらず姿勢仕様の変更を可能にしていたため、クローラ式のクレーンのようにラティス式のブームをもつクレーンでは姿勢仕様の変更毎にブームの解体・再組立てが必要となり、現実的な建方検討ができなかった。本発明では、クレーン形式によって姿勢仕様の変更を可能とするか否かの判別を行うため、クレーンの実際の使用状況と合致した建方可能性の判定ができる。また従来システムでは、建方不能部材毎にクレーンの姿勢仕様の変更を行っていたため施工効率を著しく損ね現実的ではなかったが、本発明では直列建方区を単位として姿勢仕様の変更を行うので実用上の問題はない。更に、従来システムではクレーン姿勢仕様の変更による実効可動域又は実効動線の変更が考慮されておらず、建方可能性の判定精度が悪くなる場合があるのに対し、本発明ではそのような欠点がない。
【0078】
(8)並列建方区At毎の建方計画案の合成
各直列建方区Eiの建方可能性を判定したのち、図4のステップS411で建方区図Wが建方可能であるか否かを判断し、ステップS412で建方可能な並列建方区At毎の建方区図Wを建方計画案24として記憶する。建方工法・建方方向等の他の組み合わせ案がある場合はステップS413からステップS404へ戻り、上述したステップS404〜S410を繰り返す。更に、他の並列建方区Atがある場合はステップS414からステップS402へ戻り、全ての並列建方区Atについて上述したステップS402〜S410を繰り返す。ステップS415において、各並列建方区At毎の建方計画案24を合成することにより、建築物の躯体全体の建方計画案24を作成する。図4の流れ図によれば、複数の建方工法・建方方向等に基づき計画検討の際に参考となるべき実用的・現実的な多数の建方計画案24を自動的に作成することができる。
【0079】
こうして本発明の目的である「建築物の三次元躯体図に基づき建方計画案を自動的に作成できる建方計画方法及びプログラム」の提供が達成できる。
【0080】
【実施例】
以上、建築物躯体の建方計画案24の自動作成処理について説明したが、実際の建方計画では、工事に関わる様々な条件のため、建方計画案24の自動作成に加えて、作成済み又は作成途中の建方計画案23における建方区Ei、Pi、Biの合併(融合)、分割、細分化、施工順序の変更、割り当て部材の変更等の付加的な更新が必要となる場合がある。本発明においては、例えば図7のステップS702において建方区対応格子点をコンピュータ1との対話形式で指定することにより、直列建方区Eiを手動又は半自動で設定し、建方計画案24を手動又は半自動で作成することが可能である。また、建方部材の所属格子点を用いて建方区Ei毎に部材を割り当てる本発明は、直列建方区Eiの自動生成が可能であるだけでなく、直列建方区Ei毎の割り当て部材の手動操作による設定・変更・修正についても容易化が図れる。
【0081】
図1のコンピュータ1は、図3の建方計画案24の更新処理(ステップS304)を実現するプログラム群として建方区更新手段50、建方検討手段60、自立安定性検討手段70及び補強部材追加手段80を有する。建方検討手段60、自立安定性検討手段70及び補強部材追加手段80は、自動生成処理(ステップS303)と共通のプログラムモジュールを使用することができる。また、建方区更新手段50も自動生成処理と共通の建方区生成手段41、周期建方区編成手段42、ブロック建方区編成手段43、並列建方区生成手段44、並列建方区同期化手段45、及び直列建方区編成手段46を使用することができる。従って、本発明によれば、従来は操作方法が不統一であった直列建方区Eiの設定の操作方法と変更の操作方法とを統一し、ユーザインターフェースの改善を図ることができる。
【0082】
建方計画案24の更新処理の流れ図の詳細を図14に示す。同図のステップS1401において例えば自動生成した建方計画案24を読み込み、ステップS1402において建方計画案24内の何れかの並列建方区Atを選択する。ステップS1403において、選択した並列建方区Atの建方計画案24をコンピュータ1のディスプレイ等の表示手段4に表示し、ディスプレイを参照しながら対話形式で直列建方区Eiの建方区図Wを更新する。
【0083】
図1の建方区更新手段50による建方区図Wの更新処理の流れ図の一例を図15に示す。ステップS1501において、例えば並列建方区At内で直列建方区Eiの建方順序を変更することができる。この場合は、図9のステップS908で説明した補強用部材追加の場合と同様に、直列建方区Eiに割り当てた一端支持可能部材毎の建方区IDを付け替え、一端支持可能部材以外の部材ではその所属格子点が複数の直列建方区の対応格子点に跨っているときは最後の施工順序の直列建方区の建方区IDを割り当てる。またステップS1501において、直列建方区Eiに部材を追加し又は直列建方Eiから部材を削除することができる。この場合は、追加する部材の所属格子点を指定することにより、その所属格子点を含む直列建方Eiへ部材を追加する。更にステップS1501において、直列建方区Eiを追加し又は削除することができる。直列建方区Eiを追加する場合は、例えば直前の先行直列建方区Ei−1を指定した上で新たな直列建方区Eiを追加することにより、挿入する建方区以降の直列建方区Eiの施工順序を1つずつ繰り上げる。
【0084】
図15のステップS1501において、直列建方区Eiを融合・分割することや、直列建方区Ei毎の部材割り当てを変更することも可能である。直列建方区Eiを融合するときは、図4のステップS407で説明した周期建方区Piへの再編成の場合と同様に、施工順序が連続した複数の直列建方区Eiを連結すればよい。また、直列建方区Eiを分割するときは、当該直列建方区Eiの対応格子点群のうち分割すべき対応格子点を指定し、当該直列建方区Eiの前又は後に当該指定格子点に対応する新たな直列建方区Ek(k=i±1)を追加挿入し、所属格子点が当該指定格子点となる当該建方区Ei内の一端支持可能部材と所属格子点が全て当該指定格子点又は先行建方区Ej(j<k)の対応格子点となる当該建方区Ei内の部材とを新たな直列建方区Ekに割り当てる。図1の建方区更新手段50は、このような直列建方区Eiの融合・分割機能を含む。直列建方区Ei毎の部材割り当ての変更は、直列建方区Eiの融合と再分割との組み合わせにより対応することができる。また、この直列建方区Eiの融合・分割手法は、手動で設定した建方区Ei、Pi、Biを細かい建方区Ei、Pi、Biに分割する場合にも適用できる。
【0085】
ステップS1502で直列建方区Eiの修正を確定したのち、ステップS1503で直列建方区Eiを複写するか否かを判断する。従来のシステムでは、直列建方区Eiの設定に際して当該建方区Eiに所属する部材を1つずつ指定する必要があった(図32参照)。これに対し本発明では、直列建方区区Eiの対応格子点群により当該建方区Eiに所属する全部材を指定できる。例えば格子点の配置パターン(格子点分割パターン28)が同一であれば、設定済みの直列建方区Eiの建方区対応格子点群の格子点分割パターン28を並列建方区At内の建方区未設定部分に複写することにより、新たな直列建方区Ei+1を設定することが可能である。複写元及び複写先の大きさや範囲について特に制限はないので、例えば複数の直列建方区Eiを纏めて複写することも可能である。図15では、ステップS1504において複写元の建方区数・複写方向を入力し、ステップS1505において複写先の直列建方区Ei+1を確定する。
【0086】
また、ステップS1506で周期建方区Piの最後の直列建方区Eiであるか否かを判断し、最後の直列建方区Eiである場合はステップS1507〜S1509において周期建方区Pi単位で複写することができる。更に、ステップS1510でブロック建方区Biの最後の周期建方区Piであるか否かを判断し、最後の周期建方区Piである場合はステップS1511〜S1513においてブロック建方区Bi単位で複写することができる。ステップS1514で並列建方区Atの建方区図Wの修正を終了するか否かを判断し、更に修正する場合はステップS1501へ戻り、上述したステップS1501〜S1513を繰り返す。図15の流れ図によれば、直列建方区Ei・周期建方区Pi・ブロック建方区Biを複写することができるので、従来のシステムに比し建方区図Wの変更・修正操作を極めて容易化できる。
【0087】
建方区図Wを更新したのち図14のステップS1404へ戻り、並列建方区Atの相互間の建方順序の同期化すると共に並列建方区Atと関連モデルFとの建方順序の同期化し、ステップS1405において建方区毎の自立安定性を検討する。ステップS1406〜S1407において各直列建方区Ei毎に建方可能性を判定して並列建方区At毎の建方計画案24を更新する。ステップS1404、S1405、及びS1406〜S1407の処理は、上述した図4におけるステップS408、S406、及びS4098〜S410の処理と同様である。ステップS1409において記憶した並列建方区At毎の建方区図WをステップS1411で合成することにより、建築物の躯体全体の建方計画案24を更新することができる。
【0088】
なお、部材を現場敷地内で所定の建物設置場所以外で地組してから平行又は垂直又は平行・垂直に移動させて所定の位置に据える工法(スライド工法、リフトアップ工法)に本方法を適用する場合は、地組・移動させる躯体部分をブロック建方区Biとする。それにより、その地組部分の建方計画に本方法を適用でき、また各地組部分の地組・移動のタイミング・移動量及び建物全体の三次元躯体図により本方法を建物全体に適用できる。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の建築物の建方計画方法及びプログラムは、建築物躯体の部材毎の種別及び位置を記入した三次元躯体図上の階層毎にX方向及びY方向の水平通り芯が交わる格子点(Xr、Yq、Zp)を想定し、部材毎に当該部材上又は近傍の全ての格子点を所属格子点として定め、所定建方工法に基づき躯体図を施工順序付き直列建方区Ei(1≦i≦n、nは建方区数)に対応する格子点群に分割し、各直列建方区Eiの対応格子点と各部材の所属格子点とに基づき三次元躯体図の部材を各直列建方区Eiに割り当て、直列建方区Ei毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定するので、次の顕著な効果を奏する。
【0090】
(イ)建築物躯体の実施可能な複数の建方区図をコンピュータで自動生成することができる。
(ロ)自動生成した実施可能な多数の建方計画案を参照しながら、最適のものを工事現場に応じて修正することにより、現場毎に最適の建方計画を支援することができる。
(ハ)建方区図を自立安定性検討プログラムに入力して必要な補強部材の位置・形状を計算することができ、自立安定性検討に際し計算モデルを別途作成する手間が省ける。
(ニ)建方区図を修正する際に、設定済みの建方区対応格子点群を建方区未設定部分へ複写することができ、建方区図の修正の容易化が図れる。
【0091】
(ホ)躯体図上にクレーンの設置域又は可動域又は動線を記入しておけば、建方区案の建方可能性の検討に際し、クレーン位置を自動的に算出することができる。
(ヘ)躯体図上に各部材の重量を記入しておけば、建方区案の建方可能性の検討に際し、クレーン仕様を自動的に選定することが可能である。
(ト)クレーンの位置及び姿勢仕様を変更しながら建方区案の建方可能性検討を繰り返すことにより、建方区案の全部材を建方合格とするクレーン位置及び姿勢仕様を選定することが可能である。
(チ)従って、クレーンの位置・姿勢仕様の設定がない場合に、その設定案を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明のプログラムを内蔵したコンピュータ・システムの一例の説明図である。
【図2】は、三次元躯体図及び建方区図のデータ構造の一例の説明図である。
【図3】は、本発明を用いた建築物躯体の建方計画方法の流れ図の一例である。
【図4】は、本発明による建方計画案生成方法の流れ図の一例である。
【図5】は、三次元躯体図の並列建方区への分割方法の流れ図の一例である。
【図6】は、並列建方区への分割方法の説明図である。
【図7】は、直列建方区の建方区図の作成方法の流れ図の一例である。
【図8】は、部材種類グループ別の建方区図の作成方法の流れ図の一例である。
【図9】は、建方区毎の自立安定性検討方法の流れ図の一例である。
【図10】は、並列建方区相互間の建方順序同期化方法の流れ図の一例である。
【図11】は、直列建方区毎の建方検討方法の流れ図の一例である。
【図12】は、移動式クレーンの建方位置算出方法の流れ図の一例である。
【図13】は、主な建方可能性の判定項目の説明図である。
【図14】は、本発明による建方計画案更新方法の流れ図の一例である。
【図15】は、直列建方区の建方区図の更新方法の流れ図の一例である。
【図16】は、本発明による建方区図の作成方法の説明図である。
【図17】は、周期建方区の編成方法の説明図である。
【図18】は、建方区毎の自立安定性検討方法の説明図である。
【図19】は、部材種類グループ別の建方区図の作成方法の説明図である。
【図20】は、部材種類グループ別の建方区図の統合方法の説明図である。
【図21】は、ブロック建方区の説明図である。
【図22】は、本発明による自立安定性検討方法と従来の自立安定性検討方法との相異を表わす説明図である。
【図23】は、三次元躯体図(躯体モデル)の一例の説明図である。
【図24】は、建方区図の一例の説明図である。
【図25】は、三次元関連図(関連モデル)の一例の説明図である。
【図26】は、建築物の躯体建方計画作成の概要を示す流れ図の一例である。
【図27】は、従来の鉄骨建方施工計画支援システムのシステム構成の説明図である。
【図28】は、図27の従来システムにおける三次元躯体図の一例である。
【図29】は、図27の従来システムにおける建方区図の一例である。
【図30】は、図27の従来システムにおけるクレーン配置図の一例である。
【図31】は、図27の従来システムにおける建方状況図の一例である。
【図32】は、図27の従来システムにおける建方区図の作成方法の流れ図である。
【符号の説明】
1…コンピュータ 2…記憶手段
3…入力手段 4…表示手段
5…出力手段
24…建方計画案 25…建方計画実施案
26…クレーンデータベース
28…建方工法毎の格子点分割パターン
30…格子点登録手段 40…建方区生成手段
41…直列建方区生成手段 42…周期建方区編成手段
43…ブロック建方区編成手段
44…並列建方区生成手段 45…並列建方区同期化手段
46…直列建方区編成手段
50…建方区更新手段 60…建方検討手段
61…クレーン位置算出手段
62…建方可能性判定手段
63…クレーン仕様選定手段
70…自立安定性検討手段 80…補強部材追加手段
90…三次元躯体図(躯体モデル)作成手段
91…三次元関連図(関連モデル)作成手段
101…データ処理装置 102…記憶装置
103…入力部 104、105…出力部
111…入出力処理制御部 112…鉄骨断面設定部
113…鉄骨配置制御部 114…パースファイル作成部
115…区分ファイル作成部
116…建方検討部 117…鉄骨図展開部
118…重心検出部
119…各種データ設定処理(仮設検討部等)
121…鉄骨断面データ 122…鉄骨配置データ
123…パースファイル 124…区分ファイル
125…重機データ
C…一端支持可能部材
M…一端支持可能部材以外の部材
D…三次元躯体図(躯体モデル)
F…三次元関連図(関連モデル)
W…建方区図
g…部材種類グループ
Xr、Yq…水平通り芯
Zp…階層
(Xr、Yq、Zp)…格子点
Ei…直列建方区 Pi…周期建方区
Bi…ブロック建方区 At…並列建方区
Claims (25)
- 建築物の躯体の部材毎に一端支持可能か否かの種別及び部材の位置を記録した三次元躯体図Dに基づき当該躯体の建方を計画する方法において、躯体図D上の階層Zp毎にX方向及びY方向の水平通り芯Xr、Yqと両通り芯が交わる格子点(Xr、Yq、Zp)とを想定し、部材毎に当該部材上又は近傍に存すべき全ての格子点を当該部材の所属格子点として定め、所定建方工法に基づき躯体図D上の全ての格子点を複数の施工順序付き直列建方区Ei(1≦i≦n、nは直列建方区数)に対応する格子点群に分割し、初期建方区E1へ所属格子点が当該建方区E1の対応格子点となる一端支持可能部材と所属格子点が全て当該建方区E1の対応格子点となる部材とを割り当て、前記施工順序の昇順に後続建方区Ei(i≧2)へ所属格子点が当該建方区Eiの対応格子点となる建方区未割り当ての一端支持可能部材と所属格子点が全て当該建方区Ei又は先行建方区Ej(j<i)の対応格子点となる建方区未割り当ての部材とを割り当て、各直列建方区Ei毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項1の方法において、前記一端支持可能部材に柱部材と地組みした柱ユニット部材と片持ち梁部材と地組みした片持ち梁ユニット部材とを含めてなる建築物の建方計画方法。
- 請求項1又は2の方法において、前記躯体図Dを並列に建方する複数の並列建方区At(1≦t≦u、uは並列建方区数)に分け、各並列建方区At毎にそれぞれ所定建方工法に基づき当該並列建方区At上の全ての格子点を前記施工順序付き直列建方区Et,i(1≦i≦n、nは並列建方区At毎の直列建方区数)に対応する格子点群に分割し且つ前記初期及び後続建方区Et,iへの部材の割り当てを行い、各並列建方区Atの直列建方区Et,i毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項1から3の何れかの方法において、前記躯体図Dの部材を複数の部材種類グループg(1≦g≦o、oは部材種類グループ数)に分類し、各部材種類グループg別にそれぞれ所定建方工法に基づき躯体図D上の全ての格子点をグループ内施工順序付きの前記直列建方区Eg,i(1≦i≦n、nは部材種類グループ別の直列建方区数)に対応する格子点群に分割し且つ前記初期及び後続建方区Eg,iへの部材の割り当てを行い、部材種類グループg別の直列建方区Eg,iの複数列をグループ内施工順序を維持しつつ統合して単独の統合施工順序付き直列建方区Eiの列に編成し、編成後の各直列建方区Ei毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項4の方法において、前記部材種類グループgに、主要構造部材グループg1と外壁部材グループg2とを含めてなる建築物の建方計画方法。
- 請求項1から5の何れかの方法において、前記直列建方区Ei(又はEt,i)の列を、施工順序が連続した複数の直列建方区Ei(又はEt,i)の連結により所与周期内で建方できる大きさの周期建方区Pi(又はPt,i)(1≦i≦m、mは周期建方区数(又は並列建方区At毎の周期建方区数))の列に組み換え、各周期建方区Pi(又はPt,i)及び直列建方区Ei(又はEt,i)毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項6の方法において、前記躯体図Dを複数の並列建方区Atに分けて建方する場合に、各並列建方区Atの周期建方区Pt,iと他の並列建方区Atの周期建方区Pt,jとの施工順序を同期させた上で各並列建方区Atの周期建方区Pt,i毎に建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項6又は7の方法において、前記建築物の躯体と並列に施工する他の工事の三次元位置が記録された工事関連図Fを所与周期内で施工できる大きさの施工順序付き周期工区Psに分割して記憶し、前記各周期建方区Pi(又はPt,i)と工事関連図Fの周期工区Psとの施工順序を同期させた上で各周期建方区Pi(又はPt,i)毎に建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項6から8の何れかの方法において、前記周期建方区Pi(又はPt,i)の列を、施工順序が連続した複数の周期建方区Pi(又はPt,i)の連結によりブロック建方区Bi(又はBt,i)(1≦i≦h、hはブロック建方区数(又は並列建方区At毎のブロック建方区数))の列に組み換え、各ブロック建方区Bi(又はBt,i)、周期建方区Pi(又はPt,i)及び直列建方区Ei(又はEt,i)毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項6から9の何れかの方法において、建方途中の躯体・仮設構造物の自立安定性を検討する場合に、前記部材割り当て後の各直列建方区Ei、周期建方区Pi又はブロック建方区Bi毎に躯体の自立安定性を計算して必要な補強部材の位置を算出し、算出結果に基づき補強部材上又は近傍に存すべき全ての格子点を当該補強部材の所属格子点として求め、補強部材の所属格子点が含まれる直列建方区Eiに当該補強部材を追加するか又は当該直列建方区Eiの前又は後に当該補強部材のみからなる直列建方区Ek(k=i±1)を追加挿入し、補強部材の追加・挿入後の直列建方区Eiの列を前記周期建方区Pi及び/又はブロック建方区Biの列に組み換えてなる建築物の建方計画方法。
- 請求項6から10の何れかの方法において、前記部材別の揚重時間を実測により定め、周期建方区Pi毎に割り当て部材の揚重時間を算出してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項1から11の何れかの方法において、前記躯体に適用可能な複数の所定建方工法毎に建方区対応格子点のパターンを記憶し、それに基づき前記建方区への部材の割り当てを行ってなる建築物の建方計画方法。
- 請求項1から12の何れかの方法において、前記直列建方区Eiを分割する場合に、当該建方区Ei内の分割すべき対応格子点の指定に応じ、当該建方区Eiの前又は後に当該指定格子点に対応する新たな直列建方区Ek(k=i±1)を追加挿入し、所属格子点が当該指定格子点となる当該建方区Ei内の一端支持可能部材と所属格子点が全て当該指定格子点又は先行建方区Ej(j<k)の対応格子点となる当該建方区Ei内の部材とを新たな直列建方区Ekに割り当ててなる建築物の建方計画方法。
- 建築物の躯体の建方を計画するため、コンピュータを、建築物の躯体の部材毎に一端支持可能か否かの種別及び部材の位置を記録した三次元躯体図Dを記憶する記憶手段;躯体図D上の階層Zp毎にX方向及びY方向の水平通り芯Xr、Yqと両通り芯が交わる格子点(Xr、Yq、Zp)とを想定し且つ部材毎に当該部材上又は近傍に存すべき全ての格子点を当該部材の所属格子点として登録する格子点登録手段;所定建方工法に基づき躯体図D上の全ての格子点を複数の施工順序付き直列建方区Ei(1≦i≦n、nは直列建方区数)に対応する格子点群に分割し、初期建方区E1へ所属格子点が当該建方区E1の対応格子点となる一端支持可能部材と所属格子点が全て当該建方区E1の対応格子点となる部材とを割り当て、前記施工順序の昇順に後続建方区Ei(i≧2)へ所属格子点が当該建方区Eiの対応格子点となる建方区未割り当ての一端支持可能部材と所属格子点が全て当該建方区Ei又は先行建方区Ej(j<i)の対応格子点となる建方区未割り当ての部材とを割り当てて建方区図W作成する直列建方区生成手段;並びに建方区図Wの各建方区Ei毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定する建方検討手段として機能させる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項14のプログラムにおいて、前記記憶手段に所定建方工法毎の建方区対応格子点のパターンを記憶し、前記直列建方区生成手段により躯体図D上の全ての格子点を前記パターンに基づき直列建方区Eiの対応格子点群に分割してなる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項14又は15のプログラムにおいて、前記躯体図Dを並列に建方する複数の並列建方区At(1≦t≦u、uは並列建方区数)に分ける並列建方区生成手段を設け、前記直列建方区生成手段により各並列建方区At毎にそれぞれ所定建方工法に基づき当該並列建方区At上の全ての格子点を前記施工順序付き直列建方区Et,i(1≦i≦n、nは並列建方区At毎の直列建方区数)に対応する格子点群に分割し且つ前記初期及び後続建方区Et,iへの部材の割り当てを行ってなる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項14から16の何れかのプログラムにおいて、前記記憶手段に躯体図Dの部材を複数の部材種類グループg(1≦g≦o、oは部材種類グループ数)に分類して記憶し、前記直列建方区生成手段により各部材種類グループg別にそれぞれ所定建方工法に基づき躯体図D上の全ての格子点をグループ内施工順序付きの前記直列建方区Eg,i(1≦i≦n、nは部材種類グループ別の直列建方区数)に対応する格子点群に分割し且つ前記初期及び後続建方区Eg,iへの部材の割り当てを行い、部材種類グループg別の直列建方区Eg,iの複数列をグループ内施工順序を維持しつつ統合して単独の統合施工順序付き直列建方区Eiの列に編成する直列建方区編成手段を設けてなる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項14から17の何れかのプログラムにおいて、前記直列建方区Ei(又はEt,i)の列を施工順序が連続した複数の直列建方区Ei(又はEt,i)の連結により所与周期内で建方できる大きさの周期建方区Pi(又はPt,i)(1≦i≦m、mは周期建方区数(又は並列建方区At毎の周期建方区数))の列に組み換える周期建方区編成手段を設け、前記建方検討手段により各周期建方区Pi(又はPt,i)及び直列建方区Ei(又はEt,i)毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定する建方検討手段として機能させる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項18のプログラムにおいて、前記躯体図Dを複数の並列建方区Atに分けて建方する場合に、各並列建方区Atの周期建方区Pt,iと他の並列建方区Atの周期建方区Pt,jとの施工順序を同期させる同期化手段を設けてなる建築物の建方計画方法。
- 請求項18又は19のプログラムにおいて、前記記憶手段に前記建築物の躯体と並列に施工する他の工事の三次元位置が記録された工事関連図Fを所与周期内で施工できる大きさの施工順序付き周期工区Psに分割して記憶し、周期建方区Pi(又はPt,i)と工事関連図Fの周期工区Psとの施工順序を同期させる同期化手段を設けてなる建築物の建方計画方法。
- 請求項18から20の何れかのプログラムにおいて、前記周期建方区Pi(又はPt,i)の列を施工順序が連続した複数の周期建方区Pi(又はPt,i)の連結によりブロック建方区Bi(又はBt,i)(1≦i≦h、hはブロック建方区数(又は並列建方区At毎のブロック建方区数))の列に組み換えるブロック建方区編成手段を設け、前記建方検討手段により各ブロック建方区Bi(又はBt,i)、周期建方区Pi(又はPt,i)及び直列建方区Ei(又はEt,i)毎に割り当て部材のクレーンによる建方可能性を判定してなる建築物の建方計画方法。
- 請求項18から21の何れかのプログラムにおいて、建方途中の躯体・仮設構造物の自立安定性を検討する場合に、前記部材割り当て後の各直列建方区Ei、周期建方区Pi又はブロック建方区Bi毎に躯体の自立安定性を計算して必要な補強部材の位置を算出する自立安定性検討手段、及び前記算出結果に基づき補強部材上又は近傍に存すべき全ての格子点を当該補強部材の所属格子点として求め且つ補強部材の所属格子点が含まれる直列建方区Eiに当該補強部材を追加するか又は当該直列建方区Eiの前又は後に当該補強部材のみからなる直列建方区Ek(k=i±1)を追加挿入する補強部材追加手段を設け、補強部材の追加・挿入後の直列建方区Eiの列を前記周期建方区編成手段及び/又はブロック建方区編成手段により周期建方区Pi及び/又はブロック建方区Biの列に組み換えてなる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項18から22の何れかのプログラムにおいて、前記記憶手段に部材別の揚重時間を記憶し、前記建方検討手段により周期建方区Pi毎に割り当て部材の揚重時間を算出してなる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項14から23の何れかのプログラムにおいて、前記記憶手段に複数の所定建方工法を記憶し、前記建方区生成手段により前記躯体に適用可能な建方工法を選択し且つ選択した建方工法の各々に基づき建方区図Wを作成してなる建築物の建方計画プログラム。
- 請求項14から24の何れかのプログラムにおいて、前記直列建方区を分割する場合に、当該建方区Ei内の分割すべき対応格子点の指定に応じ、当該建方区Eiの前又は後に当該指定格子点に対応する新たな直列建方区Ek(k=i±1)を追加挿入し且つ所属格子点が当該指定格子点となる当該建方区Ei内の一端支持可能部材と所属格子点が全て当該指定格子点又は先行建方区Ej(j<k)の対応格子点となる当該建方区Ei内の部材とを新たな直列建方区Ekに割り当てる建方区更新手段を設けてなる建築物の建方計画方法。
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