JP2008276591A - 建物情報処理システムおよび建物情報処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 建物情報処理システムおよび建物情報処理方法の実現を図る。
【解決手段】建物情報処理システム1は、キーボードやマウスからなる入力手段2、CPUからなる処理手段3、記憶手段4、モニターやプリンタからなる出力手段5からなる。処理手段3には、建物情報を作成する建物情報処理部3a、施工計画情報を作成する施工計画情報処理部3b、建物情報の図面化と施工計画情報の図面化を行なう図面処理部3c、構造計算と断面検定を行なう構造検討処理部3dが設けられている。建物情報は、構造躯体の種類、構造形式、位置、形状寸法、材料からなり、デジタルデータで記述されている。また、施工計画情報は、検討ケース(ID)、重機の種類、作業方法からなり、デジタルデータで記述されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建物の補強設計を行う際に、ミスの発生を防止し正確な補強情報が取得できる構成とした、建物情報処理システムおよび建物情報処理方法に関する。
建設現場において、比較的大きな建物の1階の床面に重機を乗り入れて作業をする場合がある。原設計で、このような重機の建物床面への乗り入れを想定していないときには、原設計で設定された床、梁、柱などの部材は、強度が不足する。
また、床面がコンクリートの場合、設計に使用した強度が出るまでには打設から日数がかかる。このため、打設後十分な日数が経過していないと、やはり強度が不足するものと考えられる。このため、補強用の構造検討を行う必要がある。構造検討の方法は確立されており、市販のソフトも存在している。例えば特許文献1には、建物の構造検討のために種々の条件設定により計画シミュレーションを行なうことが開示されている。
特開平7−282112
特許文献1に記載されたような従来の構造検討は、設計者などが図面を目視して、対象とする床面などの形状、大きさなどの理解をもとに必要項目を入力していた。このため、検討生産性が低いという問題があった。すなわち、設計者は目視による図面の理解に基づいて、必要項目の入力を行なうので、図面の誤認などのヒューマンエラーが発生しやすいという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するものであって、建物情報をデジタル値で処理することにより、正確な補強処理が行える建物情報処理システムおよび建物情報処理方法の提供を目的とするものである。
このような目的を達成するために、本発明の建物情報処理システムは、建物情報の作成手段と、前記建物に乗り入れる重機の情報を含む施工計画情報の作成手段と、前記建物情報と施工計画情報に基づき、前記重機の乗り入れ範囲における建物部材に必要な強度を演算する処理手段と、前記演算結果を出力する出力手段とを具備することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記建物情報は、建物の名称、建物の構成部材を含み、これらの建物情報をデジタル値で記憶する第1の記憶手段を有することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記構成部材は、床、梁、柱を含み、これらの各部材の建物内の位置、形状、寸法、材料の種類、材料の物性のような諸特性を含み、これらの諸特性をデジタル値で記憶することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記施工計画情報は、前記重機の種類、作業内容、移動方向、荷重のような諸特性をデジタル値で記憶する第2の記憶手段を有することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記建物情報と前記施工計画情報を図面化する手段と、前記建物情報と前記施工計画情報の図面を記憶する第3の記憶手段を有することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記処理手段は、前記建物の構成部材の諸特性と、前記重機の諸特性に基づき前記構成部材の応力と変形を演算し、前記構成部材の補強を要する特性を出力することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記処理手段の演算結果を記憶する第4の記憶手段を有することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記建物情報と前記施工計画情報の図面を表示する手段と、前記表示された図面に前記重機の乗り入れ範囲を設定する入力手段とを具備し、前記処理手段は、前記表示された図面に前記重機の乗り入れ範囲を設定することとリンクして、前記構成部材の補強を要する特性を演算することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記構成部材は床スラブであって、当該床スラブを構成するコンクリートの特性と、前記コンクリート内に配列される鉄筋の平面状および複数段に重ねられた位置情報と各鉄筋間のピッチを含む特性をデジタル値で記憶することを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理システムは、前記鉄筋の強度と床スラブの厚さをランク付してデジタル値で記憶させ、前記処理手段は前記鉄筋の強度または床スラブの厚さのランクを1段階づつあげて補強強度を演算することを特徴とする。
本発明の建物情報処理方法は、建物情報を作成する段階と、前記建物に乗り入れる重機の情報を含む施工計画情報を作成する段階と、前記建物情報と前記施工計画情報の図面を作成する段階と、前記建物情報と前記施工計画情報の図面に前記重機の乗り入れ範囲を設定して表示する段階と、前記建物情報と施工計画情報に基づき、前記重機の乗り入れ範囲における建物部材に必要な強度を演算する段階と、前記演算結果を出力する段階と、からなることを特徴とする。
また、本発明の建物情報処理方法は、前記建物情報を作成する段階は、建物部材の強度をランク付して作成する段階を含み、建物部材に必要な強度を前記ランクを1段階づつあげて演算する段階が付加されることを特徴とする。
本発明によれば、建物情報をデジタル処理することにより、正確な建物データの処理を行うことができる。例えば、床スラブに重機乗り入れをする際に、原設計による床、梁に対する補強設計は、図面に重機の情報、重機の乗り入れ範囲を入力するだけで実現できる。このため、補強検討の生産性が向上するとともに、図面の目視に基づき補強設計をすることによるヒューマンエラーが減少し、計画品質の向上を図ることができる。
図1は、本発明の実施形態における建物情報処理システム1の全体構成を示すブロック図である。図1に示されているように、当該システム1は、コンピュータのハードウェア資源により構成されている。2はキーボードやマウスからなる入力手段、3はCPUからなる処理手段、4は種々のデータやプログラムを記憶する記憶手段、5はモニターやプリンタからなる出力手段である。処理手段3には、建物情報を作成する建物情報処理部3a、施工計画情報を作成する施工計画情報処理部3b、建物情報の図面化と施工計画情報の図面化を行なう図面処理部3c、構造計算と断面検定を行なう構造検討処理部3dが設けられている。
建物情報は、複数の建物の中から構造検討を行なう建物を特定するために、建物の名称、施工番号などがデジタルデータで記述されている。また、例えば図6(b)のフォーマットに示されているように、構造躯体の種類、構造形式、位置、形状寸法、材料などの各データからなり、図11に示されているようなデジタルデータで記述されている。また、施工計画情報は、図12、図13に示されているように、検討ケース(ID)、重機の種類、作業方法からなり、デジタルデータで記述されている。図面は、例えば図18に示されているように、建物情報(床スラブ)をコンピュータで描画したものである。構造検討処理部3dは、構造検討ソルバーにより、検討ケースの荷重条件と建物情報の床、梁の位置、形状寸法、材料から構造解析し、図15(b)に示されているような補強設計を実行する。補強設計の結果は、出力手段5に出力される。記憶手段4には、建物情報を記憶する建物情報記憶部A、施工計画情報を記憶する施工計画情報記憶部B、建物情報と施工計画情報の図面を記憶する図面記憶部C、構造検討ソルバー記憶部D、データベース記憶部Eが設けられている。構造検討ソルバー記憶部Dには、建物部材の補強演算結果を記憶させることもできる。
図2は、本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャートである。図2において、S(1)で処理プログラムを開始する。S(2)で複数の建物について建物名などによりデジタル情報として登録されているデータベースの中から、対象とする建物を選定し、S(3)で当該建物の中で補強を検討する図面をモニターに表示する(図18参照)。S(4)で前記補強についての施工計画情報(図12、図13参照)を入力し、S(5)で構造検討ソルバーを実行する(図15参照)。S(6)で補強部分を図面に表示し(図23参照)、S(7)で処理プログラムを終了する。
図3、図4は、補強を検討する個所の部材、例えば床スラブについての説明図である。この例では、普通コンクリート(部材1)に鉄筋(部材2)を入れたRCを対象としている。部材の座標系は、図示縦方向(短辺)をXe、横方向(長辺)をYe、高さ方向をZeの3次元ベクトルで表示される。図3(a)は部材の上側平面図、図4(a)は下側平面図、図3(b)は矢視A、B、C方向(Xe方向)の断面図、図4(b)は矢視D、E、F方向(Ye方向)の断面図である。各平面図の線状に表示した部分と各断面図の黒丸で表示した部分は、コンクリート内に配列される鉄筋である。図3(a)の(X01、Y01)は、Xe−Ye方向における部材1の中心位置の座標、(X02、Y02)は部材2の中心位置の座標を示している。矩形状部材の短辺の端部は○1、○2で、また、長辺の端部は○3、○4で表示している(図の丸付数字は、変換上の理由で○1のように記載する)。図3、図4で示した例では、部材1の普通コンクリート内に、平面視で上下2段に部材2の鉄筋を入れている。部材2は、長さが異なる異形鉄筋(図15に記載されているコンクリートの種類D)を用いている。床スラブは、Ye方向で○1端、Ye方向中央、○2端の3つのブロック区分する。また、Xe方向で○3端、Xe方向中央、○4端の3つのブロック区分する。なお、鉄筋の上下の位置は、「上端筋」、「下端筋」で表示している。例えば、「○1端上端筋」、「○4端下端筋」のように、鉄筋の位置を特定している。
図3(b)、図4(b)は、隣接する鉄筋のピッチを示している。図3(b)A断面の(X01、Z01)は、Xe−Ze方向における部材1の中心位置の座標、(X02、Z02)は部材2の中心位置の座標を示している。A、B、C各断面の図示左側が上端筋ピッチを、右側が下端筋ピッチを示している。図4(b)のC、D、E各断面において、図示上側が上端筋ピッチを、下側が下端筋ピッチを示している。本発明の実施形態においては、図3、図4に示したような建物部材の寸法、形状、材質などの情報を、図11で説明するようにデジタル情報で記述するものである。すなわち、建物部材の特性をデジタル情報として記憶手段に記憶させている点に特徴がある。
図5は、コンクリートの強度と材令の関係を示す特性図である。横軸に材令(日)を設定し、縦軸に強度Fc(N/mm2)を設定している。コンクリートの材令は、コンクリートの打設を実施した日からの経過日数を示すものであり、材令が大きいほど(日数が経過するほど)コンクリートの強度は大きくなる。この例では、作業日の材令dxにおける補強設計のための設計強度はFx(N/mm2)である。この特性曲線は、ある材令(日)で強度Fc(N/mm2)は飽和して一定値に漸近する。
図6は、図1の記憶手段4の建物情報記憶部Aに記憶される建物情報の例を示す説明図である。図6(a)はツリー状に設定されたフォルダ構成を示している。「建物」のフォルダの下位に、「床」、「梁」、「柱」の各フォルダを設定する。「床」、「梁」、「柱」の各フォルダの下位には、「オブジェクト基本データ」、「位置データ」、「形状データ」、「材料データ」、「接合データ」、「工程データ」の各フォルダを設定する。図6(b)は、図6(a)の「オブジェクト基本データ」、「位置データ」、「形状データ」、「材料データ」、「接合データ」、「工程データ」の各フォルダに格納されるデータの例を示す説明図である。これらのデータは、(r)欄の各項目に対応して(s)欄に具体的な特性が設定される。この例では、オブジェクト基本データとして、構造体名は床スラブ、オブジェクトIDはID、構造形式は在来RCが設定される。位置データとして、部材座標系はX、Y、Zの3次元ベクトルで設定される。
部材1の材料データとして、材料種類は普通コンクリート、設計基準強度Fc
(N/mm2)、単位体積重量ρ(N/mm3)が入力される。位置データとして、部材1の中心位置X01、Y01、Z01(mm)が設定される。部材1の形状データとして、寸法1がXe、Ye、Zeの3次元ベクトルで設定される。工程データとして、部材1の作業日の材令(日)が設定される。
部材2についても、部材1と同様に材料データ、位置データが設定される。部材2の形状データは、寸法1〜寸法12が入力される。例えば、寸法1の欄には、図3(a)で説明した○1端上端筋の径、図3(b)で説明したピッチが入力される。接合データの「定着方法」について、例えば定着1では、図3(a)の○1端上端筋が○3端上端筋の上部に載置された状態、すなわち、○1端上端筋が○3端上端筋に支持された状態で接合されるかどうかを設定する。
図7は、図1の記憶手段4の施工計画情報記憶部Bに記憶される施工計画情報の例を示す説明図である。図7(a)はツリー状に設定されたフォルダ構成を示している。施工計画のフォルダの下位に、「オブジェクト基本データ」、「重機データ」、「作業方法データ」、「作業範囲データ」の各フォルダを設定する。図7(b)は、図7(a)で設定された各フォルダに格納されるデータの例を示している。(u)欄の事項に対応して(v)欄に具体的な特性が設定される。
重機データは、重機の種類として重機名と、衝撃係数Ψが設定される。また、
作業方法データについて、重機の作業種類は走行か、走行せず揚重などの作業かが入力される。また、移動方向は、X/Y/XYのいずれかが設定される。さらに、床スラブのアウトリガー接地有無が設定される。また、積載荷重w(N/mm2)、吊り荷重P(N)が設定される。なお、作業範囲データとして、作業範囲の座標(Xi、Yi、Zi)が設定される。
図8は、図1の記憶手段4の図面記憶部Cに記憶される図面の例を示す説明図である。建物のフォルダの下位に、「建物情報」、「施工計画情報」のフォルダを設定する。
図9は、図1の記憶手段4の構造検討ソルバー記憶部Dに記憶される処理プログラムの例を示すフローチャートである。S(11)で建物情報を読み込む。S(12)で施工計画情報を読み込む。S(13)で設計クライテリアを設定する。S(14)で、検討対象建物部材の位置データ、形状データ、重機データ、作業方法データ、作業範囲データより、荷重設定を行なう。
S(15)で前記位置データ、形状データ、材料データより断面性能、この例では床スラブの断面性能を計算する。S(16)で荷重と断面性能より、建物部材の応力と変形を計算する。S(17)で重機により負荷される応力と、これに伴う建物部材の変形は設計クライテリアを満足するかどうかを判定する。この判定結果がNoの場合には、S(18)で形状データベース及び材料データベースより形状と材料を仮定し、再度前記S(14)以下の処理を行う。S(17)の判定結果がYesの場合には、S(19)で建物情報(形状データ、材料データ)を更新し、S(20)で処理プログラムを終了する。
図10は、図1の記憶手段4のデータベース記憶部Eに記憶されるデータベースの例を示す説明図である。「建物」のフォルダの下位に、「床」、「梁」、「柱」の各フォルダを設定する。「床」、「梁」、「柱」の各フォルダの下位には、「形状データ」、「材料データ」、の各フォルダを設定する。
図11は、デジタル情報で記述される建物情報の例を示す説明図である。この例では、図14に示されているようなS1〜S35の35区画に区分されている床スラブを対象としている。(c)欄の構造体名には「床スラブ」が設定されている。(d)欄のオブジェクトIDには適宜のIDを設定する。(e)欄の構造形式には「在来RC」が設定されている。(f)〜(n)には、部材座標X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3をデジタル値で設定する。(f)〜(n)欄の0、1は例示である。図3、図4で説明したように、部材1がコンクリート、部材2が鉄筋の場合には、部材1の中心座標(X1、Y1、Z1)は、(1,1,1)となり、部材2の中心座標(X2、Y2、Z2)は、(1,1,0)となる。また、部材3は使用されていないので、中心座標(X3、Y3、Z3)は、(0,0,0)となる。例えば、梁には鉄骨が使用されるので、床スラブと梁を補強対象とする場合には、鉄骨が部材3として処理される。
図11には、建物情報の一部である位置データのみがデジタル値で示されているが、以下、図6(b)で説明したような材料データ、形状データ、工程データなども(n)欄に続いてデジタル値で記述される。すなわち、本発明の実施形態においては、建物情報をすべてデジタル値で記述するものである。
図12は、重機情報の例を示す説明図である。第1の重機の種類は「40Tラフター」でX方向に走行する。その他、床上スラブのアウトリガー接地の有無、積載荷重のコード、吊り荷重(kg)、衝撃係数の特性が必要個所に設定される。また、第2の重機の種類は「40Tラフター」で、揚重作業を行なう。第1の重機と同様に、必要欄に特性が設定される。
図13は、種々の重機が床スラブに載置され車輪が梁に乗り上げたときに、当該梁にどのように荷重がかかるかを示す説明図である。(a)、(d)、(e)は重機が走行するので、荷重に衝撃係数Ψが乗算される。(a)は重機11の片側の車輪12、13が梁10に乗り上げた状態で、反対側の車輪14、15は当該梁には乗り上げない。25は吊り上げアームである。この場合には、重機11の車輪12、13は梁10の中心線CLに対してほぼ対象の位置に乗り上げているので、梁10には、中心線CLの前後で重機11の荷重W1の1/4に衝撃係数Ψが乗算された重量が負荷されることになる。
(b)は、重機16に脚部17〜20を設け、脚部17〜20の先端に車輪を有しており、片側の脚部17、18先端の車輪が梁10に乗り上げている。この場合には、梁10の中心線CLの前方には、重機16の荷重W1の1/4が負荷される。また、梁10の中心線CLの後方には、重機16の荷重W1と吊り荷重W2の0.7(W1+W2)が負荷される。
(c)は、(b)と同じ重機16の片側の脚部17、18先端の車輪が、梁10の中心線CLの前方で梁10に乗り上げた状態を示している。この場合の梁10に負荷される荷重は、(b)と同じである。(d)は、(a)と同じ重機11が90度角度を変えて中心線CL上で、後輪12、14が梁10に乗り上げた状態を示している。この場合に梁10にかかる荷重は、中心線CLの前後でそれぞれΨ0.4(W1+W2)である。
(e)は、(d)と同じ状態で重機11の後輪12、14が梁10に乗り上げているが、吊り荷重がない状態で走行する。この場合には、梁10にかかる荷重は、中心線CLの前後でそれぞれΨ0.5W1である。(f)は、キャタピラ22、23を有する重機21が、中心線CL上で梁10に乗り上げた状態を示している。この場合には、中心線CLの図示右側では0.2(W1+W2)の荷重がかかり、中心線CLの図示左側では0.8(W1+W2)の荷重がかかる。(g)は、(f)と同じ重機21の一方のキャタピラ22が中心線CL上で梁10に乗り上げた状態を示している。この場合には、(f)と同様に中心線CLの図示右側では0.2(W1+W2)の荷重がかかり、中心線CLの図示左側では0.8(W1+W2)の荷重がかかる。
図14は、床スラブのS1〜S35のどの区画に重機が乗り入れるかを示す説明図である。この例では、図12で説明したように、第1の重機は40Tラフターで、S1〜S10の範囲をX方向に走行する。また、第2の重機は40Tラフターで、S7、S8の区域で揚重作業を行なう。この例では、床スラブのS1〜S35の中で、S1〜S10の範囲内の補強設計を検討することになる。
図15、図16は、床スラブの区画S1〜S10の範囲についての補強設計の例を示す説明図である。(P)欄は原設計の数値であり、(Q)欄は補強設計の数値である。区画S1の例で説明する。この例では、原設計として、コンクリート部材の厚さtは200mm、鉄筋は上端筋と下端筋が2段に配列されている。(P)欄の設計値として、コンクリート部材の短辺端部、短辺中央、長辺端部、長辺中央には、上端筋、下端筋として、種類Dの鉄筋が径10mmと13mmの2本、ピッチ200mmが入力されている。
(Q)欄の補強設計の数値として、コンクリート部材の短辺端部、短辺中央には、上端筋、下端筋とも種類D、径13mmの2本の鉄筋が、ピッチ200mmとして計算されている。すなわち、原設計では、この部分の鉄筋は径10mmと13mmの異なる径で2本使用していていたが、重機の乗り入れに伴う補強計算の結果、径10mmの細い鉄筋は使用しないで、径13mmの鉄筋を2本使用することにしている。長辺端部、長辺中央については、原設計の数値をそのまま用いている。
同様に、S2、S4〜S7、S9、S10の区画についても、コンクリート部材の短辺端部、短辺中央には、上端筋、下端筋とも種類Dで径13mmの鉄筋を2本、ピッチ200mmで配列する。S3、S8の区画では鉄筋に変更がなく、鉄筋は原設計の数値をそのまま用いる。すなわち、S3、S8の区画では補強が不要となっている。本発明の実施形態においては、図14に示したように、モニターに表示された床スラブの中で、重機が乗り入れる特定の範囲を枠で囲み、重機の情報を入力する。このように、床スラブの特定範囲を枠で囲み必要な情報を入力することにより、図15、図16に示したような床スラブの補強の演算結果が自動的に出力される。このため、補強設計が簡単に行なえると共に、正確な補強情報を作成することが可能となる。
図17は、図15、図16で説明した計算結果に基づき、床スラブの補強が必要な区画を示す例の説明図である。この例では、前記のように、検討対象とする床スラブのS1〜S10の区画の中で、S3、S8は補強が必要なく、残りの区画S1、S2、S4〜S7、S9、S10の部分は補強が必要であることを表示している。このような表示は、例えばモニターに補強が必要な区画の色を反転させるなどにより行なう。区画S3、S8は、該当の区画の中で中央付近となり、梁10の長さが他の区画よりも短かく、柱30により荷重が支持されるので、梁10は重機が乗り入れても補強が必要ないことを示している。
図18〜図22は、補強検討対象となっている床スラブの区画についての計算を、モニターに表示される入力画面にしたがって順次行なう例の説明図であり、図23は、出力画面の例を示す説明図である。図18では、対象となっている床スラブをS1〜S35区画に区分して表示している。図19の入力画面で、区画S7の位置をクリックすると、ウインドウにはオブジェクトID7の補強前における建物部材の原設計の数値が表示される。この例では、コンクリート部材は短辺Lxの長さが3000mm、長辺Lyの長さが8000mmである。また、短辺端部上端筋〜長辺中央下端筋の鉄筋は、種類D、径10mmと13mmの2本がピッチ200mmで配列されていることが確認できる。
図20では、重機1の条件を入力する。この例では、図12で説明した第1の重機の特性が入力される。この場合、吊り荷重の欄は0に設定する。図21では、図20で入力された重機の乗り入れ範囲S1〜S10が枠40で囲われている。このような枠は、キーボードやマウスからなる入力手段により設定される。本発明の実施形態においては、図1で説明した処理手段(CPU)3は、このように重機の乗り入れ範囲を枠で表示することとリンクして、前記建物情報と前記施工計画情報に基づき、前記乗り入れ範囲の部材の補強を要する特性、例えば、鉄筋の径を演算する。すなわち、重機が乗り入れる範囲を画面上で枠で囲み、重機情報を入力するだけでデジタル演算により、部材、この例では床スラブの必要な補強結果を取得することができる。したがって、設計者が図面を視認することにより補強設計する際に生じていた人為的なミスの発生を防止することができる。図22は、図20と図21を重ね合わせた例である。図23では、補強が必要になる区画が反転表示され、また、区画S7の位置をクリックすると、ウインドウにはオブジェクトID7の補強後における建物部材の数値が表示される。
図24は、本発明の実施形態を示す説明図、図25はその処理手順を示すフローチャートである。図24、図25は、重機乗り入れ範囲における建物部材の補強設計の具体例を示している。図24において、(M)欄には配筋(鉄筋)の種類D、径(mm)、ピッチ(@mm)が記述されている。Rはランクで1〜10段階でランク付されている。(N)欄にはスラブの厚さ(mm)が記述されている。(R)欄には、鉄筋径と材質が記述されている。
例えば鉄筋のランク3(R3)では、鉄筋の材質がD、径が13mm、ピッチが150mmとなる。(R)欄から、D13の鉄筋の材質はSD295である。鉄筋のランク最大(R10)では、径が19mm、ピッチが100mmで鉄筋の強度が最大となる。また、スラブ厚さについては、厚み(S)が1〜11段階で記述されている。最大厚みのS11では500mmとなっている。図24に示した建物情報は、デジタル情報として図4の建物情報記憶部Aに記憶されている。
本発明の実施形態においては、建物部材の補強設計の際に、例えば図24の場合には、最初に鉄筋の径を大きくする設計を行う。補強後の設計値が鉄筋径の最大値を超える場合には、鉄筋径を原設計値に戻して、スラブの厚さを厚くして補強する。図25はこのような処理手順を示している。図25において、S(21)で建物情報を読み込む。ここで、図24の鉄筋のランクR、スラブの厚さSはそれぞれ原設計値のR0、S0に設定する。S(22)で揚重方法を入力する。S(23)で荷重計算を行い、S(24)で応力計算を行なう。
S(25)でスラブの断面検定を行ない、強度が不足している場合にはS(26)で鉄筋強度のランクを1つあげ、S(23)以下の処理を繰り返す。以下同様にして鉄筋強度のランクを1つづつあげながら、S(23)の荷重計算とS(24)の応力計算を行いS(25)の断面検定処理を実行する。S(25)のスラブの断面検定で強度が満足されると、S(28)で床補強案の鉄筋のランクR(鉄筋の径、ピッチ)、スラブの厚さSをモニター画面に表示し、S(29)で処理を終了する。
S(26)の処理で、鉄筋強度のランクRが最大値(R=11)を超えてもなお、強度が不足する場合、または図示していないが、コンクリートのせん断力の特性が不足している場合には、S(27)で鉄筋強度のランクRを原設計値R0に設定する。そして、スラブ厚さSを1段階あげる。その後、スラブ厚さSを1段階あげてS(23)〜S(27)のループ処理を繰り返す。S(25)の断面検定が良好であれば、S(28)で鉄筋のランクR(=R0)床補強案のスラブの厚さSをモニター画面に表示し、S(29)で処理を終了する。
以上説明したように、本発明は、建物情報をデジタル値で処理することにより、エラーの発生を防止して正確な処理を行う建物情報処理システムおよび建物情報処理方法を提供することができる。
本発明の実施形態の全体構成を示すブロック図である。 本発明の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す特性図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す特性図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の処理手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1・・・建物情報処理システム、2・・・入力手段、3・・・処理手段、4・・・記憶手段、5・・・出力手段、10・・・梁、11、16、21・・・重機、30・・・柱、40・・・枠

Claims (12)

  1. 建物情報の作成手段と、前記建物に乗り入れる重機の情報を含む施工計画情報の作成手段と、前記建物情報と施工計画情報に基づき、前記重機の乗り入れ範囲における建物部材に必要な強度を演算する処理手段と、前記演算結果を出力する出力手段とを具備することを特徴とする、建物情報処理システム。
  2. 前記建物情報は、建物の名称、建物の構成部材を含み、これらの建物情報をデジタル値で記憶する第1の記憶手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の建物情報処理システム。
  3. 前記構成部材は、床、梁、柱を含み、これらの各部材の建物内の位置、形状、寸法、材料の種類、材料の物性のような諸特性をデジタル値で記憶することを特徴とする、請求項2に記載の建物情報処理システム。
  4. 前記施工計画情報は、前記重機の種類、作業内容、移動方向、荷重のような諸特性をデジタル値で記憶する第2の記憶手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の建物情報処理システム。
  5. 前記建物情報と前記施工計画情報を図面化する手段と、前記建物情報と前記施工計画情報の図面を記憶する第3の記憶手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の建物情報処理システム。
  6. 前記処理手段は、前記建物の構成部材の諸特性と、前記重機の諸特性に基づき前記構成部材の応力と変形を演算し、前記構成部材の補強を要する特性を出力することを特徴とする、請求項1に記載の建物情報処理システム。
  7. 前記処理手段の演算結果を記憶する第4の記憶手段を有することを特徴とする、請求項6に記載の建物情報処理システム。
  8. 前記建物情報と前記施工計画情報の図面を表示する手段と、前記表示された図面に前記重機の乗り入れ範囲を設定する入力手段とを具備し、前記処理手段は、前記表示された図面に前記重機の乗り入れ範囲を設定することとリンクして、前記構成部材の補強を要する特性を演算することを特徴とする、請求項5に記載の建物情報処理システム。
  9. 前記構成部材は床スラブであって、当該床スラブを構成するコンクリートの特性と、前記コンクリート内に配列される鉄筋の平面状および複数段に重ねられた位置情報と各鉄筋間のピッチを含む特性をデジタル値で記憶することを特徴とする、請求項3に記載の建物情報処理システム。
  10. 前記鉄筋の強度と床スラブの厚さをランク付してデジタル値で記憶させ、前記処理手段は前記鉄筋の強度または床スラブの厚さのランクを1段階づつあげて補強強度を演算することを特徴とする、請求項9に記載の建物情報処理システム。
  11. 建物情報を作成する段階と、前記建物に乗り入れる重機の情報を含む施工計画情報を作成する段階と、前記建物情報と前記施工計画情報の図面を作成する段階と、前記建物情報と前記施工計画情報の図面に前記重機の乗り入れ範囲を設定して表示する段階と、前記建物情報と施工計画情報に基づき、前記重機の乗り入れ範囲における建物部材に必要な強度を演算する段階と、前記演算結果を出力する段階と、からなることを特徴とする、建物情報処理方法。
  12. 前記建物情報を作成する段階は、建物部材の強度をランク付して作成する段階を含み、建物部材に必要な強度を前記ランクを1段階づつあげて演算する段階が付加されることを特徴とする、建物情報処理方法。
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