JP2004226378A - 酸素センサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス応答性の優れた白金電極を有する酸素センサとその製造方法を提供する。
【解決手段】ジルコニア固体電解質基体2の少なくとも内外面の対向する位置に白金金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極4と基準電極3を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定される測定電極4の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrが1以上であることを特徴とする。また、製法として、未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】ジルコニア固体電解質基体2の少なくとも内外面の対向する位置に白金金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極4と基準電極3を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定される測定電極4の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrが1以上であることを特徴とする。また、製法として、未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の内燃機関における空気と燃料の比率を制御するための酸素センサに関しガス応答性に優れた酸素センサとその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、自動車等の内燃機関においては、排出ガス中の酸素濃度を検出して、その検出値に基づいて内燃機関に供給する空気および燃料供給量を制御することにより、内燃機関からの有害物質、例えばCO、HC、NOxを低減させる方法が採用されている。
【0003】
この酸素センサとして、主として酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主分とする固体電解質からなり、一端が封止された円筒管の外面および内面にそれぞれ一対の電極層が形成された固体電解質型の酸素センサが用いられている。この酸素センサの代表的なものとしては、図7に示すように、ZrO2固体電解質からなり、先端が封止された円筒管71の内面には、センサ部として白金からなり空気などの基準ガスと接触する基準電極72が、また円筒管71の外面には排気ガスなどの被測定ガスと接触される測定電極73が形成されている。また、測定電極73の表面には、セラミック多孔質層74が形成されている。
【0004】
このような酸素センサにおいて、一般に、空気と燃料の比率が1付近の制御に用いられている、いわゆる理論空燃比センサ(λセンサ)としては、測定電極73の表面に、保護層としてセラミック多孔質層74が設けられており、所定温度で円筒管71両側に発生する酸素濃度差を検出し、エンジン吸気系の空燃比の制御が行われている。
【0005】
一方、広範囲の空燃比を制御するために用いられている、いわゆる広域空燃比センサ(A/Fセンサ)は、測定電極73の表面に微細な細孔を有するガス拡散律速層としてセラミック多孔質層74を設け、固体電解質からなる円筒管71に一対の電極72、73を通じて印加電圧を加え、その際得られる限界電流値を測定して希薄燃焼領域の空燃比を制御するものである。
【0006】
上記理論空燃比センサおよび広域空燃比センサともセンサ部を約700℃付近の作動温度までに加熱する必要があり、そのために、円筒管71の内側には、センサ部を作動温度まで加熱するため棒状ヒータ75が挿入されている。
【0007】
しかしながら、近年排気ガス規制の強化傾向が強まり、エンジン始動直後からのCO、HC、NOxの検出が必要になってきた。このような要求に対して、上述のように、ヒータ75を円筒管71内に挿入してなる間接加熱方式の円筒型酸素センサでは、センサ部が活性化温度に達するまでに要する時間(以下、活性化時間という。)が遅いために排気ガス規制に充分対応できないという問題があった。
【0008】
その問題を回避する方法として、固体電解質からなる円筒管の内面および外面に基準電極、測定電極が設けられ、測定電極の表面に、ガス透過性の多孔性の絶縁層を設け、さらにその中のガス透過性の低いガス非透過層中に発熱体を設けた円筒型のヒータ一体型酸素センサが提案されている。(例えば、特許文献2参照)に記載されている。
【0009】
一方、本出願人は、先にセラミック固体電解質からなり一端が封止された円筒管の内面および外面に基準電極および測定電極を形成してなるセンサと、測定電極が露出するように前記円筒管の外面に測定電極形成部に開口を設けたセラミック絶縁層を積層形成し、測定電極がその開口部から露出するようにし、その少なくとも露出している前記測定電極の周囲のセラミック絶縁層内に発熱体を埋設してなる急速昇温性に優れたヒータ一体型酸素センサを提案した(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
[特許文献1]
特開2002−131269号公報
[特許文献2]
特開平10−206380号公報
[特許文献3]
特開平13−13101号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2、3に記載される酸素センサにおいても、従来の間接加熱方式と異なり、直接加熱方式であるために急速昇温が可能ではあるが、固体電解質と白金電極とをヒータとともに高温で同時焼成して形成すると、ガス応答性が低下しやすくなるという問題があった。
【0012】
この問題について種々検討したところ、固体電解質と電極との同時焼成時に電極における白金表面に、気相中の酸素または水蒸気との反応による白金の酸化物や、また焼成炉の断熱材等から蒸発した不純物成分が付着しており、これら白金酸化物や、焼成炉内の不純物が、白金の活性を低下させていることをことがわかった。
【0013】
従って、本発明は、上記のような問題を解消し、ガス応答性の優れた白金電極を有する酸素センサとその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題に対して検討を重ねた結果、同時焼成後の電極表面に対して種々の処理を施すことによって電極表面を浄化できること、また、光電子分光分析法により測定した所定の強度比を特定範囲に制御することで白金電極の活性度を高めガス応答性を高めることができることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は、ジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に白金金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極と基準電極を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定される前記測定電極の白金の強度I(pt)とジルコニアの強度I(zr)の強度比率I(pt)/I(zr)が1以上であることを特徴とするものである。
【0016】
この際、本発明の酸素センサにおいては、前記ジルコニア固体電解質基体と、前記測定電極および基準電極とが同時焼成して形成される場合に好適である。また、本発明は、発熱体を内蔵したセラミック絶縁層と一体化されたヒータを一体的に付与した酸素センサにおいて、ヒータによる急速昇温する場合においても優れた耐久性を有する。
【0017】
そして、本発明の酸素センサの製造方法は、未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とするものである。
【0018】
また、他の方法としては、未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の低い還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに40℃以上の硝酸と硫酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とするものである。
【0019】
この際、前記白金族金属とジルコニアから構成されるペーストは、BET比表面積が30(m2/g)以上のジルコニア粉末を含有することが望ましい。
【0020】
また、本発明の酸素センサは、発熱体を内蔵したセラミック絶縁層と一体化させることで、ヒータによるジルコニアセル部の加熱効率を高め、急速昇温を行うことができ、その結果、センサ活性化時間を短縮することができる。
【0021】
なお、本発明は、前記固体電解質基体が、平板状、円筒状のいずれのセンサにおいても適用できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の酸素センサの一例を示す図面を参照しながら本発明を説明する。図1は、酸素センサの一例を示す概略斜視図(a)と、そのA−A断面図(b)である。但し、(a)では説明の便宜上、セラミック保護層13を省略した。
【0023】
図1の酸素センサ1は、酸素イオン伝導性を有するジルコニア等のセラミック固体電解質からなり、先端が封止された円筒管2の内面に、第1の電極として、空気などの基準ガスと接触される基準電極3が被着形成され、また、円筒管2を挟んで基準電極3と対向する位置に第2の電極として、排気ガスなどの被測定ガスと接触する測定電極4が被着形成されている。そして、基準電極3、ジルコニア固体電解質からなる円筒管2および測定電極4によってセンサ部を形成している。
【0024】
そして、先端が封止された円筒管2の外面には、Al2O3などのセラミック絶縁層6が被着形成されており、そのセラミック絶縁層6には、測定電極4の一部または全部が露出するように開口部7が形成されている。
【0025】
また、上記開口部7の周囲のセラミック絶縁層6中にはセンサ部を加熱するための白金からなる発熱体8が埋設されている。また、セラミック絶縁層6の表面には、さらに発熱体8による加熱効率を高めるために、Al2O3等からなるセラミック保温層9が積層形成されている。
【0026】
円筒管2の内面に形成された基準電極3は、円筒管2の内面および開口側の端面を経由して円筒管2の外表面に設けたセンサ用端子部11aに接続されている。一方、円筒管2の外面に形成された測定電極4は、セラミック絶縁層6およびセラミック保温層9に形成された開口部7の端面を経由してセラミック保温層9の表面に形成されたリード部10に接続され、さらにセラミック保温層9の表面に形成されたセンサ用端子部11bと接続されている。なお、円筒管2において上記端面に存在するエッジ部は、C面取りされ、エッジ部で生じる電気的接続の不良を回避している。
【0027】
また、セラミック保温層9の表面に形成されたリード部10の表面にはさらにZrO2等からなるリード保護層12が形成されている。このリード保護層12によって、リード部10を、例えば素子のアッセンブル時の引っかき、あるいは素子の落下時の異物との衝突等の物理的な破壊から保護することができる。このリード保護層12は固体電解質と同じZrO2で構成することが固体電解質との熱膨張差による応力の発生を防止する上で好ましい。
【0028】
さらに、図1(b)に示すように、少なくとも検知部の表面も、多孔質のセラミック保護層13によって被覆されている。
【0029】
また、センサ用端子部11a、11bには、外部回路との接続のための金属部材14がそれぞれロウ材によってロウ付け固定されている。これによって、検知部において発生した検知データをリード部10、センサ用端子部11a、11bおよび金属部材14を経由して外部回路に接続される。
【0030】
一方、セラミック絶縁層6内に形成された発熱体8は、同じくセラミック絶縁層6内に形成されたリード部16と、セラミック絶縁層6およびセラミック保温層9を貫通して形成された貫通導体(図示せず)によって、セラミック保温層9の外表面に形成されたヒータ用端子部18と電気的に接続されている。そして、端子部18上には発熱用外部電源と接続するための金属部材19がロウ材等により固定され、これらを通じて発熱体8に電流を通ずることにより、発熱体8が加熱され、測定電極4、円筒管2および基準電極3からなる検知部を所定の温度に急速昇温し、センサ部のガス応答性を高めることができる。
【0031】
さらに、酸素センサの全体の大きさとしては、外径が3〜6mm、特に3〜4mmの円筒体によって形成することが、消費電力を低減するとともに、センシング性能を高めることができる。
【0032】
本発明の酸素センサによれば、円筒管2の内面および外面に被着形成される基準電極3、測定電極4は、いずれも白金、あるいは白金と、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種との合金からなるものであるが、本発明によれば、このような白金族の電極を光電子分光分析法により測定したPt4fナロースペクトル強度IptとジルコニアのZr3dナロースペクトル強度Izrの強度比率Ipt/IzrがIpt/Izr≧1を満足することを特徴としている。強度比率Ipt/Izrは電極表面の汚染度を示し、この値が大きいほど白金表面が汚染されていないことを示す。即ち、Ipt/Izr≧1の場合、電極表面に酸化物や水酸化物などの反応物の生成や、焼成炉中の不純物の白金表面への析出が少なく、その結果、ガス応答性が良好となるが、逆にこの値が1より小さくなると白金表面の汚染度が高くなりガス応答性が悪くなる。強度比率Ipt/Izrの値としては、特にIpt/Izr≧1.1が好ましい。
【0033】
強度比率Ipt/Izrは、後述するように、焼成後の電極表面処理や白金電極中に含まれるジルコニア粉末の粒径などによって制御することができる。
【0034】
また、電極3、4には、白金粉末と固体電解質との接合力を高め、応答性に係わる白金族の金属粒子と固体電解質と気体との、いわゆる3相界面の接点を増大させるため、1〜50体積%、特に10〜30体積%の割合でジルコニアを含有することが望ましい。その際、ジルコニアは、白金電極中に平均粒子径が0.1μm以下の微細な粒子として存在していることが3相界面の接点を増大する上で望ましい。
【0035】
また、本発明においては、この開口部7に露出している測定電極4の形状は特に限定するものではなく、また、開口部7は、円筒管2における対照な位置となる2箇所に設けると熱衝撃性を改善することができる。
【0036】
一方、固体電解質からなる円筒管2の内面に形成される基準電極3は、測定電極4の前記開口部7より露出する部分に対向する内面部分に形成されていればよく、測定電極4の露出部面積よりも大きい面積、例えば、円筒管2の内面全面に成されていてもよい。
【0037】
本発明において、円筒管2を形成するのに用いられるセラミック固体電解質は、ZrO2を含有するセラミックスからなり、具体的には、Y2O3およびYb2O3、Sc2O3、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3等の希土類酸化物を酸化物換算で1〜30モル%、好ましくは3〜15モル%含有する部分安定化ZrO2あるいは安定化ZrO2が用いられている。また、焼結性を改善する目的で、上記ZrO2に対して、Al2O3やSiO2を総量で5重量%以下、特に3重量%以下の割合で添加含有させることができる。また、固体電解質中のNaの含有量としては、固体電解質からセラミック絶縁層6への拡散進入を防止する観点からは200ppm以下、特に100ppmが望ましい。
【0038】
一方、発熱体8を埋設するセラミック絶縁層6としては、アルミナおよび/またはマグネシアを含有する酸化物、特に、アルミナ材料、スピネル材料、あるいはアルミナとスピネルとの複合化合物材料が好適に用いられる。この際、セラミック絶縁層6の焼結性を改善する目的で、Si成分を酸化物換算で0.1〜5重量%の範囲で含有させることができる。
【0039】
また、上記セラミック絶縁層6の内部に埋設される発熱体8としては、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウムの群から選ばれる1種の金属、または2種以上の合金からなることが望ましく、特に、セラミック絶縁層6との同時焼結性の点で、そのセラミック絶縁層6の焼成温度よりも融点の高い金属または合金を選択することが望ましい。なお、この発熱体8の厚さは、発熱体を形成する抵抗材料や加熱温度、電流値等によって適宜変わるが、抵抗体を白金によって形成し、導体ペーストの印刷塗布、焼成によって形成した場合には、最大厚みで5〜25μm、特に10〜20μmが最適である。
【0040】
また、発熱体8中には上記の金属の他に焼結防止とセラミック絶縁層6との接着力を高める観点からアルミナ、スピネル、アルミナ/シリカの化合物、フォルステライトあるいは上述の電解質となり得るジルコニア等を体積比率で10〜80%、特に30〜50%の範囲で混合することが望ましい。
【0041】
発熱体8を埋設したセラミック絶縁層6の表面に形成されるセラミック保温層9は、ジルコニアセラミックスからなることが望ましい。このジルコニアからなるセラミック保温層9は、固体電解質とセラミック絶縁層6間の熱膨張差や焼成収縮差等に起因する応力を緩和させ、熱応力をできる限り小さくすることができる。この際、円筒管2と発熱体8の間とセラミック保温層9と発熱体8の間の距離はそれぞれ2μm以上であることが望ましい。
【0042】
本発明の酸素センサにおいては、図1(b)の要部拡大断面図に示すように、開口部7内にて露出している測定電極4の表面に形成される多孔質のセラミック保護層13は、ジルコニア、アルミナ、マグネシアあるいはスピネル等の開気孔率が10〜40%のポーラス体として形成されるが、このセラミック保護層13は、排気ガスによって測定電極4が被毒して出力電圧が低下するのを防止することを目的とし、一般的には理論空燃比センサ(λセンサ)素子として用いる。
【0043】
また、露出した測定電極4の表面に微細な細孔を有するジルコニア、アルミナ、スピネル、マグネシアまたはγ−アルミナの群から選ばれる少なくとも1種のガス拡散律速層として開気孔率が5〜30%の多孔質体として形成することができる。このガス拡散律速層となるセラミック保護層13の表面には、さらに排気ガスの被毒を防止する観点から、前述したアルミナあるいはスピネルからなる前記セラミック保護層13を設けることもできる。この様なヒーター体化酸素センサは、後で述べる広域空燃比センサ(A/Fセンサ)として応用することが可能である。
【0044】
次に、図1の酸素センサの作製方法について図2をもとに説明する。
【0045】
(1)まず図2(a)に示すような両端が開放された中空の円筒管20を作製する。この円筒管20は、ジルコニア等の酸素イオン伝導性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、成形用有機バインダーを添加して押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法により作製される。
【0046】
(2)そして、上記固体電解質からなる円筒管20の内面および外面に、基準電極および測定電極となるパターン21、22を例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、スクリーン印刷、パット印刷、ロール転写等で形成する。この時、円筒管20内面への基準電極パターン22の印刷は、導体ペーストを充填して排出して、内面全面に塗布形成することが効率がよい。
【0047】
この時に用いる白金ペーストとしては、平均粒径が0.5〜4μm、純度が99%以上、特に99.5%以上の白金粉末、あるいは白金と、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種との合金粉末を金属成分とし、さらにジルコニア粉末を含むことが望ましいが、ジルコニア粉末は、比表面積が30(m2/g)以上、特に60(m2/g)以上の超微粒の粉末であることが望ましい。このように、超微粒のジルコニア粉末を配合することによって、結合エネルギーを低減することができる結果、ガス応答性を高めることができる。
【0048】
その後、ジルコニア材料を石油系溶媒に分散したスラリーを円筒管20の先端側の端部より約3mmの深さまで注入し乾燥する。石油系溶媒を用いる理由は、ジルコニア粉末が分散し易く、内径の小さな円筒管20に注入しやすいことに加えて、スラリーの乾燥が早いことである。この際、石油系溶媒の量としては、ジルコニア材料100重量%に対して、石油系溶媒を5〜25重量%含有するスラリーが好ましい。この際、アクリル系のバインダーをスラリーに1〜5重量%添加すると、この先端封止材と円筒管20内壁との接着力が増加する。この後、円筒管先端を円弧などの所定の形状に加工する。このようにしてセンサ素体Aを作製する。
【0049】
(3)次に、図2(b)に示すようなヒータ素体Bを形成する。まず、上述のジルコニア粉末を含有するスラリーを用いて50〜500μm、特に100〜300μmの厚さのセラミック絶縁層6を形成するためのセラミックグリーンシートを作製する。その後、このグリーンシート表面に、アルミナ、スピネル、フォルステライト、ジルコニア、ガラス等のセラミック粉末を用いて、適宜成形用有機バインダーを添加してスラリーを調製し、このスラリーを用いてスクリーン印刷法、パット印刷法、ロール転写法等により印刷した後、その表面に白金などの金属粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷法、パット印刷法、ロール転写法等により印刷して、本発明のリードパターンを含む発熱体パターン24を塗布する。そして、再度、絶縁性スラリーを塗布する。その後、開口部25をパンチングなどによって形成することにより、セラミック保温層9となるジルコニア層23と発熱体パターン24を埋設したセラミック絶縁層26との未焼成の積層体からなるヒータ素体Bが得られる。
【0050】
(4)次に、図2(c)に示すように、上記円筒状のセンサ素体Aの表面に、ヒータ素体Bを巻き付けて円筒状積層体を作製する。この際、ヒータ素体Bをセンサ素体Aに巻き付けるには、ヒータ素体Bとセンサ素体Aとの間にアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させて接着させたり、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することができる。この時、巻き付けされたヒータ素体Bの合わせ目は、焼成時の収縮を考慮し、シート端部同志を重ねるか、あるいは所定の間隔をおいて接着してもよい。また、円筒管の先端とヒータ素体Bの巻き付け位置は、焼成後0.5〜2mmになるように調整する。
【0051】
(5)そして、上記の円筒状積層体を、それぞれの構成要素が同時に焼成可能な温度で焼成することにより、センサ素体Aとヒータ素体Bとを一体化することができる。焼成は、例えば、アルゴンガス等の不活性雰囲気中あるいは大気中1300〜1700℃で1〜10時間程度焼成することが適当である。
【0052】
また、本発明によれば、上記の焼成によって白金電極の表面に酸化物や水酸化物が生成されるのを防止するために、上記焼成の際に還元性ガスに酸素センサを暴露することも出来るが、ジルコニア固体電解質が還元されたり、固体電解質中の正方晶が単斜晶に変態し、強度が低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0053】
そこで、本発明によれば、焼成後の酸素センサに対して、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に1〜60分浸漬して電極表面処理を行うことが望ましい。この際、硝酸と塩酸の比率としては3:1〜1:1の範囲が優れる。また、溶液の温度としては、40℃以上、特に50℃以上が好ましい。
【0054】
他の方法として、前記測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに上記のように前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことがさらに好ましい。この際、還元ガス雰囲気の条件としては、600℃以上の温度で、酸素分圧が10−12(atm)以下がさらに好ましい。
【0055】
なお、還元ガス雰囲気中で熱処理は酸素センサに通電を行い、自己発熱させて、400℃以上、特に600℃の温度で酸素分圧が10−10(atm)以下のガス雰囲気、例えばH2/N2やCO/CO2雰囲気に、1分から1時間程度暴露すればよい。
【0056】
また、上記の製造方法では、基準電極パターン22および測定電極パターン21を円筒管20形成時に塗布したが、これらの電極の形成は、電極を有しない円筒管20の表面にヒータ素体Bを巻き付けて円筒状積層体を作製した後、円筒状積層体に対して、電極ペーストをスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写法あるいは浸漬法によって円筒管20の内面およびヒータ素体Bにおける開口部25内の円筒管20表面に塗布するか、またはスパッタ法やメッキ法にて形成することもできる。
【0057】
さらに、図1のセラミック保護層13を形成するには、焼成後に、アルミナ、スピネル、ジルコニア等の粉末をゾルゲル法、スラリーディップ法、印刷法などによって印刷塗布し、焼き付け処理したり、上記セラミックスをスパッタ法あるいはプラズマ溶射法により被覆して形成するか、または、円筒状積層体を作製する際に予めセラミック保護層13を形成するスラリーを塗布した後に、同時に焼成し形成することも可能である。
【0058】
上記の製造方法によれば、1回の焼成工程でセンサ、ヒータ、セラミック部材の一体物を作製することができ、別途接合工程を必要としないことから、製造歩留りや製造コストの低減を図ることができるために非常に好ましい。
【0059】
本発明の酸素センサは、図1の構造のものに限定されるものでなく、種々の酸素センサに適用することができる。そこで、図3には、いわゆるA/Fセンサの例についてその(a)概略斜視図と、(b)B−B断面図を示した。
【0060】
このヒータ一体型空燃比センサは、固体電解質からなり一端が封止された円筒管30の外側に、空間31を介して、さらに拡散孔32aを有する固体電解質層32を設け、前記円筒管30の内外面に基準電極33および測定電極34からなる第1の電極対を形成すると同時に、空間31を介して形成した固体電解質層32の内外面に内側電極35、外側電極36からなる第2の電極対を形成したものである。そして、これらの検知部の周囲に発熱体37を埋設したセラミック絶縁層38を配置した構造からなる。この空燃比センサにおいては、第2の電極35、36間に電流を流し、空間31内の酸素濃度が一定になるように第1の電極33、34で検知しながら空間31内に酸素ガスを流入させたり、あるいは排出させたりして、排気ガス中の空燃比を測定するものである。
【0061】
かかるA/Fセンサにおいても、図1の酸素センサと同様に、光電子分光分析法により測定される前記測定電極34の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrを1以上とすることによって活性度を高め、その結果ポンピング電流値を安定化させることができる。
【0062】
また、本発明の酸素センサは、上記図1、図3に示したような円筒形状のみならず、平板状の酸素センサにおける端子構造に対しても適用できる。そこで、図4に平板状の酸素センサを示した。(a)は概略斜視図、(b)はC−C断面図である。この酸素センサ41は、図上から検知部、空気導入孔、ヒータ部が積層された構造となっている。固体電解質基体42の外面に測定電極43、大気導入孔44側の内面には基準電極45が形成されている。
【0063】
そして、測定電極43は固体電解質基体42の外面に形成されたリード部46を経由して同じく固体電解質基体42の外面に形成された端子部47、47に接続されている。また、空気導入孔44内壁に形成された基準電極45は端子部47の真下に引き出され、垂直導体(図示せず)によって端子部47に接続され、これらの端子部47には、本発明に従い、ロウ材により金属部材48がロウ付けされる。
【0064】
一方、固体電解質基体42の大気導入孔44を挟んで検知部と対向する部分には、アルミナ等のセラミックスからなる絶縁層49内に発熱体50が内蔵されている。発熱体50は、図4(a)に示すようにリード部51を経由してヒータ用端子部(図示せず)に接続されており、この端子部には、金属部材52が本発明に従って接続される。
【0065】
かかる平板状の酸素センサにおいても、光電子分光分析法により測定される測定電極43の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrが1以上であることによって活性度を高めることができる。
【0066】
また、かかる平板型酸素センサ41を製造する方法としては、図5の分解斜視図に示すように、まず、ジルコニアのグリーンシート60、65を作製する。グリーンシート60は、ジルコニアの酸素イオン導電性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、適宜、成型用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス成型などの周知の方法により作成される。次にグリーンシート60の両面に、それぞれ測定電極43および基準電極45となるパターン61やリードパターン62などを例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で印刷形成する。なお、この時に測定電極43となるパターンの表面に、セラミック絶縁層を形成するための多孔質スラリーを印刷塗布形成してもよい。
【0067】
次に、上記パターン61、62を印刷したグリーンシート60に対して、大気導入孔63を形成したグリーンシート64、グリーンシート65をアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させるか、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することによりセンサ積層体を作製する。
【0068】
一方、アルミナ組成物に、適宜、成形用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法によりアルミナグリーンシート66、67を作製する。そして、グリーンシート67の表面に、W、Mo、Reの群から選ばれる少なくとも1種を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で発熱体50のパターン68や、リードパターン69に印刷塗布した後、アクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させてグリーンシート66、67をジルコニアグリーンシート70とともに圧力を加えながら機械的に接着してヒータ積層体を作製し、前記センサ積層体とともに積層一体化する。その後、発熱体50の酸化を防止するために水素等と含有するフォーミング等の還元ガス雰囲気中にて、1400℃〜1600℃の温度範囲で5〜10時間焼成することによって酸素センサを作製することができる。
【0069】
本発明は、かかる製造方法においても、前述したように、焼成後の酸素センサに対して、測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に1〜60分浸漬して電極表面処理を行うか、または測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに上記のように測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことによって、測定電極や基準電極の表面を浄化することができ、活性度を高めることができる。
【0070】
以上、本発明はジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に白金族金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極と基準電極を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定した前記測定電極の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率が、Ipt/Izr≧1を満足することを特徴とする酸素センサであれば、いかなる構造を有する酸素センサも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0071】
【実施例】
まず、5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末にポリビニルアルコール溶液を添加して坏土を作製し、押出成形により焼結後外径が約4mm、内径が2mmになるように一端が封じた円筒状成形体を作製した。
【0072】
また、5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末にポリビニルアルコール溶液を加えてスラリーを作製し、厚みが約300μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシートに前記測定電極の形状と一致する長方形状の種々の大きさを有する開口部をパンチングによってそれぞれ開けた。
【0073】
その後、開口部以外の部分にアルミナ粉末を焼成後の厚みが約20μmとなるように塗布した後、開口部の周囲に白金粉末を含む導体ペーストを用いて焼成後の厚みが10μmになるように発熱体パターンをスクリーン印刷し、さらにその上にアルミナ粉末を焼成後の厚みが20μmとなるように塗布して、アルミナ中に白金の発熱体を埋設したヒータ素体を作製した。
【0074】
そして、上記の円筒状成形体の表面に、接着剤としてアクリル系樹脂を用いて上記ヒータ素体を巻き付け円筒状積層体を作製した。
【0075】
一方、BET比表面積が約30〜60(m2/g)の8モル%Y2O3含有のジルコニア超粉末と、平均粒径が約1μmで純度が99.7%の白金粉末を三本ロールを用いて、圧粉しながら約24時間混合を行いジルコニア粉末を白金結晶粒子内に含有させた白金ペーストを調製した。なお、白金とジルコニア粉末との比率は、体積比で60:40と80:20とした。
【0076】
そして、この白金ペーストを円筒状積層体の外面の所定の位置に塗布し、測定電極を形成するととともに、円筒状成形体の内部全面にも同様な白金ペーストを塗布して基準電極を形成した。なお、測定電極および基準電極の厚みは焼成後に約5μmとなるように調整した。
【0077】
その後、この円筒状積層体を大気中にて1500℃で1時間焼成した。また、上記の大気中で焼成した円筒状焼結体を300℃〜1000℃の温度範囲において、0.1〜24時間、H2/O2/N2の混合ガス中に暴露し、測定電極の還元処理を行った。この時の酸素分圧を合わせて表1に示した。また、一部の試料については、硝酸と塩酸が1:1の水溶液中(40〜50℃の温度)に0.1〜0.5時間浸漬し、電極の化学処理を行った。
【0078】
この後、それぞれの白金電極について、光電子分光分析法(ESCA)によりX線源としてモノクロAlKα線を用いて白金のPt4fナロースペクトル強度とジルコニアのZr3dナロースペクトル強度の強度比率Ipt/Izrを測定した。この際、分析視野は200μm2とした。
【0079】
また、開口部内の測定電極の表面に、プラズマ溶射によりスピネルからなる気孔率が約30%のセラミック保護層を約100μmの厚みで形成して図1に示すような理論空燃比センサを作製した。
【0080】
作製した酸素センサ素子について、600℃においてCO/CO2/H2/N2,C3H8からなる混合ガスを用い空燃比を14から15に変化させると、センサ素子の起電力が図6に示すように変化する。応答時間は、図6に示すように空燃比が15の時の起電力に対して、起電力が60%まで変化した時の時間tをガス応答時間とした。この際、比較のため市販の平板状センサについても同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、熱処理および化学処理のない試料No.2および熱処理条件が400℃以下の試料No.3および試料No.13では、強度比率Ipt/Izrが1より小さくなり、ガス応答性が悪いことが分かる。また、化学処理温度が30℃と低い試料No.5でも強度比率Ipt/Izrが1より小さくなり、ガス応答性が悪かった。それに対して、400℃以上の還元ガス雰囲気中で熱処理された本発明の試料、および40℃以上の硝酸と塩酸の溶液中で化学処理した試料は、いずれも150ms以下の優れたガス応答性を示した。また、熱処理と化学処理を併用した試料は、特に優れたガス応答性を示した。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の酸素センサによれば、光電子分光分析法により白金電極表面の光電子分光分析法により測定される測定電極の白金の強度I(pt)とジルコニアの強度I(zr)の強度比率I(pt)/I(zr)を1以上とすることによって、ガス応答性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒータ一体型酸素センサの一例を説明するための(a)概略斜視図と、(b)A−A断面図である。
【図2】本発明の酸素センサの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図3】本発明の酸素センサの他の例を説明するための(a)概略斜視図と、(b)B−B断面図である。
【図4】本発明の酸素センサの他の例として平板状酸素センサを説明するための(a)概略斜視図と、(b)C−C断面図である。
【図5】図4の酸素センサの製造方法の一例を説明するための概略分解斜視図である。
【図6】実施例におけるガス応答時間の測定方法を説明するためのグラフを示す。
【図7】従来のヒータ一体型の円筒型酸素センサの概略図である。
【符号の説明】
1・・・酸素センサ
2・・・円筒管(固体電解質基体)
3・・・基準電極
4・・・測定電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の内燃機関における空気と燃料の比率を制御するための酸素センサに関しガス応答性に優れた酸素センサとその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、自動車等の内燃機関においては、排出ガス中の酸素濃度を検出して、その検出値に基づいて内燃機関に供給する空気および燃料供給量を制御することにより、内燃機関からの有害物質、例えばCO、HC、NOxを低減させる方法が採用されている。
【0003】
この酸素センサとして、主として酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主分とする固体電解質からなり、一端が封止された円筒管の外面および内面にそれぞれ一対の電極層が形成された固体電解質型の酸素センサが用いられている。この酸素センサの代表的なものとしては、図7に示すように、ZrO2固体電解質からなり、先端が封止された円筒管71の内面には、センサ部として白金からなり空気などの基準ガスと接触する基準電極72が、また円筒管71の外面には排気ガスなどの被測定ガスと接触される測定電極73が形成されている。また、測定電極73の表面には、セラミック多孔質層74が形成されている。
【0004】
このような酸素センサにおいて、一般に、空気と燃料の比率が1付近の制御に用いられている、いわゆる理論空燃比センサ(λセンサ)としては、測定電極73の表面に、保護層としてセラミック多孔質層74が設けられており、所定温度で円筒管71両側に発生する酸素濃度差を検出し、エンジン吸気系の空燃比の制御が行われている。
【0005】
一方、広範囲の空燃比を制御するために用いられている、いわゆる広域空燃比センサ(A/Fセンサ)は、測定電極73の表面に微細な細孔を有するガス拡散律速層としてセラミック多孔質層74を設け、固体電解質からなる円筒管71に一対の電極72、73を通じて印加電圧を加え、その際得られる限界電流値を測定して希薄燃焼領域の空燃比を制御するものである。
【0006】
上記理論空燃比センサおよび広域空燃比センサともセンサ部を約700℃付近の作動温度までに加熱する必要があり、そのために、円筒管71の内側には、センサ部を作動温度まで加熱するため棒状ヒータ75が挿入されている。
【0007】
しかしながら、近年排気ガス規制の強化傾向が強まり、エンジン始動直後からのCO、HC、NOxの検出が必要になってきた。このような要求に対して、上述のように、ヒータ75を円筒管71内に挿入してなる間接加熱方式の円筒型酸素センサでは、センサ部が活性化温度に達するまでに要する時間(以下、活性化時間という。)が遅いために排気ガス規制に充分対応できないという問題があった。
【0008】
その問題を回避する方法として、固体電解質からなる円筒管の内面および外面に基準電極、測定電極が設けられ、測定電極の表面に、ガス透過性の多孔性の絶縁層を設け、さらにその中のガス透過性の低いガス非透過層中に発熱体を設けた円筒型のヒータ一体型酸素センサが提案されている。(例えば、特許文献2参照)に記載されている。
【0009】
一方、本出願人は、先にセラミック固体電解質からなり一端が封止された円筒管の内面および外面に基準電極および測定電極を形成してなるセンサと、測定電極が露出するように前記円筒管の外面に測定電極形成部に開口を設けたセラミック絶縁層を積層形成し、測定電極がその開口部から露出するようにし、その少なくとも露出している前記測定電極の周囲のセラミック絶縁層内に発熱体を埋設してなる急速昇温性に優れたヒータ一体型酸素センサを提案した(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
[特許文献1]
特開2002−131269号公報
[特許文献2]
特開平10−206380号公報
[特許文献3]
特開平13−13101号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2、3に記載される酸素センサにおいても、従来の間接加熱方式と異なり、直接加熱方式であるために急速昇温が可能ではあるが、固体電解質と白金電極とをヒータとともに高温で同時焼成して形成すると、ガス応答性が低下しやすくなるという問題があった。
【0012】
この問題について種々検討したところ、固体電解質と電極との同時焼成時に電極における白金表面に、気相中の酸素または水蒸気との反応による白金の酸化物や、また焼成炉の断熱材等から蒸発した不純物成分が付着しており、これら白金酸化物や、焼成炉内の不純物が、白金の活性を低下させていることをことがわかった。
【0013】
従って、本発明は、上記のような問題を解消し、ガス応答性の優れた白金電極を有する酸素センサとその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題に対して検討を重ねた結果、同時焼成後の電極表面に対して種々の処理を施すことによって電極表面を浄化できること、また、光電子分光分析法により測定した所定の強度比を特定範囲に制御することで白金電極の活性度を高めガス応答性を高めることができることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は、ジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に白金金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極と基準電極を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定される前記測定電極の白金の強度I(pt)とジルコニアの強度I(zr)の強度比率I(pt)/I(zr)が1以上であることを特徴とするものである。
【0016】
この際、本発明の酸素センサにおいては、前記ジルコニア固体電解質基体と、前記測定電極および基準電極とが同時焼成して形成される場合に好適である。また、本発明は、発熱体を内蔵したセラミック絶縁層と一体化されたヒータを一体的に付与した酸素センサにおいて、ヒータによる急速昇温する場合においても優れた耐久性を有する。
【0017】
そして、本発明の酸素センサの製造方法は、未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とするものである。
【0018】
また、他の方法としては、未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の低い還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに40℃以上の硝酸と硫酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とするものである。
【0019】
この際、前記白金族金属とジルコニアから構成されるペーストは、BET比表面積が30(m2/g)以上のジルコニア粉末を含有することが望ましい。
【0020】
また、本発明の酸素センサは、発熱体を内蔵したセラミック絶縁層と一体化させることで、ヒータによるジルコニアセル部の加熱効率を高め、急速昇温を行うことができ、その結果、センサ活性化時間を短縮することができる。
【0021】
なお、本発明は、前記固体電解質基体が、平板状、円筒状のいずれのセンサにおいても適用できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の酸素センサの一例を示す図面を参照しながら本発明を説明する。図1は、酸素センサの一例を示す概略斜視図(a)と、そのA−A断面図(b)である。但し、(a)では説明の便宜上、セラミック保護層13を省略した。
【0023】
図1の酸素センサ1は、酸素イオン伝導性を有するジルコニア等のセラミック固体電解質からなり、先端が封止された円筒管2の内面に、第1の電極として、空気などの基準ガスと接触される基準電極3が被着形成され、また、円筒管2を挟んで基準電極3と対向する位置に第2の電極として、排気ガスなどの被測定ガスと接触する測定電極4が被着形成されている。そして、基準電極3、ジルコニア固体電解質からなる円筒管2および測定電極4によってセンサ部を形成している。
【0024】
そして、先端が封止された円筒管2の外面には、Al2O3などのセラミック絶縁層6が被着形成されており、そのセラミック絶縁層6には、測定電極4の一部または全部が露出するように開口部7が形成されている。
【0025】
また、上記開口部7の周囲のセラミック絶縁層6中にはセンサ部を加熱するための白金からなる発熱体8が埋設されている。また、セラミック絶縁層6の表面には、さらに発熱体8による加熱効率を高めるために、Al2O3等からなるセラミック保温層9が積層形成されている。
【0026】
円筒管2の内面に形成された基準電極3は、円筒管2の内面および開口側の端面を経由して円筒管2の外表面に設けたセンサ用端子部11aに接続されている。一方、円筒管2の外面に形成された測定電極4は、セラミック絶縁層6およびセラミック保温層9に形成された開口部7の端面を経由してセラミック保温層9の表面に形成されたリード部10に接続され、さらにセラミック保温層9の表面に形成されたセンサ用端子部11bと接続されている。なお、円筒管2において上記端面に存在するエッジ部は、C面取りされ、エッジ部で生じる電気的接続の不良を回避している。
【0027】
また、セラミック保温層9の表面に形成されたリード部10の表面にはさらにZrO2等からなるリード保護層12が形成されている。このリード保護層12によって、リード部10を、例えば素子のアッセンブル時の引っかき、あるいは素子の落下時の異物との衝突等の物理的な破壊から保護することができる。このリード保護層12は固体電解質と同じZrO2で構成することが固体電解質との熱膨張差による応力の発生を防止する上で好ましい。
【0028】
さらに、図1(b)に示すように、少なくとも検知部の表面も、多孔質のセラミック保護層13によって被覆されている。
【0029】
また、センサ用端子部11a、11bには、外部回路との接続のための金属部材14がそれぞれロウ材によってロウ付け固定されている。これによって、検知部において発生した検知データをリード部10、センサ用端子部11a、11bおよび金属部材14を経由して外部回路に接続される。
【0030】
一方、セラミック絶縁層6内に形成された発熱体8は、同じくセラミック絶縁層6内に形成されたリード部16と、セラミック絶縁層6およびセラミック保温層9を貫通して形成された貫通導体(図示せず)によって、セラミック保温層9の外表面に形成されたヒータ用端子部18と電気的に接続されている。そして、端子部18上には発熱用外部電源と接続するための金属部材19がロウ材等により固定され、これらを通じて発熱体8に電流を通ずることにより、発熱体8が加熱され、測定電極4、円筒管2および基準電極3からなる検知部を所定の温度に急速昇温し、センサ部のガス応答性を高めることができる。
【0031】
さらに、酸素センサの全体の大きさとしては、外径が3〜6mm、特に3〜4mmの円筒体によって形成することが、消費電力を低減するとともに、センシング性能を高めることができる。
【0032】
本発明の酸素センサによれば、円筒管2の内面および外面に被着形成される基準電極3、測定電極4は、いずれも白金、あるいは白金と、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種との合金からなるものであるが、本発明によれば、このような白金族の電極を光電子分光分析法により測定したPt4fナロースペクトル強度IptとジルコニアのZr3dナロースペクトル強度Izrの強度比率Ipt/IzrがIpt/Izr≧1を満足することを特徴としている。強度比率Ipt/Izrは電極表面の汚染度を示し、この値が大きいほど白金表面が汚染されていないことを示す。即ち、Ipt/Izr≧1の場合、電極表面に酸化物や水酸化物などの反応物の生成や、焼成炉中の不純物の白金表面への析出が少なく、その結果、ガス応答性が良好となるが、逆にこの値が1より小さくなると白金表面の汚染度が高くなりガス応答性が悪くなる。強度比率Ipt/Izrの値としては、特にIpt/Izr≧1.1が好ましい。
【0033】
強度比率Ipt/Izrは、後述するように、焼成後の電極表面処理や白金電極中に含まれるジルコニア粉末の粒径などによって制御することができる。
【0034】
また、電極3、4には、白金粉末と固体電解質との接合力を高め、応答性に係わる白金族の金属粒子と固体電解質と気体との、いわゆる3相界面の接点を増大させるため、1〜50体積%、特に10〜30体積%の割合でジルコニアを含有することが望ましい。その際、ジルコニアは、白金電極中に平均粒子径が0.1μm以下の微細な粒子として存在していることが3相界面の接点を増大する上で望ましい。
【0035】
また、本発明においては、この開口部7に露出している測定電極4の形状は特に限定するものではなく、また、開口部7は、円筒管2における対照な位置となる2箇所に設けると熱衝撃性を改善することができる。
【0036】
一方、固体電解質からなる円筒管2の内面に形成される基準電極3は、測定電極4の前記開口部7より露出する部分に対向する内面部分に形成されていればよく、測定電極4の露出部面積よりも大きい面積、例えば、円筒管2の内面全面に成されていてもよい。
【0037】
本発明において、円筒管2を形成するのに用いられるセラミック固体電解質は、ZrO2を含有するセラミックスからなり、具体的には、Y2O3およびYb2O3、Sc2O3、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3等の希土類酸化物を酸化物換算で1〜30モル%、好ましくは3〜15モル%含有する部分安定化ZrO2あるいは安定化ZrO2が用いられている。また、焼結性を改善する目的で、上記ZrO2に対して、Al2O3やSiO2を総量で5重量%以下、特に3重量%以下の割合で添加含有させることができる。また、固体電解質中のNaの含有量としては、固体電解質からセラミック絶縁層6への拡散進入を防止する観点からは200ppm以下、特に100ppmが望ましい。
【0038】
一方、発熱体8を埋設するセラミック絶縁層6としては、アルミナおよび/またはマグネシアを含有する酸化物、特に、アルミナ材料、スピネル材料、あるいはアルミナとスピネルとの複合化合物材料が好適に用いられる。この際、セラミック絶縁層6の焼結性を改善する目的で、Si成分を酸化物換算で0.1〜5重量%の範囲で含有させることができる。
【0039】
また、上記セラミック絶縁層6の内部に埋設される発熱体8としては、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウムの群から選ばれる1種の金属、または2種以上の合金からなることが望ましく、特に、セラミック絶縁層6との同時焼結性の点で、そのセラミック絶縁層6の焼成温度よりも融点の高い金属または合金を選択することが望ましい。なお、この発熱体8の厚さは、発熱体を形成する抵抗材料や加熱温度、電流値等によって適宜変わるが、抵抗体を白金によって形成し、導体ペーストの印刷塗布、焼成によって形成した場合には、最大厚みで5〜25μm、特に10〜20μmが最適である。
【0040】
また、発熱体8中には上記の金属の他に焼結防止とセラミック絶縁層6との接着力を高める観点からアルミナ、スピネル、アルミナ/シリカの化合物、フォルステライトあるいは上述の電解質となり得るジルコニア等を体積比率で10〜80%、特に30〜50%の範囲で混合することが望ましい。
【0041】
発熱体8を埋設したセラミック絶縁層6の表面に形成されるセラミック保温層9は、ジルコニアセラミックスからなることが望ましい。このジルコニアからなるセラミック保温層9は、固体電解質とセラミック絶縁層6間の熱膨張差や焼成収縮差等に起因する応力を緩和させ、熱応力をできる限り小さくすることができる。この際、円筒管2と発熱体8の間とセラミック保温層9と発熱体8の間の距離はそれぞれ2μm以上であることが望ましい。
【0042】
本発明の酸素センサにおいては、図1(b)の要部拡大断面図に示すように、開口部7内にて露出している測定電極4の表面に形成される多孔質のセラミック保護層13は、ジルコニア、アルミナ、マグネシアあるいはスピネル等の開気孔率が10〜40%のポーラス体として形成されるが、このセラミック保護層13は、排気ガスによって測定電極4が被毒して出力電圧が低下するのを防止することを目的とし、一般的には理論空燃比センサ(λセンサ)素子として用いる。
【0043】
また、露出した測定電極4の表面に微細な細孔を有するジルコニア、アルミナ、スピネル、マグネシアまたはγ−アルミナの群から選ばれる少なくとも1種のガス拡散律速層として開気孔率が5〜30%の多孔質体として形成することができる。このガス拡散律速層となるセラミック保護層13の表面には、さらに排気ガスの被毒を防止する観点から、前述したアルミナあるいはスピネルからなる前記セラミック保護層13を設けることもできる。この様なヒーター体化酸素センサは、後で述べる広域空燃比センサ(A/Fセンサ)として応用することが可能である。
【0044】
次に、図1の酸素センサの作製方法について図2をもとに説明する。
【0045】
(1)まず図2(a)に示すような両端が開放された中空の円筒管20を作製する。この円筒管20は、ジルコニア等の酸素イオン伝導性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、成形用有機バインダーを添加して押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法により作製される。
【0046】
(2)そして、上記固体電解質からなる円筒管20の内面および外面に、基準電極および測定電極となるパターン21、22を例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、スクリーン印刷、パット印刷、ロール転写等で形成する。この時、円筒管20内面への基準電極パターン22の印刷は、導体ペーストを充填して排出して、内面全面に塗布形成することが効率がよい。
【0047】
この時に用いる白金ペーストとしては、平均粒径が0.5〜4μm、純度が99%以上、特に99.5%以上の白金粉末、あるいは白金と、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種との合金粉末を金属成分とし、さらにジルコニア粉末を含むことが望ましいが、ジルコニア粉末は、比表面積が30(m2/g)以上、特に60(m2/g)以上の超微粒の粉末であることが望ましい。このように、超微粒のジルコニア粉末を配合することによって、結合エネルギーを低減することができる結果、ガス応答性を高めることができる。
【0048】
その後、ジルコニア材料を石油系溶媒に分散したスラリーを円筒管20の先端側の端部より約3mmの深さまで注入し乾燥する。石油系溶媒を用いる理由は、ジルコニア粉末が分散し易く、内径の小さな円筒管20に注入しやすいことに加えて、スラリーの乾燥が早いことである。この際、石油系溶媒の量としては、ジルコニア材料100重量%に対して、石油系溶媒を5〜25重量%含有するスラリーが好ましい。この際、アクリル系のバインダーをスラリーに1〜5重量%添加すると、この先端封止材と円筒管20内壁との接着力が増加する。この後、円筒管先端を円弧などの所定の形状に加工する。このようにしてセンサ素体Aを作製する。
【0049】
(3)次に、図2(b)に示すようなヒータ素体Bを形成する。まず、上述のジルコニア粉末を含有するスラリーを用いて50〜500μm、特に100〜300μmの厚さのセラミック絶縁層6を形成するためのセラミックグリーンシートを作製する。その後、このグリーンシート表面に、アルミナ、スピネル、フォルステライト、ジルコニア、ガラス等のセラミック粉末を用いて、適宜成形用有機バインダーを添加してスラリーを調製し、このスラリーを用いてスクリーン印刷法、パット印刷法、ロール転写法等により印刷した後、その表面に白金などの金属粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷法、パット印刷法、ロール転写法等により印刷して、本発明のリードパターンを含む発熱体パターン24を塗布する。そして、再度、絶縁性スラリーを塗布する。その後、開口部25をパンチングなどによって形成することにより、セラミック保温層9となるジルコニア層23と発熱体パターン24を埋設したセラミック絶縁層26との未焼成の積層体からなるヒータ素体Bが得られる。
【0050】
(4)次に、図2(c)に示すように、上記円筒状のセンサ素体Aの表面に、ヒータ素体Bを巻き付けて円筒状積層体を作製する。この際、ヒータ素体Bをセンサ素体Aに巻き付けるには、ヒータ素体Bとセンサ素体Aとの間にアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させて接着させたり、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することができる。この時、巻き付けされたヒータ素体Bの合わせ目は、焼成時の収縮を考慮し、シート端部同志を重ねるか、あるいは所定の間隔をおいて接着してもよい。また、円筒管の先端とヒータ素体Bの巻き付け位置は、焼成後0.5〜2mmになるように調整する。
【0051】
(5)そして、上記の円筒状積層体を、それぞれの構成要素が同時に焼成可能な温度で焼成することにより、センサ素体Aとヒータ素体Bとを一体化することができる。焼成は、例えば、アルゴンガス等の不活性雰囲気中あるいは大気中1300〜1700℃で1〜10時間程度焼成することが適当である。
【0052】
また、本発明によれば、上記の焼成によって白金電極の表面に酸化物や水酸化物が生成されるのを防止するために、上記焼成の際に還元性ガスに酸素センサを暴露することも出来るが、ジルコニア固体電解質が還元されたり、固体電解質中の正方晶が単斜晶に変態し、強度が低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0053】
そこで、本発明によれば、焼成後の酸素センサに対して、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に1〜60分浸漬して電極表面処理を行うことが望ましい。この際、硝酸と塩酸の比率としては3:1〜1:1の範囲が優れる。また、溶液の温度としては、40℃以上、特に50℃以上が好ましい。
【0054】
他の方法として、前記測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに上記のように前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことがさらに好ましい。この際、還元ガス雰囲気の条件としては、600℃以上の温度で、酸素分圧が10−12(atm)以下がさらに好ましい。
【0055】
なお、還元ガス雰囲気中で熱処理は酸素センサに通電を行い、自己発熱させて、400℃以上、特に600℃の温度で酸素分圧が10−10(atm)以下のガス雰囲気、例えばH2/N2やCO/CO2雰囲気に、1分から1時間程度暴露すればよい。
【0056】
また、上記の製造方法では、基準電極パターン22および測定電極パターン21を円筒管20形成時に塗布したが、これらの電極の形成は、電極を有しない円筒管20の表面にヒータ素体Bを巻き付けて円筒状積層体を作製した後、円筒状積層体に対して、電極ペーストをスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写法あるいは浸漬法によって円筒管20の内面およびヒータ素体Bにおける開口部25内の円筒管20表面に塗布するか、またはスパッタ法やメッキ法にて形成することもできる。
【0057】
さらに、図1のセラミック保護層13を形成するには、焼成後に、アルミナ、スピネル、ジルコニア等の粉末をゾルゲル法、スラリーディップ法、印刷法などによって印刷塗布し、焼き付け処理したり、上記セラミックスをスパッタ法あるいはプラズマ溶射法により被覆して形成するか、または、円筒状積層体を作製する際に予めセラミック保護層13を形成するスラリーを塗布した後に、同時に焼成し形成することも可能である。
【0058】
上記の製造方法によれば、1回の焼成工程でセンサ、ヒータ、セラミック部材の一体物を作製することができ、別途接合工程を必要としないことから、製造歩留りや製造コストの低減を図ることができるために非常に好ましい。
【0059】
本発明の酸素センサは、図1の構造のものに限定されるものでなく、種々の酸素センサに適用することができる。そこで、図3には、いわゆるA/Fセンサの例についてその(a)概略斜視図と、(b)B−B断面図を示した。
【0060】
このヒータ一体型空燃比センサは、固体電解質からなり一端が封止された円筒管30の外側に、空間31を介して、さらに拡散孔32aを有する固体電解質層32を設け、前記円筒管30の内外面に基準電極33および測定電極34からなる第1の電極対を形成すると同時に、空間31を介して形成した固体電解質層32の内外面に内側電極35、外側電極36からなる第2の電極対を形成したものである。そして、これらの検知部の周囲に発熱体37を埋設したセラミック絶縁層38を配置した構造からなる。この空燃比センサにおいては、第2の電極35、36間に電流を流し、空間31内の酸素濃度が一定になるように第1の電極33、34で検知しながら空間31内に酸素ガスを流入させたり、あるいは排出させたりして、排気ガス中の空燃比を測定するものである。
【0061】
かかるA/Fセンサにおいても、図1の酸素センサと同様に、光電子分光分析法により測定される前記測定電極34の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrを1以上とすることによって活性度を高め、その結果ポンピング電流値を安定化させることができる。
【0062】
また、本発明の酸素センサは、上記図1、図3に示したような円筒形状のみならず、平板状の酸素センサにおける端子構造に対しても適用できる。そこで、図4に平板状の酸素センサを示した。(a)は概略斜視図、(b)はC−C断面図である。この酸素センサ41は、図上から検知部、空気導入孔、ヒータ部が積層された構造となっている。固体電解質基体42の外面に測定電極43、大気導入孔44側の内面には基準電極45が形成されている。
【0063】
そして、測定電極43は固体電解質基体42の外面に形成されたリード部46を経由して同じく固体電解質基体42の外面に形成された端子部47、47に接続されている。また、空気導入孔44内壁に形成された基準電極45は端子部47の真下に引き出され、垂直導体(図示せず)によって端子部47に接続され、これらの端子部47には、本発明に従い、ロウ材により金属部材48がロウ付けされる。
【0064】
一方、固体電解質基体42の大気導入孔44を挟んで検知部と対向する部分には、アルミナ等のセラミックスからなる絶縁層49内に発熱体50が内蔵されている。発熱体50は、図4(a)に示すようにリード部51を経由してヒータ用端子部(図示せず)に接続されており、この端子部には、金属部材52が本発明に従って接続される。
【0065】
かかる平板状の酸素センサにおいても、光電子分光分析法により測定される測定電極43の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrが1以上であることによって活性度を高めることができる。
【0066】
また、かかる平板型酸素センサ41を製造する方法としては、図5の分解斜視図に示すように、まず、ジルコニアのグリーンシート60、65を作製する。グリーンシート60は、ジルコニアの酸素イオン導電性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、適宜、成型用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス成型などの周知の方法により作成される。次にグリーンシート60の両面に、それぞれ測定電極43および基準電極45となるパターン61やリードパターン62などを例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で印刷形成する。なお、この時に測定電極43となるパターンの表面に、セラミック絶縁層を形成するための多孔質スラリーを印刷塗布形成してもよい。
【0067】
次に、上記パターン61、62を印刷したグリーンシート60に対して、大気導入孔63を形成したグリーンシート64、グリーンシート65をアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させるか、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することによりセンサ積層体を作製する。
【0068】
一方、アルミナ組成物に、適宜、成形用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法によりアルミナグリーンシート66、67を作製する。そして、グリーンシート67の表面に、W、Mo、Reの群から選ばれる少なくとも1種を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で発熱体50のパターン68や、リードパターン69に印刷塗布した後、アクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させてグリーンシート66、67をジルコニアグリーンシート70とともに圧力を加えながら機械的に接着してヒータ積層体を作製し、前記センサ積層体とともに積層一体化する。その後、発熱体50の酸化を防止するために水素等と含有するフォーミング等の還元ガス雰囲気中にて、1400℃〜1600℃の温度範囲で5〜10時間焼成することによって酸素センサを作製することができる。
【0069】
本発明は、かかる製造方法においても、前述したように、焼成後の酸素センサに対して、測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に1〜60分浸漬して電極表面処理を行うか、または測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに上記のように測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことによって、測定電極や基準電極の表面を浄化することができ、活性度を高めることができる。
【0070】
以上、本発明はジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に白金族金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極と基準電極を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定した前記測定電極の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率が、Ipt/Izr≧1を満足することを特徴とする酸素センサであれば、いかなる構造を有する酸素センサも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0071】
【実施例】
まず、5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末にポリビニルアルコール溶液を添加して坏土を作製し、押出成形により焼結後外径が約4mm、内径が2mmになるように一端が封じた円筒状成形体を作製した。
【0072】
また、5モル%Y2O3含有のジルコニア粉末にポリビニルアルコール溶液を加えてスラリーを作製し、厚みが約300μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシートに前記測定電極の形状と一致する長方形状の種々の大きさを有する開口部をパンチングによってそれぞれ開けた。
【0073】
その後、開口部以外の部分にアルミナ粉末を焼成後の厚みが約20μmとなるように塗布した後、開口部の周囲に白金粉末を含む導体ペーストを用いて焼成後の厚みが10μmになるように発熱体パターンをスクリーン印刷し、さらにその上にアルミナ粉末を焼成後の厚みが20μmとなるように塗布して、アルミナ中に白金の発熱体を埋設したヒータ素体を作製した。
【0074】
そして、上記の円筒状成形体の表面に、接着剤としてアクリル系樹脂を用いて上記ヒータ素体を巻き付け円筒状積層体を作製した。
【0075】
一方、BET比表面積が約30〜60(m2/g)の8モル%Y2O3含有のジルコニア超粉末と、平均粒径が約1μmで純度が99.7%の白金粉末を三本ロールを用いて、圧粉しながら約24時間混合を行いジルコニア粉末を白金結晶粒子内に含有させた白金ペーストを調製した。なお、白金とジルコニア粉末との比率は、体積比で60:40と80:20とした。
【0076】
そして、この白金ペーストを円筒状積層体の外面の所定の位置に塗布し、測定電極を形成するととともに、円筒状成形体の内部全面にも同様な白金ペーストを塗布して基準電極を形成した。なお、測定電極および基準電極の厚みは焼成後に約5μmとなるように調整した。
【0077】
その後、この円筒状積層体を大気中にて1500℃で1時間焼成した。また、上記の大気中で焼成した円筒状焼結体を300℃〜1000℃の温度範囲において、0.1〜24時間、H2/O2/N2の混合ガス中に暴露し、測定電極の還元処理を行った。この時の酸素分圧を合わせて表1に示した。また、一部の試料については、硝酸と塩酸が1:1の水溶液中(40〜50℃の温度)に0.1〜0.5時間浸漬し、電極の化学処理を行った。
【0078】
この後、それぞれの白金電極について、光電子分光分析法(ESCA)によりX線源としてモノクロAlKα線を用いて白金のPt4fナロースペクトル強度とジルコニアのZr3dナロースペクトル強度の強度比率Ipt/Izrを測定した。この際、分析視野は200μm2とした。
【0079】
また、開口部内の測定電極の表面に、プラズマ溶射によりスピネルからなる気孔率が約30%のセラミック保護層を約100μmの厚みで形成して図1に示すような理論空燃比センサを作製した。
【0080】
作製した酸素センサ素子について、600℃においてCO/CO2/H2/N2,C3H8からなる混合ガスを用い空燃比を14から15に変化させると、センサ素子の起電力が図6に示すように変化する。応答時間は、図6に示すように空燃比が15の時の起電力に対して、起電力が60%まで変化した時の時間tをガス応答時間とした。この際、比較のため市販の平板状センサについても同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、熱処理および化学処理のない試料No.2および熱処理条件が400℃以下の試料No.3および試料No.13では、強度比率Ipt/Izrが1より小さくなり、ガス応答性が悪いことが分かる。また、化学処理温度が30℃と低い試料No.5でも強度比率Ipt/Izrが1より小さくなり、ガス応答性が悪かった。それに対して、400℃以上の還元ガス雰囲気中で熱処理された本発明の試料、および40℃以上の硝酸と塩酸の溶液中で化学処理した試料は、いずれも150ms以下の優れたガス応答性を示した。また、熱処理と化学処理を併用した試料は、特に優れたガス応答性を示した。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の酸素センサによれば、光電子分光分析法により白金電極表面の光電子分光分析法により測定される測定電極の白金の強度I(pt)とジルコニアの強度I(zr)の強度比率I(pt)/I(zr)を1以上とすることによって、ガス応答性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒータ一体型酸素センサの一例を説明するための(a)概略斜視図と、(b)A−A断面図である。
【図2】本発明の酸素センサの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図3】本発明の酸素センサの他の例を説明するための(a)概略斜視図と、(b)B−B断面図である。
【図4】本発明の酸素センサの他の例として平板状酸素センサを説明するための(a)概略斜視図と、(b)C−C断面図である。
【図5】図4の酸素センサの製造方法の一例を説明するための概略分解斜視図である。
【図6】実施例におけるガス応答時間の測定方法を説明するためのグラフを示す。
【図7】従来のヒータ一体型の円筒型酸素センサの概略図である。
【符号の説明】
1・・・酸素センサ
2・・・円筒管(固体電解質基体)
3・・・基準電極
4・・・測定電極
Claims (8)
- ジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に白金金属とジルコニア成分から構成される一対の測定電極と基準電極を有する酸素センサにおいて、光電子分光分析法により測定される前記測定電極の白金の強度Iptとジルコニアの強度Izrの強度比率Ipt/Izrが1以上であることを特徴とする酸素センサ。
- 前記ジルコニア固体電解質基体と、前記測定電極および基準電極とが同時焼成して形成されたものである請求項1記載の酸素センサ。
- 発熱体を内蔵したセラミック絶縁層と一体化してなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の酸素センサ。
- 前記固体電解質基体が、平板状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の酸素センサ。
- 前記固体電解質基体が、円筒状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の酸素センサ。
- 未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とする酸素センサの製造方法。
- 未焼成のジルコニア固体電解質基体の少なくとも内外面の対向する位置に、測定電極と基準電極とを形成する箇所に白金族金属とジルコニアから構成されるペーストを塗布した後、同時焼成して酸素センサを作製した後、前記測定電極を400℃以上の温度で、酸素分圧が10−10(atm)以下の低い還元ガス雰囲気中で熱処理した後、さらに前記測定電極を40℃以上の硝酸と塩酸の混合溶液に浸漬して電極表面処理を行うことを特徴とする酸素センサの製造方法。
- 前記ペーストが、BET比表面積が30(m2/g)以上のジルコニア粉末を含有することを特徴とする請求項6または請求項7記載の酸素センサの製造方法。
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2003
- 2003-01-27 JP JP2003018006A patent/JP2004226378A/ja active Pending
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