JP2004225980A - 蒸発器 - Google Patents
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Abstract
【課題】液相の溜まり部の発生を防止して伝熱性能の向上、及び蒸発効率の向上を図る。
【解決手段】複数のチューブ1が積層され、この各チューブ1内にチューブ長手方向L1に沿って平行に配置された2本の直線通路部4、5とこの隣接する直線通路部4、5間を連通する方向変更通路部6とから成る冷媒通路7が設けられ、各直線通路部4、5内に波形インナーフィン8がそれぞれ配置された積層型蒸発器において、方向変更通路部6内にオフセットインナーフィン9が配置され、このオフセットインナーフィン9の両側の端面9cが各インナーフィン8の端面8cにそれぞれ突き合わされている。
【選択図】 図2
【解決手段】複数のチューブ1が積層され、この各チューブ1内にチューブ長手方向L1に沿って平行に配置された2本の直線通路部4、5とこの隣接する直線通路部4、5間を連通する方向変更通路部6とから成る冷媒通路7が設けられ、各直線通路部4、5内に波形インナーフィン8がそれぞれ配置された積層型蒸発器において、方向変更通路部6内にオフセットインナーフィン9が配置され、このオフセットインナーフィン9の両側の端面9cが各インナーフィン8の端面8cにそれぞれ突き合わされている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用エアーコンディショナなどに用いられる、複数のチューブとフィンが積層された積層型の蒸発器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の蒸発器としては、図9〜図11に示すような積層型の蒸発器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この蒸発器50は、図9に示すように、積層された複数のチューブ51と、これらチューブ51同士の間に配置された複数のアウターフィン52と、一端側に配置されたチューブ51に接続された冷媒入口パイプ53と、他端側に配置されたチューブ51に接続された冷媒出口パイプ54とを備えている。
【0003】
各チューブ51は、図10及び図11に示すように、2枚の接合されたチューブプレート51a、51bより構成されている。各チューブ51の一端側には、中央部を境に左右一対のヘッダ室55a、55bが設けられ、各ヘッダ室55a、55bは長円形状の貫通孔56によって開口されている。チューブ51の積層状態では、左右のそれぞれのヘッダ室55a、55bが貫通孔56を介してそれぞれ連通され、例えば左側のヘッダ室55aの集合群に冷媒入口パイプ53が、例えば右側のヘッダ室55bの集合群に冷媒出口パイプ54がそれぞれ接続される。
【0004】
各チューブ51内の一端側より他端側には、チューブ長手方向L1に沿って配置され、中央部を境に左右一対の直線通路部57、58と、チューブ幅方向L2に沿って配置され、2つの直線通路部57、58間を連通する方向変更通路部59とからなるU字状の冷媒通路60が設けられている。一方の直線通路部57の上端側はヘッダ室55aに、他方の直線通路部58の上端側はヘッダ室55bにそれぞれ連通されていると共に、各直線通路部57、58には波形のインナーフィン61がそれぞれ配置されている。
【0005】
方向変更通路部59には、間隔を置いて複数の突起62が突設されている。この各突起62はチューブ幅方向Sに沿って配置され、且つチューブ51の他端側に向かうに従って寸法が長く設定されている。この細長い突起62は、主にチューブ51の耐圧強度の向上と冷媒の流れ規制とを図るために設けられている。
【0006】
次に、積層型蒸発器50の冷媒流れを説明する。冷媒入口パイプ53から流入する冷媒は、各チューブ51のヘッダ室55aに導かれ、各ヘッダ室55aより下方の冷媒通路60にそれぞれ流入される。各冷媒通路60に流入された冷媒は、先ず一方の直線通路部57で、且つインナーフィン61によって仕切られた複数の流路内を分流して下方(図11の矢印aの方向)に向かって流れ、方向変更通路部59に流入する。方向変更通路部59に流入した冷媒は、突起62の間の流路をほぼ水平方向(図11の矢印bの方向)に流れて他方の直線通路部58に導かれる。他方の直線通路部58に流入した冷媒は、インナーフィン61によって仕切られた複数の流路内を分流して上方(図11の矢印cの方向)に向かって流れ、ヘッダ室55bに流入する。ヘッダ室55bに流入した冷媒は、下流に向かう過程で他のチューブ50内を循環して来た冷媒と合流し、合流した冷媒は冷媒出口パイプ54より流出される。
【0007】
また、従来の他の蒸発器としては、図12に示すように、チューブ51の方向変更通路部59に細長い突起ではなく円状や四角形状の突起63を多数設けたものがある。この蒸発器におけるその他の構成は、図9〜図11に示した蒸発器と同様であるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−213532号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9〜図11に示した従来の蒸発器50では、直線通路部57、58内を流れる冷媒は、インナーフィン61によって仕切られた複数の通路内を分流して流れ、インナーフィン61の下端面から方向変更通路部59内に流入する。方向変更通路部59内に流入した冷媒は、複数本の突起62によって仕切られた流路内を流れるが、インナーフィン61で仕切られた通路内を流れる場合に較べて広い断面積の流路内を流れることになる。そのため、冷媒が突起63に接触したり衝突したりする頻度が非常に低く、冷媒が液相とガス相に分離されやすい。また、インナーフィン61の下端面より流出した冷媒は、方向変更通路部59内を基本的に自由な流路を通って流れることができるため、液相の溜まり部が出来やすいという不都合があった。液相の溜まり部が形成されると、後から続く冷媒流が液相の溜まり部を回避するような流路を通って流れる。このため、液相の溜まり部が形成され易く、液相の溜まり部が形成されると、その領域の伝熱性能が低下して蒸発効率が低下するという問題がある。
【0010】
また、図12に示した蒸発器では、図9〜図11に示した蒸発器に較べて冷媒が突起63に衝突する頻度が多少高くなるが、方向変更通路部59の最下方の両端部分に液相の溜まり部64が形成され易い構造である。そして、図12に示すように、一旦液相の溜まり部64が形成されると、冷媒が液相の溜まり部64を回避するような流路を通って流れることができる。したがって、図9〜図11に示した蒸発器と同様に、継続的な液相の溜まり部64が形成され易く、液相の溜まり部64が形成されると、その領域の伝熱性能が低下して蒸発効率が低下するという同じ問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、液相の溜まり部の発生を防止して伝熱性能の向上、及び蒸発効率の向上を図ることができる積層型の蒸発器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数の偏平なチューブが積層されてなり、チューブ内には、互いに平行をなして逆の方向に冷媒を流通させる少なくとも一対の直線通路部と、これら一対の前記直線通路部の一端部側同士を連通する方向変更通路部とでなる冷媒通路が設けられると共に、各直線通路部内にインナーフィンがそれぞれ配置された蒸発器であって、方向変更通路部内にオフセットインナーフィンが配置され、このオフセットインナーフィンの両側の端面が各インナーフィンの端面にそれぞれ突き合わされていることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の蒸発器であって、オフセットインナーフィンの壁面は、凹凸面であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の蒸発器であって、凹凸面が、壁面に多数の窪み部を設けることによって形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された蒸発器であって、各インナーフィンの方向変更通路部側の端面、及びオフセットインナーフィンの直線通路部側の両方の端面は、共にチューブ長手方向に対し同じ角度の傾斜方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の蒸発器であって、インナーフィン及びオフセットインナーフィンの各端面の傾斜方向の角度は、チューブ長手方向に対し45度であることを特徴とする。
【0017】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、一方の直線通路部内に配置されたインナーフィンの端面より方向変更通路部内に流入する冷媒は、オフセットインナーフィンによって仕切られた複数の流路内にそれぞれ流入し、オフセットインナーフィンのオフセット壁部によって分流・集合を繰り返しつつ流れるため、冷媒がオフセットインナーフィンのオフセット壁部に衝突する頻度が非常に高く、冷媒が液相とガス相に分離されにくい。また、インナーフィンの端面より流出した冷媒は、直ちに後方オフセットインナーフィンによって仕切られた複数の流路のそれぞれに流入し、流入位置によってほぼ特定された流路を通って方向変更通路部内を流れ、オフセットインナーフィンの端面より流出する冷媒は、直ちに他方の直線通路部内のインナーフィンによって仕切られた複数の流路内に流入するため、液相の溜まり部の発生を防止できる。仮に液相の溜まり部が形成された場合には、後続の冷媒流が液相の溜まり部を押し流すため、継続的な液相の溜まり部が発生しない。以上より、この発明によれば、液相の溜まり部が発生せずに伝熱性能の向上、及び蒸発効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、請求項1記載の発明によれば、従来のように方向変更通路部に突起を設ける場合に較べてオフセットインナーフィンの方が方向変更通路部の伝熱面積を増加させることができるため、蒸発量が増加し、この点からも発熱効率の向上になる。
【0019】
さらに、請求項1記載の発明によれば、オフセットインナーフィンが方向変更通路部の耐圧補強材としても機能するため、耐圧性能が維持される。加えて、オフセットインナーフィンによって仕切られた流路内を流れる冷媒は、絶えずオフセット壁部に衝突して冷媒の液相が分断されて微細化され、この微細化によって流動性が高められて蒸発効率の向上が図られる。つまり、液相の溜まり部の発生が防止されるのみならず微細化により、蒸発効率の向上を図ることができる。
【0020】
また、請求項1記載の発明によれば、インナーフィンの端面から流出した冷媒は、直ちにオフセットインナーフィンによって仕切られた各流路内に流入するため、全ての冷媒がオフセットインナーフィンによって仕切られた流路の全体に流入し、方向変更通路部の幅全体を通って流れる。従って、方向変更通路部の全体で熱交換が行われるため、この点からも蒸発効率の向上になる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、オフセットインナーフィンの凹凸面によってオフセットインナーフィンと冷媒との接触面積が増大するため、より蒸発効率の向上が図られる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加え、オフセットインナーフィンの凹凸面を簡単に形成できる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜請求項3の発明の効果に加えて、チューブ長手方向に冷媒を流通させるインナーフィンとチューブ幅方向に冷媒を流通させるオフセットインナーフィンとの間の流路の接続をインナーフィンとオフセットインナーフィンの外形変更(例えばカッテング)のみで対応できる。したがって、インナーフィンやオフセットインナーフィンを製造する工程、及びこれらをチューブ内に組み付ける工程等が複雑にならずに低コストにできる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、インナーフィンの端面とオフセットインナーフィンの端面とが突き合う流路断面積が最大に設定でき、インナーフィンとオフセットインナーフィンとの間の冷媒の流通が円滑になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る蒸発器の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0026】
なお、図1(a)はチューブの正面図、図1(b)はチューブの側面図、図2はチューブ内での冷媒流を説明する説明図、図3は図2のA−A断面図、図4は波形インナーフィンの一部斜視図、図5は図2のB−B断面図、図6は(a)はオフセットインナーフィンの一部斜視図、図6(b)はオフセットインナーフィンの壁面の要部拡大斜視図、図7はチューブ内に配置されたインナーフィン及びオフセットインナーフィンを縦切断した状態を示す拡大図、図8は図7のC部の拡大で、且つ、冷媒の液相が分断されて微細化される状態を説明する図である。
【0027】
この積層型蒸発器は、その概略構造は従来例と略同様であり、積層された複数のチューブ1と、このチューブ1間に配置された図示しない複数のアウターフィンと、一端側に配置されたチューブ1に接続された図示しない冷媒入口パイプと、他端側に配置されたチューブ1に接続された図示しない冷媒出口パイプとを備えている。
【0028】
各チューブ1は、図1及び図2に示すように、2枚の略同じ形状のチューブプレート1a、1bを接合することにより構成されている。各チューブ1の一端側には、中央部を境に左右一対のヘッダ室2a、2bが設けられ、各ヘッダ室2a、2bの両側はほぼ円形状の貫通孔3によって開口されている。チューブ1の積層状態では、左右のそれぞれのヘッダ室2a、2bが各貫通孔3を介してそれぞれ連通され、全チューブ1の例えば左側のヘッダ室2aの集合によってヘッダ入口通路(図示せず)が、全チューブ1の例えば右側のヘッダ室2bの集合によってヘッダ出口通路(図示せず)がそれぞれ形成される。ヘッダ入口通路(図示せず)には冷媒入口パイプ(図示せず)が、ヘッダ出口通路(図示せず)には冷媒出口パイプ(図示せず)がそれぞれ接続される。
【0029】
各チューブ1内には、上端側より下端側に亘ってU字状の冷媒通路7が設けられている。この冷媒通路7は、チューブ長手方向L1に沿って平行に配置され、中央部を境に左右位置に配置された一対の直接通路部4、5と、チューブ幅方向L2に配置され、この2つの直線通路部4、5の下端側を連通する方向変更通路部6とから構成されている。一方の直線通路部4の上端側は一方のヘッダ室2aに、他方の直線通路部5の上端側は他方のヘッダ室2bにそれぞれ連通されている。
【0030】
各直線通路部4、5には、図2及び図3に示すように、波形インナーフィン8がそれぞれ配置されている。波形インナーフィン8は、図2〜図4に示すように、山部8aと谷部8bとが交互に繰り返され、この山部8a及び谷部8bが延びている延設方向F1とチューブ長手方向L1とが平行になるように配置されている。したがって、各直線通路部4、5のチューブ長手方向L1には、波形インナーフィン8によって仕切られた複数のストレート状の通路が形成されている。なお、山部8aと谷部8bは相対的な概念である。また、波形インナーフィン8の方向変更通路側の端面(下端面)8cは、チューブ長手方向L1に対し45度の斜め方向に沿って配置されている。
【0031】
方向変更通路部6には、図2に示すように、正面から見て略三角形状を有するオフセットインナーフィン9が配置されている。オフセットインナーフィン9は、図5及び図6(a)、(b)に示すように、山部9aと谷部9bが交互に繰り返され、且つ山部9a及び谷部9bが延びる延設方向F2の所定間隔毎に山部9aと谷部9bを連結するオフセット壁部9dが所定ピッチpだけオフセット配置されている。そして、オフセットインナーフィン9は、山部9a及び谷部9bがオフセットしつつ延びている延設方向F2とチューブ幅方向L2とが平行になるように方向変更通路部6内に配置されている。したがって、方向変更通路部6のチューブ幅方向L2には、オフセットインナーフィン9によって仕切られ、且つジグザグをなす複数の流路が形成されている。なお、山部9aと谷部9bは相対的な概念である。また、オフセットインナーフィン9は、方向変更通路部6内のほぼ全域に亘って配置されている。
【0032】
オフセットインナーフィン9の直線通路部4、5側の両方の端面9cは、チューブ長手方向L1に対し45度の斜め方向に沿って配置されている。そして、オフセットインナーフィン9の両方の端面9cと各波形インナーフィン8の端面8cとは、それぞれ互いに突き合わさった状態で配置されている。
【0033】
オフセットインナーフィン9は、図6(b)に示すように、その壁面に多数の窪み部11が形成されることによって凹凸面10とされている。窪み部11は、壁面から奥に向かうに従って小径となる略三角錐形状であり、この実施の形態では底辺の直径を0.05mm以下、深さを0.01mm以下に設定されている。なお、図6(a)には壁面の窪み部11が省略してある。
【0034】
次に、上記構成の蒸発器の冷媒流れを説明する。冷媒入口パイプ(図示せず)から流入する冷媒は、ヘッダ入口通路(図示せず)に導かれ、ヘッダ入口通路(図示せず)の各ヘッダ室2aより各チューブ1の冷媒通路7に流入される。冷媒通路7に流入した冷媒は、一方の直線通路4内で、且つ波形インナーフィン8によって仕切られた複数の流路内をそれぞれ下方に向かって流れ、インナーフィン8の下端面8cより方向変更通路部6内に流入する。方向変更通路部6に流入した冷媒は、オフセットインナーフィン8によって仕切られた複数の流路内をほぼ水平方向に流れて他方の直線通路部5に導かれる。他方の直線通路部5に流入した冷媒は、波形インナーフィン8によって仕切られた複数の流路内をそれぞれ上方に向かって流れてヘッダ室2bに流入する。ヘッダ室2bに流入した冷媒は、ヘッダ出口通路(図示せず)で他のチューブ1内を循環して来た冷媒と合流し、合流した冷媒は、冷媒出口パイプ(図示せず)より流出される。
【0035】
上記の冷媒流通過程中にあって、波形インナーフィン8の下端面8cより方向変更通路部6内に流入する冷媒は、オフセットインナーフィン9によって仕切られた複数の流路内にそれぞれ流入し、オフセットインナーフィン9のオフセット壁部9dによって分流・集合を繰り返しつつ流れるため、冷媒がオフセットインナーフィン9のオフセット壁部9dに衝突する頻度が非常に高く、冷媒が液相とガス相に分離されにくい。
【0036】
また、波形インナーフィン8の下端面8cより方向変更通路部6内に流入する冷媒は、直ちにオフセットインナーフィン9によって仕切られた複数の流路のそれぞれに流入し、流入位置によってほぼ特定された流路を通って下流に流れてオフセットインナーフィン9の端面9cより直ちに直線通路部5内のインナーフィン8に流出するため、液相の溜まり部ができ易い箇所が存在しない。仮に液相の溜まり部が形成された場合には、後続の冷媒流が液相の溜まり部を押し流すため、継続的な液相の溜まり部が発生しない。以上の作用により、液相の溜まり部が発生せずに伝熱性能の向上、及び、蒸発効率の向上を図ることができる。
【0037】
また、従来のように方向変更通路部に突起を設けた場合に較べてオフセットインナーフィン9の方が方向変更通路部6の伝熱面積を増加させることができるため、蒸発量が増加し、この点からも発熱効率の向上になる。さらに、オフセットインナーフィン9が方向変更通路部6の耐圧補強材としても機能するため、耐圧性能が維持される。
【0038】
ここで、図8を用いて、オフセットインナーフィン9が冷媒に与える作用を説明する。すなわち、オフセットインナーフィン9によって仕切られた流路内を流れる冷媒は、図8に示すように、絶えずオフセット壁部9dに衝突して冷媒の液相20が分断されて微細化され、この微細化によって流動性が高められて蒸発効率の向上が図られる。つまり、液相20の溜まり部の発生が防止されるのみならず微細化により、蒸発効率の一層の向上を図ることができる。波形インナーフィン8の下端面から流出した冷媒は、直ちにオフセットインナーフィン9によって仕切られた各流路内に流入するため、全ての冷媒がオフセットインナーフィン9によって仕切られた流路の全体に流入し、方向変更通路部6の幅全体を通って流れる。したがって、方向変更通路部6の全体で熱交換が行われるため、この点からも蒸発効率の向上になる。
【0039】
上記実施の形態では、オフセットインナーフィン9の壁面9cは、凹凸面10であるため、オフセットインナーフィン9の凹凸面10によってオフセットインナーフィン9と冷媒との接触面積が増大する。したがって、より蒸発効率の向上が図られる。
【0040】
また、上記実施の形態では、オフセットインナーフィン9の凹凸面10は、壁面に多数の窪み部11を設けることによって形成されているので、オフセットインナーフィン9の凹凸面10を簡単に形成できる。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、各波形インナーフィン8の方向変更通路部6側の端面8c、及びオフセットインナーフィン9の直線通路部4、5側の両方の端面9cは、共にチューブ長手方向L1に対し同じ角度の傾斜方向に沿って配置されているので、チューブ長手方向L1に冷媒を流通させる波形インナーフィン8とチューブ幅方向L2に冷媒を流通させるオフセットインナーフィン9との間の流路の接続を波形インナーフィン8とオフセットインナーフィン9の外形変更(例えばカッテング)のみで対応できる。したがって、波形インナーフィン8やオフセットインナーフィン9を製造する工程、及びこれらをチューブ1内に組み付ける工程等が複雑にならずに、コストを抑えることができる。
【0042】
また、上記実施の形態では、波形インナーフィン8及びオフセットインナーフィン9の端面8c、9cの傾斜方向の角度は、チューブ長手方向L1に対し45度であるので、波形インナーフィン8の端面8cとオフセットインナーフィン9の端面9cとが突き合う流路断面積が最大に設定でき、波形インナーフィン8とオフセットインナーフィン9との間の冷媒の流通がスムーズになる。
【0043】
なお、上記実施の形態では、各直線通路部4、5内には波形インナーフィン8をそれぞれ配置したが、インナーフィンは、冷媒をチューブ長手方向L1に沿って流す複数の流路を形成できる形状であればよく、単純な波形以外のものであってもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、オフセットインナーフィン9の壁面を凹凸面10とするために、壁面に多数の有底の窪み部11を形成しているが、壁面に貫通孔を形成することによって凹凸面10を形成してもよい。しかし、耐圧強度の点では窪み部が好ましく、貫通孔を形成する場合には所定の耐圧強度を維持するように径と個数を考慮することが好ましい。
【0045】
さらに、上記実施の形態では、冷媒通路7は、平行に配置された2本の直線通路部4、5とこれらを連通する方向変更通路部6とから構成されているが、平行に配置された3本以上の直線通路部と隣接する2本の直線通路部同士を連通する2箇所以上の方向変更部とから構成されている場合にも本発明は同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る蒸発器の実施の形態におけるチューブの正面図、(b)はチューブの側面図である。
【図2】本発明に係る蒸発器の実施の形態おけるチューブの内面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明に係る蒸発器の実施の形態における波形インナーフィンの部分斜視図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】(a)は本発明に係る蒸発器の実施の形態におけるオフセットインナーフィンの部分斜視図、(b)はオフセットインナーフィンの壁面の要部拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る蒸発器の実施の形態を示し、チューブ内に配置されたインナーフィン及びオフセットインナーフィンを縦方向に切断した状態を示す断面図である。
【図8】図7のC部において冷媒の液相が分断されて微細化される状態を説明する拡大説明図である。
【図9】従来例の積層型蒸発器の斜視図である。
【図10】従来例のチューブの分解斜視図である。
【図11】従来例のチューブの内面図である。
【図12】他の従来例のチューブの内面図である。
【符号の説明】
1 チューブ
4、5 直線通路部
6 方向変更通路部
7 冷媒通路
8 波形インナーフィン(インナーフィン)
8c 方向変更通路部側の端面
9 オフセットインナーフィン
9c 直線通路部側の端面
10 凹凸面
11 窪み部
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用エアーコンディショナなどに用いられる、複数のチューブとフィンが積層された積層型の蒸発器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の蒸発器としては、図9〜図11に示すような積層型の蒸発器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この蒸発器50は、図9に示すように、積層された複数のチューブ51と、これらチューブ51同士の間に配置された複数のアウターフィン52と、一端側に配置されたチューブ51に接続された冷媒入口パイプ53と、他端側に配置されたチューブ51に接続された冷媒出口パイプ54とを備えている。
【0003】
各チューブ51は、図10及び図11に示すように、2枚の接合されたチューブプレート51a、51bより構成されている。各チューブ51の一端側には、中央部を境に左右一対のヘッダ室55a、55bが設けられ、各ヘッダ室55a、55bは長円形状の貫通孔56によって開口されている。チューブ51の積層状態では、左右のそれぞれのヘッダ室55a、55bが貫通孔56を介してそれぞれ連通され、例えば左側のヘッダ室55aの集合群に冷媒入口パイプ53が、例えば右側のヘッダ室55bの集合群に冷媒出口パイプ54がそれぞれ接続される。
【0004】
各チューブ51内の一端側より他端側には、チューブ長手方向L1に沿って配置され、中央部を境に左右一対の直線通路部57、58と、チューブ幅方向L2に沿って配置され、2つの直線通路部57、58間を連通する方向変更通路部59とからなるU字状の冷媒通路60が設けられている。一方の直線通路部57の上端側はヘッダ室55aに、他方の直線通路部58の上端側はヘッダ室55bにそれぞれ連通されていると共に、各直線通路部57、58には波形のインナーフィン61がそれぞれ配置されている。
【0005】
方向変更通路部59には、間隔を置いて複数の突起62が突設されている。この各突起62はチューブ幅方向Sに沿って配置され、且つチューブ51の他端側に向かうに従って寸法が長く設定されている。この細長い突起62は、主にチューブ51の耐圧強度の向上と冷媒の流れ規制とを図るために設けられている。
【0006】
次に、積層型蒸発器50の冷媒流れを説明する。冷媒入口パイプ53から流入する冷媒は、各チューブ51のヘッダ室55aに導かれ、各ヘッダ室55aより下方の冷媒通路60にそれぞれ流入される。各冷媒通路60に流入された冷媒は、先ず一方の直線通路部57で、且つインナーフィン61によって仕切られた複数の流路内を分流して下方(図11の矢印aの方向)に向かって流れ、方向変更通路部59に流入する。方向変更通路部59に流入した冷媒は、突起62の間の流路をほぼ水平方向(図11の矢印bの方向)に流れて他方の直線通路部58に導かれる。他方の直線通路部58に流入した冷媒は、インナーフィン61によって仕切られた複数の流路内を分流して上方(図11の矢印cの方向)に向かって流れ、ヘッダ室55bに流入する。ヘッダ室55bに流入した冷媒は、下流に向かう過程で他のチューブ50内を循環して来た冷媒と合流し、合流した冷媒は冷媒出口パイプ54より流出される。
【0007】
また、従来の他の蒸発器としては、図12に示すように、チューブ51の方向変更通路部59に細長い突起ではなく円状や四角形状の突起63を多数設けたものがある。この蒸発器におけるその他の構成は、図9〜図11に示した蒸発器と同様であるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−213532号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9〜図11に示した従来の蒸発器50では、直線通路部57、58内を流れる冷媒は、インナーフィン61によって仕切られた複数の通路内を分流して流れ、インナーフィン61の下端面から方向変更通路部59内に流入する。方向変更通路部59内に流入した冷媒は、複数本の突起62によって仕切られた流路内を流れるが、インナーフィン61で仕切られた通路内を流れる場合に較べて広い断面積の流路内を流れることになる。そのため、冷媒が突起63に接触したり衝突したりする頻度が非常に低く、冷媒が液相とガス相に分離されやすい。また、インナーフィン61の下端面より流出した冷媒は、方向変更通路部59内を基本的に自由な流路を通って流れることができるため、液相の溜まり部が出来やすいという不都合があった。液相の溜まり部が形成されると、後から続く冷媒流が液相の溜まり部を回避するような流路を通って流れる。このため、液相の溜まり部が形成され易く、液相の溜まり部が形成されると、その領域の伝熱性能が低下して蒸発効率が低下するという問題がある。
【0010】
また、図12に示した蒸発器では、図9〜図11に示した蒸発器に較べて冷媒が突起63に衝突する頻度が多少高くなるが、方向変更通路部59の最下方の両端部分に液相の溜まり部64が形成され易い構造である。そして、図12に示すように、一旦液相の溜まり部64が形成されると、冷媒が液相の溜まり部64を回避するような流路を通って流れることができる。したがって、図9〜図11に示した蒸発器と同様に、継続的な液相の溜まり部64が形成され易く、液相の溜まり部64が形成されると、その領域の伝熱性能が低下して蒸発効率が低下するという同じ問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、液相の溜まり部の発生を防止して伝熱性能の向上、及び蒸発効率の向上を図ることができる積層型の蒸発器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数の偏平なチューブが積層されてなり、チューブ内には、互いに平行をなして逆の方向に冷媒を流通させる少なくとも一対の直線通路部と、これら一対の前記直線通路部の一端部側同士を連通する方向変更通路部とでなる冷媒通路が設けられると共に、各直線通路部内にインナーフィンがそれぞれ配置された蒸発器であって、方向変更通路部内にオフセットインナーフィンが配置され、このオフセットインナーフィンの両側の端面が各インナーフィンの端面にそれぞれ突き合わされていることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の蒸発器であって、オフセットインナーフィンの壁面は、凹凸面であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の蒸発器であって、凹凸面が、壁面に多数の窪み部を設けることによって形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された蒸発器であって、各インナーフィンの方向変更通路部側の端面、及びオフセットインナーフィンの直線通路部側の両方の端面は、共にチューブ長手方向に対し同じ角度の傾斜方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の蒸発器であって、インナーフィン及びオフセットインナーフィンの各端面の傾斜方向の角度は、チューブ長手方向に対し45度であることを特徴とする。
【0017】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、一方の直線通路部内に配置されたインナーフィンの端面より方向変更通路部内に流入する冷媒は、オフセットインナーフィンによって仕切られた複数の流路内にそれぞれ流入し、オフセットインナーフィンのオフセット壁部によって分流・集合を繰り返しつつ流れるため、冷媒がオフセットインナーフィンのオフセット壁部に衝突する頻度が非常に高く、冷媒が液相とガス相に分離されにくい。また、インナーフィンの端面より流出した冷媒は、直ちに後方オフセットインナーフィンによって仕切られた複数の流路のそれぞれに流入し、流入位置によってほぼ特定された流路を通って方向変更通路部内を流れ、オフセットインナーフィンの端面より流出する冷媒は、直ちに他方の直線通路部内のインナーフィンによって仕切られた複数の流路内に流入するため、液相の溜まり部の発生を防止できる。仮に液相の溜まり部が形成された場合には、後続の冷媒流が液相の溜まり部を押し流すため、継続的な液相の溜まり部が発生しない。以上より、この発明によれば、液相の溜まり部が発生せずに伝熱性能の向上、及び蒸発効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、請求項1記載の発明によれば、従来のように方向変更通路部に突起を設ける場合に較べてオフセットインナーフィンの方が方向変更通路部の伝熱面積を増加させることができるため、蒸発量が増加し、この点からも発熱効率の向上になる。
【0019】
さらに、請求項1記載の発明によれば、オフセットインナーフィンが方向変更通路部の耐圧補強材としても機能するため、耐圧性能が維持される。加えて、オフセットインナーフィンによって仕切られた流路内を流れる冷媒は、絶えずオフセット壁部に衝突して冷媒の液相が分断されて微細化され、この微細化によって流動性が高められて蒸発効率の向上が図られる。つまり、液相の溜まり部の発生が防止されるのみならず微細化により、蒸発効率の向上を図ることができる。
【0020】
また、請求項1記載の発明によれば、インナーフィンの端面から流出した冷媒は、直ちにオフセットインナーフィンによって仕切られた各流路内に流入するため、全ての冷媒がオフセットインナーフィンによって仕切られた流路の全体に流入し、方向変更通路部の幅全体を通って流れる。従って、方向変更通路部の全体で熱交換が行われるため、この点からも蒸発効率の向上になる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、オフセットインナーフィンの凹凸面によってオフセットインナーフィンと冷媒との接触面積が増大するため、より蒸発効率の向上が図られる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加え、オフセットインナーフィンの凹凸面を簡単に形成できる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜請求項3の発明の効果に加えて、チューブ長手方向に冷媒を流通させるインナーフィンとチューブ幅方向に冷媒を流通させるオフセットインナーフィンとの間の流路の接続をインナーフィンとオフセットインナーフィンの外形変更(例えばカッテング)のみで対応できる。したがって、インナーフィンやオフセットインナーフィンを製造する工程、及びこれらをチューブ内に組み付ける工程等が複雑にならずに低コストにできる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、インナーフィンの端面とオフセットインナーフィンの端面とが突き合う流路断面積が最大に設定でき、インナーフィンとオフセットインナーフィンとの間の冷媒の流通が円滑になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る蒸発器の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0026】
なお、図1(a)はチューブの正面図、図1(b)はチューブの側面図、図2はチューブ内での冷媒流を説明する説明図、図3は図2のA−A断面図、図4は波形インナーフィンの一部斜視図、図5は図2のB−B断面図、図6は(a)はオフセットインナーフィンの一部斜視図、図6(b)はオフセットインナーフィンの壁面の要部拡大斜視図、図7はチューブ内に配置されたインナーフィン及びオフセットインナーフィンを縦切断した状態を示す拡大図、図8は図7のC部の拡大で、且つ、冷媒の液相が分断されて微細化される状態を説明する図である。
【0027】
この積層型蒸発器は、その概略構造は従来例と略同様であり、積層された複数のチューブ1と、このチューブ1間に配置された図示しない複数のアウターフィンと、一端側に配置されたチューブ1に接続された図示しない冷媒入口パイプと、他端側に配置されたチューブ1に接続された図示しない冷媒出口パイプとを備えている。
【0028】
各チューブ1は、図1及び図2に示すように、2枚の略同じ形状のチューブプレート1a、1bを接合することにより構成されている。各チューブ1の一端側には、中央部を境に左右一対のヘッダ室2a、2bが設けられ、各ヘッダ室2a、2bの両側はほぼ円形状の貫通孔3によって開口されている。チューブ1の積層状態では、左右のそれぞれのヘッダ室2a、2bが各貫通孔3を介してそれぞれ連通され、全チューブ1の例えば左側のヘッダ室2aの集合によってヘッダ入口通路(図示せず)が、全チューブ1の例えば右側のヘッダ室2bの集合によってヘッダ出口通路(図示せず)がそれぞれ形成される。ヘッダ入口通路(図示せず)には冷媒入口パイプ(図示せず)が、ヘッダ出口通路(図示せず)には冷媒出口パイプ(図示せず)がそれぞれ接続される。
【0029】
各チューブ1内には、上端側より下端側に亘ってU字状の冷媒通路7が設けられている。この冷媒通路7は、チューブ長手方向L1に沿って平行に配置され、中央部を境に左右位置に配置された一対の直接通路部4、5と、チューブ幅方向L2に配置され、この2つの直線通路部4、5の下端側を連通する方向変更通路部6とから構成されている。一方の直線通路部4の上端側は一方のヘッダ室2aに、他方の直線通路部5の上端側は他方のヘッダ室2bにそれぞれ連通されている。
【0030】
各直線通路部4、5には、図2及び図3に示すように、波形インナーフィン8がそれぞれ配置されている。波形インナーフィン8は、図2〜図4に示すように、山部8aと谷部8bとが交互に繰り返され、この山部8a及び谷部8bが延びている延設方向F1とチューブ長手方向L1とが平行になるように配置されている。したがって、各直線通路部4、5のチューブ長手方向L1には、波形インナーフィン8によって仕切られた複数のストレート状の通路が形成されている。なお、山部8aと谷部8bは相対的な概念である。また、波形インナーフィン8の方向変更通路側の端面(下端面)8cは、チューブ長手方向L1に対し45度の斜め方向に沿って配置されている。
【0031】
方向変更通路部6には、図2に示すように、正面から見て略三角形状を有するオフセットインナーフィン9が配置されている。オフセットインナーフィン9は、図5及び図6(a)、(b)に示すように、山部9aと谷部9bが交互に繰り返され、且つ山部9a及び谷部9bが延びる延設方向F2の所定間隔毎に山部9aと谷部9bを連結するオフセット壁部9dが所定ピッチpだけオフセット配置されている。そして、オフセットインナーフィン9は、山部9a及び谷部9bがオフセットしつつ延びている延設方向F2とチューブ幅方向L2とが平行になるように方向変更通路部6内に配置されている。したがって、方向変更通路部6のチューブ幅方向L2には、オフセットインナーフィン9によって仕切られ、且つジグザグをなす複数の流路が形成されている。なお、山部9aと谷部9bは相対的な概念である。また、オフセットインナーフィン9は、方向変更通路部6内のほぼ全域に亘って配置されている。
【0032】
オフセットインナーフィン9の直線通路部4、5側の両方の端面9cは、チューブ長手方向L1に対し45度の斜め方向に沿って配置されている。そして、オフセットインナーフィン9の両方の端面9cと各波形インナーフィン8の端面8cとは、それぞれ互いに突き合わさった状態で配置されている。
【0033】
オフセットインナーフィン9は、図6(b)に示すように、その壁面に多数の窪み部11が形成されることによって凹凸面10とされている。窪み部11は、壁面から奥に向かうに従って小径となる略三角錐形状であり、この実施の形態では底辺の直径を0.05mm以下、深さを0.01mm以下に設定されている。なお、図6(a)には壁面の窪み部11が省略してある。
【0034】
次に、上記構成の蒸発器の冷媒流れを説明する。冷媒入口パイプ(図示せず)から流入する冷媒は、ヘッダ入口通路(図示せず)に導かれ、ヘッダ入口通路(図示せず)の各ヘッダ室2aより各チューブ1の冷媒通路7に流入される。冷媒通路7に流入した冷媒は、一方の直線通路4内で、且つ波形インナーフィン8によって仕切られた複数の流路内をそれぞれ下方に向かって流れ、インナーフィン8の下端面8cより方向変更通路部6内に流入する。方向変更通路部6に流入した冷媒は、オフセットインナーフィン8によって仕切られた複数の流路内をほぼ水平方向に流れて他方の直線通路部5に導かれる。他方の直線通路部5に流入した冷媒は、波形インナーフィン8によって仕切られた複数の流路内をそれぞれ上方に向かって流れてヘッダ室2bに流入する。ヘッダ室2bに流入した冷媒は、ヘッダ出口通路(図示せず)で他のチューブ1内を循環して来た冷媒と合流し、合流した冷媒は、冷媒出口パイプ(図示せず)より流出される。
【0035】
上記の冷媒流通過程中にあって、波形インナーフィン8の下端面8cより方向変更通路部6内に流入する冷媒は、オフセットインナーフィン9によって仕切られた複数の流路内にそれぞれ流入し、オフセットインナーフィン9のオフセット壁部9dによって分流・集合を繰り返しつつ流れるため、冷媒がオフセットインナーフィン9のオフセット壁部9dに衝突する頻度が非常に高く、冷媒が液相とガス相に分離されにくい。
【0036】
また、波形インナーフィン8の下端面8cより方向変更通路部6内に流入する冷媒は、直ちにオフセットインナーフィン9によって仕切られた複数の流路のそれぞれに流入し、流入位置によってほぼ特定された流路を通って下流に流れてオフセットインナーフィン9の端面9cより直ちに直線通路部5内のインナーフィン8に流出するため、液相の溜まり部ができ易い箇所が存在しない。仮に液相の溜まり部が形成された場合には、後続の冷媒流が液相の溜まり部を押し流すため、継続的な液相の溜まり部が発生しない。以上の作用により、液相の溜まり部が発生せずに伝熱性能の向上、及び、蒸発効率の向上を図ることができる。
【0037】
また、従来のように方向変更通路部に突起を設けた場合に較べてオフセットインナーフィン9の方が方向変更通路部6の伝熱面積を増加させることができるため、蒸発量が増加し、この点からも発熱効率の向上になる。さらに、オフセットインナーフィン9が方向変更通路部6の耐圧補強材としても機能するため、耐圧性能が維持される。
【0038】
ここで、図8を用いて、オフセットインナーフィン9が冷媒に与える作用を説明する。すなわち、オフセットインナーフィン9によって仕切られた流路内を流れる冷媒は、図8に示すように、絶えずオフセット壁部9dに衝突して冷媒の液相20が分断されて微細化され、この微細化によって流動性が高められて蒸発効率の向上が図られる。つまり、液相20の溜まり部の発生が防止されるのみならず微細化により、蒸発効率の一層の向上を図ることができる。波形インナーフィン8の下端面から流出した冷媒は、直ちにオフセットインナーフィン9によって仕切られた各流路内に流入するため、全ての冷媒がオフセットインナーフィン9によって仕切られた流路の全体に流入し、方向変更通路部6の幅全体を通って流れる。したがって、方向変更通路部6の全体で熱交換が行われるため、この点からも蒸発効率の向上になる。
【0039】
上記実施の形態では、オフセットインナーフィン9の壁面9cは、凹凸面10であるため、オフセットインナーフィン9の凹凸面10によってオフセットインナーフィン9と冷媒との接触面積が増大する。したがって、より蒸発効率の向上が図られる。
【0040】
また、上記実施の形態では、オフセットインナーフィン9の凹凸面10は、壁面に多数の窪み部11を設けることによって形成されているので、オフセットインナーフィン9の凹凸面10を簡単に形成できる。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、各波形インナーフィン8の方向変更通路部6側の端面8c、及びオフセットインナーフィン9の直線通路部4、5側の両方の端面9cは、共にチューブ長手方向L1に対し同じ角度の傾斜方向に沿って配置されているので、チューブ長手方向L1に冷媒を流通させる波形インナーフィン8とチューブ幅方向L2に冷媒を流通させるオフセットインナーフィン9との間の流路の接続を波形インナーフィン8とオフセットインナーフィン9の外形変更(例えばカッテング)のみで対応できる。したがって、波形インナーフィン8やオフセットインナーフィン9を製造する工程、及びこれらをチューブ1内に組み付ける工程等が複雑にならずに、コストを抑えることができる。
【0042】
また、上記実施の形態では、波形インナーフィン8及びオフセットインナーフィン9の端面8c、9cの傾斜方向の角度は、チューブ長手方向L1に対し45度であるので、波形インナーフィン8の端面8cとオフセットインナーフィン9の端面9cとが突き合う流路断面積が最大に設定でき、波形インナーフィン8とオフセットインナーフィン9との間の冷媒の流通がスムーズになる。
【0043】
なお、上記実施の形態では、各直線通路部4、5内には波形インナーフィン8をそれぞれ配置したが、インナーフィンは、冷媒をチューブ長手方向L1に沿って流す複数の流路を形成できる形状であればよく、単純な波形以外のものであってもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、オフセットインナーフィン9の壁面を凹凸面10とするために、壁面に多数の有底の窪み部11を形成しているが、壁面に貫通孔を形成することによって凹凸面10を形成してもよい。しかし、耐圧強度の点では窪み部が好ましく、貫通孔を形成する場合には所定の耐圧強度を維持するように径と個数を考慮することが好ましい。
【0045】
さらに、上記実施の形態では、冷媒通路7は、平行に配置された2本の直線通路部4、5とこれらを連通する方向変更通路部6とから構成されているが、平行に配置された3本以上の直線通路部と隣接する2本の直線通路部同士を連通する2箇所以上の方向変更部とから構成されている場合にも本発明は同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る蒸発器の実施の形態におけるチューブの正面図、(b)はチューブの側面図である。
【図2】本発明に係る蒸発器の実施の形態おけるチューブの内面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明に係る蒸発器の実施の形態における波形インナーフィンの部分斜視図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】(a)は本発明に係る蒸発器の実施の形態におけるオフセットインナーフィンの部分斜視図、(b)はオフセットインナーフィンの壁面の要部拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る蒸発器の実施の形態を示し、チューブ内に配置されたインナーフィン及びオフセットインナーフィンを縦方向に切断した状態を示す断面図である。
【図8】図7のC部において冷媒の液相が分断されて微細化される状態を説明する拡大説明図である。
【図9】従来例の積層型蒸発器の斜視図である。
【図10】従来例のチューブの分解斜視図である。
【図11】従来例のチューブの内面図である。
【図12】他の従来例のチューブの内面図である。
【符号の説明】
1 チューブ
4、5 直線通路部
6 方向変更通路部
7 冷媒通路
8 波形インナーフィン(インナーフィン)
8c 方向変更通路部側の端面
9 オフセットインナーフィン
9c 直線通路部側の端面
10 凹凸面
11 窪み部
Claims (5)
- 複数の偏平なチューブ(1)が積層されてなり、
前記チューブ(1)内には、互いに平行をなして逆の方向に冷媒を流通させる少なくとも一対の直線通路部(4)、(5)と、これら一対の前記直線通路部(4)、(5)の一端部側同士を連通する方向変更通路部(6)とでなる冷媒通路(7)が設けられると共に、前記各直線通路部(4)、(5)内にインナーフィン(8)がそれぞれ配置された蒸発器であって、
前記方向変更通路部(6)内にオフセットインナーフィン(9)が配置され、このオフセットインナーフィン(9)の両側の端面(9c)が前記各インナーフィン(8)の端面(8c)にそれぞれ突き合わされていることを特徴とする蒸発器。 - 請求項1記載の蒸発器であって、
前記オフセットインナーフィン(9)の壁面は、凹凸面(10)であることを特徴とする蒸発器。 - 請求項2記載の蒸発器であって、
前記凹凸面(10)は、壁面に多数の窪み部(11)を設けることによって形成されていることを特徴とする蒸発器。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された蒸発器であって、
前記各インナーフィン(8)の前記方向変更通路部(6)側の端面(8c)、及び前記オフセットインナーフィン(9)の前記直線通路部(4)、(5)側の両方の端面(9c)は、共にチューブ長手方向(L1)に対し同じ角度の傾斜方向に沿って配置されていることを特徴とする蒸発器。 - 請求項4記載の蒸発器であって、
前記インナーフィン(8)及び前記オフセットインナーフィン(9)の各端面(8c)、(9c)の傾斜方向の角度は、チューブ長手方向(L1)に対し45度であることを特徴とする蒸発器。
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-
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