JP2004225729A - 摺動部材、クランクシャフト、および可変圧縮比エンジン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】摺動面に摺動方向と直交する軸受け幅方向の中心から端部方向へ、その深さが、中央部ほど深く端部にいくほど浅い微細な凹部4を有することを特徴とする摺動部材である。またこの摺動部材をピストン102のストロークを変更する制御機構が接続されている可変圧縮エンジンのクランクシャフト、特にクランクピン107に用いた。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動部材、この摺動部材を用いたクランクシャフト、およびこの摺動部材を用いた可変圧縮比エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、摺動部材における摩擦を低減するためには、摺動部材の摺動面に微細な窪み、凹面、溝などを形成することが行われている。
【0003】
このような窪み、凹面、溝などを摺動部材に形成する従来の技術は、形成たとえば、往復摺動を行うピストン/ボアのフリクション低減を目的として、摺動面において、摺動方向に対して深さを変化させた微細な凹部を形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−235852号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の摺動部材は、クランクシャフトなどように、回転運動する摺動条件における摺動方向と直交する方向の微細形状に関しては、凹部や窪み、溝の深さが均一であるため、接触部内の油膜厚さ分布や油膜保持能力に応じた最適化が図られておらず、低フリクションという機能が必ずしも十分に発現されないという問題があった。特にクランクシャフトでは、軸の曲げたわみが発生し、それを支えるメタル材の端部に油膜が薄い場所が存在し、深さの均一な凹凸を形成するだけでは、フリクション低減効果が限定されるだけでなく、軸受け端部での磨耗や焼き付きなどの損傷が懸念されるという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、回転運動する摺動部材において、フリクション低減効果を大きくすることのできる摺動部材を提供することである。また、他の目的は、このようにフリクションを低減させた摺動部材を用いることで、回転部分における摩擦抵抗を少なくしたエンジンシステムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、摺動面に摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ、深さ分布が油膜厚さ分布に応じて変化する微細な凹部を有することを特徴とする摺動部材である。
【0008】
また、本発明は、上記の摺動部材を用いたことを特徴とする内燃機関のクランクシャフトである。
【0009】
さらに、シリンダ内を移動するピストンにピストンピンを介して第1コンロッドが接続され、当該第1コンロッドがコンロッド間接続ピンによって第2コンロッドと揺動可能に接続され、当該第2コンロッドがクランクシャフトとクランクピンによって回転可能に装着され、前記第2コンロッドが前記クランクピンを中心に回転位置を変更するためのコントロールロッドとコントロールロッド接続ピンにより揺動可能に接続され、当該コントロールロッドの前記第2コンロッドと接続されていない側の接続部に当該コントロールロッドを移動させて前記ピストンのストロークを変更する制御機構が接続されている可変圧縮比エンジンにおいて、少なくとも前記クランクシャフトの前記クランクピン部分に上記摺動部材を用いたことを特徴とする可変圧縮比エンジンである。
【0010】
【発明の効果】
本発明の摺動部材によれば、摺動面に摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ、深さ分布が油膜厚さ分布に応じて変化する微細な凹部を形成したことで、より多くの油を接触部に流入させることが可能となり、より広い作動条件でフリクション低減効果を発現するとともに、軸受け端部での磨耗や焼き付きなどの損傷を抑制することができる。
【0011】
また、本発明によるクランクシャフトによれば、クランクシャフト端部で発生する磨耗や焼き付きを抑制し、摩擦係数を低減することができる。
【0012】
さらに、本発明により可変圧縮比エンジンによれば、焼き付き性や磨耗が改善され、さらに摩擦係数が低減することにより摩擦損失を低減することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態として本発明を適応した部材の一つであるクランクシャフト受について簡単に説明する。
【0015】
図1はクランクシャフトの軸受け接触部における油膜厚さ分布を説明するための説明図で、図1(a)はクランクシャフトの一例を示す平面図であり、図1(b)は軸受け接触部における油膜厚さ分布示すグラフである。図1(b)のグラフにおいて、縦軸は油膜厚さ(μm)であり、横軸は軸受けとの接触部の幅(接触部幅)を示し、この接触部幅を0〜1として示したものである。
【0016】
図示するように、クランクシャフト1の軸受けとの接触部2(図示円内の部分)の摺動面において、油膜厚さは、その中央部Sに比べて端部Tの方が薄い。
【0017】
本実施の形態は、このようなクランクシャフト1の接触部2、すなわち、軸受けと接触する摺動面において、摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ、深さ分布がこの油膜厚さ分布に応じて変化する微細な凹部を形成したものである。
【0018】
図2は摺動面における表面荒さを説明するための説明図であり、図2(a)はクランクシャフト1と軸受け接触部2の断面図、図2(b)は接触部2における摺動面の平面図である。また、図3は摺動面における凹部の深さ分布の一例を示すグラフである。
【0019】
図2(a)に示すように、クランクシャフト1の油膜を受ける接触部2には、この接触部2を取り巻くように軸受け3が設けられている。
【0020】
接触部2の摺動面5には、図2(b)に示すように、凹部4が形成されている。
【0021】
この凹部4は、摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ、深さ分布が油膜厚さ分布に応じて変化するように形成したため、図3に示すように、軸受け幅の中央部ほど深く、端部に行くほど浅くなるように形成されている。
【0022】
この凹部4の形成範囲は、軸受け3の全幅をBとし、微細な凹部4の形状を有する範囲をSとした場合に、少なくともS/B>0.2の範囲であることが好ましい。この範囲以下となる場合、凹部4の形成範囲が少なくなりすぎて十分なフリクション低減が得られない。
【0023】
また、凹部の深さは、油膜厚さをhとし、凹部4の深さをtとして、その比をh/tとした場合に、h/tが0.2〜2と好ましく、具体的には、たとえば、摺動面5のベース面における凹凸の凸部の最大高さが1μm以下(下限値は0であるが実際には加工機械の精度限界となる)となるようにした場合に、凹部4の最大深さが0.5μm〜20μmであることが好ましい。
【0024】
このようにh/tを0.2〜2とすることで、より広い作動条件でフリクション低減効果を発現するとともに、軸受け3端部での磨耗や焼き付きなどの損傷を抑制する。作動条件により油膜厚さが変化するために、より広い作動条件においてフリクション低減効果を発現しつつ、耐磨耗性、耐焼付き性効果を両立させることが可能となるが、この範囲を超えると、動作条件による油膜厚さの変化に対応できなくなるおそれがあるため好ましくないものである。
【0025】
特にクランク軸では、アルミメタルのような軟質金属と鋼のような硬質金属との組み合わせで運転されるため、このような状態において、ベース面の凸部の最大高さが1μm以下、凹部4の最大深さを0.5μm〜20μmとすることで、金属接触を抑制し、耐磨耗性や耐焼き付き性が向上する。凸部の最大高さが1μmを超える場合、および凹部4の最大深さが20μmを超える場合には、耐磨耗性や耐焼き付き性が低下するため好ましくない。また、凹部4の最大深さが0.5μm未満の場合には、フリクション低減効果が十分得られない。
【0026】
また、凹部4の開口部の長さは、平均で15〜500μmとしている。これは、凹部4の開口部の長さが15μm未満であると、油膜の保持性能が悪化するために、金属接触が発生し好ましくない。一方、500μmを越えると、開口部分が広くなりすぎ、凹部への油の流入が増加して負荷容量が下がり金属接触が発生して耐焼き付き性が低下するため好ましくないものである。
【0027】
このように、凹部4の開口部の長さを平均で15〜500μmとすることで、前述の摩擦係数の低減、耐焼き付き性、耐磨耗性などの抑制を発現するだけでなく、微細形状付与による、振動の増加を抑制することができる。
【0028】
凹部4の形状は、後述する実施例のごとく、長方形や円形などさまざまな形状が考えられる。
【0029】
【実施例】
次に、上述のように構成された実施の形態に基づいて、実際にさまざまな凹部形状の摺動部材を製作して摩擦係数を求める実験を行った。
【0030】
図4は、本実施例に用いた内接2円筒試験機を説明するための説明図で、図4(a)は実験に用いた摺動部材の構成を示す断面図、図4(b)は内接2円筒試験機の回路図である。
【0031】
実験に用いる摺動部材は、図4(a)に示すように、外円筒10と内円筒20からなる。外円筒10は外径φ60mmの鋼製円筒11に内径φ45mmのアルミメタル12を圧入したものである。一方、内円筒20は外径がφ44.8mmの鋼鉄(SCM440H鋼)の焼き入れ焼き戻し材である。内円筒20および外円筒10の幅はともに10mmである。
【0032】
内円筒20および外円筒10にはそれぞれACサーボモータ(不図示)を取り付け独立に回転制御できるようにしている。そして、5W30の油を入れた油浴内にこの内円筒20および外円筒10を浸すことで、内円筒20および外円筒10の間に油膜を形成させた。
【0033】
実験は、ラジアル荷重500kg、油温度80℃、相対すべり速度0.2〜12m/sにおいて、平均速度を−2〜2m/sまで変化させ、内円筒軸に取り付けたトルクセンサにより回転トルクを計測して接線力を算出し、ラジアル荷重で除することにより摩擦係数を求めた。なお、平均速度は内円筒速度をu1、外円筒速度u2とした場合、(u1+u2)/2である。同様に相対すべり速度は、(u1−u2)である。
【0034】
測定した摩擦係数は、縦軸を相対すべり速度、横軸を平均速度で表したフリクションマップとして整理した。これらのフリクションマップを基に、摩擦係数の望小解析を実施した。図5はフリクションマップの一例であり、フリクションマップとは、図示するように、縦軸を相対すべり速度、横軸を平均速度で表し、このマップ上に摩擦係数を等高線図として整理したものである。このマップにより内円筒表面の接触部2においてどのような摩擦係数分布となっているかがわかる。
【0035】
また、耐焼き付き性および耐磨耗性を評価する目的で、電気抵抗法による分離電圧の測定を実施した。分離電圧は図4(b)に示す回路を作製し、運転中の外円筒10と内円筒20の間の抵抗変化に起因する電圧を測定することにより実施した。本回路では、完全に油膜で分離されている場合に、分離電圧が750mVを示し、完全に接触している場合に0mVを示すことになるように、抵抗R1およびR2の抵抗値を決めている。
【0036】
耐焼き付き性および耐磨耗性は、この分離電圧が大きい値の方が優れることは言うまでもない。運転時の分離電圧を計測し、完全分離状態の750mVで除した値を油膜形成率と定義し、フリクションマップと同様に油膜形成率マップとして表した。油膜形成率は、望目特性として解析を行った。図6は、この油膜形成率マップの一例を示す図面である。このマップは縦軸を相対すべり速度、横軸を平均速度で表し、マップ上に油膜形成率を等高線図として整理したものである。このマップにより内円筒表面の接触部2においてどのような油膜形成率の分布となっているかがわかる。
【0037】
なお、図5および図6においては、123個のデータをまとめたものである。
【0038】
摩擦係数は回転トルクとして望小解析を行い、油膜形成率に関しては分離電圧として望目解析を行った。望小解析、および望目解析は以下に示す式により計算した。
【0039】
望小解析
【0040】
【数1】
【0041】
望目特性解析
【0042】
【数2】
【0043】
(実施例および比較例)
実施例は、いずれもφ44.8mmの内円筒表面に凹部微細形状を形成した(比較例は形成していない)。凹部微細形状は、マスクブラスト処理により形成した。すなわち、光リソグラフィ技術を利用し、樹脂製マスクに凹部微細形状を形成し、その樹脂マスクを円筒表面に貼り付けた後、平均粒径20μmのアルミナ砥粒を、噴射ノズルからワークまでの距離を100mmとし、投射流量100g/min、投射圧0.4MPaの条件下で投射し、凹部微細形状を得た。その後、凹部微細形状周辺に形成されたエッジ部の盛り上がりを粒径9μmのテープラップフィルムにより除去し、試験に供した。なお、実施例および比較例の凹部微細形状深さはいずれのサンプルにおいても、1μm、面積率は5%とした。
【0044】
実施例および比較例では、図7に示すように、微細な凹部形状パターンを形成した。
【0045】
実施例1は、図7(a)に示すように、開口部の直径がφ120μmのディンプルを、中央部において最大深さが2μmとなるように、端部での深さが0.3μmとなるように形成した。
【0046】
実施例2は、図7(b)に示すように、幅80μm、長さ×320μmの矩形状の溝を、中央部での最大深さを2μm、端部での深さが0.3μmとなるように形成した。した。
【0047】
実施例3は、図7(c)に示すように、幅120μmで、軸受け幅に渡る溝を、中央部での最大深さが2μm、端部での深さが0.3μmとなるように形成した。
【0048】
比較例は、図7(d)に示すように、全面を表面粗さRaが0.01μm以下になるように、テープラップ加工を施し、鏡面に近い状態に仕上げた。
【0049】
これら実施例および比較例における望小解析結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から明らかなように、本発明を適用した実施例は、いずれも比較例と比べて、低いトルクで回転可能なことを示しており、この結果から摩擦係数が低くなっていることがわかる。また、同時に測定した電気抵抗法による分離電圧も実施例の方が比較例に比べて大きな値を示しており、金属接触の割合が減少していることがわかる。なお、試験後の摺動部観察の結果からも電気抵抗法の結果と矛盾しない結果が得られた。
【0052】
以上説明したように本発明の実施の形態によれば、クランクシャフト1の摺動面5において、油膜厚さの分布と同じく、中央が深く、端部の方が浅くなるように微細な凹部4を形成したことで、フリクション低減効果を発現するとともに、軸受け3端部での磨耗や焼き付きなどの損傷を抑制するという優れた効果をもたらす。
【0053】
特に、軸受け3の全幅をBとし、微細な凹部4の形状を有する範囲をSとした場合に、少なくともS/B>0.2の範囲に微細な凹部4を、中央部ほど深く端部方向に浅くなるように形成したことで、フリクション低減効果が増加する。
【0054】
凹部4の深さを、油膜厚Zをh、凹部深さをtとして、その比をh/tが0.2〜2となるようにしたことで、さまざまな油膜厚さに対応して、より広い作動条件でフリクション低減効果を発現するとともに、軸受け3端部での磨耗や焼き付きなどの損傷を抑制することができる。
【0055】
さらに、摺動面5のベースの凹凸が凸面の最大高さが1μm以下となるようにし、凹部4の最大深さを0.5μm〜20μmとすることで、金属接触を抑制し、耐磨耗性や耐焼き付き性が向上する。
【0056】
そして、このクランクシャフト1を内燃機関に用いることにより、クランクシャフト1端部で発生する磨耗や焼き付きを抑制し、微細形状付与なしに比べて、摩擦係数を低下できるという優れた機能が発現される。
【0057】
すなわち、クランクシャフト1は、シリンダ内を往復動するピストンを有する内燃機関において、ピストンはピストンピンを介してアッパリンクと連結され、アッパリンクはUL間接続ピンを介してロアリンクと揺動可能に連結され、クランクピンに回転可能に装着されたロアリンクと、コントロールリンクとはLC間接続ピンを介して揺動可能に連結され、コントロールリンクのロアリンクとは連結されない接続点の位置を運転条件に応じて変更することにより機関圧縮比を可変制御するリンク機構を構成する。
【0058】
このリンク機構により、通常のレシプロエンジンに比べてクランクシャフト1に対する入力が増加した場合にも、焼き付き性や磨耗が改善され、さらに摩擦係数が低減することにより摩擦損失を低減できるという優れた効果がもたらされる。
【0059】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、前述した第1の実施の形態の摺動部材を用いた可変圧縮比エンジンである。
【0060】
図7は可変圧縮比エンジンのクランクシャフト部分とエンジンシリンダ内部の概略断面図である。
【0061】
この可変圧縮比エンジンは、シリンダ101内を往復動するピストン102に、ピストンピン103を介して第1コンロッド104と接続されており、この第1コンロッド104がコンロッド間接続ピン105によって第2コンロッド106と揺動可能に接続されている。第2コンロッド106は、クランクシャフト1とクランクピン107によって回転可能に装着されている。そして第2コンロッド106は、さらに、コントロールロッド108とコントロールロッド接続ピン109により揺動可能に接続され、コントロールロッド108の第2コンロッド106と接続されていない側の接続部110は、このコントロールロッド108を移動させて機関圧縮比を可変制御する制御機構(不図示)に接続されている。
【0062】
このように構成された可変圧縮比エンジンは、コントロールロッド108を移動させて、第2コンロッド106をクランクピン107を中心にして回転させることで、実質的にコンロッド長(クランクピンからピストンピンまでの長さL)を変えてピストン102のストロークを変化させ、機関圧縮比を変更できるようにしている。
【0063】
このような第1コンロッド104と第2コンロッド106の接続部であるコンロッド間接続ピン105の部分、第2コンロッド106とクランクシャフト1の接続部であるクランクピン107の部分、および第2コンロッド106とコントロールロッド108の接続部であるコントロールロッド接続ピン109の部分は、いずれも摺動部であり、この摺動部に本発明を適用した摺動部材、すなわち、摺動面に摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ、深さ分布が油膜厚さ分布に応じて変化する微細な凹部を形成したものである。したがって、そしてこの凹部の深さ分布は、中央部ほど深く、端部にいくほどこと浅くなっている。摺動面の摺動方向と直交する方向の幅をBとし、凹部を形成する範囲をSとした場合に、少なくともS/B>0.2となるように凹部が形成されていることが好ましい。
【0064】
また、凹部は、油膜厚さをhとし、凹部の深さをtとした場合に、その比h/tが0.2〜3となることが好ましい。さらに摺動面は、ベース面の凹凸の最大高さが1μm以下、凹部の最大深さが0.5〜20μmであることが好ましい。
【0065】
これにより、通常のレシプロエンジンに比べて、接続部が多くなっているために、クランクシャフトに加わる力が大きくなる可変圧縮比エンジンにおいても、クランクシャフトのクランクピン部分のほか、その他の摺動部において摩擦係数を小さくすることが可能となり、摺動部における耐焼き付き性や耐磨耗性を改善することができ、エンジンの効率を良くすることが可能となる。
【0066】
なお、本第2の実施の形態においては、各ロッドが接続されている摺動部すべてに第1の実施の形態による摺動部材を用いたが、これに変えてクランクシャフトのみを本発明による摺動部材としてもよい。これは、可変圧縮比エンジンにおいては、上記のとおり接続部が多くなっているために、クランクシャフトに加わる力が通常のエンジンと比較して大きくなるため、このクランクシャフトのクランクピン部分の摩擦係数を下げるだけでも効率改善効果が期待できるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクシャフトの軸受け接触部における油膜厚さ分布を説明するための説明図であり、(a)はクランクシャフトの一例を示す平面図、(b)は軸受け接触部における油膜厚さ分布示すグラフである。
【図2】摺動面における表面荒さを説明するための説明図であり、(a)はクランクシャフトと軸受け接触部の断面図、(b)は接触部における摺動面の平面図である。
【図3】摺動面における凹部の深さ分布の一例を示すグラフである。
【図4】内接2円筒試験機を説明するための説明図であり、(a)は実験に用いた摺動部材の構成を示す断面図、(b)は内接2円筒試験機の回路図である。
【図5】フリクションマップの一例を示す図面である。
【図6】油膜形成率マップの一例を示す図面である。
【図7】微細な凹部形状パターンを示す図面である。
【図8】可変圧縮比エンジンのクランクシャフト部分とエンジンシリンダ内部の概略断面図である。
【符号の説明】
1 クランクシャフト
2 接触部
3 軸受け
4 凹部
10 外円筒
11 鋼製円筒
12 アルミメタル
20 内円筒
101 シリンダ
102 ピストン
103 ピストンピン
104 第1コンロッド
105 コンロッド間接続ピン
106 第2コンロッド
107 クランクピン
108 コントロールロッド
109 コントロールロッド接続ピン
Claims (7)
- 摺動面に摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ、深さ分布が油膜厚さ分布に応じて変化する微細な凹部を有することを特徴とする摺動部材。
- 前記凹部の深さ分布は、中央部ほど深く、端部ほど浅いことを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
- 前記凹部は、前記摺動面の摺動方向と直交する方向の幅をBとし、前記凹部を形成する範囲をSとした場合に、少なくともS/B>0.2となるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
- 前記凹部は、前記油膜厚さをhとし、前記凹部の深さをtとした場合に、その比h/tが0.2〜3となる前記凹部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の摺動部材。
- 前記摺動面は、ベース面の凹凸の最大高さが1μm以下、前記凹部の最大深さが0.5〜20μmであることを特徴とする請求項4記載の摺動部材。
- 請求項1〜5のいずれか一つに記載の摺動部材を用いたことを特徴とする内燃機関のクランクシャフト。
- シリンダ内を往復動するピストンにピストンピンを介して第1コンロッドが接続され、当該第1コンロッドがコンロッド間接続ピンによって第2コンロッドと揺動可能に接続され、当該第2コンロッドがクランクシャフトとクランクピンによって回転可能に装着され、前記第2コンロッドが前記クランクピンを中心に回転位置を変更するためのコントロールロッドとコントロールロッド接続ピンにより揺動可能に接続され、当該コントロールロッドの前記第2コンロッドと接続されていない側の接続部に当該コントロールロッドを移動させて前記ピストンのストロークを変更する制御機構が接続されている可変圧縮比エンジンにおいて、
少なくとも前記クランクシャフトの前記クランクピン部分に請求項1〜5のいずれか一つに記載の摺動部材を用いたことを特徴とする可変圧縮比エンジン。
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