JP4103602B2 - 摺動部材、クランクシャフト、および可変圧縮比エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動部材、この摺動部材を用いたクランクシャフト、およびこの摺動部材を用いた可変圧縮比エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、摺動部材における摩擦を低減するためには、摺動部材の摺動面に微細な窪み、凹面、溝などを形成することが行われている。
【0003】
このような窪み、凹面、溝などを摺動部材に形成する従来の技術は、形成例えば、往復摺動を行うピストン/ボアのフリクション低減を目的として、摺動面において、摺動方向に対して深さを変化させた微細な凹部を形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−235852号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の摺動部材は、クランクシャフトなどように、回転運動する摺動条件における摺動方向と直交する方向の微細形状に関しては、凹部や窪み、溝の深さが均一であるため、接触部内の油膜厚さ分布や油膜保持能力に応じた最適化が図られておらず、低フリクションという機能が必ずしも十分に発現されないという問題があった。特にクランクシャフトでは、軸の曲げたわみが発生し、それを支えるメタル材の端部に油膜が薄い場所が存在し、深さの均一な凹凸を形成するだけでは、フリクション低減効果が限定されるだけでなく、軸受け端部での磨耗や焼き付きなどの損傷が懸念されるという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、回転運動する摺動部材において、フリクション低減効果を大きくすることのできる摺動部材を提供することである。また、他の目的は、このようにフリクションを低減させた摺動部材を用いることで、回転部分における摩擦抵抗を少なくした可変圧縮比エンジンを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、摺動面に微細な凹部を形成し、前記凹部による前記摺動面の粗さの方向性を、摺動方向と直交する方向の中心から所定範囲内の部分と、それ以外の部分とで異なるようにしたものであり、前記粗さの方向性は、前記摺動面の粗さを自己相関係数で表し、前記摺動方向の自己相関係数の値が半分に低下する長さをk0.5xとし、前記摺動方向と直交する方向の自己相関係数の値が半分に低下する長さをk0.5yとして、その比をk0.5x/k0.5yとした場合に前記所定範囲内が、k0.5x/k0.5y≦1であることを特徴とする摺動部材である。
【0008】
また、本発明は、上記の摺動部材を用いたことを特徴とする内燃機関のクランクシャフトである。
【0009】
さらに、シリンダ内を移動するピストンにピストンピンを介して第1コンロッドが接続され、当該第1コンロッドがコンロッド間接続ピンによって第2コンロッドと揺動可能に接続され、当該第2コンロッドがクランクシャフトとクランクピンによって回転可能に装着され、前記第2コンロッドが前記クランクピンを中心に回転位置を変更するためのコントロールロッドとコントロールロッド接続ピンにより揺動可能に接続され、当該コントロールロッドの前記第2コンロッドと接続されていない側の接続部に当該コントロールロッドを移動させて前記ピストンのストロークを変更する制御機構が接続されている可変圧縮比エンジンにおいて、少なくとも前記クランクシャフトの前記クランクピン部分に上記摺動部材を用いたことを特徴とする可変圧縮比エンジンである。
【0010】
【発明の効果】
本発明の摺動部材によれば、摺動方向に対する粗さの方向性を軸受け幅の中心部分と、それ以外の部分とで異なるようにしたので、より多くの油を接触部に流入させることが可能となり、より広い作動条件でフリクション低減効果を発現するとともに、軸受け端部での磨耗や焼き付きなどの損傷を抑制することができる。
【0011】
また、本発明によるクランクシャフトによれば、クランクシャフト端部で発生する磨耗や焼き付きを抑制し、摩擦係数を低減することができる。
【0012】
さらに、本発明により可変圧縮比エンジンによれば、焼き付き性や磨耗が改善され、さらに摩擦係数が低減することにより摩擦損失を低減して、エンジンの回転効率を向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態として本発明を適応した部材の一つであるクランクシャフト受について簡単に説明する。
【0015】
図1はクランクシャフトの軸受け接触部における油膜厚さ分布を説明するための説明図で、図1(a)はクランクシャフトの一例を示す平面図であり、図1(b)は軸受け接触部における油膜厚さ分布示すグラフである。図1(b)のグラフにおいて、縦軸は油膜厚さ(μm)であり、横軸は軸受けとの接触部の幅(接触部幅)を示し、この接触部幅を0〜1として示したものである。
【0016】
図示するように、クランクシャフト1の軸受けとの接触部2(図示円内の部分)の摺動面において、油膜厚さは、その中央部Sに比べて端部Tの方が薄い。
【0017】
本実施の形態は、このようなクランクシャフト1の接触部2、すなわち、軸受けと接触する摺動面に微細な凹部を形成し、この凹部による摺動面の粗さが、摺動方向に対する粗さの方向性を端部と中央部で異なるようにしたものである。
【0018】
図2は摺動面における凹部によって形成される表面荒さと、この粗さの方向性パラメータを説明するための説明図であり、図2(a)はクランクシャフト軸受け接触部の断面図、図2(b)は接触部における摺動面の平面図、図2(c)は摺動面における表面粗さの自己相関係数を示すグラフである。
【0019】
図2(a)に示すように、クランクシャフト1の油膜を受ける接触部2には、この接触部2を取り巻くように軸受け3が設けられている。
【0020】
そして、接触部2の摺動面5には、図2(b)に示すように、凹部4aおよび4bが形成されている。
【0021】
接触部2の摺動方向をx、摺動方向と直交する方向をyとして、x方向およびy方向に凹部4aおよび4bによる摺動面5の粗さを測定し、この測定結果を波として捉え、その波長について自己相関係数を求める。
【0022】
そして、図2(c)に示すように、求めた自己相関係数の値が半分に低下する長さ(波長)を求める。ここで、この自己相関係数の値が半分に低下する長さは、x方向をk0.5x、y方向をk0.5yとする。また、その比k0.5x/k0.5yを方向性パラメータと定義する。
【0023】
本実施の形態では、軸受け幅の中央部S部分20〜60%の範囲をk0.5x/k0.5y≦1となるように、その他の範囲Tをk0.5x/k0.5y>1となるように凹部4aおよび4bによる粗さの方向性が中央部分と端部とで異なるようにしている。なお、中央部の20〜60%とは、図2(b)に示したとおり、摺動面5における軸受け幅Bの中心(図中摺動方向の矢印x)から±10〜30%の範囲である。なお、図2(b)において、凹部4aは中央部に形成した凹部を示し、4bはそれ以外の部分に形成した凹部を示す。
【0024】
ここでこの中央部において、k0.5x/k0.5y≦1となる範囲が20%未満であると、油を巻き込む効果が十分でなく耐焼き付き性を改善するに至らず、また、フリクション低減効果も少ないため好ましくない。一方、k0.5x/k0.5y≦1となる範囲が60%を越えた場合も、前面に方向性を規定せずに凹部を形成したものと同じになってしまい、やはり耐焼き付き性を改善することができず、また、フリクション低減効果も少ない。
【0025】
摺動面5は、ベース面(摺動面そのもの)の表面凹凸の最大高さが1μm以下(下限値は0であるが実際には加工機械の精度限界となる)で、凹部4aおよび4bの平均深さが0.5μm〜20μmであることが好ましい。
【0026】
これは、ベース面の凹凸の最大高さを1μm以下とすることで、油膜厚さ減少に伴う境界摩擦係数増加を抑制し、混合潤滑あるいは流体潤滑領域での運転が可能となる。一方、最大高さが1μmを超える場合、金属接触の発生が起き易くなり、このため、境界摩擦係数が増大し、摩擦係数が増大すると同時に、磨耗や焼き付きという損傷が発生する可能性が高くなるので好ましくない。
【0027】
一方、凹部4aおよび4bの平均深さを0.5〜20μmとすることで、摩擦係数の低減と耐磨耗性、耐焼き付き性を両立できる。これは、凹部4aおよび4bの平均深さが0.5μm未満であると、凹部として機能せず、単にベース面の凹凸として作用して境界摩擦係数を増大させてしまう可能性があり好ましくなく、凹部4aおよび4bの平均深さが20μmを超えるほど深くしても、磨耗係数の低減にはほとんど効果がなく、あまり深くすると、摺動面の耐久性を低下させることにもなりかねないため、平均で20μm程度が深さの上限となる。
【0028】
また、凹部4aおよび4bの開口部の長さは、平均で15〜500μmとしている。これは、凹部4aおよび4bの開口部の長さが15μm未満であると、油膜の保持性能が悪化するために、金属接触が発生し好ましくない。一方、500μmを越えると、開口部分が広くなりすぎ、凹部への油の流入が増加して負荷容量が下がり金属接触が発生して耐焼き付き性が低下するため好ましくないものである。
【0029】
このように、凹部4aおよび4bの開口部の長さを平均で15〜500μmとすることで、前述の摩擦係数の低減、耐焼き付き性、耐磨耗性などの抑制を発現するだけでなく、微細形状付与による、振動の増加を抑制することができる。
【0030】
凹部4aおよび4bの形状は、後述する実施例のごとく、長方形や円形などさまざまな形状が考えられる。
【0031】
【実施例】
次に、上述のように構成された実施の形態に基づいて、実際にさまざまな凹部形状の摺動部材を製作して摩擦係数を求める実験を行った。
【0032】
図3は本実施例に用いた内接2円筒試験機を説明するための説明図で、図3(a)は、実験に用いた摺動部材の構成を示す断面図、(b)は内接2円筒試験機の回路図である。
【0033】
実験に用いる摺動部材は、図3(a)に示すように、外円筒10と内円筒20からなる。外円筒10は外径φ60mmの鋼製円筒11に内径φ45mmのアルミメタル12を圧入したものである。一方、内円筒20は外径がφ44.8mmの鋼鉄(SCM440H鋼)の焼き入れ焼き戻し材である。内円筒20および外円筒10の幅はともに10mmである。
【0034】
内円筒20および外円筒10にはそれぞれACサーボモータ(不図示)を取り付け独立に回転制御できるようにしている。そして、5W30の油を入れた油浴内にこの内円筒20および外円筒10を浸すことで、内円筒20および外円筒10の間に油膜を形成させた。
【0035】
実験は、ラジアル荷重500kg、油温度80℃、相対すべり速度0.2〜12m/sにおいて、平均速度を−2〜2m/sまで変化させ、内円筒軸に取り付けたトルクセンサにより回転トルクを計測して接線力を算出し、ラジアル荷重で除することにより摩擦係数を求めた。なお、平均速度は内円筒速度をu1、外円筒速度u2とした場合、(u1+u2)/2である。同様に相対すべり速度は、(u1−u2)である。
【0036】
測定した摩擦係数は、縦軸を相対すべり速度、横軸を平均速度で表したフリクションマップとして整理した。これらのフリクションマップを基に、摩擦係数の望小解析を実施した。図4はこのフリクションマップの一例を示す図面である。フリクションマップとは、図示するように、縦軸を相対すべり速度、横軸を平均速度で表し、このマップ上に摩擦係数を等高線図として整理したものである。このマップにより内円筒表面の接触部2においてどのような摩擦係数分布となっているかがわかる。
【0037】
また、耐焼き付き性および耐磨耗性を評価する目的で、電気抵抗法による分離電圧の測定を実施した。分離電圧は図3(b)に示す回路を作製し、運転中の外円筒10と内円筒20の間の抵抗変化に起因する電圧を測定することにより実施した。本回路では、完全に油膜で分離されている場合に、分離電圧が750mVを示し、完全に接触している場合に0mVを示すことになるように、抵抗R1およびR2の抵抗値を決めている。
【0038】
耐焼き付き性および耐磨耗性は、この分離電圧が大きい値の方が優れることは言うまでもない。運転時の分離電圧を計測し、完全分離状態の750mVで除した値を油膜形成率と定義し、フリクションマップと同様に油膜形成率マップとして表した。油膜形成率は、望目特性として解析を行った。図5は、この油膜形成率マップの一例を示す図面である。このマップは縦軸を相対すべり速度、横軸を平均速度で表し、マップ上に油膜形成率を等高線図として整理したものである。このマップにより内円筒表面の接触部2においてどのような油膜形成率の分布となっているかがわかる。
【0039】
なお、図4および図5においては、123個のデータをまとめたものである。
【0040】
摩擦係数は回転トルクとして望小解析を行い、油膜形成率に関しては分離電圧として望目解析を行った。望小解析、および望目解析は以下に示す式により計算した。
【0041】
望小解析
【0042】
【数1】
【0043】
望目特性解析
【0044】
【数2】
【0045】
(実施例および比較例)
実施例および比較例は、いずれもφ44.8mmの内円筒表面に凹部微細形状を形成した(比較例4は形成していない)。凹部微細形状は、マスクブラスト処理により形成した。すなわち、光リソグラフィ技術を利用し、樹脂製マスクに凹部微細形状を形成し、その樹脂マスクを円筒表面に貼り付けた後、平均粒径20μmのアルミナ砥粒を、噴射ノズルからワークまでの距離を100mmとし、投射流量100g/min、投射圧0.4MPaの条件下で投射し、凹部微細形状を得た。その後、凹部微細形状周辺に形成されたエッジ部の盛り上がりを粒径9μmのテープラップフィルムにより除去し、試験に供した。なお、実施例および比較例の凹部微細形状深さはいずれのサンプルにおいても、1μm、面積率は5%とした。
【0046】
図6は凹部微細形状の基本形状を示す斜視図である。本実施例では、図6(a)に示す円形状窪みであるディンプル形状、図6(b)に示す長手方向が比較的長い矩形状、図6(c)に示す長手方向が比較的短い矩形状の3種類である。
【0047】
そして、実施例および比較例では、これら3種類の凹部微細形状を、図7に示すように、摺動方向と直交する方向に組み合わせたパターンで形成した。凹部微細形状の形成範囲は、中央部Sと軸受け幅Bで規定し、S/B=0.6となるようにした(すなわち中央部Sの範囲が軸受け幅B全体の60%となるようにしている)。
【0048】
実施例1は、図7(a)に示すように、中央部に開口部の直径がφ50μmのディンプルを形成し、端部(中央部S以外の部分、以下同様)に幅50μm、長さ100μmの矩形を長さ手方向が図示縦長となるように形成した。この矩形のアスペクト比は2である。
【0049】
実施例2は、図7(b)に示すように、中央部Sに幅50μm、長さ100μmの矩形を長さ手方向が図示横向きとなるように形成し、端部に幅50μm、長さ100μmの矩形を長さ手方向が図示縦向きとなるように形成した。矩形のアスペクト比はいずれも2である。
【0050】
実施例3は、図7(c)に示すように、中央部に幅50μm、長さ200μmの図示横長の矩形を、また端部に幅50μm、長さ200μmの図示縦長の矩形を形成した。矩形のアスペクト比はいずれも4である。
【0051】
実施例4は、図7(d)に示すように、中央部に幅50μm、長さ200μmの矩形(アスペクト比4)を互いに角度60度にしてV字型形状となるようにし、また端部には幅50μm、長さ200μmの図示縦長の矩形(アスペクト比4)を形成した。
【0052】
比較例1は、図7(e)に示すように、全面にφ50μmのディンプルを形成した。
【0053】
比較例2は、図7(f)に示すように、全面に幅50μmの図示横長で軸受け幅全長にわたる矩形を形成した。
【0054】
比較例3は、図7(g)に示すように、全面に幅50μm、長さ100μm(アスペクト比2)の矩形を形成した。
【0055】
比較例4は、図7(h)に示すように、全面を表面粗さRaが0.01μm以下になるように、テープラップ加工を施し、鏡面に近い状態に仕上げた。
【0056】
これら実施例および比較例における望小解析結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、本発明を適用した実施例は、いずれも比較例と比べて、低いトルクで回転可能なことを示しており、この結果から摩擦係数が低くなっていることがわかる。また、同時に測定した電気抵抗法による分離電圧も実施例の方が比較例に比べて大きな値を示しており、金属接触の割合が減少していることがわかる。なお、試験後の摺動部観察の結果からも電気抵抗法の結果と矛盾しない結果が得られた。
【0059】
以上説明したように本第1の実施の形態によれば、クランクシャフト1の摺動方向に対する粗さの方向性を軸受け幅を中心に20〜60%の領域をk0.5x/k0.5y≦1とすることで、より多くの油を接触部2に流入させることが可能となり、より広い作動条件でフリクション低減効果を発現するとともに、軸受け端部での磨耗や焼き付きなどの損傷を抑制するという優れた効果をもたらす。
【0060】
また、軸受け幅の端部の残りの領域の表面粗さの方向性をk0.5x/k0.5y>1としたことで、流入した油を接触部2に留める能力が増し、側方漏れが抑制され、摩擦係数を低下すると同時に、耐焼き付き、耐摩耗性が向上する。
【0061】
さらに、ベース面の凹凸の最大高さを1μm以下、凹部4aおよび4bの平均深さを0.5μm〜20μmとしたことで、油膜厚さ減少に伴う境界摩擦係数増加を抑制し、混合潤滑あるいは流体潤滑領域での運転が可能となる。一方、窪みの平均深さが0.5μm〜20μmとすることで、摩擦係数の低減と耐磨耗性、耐焼き付き性を両立できる。
【0062】
さらに、凹部4aおよび4bの大きさを平均値で15〜500μmとすることで、摩擦係数の低減、耐焼き付き性、耐磨耗性などの抑制を発現するだけでなく、微細形状付与による、振動の増加を抑制できるという優れた効果がもたらされる。
【0063】
このクランクシャフト1をさまざまなエンジンに用いることにより、クランクシャフト端部で発生する磨耗や焼き付きを抑制し、凹部微細形状を付与しないものと比較して、摩擦係数を低下させて、摩擦損失を低減することができる。
【0064】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、前述した第1の実施の形態の摺動部材を用いた可変圧縮比エンジンである。
【0065】
図8は可変圧縮比エンジンのクランクシャフト部分とエンジンシリンダ内部の概略断面図である。
【0066】
この可変圧縮比エンジンは、シリンダ101内を往復動するピストン102に、ピストンピン103を介して第1コンロッド104と接続されており、この第1コンロッド104がコンロッド間接続ピン105によって第2コンロッド106と揺動可能に接続されている。第2コンロッド106は、クランクシャフト1とクランクピン107によって回転可能に装着されている。そして第2コンロッド106は、さらに、コントロールロッド108とコントロールロッド接続ピン109により揺動可能に接続され、コントロールロッド108の第2コンロッド106と接続されていない側の接続部110は、このコントロールロッド108を移動させて機関圧縮比を可変制御する制御機構(不図示)に接続されている。
【0067】
このように構成された可変圧縮比エンジンは、コントロールロッド108を移動させて、第2コンロッド106をクランクピン107を中心にして回転させることで、実質的にコンロッド長(クランクピンからピストンピンまでの長さL)を変えてピストン102のストロークを変化させ、機関圧縮比を変更できるようにしている。
【0068】
このような第1コンロッド104と第2コンロッド106の接続部であるコンロッド間接続ピン105の部分、第2コンロッド106とクランクシャフト1の接続部であるクランクピン107の部分、および第2コンロッド106とコントロールロッド108の接続部であるコントロールロッド接続ピン109の部分は、いずれも摺動部であり、この摺動部に本発明を適用した摺動部材、すなわち、摺動部における摺動方向と直交する方向の幅方向中央部分の20〜60%の範囲をk0.5x/k0.5y≦1となるように、その他の範囲をk0.5x/k0.5y>1となるように凹部を設けたものである。この凹部は、前述した第1の実施の形態と同様であり、その開口部の平均長さが15〜500μmであることが好ましく、ベース面の凹凸の最大高さが1μm以下、凹部の平均深さが0.5〜20μmであることが好ましい。
【0069】
これにより、通常のレシプロエンジンに比べて、接続部が多くなっているために、クランクシャフトに加わる力が大きくなる可変圧縮比エンジンにおいても、クランクシャフトのクランクピン部分のほか、その他の摺動部において摩擦係数を小さくすることが可能となり、摺動部における耐焼き付き性や耐磨耗性を改善することができ、エンジンの効率を良くすることが可能となる。
【0070】
なお、本第2の実施の形態においては、各ロッドが接続されている摺動部すべてに第1の実施の形態による摺動部材を用いたが、これに変えてクランクシャフトのみを本発明による摺動部材としてもよい。これは、可変圧縮比エンジンにおいては、上記のとおり接続部が多くなっているために、クランクシャフトに加わる力が通常のエンジンと比較して大きくなるため、このクランクシャフトのクランクピン部分の摩擦係数を下げるだけでも効率改善効果が期待できるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 クランクシャフトの軸受け接触部における油膜厚さ分布を説明するための説明図であり、(a)はクランクシャフトの一例を示す平面図、(b)は軸受け接触部における油膜厚さ分布示すグラフである。
【図2】 摺動面における凹部によって形成される表面荒さと、この粗さの方向性パラメータを説明するための説明図であり、(a)はクランクシャフト軸受け接触部の断面図、(b)は接触部における摺動面の平面図、(c)は摺動面における表面粗さの自己相関係数を示すグラフである。
【図3】 内接2円筒試験機を説明するための説明図であり、(a)は、実験に用いた摺動部材の構成を示す断面図、(b)は内接2円筒試験機の回路図である。
【図4】 フリクションマップの一例を示す図面である。
【図5】 油膜形成率マップの一例を示す図面である。
【図6】 凹部微細形状の基本形状を示す斜視図である。
【図7】 凹部微細形状の組み合わせたパターンを示す図面である。
【図8】 可変圧縮比エンジンのクランクシャフト部分とエンジンシリンダ内部の概略断面図である。
【符号の説明】
1 クランクシャフト
2 接触部
3 軸受け
4 凹部
10 外円筒
11 鋼製円筒
12 アルミメタル
20 内円筒
101 シリンダ
102 ピストン
103 ピストンピン
104 第1コンロッド
105 コンロッド間接続ピン
106 第2コンロッド
107 クランクピン
108 コントロールロッド
109 コントロールロッド接続ピン
Claims (6)
- 摺動面に微細な凹部を形成し、前記凹部による前記摺動面の粗さの方向性を、摺動方向と直交する方向の中心から所定範囲内の部分と、それ以外の部分とで異なるようにしたものであり、
前記粗さの方向性は、前記摺動面の粗さを自己相関係数で表し、前記摺動方向の自己相関係数の値が半分に低下する長さをk0.5xとし、前記摺動方向と直交する方向の自己相関係数の値が半分に低下する長さをk0.5yとして、その比をk0.5x/k0.5yとした場合に前記所定範囲内が、k0.5x/k0.5y≦1であることを特徴とする摺動部材。 - 前記所定範囲は、20〜60%であることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
- 前記凹部は、開口部の平均長さが15〜500μmであることを特徴とする請求項1または2記載の摺動部材。
- 前記摺動面はベース面の凹凸の最大高さが1μm以下、前記凹部の平均深さが0.5〜20μmであることを特徴とする請求項4記載の摺動部材。
- 請求項1〜4のいずれか一つに記載の摺動部材を用いたことを特徴とする内燃機関のクランクシャフト。
- シリンダ内を往復動するピストンにピストンピンを介して第1コンロッドが接続され、当該第1コンロッドがコンロッド間接続ピンによって第2コンロッドと揺動可能に接続され、当該第2コンロッドがクランクシャフトとクランクピンによって回転可能に装着され、前記第2コンロッドが前記クランクピンを中心に回転位置を変更するためのコントロールロッドとコントロールロッド接続ピンにより揺動可能に接続され、当該コントロールロッドの前記第2コンロッドと接続されていない側の接続部に当該コントロールロッドを移動させて前記ピストンのストロークを変更する制御機構が接続されている可変圧縮比エンジンにおいて、
少なくとも前記クランクシャフトの前記クランクピン部分に請求項1〜4のいずれか一つに記載の摺動部材を用いたことを特徴とする可変圧縮比エンジン。
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