JP2004225151A - 下地被膜を有しない、打ち抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

下地被膜を有しない、打ち抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フォルステライト被膜のない電磁鋼板における、磁気特性のばらつきを抑制する方途を与える
【解決手段】C:0.08mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜3.0mass%を含み、sol.Alを100ppm以下およびNを50ppm以下にそれぞれ低減し、かつSおよびSeをそれぞれ50ppm以下に低減した溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、次いで1回若しくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、露点が40℃以下の雰囲気にて再結晶焼鈍を行い、その後最終仕上げ焼鈍を露点が40℃以下の雰囲気にて行って、フォルステライト(MgSiO)を主体とする下地被膜を有しない、方向性電磁鋼板を製造するに際し、熱間圧延の粗圧延出側温度を、溶鋼の不純物量に応じて所定の式から求められる温度以上に制御する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として小型のモーターや発電機の鉄心材料に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、小型トランスでは、電磁鋼板を積層してコアとして使用している。このコアの代表的な形状としては、図1(a)または(b)に示すような、EI型コアが知られている。このEI型コアは、打ち抜き加工により製造されているが、打ち抜く際に発生するスクラップの量が少ない、同図(c)に示すような、効率的な加工方法が用いられている。
【0003】
現在、このEI型コア用の鉄心材料には、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の両方が用いられている。まず、無方向性電磁鋼板を使用した場合は、方向性電磁鋼板を使用した場合に比較して磁気特性のレベルが低いために、コアの磁気特性は劣っている。しかしながら、無方向性電磁鋼板は方向性電鋼板に比較して製造プロセスが単純で価格を低く抑えられることから、経済的な観点から使用されている。
【0004】
一方、方向性電磁鋼板は、圧延方向の磁気特性は良好であるが、圧延直角方向の磁気特性は著しく劣っている。但し、EIコア内での磁束の流れは、その2割程度は圧延直角方向に流れるが、8割程度は圧延方向であるから、EI型コアの鉄心材料として方向性電磁鋼板を使用した場合には、無方向性電磁鋼板よりも遥かに良好な特性が得られる。そのため、鉄損を重視する多くの場合には方向性電磁鋼板が用いられている。
【0005】
ここで、EI型コアは、鋼板を金型によって打抜き加工することによって製造されている。通常、方向性電磁鋼板の表面には、フォルステライト(MgSiO)を主体とした下地被膜(グラス被膜)が施されているが、無方向性電磁鋼板に施されている有機樹脂系の被膜に比べて、フォルステライト被膜は著しく硬質であるため、打抜金型の磨耗が大きい。そのために、金型の再研磨または交換が必要となり、需要家における鉄心加工時の作業効率の低下とコストアップをもたらすことになる。また、スリット性、切断性も同様にフォルステライト被膜の存在により劣化する。
【0006】
方向性電磁鋼板の打抜加工性を改善する方法として、フォルステライト被膜を酸洗や研削などにて除去することが一般的であるが、コスト高になるのみならず、表面性状が悪化し磁気特性も劣化するという、大きな問題がある。
【0007】
一方、特許文献1および特許文献2には、仕上焼鈍時に適用するMgOを主体とする焼鈍分離剤中に薬剤を配合し、フォルステライト被膜の形成を抑制する技術が、また特許文献3には、Mnを含有する素材にシリカ、アルミナを主体とする焼鈍分離剤を適用する技術が、それぞれ提案されている。
【0008】
これらの方法では、コイルの層間における仕上焼鈍雰囲気の変動によりフォルステライトが部分的に形成されることが多く、フォルステライトの形成を完全に抑制した製品板を得ることは、極めて困難であった。
【0009】
これに対して、発明者らは、特許文献4において、インヒビタ成分を含有しない高純度素材を用いて、固溶窒素の粒界移動抑制効果を利用して二次再結晶を発現させる技術を提案した。この技術では、高温でのインヒビタ成分の純化が不要となるため、焼鈍分離剤を用いずに仕上焼鈍することが可能となり、フォルステライト被膜のない鋼板を得ることができる。
【0010】
さらに、Cを低減した成分を用いて再結晶焼鈍における雰囲気を低酸化性とすることによって、酸化被膜の生成をさらに抑制する技術を、特許文献5に提案した。これらの技術により、フォルステライトを形成しない方向性電磁鋼板を安価に製造することができるようになった。そして、このような表面に硬質なフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板は、EI型コア等の、打ち抜き加工性を重視する小型電気機器に有利に適合する。
【0011】
【特許文献1】
特公平6−49948号公報
【特許文献2】
特公平6−49949号公報
【特許文献3】
特開平8−134542号公報
【特許文献4】
特開2000−129356号公報
【特許文献5】
特開2001−32021号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発明者らが、上記の技術にて製造を重ねる内に、最終製品のコイル長手方向において、電磁特性のばらつきが生じることがわかった。
【0013】
そこで、本発明は、フォルステライト被膜のない電磁鋼板における、磁気特性のばらつきを抑制する方途を与えることによって、均一な電磁特性を有する方向性電磁鋼板を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
さて、最終製品のコイル長手方向における電磁特性のばらつきについて、その原因を調査したところ、例えばS、Seの様なMn化合物を作る微量元素が比較的多い場合に、ばらつきが大きいことがわかった。すなわち、これら不純物が多い場合に、スラブ再加熱により一旦再固溶した不純物が熱間圧延の粗圧延時に温度の低い部分で再析出を開始し、その析出物が粗大にオストワルド成長することによって、以降の再結晶焼鈍過程において、コイル内の再結晶が不均一になり、結果として、最終製品の電磁特性にばらつきを生じさせている、と考えられる。
【0015】
ここに、方向性電磁鋼板の素材となるスラブは、一般的に燃焼ガスを燃料とするガス炉で再加熱された後、熱間圧延に供されるが、熱間圧延前の加熱抽出温度や熱間圧延の粗圧延出側温度、或いは仕上圧延出側温度は、通常は鋼種によって一義的に決められている。
【0016】
そこで、発明者らは、上記課題を解決するための方途について鋭意究明したところ、溶鋼中の不純物の含有量に応じて熱間圧延の粗圧延出側温度を制御することが、上記課題を解決するのに極めて有効であることを知見するに到った。
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
【0017】
C:0.0030mass%、Si:3.2mass%およびMn:0.05mass%を含有し、かつAlを30ppm、Nを15ppm、Sを5、10、20、30、40ppmの5水準とし、その他成分を合計で10ppm以下に低減した組成の鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。ついで、スラブを1200℃に加熱後、粗圧延出側温度を850〜1100℃までの範囲内の種々の温度に調整して熱間圧延を行って2.5mm厚に仕上げた。その後、N雰囲気中で900℃で1分間均熱した後急冷した。
【0018】
次に、冷間圧延により0.35mmの最終板厚とした後、水素50vol%および窒素50vol%、露点−10℃の雰囲気中で900℃で10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、露点−20℃以下の窒素雰囲気中にて、常温〜875℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間保持する条件に従って、最終仕上げ焼鈍を行った。
【0019】
かくして得られた製品板の鉄損と磁束密度を測定した。その結果を、図2に示すように、微量元素であるSの含有量が増大するに従って、粗圧延出側温度が低い場合に良好な電磁特性が得られなくなった。
この理由は、次の通りと考えられる。
【0020】
すなわち、鋼中に含まれるSは,スラブの状態ではMnSの様な硫化物として析出している。このスラブを加熱することで硫化物は固溶するが,粗圧延のような歪みを付与することで歪みの部分が析出の核となる。圧延中に温度が下がることで硫化物の再析出が始まるが、この再析出は不純物の量が多いほど、より高温側で開始する。粗圧延中に析出が開始した部分は,仕上げ圧延までに析出物のオストワルド成長が起こるため、以降の工程でのコイル長手方向の再結晶が不均一になり、最終製品において均一かつ良好な電磁特性が得られなかったもの、と考えられる。
【0021】
Sと同様に、Mn化合物を作るSeについても同様の検討を行った。
すなわち、C:0.0030mass%、Si:3.2mass%、 Mn:0.05mass%、Al:25ppmおよびNを15ppm含有し、S:5ppmであって、Seが20、30、40、50ppmの各水準であり、その他成分を合計で10ppm以下に低減した組成の鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。ついで、スラブを1200℃に加熱後、粗圧延出側温度を850〜1100℃までの範囲内の種々の温度に調整して熱間圧延を行って2.5mm厚に仕上げた。その後、N雰囲気中で900℃で1分間均熱した後急冷した。
【0022】
次に、冷間圧延により0.35mmの最終板厚とした後、水素50vol%および窒素50vol%、露点−10℃の雰囲気中で900℃で10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、露点−20℃以下の窒素雰囲気中にて、常温〜875℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間保持する条件に従って、最終仕上焼鈍を行った。
【0023】
かくして得られた製品板の鉄損と磁束密度を測定した。その結果を、図3に示すように、Sの場合と同様に、微量元素であるSeの含有量が増大するに従って、粗圧延出側温度が低い場合に良好な電磁特性が得られなくなった。
この理由についても前述の通りと考えられる。
【0024】
さらに、C:0.0030mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.05mass%およびNを15ppm含有し、S:5ppm、Se:10ppm、Alが20、50、80ppmの各水準であり、その他成分を合計で10ppm以下に低減した組成の鋼スラブを連続鋳造にて製造した。ついで、スラブを1200℃に加熱後、粗圧延出側温度を850〜1100℃までの範囲内の種々の温度に調整して熱間圧延を行って2.5mm厚に仕上げた。その後、N雰囲気中で900℃で1分間均熱した後急冷した。
【0025】
次に、冷間圧延により0.35mmの最終板厚とした後、水素50vol%および窒素50vol%、露点−10℃の雰囲気中で900℃で10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、露点−20℃以下の窒素雰囲気中にて、常温〜875℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間保持する条件に従って、最終仕上焼鈍を行った。
【0026】
かくして得られた製品板の鉄損と磁束密度を測定した。その結果を、図4に示すように、SおよびSeの場合と同様に、微量元素であるAlの含有量が増大するに従って、粗圧延出側温度が低い場合に良好な電磁特性が得られなくなった。
この理由についても前述の通りと考えられる。
【0027】
以上の実験により、鋼中の不純物元素の含有量に応じて粗圧延出側温度を制御することによって、良好な磁気特性が得られることがわかった。
そして、これらの実験を含めて、粗圧延出側温度と鋼中不純物元素との関係について鋭意調査したところ、粗圧延出側温度T(℃)を
T≧3.14×[S(ppm) ]+1.28×[Se(ppm)]+1.14×[Al(ppm)]+842
となるように制御することが、良好な電磁特性を得るためには望ましいことを見出した。すなわち、前掲の実験を含めた種々の実験から、鋼中不純物の中でも特にS、SeおよびAlが最低限必要な粗圧延出側温度に与える影響が強いことを明らかにし、これら元素含有量と粗圧延出側温度との相関関係を調査して前式を導出したのである。
【0028】
なお、不純物元素の影響を排除するためには不純物元素そのものを除去することも有効であるが、精錬コストの増加を招き、また不可避的に元素が含まれるので、実用的では無い。
【0029】
以上の実験を基に、良好な磁気特性が安定して得られることを新規に知見し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
(1)C:0.08mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜3.0mass%を含み、sol.Alを100ppm以下およびNを50ppm以下にそれぞれ低減し、かつSおよびSeをそれぞれ50ppm以下に低減した溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、次いで1回若しくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、露点が40℃以下の雰囲気にて再結晶焼鈍を行い、その後最終仕上げ焼鈍を露点が40℃以下の雰囲気にて行って、フォルステライト(MgSiO)を主体とする下地被膜を有しない、方向性電磁鋼板を製造するに際し、熱間圧延の粗圧延出側温度T(℃)を、
T≧3.14×[S(ppm) ]+1.28×[Se(ppm)]+1.14×[Al(ppm)]+842
に制御することを特徴とする下地被膜を有しない打ち抜き加工性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の各構成要件について、その限定理由を述べる。
まず、この電磁鋼板を製造する際の、溶鋼成分の限定理由を以下に説明する。
溶鋼におけるCが0.08mass%を超えると、鋼板における磁気時効の起こらないC含有量である50ppm以下の範囲に、低減することが困難になるため、0.08mass%以下に制限する。特に、素材段階で50ppm以下に低減しておくことが、再結晶焼鈍を乾燥雰囲気で行い脱炭を省略して平滑な製品表面を得る上で望ましい。または、C量が高い素材の場合、最終仕上焼鈍後、平坦化焼鈍時に低酸化性雰囲気で脱炭することも可能である。
【0031】
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005mass%未満であると効果がなく一方3.0mass%を超えると磁束密度が低下するため、0.005〜3.0mass%とする。
【0032】
sol. Alは100ppm以下に、Nは50ppm以下好ましくは30ppm以下に、それぞれ低減することが、良好に二次再結晶を発現させるために必要である。
また、析出物形成元素であるSおよびSeについても、それぞれ50ppm以下、好ましくは30ppm以下に低減することが必要である。
【0033】
上記成分を有する溶鋼は、通常の通常造塊法または連続鋳造法にてスラブとしてもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。その後の熱間圧延は、必要に応じて熱延板焼鈍を施してもよい。ここで、上述したように、熱間圧延の粗圧延出側温度T(℃)を、
T≧3.14×[S(ppm) ]+1.28×[Se(ppm)]+1.14×[Al(ppm)]+842
に従って制御することが必要である。
【0034】
次いで、1回若しくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、露点が40℃以下の雰囲気にて再結晶焼鈍を行い、その後最終仕上げ焼鈍を露点が40℃以下の雰囲気にて行って、フォルステライト(MgSiO)を主体とする下地被膜を有しない、方向性電磁鋼板を製造する。
ここで、最終冷延後の再結晶焼鈍は、800〜1000℃の範囲で行うことが好適である。再結晶焼鈍の雰囲気は露点40℃以下の雰囲気で行う。露点が高すぎると鋼板表面に酸化物を形成し良好な鉄損が得られなくなる。
【0035】
また、Cによる磁気時効を起こさないためには、Cを50ppm以下に低減する必要があるが、溶鋼成分としてCを50ppm以下を含有する素材を用いる場合には脱炭の必要が無いために、溶鋼成分のCを50ppm以下として再結晶焼鈍の雰囲気を0℃以下の非酸化性にすることは、鋼板表面に酸化物の形成をより少なくするために有効である。
【0036】
その後、最終仕上焼鈍を施すことにより二次再結晶組織を発達させる。最終仕上焼鈍の雰囲気も再結晶焼鈍と同様の理由で、露点40℃以下に抑えることが必要である。
【0037】
【実施例】
実施例1
C:0.0030mass%、Si:3.2mass%およびMn:0.05mass%を含有し、かつAlを30ppm、Nを15ppm、Seを10ppm、Sを5、10、20、30、40ppmの5水準とし、その他成分を合計で10ppm以下に低減した組成の鋼スラブを連続鋳造にて製造した。ついで、スラブを1200℃に加熱後、粗圧延出側温度を表1に示す種々の温度に調整して熱間圧延を行って2.5mm厚に仕上げた。その後、N雰囲気中で900℃で1分間均熱した後急冷した。
【0038】
次に、冷間圧延により0.35mmの最終板厚とした後、水素50vol%および窒素50vol%、露点−10℃の雰囲気中で900℃で10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、露点−20℃以下の窒素雰囲気中にて、常温〜875℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間保持する条件に従って、最終仕上焼鈍を行った。
【0039】
かくして得られた製品板の鉄損と磁束密度を測定した。その結果を、表1に併記するように、S:5ppmおよび10ppmでは粗圧延出側温度:950℃以上で、S:20ppmおよび30 ppmでは同1000℃以上で、S:40ppmでは同1050℃以上で、B:1.83T以上の良好な磁気特性が得られた。
【0040】
【表1】
Figure 2004225151
【0041】
実施例2
C:0.0030mass%、Si:3.2mass%、Al:25ppmおよびMn:0.05mass%を含有し、N:15ppm、S:5ppmであって、Seが20、30、40、50ppmの4水準であり、その他成分を合計で10ppm以下に低減した組成の鋼スラブを連続鋳造にて製造した。ついで、スラブを1200℃に加熱後、粗圧延出側温度を表2に示す種々の温度に調整して熱間圧延を行って2.5mm厚に仕上げた。その後、N雰囲気中で900℃で1分間均熱した後急冷した。
【0042】
次に、冷間圧延により0.35mmの最終板厚とした後、水素50vol%および窒素50vol%、露点−10℃の雰囲気中で900℃で10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、露点−20℃以下の窒素雰囲気中にて、常温〜875℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間保持する条件に従って、最終仕上焼鈍を行った。
【0043】
かくして得られた製品板の鉄損と磁束密度を測定した。その結果を、表2に併記するように、Se:10ppmでは粗圧延出側温度:900℃以上で、Se:20ppm、30ppmおよび40ppmでは同950℃以上で、B:1.83T以上の良好な磁気特性が得られた。
【0044】
【表2】
Figure 2004225151
【0045】
実施例3
C:0.0030mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.05mass%およびN:15ppm含有し、S:5ppm、Se:10ppmであって、Alが20、50、80ppmの3水準であり、その他成分を合計で10ppm以下に低減した組成の鋼スラブを連続鋳造にて製造した。ついで、スラブを1200℃に加熱後、粗圧延出側温度を表3に示す種々の温度に調整して熱間圧延を行って2.5mm厚に仕上げた。その後、N雰囲気中で900℃で1分間均熱した後急冷した。
【0046】
次に、冷間圧延により0.35mmの最終板厚とした後、水素50vol%および窒素50vol%、露点−10℃の雰囲気中で900℃で10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、露点−20℃以下の窒素雰囲気中にて、常温〜875℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間保持する条件に従って、最終仕上焼鈍を行った。
【0047】
かくして得られた製品板の鉄損と磁束密度を測定した。その結果を、表3に併記するように、Al:20ppmでは粗圧延出側温度:900℃以上で、Al:50ppmでは同950℃以上で、そしてAl:80ppmでは同1000℃以上で、B:1.83T以上の良好な磁気特性が得られた。
【0048】
【表3】
Figure 2004225151
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、フォルステライト(MgSiO)を主体とする下地被膜(グラス被膜)を有しないため打ち抜き加工性に優れ、しかもコイル長さ方向に安定した磁気特性を有する方向性電磁鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】EI型コアの形状を示す図である。
【図2】不純物S量と熱間圧延時の粗圧延出側温度を変えた場合のBを示す図である。
【図3】不純物Se量と熱間圧延時の粗圧延出側温度を変えた場合のBを示す図である。
【図4】不純物Al量と熱間圧延時の粗圧延出側温度を変えた場合のBを示す図である。

Claims (1)

  1. C:0.08mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜3.0mass%を含み、sol.Alを100ppm以下およびNを50ppm以下にそれぞれ低減し、かつSおよびSeをそれぞれ50ppm以下に低減した溶鋼を用いて製造したスラブを、熱間圧延し、次いで1回若しくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、露点が40℃以下の雰囲気にて再結晶焼鈍を行い、その後最終仕上げ焼鈍を露点が40℃以下の雰囲気にて行って、フォルステライト(MgSiO)を主体とする下地被膜を有しない、方向性電磁鋼板を製造するに際し、熱間圧延の粗圧延出側温度T(℃)を、
    T≧3.14×[S(ppm) ]+1.28×[Se(ppm)]+1.14×[Al(ppm)]+842
    に制御することを特徴とする下地被膜を有しない打ち抜き加工性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
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