JP2004225144A - 金属水酸化物の製造方法、硫化リチウムの再生方法及びポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造時の電流効率が向上した金属水酸化物の製造方法、この製造方法により得られる金属水酸化物を用いた硫化リチウムの再生方法及びその再生された硫化リチウムを用いたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
【解決手段】金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる金属水酸化物の製造方法。好ましくは、有機極性溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンであり、金属ハロゲン化物は、ハロゲン化リチウムである。
【選択図】 図2
【解決手段】金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる金属水酸化物の製造方法。好ましくは、有機極性溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンであり、金属ハロゲン化物は、ハロゲン化リチウムである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属水酸化物の製造方法、硫化リチウムの再生方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気分解法により、金属ハロゲン化物から金属水酸化物を製造することが工業的に広く行われている。最も汎用な例は、塩化ナトリウム(NaCl)からの苛性ソーダ(NaOH)の製造(苛性電解)である。また、この他にも苛性カリ(KOH)を初め、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の水酸化物製造に工業化例がある。
【0003】
一方、硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する際に副生するハロゲン化リチウムを電気分解法で水酸化リチウム化し、この水酸化リチウムを硫黄化合物と反応させて硫化リチウムを生成し、これをポリアリーレンスルフィドの重合原料に供する方法を、混入ナトリウム量を減少させる技術として、我々が開発している(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特願2002−205111号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のいずれの技術においても、電気分解法の宿命として、用役として多量の電力を消費することが挙げられる。例えば、広汎に工業化されている苛性電解では、その変動コストの70%以上が電気費であることが多い。また、他の金属ハロゲン化物の水酸化技術においても、電気費は、変動コストの過半を占めることが多い。
従って、電気分解法を用いて金属水酸化物を製造する場合には、消費電力をより効率的に使用することが重要と考えられる。
【0006】
ところが、この種の電気分解においては、投入した電流の全てが水酸化反応に寄与できる訳ではなく、例えば、その一部は、陽極室と陰極室とを区切るイオン交換膜を通じての水酸イオンの逆拡散等にも寄与したりするため、実際には、生成する金属水酸化物の量が理論生成量より減少することが多い。尚、この実生成量を理論生成量で除したものを電流効率と称する。
【0007】
このことから、電気分解法における電流効率を向上させることは、目的とする金属水酸化物の製造コストの低減はもとより、副生するハロゲン(例えば、塩素)や水素の製造コストの低減についても大きく寄与できるはずである。
しかし、同一の電気分解装置を使用し、かつ、原料として金属ハロゲン化物の水溶液を用いる限り、電流効率は一義的に決まってしまい、これを変化させることは困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、製造時の電流効率が向上した金属水酸化物の製造方法、この製造方法により得られる金属水酸化物を用いた硫化リチウムの再生方法及びその再生された硫化リチウムを用いたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を原料として電気分解を行うと、生成する金属水酸化物の電流効率が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の第一の態様によれば、金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる金属水酸化物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する際に副生するハロゲン化リチウムから、上記の方法を用いて水酸化リチウムを製造し、水酸化リチウムを硫黄化合物と反応させて硫化リチウムを生成する工程を含む、硫化リチウムの再生方法が提供される。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、上記の再生方法により得られる再生硫化リチウムをハロゲン化芳香族化合物と反応させる工程を含む、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属水酸化物の製造方法について説明する。
本発明では、金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる。本発明の製造方法では、電解生成物として、陽極にハロゲン(例えば、塩素)が生成し、陰極に金属水酸化物及び水素が生成する。また、金属ハロゲン化物として金属塩化物を用いた場合、陰極からは水素が、陽極からは塩素が、それぞれ気体状態で発生する。
【0014】
本発明では、金属ハロゲン化物は特に制限されず、例えば、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化物等を用いることができる。このうち、好ましくはハロゲン化リチウムであり、その中でも、より好ましくは塩化リチウムである。
【0015】
本発明では、有機極性溶媒は特に制限されず、例えば、非プロトン性の極性有機化合物(例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等)を単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。
【0016】
非プロトン性極性有機化合物のうち、アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミド等が挙げられる。
【0017】
ラクタム化合物としては、例えば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドン等が挙げられる。
【0018】
尿素化合物としては、例えば、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。
【0019】
有機硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホラン等が挙げられる。
【0020】
環式有機リン化合物としては、例えば、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホラン等が挙げられる。
【0021】
これらの有機極性溶媒のうち、好ましくはラクタム化合物であり、その中でも、より好ましくは2−メチル−2−ピロリドンである。
【0022】
本発明では、極性有機溶媒の添加量(濃度)は、水と極性有機溶媒との混合物が、金属ハロゲン化物を溶解する限り特に制限されず、電気分解の条件や装置構成等に応じて適宜調節することができる。尚、有機極性溶媒の添加量が多くなると、金属ハロゲン化物が析出し、イオン交換膜への付着等が発生するため好ましくない。
【0023】
本発明では、電気分解装置として、イオン交換膜で陽極室と陰極室とを隔絶した方式のものを用い、イオン交換膜法で電気分解を行うことが好ましい。また、本発明の製造方法は、連続式、バッチ式のいずれにも適用することができる。
【0024】
本発明の金属水酸化物の製造方法は、従来の方法よりも製造時の電解効率を向上させることができるため、電解生成物、即ち、目的とする生成物である金属水酸化物や副生成物であるハロゲン(例えば、塩素)や水素をより安価に製造することができる。これにより、これら電解生成物の製造コストをより低減することが可能となる。
尚、広く行われている苛性電解と同様、気体状態の水素や塩素等は、廃棄することなく各種用途に有効利用することができる。
例えば、水素は、燃料ガスや水添反応原料等として利用することができる。
一方、塩素は、硫酸塔等により含有する水分を除去した後、気体状態のまま、あるいは圧縮した液化塩素として各種用途に供される。各種用途としては、塩素を使用する全ての製造工程が該当するが、一例として、ポリアリーレンスルフィドの原料の一つであるp−ジクロロベンゼン(PDCB)の製造工程に供することができる。当該製造工程は工業レベルで実用化されている。本工程では、ベンゼンを塩素により各種クロロベンゼンに転換し、これを精製してPDCBを得ている。本発明により得られた塩素をPDCBの製造工程に使用することは、原料を含めたクローズドプロセスを実現することにつながる。
また、他の例として、重縮合ポリマー製造工程での使用を挙げることができる。多くの重縮合反応では、Na末端を持った第一の原料と、塩素末端を持った第二の原料とを、適当な反応場に供して重縮合ポリマーを生成させる。この第二の原料の製造工程に、本発明により得られた塩素を使用することができる。具体的には、一酸化炭素と塩素とから、ポリカーボネートの原料であるカルボニルジクロライドを製造する工程等を挙げることができる。
本発明の製造方法を適用した設備と、PDCB製造設備や重縮合ポリマー製造設備等とが近接した立地にあれば、発生した塩素を気体状態のまま、パイプライン等で塩素を使用する上記設備に送ることができる。また、塩素使用設備が遠隔地の場合には、発生した塩素を液化した後、ローリー等で送ることが可能である。
【0025】
次に、硫化リチウム(Li2S)の再生方法及びポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法について説明する。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドは硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物から製造する。ハロゲンのうち、特に塩素が好ましい。以下、便宜上、塩化芳香族化合物から製造するものとして説明するが、以下の説明は他のハロゲンにも適用できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法は、以下の反応式で表される(1)〜(3)の工程を含む。
(1)Li2S+Ar(Cl)2→PAS+LiCl
(2)LiCl→再生Li2S
(3)再生Li2S+Ar(Cl)2→PAS+LiCl
(1)は、硫化リチウムと塩化芳香族化合物(Ar(Cl)2)との反応からポリアリーレンスルフィド(PAS)を製造する工程であり、(2)は、(1)で副生した塩化リチウムから再生硫化リチウムを生成する工程であり、(3)は、(2)で生成した再生硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィド(PAS)を製造する工程である。
本発明の製造方法では、上記の(2)及び(3)の工程を繰り返し行うことにより、ポリアリーレンスルフィドを製造することが可能である。
【0026】
(1)硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する工程
硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する工程(以下、工程(1)という)では、以下の(a)〜(c)の工程を含むことが好ましい。
(a)非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系に、液状又は気体状の硫黄化合物を投入する工程
(b)得られた反応物から脱水する工程
(c)硫黄分の調整後、塩化芳香族化合物を投入し、重縮合させる工程
尚、工程(1)では、工程(a)〜(c)により硫化リチウムを生成させずに、硫化リチウムそのものを用いることもできる。その場合、上記工程(a)及び(b)並びに工程(c)の硫黄分の調整は省略することができる。
【0027】
(a)非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系に、液状又は気体状の硫黄化合物を投入する工程
(i)非プロトン性有機溶媒
本発明に用いられる非プロトン性有機溶媒としては、上述した非プロトン性の極性有機化合物を、単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。非プロトン性極性有機化合物は、それぞれ一種単独で、又は二種以上を混合して、さらには、本発明の目的に支障のない他の溶媒成分と混合して、前記非プロトン性有機溶媒として使用することができる。
非プロトン性有機溶媒の中でも、好ましいのはN−アルキルカプロラクタム及びN−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0028】
(ii)LiOH又はLMABの存在する系の調製
非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系とは、塩化リチウム(LiCl)と、非プロトン性有機溶媒とが、又は塩化リチウムと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、非プロトン性有機溶媒及び水とが存在する場に、水酸化ナトリウム(NaOH)等を投入すること、あるいは上述した金属水酸化物の製造方法により、LiClの電気分解を行うことによって得られる系を意味する。以下、これらの調製方法を具体的に示す。
【0029】
▲1▼LiOHの存在する系
反応液中にLiClとして存在しているLiイオンを回収するため、系内にリチウム以外のアルカリ金属の水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等を投入する。中でも水酸化ナトリウムが好ましい。その投入量は、リチウムイオン1モルに対し、水酸基が0.90〜1.1モル、好ましくは0.95〜1.05モルになるようにする。1.1モルを超えると、この系に硫黄化合物を投入したときに、非水酸化リチウム沈澱物中にリチウム以外のアルカリ金属系硫黄化合物又はアルカリ土類金属系硫黄化合物が多量に混入する。また0.90モル未満の場合、リチウムのロスになる。この場合の反応温度は、特に制限はないが、リチウム以外のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を水溶液状で投入する場合、通常、室温〜230℃、好ましくは65〜150℃であり、固体状で投入する場合には、通常、60〜230℃、好ましくは90〜150℃である。反応温度が低い場合、溶解度が低く、反応速度が著しく遅くなる。反応温度が高い場合、NMPの沸点以上になり、加圧下で行わなければならず、プロセス的に不利になる。また、反応時間は、特に制限はない。
【0030】
▲2▼LMABの存在する系
この場合は、塩化リチウムと、N−メチル−2−ピロリドンと、リチウムを除く(非リチウム系の)アルカリ金属水酸化物とを反応させる。非リチウム系のアルカリ金属水酸化物は、水溶液として供給するので、この反応は前記非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒系中で実施する。
【0031】
この非リチウム系のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム又はこれらの一種又は二種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、特に、水酸化ナトリウムが好ましい。尚、これら水酸化ナトリウム等の非リチウム系のアルカリ金属水酸化物は、純粋なものに限らず、通常の工業用のものでも好適に使用することができる。
【0032】
尚、反応時の組成は、非プロトン性極性溶媒としてNMP、非リチウム系のアルカリ金属の水酸化物としてNaOHを用いた場合、NMP/NaOH=1.05〜30(モル比)とし、好ましくは、1.20〜6.0(モル比)である。また、LiCl/NaOH=1.00〜5(モル比)とし、好ましくは、1.00〜1.5(モル比)である。さらに、水/NMP=1.6〜16(モル比)とし、好ましくは、2.8〜8.3(モル比)である。
【0033】
反応温度及び反応時間については、通常80℃〜200℃で、0.1〜10時間程度が好ましい。
【0034】
(iii)液状又は気体状の硫黄化合物の投入
本発明に用いられる液状又は気体状の硫黄化合物としては、特に制限はないが、硫化水素を好適に用いることができる。硫化水素を用いる場合、その吹き込む際の圧力は、常圧でも加圧してもよい。吹き込み時間としては、特に制限はなく、通常は10〜180分程度とすることが好ましい。吹き込み速度も特に制限はなく、通常は10〜1000cc/分程度とすることが好ましい。また、硫化水素の吹き込み方法も特に制限はなく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン中に水酸化リチウム及び、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物が含有された混合物を攪拌、例えば、500mlガラス製セパラブルフラスコ中で、攪拌翼としてディスクタービン翼を用い、300〜700rpmで攪拌しながら、その中へ気体状の硫化水素をバブリングする等の通常用いられる方法を用いることができる。この場合、水が存在していてもよい。
【0035】
このように液状又は気体状の硫黄化合物を投入することにより、系内に固体状で存在していた水酸化リチウムは系内の液体部分に溶解し、非水酸化リチウム固体状物のみが系内に固体状で残留する。
【0036】
次に、固体状で残留した非水酸化リチウム固体状物、例えば、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物を分離してもよい。この場合、例えば、ガラス製フィルターG4を用いた濾過や遠心分離等の公知の方法を用いることができる。濾過等を行うにあたっては、減圧下で行ってもよい。分離する際の温度としては、特に制限はないが、通常は、20〜150℃の範囲から選択するのが好ましい。
【0037】
(b)得られた反応物から脱水する工程
吸収した硫化水素と等モルの水が発生するが、高分子量のポリアリーレンスルフィドを製造するためには可能な限り脱水することが好ましい。
本発明に用いられる脱水操作としては特に制限はないが、例えば、加熱操作が挙げられる。
加熱温度は、NMP−水の気液平衡関係により決定されるが、通常、130℃〜205℃が好ましい。窒素(N2)を同時に吹き込むことにより130℃以下でも可能である。さらに減圧下で行えばもっと温度を下げることもできる。
脱水の時期は塩化芳香族化合物を投入する前ならいつでもよい。硫化水素の吹込みと同時に行うと、単位操作に要する機器を減少させることができる等の点で好ましい。
【0038】
(c)硫黄分の調整後、塩化芳香族化合物を投入し、重縮合させる工程
この工程では、まず、上述の工程で得られた反応液から脱硫黄操作、例えば、脱硫化水素操作によって硫黄分を調整する。即ち、後述する塩化芳香族化合物の反応を行わせるためには、系内に存在する硫黄/リチウム比を1/2(S原子/Li原子モル比)以下にすることが好ましく、1/2にコントロールすることがさらに好ましい。1/2より大きい場合、反応が進行しにくいためポリアリーレンスルフィドの生成が困難となる。コントロールする方法としては特に制限はないが、例えば、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物を分離するために吹き込んだ硫黄化合物、例えば、硫化水素を、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物の分離後、系内の液体部分に窒素バブリング等を施して除去することにより、系内に存在する硫黄の合計量を調節することができる。この場合、加温してもよい。また、水酸化リチウムやN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)等のリチウム塩を系内に加えることによりコントロールしてもよい。
【0039】
次に、系内に塩化芳香族化合物を投入して、反応させることによりポリアリーレンスルフィドを製造する。
【0040】
本発明に用いられる塩化芳香族化合物としては、特に制限はないが、例えば、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等のジクロロベンゼン類;2,3−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロキシレン、1−エチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラメチル−3,6−ジクロロベンゼン、1−ノルマルヘキシル−2,5−ジクロロベンゼン、1−シクロヘキシル−2,5−ジクロロベンゼン等のアルキル置換ジクロロベンゼン類又はシクロアルキル置換ジクロロベンゼン類;1−フェニル−2,5−ジクロロベンゼン、1−ベンジル−2,5−ジクロロベンゼン、1−p−トルイル−2,5−ジクロロベンゼン等のアリール置換ジクロロベンゼン類;4,4’−ジクロロビフェニル等のジクロロビフェニル類:1,4−ジクロロナフタレン、1,6−ジクロロナフタレン、2,6−ジクロロナフタレン等のジクロロナフタレン類等が挙げられる。これらの中でも、好ましいのはジクロロベンゼン類であり、特に好ましいのはp−ジクロロベンゼンを50モル%以上含むものである。
【0041】
反応容器としては、例えば、10リットルのステンレス製オートクレーブが挙げられる。重合温度としては、220〜260℃が好ましく、重合時間としては1〜6時間が好ましい。塩化芳香族化合物の投入量としては、塩化芳香族化合物/系内に存在する硫黄=0.9〜1.2(モル比)の範囲から選択することが好ましく、0.95〜1.15がさらに好ましい。後処理としては、通常用いられる方法で行えばよい。例えば、冷却後沈澱物を遠心分離や濾過等により分離し、得られたポリマーを加温又は室温下、有機溶剤、水等で洗浄を繰り返して精製することができる。かかる洗浄はポリマーを固体状のまま行ってもよいし、あるいは液体にしていわゆる溶融洗浄を行ってもよい。
【0042】
(2)副生した塩化リチウムから再生硫化リチウムを生成する工程
本工程は、上記工程(1)で副生した塩化リチウムから再生硫化リチウムを生成する工程(以下、工程(2)という)である。本発明では、工程(2)において、上述した金属水酸化物の製造方法を用いて、塩化リチウムを電気分解する。具体的には、工程(2)では、上記工程(1)で副生した塩化リチウムを電気分解して得られるLiOHを用いてLi2Sを再生する。
【0043】
この再生方法では、以下の反応式で表される(イ)及び(ロ)の工程を含む。(イ)LiCl→LiOH
(ロ)LiOH+硫黄化合物→Li2S
(イ)は、上述した金属水酸化物の製造方法を用いて、塩化リチウムから水酸化リチウムを製造する工程であり、(ロ)は、(イ)で生成した水酸化リチウムと硫黄化合物を反応させて再生硫化リチウムを生成する工程である。
尚、各工程の反応条件等については、工程(イ)は、上述した金属水酸化物の製造方法と同様の条件に、また、工程(ロ)は、上記工程(1)における工程(a)〜(c)と同様の条件とすることができる。
【0044】
このようにして再生された硫化リチウムは、混入Na量が極めて少ない。従って、これを用いて製造したポリアリーレンスルフィド製品中の混入Na量を低減できるため、製品の品質を向上させることができる。
好ましくは、再生硫化リチウム中の混入Na量は、硫黄1モル当たり0.13モル以下である。
より好ましくは、混入Na量は、硫黄1モル当たり0.10モル以下であり、特に好ましくは、0.05モル以下であり、最も好ましくは、全く混入しないことである。
混入Na量はイオンクロマトグラフ等により測定できる。
【0045】
(3)再生硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィド(PAS)を製造する工程
本工程は、上記工程(2)で得られた再生硫化リチウムと塩化芳香族化合物を反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する工程である。
本工程の製造条件等は、上記工程(1)における工程(c)と同様の条件とすることができる。
尚、本工程で得られたポリアリーレンスルフィドは分子量が高く、さらに、その中に含まれる残留塩の含量は、好ましくはLiが100ppm以下、より好ましくは10ppm以下であり、好ましくはNaが100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。尚、これらの残留塩の含量は、ポリアリーレンスルフィドを焼成灰化した後、イオンクロマトグラフ等により測定できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
図1に示すイオン交換膜式電気分解装置1を用いて、連続式の電気分解実験を行った。この電気分解装置1は、イオン交換膜2によって、電解槽が、陽極4を備えた陽極室6と、陰極8を備えた陰極室10とに隔絶されている。
電気分解装置1の機器仕様は、以下の通りである。
整流器:直流安定化電源、容量10A
電解槽:陽極室、陰極室、容積各250ml
陽極材質:Ru、Pt、Ir等のメッキ/ベースT1
陰極材質:SUS316
イオン交換膜:旭硝子エンジニアリング製CMF型(耐酸化性陽イオン交換膜)
運転方法:連続添加流出法
Cell有効膜面積:30cm2(幅=3cm、高さ=10cm)
【0047】
電気分解装置1に供給する塩水としては、金属ハロゲン化物として28wt%の塩化リチウム(LiCl)、有機極性溶媒として3wt%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加した水溶液を用いた。この塩水を、塩水タンク12から、塩水供給ポンプ14を介して、160cc/hrの流量で電解槽の陽極室6に供給した。一方、電解槽の陰極室10には、伝導度1μS/cm以下の純水を、純水タンク16から、純水供給ポンプ18を介して供給した。陰極室10の出口で流量を測定したところ、190.7g/hrであった。電気分解の進行に伴い、陽極室6及び陰極室10中に存在する液は、オーバーフローして電解槽から取り出され、淡塩水タンク20及びLiOHタンク22にそれぞれ貯蔵された。このとき、電解槽には、整流器24により5アンペアの直流電流を流した。そして、陽極室6又は陰極室10の各液平均滞留時間のいずれか長いものの3倍以上の時間、この状態を保持して系を定常状態とした後に、陰極室10からオーバーフローして、LiOHタンク22に貯蔵された液中の水酸化リチウム(LiOH)濃度(実生成LiOH濃度)を0.1規定の塩酸を使用した電位差滴定法により測定したところ、0.936モル/kgであった。
【0048】
ここで、通電した電流が全てLiOHの生成に寄与した場合のLiOH濃度(理論LiOH濃度)は、以下のように計算される。
理論LiOH濃度
=電解電流量/ファラデー定数/陰極室出口流量×3600000
これにより、本実施例における理論LiOH濃度は、
5/96500/190.7×3600000=0.978(モル/kg)
となる。
従って、電流効率は、(実生成LiOH濃度/理論LiOH濃度)×100で定義されるから、本実施例における電流効率は、
(0.936/0.978)×100=95.7(%)
となった。
表1に実験条件と実験結果を示す。
【0049】
実施例2〜8
実施例1において、添加NMP濃度と陰極室出口流量を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様にして電解実験を行った。表1に実験条件と実験結果を示す。
【0050】
比較例1〜7
実施例1において、NMPを添加せず、また、陰極室出口流量を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様にして電解実験を行った。表1に実験条件と実験結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
図2に、各実施例及び比較例における実生成LiOH濃度と電流効率との関係を示す。この図は、各実験結果で得られた実生成LiOH濃度に対して電流効率をプロットしたものである。尚、この図では、実生成LiOH濃度に対して電流効率が反比例しているが、これは、実生成LiOH濃度の増加に伴い、陰極室から陽極室へ水酸イオンが逆拡散する量が増加しているためである。本図から、同一のLiOH濃度の水溶液を得るに際しては、NMPを添加した実施例の方が、NMPを添加しない比較例よりも高い電流効率でLiOHを製造できることが判った。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、製造時の電流効率が向上した金属水酸化物の製造方法、この製造方法により得られる金属水酸化物を用いた硫化リチウムの再生方法及びその再生された硫化リチウムを用いたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオン交換膜式電気分解装置の模式図である。
【図2】各実施例及び比較例における実生成LiOH濃度と電流効率との関係を示す図
である。
【符号の説明】
1 イオン交換膜式電気分解装置
2 イオン交換膜
4 陽極
6 陽極室
8 陰極
10 陰極室
12 塩水タンク
14 塩水供給ポンプ
16 純水タンク
18 純水供給ポンプ
20 淡塩水タンク
22 LiOHタンク
24 整流器
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属水酸化物の製造方法、硫化リチウムの再生方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気分解法により、金属ハロゲン化物から金属水酸化物を製造することが工業的に広く行われている。最も汎用な例は、塩化ナトリウム(NaCl)からの苛性ソーダ(NaOH)の製造(苛性電解)である。また、この他にも苛性カリ(KOH)を初め、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の水酸化物製造に工業化例がある。
【0003】
一方、硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する際に副生するハロゲン化リチウムを電気分解法で水酸化リチウム化し、この水酸化リチウムを硫黄化合物と反応させて硫化リチウムを生成し、これをポリアリーレンスルフィドの重合原料に供する方法を、混入ナトリウム量を減少させる技術として、我々が開発している(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特願2002−205111号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のいずれの技術においても、電気分解法の宿命として、用役として多量の電力を消費することが挙げられる。例えば、広汎に工業化されている苛性電解では、その変動コストの70%以上が電気費であることが多い。また、他の金属ハロゲン化物の水酸化技術においても、電気費は、変動コストの過半を占めることが多い。
従って、電気分解法を用いて金属水酸化物を製造する場合には、消費電力をより効率的に使用することが重要と考えられる。
【0006】
ところが、この種の電気分解においては、投入した電流の全てが水酸化反応に寄与できる訳ではなく、例えば、その一部は、陽極室と陰極室とを区切るイオン交換膜を通じての水酸イオンの逆拡散等にも寄与したりするため、実際には、生成する金属水酸化物の量が理論生成量より減少することが多い。尚、この実生成量を理論生成量で除したものを電流効率と称する。
【0007】
このことから、電気分解法における電流効率を向上させることは、目的とする金属水酸化物の製造コストの低減はもとより、副生するハロゲン(例えば、塩素)や水素の製造コストの低減についても大きく寄与できるはずである。
しかし、同一の電気分解装置を使用し、かつ、原料として金属ハロゲン化物の水溶液を用いる限り、電流効率は一義的に決まってしまい、これを変化させることは困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、製造時の電流効率が向上した金属水酸化物の製造方法、この製造方法により得られる金属水酸化物を用いた硫化リチウムの再生方法及びその再生された硫化リチウムを用いたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を原料として電気分解を行うと、生成する金属水酸化物の電流効率が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の第一の態様によれば、金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる金属水酸化物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する際に副生するハロゲン化リチウムから、上記の方法を用いて水酸化リチウムを製造し、水酸化リチウムを硫黄化合物と反応させて硫化リチウムを生成する工程を含む、硫化リチウムの再生方法が提供される。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、上記の再生方法により得られる再生硫化リチウムをハロゲン化芳香族化合物と反応させる工程を含む、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属水酸化物の製造方法について説明する。
本発明では、金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる。本発明の製造方法では、電解生成物として、陽極にハロゲン(例えば、塩素)が生成し、陰極に金属水酸化物及び水素が生成する。また、金属ハロゲン化物として金属塩化物を用いた場合、陰極からは水素が、陽極からは塩素が、それぞれ気体状態で発生する。
【0014】
本発明では、金属ハロゲン化物は特に制限されず、例えば、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化物等を用いることができる。このうち、好ましくはハロゲン化リチウムであり、その中でも、より好ましくは塩化リチウムである。
【0015】
本発明では、有機極性溶媒は特に制限されず、例えば、非プロトン性の極性有機化合物(例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等)を単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。
【0016】
非プロトン性極性有機化合物のうち、アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミド等が挙げられる。
【0017】
ラクタム化合物としては、例えば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドン等が挙げられる。
【0018】
尿素化合物としては、例えば、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。
【0019】
有機硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホラン等が挙げられる。
【0020】
環式有機リン化合物としては、例えば、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホラン等が挙げられる。
【0021】
これらの有機極性溶媒のうち、好ましくはラクタム化合物であり、その中でも、より好ましくは2−メチル−2−ピロリドンである。
【0022】
本発明では、極性有機溶媒の添加量(濃度)は、水と極性有機溶媒との混合物が、金属ハロゲン化物を溶解する限り特に制限されず、電気分解の条件や装置構成等に応じて適宜調節することができる。尚、有機極性溶媒の添加量が多くなると、金属ハロゲン化物が析出し、イオン交換膜への付着等が発生するため好ましくない。
【0023】
本発明では、電気分解装置として、イオン交換膜で陽極室と陰極室とを隔絶した方式のものを用い、イオン交換膜法で電気分解を行うことが好ましい。また、本発明の製造方法は、連続式、バッチ式のいずれにも適用することができる。
【0024】
本発明の金属水酸化物の製造方法は、従来の方法よりも製造時の電解効率を向上させることができるため、電解生成物、即ち、目的とする生成物である金属水酸化物や副生成物であるハロゲン(例えば、塩素)や水素をより安価に製造することができる。これにより、これら電解生成物の製造コストをより低減することが可能となる。
尚、広く行われている苛性電解と同様、気体状態の水素や塩素等は、廃棄することなく各種用途に有効利用することができる。
例えば、水素は、燃料ガスや水添反応原料等として利用することができる。
一方、塩素は、硫酸塔等により含有する水分を除去した後、気体状態のまま、あるいは圧縮した液化塩素として各種用途に供される。各種用途としては、塩素を使用する全ての製造工程が該当するが、一例として、ポリアリーレンスルフィドの原料の一つであるp−ジクロロベンゼン(PDCB)の製造工程に供することができる。当該製造工程は工業レベルで実用化されている。本工程では、ベンゼンを塩素により各種クロロベンゼンに転換し、これを精製してPDCBを得ている。本発明により得られた塩素をPDCBの製造工程に使用することは、原料を含めたクローズドプロセスを実現することにつながる。
また、他の例として、重縮合ポリマー製造工程での使用を挙げることができる。多くの重縮合反応では、Na末端を持った第一の原料と、塩素末端を持った第二の原料とを、適当な反応場に供して重縮合ポリマーを生成させる。この第二の原料の製造工程に、本発明により得られた塩素を使用することができる。具体的には、一酸化炭素と塩素とから、ポリカーボネートの原料であるカルボニルジクロライドを製造する工程等を挙げることができる。
本発明の製造方法を適用した設備と、PDCB製造設備や重縮合ポリマー製造設備等とが近接した立地にあれば、発生した塩素を気体状態のまま、パイプライン等で塩素を使用する上記設備に送ることができる。また、塩素使用設備が遠隔地の場合には、発生した塩素を液化した後、ローリー等で送ることが可能である。
【0025】
次に、硫化リチウム(Li2S)の再生方法及びポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法について説明する。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドは硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物から製造する。ハロゲンのうち、特に塩素が好ましい。以下、便宜上、塩化芳香族化合物から製造するものとして説明するが、以下の説明は他のハロゲンにも適用できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法は、以下の反応式で表される(1)〜(3)の工程を含む。
(1)Li2S+Ar(Cl)2→PAS+LiCl
(2)LiCl→再生Li2S
(3)再生Li2S+Ar(Cl)2→PAS+LiCl
(1)は、硫化リチウムと塩化芳香族化合物(Ar(Cl)2)との反応からポリアリーレンスルフィド(PAS)を製造する工程であり、(2)は、(1)で副生した塩化リチウムから再生硫化リチウムを生成する工程であり、(3)は、(2)で生成した再生硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィド(PAS)を製造する工程である。
本発明の製造方法では、上記の(2)及び(3)の工程を繰り返し行うことにより、ポリアリーレンスルフィドを製造することが可能である。
【0026】
(1)硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する工程
硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する工程(以下、工程(1)という)では、以下の(a)〜(c)の工程を含むことが好ましい。
(a)非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系に、液状又は気体状の硫黄化合物を投入する工程
(b)得られた反応物から脱水する工程
(c)硫黄分の調整後、塩化芳香族化合物を投入し、重縮合させる工程
尚、工程(1)では、工程(a)〜(c)により硫化リチウムを生成させずに、硫化リチウムそのものを用いることもできる。その場合、上記工程(a)及び(b)並びに工程(c)の硫黄分の調整は省略することができる。
【0027】
(a)非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系に、液状又は気体状の硫黄化合物を投入する工程
(i)非プロトン性有機溶媒
本発明に用いられる非プロトン性有機溶媒としては、上述した非プロトン性の極性有機化合物を、単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。非プロトン性極性有機化合物は、それぞれ一種単独で、又は二種以上を混合して、さらには、本発明の目的に支障のない他の溶媒成分と混合して、前記非プロトン性有機溶媒として使用することができる。
非プロトン性有機溶媒の中でも、好ましいのはN−アルキルカプロラクタム及びN−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0028】
(ii)LiOH又はLMABの存在する系の調製
非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系とは、塩化リチウム(LiCl)と、非プロトン性有機溶媒とが、又は塩化リチウムと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、非プロトン性有機溶媒及び水とが存在する場に、水酸化ナトリウム(NaOH)等を投入すること、あるいは上述した金属水酸化物の製造方法により、LiClの電気分解を行うことによって得られる系を意味する。以下、これらの調製方法を具体的に示す。
【0029】
▲1▼LiOHの存在する系
反応液中にLiClとして存在しているLiイオンを回収するため、系内にリチウム以外のアルカリ金属の水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等を投入する。中でも水酸化ナトリウムが好ましい。その投入量は、リチウムイオン1モルに対し、水酸基が0.90〜1.1モル、好ましくは0.95〜1.05モルになるようにする。1.1モルを超えると、この系に硫黄化合物を投入したときに、非水酸化リチウム沈澱物中にリチウム以外のアルカリ金属系硫黄化合物又はアルカリ土類金属系硫黄化合物が多量に混入する。また0.90モル未満の場合、リチウムのロスになる。この場合の反応温度は、特に制限はないが、リチウム以外のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を水溶液状で投入する場合、通常、室温〜230℃、好ましくは65〜150℃であり、固体状で投入する場合には、通常、60〜230℃、好ましくは90〜150℃である。反応温度が低い場合、溶解度が低く、反応速度が著しく遅くなる。反応温度が高い場合、NMPの沸点以上になり、加圧下で行わなければならず、プロセス的に不利になる。また、反応時間は、特に制限はない。
【0030】
▲2▼LMABの存在する系
この場合は、塩化リチウムと、N−メチル−2−ピロリドンと、リチウムを除く(非リチウム系の)アルカリ金属水酸化物とを反応させる。非リチウム系のアルカリ金属水酸化物は、水溶液として供給するので、この反応は前記非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒系中で実施する。
【0031】
この非リチウム系のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム又はこれらの一種又は二種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、特に、水酸化ナトリウムが好ましい。尚、これら水酸化ナトリウム等の非リチウム系のアルカリ金属水酸化物は、純粋なものに限らず、通常の工業用のものでも好適に使用することができる。
【0032】
尚、反応時の組成は、非プロトン性極性溶媒としてNMP、非リチウム系のアルカリ金属の水酸化物としてNaOHを用いた場合、NMP/NaOH=1.05〜30(モル比)とし、好ましくは、1.20〜6.0(モル比)である。また、LiCl/NaOH=1.00〜5(モル比)とし、好ましくは、1.00〜1.5(モル比)である。さらに、水/NMP=1.6〜16(モル比)とし、好ましくは、2.8〜8.3(モル比)である。
【0033】
反応温度及び反応時間については、通常80℃〜200℃で、0.1〜10時間程度が好ましい。
【0034】
(iii)液状又は気体状の硫黄化合物の投入
本発明に用いられる液状又は気体状の硫黄化合物としては、特に制限はないが、硫化水素を好適に用いることができる。硫化水素を用いる場合、その吹き込む際の圧力は、常圧でも加圧してもよい。吹き込み時間としては、特に制限はなく、通常は10〜180分程度とすることが好ましい。吹き込み速度も特に制限はなく、通常は10〜1000cc/分程度とすることが好ましい。また、硫化水素の吹き込み方法も特に制限はなく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン中に水酸化リチウム及び、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物が含有された混合物を攪拌、例えば、500mlガラス製セパラブルフラスコ中で、攪拌翼としてディスクタービン翼を用い、300〜700rpmで攪拌しながら、その中へ気体状の硫化水素をバブリングする等の通常用いられる方法を用いることができる。この場合、水が存在していてもよい。
【0035】
このように液状又は気体状の硫黄化合物を投入することにより、系内に固体状で存在していた水酸化リチウムは系内の液体部分に溶解し、非水酸化リチウム固体状物のみが系内に固体状で残留する。
【0036】
次に、固体状で残留した非水酸化リチウム固体状物、例えば、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物を分離してもよい。この場合、例えば、ガラス製フィルターG4を用いた濾過や遠心分離等の公知の方法を用いることができる。濾過等を行うにあたっては、減圧下で行ってもよい。分離する際の温度としては、特に制限はないが、通常は、20〜150℃の範囲から選択するのが好ましい。
【0037】
(b)得られた反応物から脱水する工程
吸収した硫化水素と等モルの水が発生するが、高分子量のポリアリーレンスルフィドを製造するためには可能な限り脱水することが好ましい。
本発明に用いられる脱水操作としては特に制限はないが、例えば、加熱操作が挙げられる。
加熱温度は、NMP−水の気液平衡関係により決定されるが、通常、130℃〜205℃が好ましい。窒素(N2)を同時に吹き込むことにより130℃以下でも可能である。さらに減圧下で行えばもっと温度を下げることもできる。
脱水の時期は塩化芳香族化合物を投入する前ならいつでもよい。硫化水素の吹込みと同時に行うと、単位操作に要する機器を減少させることができる等の点で好ましい。
【0038】
(c)硫黄分の調整後、塩化芳香族化合物を投入し、重縮合させる工程
この工程では、まず、上述の工程で得られた反応液から脱硫黄操作、例えば、脱硫化水素操作によって硫黄分を調整する。即ち、後述する塩化芳香族化合物の反応を行わせるためには、系内に存在する硫黄/リチウム比を1/2(S原子/Li原子モル比)以下にすることが好ましく、1/2にコントロールすることがさらに好ましい。1/2より大きい場合、反応が進行しにくいためポリアリーレンスルフィドの生成が困難となる。コントロールする方法としては特に制限はないが、例えば、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物を分離するために吹き込んだ硫黄化合物、例えば、硫化水素を、アルカリ金属塩化物又はアルカリ土類金属塩化物の分離後、系内の液体部分に窒素バブリング等を施して除去することにより、系内に存在する硫黄の合計量を調節することができる。この場合、加温してもよい。また、水酸化リチウムやN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)等のリチウム塩を系内に加えることによりコントロールしてもよい。
【0039】
次に、系内に塩化芳香族化合物を投入して、反応させることによりポリアリーレンスルフィドを製造する。
【0040】
本発明に用いられる塩化芳香族化合物としては、特に制限はないが、例えば、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等のジクロロベンゼン類;2,3−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロキシレン、1−エチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラメチル−3,6−ジクロロベンゼン、1−ノルマルヘキシル−2,5−ジクロロベンゼン、1−シクロヘキシル−2,5−ジクロロベンゼン等のアルキル置換ジクロロベンゼン類又はシクロアルキル置換ジクロロベンゼン類;1−フェニル−2,5−ジクロロベンゼン、1−ベンジル−2,5−ジクロロベンゼン、1−p−トルイル−2,5−ジクロロベンゼン等のアリール置換ジクロロベンゼン類;4,4’−ジクロロビフェニル等のジクロロビフェニル類:1,4−ジクロロナフタレン、1,6−ジクロロナフタレン、2,6−ジクロロナフタレン等のジクロロナフタレン類等が挙げられる。これらの中でも、好ましいのはジクロロベンゼン類であり、特に好ましいのはp−ジクロロベンゼンを50モル%以上含むものである。
【0041】
反応容器としては、例えば、10リットルのステンレス製オートクレーブが挙げられる。重合温度としては、220〜260℃が好ましく、重合時間としては1〜6時間が好ましい。塩化芳香族化合物の投入量としては、塩化芳香族化合物/系内に存在する硫黄=0.9〜1.2(モル比)の範囲から選択することが好ましく、0.95〜1.15がさらに好ましい。後処理としては、通常用いられる方法で行えばよい。例えば、冷却後沈澱物を遠心分離や濾過等により分離し、得られたポリマーを加温又は室温下、有機溶剤、水等で洗浄を繰り返して精製することができる。かかる洗浄はポリマーを固体状のまま行ってもよいし、あるいは液体にしていわゆる溶融洗浄を行ってもよい。
【0042】
(2)副生した塩化リチウムから再生硫化リチウムを生成する工程
本工程は、上記工程(1)で副生した塩化リチウムから再生硫化リチウムを生成する工程(以下、工程(2)という)である。本発明では、工程(2)において、上述した金属水酸化物の製造方法を用いて、塩化リチウムを電気分解する。具体的には、工程(2)では、上記工程(1)で副生した塩化リチウムを電気分解して得られるLiOHを用いてLi2Sを再生する。
【0043】
この再生方法では、以下の反応式で表される(イ)及び(ロ)の工程を含む。(イ)LiCl→LiOH
(ロ)LiOH+硫黄化合物→Li2S
(イ)は、上述した金属水酸化物の製造方法を用いて、塩化リチウムから水酸化リチウムを製造する工程であり、(ロ)は、(イ)で生成した水酸化リチウムと硫黄化合物を反応させて再生硫化リチウムを生成する工程である。
尚、各工程の反応条件等については、工程(イ)は、上述した金属水酸化物の製造方法と同様の条件に、また、工程(ロ)は、上記工程(1)における工程(a)〜(c)と同様の条件とすることができる。
【0044】
このようにして再生された硫化リチウムは、混入Na量が極めて少ない。従って、これを用いて製造したポリアリーレンスルフィド製品中の混入Na量を低減できるため、製品の品質を向上させることができる。
好ましくは、再生硫化リチウム中の混入Na量は、硫黄1モル当たり0.13モル以下である。
より好ましくは、混入Na量は、硫黄1モル当たり0.10モル以下であり、特に好ましくは、0.05モル以下であり、最も好ましくは、全く混入しないことである。
混入Na量はイオンクロマトグラフ等により測定できる。
【0045】
(3)再生硫化リチウムと塩化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィド(PAS)を製造する工程
本工程は、上記工程(2)で得られた再生硫化リチウムと塩化芳香族化合物を反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する工程である。
本工程の製造条件等は、上記工程(1)における工程(c)と同様の条件とすることができる。
尚、本工程で得られたポリアリーレンスルフィドは分子量が高く、さらに、その中に含まれる残留塩の含量は、好ましくはLiが100ppm以下、より好ましくは10ppm以下であり、好ましくはNaが100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。尚、これらの残留塩の含量は、ポリアリーレンスルフィドを焼成灰化した後、イオンクロマトグラフ等により測定できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
図1に示すイオン交換膜式電気分解装置1を用いて、連続式の電気分解実験を行った。この電気分解装置1は、イオン交換膜2によって、電解槽が、陽極4を備えた陽極室6と、陰極8を備えた陰極室10とに隔絶されている。
電気分解装置1の機器仕様は、以下の通りである。
整流器:直流安定化電源、容量10A
電解槽:陽極室、陰極室、容積各250ml
陽極材質:Ru、Pt、Ir等のメッキ/ベースT1
陰極材質:SUS316
イオン交換膜:旭硝子エンジニアリング製CMF型(耐酸化性陽イオン交換膜)
運転方法:連続添加流出法
Cell有効膜面積:30cm2(幅=3cm、高さ=10cm)
【0047】
電気分解装置1に供給する塩水としては、金属ハロゲン化物として28wt%の塩化リチウム(LiCl)、有機極性溶媒として3wt%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加した水溶液を用いた。この塩水を、塩水タンク12から、塩水供給ポンプ14を介して、160cc/hrの流量で電解槽の陽極室6に供給した。一方、電解槽の陰極室10には、伝導度1μS/cm以下の純水を、純水タンク16から、純水供給ポンプ18を介して供給した。陰極室10の出口で流量を測定したところ、190.7g/hrであった。電気分解の進行に伴い、陽極室6及び陰極室10中に存在する液は、オーバーフローして電解槽から取り出され、淡塩水タンク20及びLiOHタンク22にそれぞれ貯蔵された。このとき、電解槽には、整流器24により5アンペアの直流電流を流した。そして、陽極室6又は陰極室10の各液平均滞留時間のいずれか長いものの3倍以上の時間、この状態を保持して系を定常状態とした後に、陰極室10からオーバーフローして、LiOHタンク22に貯蔵された液中の水酸化リチウム(LiOH)濃度(実生成LiOH濃度)を0.1規定の塩酸を使用した電位差滴定法により測定したところ、0.936モル/kgであった。
【0048】
ここで、通電した電流が全てLiOHの生成に寄与した場合のLiOH濃度(理論LiOH濃度)は、以下のように計算される。
理論LiOH濃度
=電解電流量/ファラデー定数/陰極室出口流量×3600000
これにより、本実施例における理論LiOH濃度は、
5/96500/190.7×3600000=0.978(モル/kg)
となる。
従って、電流効率は、(実生成LiOH濃度/理論LiOH濃度)×100で定義されるから、本実施例における電流効率は、
(0.936/0.978)×100=95.7(%)
となった。
表1に実験条件と実験結果を示す。
【0049】
実施例2〜8
実施例1において、添加NMP濃度と陰極室出口流量を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様にして電解実験を行った。表1に実験条件と実験結果を示す。
【0050】
比較例1〜7
実施例1において、NMPを添加せず、また、陰極室出口流量を表1のように変化させた以外は、実施例1と同様にして電解実験を行った。表1に実験条件と実験結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
図2に、各実施例及び比較例における実生成LiOH濃度と電流効率との関係を示す。この図は、各実験結果で得られた実生成LiOH濃度に対して電流効率をプロットしたものである。尚、この図では、実生成LiOH濃度に対して電流効率が反比例しているが、これは、実生成LiOH濃度の増加に伴い、陰極室から陽極室へ水酸イオンが逆拡散する量が増加しているためである。本図から、同一のLiOH濃度の水溶液を得るに際しては、NMPを添加した実施例の方が、NMPを添加しない比較例よりも高い電流効率でLiOHを製造できることが判った。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、製造時の電流効率が向上した金属水酸化物の製造方法、この製造方法により得られる金属水酸化物を用いた硫化リチウムの再生方法及びその再生された硫化リチウムを用いたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオン交換膜式電気分解装置の模式図である。
【図2】各実施例及び比較例における実生成LiOH濃度と電流効率との関係を示す図
である。
【符号の説明】
1 イオン交換膜式電気分解装置
2 イオン交換膜
4 陽極
6 陽極室
8 陰極
10 陰極室
12 塩水タンク
14 塩水供給ポンプ
16 純水タンク
18 純水供給ポンプ
20 淡塩水タンク
22 LiOHタンク
24 整流器
Claims (6)
- 金属ハロゲン化物を電気分解して金属水酸化物を製造する方法において、金属ハロゲン化物水溶液に有機極性溶媒を添加した溶液を用いる金属水酸化物の製造方法。
- 前記有機極性溶媒が、ラクタム化合物である請求項1に記載の金属水酸化物の製造方法。
- 前記ラクタム化合物が、N−メチル−2−ピロリドンである請求項2に記載の金属水酸化物の製造方法。
- 前記金属ハロゲン化物が、ハロゲン化リチウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属水酸化物の製造方法。
- 硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する際に副生するハロゲン化リチウムから、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法を用いて水酸化リチウムを製造し、
前記水酸化リチウムを硫黄化合物と反応させて硫化リチウムを生成する工程を含む、硫化リチウムの再生方法。 - 硫化リチウムとハロゲン化芳香族化合物との反応からポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、請求項5に記載の再生方法により得られる再生硫化リチウムをハロゲン化芳香族化合物と反応させる工程を含む、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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