JP2004224882A - ナノ複合アクリル樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
ナノ複合アクリル樹脂組成物およびその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】車両用の内外装部品などの用途に適した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明により、メタクリル酸メチルと、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを重合させたアクリル樹脂に、無機系微粒子を配合してなるナノ複合アクリル樹脂組成物およびその製造方法が提供された。本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物は高い透明性を有し、かつ剛性が高く熱膨張が低いために、車両用の内外装部品などの用途に適している。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明により、メタクリル酸メチルと、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを重合させたアクリル樹脂に、無機系微粒子を配合してなるナノ複合アクリル樹脂組成物およびその製造方法が提供された。本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物は高い透明性を有し、かつ剛性が高く熱膨張が低いために、車両用の内外装部品などの用途に適している。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無機ガラス等の代替に好適なアクリル樹脂組成物と、その製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、樹脂の光線透過性を悪化させることなく、部材の剛性向上ならびに熱膨張の低減を図ることを可能とするシリカ等の無機系微粒子を配合してなる、ナノ複合アクリル樹脂組成物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明樹脂材料は無機ガラス材料に比べ軽量であり、かつ成形の自由度が大きいという利点はあるが、その半面、弾性率が低く、熱膨張係数が大きく、また硬度が低いために表面が傷つき易いという難点がある。このため現在、自動車における透明樹脂材料の適用はヘッドランプやサンルーフなど比較的低剛性でかつ表面処理のしやすい小物部品に限られ、自動車外装のかなりの面積を占める窓ガラス(以下ウィンドウと記載する)については所定の機能を満足するものがまだなく、本格的な採用までには至っていない。
【0003】
このような状況下で近年、可視光線の波長(380〜770nm)よりも小さいナノオーダ粒径の無機系微粒子材料を透明樹脂に配合する有機・無機ナノコンポジット材の研究開発が活発となり、各種の手法が提案されている。例えば分子レベルの改良特許とされる「ポリアミド複合材料及びその製造方法」(特開平2−305828)がある。これは無機材としてのモンモリナイトの層間にポリアミドの原料であるカプロラクタムを含浸して重合させてポリアミド系コンポジットを製造する方法である。ナノ粒子材のモンモリナイトの効果で物性の向上はあるが、母材樹脂のポリアミドは吸湿性が高くかつ表面硬度が低いため、自動車ウィンドウ等の大型外装用部材への適用は難しい。
【0004】
同じくポリアミド樹脂系コンポジット材に関するものが特開平5−306370(ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法)と特開平6−248176(強化ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法)に開示されている。前者は層状リン酸塩誘導体とポリアミドモノマーを加熱重合させてコンポジット材とするものであり、後者はフッ素雲母とポリアミドモノマーを加熱重合させてコンポジット材とするものである。その他モンモリナイトとビニル系樹脂のコンポジット材の製造方法が特開平6−41346に、そして粘土とポリエステル樹脂から成るコンポジットとその製造方法が特開平7−26123に開示されている。
【0005】
しかしながらこれらナノコンポジット組成物はすべて、粘土やタルク等の無機充填材の層状物質に高分子化合物を含浸挿入したものであり、従って特開平2−305828と同様、強度特性の向上は認められるものの、吸湿性や表面硬度不足に加え、透明性に劣り、自動車のウィンドウに代表される無機ガラス代替の透明樹脂材料としてはまだ実用の域には達していない。
【0006】
また樹脂製ウィンドウに関しては特開平11−343349号公報がある。本件特許は上記問題点の改良を提案するもので、アクリル樹脂に無機のシリカ微粒子を配合することを発明の骨子とし、それに適した材料組成と製造技法を開示している。アクリル樹脂は透明性が高くかつ耐候性に優れているため、自動車ウィンドウ等の耐久性が要求される屋外用途部材には好ましい材料である。しかしながら本公報記載の材料は高い透明性を維持しながら表面硬度を上昇させるという効果は認められるものの、半面弾性率の増大効果、換言すれば剛性向上効果は必ずしも十分とは言えず、前掲材料と同様にまだ自動車ウィンドウへの適用までには至っていない。
【0007】
即ち実施例によれば、シリカ配合コンポジット材の曲げ弾性率の最大は実施例11の3500MPa、これはシリカ無配合コンポジット材の曲げ弾性率(参考例1)に対しての上昇率は9.4%に過ぎない。理由はアクリル樹脂とシリカの間の相互作用が十分に発揮されていないためと考えられる。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−305828号公報
【特許文献2】
特開平5−306370号公報
【特許文献3】
特開平6−248176号公報
【特許文献4】
特開平6−41346号公報
【特許文献5】
特開平7−26123号公報
【特許文献6】
特開平11−343349号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は上記問題点を踏まえて、新たにアクリル樹脂と無機系微粒子より成るコンポジット材の開発に取組んだ。そして、高い透明性を保持しながら曲げ弾性率等の物性を高める材料組成とその製造手法を創出し、具体的には特願2002−188415、特願2002−207815および特願2002−207816においてその技法を提案した。即ち、母材樹脂としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)そして無機系微粒子としてシラノール基(−SiOH)を有するシリカ組成物を基本構成とさせたアクリル系ナノ複合材である。
【0010】
これら技法に係わるナノコンポジット材は高い透明性を保ちながら優れた物性を発現する好ましい特性を有している。しかし、製造条件によっては、合成後に得られるアクリル樹脂組成物粉末を粒状にする造粒工程において、又はその後の部材化の成形工程で発泡し、製品として成立しないケースがあることが判明した。本件の原因を追求したところ、発泡の主たる原因物質はPMMAの解重合より生成するMMAモノマーであり、シリカ組成物等の無機系微粒子を配合することにより系の溶融粘度が上がるために、造粒機および成形機のシリンダー内での材料温度が過度に上昇するのが原因であることを解明した。そこで、その様な欠点を有さない、無機ガラス等の代替に好適なナノ複合アクリル樹脂組成物を提供することが、本発明の課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題に関する対策を鋭意検討した結果、メタクリル酸メチル(MMA)モノマーに、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを共重合させて母材を共重合型アクリル樹脂とすれば、配合する無機系微粒子の種類と量に応じて系の溶融粘度を適切な状態に制御でき、前掲の発泡に係わる不具合を防ぐことができることを見出し本発明に至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において好適に使用されるアクリルモノマーは、その単独重合体が50℃以下のガラス転移温度を有するものである。そして、本発明におけるアクリルモノマーは、非官能性モノマーと官能性モノマーに大別される。非官能性モノマーの代表的な例としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸正ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸正へキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸正ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸−2−エチルへキシル等が挙げられる。また官能性モノマーの代表的な例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸第三ブチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキプロピル及びメタクリル酸グリシジル等が挙げられる。しかし、本発明において使用されるアクリルモノマーは、非官能性モノマーも官能性モノマーも共に、上記に限定されるものではなく、メタクリル酸メチルと共重合する種々のアクリルモノマーを使用することができる。
【0013】
これらのアクリルモノマーをメタクリル酸メチル(MMA)と共重合させることにより母材の溶融粘度が下がり、従来からの解決すべき課題であった造粒工程や成形工程での複合材の発泡という不具合が解消される。なお本願明細書において「メタクリル酸メチル」とは単量体を示すものであり、特記しない場合には、重合したポリメタクリル酸メチルを示すものではない。なお、共重合体における上記アクリルモノマーの比率が増すにつれて、該共重合体のガラス転移温度(Tg)は下がり、ひいては部材の物性が低下するが、本発明に係わるアクリル共重合体のTgの簡易計算式は式1のようである。よってこの計算式を用いれば、形成されるであろう共重合体のTgを事前に予測することができる。従って材料設計に当たってはそれぞれの最終製品の要求物性に応じてモノマーを選択し、ついで式1を基礎としてその共重合比率を設定すればよい。
【0014】
例えば、メタクリル酸メチル(MMA)にアクリル酸メチル(MA)を20モル%共重合させた時のMMA/MA共重合体のTgは84℃であり、MMA単独重合体であるポリメタクリル酸メチルより20℃ほどTgが低下すると予測される。
【0015】
【式1】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+‥‥‥‥
Tg:共重合体のガラス転移温度(絶対温度)、
Wl、W2、W3:各成分の重量分率、
Tg1、Tg2、Tg3:各成分単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)
【0016】
なお、本発明の樹脂組成物中に含有される上記アクリルモノマーは、赤外分光分析法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)および熱分解ガスクロー質量分析法(PyGC−MS)などの分析方法によって検出することが可能である。具体的には、例えばメタクリル酸メチルのみの重合体(PMMA)と、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)の共重合体を赤外分光分析法で比較すると、メタクリル酸メチルのみの重合体(PMMA)には750cm−1と840cm−1にも吸収ピークがあるが、アクリル酸メチル(MA)のそれに相当する吸収ピークは765cm−1と825cm−1であるため、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)の共重合体からはアクリル酸メチル(MA)に起因するこれら二種が加わった吸収ピークが検出されてアクリル酸メチル(MA)の存在が確認できる。
【0017】
なお、前記のアクリルモノマーの中でも、非官能性のアクリル酸メチル(MA)を使用することは特に好ましい。アクリル酸メチルの単独重合体のガラス転移温度は9℃であり、重合体の溶融粘度の調整がし易く、かつメタクリル酸メチル(MMA)の解重合を抑制する副次作用も期待できる。
【0018】
本発明における無機系微粒子とは、SiO2、Al203、Sb205、TiO2、SnO2、ZrO2などの無機酸化物であり、その形態は粉末でも水分散型のゾルでも有機溶媒分散型のオルガノゾルでもよく、いずれも本発明の適用対象となる。なお、本発明において使用される無機系微粒子は上記の化合物に限定されるものではなく、適宜他の無機酸化物もまた用いることができる。
【0019】
無機系微粒子としてシラノール基を有するシリカを使用することは、本発明の特に好ましい態様である。シラノール基を有することにより、シリカは本発明のアクリル樹脂と相互作用をすることができる。当該シリカの工業的生産方法は乾式法と湿式法に大別され、前者は4塩化珪素(SiCl4)の高温加水分解、後者は珪酸ソーダ(水ガラス(SiO2)n・Na2O)の加水分解で製造され、現在前者は微粉末状、後者は水分散型あるいは有機溶媒分散型のコロイド状で販売されている。これらの製品はこれまで球状シリカとして販売されてきたが、近年湿式製法において所定のアスペクト比を持つ鎖状シリカが新たに開発・上市された。本発明に係わるナノ複合樹脂組成物では双方のシリカを用いることができ、目的に応じて使い分けをすれば良い。
【0020】
上記のシリカの平均一次粒子径は好ましくは380nm以下であり、更に好ましくは5〜100nmである。また、その形状は球状又は鎖状であることができる。しかし、該シリカの平均一次粒子径と形状はそれに限定されるものではない。高強度・低熱膨張率でかつ透明性の高いナノ複合アクリル樹脂組成物を得るには、シリカの粒径は小さいことが好ましい。平均一次粒子径が100nm以下のものが好ましいが、平均一次粒子径が380nm以下であればその粒径は光波長以下であり、透明性の機能を損なうことはない。従って、シリカ組成物が母材樹脂に均一に分散していれば、380nm以下の粒径のシリカは問題なく実用に供することが出来る。
【0021】
また、母材樹脂との親和性を更に高めるために、当該シリカのシラノール基をシリコン系改質剤で表面処理して疎水化して、表面改質シリカとすることが可能であり、当該表面改質シリカをアクリル樹脂製造用のモノマー溶液に加えることができる。この様な処理は、更に透明性に優れた有機無機複合樹脂組成物の部材を得る目的において有効である。本発明で使用できるシリコン系改質剤としては、クロル基を有するもの、メトキシ基を有するもの、エトキシ基を有するものなどがある。下記においてシリコン系改質剤の例を挙げるが、シリコン系改質剤はこれらに限定されるものではない。
【0022】
クロル基を有するシリコン系改質剤の例としては、n−ブチルトリクロロシラン、n−デシルトリクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、n−ドデシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−へプチルトリクロロシラン、n−へキサデシルトリクロロシラン、n−へキシルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、n−ブチルメチルジクロロシラン、n−デシルメチルジクロロシラン、ジ−n−ブチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジ−n−へキシルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジ−n−オクチルジクロロシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、n−へプチルメチルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、メチルペンチルジクロロシラン、n−オクタデシルメトキシジクロロシラン、n−オクタデシルメチルジクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、n−デシルジメチルクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン、n−オクタデシルジメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−プロピルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、ジメチルジメトキシクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ビス〔2−(クロロジメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス(クロロジメチルシリルプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロメチルジメチルシロキベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、t−ブチルジフェニルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、クロロメチルジメチルフェニルシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリクロロシラン、(p−クロロメチフェニルトリn−プロポキシシラン、クロロフェニルメチルジクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、p−クロロフェニルトリメチルシラン、クロロプロピルジフェニルメチルシラン、3−クロロプロピルフェニルジクロロシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリクロロシラン、3−シアノプロピルフェニルジクロロシラン、ジベンジロキシジクロロシラン、1,3−ジクロロ−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、ジクロロフェニルトリクロロシラン、1,3−ジクロロテトラフェニルジシロキサン、ジメシチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジ(p−トリル)ジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、2−メチル−2−フェニルエチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、m−フェノキシフェニルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシランなどが挙げられる。
【0023】
メトキシ基を有するシリコン系改質剤の例としては、n−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、ベンゾイルオキシプロピルトリメトキシシラベンジロキシトリメチルシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、t−ブチルジフェニルメトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、Nフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
エトキシ基を有するシリコン系改質剤の例としては、n−デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−へキシルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビス−(N−メチルべンヅアミド)エトキシメチルシラン、t−ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジフェニルホスフィノエチルジメチルエトキシシラン、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
なお、メタクリル酸メチル(MMA)に対するアクリル酸メチル(MA)の共重合割合は、この範囲内に限定されるものではないが、以下の理由から3〜25%であることが好ましい。共重合割合が3%未満ではMMAの解重合等による発泡現象を抑制できず、一方25%を超えるとその共重合体のガラス転移温度は80℃未満となり、本発明の重要な用途の一つである自動車ウィンドウへの搭載が困難となる。即ち当該ウィンドウは夏場、太陽光の熱を受け、部材温度は80℃を超える高い温度となって熱変形等の不具合を引き起こす懸念がある。しかし、本発明に係わる共重合体のガラス転移温度80℃以上とすることで、これらの不具合発生を回避することが可能である。
【0026】
また、無機系微粒子の配合量が増えるにつれて、得られるナノ複合アクリル樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、発泡という不具合が起こす可能性があるが、これはアクリル樹脂の共重合比率を加減することにより対応することができる。シリカ組成物などの無機系微粒子の配合量については、この範囲内に限定するものではないが、アクリル樹脂100質量部に対して該無機系微粒子を1〜100質量部配合することが好ましい。シリカの配合量が増すにつれて、母材であるアクリル樹脂との水素結合等の相互作用の割合が増し、それにつれてナノ複合アクリル樹脂組成物の強度は増しかつ熱膨張率も低下する。
【0027】
しかし半面、アクリル樹脂100質量部に対するシリカの配合量が100質量部を超えると、これらの特性向上は認められない。得られるナノ複合アクリル樹脂組成物の透明性は逆に低下し、また比重が高くなって部材の重量が増えるというマイナス面が目立ってくる。従ってアクリル樹脂100質量部に対してシリカを配合する量は、100質量部を限度とするのが望ましい。一方下限量については、アクリル樹脂100質量部に対するシリカの配合量が1質量部以上あれば、線膨張係数の低減効果は低いものの、ナノ複合アクリル樹脂組成物の強度が向上しその効果が認められる。これより、シリカの配合量が1質量部以下の場合は強度向上・線膨張係数低減の機能は認め難く、シリカ無添加の透明樹脂材との差異はない。
【0028】
上記で述べたように表面改質シリカを用いることは本発明の好ましい態様であるが、アクリル樹脂100質量部に対する表面改質シリカ組成物の配合量が3質量部以上になると、本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物の強度向上が認められる。またアクリル樹脂100質量部に対するこの表面改質シリカ組成物の配合量が40質量部あれば所定の機能を確保することができ、重量増加を最小限に押さえることができる。これらのことを総合的に評価すると、アクリル樹脂100質量部に対する表面改質シリカ組成物の配合量は3〜40質量部とすることが好ましい。
【0029】
本発明に係わるナノ複合アクリル樹脂組成物は、種々の用途に用いることが可能である。該ナノ複合アクリル樹脂組成物は、強度が高く熱膨張率が低くかつ透明性が高いという特性を持っており、これらの機能が要求される部材に好適である。よって本発明に係わるナノ複合アクリル樹脂組成物は、自動車や家電そして住宅に用いられる透明部材・備品に適しており、特に軽量化と成形の自由度が要求される無機ガラス代替用途でその効果を発揮する。自動車を代表的用途例として記述すると次のようである。図1はセダン系自動車の外観図である。透明材料は着色材料を含めると内外装部品で多用されている。内装材では計器盤の透明カバーが代表例として挙げられるが、この部品は既に樹脂化されている。外装材ではウィンドウやヘッドランプ、サンルーフそしてコンビネーションランプカバー類がある。これら透明部材のうち前二者は強度と耐久性から現在も無機ガラスが材料の主流となっている。
【0030】
この中のウィンドウは風雨を防ぐための部品であり、図1のように車両の前面と後面そして側面のドアに設置されている。使用面積は3〜4m2、重量は30〜35kgのため、従来軽量化の期待の大きい部品である。このように車両の軽量化とデザインの自由度の拡大からウィンドウの樹脂化の要望が高く、これまで様々の角度より開発研究がなされ、その手法が提案・開示されているが、前述のように安全性と機能面で解決すべき課題があるためまだ本格的な採用までには至っていない。また、近年ワンボックス型のRV車の普及が目覚しくウィンドウの占める割合が増大してきており、軽量化と乗員の視認性と快適性向上から、ウィンドウの樹脂化に対する要求は益々強くなってきている。本発明に係わるナノ複合アクリル樹脂組成物により成形される透明樹脂製ガラスはこれら自動車用ウィンドウに要求される機能を備えており、車両の軽量化と快適性向上に貢献できるものである。加えて、車両用途において軽量化を達成すれば、同時に省燃費とCO2の排出低減に繋がり、地球環境の保全にも寄与することになる。
【0031】
本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物は、メタクリル酸メチル(MMA)、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマー及び有機溶媒からなる溶液を作製し、当該溶液に無機系微粒子を加えた後に当該モノマーを重合してポリマー化し、然るのち溶媒を除去することにより製造することができる。
【0032】
本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物の製造において好適に用いられる有機溶媒は、原則的には、重合時の粘度調整等で必要に応じて選択すれば良いが、例えばシラノール基を有するシリカのような無機系微粒子にあっては、加えて配合シリカを溶液中に微細に分散させてより透明性の高いナノ複合アクリル樹脂組成物を形成させる機能もあるため、重合時に重合溶媒として加えるのが望ましい。より詳しく述べると次の様である。
【0033】
本発明の対象の一つであるシラノール基を有するシリカは状況によってはシラノール基の間で水素結合により所定数量のシリカ同志が会合して、可視光線の波長(380〜770nm)を超える粒子を形成するケースがある。この状態で形成されるナノ複合アクリル樹脂組成物は曇りのある材料となり、透明材料として使用するのが難しくなる。
【0034】
この問題に対して、有機溶媒は前記アクリル樹脂モノマーとの共存下において、これらシリカのシラノール基同志の会合を遮断する機能があり、これによってシリカが可視光線の波長以下の本来の一次粒径で分散する。そのために、透明性の高いナノ複合アクリル樹脂組成物が得ることが可能であるために、有機溶媒を使用することは好ましい。これらの有機溶媒としては例えばアセトン、アニリン、キシレン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、ヘキサンなどの脂肪族系や芳香族系そしてメタノールなどのアルコール類を挙げることが可能であり、樹脂モノマーの種類に準じて適宜選択する。しかし、使用される有機溶媒は上記の例に限定されるものではない。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各種評価は以下の方法により、特記しない場合には、「部」は質量部を、「%」は質量%を示す。
【0036】
(ナノ複合アクリル樹脂組成物の評価装置と合否規格)
(1)溶融粘度は、REOLOGICA社製レオメーター「DynAlyserDAR−100」で計測した。
(2)ガラス転移温度は、セイコー電子社製 熱分析装置「SSC5020/DSC200」で計測し、80℃以上を合格とした。
(3)全光線透過率は、村上色彩研究所製ヘイズメータ「HM−65」で計測し、75%以上を合格とした。
(4)シリカ分散状態は日立製作所(株)製 透過電子顕微鏡「H−800」で計測し、優、良、可、不可という基準により目視で良否を判定した。
(5)曲げ強度及び曲げ弾性率は、島津製作所(株)製 オートグラフ「DCS−10T」で計測し、曲げ強度は108MPa以上、曲げ弾性率は3GPa以上を合格とした。
(6)線膨張係数は、セイコー電子工業(株)製 熱機械測定装置「TMA120C」で計測し、6×10−5/℃以下を合格とした。
(7)造粒性は、ベルストルフ社製 二軸押出機を用い、シリンダー設定温度230℃下での発泡の有無を観察し、良否を判定した。なお、○は許容、△は許容範囲、×は不許容を示す。
【0037】
(実施例1)
(MMA/MA共重合モル比が99/1のコンポジット材の合成及びその特性評価)
ステップI:配合シリカ組成物の調製
表層にシラノール基を有する酸性型シリカゾルスラリー(日産化学工業(株)製 商品名:スノーテックスO、濃度20%)を、ガスバーナ温度を300℃として、噴霧乾燥機((株)セイシン企業製 商品名:フラッシュジェットドライヤー)で乾燥処理をして、含水率2.7%の白色シリカ粉末を得た。ついで、当該シリカ粉末を熱風式の乾燥炉に入れ、150℃×3時間の条件下で追加乾燥して含水率を0.05%と成し、本発明に係わるコンポジット材の無機成分(以下シリカAと略称する)とした。
【0038】
ステップII:コンポジット材の合成
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)99.14部とアクリル酸メチル(MA)0.86部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そして上記で得られたシリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。得られた混合溶液は、やや乳白色の曇りのある溶液であった。次に、フラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。溶液の曇りは合成の進展ともに無くなり、8時間を過ぎると溶液は無色透明となった。アクリル樹脂とシリカシラノール基間の相互作用により、シリカが本来粒径の10〜20nmの一次粒子で溶液に分散するためである。合成終了後、溶液をn−へキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして共重合モル比が99/1のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。
【0039】
ステップIII:合成コンポジット材の特性評価
ステップIIの操作を繰り返して3kgのアクリルコンポジット材を製作し、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。結果を表1の実施例1に示す。ガラス転移温度は100℃を超え良好ではあるものの、造粒時に著しく発泡する性質があり、実用に供することが出来ず、よって総合評価ではNGである。本共重合体系の230℃における溶融粘度は10万Pa・sを超えており、摩擦熱により押出機のシリンダー内の温度が過度に高くなってアクリル樹脂の解重合を引き起こしたものと考えられる。また、MMA/MAの共重合モル比が99/1ではMAの比率は低く、発泡を抑制できないことを示唆している。
【0040】
【表1】
【0041】
(実施例2〜7)
(MMA/MA共重合モル比が97/3〜75/25のコンポジット材の合成及びその特性評価)
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)97.42部とアクリル酸メチル(MA)2.58部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部そして前掲シリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。次に、フラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。合成終了後、溶液をn−へキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして共重合モル比が97/3の実施例2のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。同様の操作でMMA/MAの共重合モル比を変え、表1に示す実施例3〜7の5種のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。これらの操作を繰り返して5種3kgのアクリルコンポジット材を製作、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。
【0042】
結果を表1の実施例2〜7に示す。ガラス転移温度はいずれも規格の80℃を超え、かつ造粒時の発泡がなく透明性が良好、総合評価ですべて合格であった。MMAへのMAの付加により母材が適度の溶融粘度になり、押出機でのシリンダー内発熱が最小限に抑えられたためである。更に、全体のバランスからは、ガラス転移温度が相対的に高い、共重合モル比95/5〜85/15のコンポジット材が望ましいという結果になった。
【0043】
(実施例8)
(MMA/MA共重合モル比が70/30のコンポジット材の合成及びその特性評価)
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)74.2部とアクリル酸メチル(MA)25.8部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部そして前掲シリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。次に、実施例2と同一の方法・条件で処理をして共重合モル比が70/30の実施例8のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。この操作を繰り返して3kgのアクリルコンポジット材を製作、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。結果を表1の実施例8に示す。母材の適度溶融が下がり造粒性は極めて良好となるが、半面ガラス転移温度が大幅に低下し基準値の80℃以下となり、総合評価で不合格であった。MMAへのMAの付加が過度になったためである。
【0044】
(比較例1)
(MMA単独重合コンポジット材の特性評価)
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)100部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そして前掲シリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。次に、実施例2と同一の方法・条件で処理をして表1比較例1の単独重合MMAアクリルコンポジット材を得た。この操作を繰り返して3kgのアクリルコンポジット材を製作、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。
【0045】
結果を表1の比較例1に示す。ガラス転移温度は100℃を超え良好ではあるものの造粒時に著しく発泡する性質があり、実用に供することが出来ない。本共重合体系の230℃における溶融粘度は10万Pa・sを大きく超えており、実施例1と同様、摩擦熱により押出機のシリンダー内の温度が過度に高くなってアクリル樹脂が解重合し、発泡を引き起こしたものと考えられる。
【0046】
(実施例9)
(シリカの適正配合量)
ステップI
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)91.4部とアクリル酸メチル(MA)8.6部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そして前掲の含水率が0.05%のシリカAを1、3、5、10、20、40、60、80、100、120部の10水準加え、攪拌子で攪拌し、ついでフラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。合成終了後、溶液をn−ヘキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして、本発明に係わる10種の共重合モル比が90/10のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。
【0047】
ステップII
得られた10種のナノ複合アクリル樹脂組成物を乾燥して粒となし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて全光線透過率、シリカの分散状態、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表2の結果が得られた。配合量1部以下ではシリカ非配合のポリメチルメタクリレート樹脂の特性と変わらず、物性改善の効果が薄い。また配合量が100部を超えると物性改善の効果は認められず、逆にコンポジット透明性が低下すると言う難点がある。一方3部から100部の配合範囲では透明性を損なうことなく、コンポジット材の物性を改善できる。ただし、シリカの配合量が増えるにつれてコンポジット材の比重が増し、ひいては部材の重量を増やすことが考えられる。この観点から評価すると樹脂100質量部に対する表面改質シリカ組成物の配合量は3〜40質量部の範囲とするのが望ましい。
【0048】
【表2】
【0049】
(実施例10〜12)
(表面改質シリカの特性について)
ステップI
前掲の含水率が0.05%のシリカA50部を三ロフラスコ中にある500部のシクロヘキサンに配合した。ついで、この溶液にシリコン系表面改質剤のジメチルジクロロシラン(実施例10)を0.3部、触媒としてピリジンを0.3部投入し、液温を80℃で6時間還流処理をした。反応終了後シクロへキサンで洗浄、ついで乾燥し50部の表面改質シリカ組成物を得た。次に、他のシリコン系表面改質剤である、ジメチルジメトキシシラン(実施例11)およびジエチルジエトキシシラン(実施例12)の2種の表面改質剤で、前掲の含水率が0.05%のシリカAを、いずれもピリジンを配合せず、上記と同一の方法・条件で還流処理をして2種50部の表面改質シリカ組成物を得た。
【0050】
ステップII
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)91.4部とアクリル酸メチル(MA)8.6部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そしてステップIで得られた3種の表面改質シリカ組成物各々40部加え、攪拌子で攪拌し、ついでフラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。合成終了後、溶液をn−へキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして、本発明に係わる3種の共重合モル比が90/10のMMA/MA系ナノ複合アクリル樹脂組成物を得た。
【0051】
ステップIII
得られた3種のナノ複合樹脂組成物を乾燥して粒となし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて全光線透過率、シリカの分散状態、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表3の結果が得られた。
【0052】
【表3】
【0053】
結果によれば、実施例9におけるコンポジット材に比べ総体的には明確な差異はないが、曲げ特性が若干良くなる傾向がある。これはシリカ表層のシラノール基がアルキル化やアミノ化されることにより母材のアクリル樹脂との相互作用が増大するためと考えられる。
【0054】
(比較例2)
粒状のポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン(株)製 アクリペットVH)を押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて、全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表3の結果が得られた。高い透明性を有するが、曲げ弾性率等の物性がやや劣り、実用に供せない。
【0055】
【発明の効果】
本発明により、メタクリル酸メチルと、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを重合させたアクリル樹脂に、無機系微粒子を配合してなるナノ複合アクリル樹脂組成物およびその製造方法が提供された。本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物は高い透明性を有し、かつ剛性が高く熱膨張が低いために、車両用の内外装部品などの用途に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、セダン型自動車の概観を示す図である。
1 フロントウィンドウ
2 サイドウィンドウ
3 リアウィンドウ
【発明の属する技術分野】
本発明は無機ガラス等の代替に好適なアクリル樹脂組成物と、その製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、樹脂の光線透過性を悪化させることなく、部材の剛性向上ならびに熱膨張の低減を図ることを可能とするシリカ等の無機系微粒子を配合してなる、ナノ複合アクリル樹脂組成物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明樹脂材料は無機ガラス材料に比べ軽量であり、かつ成形の自由度が大きいという利点はあるが、その半面、弾性率が低く、熱膨張係数が大きく、また硬度が低いために表面が傷つき易いという難点がある。このため現在、自動車における透明樹脂材料の適用はヘッドランプやサンルーフなど比較的低剛性でかつ表面処理のしやすい小物部品に限られ、自動車外装のかなりの面積を占める窓ガラス(以下ウィンドウと記載する)については所定の機能を満足するものがまだなく、本格的な採用までには至っていない。
【0003】
このような状況下で近年、可視光線の波長(380〜770nm)よりも小さいナノオーダ粒径の無機系微粒子材料を透明樹脂に配合する有機・無機ナノコンポジット材の研究開発が活発となり、各種の手法が提案されている。例えば分子レベルの改良特許とされる「ポリアミド複合材料及びその製造方法」(特開平2−305828)がある。これは無機材としてのモンモリナイトの層間にポリアミドの原料であるカプロラクタムを含浸して重合させてポリアミド系コンポジットを製造する方法である。ナノ粒子材のモンモリナイトの効果で物性の向上はあるが、母材樹脂のポリアミドは吸湿性が高くかつ表面硬度が低いため、自動車ウィンドウ等の大型外装用部材への適用は難しい。
【0004】
同じくポリアミド樹脂系コンポジット材に関するものが特開平5−306370(ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法)と特開平6−248176(強化ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法)に開示されている。前者は層状リン酸塩誘導体とポリアミドモノマーを加熱重合させてコンポジット材とするものであり、後者はフッ素雲母とポリアミドモノマーを加熱重合させてコンポジット材とするものである。その他モンモリナイトとビニル系樹脂のコンポジット材の製造方法が特開平6−41346に、そして粘土とポリエステル樹脂から成るコンポジットとその製造方法が特開平7−26123に開示されている。
【0005】
しかしながらこれらナノコンポジット組成物はすべて、粘土やタルク等の無機充填材の層状物質に高分子化合物を含浸挿入したものであり、従って特開平2−305828と同様、強度特性の向上は認められるものの、吸湿性や表面硬度不足に加え、透明性に劣り、自動車のウィンドウに代表される無機ガラス代替の透明樹脂材料としてはまだ実用の域には達していない。
【0006】
また樹脂製ウィンドウに関しては特開平11−343349号公報がある。本件特許は上記問題点の改良を提案するもので、アクリル樹脂に無機のシリカ微粒子を配合することを発明の骨子とし、それに適した材料組成と製造技法を開示している。アクリル樹脂は透明性が高くかつ耐候性に優れているため、自動車ウィンドウ等の耐久性が要求される屋外用途部材には好ましい材料である。しかしながら本公報記載の材料は高い透明性を維持しながら表面硬度を上昇させるという効果は認められるものの、半面弾性率の増大効果、換言すれば剛性向上効果は必ずしも十分とは言えず、前掲材料と同様にまだ自動車ウィンドウへの適用までには至っていない。
【0007】
即ち実施例によれば、シリカ配合コンポジット材の曲げ弾性率の最大は実施例11の3500MPa、これはシリカ無配合コンポジット材の曲げ弾性率(参考例1)に対しての上昇率は9.4%に過ぎない。理由はアクリル樹脂とシリカの間の相互作用が十分に発揮されていないためと考えられる。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−305828号公報
【特許文献2】
特開平5−306370号公報
【特許文献3】
特開平6−248176号公報
【特許文献4】
特開平6−41346号公報
【特許文献5】
特開平7−26123号公報
【特許文献6】
特開平11−343349号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は上記問題点を踏まえて、新たにアクリル樹脂と無機系微粒子より成るコンポジット材の開発に取組んだ。そして、高い透明性を保持しながら曲げ弾性率等の物性を高める材料組成とその製造手法を創出し、具体的には特願2002−188415、特願2002−207815および特願2002−207816においてその技法を提案した。即ち、母材樹脂としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)そして無機系微粒子としてシラノール基(−SiOH)を有するシリカ組成物を基本構成とさせたアクリル系ナノ複合材である。
【0010】
これら技法に係わるナノコンポジット材は高い透明性を保ちながら優れた物性を発現する好ましい特性を有している。しかし、製造条件によっては、合成後に得られるアクリル樹脂組成物粉末を粒状にする造粒工程において、又はその後の部材化の成形工程で発泡し、製品として成立しないケースがあることが判明した。本件の原因を追求したところ、発泡の主たる原因物質はPMMAの解重合より生成するMMAモノマーであり、シリカ組成物等の無機系微粒子を配合することにより系の溶融粘度が上がるために、造粒機および成形機のシリンダー内での材料温度が過度に上昇するのが原因であることを解明した。そこで、その様な欠点を有さない、無機ガラス等の代替に好適なナノ複合アクリル樹脂組成物を提供することが、本発明の課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題に関する対策を鋭意検討した結果、メタクリル酸メチル(MMA)モノマーに、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを共重合させて母材を共重合型アクリル樹脂とすれば、配合する無機系微粒子の種類と量に応じて系の溶融粘度を適切な状態に制御でき、前掲の発泡に係わる不具合を防ぐことができることを見出し本発明に至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において好適に使用されるアクリルモノマーは、その単独重合体が50℃以下のガラス転移温度を有するものである。そして、本発明におけるアクリルモノマーは、非官能性モノマーと官能性モノマーに大別される。非官能性モノマーの代表的な例としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸正ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸正へキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸正ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸−2−エチルへキシル等が挙げられる。また官能性モノマーの代表的な例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸第三ブチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキプロピル及びメタクリル酸グリシジル等が挙げられる。しかし、本発明において使用されるアクリルモノマーは、非官能性モノマーも官能性モノマーも共に、上記に限定されるものではなく、メタクリル酸メチルと共重合する種々のアクリルモノマーを使用することができる。
【0013】
これらのアクリルモノマーをメタクリル酸メチル(MMA)と共重合させることにより母材の溶融粘度が下がり、従来からの解決すべき課題であった造粒工程や成形工程での複合材の発泡という不具合が解消される。なお本願明細書において「メタクリル酸メチル」とは単量体を示すものであり、特記しない場合には、重合したポリメタクリル酸メチルを示すものではない。なお、共重合体における上記アクリルモノマーの比率が増すにつれて、該共重合体のガラス転移温度(Tg)は下がり、ひいては部材の物性が低下するが、本発明に係わるアクリル共重合体のTgの簡易計算式は式1のようである。よってこの計算式を用いれば、形成されるであろう共重合体のTgを事前に予測することができる。従って材料設計に当たってはそれぞれの最終製品の要求物性に応じてモノマーを選択し、ついで式1を基礎としてその共重合比率を設定すればよい。
【0014】
例えば、メタクリル酸メチル(MMA)にアクリル酸メチル(MA)を20モル%共重合させた時のMMA/MA共重合体のTgは84℃であり、MMA単独重合体であるポリメタクリル酸メチルより20℃ほどTgが低下すると予測される。
【0015】
【式1】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+‥‥‥‥
Tg:共重合体のガラス転移温度(絶対温度)、
Wl、W2、W3:各成分の重量分率、
Tg1、Tg2、Tg3:各成分単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)
【0016】
なお、本発明の樹脂組成物中に含有される上記アクリルモノマーは、赤外分光分析法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)および熱分解ガスクロー質量分析法(PyGC−MS)などの分析方法によって検出することが可能である。具体的には、例えばメタクリル酸メチルのみの重合体(PMMA)と、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)の共重合体を赤外分光分析法で比較すると、メタクリル酸メチルのみの重合体(PMMA)には750cm−1と840cm−1にも吸収ピークがあるが、アクリル酸メチル(MA)のそれに相当する吸収ピークは765cm−1と825cm−1であるため、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)の共重合体からはアクリル酸メチル(MA)に起因するこれら二種が加わった吸収ピークが検出されてアクリル酸メチル(MA)の存在が確認できる。
【0017】
なお、前記のアクリルモノマーの中でも、非官能性のアクリル酸メチル(MA)を使用することは特に好ましい。アクリル酸メチルの単独重合体のガラス転移温度は9℃であり、重合体の溶融粘度の調整がし易く、かつメタクリル酸メチル(MMA)の解重合を抑制する副次作用も期待できる。
【0018】
本発明における無機系微粒子とは、SiO2、Al203、Sb205、TiO2、SnO2、ZrO2などの無機酸化物であり、その形態は粉末でも水分散型のゾルでも有機溶媒分散型のオルガノゾルでもよく、いずれも本発明の適用対象となる。なお、本発明において使用される無機系微粒子は上記の化合物に限定されるものではなく、適宜他の無機酸化物もまた用いることができる。
【0019】
無機系微粒子としてシラノール基を有するシリカを使用することは、本発明の特に好ましい態様である。シラノール基を有することにより、シリカは本発明のアクリル樹脂と相互作用をすることができる。当該シリカの工業的生産方法は乾式法と湿式法に大別され、前者は4塩化珪素(SiCl4)の高温加水分解、後者は珪酸ソーダ(水ガラス(SiO2)n・Na2O)の加水分解で製造され、現在前者は微粉末状、後者は水分散型あるいは有機溶媒分散型のコロイド状で販売されている。これらの製品はこれまで球状シリカとして販売されてきたが、近年湿式製法において所定のアスペクト比を持つ鎖状シリカが新たに開発・上市された。本発明に係わるナノ複合樹脂組成物では双方のシリカを用いることができ、目的に応じて使い分けをすれば良い。
【0020】
上記のシリカの平均一次粒子径は好ましくは380nm以下であり、更に好ましくは5〜100nmである。また、その形状は球状又は鎖状であることができる。しかし、該シリカの平均一次粒子径と形状はそれに限定されるものではない。高強度・低熱膨張率でかつ透明性の高いナノ複合アクリル樹脂組成物を得るには、シリカの粒径は小さいことが好ましい。平均一次粒子径が100nm以下のものが好ましいが、平均一次粒子径が380nm以下であればその粒径は光波長以下であり、透明性の機能を損なうことはない。従って、シリカ組成物が母材樹脂に均一に分散していれば、380nm以下の粒径のシリカは問題なく実用に供することが出来る。
【0021】
また、母材樹脂との親和性を更に高めるために、当該シリカのシラノール基をシリコン系改質剤で表面処理して疎水化して、表面改質シリカとすることが可能であり、当該表面改質シリカをアクリル樹脂製造用のモノマー溶液に加えることができる。この様な処理は、更に透明性に優れた有機無機複合樹脂組成物の部材を得る目的において有効である。本発明で使用できるシリコン系改質剤としては、クロル基を有するもの、メトキシ基を有するもの、エトキシ基を有するものなどがある。下記においてシリコン系改質剤の例を挙げるが、シリコン系改質剤はこれらに限定されるものではない。
【0022】
クロル基を有するシリコン系改質剤の例としては、n−ブチルトリクロロシラン、n−デシルトリクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、n−ドデシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−へプチルトリクロロシラン、n−へキサデシルトリクロロシラン、n−へキシルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、n−ブチルメチルジクロロシラン、n−デシルメチルジクロロシラン、ジ−n−ブチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジ−n−へキシルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジ−n−オクチルジクロロシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、n−へプチルメチルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、メチルペンチルジクロロシラン、n−オクタデシルメトキシジクロロシラン、n−オクタデシルメチルジクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、n−デシルジメチルクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン、n−オクタデシルジメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−プロピルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、ジメチルジメトキシクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ビス〔2−(クロロジメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス(クロロジメチルシリルプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロメチルジメチルシロキベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、t−ブチルジフェニルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、クロロメチルジメチルフェニルシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリクロロシラン、(p−クロロメチフェニルトリn−プロポキシシラン、クロロフェニルメチルジクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、p−クロロフェニルトリメチルシラン、クロロプロピルジフェニルメチルシラン、3−クロロプロピルフェニルジクロロシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリクロロシラン、3−シアノプロピルフェニルジクロロシラン、ジベンジロキシジクロロシラン、1,3−ジクロロ−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、ジクロロフェニルトリクロロシラン、1,3−ジクロロテトラフェニルジシロキサン、ジメシチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジ(p−トリル)ジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、2−メチル−2−フェニルエチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、m−フェノキシフェニルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシランなどが挙げられる。
【0023】
メトキシ基を有するシリコン系改質剤の例としては、n−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、ベンゾイルオキシプロピルトリメトキシシラベンジロキシトリメチルシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、t−ブチルジフェニルメトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、Nフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
エトキシ基を有するシリコン系改質剤の例としては、n−デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−へキシルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビス−(N−メチルべンヅアミド)エトキシメチルシラン、t−ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジフェニルホスフィノエチルジメチルエトキシシラン、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
なお、メタクリル酸メチル(MMA)に対するアクリル酸メチル(MA)の共重合割合は、この範囲内に限定されるものではないが、以下の理由から3〜25%であることが好ましい。共重合割合が3%未満ではMMAの解重合等による発泡現象を抑制できず、一方25%を超えるとその共重合体のガラス転移温度は80℃未満となり、本発明の重要な用途の一つである自動車ウィンドウへの搭載が困難となる。即ち当該ウィンドウは夏場、太陽光の熱を受け、部材温度は80℃を超える高い温度となって熱変形等の不具合を引き起こす懸念がある。しかし、本発明に係わる共重合体のガラス転移温度80℃以上とすることで、これらの不具合発生を回避することが可能である。
【0026】
また、無機系微粒子の配合量が増えるにつれて、得られるナノ複合アクリル樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、発泡という不具合が起こす可能性があるが、これはアクリル樹脂の共重合比率を加減することにより対応することができる。シリカ組成物などの無機系微粒子の配合量については、この範囲内に限定するものではないが、アクリル樹脂100質量部に対して該無機系微粒子を1〜100質量部配合することが好ましい。シリカの配合量が増すにつれて、母材であるアクリル樹脂との水素結合等の相互作用の割合が増し、それにつれてナノ複合アクリル樹脂組成物の強度は増しかつ熱膨張率も低下する。
【0027】
しかし半面、アクリル樹脂100質量部に対するシリカの配合量が100質量部を超えると、これらの特性向上は認められない。得られるナノ複合アクリル樹脂組成物の透明性は逆に低下し、また比重が高くなって部材の重量が増えるというマイナス面が目立ってくる。従ってアクリル樹脂100質量部に対してシリカを配合する量は、100質量部を限度とするのが望ましい。一方下限量については、アクリル樹脂100質量部に対するシリカの配合量が1質量部以上あれば、線膨張係数の低減効果は低いものの、ナノ複合アクリル樹脂組成物の強度が向上しその効果が認められる。これより、シリカの配合量が1質量部以下の場合は強度向上・線膨張係数低減の機能は認め難く、シリカ無添加の透明樹脂材との差異はない。
【0028】
上記で述べたように表面改質シリカを用いることは本発明の好ましい態様であるが、アクリル樹脂100質量部に対する表面改質シリカ組成物の配合量が3質量部以上になると、本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物の強度向上が認められる。またアクリル樹脂100質量部に対するこの表面改質シリカ組成物の配合量が40質量部あれば所定の機能を確保することができ、重量増加を最小限に押さえることができる。これらのことを総合的に評価すると、アクリル樹脂100質量部に対する表面改質シリカ組成物の配合量は3〜40質量部とすることが好ましい。
【0029】
本発明に係わるナノ複合アクリル樹脂組成物は、種々の用途に用いることが可能である。該ナノ複合アクリル樹脂組成物は、強度が高く熱膨張率が低くかつ透明性が高いという特性を持っており、これらの機能が要求される部材に好適である。よって本発明に係わるナノ複合アクリル樹脂組成物は、自動車や家電そして住宅に用いられる透明部材・備品に適しており、特に軽量化と成形の自由度が要求される無機ガラス代替用途でその効果を発揮する。自動車を代表的用途例として記述すると次のようである。図1はセダン系自動車の外観図である。透明材料は着色材料を含めると内外装部品で多用されている。内装材では計器盤の透明カバーが代表例として挙げられるが、この部品は既に樹脂化されている。外装材ではウィンドウやヘッドランプ、サンルーフそしてコンビネーションランプカバー類がある。これら透明部材のうち前二者は強度と耐久性から現在も無機ガラスが材料の主流となっている。
【0030】
この中のウィンドウは風雨を防ぐための部品であり、図1のように車両の前面と後面そして側面のドアに設置されている。使用面積は3〜4m2、重量は30〜35kgのため、従来軽量化の期待の大きい部品である。このように車両の軽量化とデザインの自由度の拡大からウィンドウの樹脂化の要望が高く、これまで様々の角度より開発研究がなされ、その手法が提案・開示されているが、前述のように安全性と機能面で解決すべき課題があるためまだ本格的な採用までには至っていない。また、近年ワンボックス型のRV車の普及が目覚しくウィンドウの占める割合が増大してきており、軽量化と乗員の視認性と快適性向上から、ウィンドウの樹脂化に対する要求は益々強くなってきている。本発明に係わるナノ複合アクリル樹脂組成物により成形される透明樹脂製ガラスはこれら自動車用ウィンドウに要求される機能を備えており、車両の軽量化と快適性向上に貢献できるものである。加えて、車両用途において軽量化を達成すれば、同時に省燃費とCO2の排出低減に繋がり、地球環境の保全にも寄与することになる。
【0031】
本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物は、メタクリル酸メチル(MMA)、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマー及び有機溶媒からなる溶液を作製し、当該溶液に無機系微粒子を加えた後に当該モノマーを重合してポリマー化し、然るのち溶媒を除去することにより製造することができる。
【0032】
本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物の製造において好適に用いられる有機溶媒は、原則的には、重合時の粘度調整等で必要に応じて選択すれば良いが、例えばシラノール基を有するシリカのような無機系微粒子にあっては、加えて配合シリカを溶液中に微細に分散させてより透明性の高いナノ複合アクリル樹脂組成物を形成させる機能もあるため、重合時に重合溶媒として加えるのが望ましい。より詳しく述べると次の様である。
【0033】
本発明の対象の一つであるシラノール基を有するシリカは状況によってはシラノール基の間で水素結合により所定数量のシリカ同志が会合して、可視光線の波長(380〜770nm)を超える粒子を形成するケースがある。この状態で形成されるナノ複合アクリル樹脂組成物は曇りのある材料となり、透明材料として使用するのが難しくなる。
【0034】
この問題に対して、有機溶媒は前記アクリル樹脂モノマーとの共存下において、これらシリカのシラノール基同志の会合を遮断する機能があり、これによってシリカが可視光線の波長以下の本来の一次粒径で分散する。そのために、透明性の高いナノ複合アクリル樹脂組成物が得ることが可能であるために、有機溶媒を使用することは好ましい。これらの有機溶媒としては例えばアセトン、アニリン、キシレン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、ヘキサンなどの脂肪族系や芳香族系そしてメタノールなどのアルコール類を挙げることが可能であり、樹脂モノマーの種類に準じて適宜選択する。しかし、使用される有機溶媒は上記の例に限定されるものではない。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各種評価は以下の方法により、特記しない場合には、「部」は質量部を、「%」は質量%を示す。
【0036】
(ナノ複合アクリル樹脂組成物の評価装置と合否規格)
(1)溶融粘度は、REOLOGICA社製レオメーター「DynAlyserDAR−100」で計測した。
(2)ガラス転移温度は、セイコー電子社製 熱分析装置「SSC5020/DSC200」で計測し、80℃以上を合格とした。
(3)全光線透過率は、村上色彩研究所製ヘイズメータ「HM−65」で計測し、75%以上を合格とした。
(4)シリカ分散状態は日立製作所(株)製 透過電子顕微鏡「H−800」で計測し、優、良、可、不可という基準により目視で良否を判定した。
(5)曲げ強度及び曲げ弾性率は、島津製作所(株)製 オートグラフ「DCS−10T」で計測し、曲げ強度は108MPa以上、曲げ弾性率は3GPa以上を合格とした。
(6)線膨張係数は、セイコー電子工業(株)製 熱機械測定装置「TMA120C」で計測し、6×10−5/℃以下を合格とした。
(7)造粒性は、ベルストルフ社製 二軸押出機を用い、シリンダー設定温度230℃下での発泡の有無を観察し、良否を判定した。なお、○は許容、△は許容範囲、×は不許容を示す。
【0037】
(実施例1)
(MMA/MA共重合モル比が99/1のコンポジット材の合成及びその特性評価)
ステップI:配合シリカ組成物の調製
表層にシラノール基を有する酸性型シリカゾルスラリー(日産化学工業(株)製 商品名:スノーテックスO、濃度20%)を、ガスバーナ温度を300℃として、噴霧乾燥機((株)セイシン企業製 商品名:フラッシュジェットドライヤー)で乾燥処理をして、含水率2.7%の白色シリカ粉末を得た。ついで、当該シリカ粉末を熱風式の乾燥炉に入れ、150℃×3時間の条件下で追加乾燥して含水率を0.05%と成し、本発明に係わるコンポジット材の無機成分(以下シリカAと略称する)とした。
【0038】
ステップII:コンポジット材の合成
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)99.14部とアクリル酸メチル(MA)0.86部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そして上記で得られたシリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。得られた混合溶液は、やや乳白色の曇りのある溶液であった。次に、フラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。溶液の曇りは合成の進展ともに無くなり、8時間を過ぎると溶液は無色透明となった。アクリル樹脂とシリカシラノール基間の相互作用により、シリカが本来粒径の10〜20nmの一次粒子で溶液に分散するためである。合成終了後、溶液をn−へキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして共重合モル比が99/1のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。
【0039】
ステップIII:合成コンポジット材の特性評価
ステップIIの操作を繰り返して3kgのアクリルコンポジット材を製作し、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。結果を表1の実施例1に示す。ガラス転移温度は100℃を超え良好ではあるものの、造粒時に著しく発泡する性質があり、実用に供することが出来ず、よって総合評価ではNGである。本共重合体系の230℃における溶融粘度は10万Pa・sを超えており、摩擦熱により押出機のシリンダー内の温度が過度に高くなってアクリル樹脂の解重合を引き起こしたものと考えられる。また、MMA/MAの共重合モル比が99/1ではMAの比率は低く、発泡を抑制できないことを示唆している。
【0040】
【表1】
【0041】
(実施例2〜7)
(MMA/MA共重合モル比が97/3〜75/25のコンポジット材の合成及びその特性評価)
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)97.42部とアクリル酸メチル(MA)2.58部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部そして前掲シリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。次に、フラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。合成終了後、溶液をn−へキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして共重合モル比が97/3の実施例2のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。同様の操作でMMA/MAの共重合モル比を変え、表1に示す実施例3〜7の5種のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。これらの操作を繰り返して5種3kgのアクリルコンポジット材を製作、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。
【0042】
結果を表1の実施例2〜7に示す。ガラス転移温度はいずれも規格の80℃を超え、かつ造粒時の発泡がなく透明性が良好、総合評価ですべて合格であった。MMAへのMAの付加により母材が適度の溶融粘度になり、押出機でのシリンダー内発熱が最小限に抑えられたためである。更に、全体のバランスからは、ガラス転移温度が相対的に高い、共重合モル比95/5〜85/15のコンポジット材が望ましいという結果になった。
【0043】
(実施例8)
(MMA/MA共重合モル比が70/30のコンポジット材の合成及びその特性評価)
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)74.2部とアクリル酸メチル(MA)25.8部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部そして前掲シリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。次に、実施例2と同一の方法・条件で処理をして共重合モル比が70/30の実施例8のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。この操作を繰り返して3kgのアクリルコンポジット材を製作、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。結果を表1の実施例8に示す。母材の適度溶融が下がり造粒性は極めて良好となるが、半面ガラス転移温度が大幅に低下し基準値の80℃以下となり、総合評価で不合格であった。MMAへのMAの付加が過度になったためである。
【0044】
(比較例1)
(MMA単独重合コンポジット材の特性評価)
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)100部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そして前掲シリカAを40部加え、攪拌子で攪拌して混合溶液とした。次に、実施例2と同一の方法・条件で処理をして表1比較例1の単独重合MMAアクリルコンポジット材を得た。この操作を繰り返して3kgのアクリルコンポジット材を製作、微粉末化したのち当該試作材の溶融粘度、ガラス転移温度ならびに造粒性の特性評価試験を行った。
【0045】
結果を表1の比較例1に示す。ガラス転移温度は100℃を超え良好ではあるものの造粒時に著しく発泡する性質があり、実用に供することが出来ない。本共重合体系の230℃における溶融粘度は10万Pa・sを大きく超えており、実施例1と同様、摩擦熱により押出機のシリンダー内の温度が過度に高くなってアクリル樹脂が解重合し、発泡を引き起こしたものと考えられる。
【0046】
(実施例9)
(シリカの適正配合量)
ステップI
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)91.4部とアクリル酸メチル(MA)8.6部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そして前掲の含水率が0.05%のシリカAを1、3、5、10、20、40、60、80、100、120部の10水準加え、攪拌子で攪拌し、ついでフラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。合成終了後、溶液をn−ヘキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして、本発明に係わる10種の共重合モル比が90/10のMMA/MA系アクリルコンポジット材を得た。
【0047】
ステップII
得られた10種のナノ複合アクリル樹脂組成物を乾燥して粒となし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて全光線透過率、シリカの分散状態、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表2の結果が得られた。配合量1部以下ではシリカ非配合のポリメチルメタクリレート樹脂の特性と変わらず、物性改善の効果が薄い。また配合量が100部を超えると物性改善の効果は認められず、逆にコンポジット透明性が低下すると言う難点がある。一方3部から100部の配合範囲では透明性を損なうことなく、コンポジット材の物性を改善できる。ただし、シリカの配合量が増えるにつれてコンポジット材の比重が増し、ひいては部材の重量を増やすことが考えられる。この観点から評価すると樹脂100質量部に対する表面改質シリカ組成物の配合量は3〜40質量部の範囲とするのが望ましい。
【0048】
【表2】
【0049】
(実施例10〜12)
(表面改質シリカの特性について)
ステップI
前掲の含水率が0.05%のシリカA50部を三ロフラスコ中にある500部のシクロヘキサンに配合した。ついで、この溶液にシリコン系表面改質剤のジメチルジクロロシラン(実施例10)を0.3部、触媒としてピリジンを0.3部投入し、液温を80℃で6時間還流処理をした。反応終了後シクロへキサンで洗浄、ついで乾燥し50部の表面改質シリカ組成物を得た。次に、他のシリコン系表面改質剤である、ジメチルジメトキシシラン(実施例11)およびジエチルジエトキシシラン(実施例12)の2種の表面改質剤で、前掲の含水率が0.05%のシリカAを、いずれもピリジンを配合せず、上記と同一の方法・条件で還流処理をして2種50部の表面改質シリカ組成物を得た。
【0050】
ステップII
フラスコに有機溶媒としてトルエン250部、樹脂モノマーとしてメタアクリル酸メチル(MMA)91.4部とアクリル酸メチル(MA)8.6部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部、そしてステップIで得られた3種の表面改質シリカ組成物各々40部加え、攪拌子で攪拌し、ついでフラスコ内の空気を窒素で置換して系内を密閉し、この溶液を80℃条件下で18時間処理し、MMAとMAを共重合させた。合成終了後、溶液をn−へキサンに投入して沈殿させ、ついで濾過後100℃の条件下で12時間乾燥処理をして、本発明に係わる3種の共重合モル比が90/10のMMA/MA系ナノ複合アクリル樹脂組成物を得た。
【0051】
ステップIII
得られた3種のナノ複合樹脂組成物を乾燥して粒となし、これを押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて全光線透過率、シリカの分散状態、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表3の結果が得られた。
【0052】
【表3】
【0053】
結果によれば、実施例9におけるコンポジット材に比べ総体的には明確な差異はないが、曲げ特性が若干良くなる傾向がある。これはシリカ表層のシラノール基がアルキル化やアミノ化されることにより母材のアクリル樹脂との相互作用が増大するためと考えられる。
【0054】
(比較例2)
粒状のポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン(株)製 アクリペットVH)を押出法により厚さ2mmのシートに成形した。得られたシートついて、全光線透過率、曲げ強度、曲げ弾性率そして線膨張係数を計測したところ表3の結果が得られた。高い透明性を有するが、曲げ弾性率等の物性がやや劣り、実用に供せない。
【0055】
【発明の効果】
本発明により、メタクリル酸メチルと、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを重合させたアクリル樹脂に、無機系微粒子を配合してなるナノ複合アクリル樹脂組成物およびその製造方法が提供された。本発明のナノ複合アクリル樹脂組成物は高い透明性を有し、かつ剛性が高く熱膨張が低いために、車両用の内外装部品などの用途に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、セダン型自動車の概観を示す図である。
1 フロントウィンドウ
2 サイドウィンドウ
3 リアウィンドウ
Claims (15)
- メタクリル酸メチルと、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマーを重合させたアクリル樹脂に、無機系微粒子を配合してなることを特徴とする、ナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記アクリルモノマーは、メタクリル酸エチル、メタクリル酸正ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸正へキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸正ブチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸−2−エチルへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸第三ブチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキプロピル及びメタクリル酸グリシジルから成る群から選択されたことを特徴とする、請求項1記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記アクリルモノマーはアクリル酸メチルであることを特徴とする、請求項2記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- メタクリル酸メチルに対する前記アクリル酸メチルの共重合割合は、モル比で3〜25%であることを特徴とする、請求項3記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記アクリル樹脂100質量部に対して、前記無機系微粒子を1〜100質量部配合することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一つの請求項記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記アクリル樹脂100質量部に対して、前記無機系微粒子を3〜40質量部配合することを特徴とする、請求項5記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記無機系微粒子は無機酸化物であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一つの請求項記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記無機系微粒子はSiO2、Al203、Sb205、TiO2、SnO2及びZrO2から成る群から選択されたことを特徴とする、請求項7記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記無機系微粒子はシラノール基を有するシリカであることを特徴とする、請求項8記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記シリカは球状又は鎖状であって、その平均一次粒子径が380nm以下であることを特徴とする、請求項9記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記シリカは球状又は鎖状であって、その平均一次粒子径が5〜100nmであることを特徴とする、請求項10記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記シリカは、その表面をシリコン系改質剤で疎水化処理したものであることを特徴とする、請求項9ないし請求項11のいずれか一つの請求項記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 前記シリコン系改質剤は、クロル基、メトキシ基及びエトキシ基からなる群から選択された官能基を少なくとも一つ有する化合物であることを特徴とする、請求項12記載のナノ複合アクリル樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか一つの請求項記載のナノ複合透明樹脂組成物を用いた、車両用内外装部品。
- メタクリル酸メチル(MMA)、その単独重合体のガラス転移温度が50℃以下のアクリルモノマー及び有機溶媒からなる溶液を作製し、当該溶液に無機系微粒子を添加し、当該モノマーを重合してポリマーとなし、然るのち溶媒を除去することにより樹脂組成物を得る過程からなる、ナノ複合透明樹脂組成物の製造方法。
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