JP2004224861A - 水性塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱水性や、耐アルカリ性、耐候性、耐汚染性等に優れた塗膜を形成することができる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分から構成される。
(I)分子中に加水分解性シリル基又は該シリル基とシラノール基を有する水性樹脂、及び
(II)(a)式(1) Si(OR〔式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシラン及び式(2) RSi(OR〔式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシランからなり、かつ、両者のモル比が、(100:0〜250)であるオルガノシラン化合物と、(b)アルカノールアミンとを水の非存在下で反応させて得られる化合物。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱水性や、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性、耐アルカリ性等に優れた塗膜を形成することのできる水性塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、シリル基含有ビニル系樹脂を加水分解縮合反応させて得られる有機無機複合樹脂と硬化剤の混合物を結合剤とする塗膜は、耐候性、耐汚染性等に優れ、またオルガノポリシロキサン系無機樹脂を結合剤とする塗膜に比較しクラックが生じにくく、それ故、前述の有機無機複合樹脂と硬化剤の混合物を結合剤とする塗料組成物が注目されるようになってきている。
しかしながら、このような塗料組成物の多くは、有機溶剤を溶媒とする有機溶剤系塗料であり、大気汚染や省資源の観点からは好ましくない。そこで、有機無機複合樹脂と硬化剤の混合物を結合剤とする水性塗料も開発されてきている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−17817号公報
【特許文献2】特開2000−86976号公報
【特許文献3】特開2001−279160号公報
【0004】
しかしながら、このような水性塗料から得られる塗膜は、耐熱水性や耐アルカリ性等が劣る問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたもので、耐熱水性や、耐アルカリ性、耐候性、耐汚染性等に優れた塗膜を形成することのできる水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が達成出来ることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、
(I)分子中に加水分解性シリル基又は該シリル基とシラノール基を有する水性樹脂、及び
(II)(a)式(1)、
Si(OR
〔式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシラン及び式(2)、
Si(OR
〔式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシランからなり、かつ、両者のモル比が、(1:0〜2.5)であるオルガノシラン化合物と、(b)アルカノールアミンとを、水の非存在下で反応させて得られる化合物、
を含有することを特徴とする水性塗料組成物に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の水性塗料組成物の各成分について説明する。
(I)成分について
本発明の水性塗料組成物の構成成分(I)は、分子中に加水分解性シリル基又は該シリル基とシラノール基を有し、水に溶解もしくは安定に分散する水性樹脂である。このような特性を有する樹脂であれば従来から塗料用として公知の各種オルガノポリシロキサン系無機樹脂や、ビニル系樹脂、あるいはこれらの反応物である有機無機複合樹脂等が、特に制限なく利用可能である。
特に、本発明においては、以下説明する水性樹脂(A)及び水性樹脂(B)が好適である。
【0008】
水性樹脂(A)
水性樹脂(A)は、
(c)式(3)、
Si(OR4−n
〔式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1又は2である。〕
で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と、(d)(i)分子中に重合性不飽和基及び珪素原子に直結した加水分解性基を有する重合性不飽和モノマー1〜50質量%及び(ii)上記(i)成分以外の重合性不飽和モノマー99〜50質量%とからなるモノマー成分10〜2000質量部とを、Al、Ti又はZr系金属キレート化合物等の縮合反応促進剤の存在下で、水中で乳化重合して得られる樹脂である。
【0009】
上記式(3)において、Rとしての有機基としては、例えば、アルキル基や、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。
ここで、アルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜4個のものである。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が好適に挙げられる。
アリール基としては、例えば、フエニル基等が挙げられる。
上記各官能基は、任意に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子や、臭素原子、フッ素原子等)や、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基等が挙げられる。
【0010】
としてのアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜2個のものである。
上記式(3)で示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
【0011】
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランなどが挙げられるが、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランである。
【0012】
(c)成分は、これらオルガノシランの1種単独、もしくは、2種以上混合したもの、あるいは、これらを加水分解縮合反応して得られた部分加水分解縮合物である。部分加水分解縮合物の分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量で、例えば、300〜5000、好ましくは、500〜3000が適当であり、このような分子量の縮合物を使用することにより、重合安定性、貯蔵安定性を悪化させることなく、密着性のよい塗膜が得られる。また、オルガノシランの部分加水分解縮合物は、ケイ素原子に結合した−OH基や−OR基を、例えば、1個以上、好ましくは3〜30個有するものが適当である。
【0013】
このような縮合物の具体例としては、市販品として東レ・ダウコーニング社製のSH6018や、DC6−2230、SR2402、DC3037、DC3074;信越化学工業社製のKR−211や、KR−212、KR−213、KR−214、KR−215,KR−216、KR−218;東芝シリコーン社製のTSR−145や、TSR−160、TSR−165、YR−3187等が挙げられる。
本発明において、(c)成分は、次式、
−OR
(Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。)
の珪素原子に直結した加水分解性基が、全て加水分解し、−OHのみとなった部分加水分解縮合物を用いるほうが、乳化重合の際、揮発性有機化合物となるアルコールの生成が少なく、安定に乳化重合を完結することができるので、特に好ましい。
【0014】
また、上記式(3)で示されるオルガノシランの部分加水分解縮合物と縮合反応していないオルガノシランとは、前者100質量部に対し後者1〜30質量部、好ましくは、1〜10質量部併用するのが、乳化重合時、(c)成分と後述する(d)成分とが効率よくグラフト化反応する傾向にあり、また、両者の割合によって、得られる塗膜の硬度の調整が可能となるので望ましい。
(d)成分は、以下説明する(i)成分と(ii)成分とからなる重合性不飽和モノマー成分ある。
(i)成分は、乳化重合して、後述する(ii)成分とビニル系共重合体を形成するための重合性不飽和基と、上記式(3)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と縮合反応し、該縮合物を前述の共重合体にグラフト化させるための珪素原子に直結した加水分解性基とを有する重合性不飽和モノマーである。
【0015】
このような重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシランや、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等を例示することができる。
【0016】
(ii)成分は、前述の(i)成分とラジカル重合してビニル系共重合体を形成するものであり、従来からビニル系共重合体の製造に使用されている各種重合性不飽和モノマーが使用できる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマーあるいはこれらの酸無水物;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルや、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有モノマ−;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;スチレンや、メチルスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系モノマー;その他、ビニルトルエン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル等を例示することができる。
【0017】
(d)成分は以上説明した(i)成分と(ii)成分とからなり、両者の配合質量割合は、(1〜50):(99〜50)、好ましくは(1.5〜30):(98.5〜70)であり、かつ(d)成分の配合量は,(c)成分100質量部に対し、10〜2000質量部、好ましくは、50〜1000質量部が適当である。
(i)成分と(ii)成分との割合において、(i)成分が、上記範囲より多すぎると、得られる塗膜の外観や耐クラック性等が低下する傾向にあり、逆に少なすぎると、塗料の貯蔵安定性や、得られる塗膜の耐熱水性や耐アルカリ性等が低下する傾向にある。
【0018】
また、(c)成分と(d)成分との割合において、(d)成分の配合量が、前記範囲より多すぎると、得られる塗膜の耐候性や、耐汚染性等が低下する傾向にあり、逆に少なすぎると、得られる塗膜の耐クラック性や耐アルカリ性等が低下する傾向にある。
縮合反応促進剤としては、公知の各種促進剤が利用可能であるが、特に、Al、Ti又はZr系金属キレート化合物は、前述の(c)成分であるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と前述の(i)成分である重合性不飽和モノマー中の加水分解性基との縮合反応を促進させるとともに、(i)成分と(ii)成分とから形成されるビニル系共重合体に(c)成分をグラフト化させ、それにより得られる塗膜の耐熱水性や、耐アルカリ性等を向上させるため好ましい。
【0019】
Al、Ti又はZr系金属キレート化合物としては、従来からオルガノシランを縮合反応させるために使用されているものがそのまま使用可能であるが、具体的には、例えば、テトラアセチルアセテートジルコニウムや、テトラエチルアセトアセテートジルコニウム、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシジ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタンや、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムや、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリスアセチルアセテートアルミニウム等のアルミニウムキレート化合物などの有機金属化合物が挙げられる。
【0020】
Al、Ti又はZr系金属キレート化合物の配合量は、(c)成分100質量部に対し、例えば、0.3〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部が適当である。
水性樹脂(A)の製造方法は、例えば、前述の(c)成分と(d)成分とを、均一溶液になるまで攪拌混合し、更にその中に、前述の金属キレート化合物を混合し、溶液を調製する。次いで、該溶液を、水中にて乳化剤存在下で、攪拌し、プレエマルジョン化した後、もしくはプレエマルジョン化しないで、水中にて、乳化剤、重合開始剤、更に必要に応じて、連鎖移動剤や乳化安定剤等の存在下で、通常、60〜90℃の温度で、2〜10時間乳化重合反応させることにより水性樹脂(A)、即ち、水性有機無機複合樹脂の水分散液を製造する。
【0021】
前述の乳化剤としては、従来から公知のアニオン系や、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤や、ラジカル重合可能な官能基を有する反応性乳化剤が適宜使用可能である。具体的には、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩や、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン塩、ポリオキシプロピレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルサルフェート塩、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテルサルフェート塩等のアニオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェノールエーテル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリマー、ソルタビン誘導体等のノニオン界面活性剤;及びトリメチロールプロパンのアクリル酸エステル、アルケニルコハク酸モノアリルエステル塩等の反応性乳化剤などが挙げられる。
【0022】
また、重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや、過硫酸カリウム、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性重合開始剤;アゾイソブチロニトリルや、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート等の油溶性重合性開始剤;ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドツクス系などが挙げられる。
また、連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタンなどの長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
また、乳化安定剤としては、ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0023】
水性有機無機複合樹脂の水分散液を製造する乳化重合法として、一括仕込み法を例示したが、その他前述の溶液もしくは、そのプレエマルジョン化液を水中に連続的に滴下しながら乳化重合する滴下法;前述の溶液もしくは、そのプレエマルジョン化液の一部を、水中で乳化重合させた後、残部を滴下しながら乳化重合するシード重合法;更には、(d)成分である重合性不飽和モノマー組成を変えたコア/シェル重合法等も適宜採用することも可能である。
このようにして得られた水性樹脂(A)、即ち、水性有機無機複合樹脂の水分散液は、凍結−融解安定性や、貯蔵安定性を改善するために、アンモニアや、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類でpH6〜9に調整したものが好ましい。
【0024】
水性樹脂(B)
水性樹脂(B)は、(e)上記式(3)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と、(f)加水分解性シリル基又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部との加水分解縮合反応物を、中和剤で中和して得られた水性樹脂である。
(e)成分は、前述の(c)成分と同様である。
(f)成分は、ビニル系樹脂の末端あるいは側鎖に加水分解性シリル基又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を樹脂1分子中に少なくとも1個、好ましくは、2個以上有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/gであり、好ましくは、分子量が、例えば、約1000〜50000のビニル系樹脂である。
【0025】
前記シリル基は、式(4)、
−SiX(R(3−P)
〔式中、Xは、アルコキシ基や、アシロキシ基、ハロゲン基、ケトキシメート基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、フェノキシ基等の加水分解性基又は水酸基;Rは、水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基であり、Pは、1〜3の整数である。〕で示されるものである。
シリル基含有ビニル系樹脂は、例えば、式(5)、
(X)(R(3−P)Si−H
〔式中、X、R及びpは、上記式(4)と同じ意味である。〕
で示されるヒドロシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂とを常法に従って、反応させることにより製造される。
なお、前記ヒドロシラン化合物としては、例えば、メチルジクロロヒドロシランや、メチルジエトキシヒドロシラン、メチルジアセトキシヒドロシラン等が代表的なものとして挙げられる。ヒドロシラン化合物の使用量は、ビニル系樹脂中に含まれる炭素−炭素二重結合に対し、例えば、0.5〜2倍モル量が適当である。
【0026】
前記ビニル系樹脂は、(メタ)アクリル酸や、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又は無水マレイン酸等の酸無水物を必須ビニル系モノマーとして含有し、更に(メタ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル等の水酸基含有ビニルモノマー;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等からなる群から選ばれるその他ビニル系モノマーとの共重合体が好適であり、共重合体製造時に、(メタ)アクリル酸アリルやジアリルフタレート等をラジカル共重合させることにより、ビニル系樹脂中にヒドロシリル化反応させる為の炭素−炭素二重結合の導入が可能となる。
【0027】
なお、前述のカルボン酸又は酸無水物は、共重合体の構成モノマー中に、得られるビニル系樹脂の酸価が、20〜150mgKOH/g、好ましくは50〜120mgKOH/gとなるように含有させるのが好ましい。酸価が、上記範囲より小さいと、得られる塗料の貯蔵安定性が低下する傾向にあり、逆に大きいと、得られる塗膜の耐水性、耐熱水性等が低下する傾向にある。
また、上記のシリル基含有ビニル系樹脂の、その他製造方法としては、前述カルボン酸又は酸無水物を含むビニル系モノマー及び前述の(i)成分からなるシリル基含有ビニル化合物を必須モノマーとして含有し、更に必要に応じて前述のその他ビニル系モノマーの1種又は2種以上をラジカル重合させる方法もある。これらシリル基含有ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、市販品として鐘淵化学工業社製のカネカゼムラック等が挙げられる。
【0028】
中和剤は、従来から中和剤として公知の各種含窒素塩基性化合物が特に制限なく利用できる。具体的には、例えば、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチルプロパノールアミン等のアルコールアミン類、モルホリン、アンモニア等の揮発性含窒素塩基性化合物が代表的なものとして挙げられる。また、γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロへキシル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシランも中和剤の一部として併用可能である。
【0029】
水性樹脂(B)の製造方法は、例えば、上記の(e)成分と(f)成分との混合物を、水及び触媒の存在下で加水分解縮合反応させる。(e)成分と(f)成分との混合割合は、前者100質量部に対し、後者は5〜200質量部、好ましくは、10〜150質量部であることが適当である。なお、後者が上記範囲より少ないと、得られる塗膜の外観や耐クラツク性、耐凍害性、耐アルカリ性等が低下する傾向にあり、逆に多すぎると、得られる塗膜の耐候性、耐汚染性等が低下する傾向にある。
また、水の量は、(e)成分と(f)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45〜100%、好ましくは、50〜90%が加水分解するのに充分な量であり、具体的には前記混合物中の加水分解性基総数の0.4〜1.0倍、好ましくは、0.5〜0.9倍のモル数となる量が適当である。
【0030】
また、触媒としては、硝酸や、塩酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸、プロピオン酸等の有機酸を挙げることができる。触媒の添加量は、前記混合物のpHが3〜6になる量が適当である。加水分解縮合反応は、(e)成分と(f)成分との混合物を、水及び触媒の存在下で、40〜80℃、好ましくは、45〜65℃で、2〜10時間撹拌しながら反応させる方法が適当である。なお、水の量を(e)成分と(f)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45%以上とするのは、水性樹脂(B)、即ち、有機無機複合樹脂の水分散液(エマルション)となった時、貯蔵安定性がよく、透明性の高い膜形成が可能であるためである。
また、(e)成分と(f)成分との加水分解縮合反応を上記のように一段階で実施することが可能であるが、生成物の貯蔵安定性の観点から次のような二段階で反応させることが、更に好ましい。
即ち、第一段階として、水及び酸触媒の存在下で、(e)成分と(f)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の40〜80%、好ましくは、45〜70%が加水分解縮合反応するように、40〜80℃、好ましくは、45〜65℃で、1〜8時間、撹拌しながら反応させる。
【0031】
第二段階として、第一段階に続いて、更に水及びトリメトキシボラン、トリエトキシボラン等のトリアルコキシボランあるいは、前述の金属キレート化合物を添加し、加水分解縮合反応させる。第二段階で添加する水の量は、(e)成分と(f)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45〜100%、好ましくは、50〜90%が加水分解及び縮合反応するのに充分な量である。第二段階で用いるトリアルコキシボランや金属キレート化合物は、縮合反応を促進し、塗膜の外観や、耐候性、耐汚染性、耐熱水性等を向上させることができる。これら触媒量は、第一段階で得られた反応物と未反応で残っている上記(e)成分と(f)成分との合計量100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは、0.005〜2質量部が適当である。第二段階における加水分解縮合反応は、第一段階と同様に40〜80℃で2〜5時間反応させるのが適当である。
【0032】
なお、加水分解縮合反応物は、その反応で生成するアルコール分により、又はそのアルコール分と必要に応じて添加した後述する有機溶媒とにより溶液状態となっている。
このようにして得られた有機無機複合樹脂の溶液に、中和剤を加え、均一に分散させ、中和した後、水を加えるか、もしくは中和剤と水とを同時に加え、攪拌することにより強制分散させ、水性樹脂(B)の水分散液(エマルジョン)を得る。
(II)成分
本発明の塗料組成物の構成成分(II)は、成分(I)の硬化剤となる化合物である。
該化合物は、(a)式(1)、
Si(OR
〔式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシラン及び式(2)、
Si(OR
〔式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシランからなり、かつ、両者のモル比が、(100:0〜250、好ましくは、(100:0〜50)と、(b)アルカノールアミンとを、水の非存在下で反応させて得られるものである。
【0033】
(a)オルガノシラン化合物と(b)アルカノールアミンとの反応は、(a)オルガノシラン化合物中のアルコキシ基と、(b)アルカノールアミン中の水酸基(B)とのモル比が、(100:25〜100)、好ましくは、(100:50〜100)の範囲で行うのが好ましい。なお、アルカノールアミンが前記範囲より少ないと、(II)化合物の生成量が少なくなり、効率的でないばかりか、未反応のオルガノシラン化合物との分離が困難であるため望ましくない。
一方、アルカノールアミンが前記範囲より過剰となると、未反応のアルカノールアミンが残存し、それを分離しないで(I)成分の水性樹脂の水分散液と混合し、塗料化した場合、塗料のpHが著しく上昇し、塗料の貯蔵安定性が低下する原因となるので望ましくない。
【0034】
上記式(1)において、Rのアルキル基は、前述の式(3)のRと同様なものが挙げられる。好ましいアルキル基は、炭素数が1〜2個のものである。
上記式(1)で示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。
上記式(2)のオルガノシランは、前述の式(3)で示されるオルガノシランのn値が、1の場合と同様である。
(b)成分であるアルカノールアミンは、式(6)、
N[(CHOH)]3−n
〔式中、Rは、水素原子もしくは、炭素数1〜8のアルキル基であり、mは、1〜12の整数であり、nは、0〜2の整数である。〕で示される化合物である。式中のRとしてのアルキル基としては、直鎖でも分岐したものでもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基や、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、好ましいアルキル基は、炭素数が、1〜2個のものである。
【0035】
このようなアルカノールアミンの具体例としては、例えば、モノエタノールアミンや、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が代表的なものとして挙げられる。
(II)成分の化合物は、例えば、(a)オルガノシラン化合物と(b)アルカノールアミンとの混合物を、10〜30℃の温度下で、2〜5時間撹拌させ、更に70℃まで加温し、5〜10時間保ち、反応させることにより製造される。本発明の水性塗料組成物は、以上説明した(I)水性樹脂と(II)化合物とを含有するものである。
【0036】
両者の配合割合は、(I)成分中のアルコキシシリル基及びシラノール基の合計量と、(II)成分中の、
≡Si‐O‐(CH−N基
〔mは、1〜12の整数である。〕とのモル比が、(1:0.6〜4.0)、好ましくは、(1:0.8〜3.0)となるような割合が適当である。
本発明の水性塗料組成物は、(I)水性樹脂の水分散液と(II)化合物を主成分とし、更に、必要に応じて、塗料の貯蔵安定性や塗装作業性を良くするための希釈水や、有機溶媒及び充填剤、染料、更には、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤などを配合したものから構成される。
【0037】
上記有機溶媒としては、メタノールや、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒や、それとトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の疎水性の各種塗料用有機溶媒との混合有機溶媒が使用可能である。これら有機溶媒は、あらかじめ成分(I)もしくは成分(II)のいずれか一方に配合しておくことも可能である。有機溶媒の配合量は、塗料組成物中、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%が適当である。
前記充填材としては、タルクや、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ベントナイト、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、リトポン等の各種塗料用体質顔料や着色顔料が使用可能である。充填材の配合量は、塗料組成物の固形分中、0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%が適当である。
【0038】
本発明の塗料組成物は、被塗物表面に刷毛、スプレー、ローラー、ディッピングなどの塗装手段により塗装し、常温もしくは300℃以下の温度で焼付けることにより硬化塗膜を形成することが可能である。なお、被塗物としては、無機窯業基材や、ステンレス、アルミニウム等の各種金属基材、ガラス基材、プラスチック基材、紙基材などが挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
<水性樹脂分散液Aの調製>
ガラス製ビーカーに、フェニル及びアルキルアルコキシシランの部分加水分解縮合物〔「DC6−2230」(東レ・ダウコーニング(株)製;固形分100%)〕を15部と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、メチルメタクリレート15部、n−ブチルアクリレート9部、メタクリル酸0.5部とからなるモノマー混合物を仕込み、均一溶液となるまで撹拌した。均一混合後、トリアセチルアセテートアルミニウム0.1部とメチルトリメトキシシラン1.0部とジメチルジメトキシシラン1.0部を添加混合し、続いて、反応性アニオン系界面活性剤〔「アデカリアソープSE−1025N」(旭電化工業(株)製)〕0.75部とイオン交換水18部の混合液を加え、高速撹拌機で攪拌し、プレエマルジョン化し、エマルジョン溶液を製造した。
【0040】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を備えた反応器に、脱イオン交換水を32部、炭酸水素ナトリウムを0.1部、「アデカリアソープSE−1025N」を0.65部仕込み、撹拌しながら78℃に昇温した。同温度を保持しながら、過硫酸カリウム0.15部を仕込み、投入5分後より上記エマルジョン溶液を3時間かけて均一滴下した。滴下終了30分後に過硫酸カリウム1%水溶液を1部添加し、更に同温度で2時間撹拌を続けた後、50℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン0.15部を添加し、反応を完結した。
得られた水性樹脂分散液Aは、固形分濃度45%、PH7.5であった。
【0041】
<水性樹脂分散液Bの調製>
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、エチレングリコールモノブチルエーテル100部を加え、撹拌しながら100℃に加温した。次に、イソブチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルメタクリレート31.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸8.5部、及びt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2.5部の混合溶液を、100℃で3時間かけて滴下し、その後105℃に昇温し、2時間維持し、反応を終了させ、固形分50%、樹脂の酸価65mgKOH/g、数平均分子量10000のシリル基含有ビニル系樹脂溶液(イ)を製造した。
【0042】
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物〔「SR2402」(東レ・ダウコーニング(株)製;固形分100%)〕を23部、メチルトリメトキシシランを8部、ジメチルジメトキシシランを1.7部と、上記シリル基含有ビニル系樹脂溶液(イ)を25部、イソプロパノールを10部加え、混合した後、イオン交換水3.0部と0.1規定塩酸0.05部を加え、60℃で3時間反応させた。次いで、モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム0.3部とイオン交換水0.8部を加え、更に60℃で3時間反応させた。次いでトリエチルアミン0.6部と水37部を加え、50℃で1時間撹拌したのち、減圧〔1.3×10Pa(100トール)〕下、脱溶剤を行った後、水で固形分濃度35%になるように希釈調整を行い、水性樹脂分散液Bを調製した。
【0043】
<硬化剤Cの調製>
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、(a)テトラエトキシシラン60.0部(288mMol)と(b)トリエタノールアミン43.0部(288mMol)を仕込み、20℃で2時間攪拌し、更に30分かけて70℃まで加温、70℃一定を6時間保ち、冷却した。続いて、45℃―減圧条件下で脱溶剤をし、生成したエタノールを除去、硬化剤Cを得た。
【0044】
<硬化剤Dの調製>
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、(a)テトラエトキシシラン60.0部(288mMol)と(b)ジエタノールアミン60.5部(576mMol)を仕込み、20℃で2時間攪拌し、更に30分かけて70℃まで加温、70℃一定を6時間保ち、冷却した。続いて、45℃―減圧条件下で脱溶剤をし、生成したエタノールを除去、硬化剤Dを得た。
【0045】
実施例1〜4及び比較例1〜3
上記水性樹脂分散液A、Bと硬化剤C、Dを、表1に示す割合で、塗装直前に混合し、水性塗料組成物を調製した。なお、比較例3は、硬化剤として表1に示す従来の硬化剤を使用した。
得られた水性塗料組成物につき、以下の通り塗板を作成し、得られる塗膜の外観や、硬度、耐汚染性、耐熱水性、耐候性、耐アルカリ性の各塗膜性能試験をし、その結果をそれぞれ表1の下段に示した。
なお、水性樹脂分散液中のアルコキシシリル基及びシラノール基の合計量と硬化剤中の≡Si‐O‐(CH−N基のモル比は、実施例1〜4において、それぞれ、(1:2.50)、(1:2.13)、(1:0.87)、(1:0.61)である。
【0046】
<塗膜性能試験>
素材として石膏スラグパーライト板(厚さ12mm)を用い、その表面にポリイソシアネートプレポリマー溶液シーラー〔「Vセラン♯100シーラー」(大日本塗料(株)製)〕(酢酸ブチル:キシレン=1:1の溶液で100%希釈)を塗着量が90〜100g/m(wet質量)となるように吹付塗装した。これを100℃で5分間乾燥した。次いで、ベース塗料として、アクリルシリコーン樹脂系塗料〔「Vセラン♯500エナメル」(大日本塗料(株)製)〕(酢酸ブチル:キシレン=1:1の溶液で40%希釈)を塗着量が80〜90g/m(wet質量)となるように吹付塗装した。これを120℃で15分間乾燥した。次いで、表1に示す配合からなる実施例1〜4及び比較例1〜2の各塗料組成物を塗着量が(130±10)g/m(wet質量)となるように吹き付け塗装した。これを80℃で、12分間乾燥した後、室温で更に3日間乾燥し、塗板を作成した。なお、試験方法及び評価は、以下に基づいて行った。
【0047】
外観:塗板に形成された塗膜外観を目視判定した。
硬度:JIS K 5400により測定した鉛筆硬度
耐熱水性:塗板を80℃の水中に浸漬して塗膜外観を、浸漬中及び塗膜乾燥後において目視判定した。
評価
◎ ・・・浸漬中及び塗膜乾燥後共に変化なし
○ ・・・浸漬中軽微な白化あるが、塗膜乾燥後では変化なし
△ ・・・浸漬中での白化ひどく、塗膜乾燥後では光沢低下、白化等の軽微な変化あり
× ・・・浸漬中での白化ひどく、塗膜乾燥後では光沢低下、白化等の変化大
【0048】
耐汚染性:赤、黒マジックインキを塗布してから24時間後に、n−ブタノールでぬらした布でふきとり、除染性を目視判定した。
評価
◎ ・・・完全除去
○ ・・・極く軽微な汚染
△ ・・・少し汚染
× ・・・汚染著しい
【0049】
耐候性:サンシャインウェザー−オーメーター3000時間
評価
○ ・・・塗膜外観に変化はなく、光沢保持率95%以上
△ ・・・塗膜外観変化が軽微にあり、光沢保持率80〜94%
× ・・・塗膜変化が著しい、光沢保持率80%未満
【0050】
耐アルカリ性:飽和消石灰アルカリ水溶液に各塗板を40℃で10日間浸漬後、塗膜表面を目視評価した。
評価
○・・・変化なし
△・・・塗膜表面若干白化
×・・・塗膜表面白濁
【0051】
【表1】
表1 (単位:部)
Figure 2004224861
【0052】
表1から明らかの通り、本発明の水性塗料組成物である実施例1〜4は、優れた塗膜性能を有していた。一方、硬化剤を含まない比較例1、比較例2、及び従来の硬化剤を使用した比較例3は、耐汚染性や、耐熱水性、耐アルカリ性等が劣っていた。
【発明の効果】
本発明の水性塗料組成物は、耐熱水性や、耐アルカリ性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性等に優れた塗膜を形成させることができる。

Claims (4)

  1. (I)分子中に加水分解性シリル基又は該シリル基とシラノール基を有する水性樹脂、及び
    (II)(a)式(1)、
    Si(OR
    〔式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシラン及び式(2)、
    Si(OR
    〔式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。〕で示されるオルガノシランからなり、かつ、両者のモル比が、(100:0〜250)であるオルガノシラン化合物と、
    (b)アルカノールアミンとを、水の非存在下で反応させて得られる化合物、
    を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
  2. 前記水性樹脂(I)が、
    (c)式(3)、
    Si(OR4−n
    〔式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1又は2である。〕
    で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、100質量部と、
    (d)(i)分子中に重合性不飽和基及び珪素原子に直結した加水分解性基を有する重合性不飽和モノマー 1〜50質量%と、(ii)上記(i)成分以外の重合性不飽和モノマー 99〜50質量%とからなるモノマー成分、10〜2000質量部とを、
    縮合反応促進剤の存在下にて、水中で乳化重合して得られた樹脂である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 前記水性樹脂(I)が、
    (e)上記式(3)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、100質量部と、
    (f)加水分解性シリル基又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部と、
    の加水分解縮合反応物を、中和剤で中和して得られた樹脂である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
  4. 前記(II)化合物が、前記(a)オルガノシラン化合物と、前記(b)アルカノールアミンとを、成分(a)中のアルコキシ基と、成分(b)中の水酸基とのモル比が、(100:25〜100)の範囲で反応して得られる化合物である、請求項1乃至3のいずれかに記載の水性塗料組成物。
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