JP4169988B2 - 着色セメント瓦の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は着色セメント瓦の製造方法に関し、より詳しくは、耐候性、耐温水性、塗膜硬度等に優れ、長期耐久性能に優れた着色セメント瓦の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅のプレハブ化及び低コスト化に伴い、施工性及び製造コスト面の有利さから、従来の日本瓦や西洋瓦に変わってセメント瓦の使用が急増しており、今後ますます需要が伸びるものと予想される。
【0003】
セメント瓦は、一般的には、セメント、補強繊維、骨材等を混合し、水を添加し、混合、攪拌して得られる混練物を所定形状の型内に入れ、加圧脱水成形し、養生して製造されており、このようなセメント瓦はそのままで使用されることもあるが、最近では外観上の高級化を図るために着色して用いられることがほとんどである。
【0004】
着色法としては硬化したセメント瓦の表面に高分子材料からなる着色塗料を塗布する方法が一般的である。しかしながら、このような高分子材料は焼付温度が高く、さらに原材料費も高くなるという難点があり、更に退色現象や剥離現象を生ずる場合が多く、満足できるものではない。
【0005】
上記のような着色セメント瓦については、養生時におけるエフロレッセンス及び変色を防止し且つ耐久性を付与するために、シーラー及び下塗り塗料として溶剤型塗料又は水系塗料を塗装する場合がある。この場合には、セメント瓦の養生条件に耐え得る性能を有する塗料を選ばないとエフロレッセンスの防止が困難であり、また基材との密着性が低下してフクレ、クラック、剥離等のトラブルが発生することがある。
上記したように、セメント瓦の従来の着色被覆法及び使用被覆材には、性能上及び適用上、種々の欠陥が存在している。
【0006】
また、オルガノシラン及び/又はその加水分解縮合物とシリル基含有ビニル系樹脂とを加水分解縮合反応させて得られる有機無機複合樹脂が結合剤となっている塗膜は耐候性に優れており、またオルガノポリシロキサン系無機樹脂が結合剤となっている塗膜とは異なってクラックが生じにくく、それ故に上記の有機無機複合樹脂が結合成分となるコーティング組成物が上塗り塗料として注目されるようになってきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、耐候性、耐温水性、塗膜硬度等に優れ、長期耐久性能に優れた着色セメント瓦の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の目的を達成するために種々検討を重ねた結果、未養生の状態のセメント瓦表面に特定のアクリルエマルション樹脂及び着色剤を含有する下塗り塗料を塗装し、塗膜の乾燥、未養生セメントの蒸気養生の後、特定の有機無機複合樹脂水分散液及び特定の硬化剤を含有する上塗り塗料を塗装し、焼付硬化させることにより、耐候性、耐温水性、塗膜硬度等に優れ、長期耐久性能に優れた着色セメント瓦が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明の着色セメント瓦の製造方法は、未養生セメント瓦表面にガラス転移温度が20〜100℃、ゲル分率が50%以上のアクリルエマルション樹脂及び着色剤を含有する下塗り塗料を塗装し、塗膜を乾燥させた後、未養生セメント瓦を蒸気養生させ、その後
(A)(a)一般式R1 n Si(OR2 )4-n (式中、R1 は炭素数1〜8の有機基であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と
(b)加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、且つ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部と
の加水分解縮合反応物を中和剤で中和し、水を添加して得られた有機無機複合樹脂水分散液、
(B)アミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシラン、及び
(C)上記(B)成分のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有する化合物
を含有する上塗り塗料を塗装し、焼付硬化させることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明で用いる未養生セメント瓦として、例えば、セメント、補強繊維、骨材等を混合し、水を添加し、混合、攪拌して得られる混練物を所定形状の型内に入れ、加圧脱水成形し、一次養生した未養生セメント瓦を挙げることができるが、その製造方法によって制限されるものではない。
【0011】
本発明で用いる下塗り塗料はアクリルエマルション樹脂を含有する。このアクリルエマルション樹脂は、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、飽和カルボン酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ブタジエン及びエチレンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせによる不飽和単量体の混合物を乳化剤の存在下で乳化重合する事によって得られる。
【0012】
本発明では、ガラス転移温度(以下、Tgという)が20〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、ゲル分率が50%以上、好ましくは75〜80%、あるいはそれ以上のアクリルエマルション樹脂を用いる。このようなアクリルエマルション樹脂は耐養生性に優れている。アクリルエマルション樹脂のTgが20℃未満である場合には、養生時の熱等により乾燥塗膜が溶融溶出したり、また、ブロッキング等の不具合が起こりやすくなり、逆に乳化重合体のTgが100℃を超える場合には、乾燥時の成膜不良を起こしやすくなるので好ましくない。また、アクリルエマルション樹脂のゲル分率が50%未満の場合には、養生時の熱等により乾燥塗膜が溶融溶出したり、また、下地からのアルカリによるエフロレッセンスが発生し易くなるため、好ましくない。
【0013】
また、本発明で用いるアクリルエマルション樹脂はシリル基を持っていることが好ましい。このようなシリル基含有アクリルエマルション樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、飽和カルボン酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ブタジエン及びエチレンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせによる不飽和単量体の混合物に、更に、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のシリル基含有不飽和単量体及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン等のグリシジル基又はアミノ基を含有するシランカップリング剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を添加した混合物を乳化剤の存在下で乳化重合する事によって得られる。
【0014】
このシリル基含有アクリルエマルション樹脂についても、Tgが20〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、ゲル分率が50%以上、好ましくは75〜80%、あるいはそれ以上のものを用いる。このようなシリル基含有アクリルエマルション樹脂は耐養生性に優れており、また、このようなシリル基含有アクリルエマルション樹脂を用いることにより、本発明で用いる上塗り塗料との密着性が改善されるので好ましい。
【0015】
本発明で用いる下塗り塗料は着色剤を含有する。この着色剤として、一般の無機質顔料を代表的なものとして挙げることができるが、色によっては、耐アルカリ性及び耐候性を有する有機顔料を用いても良い。例えば、黒く着色する場合にはカーボンブラック、酸化鉄等、赤色に着色する場合には弁柄等、緑色に着色する場合には酸化クロム等、青色に着色する場合にはフタロシアニンブルー等、白色に着色する場合には二酸化チタン等を用いることができる。着色顔料はこれらに限定されるものではなく、通常の塗料に配合される着色顔料が使用できる。
【0016】
着色顔料は、好ましくは、下塗り塗料中に0.1〜15質量%の割合で配合され、この範囲内での配合により充分に着色することができる。
本発明で用いる下塗り塗料は、上記のアクリルエマルション樹脂又はシリル基含有アクリルエマルション樹脂、上記着色剤の他に、有機溶媒、充填剤、染料、更には、硬化促進剤、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0017】
次に、本発明で用いる上塗り塗料について説明する。
本発明で用いる上塗り塗料は、
(A)(a)一般式R1 n Si(OR2 )4-n (式中、R1 は炭素数1〜8の有機基であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と
(b)加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、且つ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部と
の加水分解縮合反応物を中和剤で中和し、水を添加して得られた有機無機複合樹脂水分散液、
(B)アミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシラン、及び
(C)上記(B)成分のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有す
る化合物
を含有する。
【0018】
本発明で用いる上記(A)成分の有機無機複合樹脂水分散液は、
(a)一般式R1 n Si(OR2 )4-n (式中、R1 は炭素数1〜8の有機基であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と
(b)加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、且つ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部と
の加水分解縮合反応物を中和剤で中和し、水を添加して得られる。
【0019】
上記(a)成分の一般式R1 n Si(OR2 )4-n において、R1 で示される有機基として、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ビニル基を挙げることができる。また、アルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n―プロピル基、i―プロピル基、n―ブチル基、i―ブチル基、s―ブチル基、t―ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜4個のものである。
【0020】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基を好適に挙げることができる。
アリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。
上記の各官能基は任意に置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フツ素原子)、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基を挙げることができる。
【0021】
R2 で示されるアルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n―プロピル基、i―プロピル基、n―ブチル基、i―ブチル基、s―ブチル基、t―ブチル基、ペンチル基等を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜2個のものである。
【0022】
上記の一般式R1 n Si(OR2 )4-n で示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i―プロピルトリメトキシシラン、i―プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランを挙げることができる。好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランである。
これらのオルガノシランは1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0023】
上記の(a)成分は上記のオルガノシランの部分加水分解縮合物であってもよい。該部分加水分解縮合物のポリスチレン換算質量平均分子量は、例えば、300〜5000、好ましくは500〜3000が適当である。このような分子量の縮合物を使用することにより、貯蔵安定性を悪化させることなく、密着性のよい塗膜を得ることができる。また、オルガノシランの部分加水分解縮合物は、ケイ素原子に結合した−OH基や−OR2 基を1個以上、好ましくは3〜30個有するものであることが適当である。
【0024】
このような縮合物の具体例としては、市販品である信越化学工業社製のKR−211、KR−212、KR−213、KR−214、KR−216、KR−218;東芝シリコーン社製のTSR−145、TSR−160、TSR−165、YR−3187等を挙げることができる。
【0025】
本発明で用いる上記の(a)成分について、一般式R1 n Si(OR2 )4-n のn値が1のオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、n値が2のオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物との、質量比が50:50〜100:0、好ましくは60:40〜95:5の混合物を用いると、加水分解縮合反応させる際に安定に反応し、また耐クラック性のよい塗膜が得られるので望ましい。
【0026】
本発明で用いる上記の(b)成分は、ビニル系樹脂の末端あるいは側鎖に加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を樹脂1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/gであり、好ましくは、分子量が例えば約1000〜50000のビニル系樹脂である。
【0027】
上記のシリル基は一般式−SiXP (R3 )(3-P) (式中、Xはアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン基、ケトキシメート基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、フェノキシ基等の加水分解性基又は水酸基であり、R3 は水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基であり、Pは1〜3の整数である。)で示されるものである。
【0028】
シリル基含有ビニル系樹脂は、例えば、一般式(X)P (R3 )(3-P) Si―H(式中、X、R3 及びpは上記と同じ意味である。)で示されるヒドロシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂とを常法に従って反応させることにより製造される。
【0029】
なお、上記のヒドロシラン化合物として、例えば、メチルジクロロヒドロシラン、メチルジエトキシヒドロシラン、メチルジアセトキシヒドロシラン等を代表的なものとして挙げることができる。シリル基含有ビニル系樹脂を製造する際のヒドロシラン化合物の使用量は、ビニル系樹脂中に含まれる炭素−炭素二重結合の数に対して0.5〜2倍となるモル量が適当である。
【0030】
上記のビニル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又は無水マレイン酸等の酸無水物を必須モノマー単位として含有し、更に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等からなる群から選ばれるビニル系モノマーをコモノマー単位として含有する共重合体であるが、共重合体製造時に(メタ)アクリル酸アリル、ジアリルフタレート等をラジカル共重合させることにより、ビニル系樹脂中にヒドロシリル化反応のための炭素−炭素二重結合を導入することが可能となる。
【0031】
なお、得られるビニル系樹脂の酸価が20〜150mgKOH/g、好ましくは50〜120mgKOH/gとなるように、共重合体の構成モノマー中に上記のカルボン酸又は酸無水物を含有させる必要がある。ビニル系樹脂の酸価が20mgKOH/gより小さいと、得られる水分散液の貯蔵安定性が悪くなり、逆にビニル系樹脂の酸価が150mgKOH/gを超えると、得られる塗膜の耐水性、耐熱水性が悪くなるので、いずれも好ましくない。
【0032】
また、上記のシリル基含有ビニル系樹脂のその他の製造方法としては、上記のカルボン酸又は酸無水物を含むビニル系モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル等の水酸基含有モノマーと、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のシリル基含有ビニル化合物とをラジカル重合させる方法もある。
これらシリル基含有ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、市販品である鐘淵化学工業社製のカネカゼムラツク等を挙げることができる。
【0033】
次に、本発明で主剤成分として用いる(A)成分の有機無機複合樹脂水分散液の製造方法について説明する。
まず、上記の(a)成分と(b)成分との混合物に更に水及び触媒を存在させて加水分解及び縮合反応を生じさせる。(a)成分と(b)成分との混合割合は、(a)成分100質量部に対し、(b)成分5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部であることが適当である。
【0034】
なお、(b)成分が5質量部より少ないと、得られる塗膜の外観や耐クラツク性、耐凍害性、耐アルカリ性等が悪くなり、逆に(b)成分の配合量が200質量部を超えると、得られる塗膜の耐候性、耐汚染性等が悪くなるので好ましくない。
【0035】
上記の(a)成分と(b)成分との混合物に添加する水の量は、(a)成分と(b)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の好ましくは45〜100%、より好ましくは50〜90%を加水分解及び縮合反応させるのに充分な量であり、具体的には上記の混合物中の加水分解性基の総数の0.45〜1.0倍、好ましくは0.5〜0.9倍のモル数となる量が適当である。なお、ここで45%以上が好ましいとする理由は、有機無機複合樹脂水分散液(エマルション)となった時の貯蔵安定性がよく、また、塗料に用いた時に透明性の高い膜形成が可能であるためである。
【0036】
上記の(a)成分と(b)成分との混合物に添加する触媒としては、硝酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸、プロピオン酸等の有機酸を挙げることができる。触媒の添加量は、上記混合物のpHが3〜6になる量が適当である。加水分解反応については、(a)成分と(b)成分との混合物を、水及び触媒の存在下で、40〜80℃、好ましくは45〜65℃で、2〜10時間、撹拌しながら反応させる方法が適当であるが、この方法に限定されるものではない。
【0037】
なお、(a)成分と(b)成分との加水分解縮合反応を上記のように一段階で実施することが可能であるが、生成物の貯蔵安定性の観点から、次のような二段階で反応させることが好ましい。
即ち、第一段階として、水及び触媒の存在下で、(a)成分と(B)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の40〜80%、好ましくは45〜70%が加水分解縮合反応するように、40〜80℃、好ましくは45〜65℃で1〜8時間、撹拌しながら反応させる。
【0038】
第二段階として、第一段階に続いて、更に水及びトリメトキシボラン、トリエトキシボラン等のトリアルコキシボラン、トリ−n−ブトキシエチルアセテートジルコニウム、ジn−ブトキシ(エチルアセテート)ジルコニウム、テトタラキス(エチルアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセテート)チタン等のチタンキレート化合物、モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物触媒を添加し、加水分解及び縮合反応を生じさせる。なお、第二段階で用いるトリアルコキシボランや有機金属化合物触媒は縮合反応を促進し、塗膜の外観、耐候性、耐汚染性、耐熱水性等を向上させることができる。
【0039】
第二段階で添加する水の量は、(a)成分と(b)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45〜100%、好ましくは50〜90%が加水分解及び縮合反応するのに充分な量である。
第二段階で添加する触媒の量は、第一段階で得られた反応物と未反応で残っている上記(a)成分及び(b)成分との合計量100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは、0.005〜2質量部が適当である。第二段階における加水分解縮合反応は、第一段階と同様に40〜80℃で2〜5時間反応させるのが適当である。
【0040】
尚、加水分解縮合反応物は、その反応で生成するアルコール分により、又はそのアルコール分と必要に応じて添加した後記の有機溶媒とにより溶液状態となっている。
このようにして得られた反応物である有機無機複合樹脂の溶液に中和剤を加えて均一に分散させ、中和した後、水を加えるか、もしくは中和剤と水とを同時に加え、撹拌することにより強制分散させて水分散液(エマルション)を得る。
【0041】
中和剤の量は、安定なエマルションが得られるように、反応物である有機無機複合樹脂中の酸基の50〜100%、好ましくは、70〜100%を中和する量が適当である。
なお、中和剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン等が代表的なものとして挙げられる。
【0042】
また、中和後に加える水の量は塗料の塗装作業性等を考慮して任意に決定されるが、通常塗料組成物の固形分が10〜70質量%になる程度の量が適当である。
なお、このようにして得られた有機無機複合樹脂水分散液中には上記の加水分解縮合反応により生成したアルコール分が残っている。従って、その水分散液をそのまま塗料組成物として使用すると、揮発性有機成分(VOC)が多くなるので、常法に従ってアルコール分を減圧下で除去することが好ましい。
【0043】
本発明で用いる(B)成分は、分子内にアミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシランであり、具体的には、一般式
(R6 −NH−R5 −)n Si(OR4 )4-n
(式中、R4 は炭素数1〜5のアルキル基であり、R5 は炭素数1〜5のアルキレン基であり、R6 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、又は置換若しくは未置換のアミノ基であり、nは1又は2である。)で示されるアミノ基含有アルコキシシランを好適に使用することができる。
【0044】
なお、R4 としてのアルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、その例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜2個のものである。
R5 としてのアルキレン基は直鎖でも分岐したものでもよく、その例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を挙げることができる。
【0045】
R6 としてのアルキル基は上記のR4 の場合と同様である。また、R6 としてのシクロアルキル基としては、例えばシクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。またR6 としてのアリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。更にR6 としてのアミノ基としては、アミノ基中の水素原子の一方又は両方が、例えば、上記炭素数1〜5のアルキル基で置換されたものを挙げることができる。
【0046】
上記の一般式で示されるアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロへキシルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0047】
(B)成分であるアルコキシシランの配合量は、前記(A)成分である有機無機複合樹脂水分散液の固形分(有機無機複合樹脂)100質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは2〜15質量部が適当である。
なお、(B)成分の配合量が上記の範囲よりも少ないと、得られる塗膜の硬化性や耐汚染性が悪くなる傾向があり、逆に多過ぎると耐熱水性や耐クラック性が悪くなる傾向がある。
【0048】
本発明で用いる(C)成分は前記(B)成分中のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有する化合物である。これら化合物としてはエポキシ基含有アルコキシシラン、アルキルグリシジルエーテル及びエステル、シクロエポキシ化合物、ビスフェノールAF系の低分子量エポキシ樹脂、あるいはこれらの乳化物等を用いることができる。
【0049】
具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロぺニルオキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−イソンアネートプロピルトリイソプロぺニルオキシシランとグリシドールとの付加物、ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリシジルエーテル、カージュラーE(シェル社製商品名)、ブチルフェニルグリシジルエーテル、エピコート815、828、834(油化シェルエポキシ社製商品名)等およびこれら乳化物が代表的なものとして挙げられる。
上記のエポキシ基含有化合物の中でも加水分解性シリル基をもつエポキシ基含有アルコキシシラン化合物を用いた場合には塗膜の硬化性が向上し、耐熱性、耐アルカリ性等がよくなるので好ましい。
【0050】
(C)成分の配合量は、上記の(B)成分であるアミノ基含有アルコキシシラン化合物のアミノ基の活性水素の総数に対して、エポキシ基含有化合物のエポキシ基の総数が好ましくは0.1〜2.0倍、より好ましくは0.2〜1.2倍となる量が適当である。
【0051】
なお、(C)成分のエポキシ基含有化合物の量が上記の範囲より少ないと、得られる塗膜の耐熱水性等が悪くなる傾向があり、逆に上記の範囲より多過ぎると塗膜の耐候性、耐クラック性等が悪くなる傾向がある。
上記の(B)成分であるアミノ基含有アルコキシシラン化合物及び(C)成分であるエポキシ基含有化合物は塗装直前に(A)成分の水分散液と混合し、分散させて使用する。
【0052】
上記の(B)成分及び(C)成分は硬化剤として作用し、(B)成分中のアミノ基は(C)成分中のエポキシ基と反応すると共に、(B)成分中のシリル基、更には、(C)成分中のシリル基(存在する場合のみ)が、(A)成分中の有機無機複合樹脂中に残存するシリル基と加水分解縮合反応し、耐熱水性、耐アルカリ性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性等に優れた硬化塗膜を形成する。
【0053】
本発明で用いる上塗り塗料組成物は、以上に説明した、主剤成分となる(A)成分の有機無機複合樹脂水分散液とその硬化剤となる(B)成分であるアミノ基含有アルコキシシラン化合物及び(C)成分であるエポキシ基含有化合物とを主成分とし、更に、必要に応じて、塗料組成物の貯蔵安定性や塗装作業性を良くするための水、有機溶媒及び充填剤、染料、更には、硬化促進剤、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤などを配合したものから構成される。
【0054】
上記の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒やそれとトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の疎水性の各種塗料用有機溶媒との混合有機溶媒が使用可能である。
【0055】
これら有機溶媒は、上記の(A)成分である有機無機複合樹脂水分散液の製造時において、反応が均質に生じるように溶媒として配合することも可能である。有機溶媒の配合量は、塗料組成物の好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%が適当である。
【0056】
上記の充填材としては、通常の無機・有機染顔料を使用することができる。具体的には、酸化チタン、硫化亜鉛、亜鉛華、鉛白、リトポン、カーボンブラック、油煙、紺青、フタロシアニンブルー、群青、カーミンFB、黄鉛、亜鉛黄、ハンザイエロー、オーカー、ベンガラ、不活性含有アゾ染料等が代表的なものとして挙げられる。充填材の配合量は、塗料組成物の固形分の好ましくは0〜70質量%、より好ましくは0〜50質量%が適当である。
【0057】
なお、本発明で用いる上塗り塗料はクリヤ塗料であってもエナメル塗料であっても良好な瓦を製造することができるが、上塗り塗料がカラークリヤ塗料であることが好ましい。
カラークリヤ塗料とは上記の無機・有機染顔料を樹脂固形分に対して約0.01〜15質量%の割合で含むものである。この無機・有機染顔料の量が0.01質量%よりも少ないと、充分な色調の変化が得られず、逆に15質量%を超えると、形成される塗膜の透明度が低下するため深みのある色調の変化が得られなくなる傾向がある。特に、無機・有機染顔料の量が0.05〜10質量%程度のものが好ましい。
【0058】
本発明のセメント瓦の製造方法においては、前記した未養生セメント瓦表面に前記した下塗り塗料を刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、ディッピング等の通常の塗装方法に従って塗装し、通常の乾燥方法に従って塗膜を乾燥させた後、未養生セメント瓦を蒸気養生させる。この蒸気養生の一例としては、初期養生として温度20℃/時間の昇温速度で温度60℃まで昇温させ、この状態で5時間保持し、その後、室温まで冷却する。
【0059】
その後、着色セメント瓦表面に前記した上塗り塗料を刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、ディッピング等の通常の塗装方法に従って塗装し、通常の焼付方法に従って、例えば300℃以下の温度で焼付けて硬化塗膜を形成させる。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明を参考例、実施例、比較例によって具体的に説明する。なお、参考例、実施例、比較例において「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」である。
【0061】
<アクリルエマルション塗料1の調製>
ガラス転移温度75℃、ゲル分率80%のアクリルエマルション樹脂80部を撹拌しながらその中に成膜助剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)2部、水12.4部、中和剤(ジメチルアミノエタノールの50%水溶液)0.5部、増粘剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社から入手できるアルカリ膨潤型増粘剤であるプライマルASE−60)水溶液5部及び消泡剤(サンノプコ株式会社から入手できるシリカシリコーン系消泡剤であるフォーマスターVL)0.1部を添加し、30分間撹拌し、これに着色剤を1%の割合で添加し、着色してアクリルエマルション塗料1とした。
【0062】
なお、上記の着色剤はイオン交換水17.7部、増粘剤(ハーキュリーズ・ジャパン株式会社から入手できるナトラゾール250HR)0.2部、分散剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社から入手できるOROTAN731DP)5部、湿潤分散剤(第一工業製薬株式会社から入手できるネオノイゲン140A)0.5部、カーボンブラック(旭カーボン株式会社から入手できる旭#50)9部、二酸化チタン(石原産業株式会社から入手できるタイペークCR−97)10部、硫酸バリウム(堺化学工業株式会社から入手できる沈降性硫酸バリウム#100)57.5部、及び消泡剤(サンノプコ株式会社から入手できるノプコ8034)1部を混合してその中にガラスビーズ30部を加え、粒ゲージで20μm以下になるまでディスパー攪拌して得たものである。
【0063】
<アクリルエマルション塗料2の調製>
ガラス転移温度75℃、ゲル分率80%のシリル基含有アクリルエマルション樹脂80部を撹拌しながらその中に成膜助剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)2部、水12.4部、中和剤(ジメチルアミノエタノールの50%水溶液)0.5部、増粘剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社から入手できるアルカリ膨潤型増粘剤であるプライマルASE−60)水溶液5部及び消泡剤(サンノプコ株式会社から入手できるシリカシリコーン系消泡剤であるフォーマスターVL)0.1部を添加し、30分間撹拌し、これに着色剤(上記のアクリルエマルション塗料1の調製で用いたものと同一のもの)を1%の割合で添加し、着色してアクリルエマルション塗料2とした。
【0064】
<アクリルエマルション塗料3の調製>
ガラス転移温度30℃、ゲル分率40%のアクリルエマルション樹脂80部を撹拌しながらその中に成膜助剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)2部、水12.4部、中和剤(ジメチルアミノエタノールの50%水溶液)0.5部、増粘剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社から入手できるアルカリ膨潤型増粘剤であるプライマルASE−60)水溶液5部及び消泡剤(サンノプコ株式会社から入手できるシリカシリコーン系消泡剤であるフォーマスターVL)0.1部を添加し、30分間撹拌し、これに着色剤(上記のアクリルエマルション塗料1の調製で用いたものと同一のもの)1%の割合で添加し、着色してアクリルエマルション塗料3を調製した。
【0065】
<シリル基含有ビニル系樹脂溶液の調製>
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル50部及びn−ブタノール50部を加え、撹拌しながら100℃に加熱した。次にイソブチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルメタクリレート31.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8.5部、アクリル酸10.5部及びt−ブチルペロキシ2−エチルヘキサノエート2.5部からなる混合溶液を100℃で3時間かけて滴下し、その後105℃に昇温させ、2時間維持して反応を終了させた。得られたシリル基含有ビニル系樹脂溶液は固形分濃度50%で、樹脂の酸価は65mgKOH/g、数平均分子量は10000であった。
【0066】
<有機無機複合樹脂塗料aの調製>(エナメル塗料)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、(a)成分であるメチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物23部、メチルトリメトキシシラン8部、ジメチルジメトキシシラン1.7部、上記のシリル基含有ビニル系樹脂溶液の調製で得た(b)成分であるシリル基含有ビニル系樹脂溶液25部、及びイソプルパノール10部を加え、混合した後、イオン交換水3.0部及び1規定塩酸0.05部を加え、60℃で3時間反応させた。次いでモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム0.3部及びイオン交換水0.8部を加え、更に60℃で3時間反応させた。次いでジメチルアミノエタノール0.55部及び水37部を加え、50℃で1時間撹拌したのち、減圧(1.3×104 Pa)下で脱溶剤を行った後、水で固形分濃度35%になるよう希釈調整を行って、有機無機複合樹脂水分散液を調製した。
【0067】
上記で得た有機無機複合樹脂水分散液100部に着色剤(上記のアクリルエマルション塗料1の調製で用いたものと同一のもの)を固形分の15%となる割合で添加して着色した。塗装直前に、これにアミノ基含有アルコキシシラン化合物1部及びエポキシ基含有アルコキシシラン化合物2.4部を混合して有機無機複合樹脂塗料aを調製した。
【0068】
<有機無機複合樹脂塗料bの調製>(カラークリヤ塗料)
着色剤(上記のアクリルエマルション塗料1の調製で用いたものと同一のもの)の量を固形分の3%とした以外は上記の有機無機複合樹脂塗料aの調製と同様にして有機無機複合樹脂塗料bを調製した。
【0069】
参考例1〜4
上記のアクリルエマルション塗料1、アクリルエマルション塗料3、有機無機複合樹脂塗料a、及び有機無機複合樹脂塗料bをそれぞれガラス板にアプリケーター(6mil)にて塗布し、120℃で3分間乾燥させた。次いで、40℃で1週間乾燥させて塗板を作成した。各々の塗板について下記の方法で評価した。それらの結果を第1表に示す。
外観:塗板に形成された塗膜の外観を目視で判定した。
硬度:JIS K5600により測定した鉛筆硬度。
【0070】
実施例1〜4及び比較例1〜2
未養生のセメント瓦表面に下塗り塗料として第2表に示すように上記のアクリルエマルション塗料1、2又は3をフローコーターにて塗布し、ジェット炉乾燥機で乾燥した。その後、その未養生セメント瓦を、初期養生として温度20℃/時間の昇温速度で温度60℃まで昇温させ、この状態で5時間保持し、その後、室温まで冷却して養生した。このセメント瓦に対して、上塗り塗料として第2表に示すように上記の有機無機複合樹脂塗料a、有機無機複合樹脂塗料b又は上記のアクリルエマルション塗料1をフローコーターにて塗装し、ジェット炉乾燥機にて乾燥し塗板を作製した。各々の塗板について下記の方法で評価した。それらの結果を第2表に示す。
【0071】
<外観>
塗板に形成された塗膜の外観を目視で判定した。
<耐養生性>
蒸気養生後の塗膜外観の異常を目視で下記の基準で判定した。
○:エフロレッセンスが殆どなく、塗膜外観の変化がない。
△:エフロレッセンスが僅かにあり、塗膜外観の変化が軽微である。
×:エフロレッセンス及び塗膜外観の変化が著しい。
【0072】
<耐温水性>
塗板を60℃の水中に100時間浸漬して塗膜外観の異常を目視で下記の基準で判定た。
○:変化なし。
△:光沢低下、白化等の変化は軽微である。
×:光沢低下、白化等の変化が大きい。
【0073】
<耐候性>
スーパー・UV促進耐候性試験機で1500時間後に評価。
○:塗膜外観に変化はなく、光沢保持率80%以上。
△:塗膜外観の変化が軽微であり、光沢保持率50〜80%未満。
×:塗膜変化が著しく、光沢保持率50%未満。
【0074】
<密着性>
凍害試験ASTM−B法にて100、300、600サイクル後にセロハン粘着テープ密着試験を行い、下塗/上塗の層間密着性を評価した。
○:600サイクルで剥離なし。
△:300サイクルで剥離ないが、600サイクルで剥離あり。
×:100サイクルで剥離あり。
【0075】
【表1】
【0076】
第1表及び第2表から明らかなように、特定の下塗り塗料及び上塗り塗料を用いた本発明の着色セメント瓦の製造方法で得られた着色セメント瓦は優れた塗膜性能を有している。一方、下塗り塗膜としてゲル分率が不十分なアクリルエマルション塗料3を用いた比較例1では上塗り塗料に有機無機複合樹脂塗料を塗装しても充分な塗膜性能を得られなかった。また、下塗り塗料及び上塗り塗料の両方にアクリルエマルション塗料1を用いた比較例2でも充分な塗膜性能を得られなかった。
【0077】
【発明の効果】
本発明の着色セメント瓦の製造方法により、外観、耐養生性、耐候性、耐温水性、塗膜硬度等に優れた塗膜を有する着色セメント瓦を製造することができる。
Claims (3)
- 未養生セメント瓦表面にガラス転移温度が20〜100℃、ゲル分率が50%以上のアクリルエマルション樹脂及び着色剤を含有する下塗り塗料を塗装し、塗膜を乾燥させた後、未養生セメント瓦を蒸気養生させ、その後
(A)(a)一般式R1 n Si(OR2 )4-n (式中、R1 は炭素数1〜8の有機基であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と
(b)加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、且つ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部と
の加水分解縮合反応物を中和剤で中和し、水を添加して得られた有機無機複合樹脂水分散液、
(B)アミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシラン、及び
(C)上記(B)成分のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有する化合物
を含有する上塗り塗料を塗装し、焼付硬化させることを特徴とする着色セメント瓦の製造方法。 - アクリルエマルション樹脂がシリル基を持っていることを特徴とする請求項1記載の着色セメント瓦の製造方法。
- 上塗り塗料がカラークリヤ塗料であることを特徴とする請求項1又は2記載の着色セメント瓦の製造方法。
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