JP2004224820A - 改質カーボンブラック - Google Patents
改質カーボンブラック Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004224820A JP2004224820A JP2003011054A JP2003011054A JP2004224820A JP 2004224820 A JP2004224820 A JP 2004224820A JP 2003011054 A JP2003011054 A JP 2003011054A JP 2003011054 A JP2003011054 A JP 2003011054A JP 2004224820 A JP2004224820 A JP 2004224820A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- carbon black
- rosin
- modified
- resin
- based resin
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Pigments, Carbon Blacks, Or Wood Stains (AREA)
- Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
- Conductive Materials (AREA)
Abstract
【課題】分散性に優れ、印刷インキ、塗料、或は導電性プラスチックなどに適用した場合、黒色着色性能や導電性能のさらなる向上を図る。
【解決手段】カーボンブラックをロジン系樹脂の水性エマルションで処理した改質カーボンブラックであり、具体的には、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させて製造する。ロジン系樹脂の水性エマルションで処理するため、得られたカーボンブラックは分散性に優れ、黒色着色性能に優れた印刷インキや塗料、或は導電性に優れたプラスチック成型物などを円滑に製造できる。
【選択図】 なし
【解決手段】カーボンブラックをロジン系樹脂の水性エマルションで処理した改質カーボンブラックであり、具体的には、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させて製造する。ロジン系樹脂の水性エマルションで処理するため、得られたカーボンブラックは分散性に優れ、黒色着色性能に優れた印刷インキや塗料、或は導電性に優れたプラスチック成型物などを円滑に製造できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は改質カーボンブラックに関して、分散性が良好であるため、黒色着色性能に優れた印刷インキや塗料、或は、導電性に優れたプラスチック成型物などを円滑に製造できるものを提供する。
【0002】
【発明の背景】
カーボンブラックは着色用の顔料として黒色インキ或は塗料などに広範に使用されている。このような着色用途の場合、カーボンブラックはインキビヒクルや塗料用樹脂に混練分散させて使用されるが、顔料の中でも特に分散し難いため、黒色に着色されたインキや塗料などの外観が光沢や濃度の点で劣るという問題がある。
一方、カーボンブラックは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂からなる高分子化合物に、導電性付与剤として高濃度で充填分散され、導電性樹脂として使用されている。この導電性付与の用途では、熱可塑性樹脂を加熱溶融して混練しながらカーボンブラックを分散充填させるのであるが、カーボンブラックは極めて分散しにくいため、分散充填率の増大に限界があり、得られた樹脂の導電性のさらなる向上も容易でない。
【0003】
【従来の技術】
カーボンブラックを樹脂などの着色に使用するに際して、分散性の向上を目的とした従来技術には、次のものがある。
(1)特許文献1
カーボンブラックと、ロジン、ロジンエステル、変性ロジンなどのロジン系樹脂と、重合禁止剤又は重合遅延剤とを含有するカーボンブラック配合着色用組成物であり、カーボンブラックをロジン系樹脂とともに高剪断力下で混練する際の相溶性の悪化、顔料分散不良を上記重合禁止剤又は重合遅延剤の添加によって解消でき、塗料、印刷インキ、表面処理剤の各種ビヒクルなどに適用できる。
【0004】
(2)特許文献2
黒色顔料としてロジン金属塩(ロジンのケン化物)で表面処理されたカーボンブラックを使用した紫外線硬化性被覆組成物であり、当該組成物は水性媒体中にカーボンブラックを分散させ、水溶性のロジンナトリウム塩などをカーボンブラックに吸着させ、その後金属塩又は金属錯塩で置換し、水洗・乾燥させることにより得られ、カーボンブラックをロジン金属塩で処理することにより、乾燥性つまり紫外線硬化性が向上できる。
【0005】
(3)特許文献3
紙やプラスチックの支持体に、カーボンブラックを含有する着色層及び金属蒸着層を順次形成し、上記カーボンブラックとして粒径2〜50μmの凝集体を用いた放電記録材料であり、この特定の凝集体を用いることにより記録材料のアースリターン現象や融着を防止でき、印字特性が向上する。このカーボンブラックの凝集体は、例えば、硝化綿とマレイン化ロジンを酢酸エチルなどの溶剤に溶解した後、これにカーボンブラックを添加し撹拌混合した第一次分散液を製造し、次いで、この第一次分散液に硝化綿とマレイン化ロジンなどの結着用樹脂、顔料などを添加して良く分散せしめてカーボンブラックの粒径を2〜50μmに調整することによって得られる。
【0006】
(4)特許文献4
カーボンブラックの表面を水不溶性ロジン塩で被覆した黒色固形着色剤用カーボンブラックであり、電子写真用トナーや粉体塗料用などに使用する。
カーボンブラックを水不溶性ロジン塩で被覆する手段としては、例えば、水溶性ロジンの存在下にカーボンブラックを水に分散させ(実施例1ではロジンソープ液とカーボンブラックと水などに分散させ)、カルシウム塩、バリウム塩などの水溶性金属多価塩を添加し、カーボンブラック表面に水不溶性のロジン塩層を沈積させることにより、カーボンブラックにロジン塩の被覆層を形成させる方法が挙げられる(段落13参照)。
従来、有彩色有機顔料とは異なり、カーボンブラックの特に固体樹脂への分散性及び分散物の発色性向上のために、カーボンブラックの表面をロジン系物質で被覆することは知られていなかったが(段落6参照)、カーボンブラックの表面を水不溶性ロジン塩で被覆することにより、トナーや粉体樹脂用の分散媒体樹脂への均一分散性が向上し、発色性が改善される(段落20参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭50−102627号公報
【特許文献2】
特開昭52−8040号公報
【特許文献3】
特開昭56−194号公報
【特許文献4】
特開2002−38050号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、カーボンブラックの分散性に改善の余地が少なくなく、カーボンブラックを印刷インキ、塗料、或は導電性プラスチックに適用する場合、黒色着色性能や導電性能のさらなる向上への要望は強い。
本発明は、分散性に優れ、もって、印刷インキ、塗料、或は導電性プラスチックなどの用途に適用した場合、黒色着色性能や導電性能をさらに向上できる改質カーボンブラックを開発することを技術的課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記特許文献2や4に示すようなロジンのケン化物でカーボンブラックを処理する方式ではなく、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、水中に微粒化分散させたロジン系樹脂、例えば、ロジンエステル類、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類の混合物を添加混練するなどの各種処理を施すと、得られた改質カーボンブラックはインキビヒクルなどの分散媒体樹脂に対して優れた均一分散性を示し、ひいては、印刷インキなどの黒色着色性能、導電性樹脂の導電性能のさらなる向上が図れることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明1は、カーボンブラックをロジン系樹脂の水性エマルションで処理することを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0011】
本発明2は、上記本発明1において、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させることを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0012】
本発明3は、上記本発明1又は2において、ロジン系樹脂が、ロジン類、或は、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類などのロジン誘導体の少なくとも一種であることを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0013】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、ロジン系樹脂の酸価が130以下で、軟化点が180℃以下であることを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0014】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、カーボンブラック100重量部に対して、ロジン系樹脂を固形分換算で1〜20重量部添加することを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0015】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかの改質カーボンブラックを顔料として含有する墨インキである。
【0016】
本発明7は、上記本発明1〜5のいずれかの改質カーボンブラックを導電性付与剤として含有する導電性樹脂である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、ロジンのケン化物ではなく、ロジン系樹脂の水性エマルションでカーボンブラックを処理した改質カーボンブラックであり、第二に、この改質カーボンブラックを含有する墨インキであり、第三に、同カーボンブラックを含有する導電性樹脂である。
【0018】
本発明3に示すように、カーボンブラックを処理するロジン系樹脂としては、ロジン類、ロジン誘導体を単用又は併用できる。
上記ロジン類はトールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどの未変性ロジン、或は、これらのロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水素化ロジンなどである。
上記ロジン誘導体は上記ロジン類を化学的に修飾したものであり、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、或は、フェノール付加ロジン類及びそのエステル類などである。
ロジン系樹脂としては、例えば、親油性を具備する見地から、ロジンエステル類、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類との混合物、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類との混合物、或は、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類との混合物などが好ましい。また、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類を併用する場合には、酸価を適正に調整した不飽和カルボン酸の部分エステル化物の単用で代替することもできる。
【0019】
上記ロジンエステル類は、ロジン類と多価アルコールを公知のエステル化法により製造したものをいう。この場合、ロジン類と多価アルコールの変性比率はロジンのカルボキシル基当量に対してアルコールの水酸基当量比換算でCOOH/OH=1/(0.2〜2.0)程度が適当であり、従って、ロジンエステル類は部分エステル化物を含む。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール、ジペンタエリスリトール等の6価アルコール、或いは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。
【0020】
上記不飽和カルボン酸変性ロジン類は、公知の方法により上記ロジン類にα,β−不飽和カルボン酸類を反応させたものをいう。この場合、α,β−不飽和カルボン酸類の変性量は、ロジン類100重量部に対してα,β−不飽和カルボン酸類20重量部程度以下が好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸類としては、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0021】
上記不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類は、上記ロジン類にα,β−不飽和カルボン酸類と多価アルコール類を順次、又は同時に反応させることにより得られ、部分エステル化物を含む。
ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類との変性反応、及び多価アルコールとのエステル化反応は前述の通りである。
【0022】
本発明4に示すように、上記ロジン系樹脂の酸価は130以下が適当であり、好ましくは50以下である。酸価が130を越えると親水性が増大して、本発明のロジン処理したカーボンブラックのビヒクルや樹脂などへの分散に支障を来す恐れがある。
また、ロジン系樹脂の軟化点は180℃以下が適当であり、好ましくは70〜140℃程度が好ましい。軟化点が低過ぎるとブロッキングを起こす恐れがあり、逆に、高過ぎるとカーボンブラックの被覆に支障を来す恐れがある。
例えば、一般に、上記ロジンエステル類の酸価は20以下、軟化点は70〜140℃程度であり、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類の酸価もロジンエステル類と同程度であるが、この不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類の場合、これに不飽和カルボン酸変性ロジン類を併用すると、酸価を所望に調整することができる。
上記ロジン系樹脂の市販品としては、ハリエスターDS−90(ハリマ化成社製)などが好適である。
【0023】
本発明の改質カーボンブラックは、カーボンブラックを上記従来技術のようなロジンのケン化物で処理するのではなく、ロジン系樹脂の水性エマルションで処理したものである。上記カーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法の外、任意の製法で得られたものが使用できる。市販品としては、三菱化学社、東海カーボン社、旭カーボン社、昭和キャボット社、ケッチェンブラックインターナショナル社、日本化成社などが製造したカーボンブラック品が挙げられ、具体的には、東海カーボン社のトーカブラックシリーズ、シーストシリーズ、三菱化学社のMA−7、ダイアブラック、ダイアポールなどが挙げられる。
上記ロジン系樹脂の水性エマルションは、ロジン系樹脂を各種乳化剤を用いて水中に微粒化分散したものである。
上記乳化剤は、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、高分子乳化剤、両性乳化剤などを任意に使用することができる。乳化剤の含有量は、ロジン系樹脂100重量部に対して固形分換算で1〜10重量部程度が適当である。
上記ロジン系樹脂の水性エマルションは、溶剤型乳化法、無溶剤型乳化法、転相乳化法、或はその他の公知の方法により製造される。
上記溶剤型乳化法は、各種ロジン系樹脂をメチレンクロライド、トルエン、キシレン、MIBKなどの有機溶剤に溶解させ、乳化剤と水を予備混合して粗い粒子の水性エマルションを調製した後、各種ミキサー、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機などを用いて微細乳化してから、上記有機溶剤を除去する方法である。
上記無溶剤型乳化法は、溶剤類を使用しないで溶融した各種ロジン系樹脂と乳化剤水溶液を予備混合し、粗い粒子の水性エマルションを調製した後、各種乳化分散機を用いて機械的に微細乳化させる方法である。
また、上記転相乳化法は、ロジン系樹脂に各種乳化剤を充分混練した後、攪拌しながら徐々に水を加えて、油中水型エマルションを水中油型エマルションに相反転させる方法であり、無溶剤で、もしくは溶剤を使用して乳化後脱溶剤して製造することもできる。
上記ロジン系樹脂の水性エマルションの市販品としては、ハリエスターSK−90D−55(ハリマ化成社製)などが好適である。
【0024】
上記カーボンブラックの処理は、本発明2に示すように、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させることにより行うのが適当である。
上記混練に使用する混練分散機器は、特に制限はなく、例えば、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)、リボンブレンダー(セイシン企業社製)、V型混合機(セイシン企業、徳寿社製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、二軸混練機(森山製作所社製)、コンビミックス(特殊機化工業社製)、プラネタリーミキサー(特殊機化工業社製)、タービュライザー(ホソカワミクロン社製)、フロージェットミキサー(粉研社製)、ダブルコーン型B混合機、その他の各種ミキサー類などが使用できる。
【0025】
カーボンブラックのロジン処理では、カーボンブラックに対するロジン系樹脂の水性エマルションの添加率は任意であるが、本発明5に示すように、カーボンブラック100重量部に対して同水性エマルションを固形分換算で1〜20重量部添加するのが適当であり、好ましくは2〜10重量部である。添加量が少な過ぎるとカーボンブラックに充分な分散性を付与できず、逆に、多過ぎると印刷インキや樹脂などの光沢性に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、過剰に多く添加しても分散性への寄与にあまり変化はなく、コストの無駄である。
カーボンブラックをロジン処理するには、カーボンブラックの製造工程後に、ミキサーなどを用いてロジン誘導体の水性エマルションを添加混練し、或は同水性エマルションを噴霧する方式が一般的である。また、カーボンブラックの製造工程時、例えば、カーボンブラックの冷却工程時に、或は、ストラクチャー構造を付与する造粒工程時に、同水性エマルションを噴霧処理又は添加混練処理しても差し支えない。
尚、これらのロジン処理に際しては、必要に応じてエマルションを水で希釈しても良いことはいうまでもない。
【0026】
本発明の改質カーボンブラックは、印刷インキや塗料、導電性樹脂等に対して着色や導電性付与の目的で使用される。また、この改質カーボンブラックは電子写真用トナー、インキジェット用インキ、水性インキなどを含む各種樹脂の着色用、或は、自動車タイヤ、チューブ、ベルト、防振ゴム、ホースなどの各種ゴム製品の耐摩耗性付与又は補強用の充填剤などに広く使用できる。
本発明6は、印刷インキ用ワニス(ビヒクル)に、墨顔料として上記改質カーボンブラックを添加混練した墨インキである。
上記印刷インキ用ワニスは、特に制限はなく、任意のものが使用できる。例えば、塗膜形成成分はフェノール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などの各種合成樹脂を初め、乾性油、半乾性油などの任意の成分が使用できる。墨インキの具体例としては、ロジン変性フェノール樹脂、乾性油(及び/又は半乾性油)、石油系溶剤(アロマフリーのインキ溶剤を含む)などを混合し、アルミニウムキレート剤などのゲル化剤を添加し、さらに、必要に応じて、耐摩擦性向上剤、インキドライヤーなどの各種コンパウンドを添加して、印刷適性を調整したものなどが挙げられる。
【0027】
また、本発明7は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂などの各種熱可塑性樹脂に、上記改質カーボンブラックを導電性付与剤として添加した導電性樹脂である。
上記導電性樹脂には、必要に応じて、アルミナ、タルク、カオリンクレーなどの無機充填剤、グラスファイバー、カーボンファイバーなどの無機繊維、酸化防止剤、流動性パラフィンなどを添加できることはいうまでもない。また、本発明の改質カーボンブラック以外に、公知の導電性付与剤、例えば、黒鉛、銅粉、ステンレス粉などの金属粉、ステンレス短繊維、導電性ホイスカー、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物を併用しても良い。導電性樹脂の製法に特に制限はないが、例えば、導電性樹脂シートを製造する場合、上記熱可塑性樹脂と導電性付与剤、さらには他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などの混練機で混練して、熱可塑性樹脂中に改質カーボンブラックを均一分散してコンパウンドを製造し、これをカレンダリングや溶融押出成形などにより、シート状に成形するのである。
【0028】
【発明の効果】
(1)後述の試験例にも示すように、本発明の改質カーボンブラックは、上記特許文献2や4のようなロジンのケン化物ではなく、ロジン系樹脂のエマルションとの接触により、このロジン系樹脂でコーティング処理されているため、分散性に優れ、各種ビヒクル、樹脂、高分子物質との相溶性に優れる。従って、印刷インキ、塗料などの着色用顔料として使用すると、従来よりも黒色着色性が向上し、外観特性に優れたインキ、塗料を製造できる。
また、本発明のように、ロジン系樹脂の水性エマルションで処理すると、カーボンブラックが着色専用のグレードではない汎用品であっても、流動性、光沢、耐乳化性やミスチングに優れた印刷用インキを製造できるうえ、着色専用グレードの欠点とされる乾燥性にも優れたインキを製造できる(後述の試験例参照)。
一方、本発明の改質カーボンブラックを導電性樹脂などの充填用に使用すると、分散性、相溶性に優れるため、従来に比べてさらなる高充填が可能であり、充填率、導電性に優れた配合物の製造が期待できる。
【0029】
(2)本発明では、上記特許文献2や4のようなロジンのケン化物ではなく、ロジン系樹脂の水性エマルションでカーボンブラックを処理するため、水の使用量、排水量を低減でき、ハンドリング性が良く、環境保全に資する。
一方、上記特許文献1の実施例には、各種ロジン系樹脂を水性エマルションの形態ではなく、樹脂形態のまま直接的にカーボンブラックと溶剤に混練してカーボンブラック配合着色用組成物を製造することが記載されているが、この場合、カーボンブラックに対するロジン系樹脂の配合量はカーボンブラックと同量程度、或はそれ以上の高含有率(例えば、実施例1ではカーボンブラック/ロジン系樹脂=50部/50部、実施例3ではカーボンブラック/ロジン系樹脂=40部/60部)であることから、このロジン系樹脂の高含有率によって塗料ビヒクルや樹脂への易分散性を担保していると考えられ、本発明5のような低含有率でロジン系樹脂を添加すると、得られたカーボンブラックの分散性は良好に担保できないことが容易に類推できる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の改質カーボンブラックの製造例、当該改質カーボンブラックを含有する印刷インキの実施例、当該印刷インキの適性評価試験例を順次説明する。下記の製造例、実施例、試験例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0031】
《改質カーボンブラックの製造例》
下記の製造例1はロジン系樹脂にロジンエステルを使用し、カーボンブラックに対する処理量を3%とした例、製造例2は同様に6%とした例である。
一方、比較製造例1は上記特許文献2に準拠して、ロジン系樹脂に未変性のロジンを使用し、このロジンのケン化物でカーボンブラックを処理した例である。
【0032】
(1)製造例1
未処理カーボンブラックとして汎用品であるトーカブラック#7550(東海カーボン社製)と、ロジン系樹脂の水性エマルションとしてハリエスターSK−90D−55(ハリマ化成社製:固形分55%、pH7.2)を夫々準備し、当該カーボンブラック100重量部と、ロジン系樹脂のエマルション5.45部をミキサーに採取し、攪拌混練した。
充分に混練した後、SUS容器に取り出し、乾燥機中に保管して水分を揮散乾燥させて、改質カーボンブラックを得た。
ちなみに、上記ロジン系樹脂は部分不均化ロジンのペンタエリスリトールエステル(酸価18.0、軟化点90℃)である。また、ロジン系樹脂の固形分は5.45部×55%=3.00部であり、本製造例1の改質カーボンブラックはロジン誘導体の3%処理物である。
【0033】
(2)製造例2
上記製造例1を基本として、ロジン系樹脂エマルションの添加量を製造例1の倍の10.90部に変更し、それ以外の条件を上記製造例1と同様に処理して、ロジン誘導体6%処理の改質カーボンブラックを製造した。
【0034】
(3)比較製造例1
中国産ガムロジン(酸価170)10部、水酸化ナトリウム1.8部、水112部をフラスコに仕込み、70℃で30分間加熱攪拌して10%のロジンナトリウム塩水溶液を調製した。
次に、上記製造例1と同種のカーボンブラック100部、水1000部と先に調製した10%のロジンナトリウム塩水溶液60部を80℃にて攪拌混合した後一旦冷却し、塩化カルシウム3部を徐々に添加して、再度80℃にて30分反応させた。その後水洗して乾燥させ、ロジンカルシウム塩で処理したカーボンブラックを得た。
【0035】
そこで、上記製造例1〜2及び比較製造例1で得られたカーボンブラックを使用し、或は、さらに、ロジン処理をしないカーボンブラックを使用して印刷用インキを製造し、その印刷適性評価試験を行った。
《印刷用インキの実施例》
下記の実施例1〜2は上記製造例1〜2で得られたロジン系樹脂の水性エマルションで処理した改質カーボンブラックを顔料として含有する印刷用インキの例である。比較例1は上記製造例1で使用した汎用のカーボンブラックをそのまま使用し、ロジン系樹脂の処理は一切していないブランク例である。比較例2は上記比較製造例1で得られたロジンのケン化物で処理したカーボンブラックを含有する例である。比較例3は、市販のカーボンブラックのうち、分散性に優れた着色専用品をそのまま使用し、ロジン系樹脂の処理は一切していない例である。
【0036】
(1)実施例1
ロジン変性フェノール樹脂(ハリフェノールP−800;ハリマ化成社製)48部、大豆油7部、AF7号溶剤(新日本石油社製)45部を反応容器に入れ、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、180℃で攪拌しながら30分保温してワニスを得た。
一方、ALCH(川研ファインケミカルス社製)0.7部をAF7号溶剤0.7部で希釈してゲル化剤を調製し、上記ワニスを100℃に冷却した後、このゲル化剤を添加した。さらに、再度180℃に昇温し、1時間保温してインキ用ゲルワニスを得た。
次いで、上記ゲルワニス50部に前記製造例1で得られたカーボンブラック18部を墨顔料として三本ロールミルを用いて分散し、さらに、AF7号溶剤とゲルワニスを適量添加して、インキのタックが5〜6になるように調製し、これを均一に混合して印刷用インキを得た。
尚、墨顔料18部には、補色剤のブルートナーを少量(例えば、0.2部程度)補填することができる。
【0037】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から前記製造例2(6%処理物)に替え、それ以外の条件を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0038】
(3)比較例1
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から、ロジン処理を施していない汎用品(トーカブラック#7550)に替え、それ以外を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0039】
(4)比較例2
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から前記比較製造例1(ロジンケン化物の処理品)に替え、それ以外を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0040】
(5)比較例3
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から、ロジン処理を施していない着色専用の市販品(MA−7、三菱化学社製)に替え、それ以外を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0041】
《インキの印刷適性評価試験例》
上記実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた各インキを下記に示す各種の印刷適性評価試験に供した。
(1)流動性(フロー60秒)
離合社(株)のスプレッドメーターによる60秒後のインキの拡がり(直径:mm)を測定した。拡がり直径が大きいほど流動性が良好と判定した。
【0042】
(2)光沢
インキ0.3ccをRIテスター((株)明製作所製)全面ロールでコート紙に展色した後、100℃熱風乾燥器内で6秒乾燥させ、24時間経過した時点で、光沢値を60゜−60°光沢計で測定した。光沢値が高いほど光沢が良好と判定した。
【0043】
(3)乾燥性
インキ0.2ccをRIテスター((株)明製作所製)4カットロールでアート紙に展色した後、100℃熱風乾燥器内で6秒乾燥させ、直後にアート紙を重ね合わせ、RIテスターで1分ごとに重ね合わせた紙への裏写りを観察し、裏写りが無くなった時間を評価し、時間が短いほど乾燥性が良好と判定した。
【0044】
(4)耐乳化性(最大乳化量)
リソドロニック乳化試験器(Novocontrol社製)を用いて、40℃において、25gのインキに2mL/分の速度で水を添加し、インキが飽和した時点の水分含有率を測定した(乳化試験器の回転数:1200rpm)。水分含有率が少ないほど耐乳化性良好と判定した。
【0045】
(5)ミスチング
ミスチングテスター(東洋精機社社製)のロール上にインキを4cc乗せ、2000rpm、2分間のインキのミスチング状態をロールの正面と下面に白紙を置いて観察した。そして、白紙上のミスチング状態を次の4段階で評価した。
◎:ミスチングが全くない。
○:ミスチングが少しある。
△:ミスチングあり。
×:ミスチングがひどい。
【0046】
図1はその評価試験の結果である。
先ず、流動性や光沢を見ると、汎用のカーボンブラックをロジン処理した実施例1〜2を、汎用品のブランク例である比較例1と比べた場合、流動性、光沢の改善は明らかであり、着色専用の標準品であるMA−7を使用した比較例3に比べても遜色がないか、それに近いレベルを示した。
耐乳化性を見ると、分散性に優れた上記比較例3は良好な評価であるが、比較例1は比較例3に比べてかなり劣り、ロジンのケン化物で処理した比較例2も劣ったのに対して、実施例2はこの比較例3と同じ評価であり、実施例1も遜色がなかった。
乾燥性を見ると、比較例3と比較例2の評価はかなり劣るのに対して、実施例1〜2の評価は良好であった。
ミスチングを見ても、比較例1〜2の評価が劣るのに対して、実施例1〜2は良好な評価であり、優れたハンドリング性を有することが明らかになった。
【0047】
以上を総合すると、汎用のカーボンブラックを使用した場合でも、ロジン系樹脂の水性エマルションで処理した改質品を墨顔料に用いると(実施例1〜2)、着色専用のカーボンブラックを墨顔料とする比較例3と同程度か、それ以上の流動性、光沢、耐乳化性、ミスチングを印刷用インキに付与することができるうえ、この比較例3の欠点とされる乾燥性の低さもなく、優れた乾燥性を具備することが判明した。
また、ロジン系樹脂でカーボンブラックを処理する場合、比較例2のようにロジン系樹脂のケン化物で処理したものは乾燥性、耐乳化性、ミスチングが劣るのに対して、実施例1〜2のようにロジン系樹脂の水性エマルションで処理したものは共に優れた評価であったことから、これらのインキ特性の点で、カーボンブラックを水性エマルション形態で処理することの優位性は明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜2及び比較例1〜3の各印刷用インキの適性評価試験の結果を示す図表である。
【発明の属する技術分野】
本発明は改質カーボンブラックに関して、分散性が良好であるため、黒色着色性能に優れた印刷インキや塗料、或は、導電性に優れたプラスチック成型物などを円滑に製造できるものを提供する。
【0002】
【発明の背景】
カーボンブラックは着色用の顔料として黒色インキ或は塗料などに広範に使用されている。このような着色用途の場合、カーボンブラックはインキビヒクルや塗料用樹脂に混練分散させて使用されるが、顔料の中でも特に分散し難いため、黒色に着色されたインキや塗料などの外観が光沢や濃度の点で劣るという問題がある。
一方、カーボンブラックは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂からなる高分子化合物に、導電性付与剤として高濃度で充填分散され、導電性樹脂として使用されている。この導電性付与の用途では、熱可塑性樹脂を加熱溶融して混練しながらカーボンブラックを分散充填させるのであるが、カーボンブラックは極めて分散しにくいため、分散充填率の増大に限界があり、得られた樹脂の導電性のさらなる向上も容易でない。
【0003】
【従来の技術】
カーボンブラックを樹脂などの着色に使用するに際して、分散性の向上を目的とした従来技術には、次のものがある。
(1)特許文献1
カーボンブラックと、ロジン、ロジンエステル、変性ロジンなどのロジン系樹脂と、重合禁止剤又は重合遅延剤とを含有するカーボンブラック配合着色用組成物であり、カーボンブラックをロジン系樹脂とともに高剪断力下で混練する際の相溶性の悪化、顔料分散不良を上記重合禁止剤又は重合遅延剤の添加によって解消でき、塗料、印刷インキ、表面処理剤の各種ビヒクルなどに適用できる。
【0004】
(2)特許文献2
黒色顔料としてロジン金属塩(ロジンのケン化物)で表面処理されたカーボンブラックを使用した紫外線硬化性被覆組成物であり、当該組成物は水性媒体中にカーボンブラックを分散させ、水溶性のロジンナトリウム塩などをカーボンブラックに吸着させ、その後金属塩又は金属錯塩で置換し、水洗・乾燥させることにより得られ、カーボンブラックをロジン金属塩で処理することにより、乾燥性つまり紫外線硬化性が向上できる。
【0005】
(3)特許文献3
紙やプラスチックの支持体に、カーボンブラックを含有する着色層及び金属蒸着層を順次形成し、上記カーボンブラックとして粒径2〜50μmの凝集体を用いた放電記録材料であり、この特定の凝集体を用いることにより記録材料のアースリターン現象や融着を防止でき、印字特性が向上する。このカーボンブラックの凝集体は、例えば、硝化綿とマレイン化ロジンを酢酸エチルなどの溶剤に溶解した後、これにカーボンブラックを添加し撹拌混合した第一次分散液を製造し、次いで、この第一次分散液に硝化綿とマレイン化ロジンなどの結着用樹脂、顔料などを添加して良く分散せしめてカーボンブラックの粒径を2〜50μmに調整することによって得られる。
【0006】
(4)特許文献4
カーボンブラックの表面を水不溶性ロジン塩で被覆した黒色固形着色剤用カーボンブラックであり、電子写真用トナーや粉体塗料用などに使用する。
カーボンブラックを水不溶性ロジン塩で被覆する手段としては、例えば、水溶性ロジンの存在下にカーボンブラックを水に分散させ(実施例1ではロジンソープ液とカーボンブラックと水などに分散させ)、カルシウム塩、バリウム塩などの水溶性金属多価塩を添加し、カーボンブラック表面に水不溶性のロジン塩層を沈積させることにより、カーボンブラックにロジン塩の被覆層を形成させる方法が挙げられる(段落13参照)。
従来、有彩色有機顔料とは異なり、カーボンブラックの特に固体樹脂への分散性及び分散物の発色性向上のために、カーボンブラックの表面をロジン系物質で被覆することは知られていなかったが(段落6参照)、カーボンブラックの表面を水不溶性ロジン塩で被覆することにより、トナーや粉体樹脂用の分散媒体樹脂への均一分散性が向上し、発色性が改善される(段落20参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭50−102627号公報
【特許文献2】
特開昭52−8040号公報
【特許文献3】
特開昭56−194号公報
【特許文献4】
特開2002−38050号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、カーボンブラックの分散性に改善の余地が少なくなく、カーボンブラックを印刷インキ、塗料、或は導電性プラスチックに適用する場合、黒色着色性能や導電性能のさらなる向上への要望は強い。
本発明は、分散性に優れ、もって、印刷インキ、塗料、或は導電性プラスチックなどの用途に適用した場合、黒色着色性能や導電性能をさらに向上できる改質カーボンブラックを開発することを技術的課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記特許文献2や4に示すようなロジンのケン化物でカーボンブラックを処理する方式ではなく、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、水中に微粒化分散させたロジン系樹脂、例えば、ロジンエステル類、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類の混合物を添加混練するなどの各種処理を施すと、得られた改質カーボンブラックはインキビヒクルなどの分散媒体樹脂に対して優れた均一分散性を示し、ひいては、印刷インキなどの黒色着色性能、導電性樹脂の導電性能のさらなる向上が図れることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明1は、カーボンブラックをロジン系樹脂の水性エマルションで処理することを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0011】
本発明2は、上記本発明1において、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させることを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0012】
本発明3は、上記本発明1又は2において、ロジン系樹脂が、ロジン類、或は、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類などのロジン誘導体の少なくとも一種であることを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0013】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、ロジン系樹脂の酸価が130以下で、軟化点が180℃以下であることを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0014】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、カーボンブラック100重量部に対して、ロジン系樹脂を固形分換算で1〜20重量部添加することを特徴とする改質カーボンブラックである。
【0015】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかの改質カーボンブラックを顔料として含有する墨インキである。
【0016】
本発明7は、上記本発明1〜5のいずれかの改質カーボンブラックを導電性付与剤として含有する導電性樹脂である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、ロジンのケン化物ではなく、ロジン系樹脂の水性エマルションでカーボンブラックを処理した改質カーボンブラックであり、第二に、この改質カーボンブラックを含有する墨インキであり、第三に、同カーボンブラックを含有する導電性樹脂である。
【0018】
本発明3に示すように、カーボンブラックを処理するロジン系樹脂としては、ロジン類、ロジン誘導体を単用又は併用できる。
上記ロジン類はトールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどの未変性ロジン、或は、これらのロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水素化ロジンなどである。
上記ロジン誘導体は上記ロジン類を化学的に修飾したものであり、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、或は、フェノール付加ロジン類及びそのエステル類などである。
ロジン系樹脂としては、例えば、親油性を具備する見地から、ロジンエステル類、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類との混合物、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類との混合物、或は、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類との混合物などが好ましい。また、ロジンエステル類と不飽和カルボン酸変性ロジン類を併用する場合には、酸価を適正に調整した不飽和カルボン酸の部分エステル化物の単用で代替することもできる。
【0019】
上記ロジンエステル類は、ロジン類と多価アルコールを公知のエステル化法により製造したものをいう。この場合、ロジン類と多価アルコールの変性比率はロジンのカルボキシル基当量に対してアルコールの水酸基当量比換算でCOOH/OH=1/(0.2〜2.0)程度が適当であり、従って、ロジンエステル類は部分エステル化物を含む。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール、ジペンタエリスリトール等の6価アルコール、或いは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。
【0020】
上記不飽和カルボン酸変性ロジン類は、公知の方法により上記ロジン類にα,β−不飽和カルボン酸類を反応させたものをいう。この場合、α,β−不飽和カルボン酸類の変性量は、ロジン類100重量部に対してα,β−不飽和カルボン酸類20重量部程度以下が好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸類としては、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0021】
上記不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類は、上記ロジン類にα,β−不飽和カルボン酸類と多価アルコール類を順次、又は同時に反応させることにより得られ、部分エステル化物を含む。
ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類との変性反応、及び多価アルコールとのエステル化反応は前述の通りである。
【0022】
本発明4に示すように、上記ロジン系樹脂の酸価は130以下が適当であり、好ましくは50以下である。酸価が130を越えると親水性が増大して、本発明のロジン処理したカーボンブラックのビヒクルや樹脂などへの分散に支障を来す恐れがある。
また、ロジン系樹脂の軟化点は180℃以下が適当であり、好ましくは70〜140℃程度が好ましい。軟化点が低過ぎるとブロッキングを起こす恐れがあり、逆に、高過ぎるとカーボンブラックの被覆に支障を来す恐れがある。
例えば、一般に、上記ロジンエステル類の酸価は20以下、軟化点は70〜140℃程度であり、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類の酸価もロジンエステル類と同程度であるが、この不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類の場合、これに不飽和カルボン酸変性ロジン類を併用すると、酸価を所望に調整することができる。
上記ロジン系樹脂の市販品としては、ハリエスターDS−90(ハリマ化成社製)などが好適である。
【0023】
本発明の改質カーボンブラックは、カーボンブラックを上記従来技術のようなロジンのケン化物で処理するのではなく、ロジン系樹脂の水性エマルションで処理したものである。上記カーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法の外、任意の製法で得られたものが使用できる。市販品としては、三菱化学社、東海カーボン社、旭カーボン社、昭和キャボット社、ケッチェンブラックインターナショナル社、日本化成社などが製造したカーボンブラック品が挙げられ、具体的には、東海カーボン社のトーカブラックシリーズ、シーストシリーズ、三菱化学社のMA−7、ダイアブラック、ダイアポールなどが挙げられる。
上記ロジン系樹脂の水性エマルションは、ロジン系樹脂を各種乳化剤を用いて水中に微粒化分散したものである。
上記乳化剤は、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、高分子乳化剤、両性乳化剤などを任意に使用することができる。乳化剤の含有量は、ロジン系樹脂100重量部に対して固形分換算で1〜10重量部程度が適当である。
上記ロジン系樹脂の水性エマルションは、溶剤型乳化法、無溶剤型乳化法、転相乳化法、或はその他の公知の方法により製造される。
上記溶剤型乳化法は、各種ロジン系樹脂をメチレンクロライド、トルエン、キシレン、MIBKなどの有機溶剤に溶解させ、乳化剤と水を予備混合して粗い粒子の水性エマルションを調製した後、各種ミキサー、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機などを用いて微細乳化してから、上記有機溶剤を除去する方法である。
上記無溶剤型乳化法は、溶剤類を使用しないで溶融した各種ロジン系樹脂と乳化剤水溶液を予備混合し、粗い粒子の水性エマルションを調製した後、各種乳化分散機を用いて機械的に微細乳化させる方法である。
また、上記転相乳化法は、ロジン系樹脂に各種乳化剤を充分混練した後、攪拌しながら徐々に水を加えて、油中水型エマルションを水中油型エマルションに相反転させる方法であり、無溶剤で、もしくは溶剤を使用して乳化後脱溶剤して製造することもできる。
上記ロジン系樹脂の水性エマルションの市販品としては、ハリエスターSK−90D−55(ハリマ化成社製)などが好適である。
【0024】
上記カーボンブラックの処理は、本発明2に示すように、カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させることにより行うのが適当である。
上記混練に使用する混練分散機器は、特に制限はなく、例えば、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)、リボンブレンダー(セイシン企業社製)、V型混合機(セイシン企業、徳寿社製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、二軸混練機(森山製作所社製)、コンビミックス(特殊機化工業社製)、プラネタリーミキサー(特殊機化工業社製)、タービュライザー(ホソカワミクロン社製)、フロージェットミキサー(粉研社製)、ダブルコーン型B混合機、その他の各種ミキサー類などが使用できる。
【0025】
カーボンブラックのロジン処理では、カーボンブラックに対するロジン系樹脂の水性エマルションの添加率は任意であるが、本発明5に示すように、カーボンブラック100重量部に対して同水性エマルションを固形分換算で1〜20重量部添加するのが適当であり、好ましくは2〜10重量部である。添加量が少な過ぎるとカーボンブラックに充分な分散性を付与できず、逆に、多過ぎると印刷インキや樹脂などの光沢性に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、過剰に多く添加しても分散性への寄与にあまり変化はなく、コストの無駄である。
カーボンブラックをロジン処理するには、カーボンブラックの製造工程後に、ミキサーなどを用いてロジン誘導体の水性エマルションを添加混練し、或は同水性エマルションを噴霧する方式が一般的である。また、カーボンブラックの製造工程時、例えば、カーボンブラックの冷却工程時に、或は、ストラクチャー構造を付与する造粒工程時に、同水性エマルションを噴霧処理又は添加混練処理しても差し支えない。
尚、これらのロジン処理に際しては、必要に応じてエマルションを水で希釈しても良いことはいうまでもない。
【0026】
本発明の改質カーボンブラックは、印刷インキや塗料、導電性樹脂等に対して着色や導電性付与の目的で使用される。また、この改質カーボンブラックは電子写真用トナー、インキジェット用インキ、水性インキなどを含む各種樹脂の着色用、或は、自動車タイヤ、チューブ、ベルト、防振ゴム、ホースなどの各種ゴム製品の耐摩耗性付与又は補強用の充填剤などに広く使用できる。
本発明6は、印刷インキ用ワニス(ビヒクル)に、墨顔料として上記改質カーボンブラックを添加混練した墨インキである。
上記印刷インキ用ワニスは、特に制限はなく、任意のものが使用できる。例えば、塗膜形成成分はフェノール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などの各種合成樹脂を初め、乾性油、半乾性油などの任意の成分が使用できる。墨インキの具体例としては、ロジン変性フェノール樹脂、乾性油(及び/又は半乾性油)、石油系溶剤(アロマフリーのインキ溶剤を含む)などを混合し、アルミニウムキレート剤などのゲル化剤を添加し、さらに、必要に応じて、耐摩擦性向上剤、インキドライヤーなどの各種コンパウンドを添加して、印刷適性を調整したものなどが挙げられる。
【0027】
また、本発明7は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂などの各種熱可塑性樹脂に、上記改質カーボンブラックを導電性付与剤として添加した導電性樹脂である。
上記導電性樹脂には、必要に応じて、アルミナ、タルク、カオリンクレーなどの無機充填剤、グラスファイバー、カーボンファイバーなどの無機繊維、酸化防止剤、流動性パラフィンなどを添加できることはいうまでもない。また、本発明の改質カーボンブラック以外に、公知の導電性付与剤、例えば、黒鉛、銅粉、ステンレス粉などの金属粉、ステンレス短繊維、導電性ホイスカー、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物を併用しても良い。導電性樹脂の製法に特に制限はないが、例えば、導電性樹脂シートを製造する場合、上記熱可塑性樹脂と導電性付与剤、さらには他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などの混練機で混練して、熱可塑性樹脂中に改質カーボンブラックを均一分散してコンパウンドを製造し、これをカレンダリングや溶融押出成形などにより、シート状に成形するのである。
【0028】
【発明の効果】
(1)後述の試験例にも示すように、本発明の改質カーボンブラックは、上記特許文献2や4のようなロジンのケン化物ではなく、ロジン系樹脂のエマルションとの接触により、このロジン系樹脂でコーティング処理されているため、分散性に優れ、各種ビヒクル、樹脂、高分子物質との相溶性に優れる。従って、印刷インキ、塗料などの着色用顔料として使用すると、従来よりも黒色着色性が向上し、外観特性に優れたインキ、塗料を製造できる。
また、本発明のように、ロジン系樹脂の水性エマルションで処理すると、カーボンブラックが着色専用のグレードではない汎用品であっても、流動性、光沢、耐乳化性やミスチングに優れた印刷用インキを製造できるうえ、着色専用グレードの欠点とされる乾燥性にも優れたインキを製造できる(後述の試験例参照)。
一方、本発明の改質カーボンブラックを導電性樹脂などの充填用に使用すると、分散性、相溶性に優れるため、従来に比べてさらなる高充填が可能であり、充填率、導電性に優れた配合物の製造が期待できる。
【0029】
(2)本発明では、上記特許文献2や4のようなロジンのケン化物ではなく、ロジン系樹脂の水性エマルションでカーボンブラックを処理するため、水の使用量、排水量を低減でき、ハンドリング性が良く、環境保全に資する。
一方、上記特許文献1の実施例には、各種ロジン系樹脂を水性エマルションの形態ではなく、樹脂形態のまま直接的にカーボンブラックと溶剤に混練してカーボンブラック配合着色用組成物を製造することが記載されているが、この場合、カーボンブラックに対するロジン系樹脂の配合量はカーボンブラックと同量程度、或はそれ以上の高含有率(例えば、実施例1ではカーボンブラック/ロジン系樹脂=50部/50部、実施例3ではカーボンブラック/ロジン系樹脂=40部/60部)であることから、このロジン系樹脂の高含有率によって塗料ビヒクルや樹脂への易分散性を担保していると考えられ、本発明5のような低含有率でロジン系樹脂を添加すると、得られたカーボンブラックの分散性は良好に担保できないことが容易に類推できる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の改質カーボンブラックの製造例、当該改質カーボンブラックを含有する印刷インキの実施例、当該印刷インキの適性評価試験例を順次説明する。下記の製造例、実施例、試験例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0031】
《改質カーボンブラックの製造例》
下記の製造例1はロジン系樹脂にロジンエステルを使用し、カーボンブラックに対する処理量を3%とした例、製造例2は同様に6%とした例である。
一方、比較製造例1は上記特許文献2に準拠して、ロジン系樹脂に未変性のロジンを使用し、このロジンのケン化物でカーボンブラックを処理した例である。
【0032】
(1)製造例1
未処理カーボンブラックとして汎用品であるトーカブラック#7550(東海カーボン社製)と、ロジン系樹脂の水性エマルションとしてハリエスターSK−90D−55(ハリマ化成社製:固形分55%、pH7.2)を夫々準備し、当該カーボンブラック100重量部と、ロジン系樹脂のエマルション5.45部をミキサーに採取し、攪拌混練した。
充分に混練した後、SUS容器に取り出し、乾燥機中に保管して水分を揮散乾燥させて、改質カーボンブラックを得た。
ちなみに、上記ロジン系樹脂は部分不均化ロジンのペンタエリスリトールエステル(酸価18.0、軟化点90℃)である。また、ロジン系樹脂の固形分は5.45部×55%=3.00部であり、本製造例1の改質カーボンブラックはロジン誘導体の3%処理物である。
【0033】
(2)製造例2
上記製造例1を基本として、ロジン系樹脂エマルションの添加量を製造例1の倍の10.90部に変更し、それ以外の条件を上記製造例1と同様に処理して、ロジン誘導体6%処理の改質カーボンブラックを製造した。
【0034】
(3)比較製造例1
中国産ガムロジン(酸価170)10部、水酸化ナトリウム1.8部、水112部をフラスコに仕込み、70℃で30分間加熱攪拌して10%のロジンナトリウム塩水溶液を調製した。
次に、上記製造例1と同種のカーボンブラック100部、水1000部と先に調製した10%のロジンナトリウム塩水溶液60部を80℃にて攪拌混合した後一旦冷却し、塩化カルシウム3部を徐々に添加して、再度80℃にて30分反応させた。その後水洗して乾燥させ、ロジンカルシウム塩で処理したカーボンブラックを得た。
【0035】
そこで、上記製造例1〜2及び比較製造例1で得られたカーボンブラックを使用し、或は、さらに、ロジン処理をしないカーボンブラックを使用して印刷用インキを製造し、その印刷適性評価試験を行った。
《印刷用インキの実施例》
下記の実施例1〜2は上記製造例1〜2で得られたロジン系樹脂の水性エマルションで処理した改質カーボンブラックを顔料として含有する印刷用インキの例である。比較例1は上記製造例1で使用した汎用のカーボンブラックをそのまま使用し、ロジン系樹脂の処理は一切していないブランク例である。比較例2は上記比較製造例1で得られたロジンのケン化物で処理したカーボンブラックを含有する例である。比較例3は、市販のカーボンブラックのうち、分散性に優れた着色専用品をそのまま使用し、ロジン系樹脂の処理は一切していない例である。
【0036】
(1)実施例1
ロジン変性フェノール樹脂(ハリフェノールP−800;ハリマ化成社製)48部、大豆油7部、AF7号溶剤(新日本石油社製)45部を反応容器に入れ、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、180℃で攪拌しながら30分保温してワニスを得た。
一方、ALCH(川研ファインケミカルス社製)0.7部をAF7号溶剤0.7部で希釈してゲル化剤を調製し、上記ワニスを100℃に冷却した後、このゲル化剤を添加した。さらに、再度180℃に昇温し、1時間保温してインキ用ゲルワニスを得た。
次いで、上記ゲルワニス50部に前記製造例1で得られたカーボンブラック18部を墨顔料として三本ロールミルを用いて分散し、さらに、AF7号溶剤とゲルワニスを適量添加して、インキのタックが5〜6になるように調製し、これを均一に混合して印刷用インキを得た。
尚、墨顔料18部には、補色剤のブルートナーを少量(例えば、0.2部程度)補填することができる。
【0037】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から前記製造例2(6%処理物)に替え、それ以外の条件を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0038】
(3)比較例1
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から、ロジン処理を施していない汎用品(トーカブラック#7550)に替え、それ以外を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0039】
(4)比較例2
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から前記比較製造例1(ロジンケン化物の処理品)に替え、それ以外を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0040】
(5)比較例3
上記実施例1を基本として、墨顔料のカーボンブラックを前記製造例1から、ロジン処理を施していない着色専用の市販品(MA−7、三菱化学社製)に替え、それ以外を実施例1と同様に処理して、印刷用インキを得た。
【0041】
《インキの印刷適性評価試験例》
上記実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた各インキを下記に示す各種の印刷適性評価試験に供した。
(1)流動性(フロー60秒)
離合社(株)のスプレッドメーターによる60秒後のインキの拡がり(直径:mm)を測定した。拡がり直径が大きいほど流動性が良好と判定した。
【0042】
(2)光沢
インキ0.3ccをRIテスター((株)明製作所製)全面ロールでコート紙に展色した後、100℃熱風乾燥器内で6秒乾燥させ、24時間経過した時点で、光沢値を60゜−60°光沢計で測定した。光沢値が高いほど光沢が良好と判定した。
【0043】
(3)乾燥性
インキ0.2ccをRIテスター((株)明製作所製)4カットロールでアート紙に展色した後、100℃熱風乾燥器内で6秒乾燥させ、直後にアート紙を重ね合わせ、RIテスターで1分ごとに重ね合わせた紙への裏写りを観察し、裏写りが無くなった時間を評価し、時間が短いほど乾燥性が良好と判定した。
【0044】
(4)耐乳化性(最大乳化量)
リソドロニック乳化試験器(Novocontrol社製)を用いて、40℃において、25gのインキに2mL/分の速度で水を添加し、インキが飽和した時点の水分含有率を測定した(乳化試験器の回転数:1200rpm)。水分含有率が少ないほど耐乳化性良好と判定した。
【0045】
(5)ミスチング
ミスチングテスター(東洋精機社社製)のロール上にインキを4cc乗せ、2000rpm、2分間のインキのミスチング状態をロールの正面と下面に白紙を置いて観察した。そして、白紙上のミスチング状態を次の4段階で評価した。
◎:ミスチングが全くない。
○:ミスチングが少しある。
△:ミスチングあり。
×:ミスチングがひどい。
【0046】
図1はその評価試験の結果である。
先ず、流動性や光沢を見ると、汎用のカーボンブラックをロジン処理した実施例1〜2を、汎用品のブランク例である比較例1と比べた場合、流動性、光沢の改善は明らかであり、着色専用の標準品であるMA−7を使用した比較例3に比べても遜色がないか、それに近いレベルを示した。
耐乳化性を見ると、分散性に優れた上記比較例3は良好な評価であるが、比較例1は比較例3に比べてかなり劣り、ロジンのケン化物で処理した比較例2も劣ったのに対して、実施例2はこの比較例3と同じ評価であり、実施例1も遜色がなかった。
乾燥性を見ると、比較例3と比較例2の評価はかなり劣るのに対して、実施例1〜2の評価は良好であった。
ミスチングを見ても、比較例1〜2の評価が劣るのに対して、実施例1〜2は良好な評価であり、優れたハンドリング性を有することが明らかになった。
【0047】
以上を総合すると、汎用のカーボンブラックを使用した場合でも、ロジン系樹脂の水性エマルションで処理した改質品を墨顔料に用いると(実施例1〜2)、着色専用のカーボンブラックを墨顔料とする比較例3と同程度か、それ以上の流動性、光沢、耐乳化性、ミスチングを印刷用インキに付与することができるうえ、この比較例3の欠点とされる乾燥性の低さもなく、優れた乾燥性を具備することが判明した。
また、ロジン系樹脂でカーボンブラックを処理する場合、比較例2のようにロジン系樹脂のケン化物で処理したものは乾燥性、耐乳化性、ミスチングが劣るのに対して、実施例1〜2のようにロジン系樹脂の水性エマルションで処理したものは共に優れた評価であったことから、これらのインキ特性の点で、カーボンブラックを水性エマルション形態で処理することの優位性は明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜2及び比較例1〜3の各印刷用インキの適性評価試験の結果を示す図表である。
Claims (7)
- カーボンブラックをロジン系樹脂の水性エマルションで処理することを特徴とする改質カーボンブラック。
- カーボンブラックの製造工程中又は工程後に、ロジン系樹脂の水性エマルションをカーボンブラックに噴霧又は添加混練し、乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の改質カーボンブラック。
- ロジン系樹脂が、ロジン類、或は、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類などのロジン誘導体の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の改質カーボンブラック。
- ロジン系樹脂の酸価が130以下で、軟化点が180℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質カーボンブラック。
- カーボンブラック100重量部に対して、ロジン系樹脂を固形分換算で1〜20重量部添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の改質カーボンブラック。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の改質カーボンブラックを顔料として含有する墨インキ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の改質カーボンブラックを導電性付与剤として含有する導電性樹脂。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003011054A JP2004224820A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 改質カーボンブラック |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003011054A JP2004224820A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 改質カーボンブラック |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004224820A true JP2004224820A (ja) | 2004-08-12 |
Family
ID=32900073
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003011054A Pending JP2004224820A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 改質カーボンブラック |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004224820A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007204677A (ja) * | 2006-02-03 | 2007-08-16 | Arakawa Chem Ind Co Ltd | 顔料コーティング剤、被覆顔料、および印刷インキ組成物 |
JP2020033430A (ja) * | 2018-08-28 | 2020-03-05 | サカタインクス株式会社 | プラズマ硬化用インキ組成物、及び、プラズマ硬化用インキ組成物のための添加剤 |
-
2003
- 2003-01-20 JP JP2003011054A patent/JP2004224820A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007204677A (ja) * | 2006-02-03 | 2007-08-16 | Arakawa Chem Ind Co Ltd | 顔料コーティング剤、被覆顔料、および印刷インキ組成物 |
JP2020033430A (ja) * | 2018-08-28 | 2020-03-05 | サカタインクス株式会社 | プラズマ硬化用インキ組成物、及び、プラズマ硬化用インキ組成物のための添加剤 |
JP7139194B2 (ja) | 2018-08-28 | 2022-09-20 | サカタインクス株式会社 | プラズマ硬化用インキ組成物、及び、プラズマ硬化用インキ組成物のための添加剤 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5337351B2 (ja) | インクジェット捺染方法およびインクジェット捺染物 | |
CA2134650C (en) | Encapsulated magnetic particles, pigments and carbon black, compositions and methods related thereto | |
KR20150143313A (ko) | 수성 잉크 조성물 | |
CN1503829A (zh) | 含有uv可固化树脂的耐水性喷墨油墨 | |
AU2017223924A1 (en) | Water-based pigment ink composition for ink-jet printing | |
JP3642358B2 (ja) | ポリエステル系樹脂水分散体およびその製法 | |
JP2008195767A (ja) | インクジェット捺染用白色インク組成物およびインクジェット捺染方法 | |
JP6866613B2 (ja) | コアシェル型変性顔料及び水性顔料分散体 | |
JP6351418B6 (ja) | 伸長可能なインク組成物 | |
JP6848120B1 (ja) | 金属印刷用インキ組成物 | |
JP4988250B2 (ja) | 水性多彩模様塗料 | |
WO2010001965A1 (ja) | 塗布組成物 | |
US10074455B2 (en) | Agglomerate composition | |
JP5570542B2 (ja) | 水性インクジェット用黒色インク組成物 | |
JP2004224820A (ja) | 改質カーボンブラック | |
JP5300044B2 (ja) | 塗膜形成用組成物及び塗膜の形成方法 | |
JP4084028B2 (ja) | 液体現像剤用顔料組成物、顔料分散液及びそれらの製造方法 | |
JPS584743B2 (ja) | 塗料組成物 | |
JP3733843B2 (ja) | メタリック顔料およびその製造方法、ならびにそれを含有する塗料組成物、インキ組成物および樹脂組成物 | |
JP2007127928A (ja) | 静電荷像現像用トナーの製造方法 | |
JP7269633B2 (ja) | ゲルワニス及びスクリーン印刷用インキ | |
JP2018016797A (ja) | 着色有機微粒子並びに、該粒子を含有する組成物及び樹脂成型体 | |
JP2008241874A (ja) | 静電荷像現像用トナーの製造方法 | |
JPH04146979A (ja) | 水性印刷インキ組成物 | |
JP2003039010A (ja) | 絶縁物基材の静電塗装方法 |