JP2004224498A - 弾性繊維の巻糸体および巻取り方法 - Google Patents

弾性繊維の巻糸体および巻取り方法 Download PDF

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JP2004224498A JP2003013658A JP2003013658A JP2004224498A JP 2004224498 A JP2004224498 A JP 2004224498A JP 2003013658 A JP2003013658 A JP 2003013658A JP 2003013658 A JP2003013658 A JP 2003013658A JP 2004224498 A JP2004224498 A JP 2004224498A
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Tadashi Tanabe
忠 田辺
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Abstract

【課題】鬼綾を回避し、解舒時のダブリ現象による糸切れを抑制することができる弾性繊維の巻糸体及び巻取り方法の提供。
【解決手段】巻き始めから巻き終わりまでの間でトラバース回転数を一度だけ変動させる巻取り方法であり、トラバース回転数と巻取りロール回転数が一致する前に、トラバースの回転数が巻取りロール回転数よりも多くなるように瞬間的に増加させて巻き取ることを特徴とする弾性繊維の巻取り方法。
【選択図】 選択図なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレッチ製品に使用される弾性繊維の巻糸体および巻取り方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボビンに巻き上げられ、チーズ状になったスパンデックス等の弾性繊維は、その高い伸度と特異な弾性により、広く利用されている。しかし、カバーリングや整経等の加工時に、巻糸体から弾性繊維を解舒する際、綾落ち現象及びダブリ現象により弾性繊維が糸切れし、加工のコスト生産性を著しく悪化させるという問題があった。
綾落ち現象とは、チーズ状パッケージからカバーリング加工機等に積極送りで糸を解舒する際に、送りロールと糸表層間で糸が解舒されずチーズの側面に糸が落ちる現象をいう。ダブリ現象とは、チーズから糸を解舒する際、下層の糸を同伴して解舒される現象をいう。
【0003】
通常、弾性繊維は、一定の速度で回転するタッチローラ又はフリクションローラにボビンホルダーに装着したボビンを押し当てながら、ボビン上に巻き取られる。その際、ボビンの幅方向に均一の厚みで巻取るために、トラバース装置で綾振りを行いながら巻取られる。一般的には、巻取り時のトラバースの回転数は一定であるが、ボビン軸の回転数は巻径が大きくなるに伴って減少し、ボビン軸の回転数が実質的にトラバース回転数と一致すると、ボビン上に巻取られる糸の軌跡が直ぐ下の糸の軌跡と同一となり、解除時にダブリ現象を起こし易い層が形成される。この層は鬼綾と呼ばれる。
【0004】
鬼綾を回避するためには、綾角を小さくすること、つまりトラバースの回転数をボビン回転数より小さくすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)が、綾角を小さくしていくと、チーズ側面が凸状に膨れた巻き形状になり、ボビン幅より広く巻き上げられ、梱包作業等の取り扱い時に汚れ易く、爪、ダンボールの角等で引っかけ易い等の問題が生じる。
巻糸体の外層部の巻き幅を小さくして、ハンドリングや解舒時の糸落ちを抑制する方法として、外層部の綾角を連続的又は非連続的に上げる方法が提案されている(例えば、特許文献2、3、4参照)。
【0005】
綾角を連続的に大きくして巻取る方法は、巻幅が徐々に減少するため、解舒時の綾落ち抑制には有効であるが、巻量が増加すると鬼綾がチーズ内に存在するようになるため、ダブリ現象の抑制ができないという問題点がある。
特許文献2には、巻上げチーズの最外層部において、綾角を1.1〜2.0倍に増加させて巻き上げる方法が記載されているが、綾角を変動させる時点における、トラバース回転数とボビン軸回転数との関係については記載されておらず、通常、この方法では鬼綾回避に効果を有さない。
このように、巻糸体の形態の問題を解決し、解じょ性の改良とダブリ現象の抑制を同時に満足する弾性繊維巻糸体及びその製造方法については見出されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−191237号公報
【特許文献2】
特開平3−288769号公報
【特許文献3】
特開平5−116847号公報
【特許文献4】
特開平7−61708号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記課題を解決し、巻糸体から糸を解舒する際に、綾落ち及び鬼綾部分でのダブリ現象による断糸発生の少ない弾性繊維の巻糸体及び巻取り方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のとおりである。
(1) 綾角の異なる二つの層で形成され、外層部の綾角が内層部より5〜10%高くなっており、鬼綾が存在しないことを特徴とする弾性繊維巻糸体。
(2) 巻き始めから巻き終わりまでの間において、トラバース回転数を一度だけ変化させる巻取り方法であって、トラバース回転数と巻取りロール回転数が一致する前に、トラバースの回転数を巻取りロールの回転数よりも多くなるように、瞬間的に増加させることを特徴とする弾性繊維の巻取り方法。
(3) トラバースの回転数を増加させることによる綾角の変化率が5〜10%であることを特徴とする(2)に記載の弾性繊維の巻取り方法。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
弾性繊維をボビン等の芯上に巻き上げる際、綾角を巻き初めから一定にすると、巻き終わりまでの間にボビン軸回転数、すなわち、巻取り回転数とトラバースの回転数が同一となる部分が発生する。そのため、チーズ内に鬼綾部が形成され、解舒時にダブリ現象による断糸が発生しやすくなる。本発明者は、巻取り回転数とトラバース回転数が同一となる前に、トラバースの回転数が巻取りロールの回転数よりも多くなるように、トラバースの回転数を一度だけ瞬間的に増加させて巻き取ることにより、鬼綾の形成を抑制でき、解舒時のダブり現象による糸切れの発生が抑制できることを見出した。
鬼綾回避のためには、トラバース回転数を瞬間的に減少させることも考えられる。その場合は、巻取り速度が漸減して、再度トラバース回転数と一致する可能性があり、トラバース回転数を再度調節することになり、制御が煩雑となる。
【0010】
本発明において、トラバースの回転数を増加させるのは、鬼綾が発生する時点、すなわち、トラバース回転数と巻取り回転数が一致する前であればよく、トラバース回転数と巻取り回転数が一致する直前、具体的には、巻取り回転数がトラバース回転数の1.01〜1.05倍になった時点で増加させることが好ましい。増加量が1.05倍を越えると、トラバース回転数の増加量を大きくする必要があり、巻形状に影響する場合がある。増加量が1.01倍未満では、弾性繊維の特質として、巻フォームが安定しないために鬼綾部の位置がわずかに変動する可能性があり、鬼綾を回避できない場合がある。
【0011】
トラバース回転数を増加させるのに要する時間が短いほど、巻糸体中に鬼綾部分が発生する可能性が低くなるため、増加は瞬間的に行う必要がある。具体的には10秒未満で増加が完了することが好ましく、より好ましくは1秒未満である。
トラバースの回転数を増加させることにより綾角が増加する。本発明の目的を達成するために必要なトラバースの回転数増加量は、増加後のトラバース回転数が巻取り回転数より大きくなればよく、限定されない。しかし、前述した通り、弾性繊維は巻きフォームが安定しないために、鬼綾部の位置がわずかに変動する可能性があり、確実に鬼綾を回避するためには、綾角の増加率に換算した時に、増加前の綾角に対する綾角増加率を5%以上にすることが好ましい。増加率を大きくしすぎると巻幅が小さく巻径の大きな形状となり、梱包費用、物流費用が増加するため、増加率は10%以下が好ましい。
トラバースの回転数を増加させた後は、増加させた状態で巻取りを継続させる。
【0012】
本発明における弾性繊維としては、ポリウレタン弾性繊維、ポリエーテルエステル弾性繊維等が挙げられ、限定さるものではない。
本発明の弾性繊維巻糸体は、綾角の異なる二つの層で形成され、外層部の綾角が内層部より5〜10%高くなっており、鬼綾が存在しない。この巻糸体は巻姿が良好で、綾落ち、ダブリが抑制された良好な解舒性を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例中の特性値等の測定法を以下に示す。
(解舒時の糸の脱落、ダブリ現象による糸切れ評価)
巻糸体各々50チーズから3m/分の速度で積極送りにより糸を取り出し、12m/分で引き取りながら、ダブリ現象による糸切れ数を16時間測定し、それぞれの発生率が0%のものを○、20%未満のものを△、20%以上のものを×とした。
【0014】
【実施例1〜3、比較例1〜3】
34wt%のポリウレタン重合溶液を、300℃に加熱したガス中にノズルから吐出し、オイリングを施した後、44dtex/4fの弾性繊維を、径が84mmで幅が57.6mmの紙管上に990m/分で巻き上げて500gの巻糸体とした。巻取りに要する時間は約129分であった。巻取り機のトラバースの振り幅は44mm一定とした。なお、ここで44dtexはリラックス時の糸繊度を示す。
【0015】
この条件における巻き始め時の巻取り回転数は約3700rpmであり、巻き厚みが大きくなると共に減少した。綾角が10.5°で一定の場合、巻取り開始から約120分後、綾角が11.5°で一定の場合は約92分後に、巻取り回転数がトラバース回転数と一致した。
巻取り中のトラバース回転数及び巻取り回転数を常時監視し、巻取り回転数がトラバース回転数に対して1.03倍になった時点(実施例1、3では巻取り開始から約112分後、実施例2では約85分後)でトラバース回転数を増加させた。回転数の増加は1秒未満で完了した。その後は、トラバース回転数が一定の状態で巻き取った。
【0016】
比較例1においては、巻取り開始からトラバース回転数の増加を開始し、巻取り終了時に増加が完了するよう、一定割合でトラバース回転数を継続的に増加させて巻き取った。比較例2及び比較例3では、巻取り速度の変化とは関係なく、巻取り時間129分のうち、巻糸体の最外層5分間についてトラバース回転数を継続的に増加して巻き取った。比較例4では、巻き始めから巻き終わりまで綾角一定で巻き取った。比較例2〜4では、巻取り開始から120分後に巻取り回転数とトラバース回転数が一致していた。
【0017】
トラバース回転数の変化による巻取り時の綾角の変化及び、巻取った糸の解じょ時ダブリ現象による糸切れ数を評価した結果を表1に示す。
実施例のように、巻き始めから巻き終わりまでの間に鬼綾部の直前でトラバースの回転数を一度だけ瞬間的に増加して巻き取った弾性繊維巻糸体は、解舒時のダブリ現象による糸切れの発生を抑制することができた。
一方、比較例1のようにトラバース回転数を徐々に増加する方法、比較例2及び3のように鬼綾部と無関係にトラバース回転数を増加する方法、及び比較例4のように綾角一定で巻き取る方法では、鬼綾を回避できないために、ほとんどの製品でダブリ糸切れが発生した。
【0018】
【表1】
Figure 2004224498
【0019】
【発明の効果】
本発明の巻取り方法により、巻取り回転数とトラバース回転数が一致して巻き取られる鬼綾部分が存在しない、解舒時にダブリ現象による糸切れ発生を抑制した弾性繊維巻糸体を得ることができる。

Claims (3)

  1. 綾角の異なる二つの層で形成され、外層部の綾角が内層部より5〜10%高くなっており、鬼綾が存在しないことを特徴とする弾性繊維巻糸体。
  2. 巻き始めから巻き終わりまでの間において、トラバース回転数を一度だけ変化させる巻取り方法であって、トラバース回転数と巻取りロール回転数が一致する前に、トラバースの回転数を巻取りロールの回転数よりも多くなるように、瞬間的に増加させることを特徴とする弾性繊維の巻取り方法。
  3. トラバースの回転数を増加させることによる綾角の変化率が5〜10%であることを特徴とする請求項2記載の弾性繊維の巻取り方法。
JP2003013658A 2003-01-22 2003-01-22 弾性繊維の巻糸体および巻取り方法 Pending JP2004224498A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016222427A (ja) * 2015-06-01 2016-12-28 神鋼鋼線工業株式会社 二層ハニカム巻き鋼より線コイル及びその巻取機

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