JP2004224224A - エアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】インフレータが配置された第1室と、それを取り囲む第2室とに区画されたエアバッグにおいて、該第2室の膨張を早期化させると共に、第1室及び第2室の内圧や膨張速度を個別に調節可能とする。
【解決手段】連通口27を有するインナーパネル22によりエアバッグ10内が、第1室1と第2室とに区画されている。インフレータ36には、下段側に第1ガス発生部38が設けられ、上段側に第2ガス発生部40が設けられている。第1のガス発生部38のガス噴出口38aは連通口27に対峙しており、第2のガス発生部40のガス噴出口40aは連通口27に対し非対峙となっている。第2室2は第1のガス発生部38からのガスにより早期に膨張する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の高速移動体に設けられ、衝突等の緊急時に膨張して人体を保護するためのエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の衝突時等の緊急時に乗員を保護するために、運転席用エアバッグ装置等の種々のエアバッグ装置が用いられている。運転席用エアバッグ装置は、乗員側のフロントパネルと反対側のリヤパネルとの周縁部を縫い合わせることにより形成されたエアバッグを有する。リヤパネルの中央には、インフレータの先端側を受け入れるためのインフレータ係合用開口が設けられる。この開口の周囲がボルトやピン、リベットなどによってリテーナに取り付けられている。このリヤパネルには、運転席乗員がエアバッグに突っ込んできたときにバッグ内の気体を逃がして衝撃を吸収するためのベントホールが設けられている。
【0003】
特開平1−247242号公報には、リヤパネルのインフレータ用開口とフロントパネルとの間に架け渡されるようにインナーパネルを設け、エアバッグ内を中央の第1室と周囲の第2室とに区画したエアバッグが記載されている。このインナーパネルは、略円形であり、その外周縁部がフロントパネルの中央と周縁との中間部に連結される。インナーパネルの中央にはインフレータ用の開口が設けられ、この開口の縁部がリヤパネルと共にリテーナに取り付けられる。このインナーパネルには該第1室と第2室とを連通する連通口が設けられている。インフレータが作動すると、まず第1室が膨張し、それに引き続いて第2室が膨張する。
【0004】
同号公報のエアバッグにあっては、第2室へは該連通口を介して第1室からガスが流入するので、第2室の膨張完了は第1室の膨張完了よりも遅いものとなる。また、該第1室及び第2室の内圧や膨張速度を個別に調節するのが難しい。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−247242号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このようにインナーパネルによって内部が第1室と第2室とに区画されたエアバッグにおいて、第2室の膨張を早期化させると共に、これらの第1室及び第2室の内圧や膨張速度を個別に調節可能とすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エアバッグと、ガス噴出口を有するガス発生器とを備えており、該ガス発生器は、少なくともその先端側がエアバッグ内に配置され、且つ前記ガス噴出口が該エアバッグ内に配置されているエアバッグ装置であって、該エアバッグは、乗員側に配置されるフロントパネル及び乗員と反対側に配置されるリヤパネルを有し、該フロントパネル及びリヤパネルは、それらの周縁部同士が結合されており、該リヤパネルの中央には、ガス発生器用の開口が設けられ、該エアバッグ内を中央の第1室と、該第1室を取り囲む第2室とに区画するインナーパネルが配置され、該インナーパネルの中央には、該リヤパネルの開口と略同心状に配置される開口が設けられており、該インナーパネルの先端側周縁部は、該フロントパネルの中央部と周縁部との間の中間部に対し結合されているエアバッグ装置に関する。
【0008】
本発明のエアバッグ装置は、このようなエアバッグ装置において、ガス発生器は、少なくとも第1及び第2の複数個のガス発生部を備えていると共に、これらのガス発生部にそれぞれガス噴出口が設けられており、前記インナーパネルの後端側には、該第1室と第2室とを連通する連通口が設けられており、該連通口は、エアバッグが膨張した状態において前記第1のガス発生部のガス噴出口に対峙しており、該第1のガス発生部以外のガス発生部のガス噴出口は、該連通口に対し非対峙となっていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる本発明のエアバッグ装置にあっては、エアバッグが膨張した状態において、該エアバッグ内の第1室と第2室とを連通する連通口が、リヤパネル及びインナーパネルのガス発生器用開口を介して該第1室内に配置されたガス発生器の第1のガス発生部のガス噴出口と対峙するように配置されている。従って、ガス発生器が作動したときには、該第1のガス発生部のガス噴出口から該連通口に向ってガスが噴出される。このため、第2室内に、該第1のガス発生部からのガスが該連通口を通って直接的に供給される。これにより、第2室が早期に膨張する。
【0010】
また、本発明のエアバッグ装置にあっては、この第1のガス発生部以外のガス発生部のガス噴出口は、該連通口に対し非対峙となっているので、ガス発生器が作動したときに、該第1のガス発生部以外のガス発生部からのガスは、まず第1室内にのみ供給される。従って、これらの第1のガス発生部とそれ以外のガス発生部との出力をそれぞれ調節することにより、第1室及び第2室の内圧や膨張速度を個別に調節することが可能となる。また、これらの第1のガス発生部とそれ以外のガス発生部との作動開始時期を調節することにより、該第1室及び第2室の膨張開始時期や膨張完了時期を調節することも可能となる。
【0011】
本発明のエアバッグ装置においては、エアバッグのリヤパネルにベントホールが設けられており、インナーパネルに第1室と第2室とを連通するインナーベントホールが設けられていることが好ましい。このように構成することにより、膨張したエアバッグに人体が当ったときに、該インナーベントホール及びベントホールを介して第1室内及び第2室内のガスを逃がして衝撃を吸収することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
第1図及び第2図は本発明の実施の形態に係る自動車の運転席用エアバッグ装置の断面図であり、第3図はこのエアバッグ装置の分解斜視図である。なお、第1図はエアバッグ膨張途中時を示し、第2図はエアバッグ膨張完了時を示している。
【0014】
エアバッグ10は、それぞれ円形の織布よりなるフロントパネル12、リヤパネル14及びインナーパネル22を備えている。このフロントパネル12とリヤパネル14は同一直径のものであり、それらの外周縁部同士が糸等よりなるシーム15によって縫合されることにより、袋体状とされている。この縫合部は、フロントパネル12及びリヤパネル14の外周に沿って周回した円環状となっている。
【0015】
リヤパネル14には、インフレータ(ガス発生器)用開口16とベントホール18とが設けられている。このインフレータ用開口16はリヤパネル14の中央に配置されている。このインフレータ用開口16の周囲にはボルト挿通孔20が設けられている。
【0016】
このエアバッグ10の内部に前記インナーパネル22が設けられている。このインナーパネル22はフロントパネル12及びリヤパネル14と略同心状に配置され、その外周縁部(エアバッグ10が膨張した状態にあっては、インナーパネル22の先端側の周縁部)が該フロントパネル12の中央部と周縁部との中間部に対し糸等よりなるシーム23によって縫合されている。この縫合部は、インナーパネル22の外周に沿って周回した円環形である。
【0017】
このインナーパネル22の中央部(エアバッグ10が膨張した状態にあっては、インナーパネル22の後端側となる部分)には、該リヤパネル14のインフレータ用開口16と略同心状に配置されるインフレータ用開口24が設けられている。これらの開口16,24はほぼ同一直径となっている。また、このインナーパネル22の該開口24の周囲には、リヤパネル14のボルト挿通孔20と重なるボルト挿通孔26が設けられている。
【0018】
インナーパネル22には、その外周縁に比較的近接してインナーベントホール28が設けられると共に、それよりも内周側に連通口27が設けられている。
【0019】
このインナーパネル22の該インフレータ用開口24の周縁部がリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部と重ね合わされ、リテーナ30のインフレータ取付口32の周縁部に重ね合わされる。そして、ボルト挿通孔26,20を通して該インフレータ用開口24,16の周縁部がリテーナ30に固定される。これにより、インナーパネル22のインフレータ用開口24の周縁部はリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部に連なり、インナーパネル22の外周縁部はフロントパネル12に縫合部(シーム)23によって連なったものとなる。
【0020】
このインナーパネル22により、エアバッグ10の内部が中央の第1室1と、該第1室1を取り囲む第2室2とに区画される。第1室1はインナーパネル22の内側である。
【0021】
前記連通口27は、第1室1の後端側(リヤパネル14側)に配置され、インナーベントホール28は、該第1室1の前端側(フロントパネル12側)に配置される。なお、該連通口27は、インフレータ用開口16,24を介して該第1室1内に配置される後述のインフレータ36の第1のガス発生部38のガス噴出口38aと対峙する位置に形成されている。
【0022】
この実施の形態では、第3図に示す通り、連通口27とインナーベントホール28は、それぞれ、エアバッグの周方向に等間隔にて4個設けられている。また、これらの連通口27及びインナーベントホール28とは、エアバッグの中心に対し周方向の位相がずれている。
【0023】
なお、開口16,24や連通口27、ベントホール18,28の周縁部に補強用のパッチ等を取り付けてもよい。
【0024】
インフレータ36は、この実施の形態では略円筒形状のものである。このインフレータ36の先端側には、筒軸方向に位置を異ならせて第1のガス発生部38と第2のガス発生部40とが設けられている。該第2のガス発生部40は、第1図及び第2図における第1のガス発生部38の上段側に配置されている。これらの第1及び第2のガス発生部38,40の側周面には、それぞれガス噴出口38a,40aが設けられている。この実施の形態では、該ガス噴出口38a、40aは、それぞれ、インフレータ36の周方向に等間隔にて4個設けられている。これらの噴出口38a,40a同士は、インフレータ36の軸心に対し周方向の位相がずれている。各ガス発生部38,40は、これらのガス噴出口38a,40aから放射方向にガスを噴出する。
【0025】
このインフレータ36の筒軸方向の途中部分(該ガス発生部38,40よりも後端側)の側周面からは、インフレータ固定用のフランジ42が突設されている。該フランジ42には、ボルト挿通孔44が設けられている。
【0026】
このインフレータ36は、該先端側がリテーナ30のインフレータ取付口32に嵌装される。
【0027】
エアバッグ10をリテーナ30に取り付けるに当っては、リヤパネル14及びインナーパネル22のインフレータ用開口16,24の周縁部を押えリング46により該リテーナ30のインフレータ取付口32の周縁部に押え付ける。該インフレータ取付口32に嵌装されたインフレータ36の先端側は、該インフレータ用開口16,24を介して第1室1内に挿入される。このインフレータ36の先端側に設けられた第1のガス発生部38のガス噴出口38aは、それぞれ、インナーパネル22の各連通口27と対峙する。これに対し、第2のガス発生部40のガス噴出口40aは、それぞれ、該連通口27に対し非対峙となる。
【0028】
この際、押えリング46のスタッドボルト48をボルト挿通孔26,20,34,44に通し、その先端にナット50を締め込むことにより、インナーパネル22、エアバッグ10及びインフレータ36をリテーナ30に固定する。そして、エアバッグ10を折り畳み、このエアバッグ10の折り畳み体を覆うようにモジュールカバー52をリテーナ30に取り付けることにより、エアバッグ装置が構成される。このエアバッグ装置は、自動車のステアリングホイール(第1,2図ではリム部54のみ図示。)に設置される。
【0029】
なお、このエアバッグ装置には、車両衝突を検知してインフレータ36を作動させる制御装置(図示略)が設けられている。この制御装置は、自動車の運転席に着座した乗員の体重や体格、着座位置(ステアリングホイールからの距離)等に応じて、該インフレータ36の第1及び第2のガス発生部38,40の出力や作動開始時期をそれぞれ個別に調節する調節機能を有している。図示はしないが、このエアバッグ装置が設置される自動車には、運転席に着座した乗員の体重や体格、着座位置(ステアリングホイールからの距離)等を検出する検出手段が設けられる。該制御装置は、この検出手段からの検出値に基づいて該第1及び第2のガス発生部38,40の出力や作動開始時期を調節する。
【0030】
このように構成されたエアバッグ装置においては、車両衝突時等には、インフレータ36が作動してエアバッグ10内にガスが噴出する。エアバッグ10は、このガスにより膨張してモジュールカバー52を押し開き、車両室内に展開して運転席乗員を保護する。
【0031】
このエアバッグ10にあっては、第1室1と第2室2とを連通する連通口27が、該第1室1内に配置されたインフレータ36の第1のガス発生部38のガス噴出口38aと対峙するように配置されているので、インフレータ36が作動したときには、該ガス噴出口38aから該連通口27に向ってガスが噴出される。このため、該インフレータ36からのガスが、第1図に示すように、該連通口27を通って第2室2に直接的に供給される。これにより、第2室2が早期に膨張する。
【0032】
また、このエアバッグ装置にあっては、第2のガス発生部40のガス噴出口40aは、該連通口27に対し非対峙となっているので、第2のガス発生部40からのガスは、まず実質的に第1室1内にのみ供給される。従って、これらの第1のガス発生部38と第2のガス発生部40との出力をそれぞれ調節することにより、第1室1及び第2室2の内圧や膨張速度を個別に調節することが可能である。また、これらの第1のガス発生部38と第2のガス発生部40との作動開始時期を調節することにより、該第1室1及び第2室2の膨張開始時期や膨張完了時期を調節することも可能である。
【0033】
例えば、乗員とステアリングホイールとの間隔が比較的小さい場合や、乗員の体重又は体格が比較的小さい場合などには、第2のガス発生部40の出力を低目に設定する。これにより、第1室1の内圧の上昇や乗員側への膨み出しが抑制され、該乗員を比較的ソフトに受け止めることができるようになる。このようにした場合でも、第2室2には第1のガス発生部38から十分にガスを供給することができるので、エアバッグ10全体を十分広範囲に膨張させることが可能である。
【0034】
また、乗員とステアリングホイールとの間隔が非常に大きい場合などには、第2のガス発生部40の出力を高目に設定すると共に、第1のガス発生部38の出力を低目に設定する。このようにした場合には、エアバッグ10の側方への膨張が抑制され、エアバッグ10全体が乗員に向って大きく膨み出すようになる。これにより、該乗員を比較的早期に且つしっかりと受け止めることが可能となる。
【0035】
なお、この実施の形態では、膨張したエアバッグ10に乗員がぶつかってきた場合、第1室1及び第2室2の内部のガスはインナーベントホール28あるいはベントホール18を通って流出し、衝撃が吸収される。
【0036】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、各ガス発生部38,40のガス噴出口38a,40aと連通口27とが4個ずつ設けられているが、4個に限定されるものではない。また、上記実施の形態では第1のガス発生部38の全てのガス噴出口38aがそれぞれ連通口27に対峙しているが、一部のガス噴出口38aのみが連通口27に対峙してもよい。また、3個以上のガス発生部が設けられてもよい。
【0037】
連通口27の形状は図示以外の形状であってもよい。また、この連通口27の開口面積は第2室2の内容積等に応じて選定されるものであり、特に制限はない。
【0038】
上記実施の形態は、運転席用エアバッグ及び運転席用エアバッグ装置への本発明の適用例であるが、本発明は、これ以外の種々の用途のエアバッグ装置にも適用できる。
【0039】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、インフレータが配置された第1室と、それを取り囲む第2室とに区画されたエアバッグにおいて、該第2室の膨張を早期化させることが可能になると共に、これらの第1室及び第2室の内圧や膨張速度を個別に調節することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るエアバッグ装置の断面図である。
【図2】図1のエアバッグ装置のエアバッグ膨張完了時の断面図である。
【図3】図1のエアバッグ装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 第1室
2 第2室
10 運転席用エアバッグ
12 フロントパネル
14 リヤパネル
16,24 インフレータ用開口
18 ベントホール
22 インナーパネル
27 連通口
28 インナーベントホール
30 リテーナ
32 インフレータ取付口
36 インフレータ
38 第1のガス発生部
38a ガス噴出口
40 第2のガス発生部
40a ガス噴出口
46 押えリング

Claims (2)

  1. エアバッグと、ガス噴出口を有するガス発生器とを備えており、
    該ガス発生器は、少なくともその先端側がエアバッグ内に配置され、且つ前記ガス噴出口が該エアバッグ内に配置されているエアバッグ装置であって、
    該エアバッグは、乗員側に配置されるフロントパネル及び乗員と反対側に配置されるリヤパネルを有し、該フロントパネル及びリヤパネルは、それらの周縁部同士が結合されており、
    該リヤパネルの中央には、ガス発生器用の開口が設けられ、
    該エアバッグ内を中央の第1室と、該第1室を取り囲む第2室とに区画するインナーパネルが配置され、
    該インナーパネルの中央には、該リヤパネルの開口と略同心状に配置される開口が設けられており、
    該インナーパネルの先端側周縁部は、該フロントパネルの中央部と周縁部との間の中間部に対し結合されている
    エアバッグ装置において、
    前記ガス発生器は、少なくとも第1及び第2の複数個のガス発生部を備えていると共に、これらのガス発生部にそれぞれガス噴出口が設けられており、
    前記インナーパネルの後端側には、該第1室と第2室とを連通する連通口が設けられており、
    該連通口は、エアバッグが膨張した状態において前記第1のガス発生部のガス噴出口に対峙しており、
    該第1のガス発生部以外のガス発生部のガス噴出口は、該連通口に対し非対峙となっていることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 請求項1において、前記リヤパネルにベントホールが設けられており、該インナーパネルに該第1室と第2室とを連通するインナーベントホールが設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
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